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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】制御回路およびスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
H02M3/28 B
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019125153
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021013214
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】品川 盛治
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 史典
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-38857(JP,A)
【文献】特開2016-178800(JP,A)
【文献】特開2017-229140(JP,A)
【文献】特開平10-164834(JP,A)
【文献】特開2018-129907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源装置の入力電源とトランスの入力側の一次コイル間に設けられたスイッチング手段をオン/オフさせる制御回路であり
前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に、オン/オフ周波数を高い周波数から低い周波数に徐々に変化させるソフトスタートの制御を行うソフトスタート制御部を有し、
前記ソフトスタート制御部は、検出された前記入力電源の電圧が低い場合には、前記電圧が高い場合より、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を低くするように前記オン/オフ周波数を制御する、制御回路であって、
前記制御回路の前記ソフトスタート制御部は、前記スイッチング手段にサージ電流が発生する場合、当該サージ電流のピーク値が前記トランスの励磁電流のピーク値より小さくなるように、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載の制御回路において、
前記ソフトスタート制御部は、ノーマルモードで、前記入力電源の電圧が入力される際のソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項3】
請求項1に記載の制御回路において、
前記ソフトスタート制御部は、バーストモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項4】
請求項1に記載の制御回路において、
前記ソフトスタート制御部は、アクティブスタンバイモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の制御回路において、
前記制御回路は、充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサの前記端子電圧に基づき、前記スイッチング手段をオン/オフさせる基礎となる基準周波数信号を発生するように構成され、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの充電時間又は放電時間の少なくとも一方を前記入力電源の電圧に応じて変化させることにより前記基準周波数信号を変化させ、これにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化するように制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項6】
請求項に記載の制御回路において、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電時間を変化させることにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項7】
請求項に記載の制御回路において、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電電流を変化させることにより前記第1のコンデンサの放電時間を変化させ、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載の制御回路において、
前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行すると充電を開始し、前記オン/オフ状態からオフ状態に移行すると放電をおこなう第2のコンデンサの端子電圧、及び、前記入力電源の電圧に応じて前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする制御回路。
【請求項9】
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
請求項1~のいずれかに記載の制御回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項10】
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサと、
請求項5~7のいずれかに記載の制御回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項11】
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
充放電することにより端子電圧が変化する第2のコンデンサと、
請求項に記載の制御回路と、
を備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置の制御回路およびスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、直流の入力電源・トランスの一次コイル間にスイッチング手段を設け、スイッチング手段をオン/オフすることでトランスに電磁誘導を起こし、二次コイルに生じる交流を整流することで電圧変換をおこなう。スイッチング電源装置では、オフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際には、オン/オフ周波数を高い周波数から低い周波数に変化させる所謂ソフトスタートを行うことにより、スイッチング手段等のデバイスへの電気的ストレスの低減が可能となる。
【0003】
このような背景技術について、図15~17を用いて説明する。
図15は、従来のスイッチング電源装置1000の回路を説明するための図である。図16は、従来のスイッチング電源装置1000におけるソフトスタートを説明するための図である。図17は、従来のスイッチング電源装置1000における各信号のタイミングチャートを説明するための図である。
【0004】
図15に示すように、従来のスイッチング電源装置1000は、入力側の一次コイルW1、出力側の二次コイルW3及びW4を有するトランスTRN、直流入力電源VINと一次コイルW1との間に設けられたスイッチング手段SW、スイッチング制御部SWC11、基準周波数(電圧)信号VFBを生成する第1のコンデンサC4及びその周辺回路、SST信号を生成するのに使用される第2のコンデンサC5等を備える。
スイッチング制御部SWC11(スイッチング電源装置1000の制御回路)は、ソフトスタート制御部SFC11と、駆動タイミング生成部DRCとを有する。
ソフトスタート制御部(SFC11)は、SST制御部(SSTC11)と、IFSS電流制御部(IFSSC11)と、動作周波数制御部(MFC11)とを有する。ソフトスタート制御部(SFC11)は、スイッチング手段SWによるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に、オン/オフ周波数を徐々に変化させるソフトスタートの制御を行う。
駆動タイミング生成部DRCは、ソフトスタート制御部SFC11から出力される動作タイミング信号OUTを入力し、スイッチング手段SW(スイッチング素子Q1、Q2、これらは半導体スイッチ)をオン/オフさせる信号(ゲート電圧VGH、VGL)を出力する。
【0005】
詳しく説明する。
直流入力電源VINは、VIN・GND間に直列に接続された抵抗R1、R2で分圧され、入力電圧モニター信号端子VSENの入力電圧モニター信号VSENとなる(「VSEN」は入力電圧モニター信号端子の意味としても、入力電圧モニター信号の意味としても用いることとする)。
スイッチング制御部(制御回路)SWC11のBURST端子はBURST動作制御用の端子である。外部からBURST信号が入力される(「BURST」はBURST端子の電圧の意味としても用いることとする)。
ASTBY端子は動作モード切替用端子である。動作モード信号ASTBYが入力される(「ASTBY」は動作モード信号の意味としても用いることとする)。ASTBY端子に入力された信号は、モード制御信号ASMとして動作周波数制御部MFC11に入力される。
SST端子はソフトスタートコンデンサ接続用端子である。コンデンサC5(ソフトスタートコンデンサ)に接続される(「SST」はSST端子の電圧あるいはソフトスタート信号の意味としても用いることとする)。
FB端子は基準周波数信号用端子である。FB端子には基準周波数信号VFBが出る。
【0006】
スイッチング電源装置1000の出力電圧(出力端子(陽極側)VO1・出力端子(陰極側)VO2間の電圧)は、出力検出部(図示せず)で検出される。出力電圧VO1が高くなるにつれてフォトダイオード(図示せず)を流れる電流(量)を増加させ、フォトダイオードから出射される光量を増加させる。
フォトダイオードから出射された光は、フォトトランジスタPC2で受光される。フォトトランジスタPC2は、受光した光量が増加するにつれ、フォトトランジスタPC2(のエミッタ・コレクタ間)を通過する電流(量)を増加させる。
フォトトランジスタPC2のコレクタは抵抗R4を介してFB端子に接続され、エミッタは接地されている。抵抗R3と第1のコンデンサC4は、それぞれ、FB端子・GND間に接続されている。
【0007】
スイッチング制御部SWC11(スイッチング電源装置1000の制御回路)は、スイッチング電源装置1000の出力電圧(VO1・VO2間電圧)が高くなるにつれてフォトトランジスタPC2を流れる電流が増加するのに応じて動作タイミング信号OUTを出力し、駆動タイミング生成部DRCを介して、ゲート電圧VGH、VGLを出力し、ハイサイド及びローサイドのスイッチング素子Q1、Q2をスイッチング制御することで、スイッチング電源装置1000の出力電圧に応じてスイッチング手段SWをスイッチング制御する。
【0008】
SST制御部SSTC11は、信号VSEN、BURST及びSSTに基づきソフトスタート信号SSを出力する。SST制御部SSTC11は、基準電源VRに接続された定電流源IT2を用いてコンデンサC5を充電し、SST信号の電圧に応じてソフトスタート信号SSが出力される。
IFSS電流制限部(IFSSC11)は、SST信号の電圧に応じてソフトスタート電流制御信号SSCを出力する。
【0009】
動作周波数制御部MFC11は、比較器COM1を有する。比較器COM1の非反転入力端子には基準周波数信号VFBが入力される。非反転入力端子にはMOSFETのトランジスタQ21のソースが接続され、トランジスタQ21のドレインは定電流源IT1を介して基準電源VRに接続されている。また、非反転入力端子にはMOSFETのトランジスタQ22のドレインが接続されている。トランジスタQ22のソースは接地されている。トランジスタQ22のゲートにはソフトスタート電流制御信号SSCが入力される。比較器COM1の反転入力端子には参照電源VR21、VR22がモード制御信号ASMの制御により交互に接続される。比較器COM1の出力端子は、論理積素子41に入力される。論理積素子41にはソフトスタート制御信号SSと、比較器COM1の出力との論理積を動作タイミング信号OUTとして駆動タイミング生成部DRCに出力するとともに、トランジスタQ21のゲートに出力する。
【0010】
トランジスタQ21はオン/オフスイッチとして動作する。比較器COM1の出力とソフトスタート信号SSの出力とについて論理積素子41で論理積をとり、その信号がゲートに入力されることで、オン/オフする。トランジスタQ21がオンすると、定電流源IT1から定電流を流し、オフすると定電流が流れるのを遮断する。
【0011】
例えば、SST信号が0.5Vに上昇してソフトスタートを開始する際には、ドレイン・ソース間のスイッチング抵抗を入力電圧VINが大きい場合より大きくして入力電圧VINが大きい場合より第1のコンデンサC4の放電電流IFSSを小さくし、オン/オフ周波数が低い状態からソフトスタートを開始する。SST信号の電圧が0.5Vから徐々に上昇するにしたがって、トランジスタQ22のドレイン・ソース間のスイッチング抵抗を大きくして放電電流IFSSを次第に、より一層小さくし、オン/オフ周波数を低くしていく。SST信号の電圧の上昇が終了して飽和すると、トランジスタQ22のドレイン・ソース間のスイッチング抵抗の変化も終了させ放電電流IFSSも一定にし、オン/オフ周波数を一定にすることで、ソフトスタートが終了する。
【0012】
動作周波数制御部MFC11は、モード制御信号ASM、ソフトスタート信号SS及びソフトスタート電流制御信号SSCを入力して、入力信号VFB(基準周波数信号)の周波数を変化させて(補正して)動作タイミング信号OUTを出力することにより、入力電源の電圧の大きさ、あるいは更に動作モードによってソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御する。
【0013】
スイッチング手段SWは、NチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるハイサイドのスイッチング素子Q1及びローサイドのスイッチング素子Q2で構成されている。スイッチング素子Q1のドレインD1は入力電源の電圧VINに接続されている。スイッチング素子Q1のソースS1とスイッチング素子Q2のドレインD2とが接続され、トランスTRNの一次コイルW1の一端側と接続されている。スイッチング素子Q2のソースS2は、共振コンデンサC11を介して一次コイルW1の他端側と接続されている。共振コンデンサC11は、ソースS1・ドレインD2接続部と、ソースS2との間に、一次側コイルW1と直列になるように挿入される。
スイッチング素子Q1、Q2のゲートG1、G2には、それぞれゲート電圧VGH、VGLが印加され、スイッチング素子Q1、Q2をオン/オフスイッチングする。
【0014】
トランスTRNの二次側には、二次コイルW3とW4とが直列に接続されている。二次コイルW3の二次コイルW3・W4接続部と反対側の端部はダイオードD11のアノードに接続され、ダイオードD11のカソードが出力端子VO1に接続されている。二次コイルW4の二次コイルW3・W4接続部と反対側の端部はダイオードD12のアノードに接続され、ダイオード12のカソードがダイオードD11のカソードに接続されている。二次コイルW3・W4接続部は出力端子VO1に接続されている。これらにより、直流を出力し、出力端子VO1・VO2間に接続されたコンデンサC3で平滑化する。出力端子VO1・VO2間には負荷200が接続される。
【0015】
図16は、従来のスイッチング電源装置1000におけるソフトスタートを説明するための図であるが、図16に示すように、SST信号の電圧が上昇してVSST1(ソフトスタートを開始するSST信号の電圧値)になると、基準周波数信号VFBが上昇と下降と繰り返す発振波形となり、信号VGHとVGLとが交互に発生する。TJ11は、第1のコンデンサC4の充電期間であり、この期間は信号VGH及びVGLはHレベルとならず、スイッチング素子Q1、Q2は共にオフする。TH11は、第1のコンデンサC4の放電期間であり、この期間は信号VGH及びVGLは交互にHレベルとなり、スイッチング素子Q1、Q2は交互にオンする。矢印tは図面上で左から右向きに時間が経過することを表す。
【0016】
SST信号の電圧の上昇に従って、信号VFB(及び、VGH、VGL)の周期T11は長くなる。所謂ソフトスタートが行われる。SST信号の電圧がVSST2(ソフトスタートが終了するSST信号電圧値)に達すると、SST信号の電圧は上昇を止め、信号VFB(及び、VGH、VGL)の周期T11は一定になる。
なお、符号TSSKはソフトスタート期間、符号TSSTはソフトスタート開始時、符号TSSFはソフトスタート終了時を示す(他の図面でも同様)。
特開2013-38857号公報には、このようなソフトスタートについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2013-38857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明者らは、図15及び図16を用いて説明した従来のスイッチング電源装置1000について、電力損失を、より一層少なくすることを追求し、研究を重ねた。
【0019】
図17は、発明者等が研究した従来のスイッチング電源装置1000における各信号のタイミングチャートを説明するための図である。
上昇、下降を繰り返す基準周波数信号VFBが発生すると、ゲート電圧VGH、VGLが繰り返しHレベルになると共に、時間が経過するに従って、Hレベルのパルス幅が次第に拡大する。それに伴い、ドレイン電圧VDH(ハイサイドのスイッチング素子Q1のドレインD1・ソースS1間の電圧)及びドレイン電圧VDL(ローサイドのスイッチング素子Q2のドレインD2・ソースS2間の電圧)も交互にHレベルとなり、その幅も次第に拡大する。このようにしてスイッチング素子Q1、Q2はソフトスタートをしている。
【0020】
しかるに、ドレイン電流IDH(ハイサイドのスイッチング素子Q1のドレインD1・ソースS1間を流れる電流)及びドレイン電流IDL(ローサイドのスイッチング素子Q2のドレインD2・ソースS2間を流れる電流)を観察したところ、スイッチング手段がオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に(ソフトスタート開始時TSSTに)ドレイン電流IDH、IDLにサージ電流ISGが発生する場合があることを発見した。更に研究をしたところ、サージ電流ISGの発生は、直流入力電源VINの電圧と関係があり、電圧が低い場合に発生しやすいことが分かった。サージ電流の発生は、スイッチング手段SW(スイッチング素子Q1、Q2)に存在する浮遊容量等によるものと思われる。サージ電流が発生するとスイッチング電源装置1000の電力損失の低減を妨げる。(特許文献1のスイッチング電源装置には、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数と直流入力電源の入力電圧との関係についての開示乃至課題の提示はない。)
【0021】
そこで、本発明は、かかる発見を踏まえ、直流の入力電源の電圧が低電圧であっても、サージ電流の発生を抑制し電力損失がより一層少ないソフトスタートが可能なスイッチング電源装置(及びその制御回路)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
[1]本発明の制御回路は、
スイッチング電源装置の入力電源とトランスの入力側の一次コイル間に設けられたスイッチング手段をオン/オフさせる制御回路であって、
前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に、オン/オフ周波数を徐々に変化させるソフトスタートの制御を行うソフトスタート制御部を有し、
前記ソフトスタート制御部は、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように前記オン/オフ周波数を制御する
ことを特徴とする。
【0023】
ここで、スイッチング電源装置(100、1000)とは、直流の入力電源(VIN)・トランス(TRN)の一次コイル(W1)間にスイッチング手段(SW)を設け、スイッチング手段(SW)をオン/オフすることでトランス(TRN)に電磁誘導を起こし、二次コイル(W3、W4)に生じる交流を整流することで電圧変換をおこなう電源装置をいう。
ソフトスタートとは、スイッチング電源装置等で、当該装置が、オフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に、オン/オフ周波数を変化させることをいう。通常、高い周波数から低い周波数に変化させる。これにより、スイッチング電源装置のスイッチング手段等のデバイスへの電気的ストレスを低減させようとするものである。
ソフトスタート開始時とは、ソフトスタートが開始された時をいう。ソフトスタート終了時とは、ソフトスタートが終了した時をいう。必ずしも、いつ、何秒と厳密に定まっている時ではない。ソフトスタート期間中の最初の時期がソフトスタート開始時で、最後の時期がソフトスタート終了時である。
オン/オフ周波数の変化とは、周期の変化と同趣旨である。
【0024】
スイッチング手段とは、電気的接続をオン/オフ(接続/切断)するスイッチングする手段をいう。スイッチング手段としては、機械的スイッチ、リレー、リレースイッチ、半導体スイッチ等があるが、半導体スイッチであることが好ましい。半導体スイッチとは、MOSFET、IGBT等の半導体を使用したスイッチという。半導体スイッチはオン/オフを高速で切り替えることができるため、スイッチング電源装置のスイッチング手段として優れている。なお、スイッチング手段を構成する導体間には導体間に電圧を印加する等により浮遊容量が生じる。図1ではスイッチング手段としてのスイッチング素子Q1及びQ2をMOSFETで構成したが、MOSFETのスイッチング手段だけに浮遊容量が生ずるわけではない。
【0025】
[2]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、ノーマルモードで、前記入力電源の電圧が入力される際のソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御することが好ましい。
【0026】
ここで、ノーマルモードとは、スイッチング電源装置の動作モードの1種で、通常モードともいう。定格負荷で使用するときの動作モードである。定格負荷を100%とすると、例えば、80%~120%、更には20%~200%での動作モードである。
ノーマルモードでは、スイッチング素子Q1、Q2のオン時間幅が同じであるオン/オフのスイッチングを連続させる。
【0027】
[3]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、バーストモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御することが好ましい。
【0028】
ここで、バーストモードとは、スイッチング電源装置の動作モードの1種のモードである。負荷が0%付近の動作モードである。例えば、負荷0%~5%での動作モードである。
バーストモードでは、スイッチング素子Q1、Q2のオン/オフ停止及び連続したオン/オフを繰り返す。バーストモードでは、スイッチング素子Q1、Q2のオン/オフを連続させる場合、スイッチング素子Q1、Q2のオン時間幅を同じにしてもよいが、スイッチング素子Q1、Q2のオン時間幅を異ならせる(非対称とする)ようにしてもよい。
【0029】
[4]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、アクティブスタンバイモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように前記オン/オフ周波数を制御することが好ましい。
【0030】
ここで、アクティブスタンバイモードとは、スイッチング電源装置の動作モードの1種のモードである。負荷が0%付近と、100%付近との中間の負荷の場合の動作モードである。例えば、負荷5%~20%での動作モードである。
アクティブスタンバイモードは、ノーマルモードとバーストモードの中間の動作モードということもできる。
アクティブスタンバイモードでは、通常は、スイッチング素子Q1、Q2は連続したオン/オフを繰り返す。アクティブスタンバイモードでは、スイッチング素子Q1、Q2のオン/オフを連続させる場合、スイッチング素子Q1、Q2のオン時間幅を異ならせる(非対称とする)。
【0031】
[5]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、前記入力電源の電圧が低い場合には、前記電圧が高い場合より、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を低くするように前記オン/オフ周波数を制御することが好ましい。
【0032】
[6]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、前記スイッチング手段にサージ電流が流れない程度の周波数となるように、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を制御することが好ましい。「サージ電流が流れない程度」とは、サージ電流が全く流れない場合の他、わずかに流れる場合も含む。例えば、サージ電流が流れない0(A)とすることが最適であるが、本発明の課題を解決できる程度に少なくとも励磁電流のピーク値よりも低いと好適である。
【0033】
ここで、サージ電流とは、電気回路などに瞬間的に発生する大きな電流をいう。本願では、スイッチング手段SWのスイッチング素子Q1、Q2に流れるドレイン電流IDH、IDLで瞬間的に発生する大きな電流をいう(図17のサージ電流ISGを参照)。
【0034】
[7]本発明の制御回路においては、前記制御回路は、充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサの前記端子電圧に基づき、前記スイッチング手段をオン/オフさせる基礎となる基準周波数信号を発生するように構成され、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの充電時間又は放電時間の少なくとも一方を前記入力電源の電圧に応じて変化させることにより前記基準周波数信号を変化させ、これにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化するように制御することが好ましい。
【0035】
ここで、第1のコンデンサとは、充放電することにより端子電圧が変化するコンデンサである。図15でいうと、FB端子に接続されるコンデンサC4である(図11でも同様)。
スイッチング電源装置の制御回路SWC11(図15参照、図11の制御回路SWCでも同様)は、充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサC4の端子電圧に基づき、スイッチング手段SW(スイッチング素子Q1、Q2)をオン/オフさせる基礎となる基準周波数信号(電圧)VFBを発生するように構成されている(図16図17のゲート電圧VGH、VGL参照)。
第1のコンデンサ(C4)の充電時間又は放電時間の少なくとも一方を入力電源の電圧VINに応じて変化させると基準周波数信号VFBが変化する。これにより、スイッチング手段SW(スイッチング素子Q1、Q2)のオン/オフ周波数が変化する。従って、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が、入力電源の電圧VINに応じて変化する。
【0036】
[8]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電時間を変化させることにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御することが好ましい。
【0037】
[9]本発明の制御回路においては、前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電電流を変化させることにより前記第1のコンデンサの放電時間を変化させ、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御することができる好ましい。
【0038】
[10]本発明の制御回路においては、前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行すると充電を開始し、前記オン/オフ状態からオフ状態に移行すると放電をおこなう第2のコンデンサの端子電圧、及び、前記入力電源の電圧に応じて前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が変化するように、前記オン/オフ周波数を制御することが好ましい。
【0039】
ここで、第2のコンデンサとは、充放電することにより端子電圧が変化するコンデンサである。図15でいうと、SST端子に接続されるコンデンサC5である(図11でも同様)。第2のコンデンサ(C5)は、スイッチング手段SWによるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行すると充電を開始し、オン/オフ状態からオフ状態に移行すると放電をおこなう。第2のコンデンサ(C5)の端子電圧はSST信号となる(図9等で後述)。SST信号に基づきソフトスタート発振周波数が変化する(図8(A)(B)、図9(A)(B)等で後述)。SST信号の変化に合わせて放電電流IFSSの大きさが変化する(図9等で後述)。ソフトスタート期間TSSK中のゲート電圧VGH、VGLのオン/オフ周波数の変化は、入力電源の電圧VINに応じてSST信号の電圧が変化するように制御される。
【0040】
[11]本発明のスイッチング電源装置は、
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
次の制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
(1)スイッチング電源装置の入力電源とトランスの入力側の一次コイル間に設けられたスイッチング手段をオン/オフさせる制御回路であって、
前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行する際に、オン/オフ周波数を徐々に変化させるソフトスタートの制御を行うソフトスタート制御部を有し、
前記ソフトスタート制御部は、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
(2)上記(1)の制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、ノーマルモードで、前記入力電源の電圧が入力される際のソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御する制御回路。
(3)上記(1)の制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、バーストモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御する制御回路。
(4)上記(1)の制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、アクティブスタンバイモードの期間中、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、前記入力電源の電圧が低い場合には、前記電圧が高い場合より、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を低くするように前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
(6)上記(1)~(5)のいずれかの制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、前記スイッチング手段にサージ電流が流れない程度の周波数となるように、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
【0042】
[12]本発明のスイッチング電源装置は、
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサと、
次のいずれかに記載の制御回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0043】
(1)[1]~[6]のいずれかの制御回路で、
前記制御回路は、充放電することにより端子電圧が変化する第1のコンデンサの前記端子電圧に基づき、前記スイッチング手段をオン/オフさせる基礎となる基準周波数信号を発生させるよう構成され、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの充電時間又は放電時間の少なくとも一方を前記入力電源の電圧に応じて変化させることにより前記基準周波数信号を変化させ、これにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数を、前記入力電源の電圧に応じて変化させるように制御する制御回路。
(2)(1)の制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電時間を変化させることにより、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
(3)(2)の制御回路で、
前記ソフトスタート制御部は、前記第1のコンデンサの放電電流を変化させることにより前記第1のコンデンサの放電時間を変化させ、前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する制御回路。
【0044】
[13]本発明のスイッチング電源装置は、
入力側の一次コイル及び出力側の二次コイルを有するトランスと、
直流の入力電源と前記一次コイル間に設けられたスイッチング手段と、
充放電することにより端子電圧が変化する第2のコンデンサと、
次に記載の制御回路と、
を備えたことを特徴とする。
【0045】
(1)[1]~[9]のいずれかの制御回路で、
前記制御回路は、前記スイッチング手段によるスイッチングがオフ状態から連続的なオン/オフ状態に移行すると充電を開始し、前記オン/オフ状態からオフ状態に移行すると放電をおこなう第2のコンデンサの端子電圧、及び、前記入力電源の電圧に応じて前記ソフトスタート開始時における前記オン/オフ周波数が変化するように、前記オン/オフ周波数を制御する制御回路([10]の制御回路)。
なお、上記のスイッチング電源装置は、更に次のように分けられる。
(2)上記トランスと、上記スイッチング手段と、上記第2のコンデンサと、[1]~[6]の制御回路で[10]の制御を行う制御回路を備えたスイッチング電源装置。
(3)上記トランスと、上記スイッチング手段と、上記第1のコンデンサと、上記第2のコンデンサと、[7]~[9]の制御回路と、[10]の制御回路を備えたスイッチング電源装置。
【発明の効果】
【0046】
本発明のスイッチング電源装置(及びそのの制御回路)によれば、ソフトスタート制御部は、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御するため、直流の入力電源の電圧が低電圧であっても、サージ電流の発生を抑制し電力損失がより一層少ないソフトスタートが可能なスイッチング電源装置(及びその制御回路)を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)でスイッチング手段SWの動作を説明するための図である。図1(A)は、スイッチング手段SWの回路動作を説明するための図で、図1(B)は、入力電圧が高い場合(サージ電流ISGの発生なし)を説明するための図である。
図2】入力電圧が低い場合(サージ電流ISG発生有)を説明するための図である。
図3】入力電圧とドレイン電流IDL波形との関係を説明するための図である。図3(A)は入力電圧が低い場合のドレイン電流IDL波形を説明するための図で、図3(B)は入力電圧が高い場合のドレイン電流IDL波形を説明するための図である。
図4】VFB周波数とドレイン電流IDL波形等との関係を説明するための図である。図4(A)は放電電流IFSSを大きくして(IFSS=YmA)VFB周波数を高くした場合を示し、図4(B)は放電電流IFSSを小さくして(IFSS=XmA、X<Y)VFB周波数を低くした場合を示す。
図5】実施形態1で、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数を入力電源の電圧に応じて変化させた状態を説明するための図である。
図6】出力電圧の残り具合によるソフトスタート直後のドレイン電流IDL波形等を説明するための図である。図6(A)は出力電圧がある程度残っている時のドレイン電流IDL波形等を説明するための図で、図6(B)は出力電圧が残っていない時のドレイン電流IDL波形等を説明するための図である。
図7】放電電流IFSSの大きさを変えた場合の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図である。図7(A)は放電電流IFSSを大きくした場合(IFSS=YmA)の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図で、図7(B)は放電電流IFSSを小さくした場合(IFSS=XmA、X<Y)の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図である。
図8】入力電圧(VSEN電圧)とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図である。図8(A)は比較例を説明するための図で、図8(B)は実施形態1を説明するための図である。
図9】SST電圧とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図である。図9(A)は比較例を説明するための図で、図9(B)は実施形態1を説明するための図である。
図10】入力電圧(VSEN電圧)と放電電流IFSSとの関係を説明するための図である。図10(A)は比較例を説明するための図で、図10(B)は実施形態1を説明するための図である。
図11】実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)の回路を説明するための図である。
図12】実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)で、ノーマルモードの場合について説明するための図である。
図13】実施形態2に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)で、バーストモードの場合について説明するための図である。
図14】実施形態3に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)で、アクティブスタンバイモードの場合について説明するための図である。
図15】従来のスイッチング電源装置1000の回路を説明するための図である。
図16】従来のスイッチング電源装置1000におけるソフトスタートを説明するための図である。
図17】従来のスイッチング電源装置1000における各信号のタイミングチャートを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の制御回路およびスイッチング電源装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の回路、タイミングチャート等を厳密に反映したものではない。また、以下の実施形態の回路、タイミングチャート等は一例の回路等を示すものであり、本発明はこれらの回路等に限定されるものではない。
また、本願で1つの図面で用いた符号は他の図面でも同じ意味を有する。1つの図面で使用した符号が他の図面でも使用される場合、その符号についての説明は共通する。重複する説明は極力省略する。
【0049】
[実施形態1]
(1)概要
まず、図1図6を用いて本発明の概要について説明する。
図1は、実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)でスイッチング手段SWの動作を説明するための図である。図1(A)は、スイッチング手段SWの回路動作を説明するための図で、図1(B)は、入力電圧が高い場合(サージ電流ISGの発生なし)を説明するための図である。
図2は、入力電圧が低い場合(サージ電流ISG発生有)を説明するための図である。
実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)では、ソフトスタート制御部(後述の図11のSFC)は、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧VINに応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御する。
【0050】
図1(A)は、スイッチング電源装置100のスイッチング手段SWの箇所を抜き出した図である(図11参照)。図11中のスイッチング手段SWは、図15中のスイッチング手段SW11と同様の構成を有する。スイッチング手段SWは、スイッチング素子Q1、Q2を有し、トランスTRNの一次コイルW1に接続されている。ドレイン電圧VDH、VDL、ドレイン電流IDH、IDL及びゲート電圧VGH、VGLを図1(A)に示す。スイッチング素子Q1のドレインD1・ソースS1間には浮遊容量CHが存在し、スイッチング素子Q2のドレインD2・ソースS2間には浮遊容量CLが存在する(なお、「浮遊容量」は「寄生容量」とも称される)。
【0051】
詳しい説明は後述するが、図1(B)に示すように、入力電圧(VIN、図11及び図15参照)が高い場合、VFB等は、図1(B)に示すような波形であり、ドレイン電流IDH、IDLはサージ電流(図2のISG参照)のない正常な波形である。これに対し、入力電圧VINが低い場合、ドレイン電流IDH、IDLにはサージ電流ISGが発生することを発明者等は発見した(なお、図1(B)及び図2で、T1=T2、TJ1=TJ2、TH1=TH2)。実施形態1では、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御するソフトスタート制御部(図11のSFC参照)を設けることにより、入力電圧が低い場合であっても、図2に示すサージ電流ISGの発生を抑制するようにした。
図2は、図15でソフトスタート期間(TSSK)のうち、サージ電流ISGが発生しているソフトスタート開始時(TSST)の波形を抜き出して示したものである。
なお、図1(B)と図2でドレイン電流IDH及びIDLに対して符号10で示すのはトランスTRN(図11及び図15参照)の励磁電流である。
【0052】
まず、基準周波数信号VFBについて説明すると、第1のコンデンサC4(図11及び図15参照)が充放電すると、その端子電圧である基準周波数信号VFBが上昇と下降と繰り返す。
ここで、図1(B)で、TJ1は第1のコンデンサC4の充電期間であり、TH1は放電期間である。TJ1とTH1との和が周期T1である。同様に、図2で、TJ2は第1のコンデンサC4の充電期間であり、TH2は放電期間である。TJ2とTH2との和が周期T2である。(前述したように、図1(B)と図2で、T1とT2等の対応する期間は同じ)。
【0053】
そして、基準周波数信号VFBの放電期間(TJ1、TJ2)に対応してゲート電圧VGH、VGLが交互にHレベル(オン信号)となり、スイッチング素子Q1、Q2をオンさせる。基本的には、ゲート電圧VGHがHレベル、VGLがLレベルのとき、スイッチング素子Q1がオン、Q2がオフとなり、ドレイン電圧VDHがLレベル(VIN値)、VDLがHレベルで、ドレイン電流IDHが流れ、IDLが遮断される。
【0054】
入力電圧が高い図1(B)の場合について説明する。
図1(B)に示すタイミングtaで、ゲート電圧VGHがLレベルとなりオフ信号となると、スイッチング素子Q1のドレインD1・ソースS1間の浮遊容量CHが充電されドレイン電圧VDHが上昇していく。電源の入力電圧VINが高い場合には、ドレイン電流IDHが大きいためドレイン電圧VDHの上昇の傾きは大きい(充電が急速に行われる)。
タイミングtbでは、ドレインD1・ソースS1間の浮遊容量CHは充電が終了している。ドレイン電圧VDHが、入力電圧VINの値又はその近傍まで上昇し、ドレインD1・ソースS1間の浮遊容量CHを充電させるドレイン電流IDHの値はゼロまたはゼロ近傍になる。
タイミングtcでは、ゲート電圧VGLがHレベルとなり、スイッチング素子Q2がオンするタイミングであるが、ドレインD1・ソースS1間の浮遊容量CHは既に充分に充電しているため、急速に充電させるための電流は殆ど必要なく、ドレイン電流IDHとして通常より大きなサージ電流ISGが発生することはない。
ゲート電圧VGLがLレベルとなりオフ信号となる場合も同様である。
なお、図1(B)では、図2に示すサージ電流ISGは発生していないが、仮にサージ電流ISGが発生した場合であっても、サージ電流ISGは、サージ電流ISGのピーク値(図2のIDH-2、IDL-2)が励磁電流10のピーク値(図1及び図2のIDH-1、IDL-1)より小さくなるようにすることが好ましい。
【0055】
これに対し、入力電圧が低い図2の場合について説明する。
図2は、図15図17で説明した従来のスイッチング電源装置1000(及びその制御回路)と同様の構成で制御する場合の波形である。
図2に示すタイミングtdで、ゲート電圧VGHがLレベルとなりオフ信号となると、スイッチング素子Q1のドレインD1・ソースS1間の浮遊容量が充電されドレイン電圧VDHが上昇していく。電源の入力電圧が低い場合には、ドレイン電流IDHが小さいためドレイン電圧VDHの上昇の傾きは小さい(充電がゆっくり行われる)。
タイミングteでは、ドレインD1・ソースS1間の浮遊容量は充電途中である。
タイミングtfでは、ゲート電圧がHレベルとなり、スイッチング素子Q2がオンするタイミングであるが、ドレインD1・ソースS1間の浮遊容量はまだ充分に充電していないため、急速に充電させるため、ドレイン電流IDHには通常より大きなサージ電流ISGが発生する。
ゲート電圧VGLがLレベルとなりオフ信号となる場合も同様である。
このようにして、ドレイン電流IDH、IDLには通常より大きなサージ電流ISGが発生する。
【0056】
図1(B)及び図2に示すように、入力電圧の高低によりサージ電流ISGが発生しなかったり(図1(B))、発生したりする(図2)が、実施形態1では、後述のスイッチング制御部SWC(図11参照)により、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が入力電源の入力電圧VINに応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することで、入力電圧が低い場合であってもサージ電流ISGの発生を抑制する。
例えば、図2のように、入力電圧VINが低い場合、図1のように入力電圧VINが高い場合より、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数を低くするようにオン/オフ周波数を制御する。このようにすると、充電又は放電に充分時間をかけることができるため、サージ電流ISGの発生を抑制できる。
【0057】
ここで入力電圧VINとドレイン電流(IDL、IDH)波形との関係を、図3を用いて説明する。
図3は、入力電圧VINとドレイン電流IDL波形等との関係を説明するための図である。図3(A)は入力電圧VINが低い場合のドレイン電流IDL波形等を説明するための図で、図3(B)は入力電圧VINが高い場合のドレイン電流IDL波形等を説明するための図である。図3(A)に示すように、入力電圧VINが低い場合、ドレイン電圧VDLが小さいのに対応して、ドレイン電流IDLの最大値(励磁電流10の最大値)も小さい。これに対し、図3(B)に示すように、入力電圧VINが高い場合、ドレイン電圧VDLが大きいのに対応して、ドレイン電流IDLの最大値(励磁電流10の最大値)も大きい。
なお、ドレイン電流としてIDLを使って説明したが、ドレイン電流がIDHの場合もドレイン電流がIDLの場合と同様である(その場合、上記の説明はドレイン電圧VDLをVDHに置き換えたものとなる)。
【0058】
図4は、VFB周波数とドレイン電流IDL波形等との関係を説明するための図である。図4(A)は放電電流IFSSを大きくして(IFSS=YmA)VFB周波数を高くした場合を示し、図4(B)は放電電流IFSSを小さくして(IFSS=XmA、X<Y)VFB周波数を低くした場合を示す。
図7等を用いて後述するが、図4(A)は、第1のコンデンサC4の放電電流IFSSの大きさをYmAと大きくして、ソフトスタート開始時(SST電圧が0.5Vでソフトスタート開始)におけるVFB周波数を高くした場合(3ZkHz、図8参照)について説明する図である。
これに対し、図4(B)は、放電電流IFSSの大きさをYmAより小さいXmAとして(X<Y)、ソフトスタート開始時(SST電圧が0.5Vでソフトスタート開始)におけるVFB周波数を低くした場合(2ZkHz、図8参照)について説明する図である。
図4(A)に示すように、VFB信号の周波数が高い場合、ゲート電圧VGH、VGLの周波数が高く、ドレイン電圧VDL及びドレイン電流IDLの周波数が高くなる。これに対し、図4(B)に示すように、図4(A)に比べてVFB信号の周波数が低い場合、ゲート電圧VGH、VGLの周波数が低く、ドレイン電圧VDL及びドレイン電流IDLの周波数が低くなる。
【0059】
図4(A)と図4(B)のドレイン電流IDLを比較すると、図4(A)のようにオン/オフ周波数が高い場合(周期が短い場合)にはドレイン電流IDLのピーク部分21ではドレイン電流IDLのピーク値22が小さいのに対し、図4(B)のようにオン/オフ周波数が低い場合(周期が長い場合)にはドレイン電流IDLのピーク部分31のドレイン電流IDLのピーク値32は大きい。また、第1のコンデンサC4の放電期間(TH11、図16参照)でのドレイン電流IDLの上昇の傾き(傾斜の勾配)は、図4(A)に比べて図4(B)の場合は傾き(勾配の傾斜)が急峻になっている。ドレイン電圧VDLの傾きも急峻となっている。ドレイン電流IDHについても同様である。
これにより、図4(A)の場合より図4(B)の場合の方が浮遊容量(CH、CL)への充電がしやすくなり、サージ電流ISGの発生を抑制できる。
【0060】
図5は、実施形態1で、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数を入力電源の電圧(VIN)に応じて変化させた状態を説明するための図である。ソフトスタート開始時TSSTにおいて、オン/オフ周波数を入力電源の電圧VINに応じて変化させた結果、ドレイン電流IDH、IDLには、図17のようなサージ電流ISGは発生していない。
【0061】
なお、発明者等は、入力電圧VINが低い場合において、更に、ソフトスタート開始時における出力電圧(VO1・VO2間の電圧、図11及び図15参照)の残り具合でドレイン電流IDLの電流のピーク値(あるいは電流の上昇の傾き)に関係することを発見した。
図6は、出力電圧の残り具合によるソフトスタート直後のドレイン電流IDL波形等を説明するための図である。図6(A)は出力電圧がある程度残っている時のドレイン電流IDL波形等を説明するための図で、図6(B)は出力電圧が残っていない時のドレイン電流IDL波形等を説明するための図である。
【0062】
図6(A)と図6(B)のドレイン電流IDLを比較すると、図6(A)のようにソフトスタート開始時に出力電圧がある程度残っている時にはドレイン電流IDLのピーク値が小さいのに対し、図6(B)のようにソフトスタート開始時に出力電圧が程度残っていない時にはドレイン電流IDLのピーク値が大きい。また、第1のコンデンサC4の放電期間(TH11、図16参照)でのドレイン電流IDLの上昇の傾き(傾斜の勾配)は、図6(A)に比べて図6(B)の時は傾き(傾斜の勾配)が急峻になっている。ドレイン電圧VDLの傾きも急峻となっている。ドレイン電流IDHについても同様である。
【0063】
これにより、図6(A)の時より図6(B)の時の方が浮遊容量(CH、CL)への充電がしやすくなるため、入力電圧VINが低い場合、ソフトスタート開始時における出力電圧の残りを考慮することにより、サージ電流ISGの発生を一層抑制できる。
そして、ソフトスタート開始時における出力電圧の残りがある場合、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することによりサージ電流の発生を効果的に抑制できる。
【0064】
一部繰り返しになるが、念のため、本発明に係る制御の作用効果について、図1及び図2を中心に説明する。
本発明では、入力電圧VINが低い場合には、ソフトスタート開始時のソフトスタート発振周波数を低くなるように制御する。
すると、図1(B)の周期T1が図示された箇所で説明すると、ハイサイドのドレイン電流IDHのピーク値が高くなり(図1(B)のタイミングta参照)、これに続くローサイドのドレイン電流IDLが負電流の状態から増加する(タイミングtb参照)。
このとき、ローサイドのスイッチング素子Q2の寄生容量CL(図1(A)参照)への充電電流が大きくなり、ローサイドのドレイン電圧VDLの下降傾斜が大きくなる(図1(B)のタイミングta~tbでのドレイン電圧VDLを参照)。
すると、ローサイドのドレイン電圧VDLが零となるタイミングが前倒しとなる(図2ではタイミングteでドレイン電圧VDLがまだ零となっていないのに対し、図1(B)ではタイミングtbでドレイン電圧VDLが零となっており零となるタイミングが前倒しされている)。
すると、前倒しされたドレイン電圧VDLが零となるタイミング(図1(B)に示すタイミングtb)又は時間的猶予を与えたそれより少し遅いタイミング(タイミングtc)でローサイドのスイッチング素子Q2のゲート電圧VGLをHレベルにすると(図1(B)参照)、ローサイドのスイッチング素子Q2の寄生容量CL(図1(A)参照)には電荷が残っていないため、図2に示すようなサージ電流ISGの発生を抑制できる。また、スイッチング素子Q2のスイッチング損失を低減できる。
【0065】
図1(B)の周期T1が図示された箇所の次の周期では、ローサイドのスイッチング素子Q2がハイサイドのスイッチング素子Q1に置き換わり、同様の動作をする。上記した説明で、IDHをIDL、IDLをIDH、Q2をQ1、CLをCH、VDLをVDHに置き換えた説明となる。すると、前倒しされたドレイン電圧VDHが零となるタイミング又は時間的猶予を与えたそれより少し遅いタイミングでハイサイドのスイッチング素子Q1のゲート電圧VGHをHレベルにすると、ハイサイドのスイッチング素子Q1の寄生容量CH(図1(A)参照)には電荷が残っていないため、図2に示すようなサージ電流ISGの発生を抑制できる。また、スイッチング素子Q1のスイッチング損失を低減できる。
なお、後述する図7図10は上記動作をもたらすための制御回路の動作を説明するための図である。
【0066】
(2)放電電流IFSSと基準周波数信号VFBの周波数との関係
図7は、放電電流IFSSの大きさを変えた場合の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図である。図7(A)は放電電流IFSSを大きくした場合の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図で、図7(B)は放電電流IFSSを小さくした場合の基準周波数信号VFBの周波数特性(周波数変化)を説明するための図である。
図7に示す放電電流IFSSは、第1のコンデンサC4(図15参照)の放電電流である(端子FBを介した放電電流)。YmA及びXmAは、放電電流IFSSの電流値で、XmA<YmAのように、XmAがYmAより小さく、YmAがXmAより大きな大小関係にある。
図7(A)に示すように、放電電流IFSSをYmAと大きくすると基準周波数信号VFBの周波数は高くなる(図1(A)に示す周期T1が短くなる)。これに対し、図7(B)に示すように、放電電流IFSSをYmAに比べて小さなXmAと小さくすると基準周波数信号VFBの周波数は図7(A)の場合より低くなる(周期T1が図7(A)の場合より長くなる)。
なお、ハイサイドのゲート電圧VGH、ローサイドのゲート電圧VGL、及び、基準周波数信号VFBのタイミングは、図1(B)と同様である。
このように、放電電流IFSSを大きくしたり(図7(A):YmA)、小さくしたりする(図7(B):XmA)ことにより、基準周波数信号VFBの周波数を変えることができる。
【0067】
(3)入力電圧(VSEN電圧)とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係
図8は、入力電圧(VSEN電圧)とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図である。図8(A)は比較例を説明するための図で、図8(B)は実施形態1を説明するための図である。
図8(A)、(B)のグラフの横軸はVSEN(信号)電圧であるが、これは、図11及び図15に示すように、入力電圧VINを抵抗R1及びR2で分割した入力電圧VINの比例電圧であり、入力電圧VINのモニター電圧である。
縦軸は、ソフトスタート期間TSSK(図5図16及び図17参照)におけるスイッチング手段SW(Q1、Q2)のオン/オフ周波数に対応する基準周波数信号VFBの周波数である。
従って、図8(A)、(B)は、入力電圧(VIN)とソフトスタート期間におけるVFB周波数(オン/オフ周波数)との関係を示す図である。
【0068】
図8(A)、(B)中に記載されるSST電圧0.5Vはソフトスタート開始電圧であり、SST電圧が、0.5Vで、ソフトスタートが開始されることを示す。SST電圧2Vはソフトスタート終了電圧であり、SST電圧が、2Vとなると、ソフトスタート(期間)が終了することを示す。
ある入力電圧(VSEN)で、SST電圧が0.5Vでソフトスタートが開始され、2Vになると終了する。点線の矢印は、ソフトスタート期間TSSKで、SST電圧0.5Vでソフトスタートが開始(ソフトスタート開始時TSST(図5図16参照))された後、SST電圧2Vでソフトスタートが終了(ソフトスタート終了時TSSF(図16参照))するまでの移行期間を示す。この点線矢印に沿ってVFB周波数(オン/オフ周波数)が変化する。
【0069】
図8(A)に示す比較例では、入力電圧(VSEN電圧)がいずれの値であっても、ソフトスタート開始時TSST(SST電圧0.5V)の周波数は3ZkHzで、ソフトスタート終了時TSSF(SST電圧2V)の周波数は1ZkHzである。
これに対し、図8(B)に示す実施形態1では、入力電圧(VSEN電圧)が高い場合(VSEN電圧4.5Vの場合)には、図8(A)の比較例と同様に、ソフトスタート開始時TSST(SST電圧0.5V)の周波数は3ZkHzであるが、入力電圧(VSEN電圧)が低い場合(例えば、VSEN電圧1Vの場合)には、図8(A)の比較例と異なり、ソフトスタート開始時TSST(SST電圧0.5V)の周波数が3ZkHzより低い2ZkHzである(ソフトスタート終了時TSSF(SST電圧2V)の周波数は、図8(A)の比較例と同様に1ZkHz)。
【0070】
詳しく説明する。まず、SST電圧等について説明する(図8(A)の比較例及び図8(B)の実施形態1で共通する内容)。SST電圧はSST信号の電圧であり、第2のコンデンサC5の端子電圧である(図11及び図15参照)。第2のコンデンサC5は、入力電圧VINがオフからオン状態に変化した場合等において、充電され、電圧を上昇させ、一定期間後に上昇を停止し、入力電圧VINがオンからオフ状態に変化すると放電する。SST電圧がある値(0.5V)になると、高いオン/オフ周波数でソフトスタートが開始され、SST電圧の上昇に従ってスイッチング手段SW(Q1、Q2)のオン/オフ周波数(基準周波数信号VFBの周波数に対応)を徐々に低くし、SST信号の電圧がある値(2V)に達して飽和すると、ソフトスタート期間が終了する。
なお、第2のコンデンサC5の電圧(SST電圧)が0V以上で0.5V未満では、ソフトスタート信号SSはLレベルである(図15参照)。第2のコンデンサC5の電圧が0.5V以上になると、ソフトスタート信号SSはHレベルである。第2のコンデンサC5の電圧が0.5V~2Vがソフトスタート期間(TSSK)であるが、第2のコンデンサC5の電圧が2Vを超えても、ソフトスタート信号SSはHレベルのままである。
【0071】
図8(A)の比較例について説明すると、VSEN電圧が1Vの場合、SST電圧が0.5V(ソフトスタート開始電圧)になるとソフトスタートが開始される(ソフトスタート開始時TSST(図5図16等参照))。ソフトスタート開始時TSSTの基準周波数信号VFBの周波数(スイッチング手段SW(Q1、Q2)のオン/オフ周波数に対応)は3ZkHzである。
ソフトスタート開始後にSST電圧が上昇していくと、VFBの周波数は3ZkHzから次第に低下し、2ZkHzとなり更に低下する。そして、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になると、VFBの周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する。
ソフトスタート期間(TSSK)におけるVFBの周波数は点線の矢印のように移行する。VSEN電圧が1Vの場合、点線矢印が、横軸がVSEN電圧1Vの箇所で上から下に向かう矢印となる。
VSEN電圧が1V以外の他の電圧(例えば、2V、3V、4V、4.5V)であっても、VSEN電圧が1Vの場合と同様に、SST電圧が0.5V(ソフトスタート電圧)になると3ZkHzでソフトスタートが開始され、その後、SST電圧が次第に上昇していくと、VFBの周波数は3ZkHzから次第に低下し、2ZkHzとなり更に低下する。そして、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になると、VFBの周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する。
上から下に向かう点線矢印は、VSEN電圧1Vの箇所であっても、VSEN電圧4.5Vのときと同様に、VFBの周波数が3ZkHzで始まり1ZkHzで終了する矢印となる。
つまり、図8(A)の比較例の場合、VSEN電圧(入力電圧)の電圧の大きさに関係なく、ソフトスタート期間TSSKにおけるVFBの周波数(オン/オフ周波数)は、3ZkHzで始まり1ZkHzで終了する。
【0072】
次に図8(B)の実施形態1について説明すると、VSEN電圧が1Vの場合、SST電圧が0.5V(ソフトスタート開始電圧)になると、VFBの周波数は、図8(A)の比較例の3ZkHzより低い2ZkHzの周波数でソフトスタートが開始される。ソフトスタート開始後にSST電圧が上昇していくと、VFBの周波数は2ZkHzから次第に低下し、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になると、VFBの周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する。ソフトスタート開始時のVFB周波数は図8(A)の比較例と異なるが、ソフトスタート終了時の周波数は同じ(1ZkHz)である。
VSEN電圧が4.5Vの場合には、図8(A)の比較例と同様に、SST電圧が0.5V(ソフトスタート開始電圧)になると、VFB周波数は3ZkHzでソフトスタートが開始される、その後、SST電圧が上昇していくと、VFBの周波数は3ZkHzから次第に低下し、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になると、VFBの周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する。
【0073】
しかし、VSEN電圧が1V~4.5Vの間では、SST電圧が0.5V(ソフトスタート開始電圧)の場合のVFB周波数は、2ZkHz(VSEN電圧1Vの場合)と、3ZkHz(VSEN電圧4.5Vの場合)との間の、VSEN電圧に対応してリニアに変化した周波数となる。
図8(B)で、上から下に向かう点線矢印は、VSEN電圧が異なっていてもソフトスタート終了時におけるVFB周波数は同じ(3ZkHz)であるが、VSEN電圧が異なるとソフトスタート開始時におけるVFB周波数は異なる(VSEN電圧1~4.5Vで2ZkHz~3ZkHz間の異なる周波数となる)。
このように、実施形態1では、ソフトスタート制御部(後述の図11、SFC)は、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数、入力電圧モニター信号VSENの電圧、即ち、入力電源の電圧VINに応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御する。
【0074】
(4)SST電圧とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係
図9は、SST電圧とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図である。図9(A)は比較例を説明するための図で、図9(B)は実施形態1を説明するための図である。
図9は、図8の入力電圧(VSEN電圧)とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図(グラフ)を、VSEN電圧(入力電圧VIN)をパラメーターとしてSST(端子)電圧とソフトスタート期間におけるVFB周波数との関係を説明するための図(グラフ)として記載した図(グラフ)である。
図9では、入力電圧VINが高い場合としてVSEN電圧4.5Vの場合と、入力電圧VINが低い場合としてVSEN電圧1Vの場合の2つの場合を例にして(パラメーターとして例示し)図示(グラフ化)している。
【0075】
図9(A)に示す比較例では、入力電圧VINが高い場合(VSEN電圧4.5Vの場合)も、入力電圧VINが低い場合(VSEN電圧1Vの場合)も、SST(端子)電圧-ソフトスタート期間におけるVFB周波数の関係(周波数特性)は変わらない。
入力電圧VINが高い場合(VSEN電圧4.5Vの場合)であっても、入力電圧VINが低い場合(VSEN電圧1Vの場合)であっても、点線矢印で示すソフトスタート開始~終了への移行に沿って、SST電圧が0.5V(ソフトスタート電圧)になると同じ高い周波数3ZkHzでソフトスタートが開始され、その後、SST電圧が次第に上昇していくと、VFBの周波数は3ZkHzから次第に低下し、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になると、VFBの周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する。
【0076】
これに対し、図9(B)に示す実施形態1では、入力電圧VINが高い場合(VSEN電圧4.5Vの場合)には、図9(A)に示す比較例と同様のVFB周波数特性をとるが、入力電圧VINが低い場合(VSEN電圧1Vの場合)には、図9(A)に示す比較例の場合と異なり、SST電圧が0.5V(ソフトスタート電圧)で、比較例の3ZkHzの周波数より低い2ZkHzでソフトスタートが開始され、その後、SST電圧が次第に上昇していくと、VFBの周波数は2ZkHzから次第に低下し、SST電圧が2V(ソフトスタート終了電圧)になるとVFB周波数は1ZkHzとなり、ソフトスタート期間TSSKが終了する(比較例と同様に、ソフトスタート終了時のVFB周波数は1ZkHzである)。
VSEN電圧が1V~4.5Vの間の電圧では、SST電圧0.5V(ソフトスタート開始電圧)におけるVFB周波数は、VSEN電圧1Vの場合の2ZkHz(VSEN電圧1V)と、VSEN電圧4.5Vの場合の3ZkHzの間をVSEN電圧に応じて按分した周波数となる。SST電圧2V(ソフトスタート終了電圧)におけるVFB周波数はVSEN電圧が1V~4.5Vの間のいずれの電圧の場合も変わらず1ZkHzである。
【0077】
(5)入力電圧(VSEN電圧)と放電電流IFSSとの関係
図10は、入力電圧(VSEN電圧)と放電電流IFSSとの関係を説明するための図である。図10(A)は比較例を説明するための図で、図10(B)は実施形態1を説明するための図である。
【0078】
実施形態1のスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)では、入力電源の電圧V1Nに応じて第1のコンデンサC4から放電する電流IFSSの大きさを変える。
図10(A)(比較例)では、VSEN(信号)電圧の大きさ(入力電圧VINの大きさ)に関係なく、第1のコンデンサC4から放電する電流IFSSの大きさは同じYmAである。そのため、ソフトスタート開始時における基準周波数信号VFBの周波数はVSEN(信号)電圧の大きさ(入力電圧VINの大きさ)に関係なく同じである(ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が入力電圧VINに応じて変化しない)。
これに対し、図10(B)(実施形態1)では、VSEN(信号)電圧の大きさ(入力電圧VINの大きさ)により、第1のコンデンサC4から放電する電流IFSSの大きさが変わるため、ソフトスタート開始時における基準周波数信号VFBの周波数がVSEN(信号)電圧の大きさ(入力電圧VINの大きさ)により変わる。
【0079】
例えば、VSEN(信号)電圧が4.5Vの場合(入力電圧VINが高い場合)、放電電流IFSSが大きい(YmA)のに対し、VSEN(信号)電圧が1Vの場合(入力電圧VINが低い場合)、放電電流IFSSは小さい(XmA、X<Y)。従って、VSEN(信号)電圧が1Vの場合(入力電圧VINが低い場合)には、VSEN(信号)電圧が4.5Vの場合(入力電圧VINが高い場合)に比べ、放電電流IFSSが小さいから、その分、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が低くなる(低い周波数から始まり、次第に、より一層低い周波数に変化する)。
【0080】
なお、放電電流IFSSが変化するVSEN(信号)電圧の範囲(1V~4.5V)で、VSEN(信号)電圧が最も小さい1Vの場合(入力電圧VINが低い場合、放電電流IFSSがXmA)と、VSEN(信号)電圧が最も大きい4.5Vの場合(入力電圧VINが高い場合、放電電流IFSSがYmA)との間では、放電電流IFSSの大きさはリニア的に変化する。
【0081】
(6)スイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)の回路
図11は、実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)の回路を説明するための図である。
スイッチング電源装置100は、トランスTRN、スイッチング手段SW、スイッチング制御部SWC、第1のコンデンサC4及びその周辺回路、第2のコンデンサC5等を備える。トランスTRN、スイッチング手段SW、第1のコンデンサC4及びその周辺回路、第2のコンデンサC5等を備えるのは、従来のスイッチング電源装置1000(図15)と同様であるが、従来のスイッチング電源装置1000がスイッチング制御部SWC11を備える代わりにスイッチング制御部SWCを備える点が異なる。
そして、スイッチング制御部SWCは、ソフトスタート制御部SFCと、駆動タイミング生成部DRCを有する。駆動タイミング生成部DRCを有するのは従来のスイッチング制御部SWC11(図15参照)と同様であるが、ソフトスタート制御部SFC11の代わりにソフトスタート制御部SFCを有する点が異なる。
ここで、ソフトスタート制御部を比較すると、従来のソフトスタート制御部SFC11(図15参照)が、SST制御部(SSTC11)と、IFSS電流制御部(IFSSC11)と、動作周波数制御部(MFC11)とを有するのに対し、実施形態1のソフトスタート制御部SFC(図11)は、SST制御部(SSTC)と、IFSS電流制御部(IFSSC)と、動作周波数制御部(MFC)とを有する。
なお、図15で説明したスイッチング電源装置1000で使用したのと同じ符号は同じ意味を有し、図15の説明した内容と重複する内容については説明を極力省略する。
【0082】
ソフトスタート制御部SFC(図11)について説明すると、SST制御部(SSTC)は、第2のコンデンサC5と接続され、入力電圧モニター信号VSENと、バースト制御信号BURSTを入力し、ソフトスタート信号SSを出力する。
IFSS電流制御部(IFSSC)は、バースト制御信号BURSTと、ソフトスタート信号SSと、モード制御信号ASMと、SST信号を入力し、ソフトスタート制御信号SSCを出力する。
動作周波数制御部(MFC)は、第1のコンデンサC4と接続され、ソフトスタート制御信号SSCと、ソフトスタート信号SSと、モード制御信号ASMを入力し、動作タイミング信号OUTを出力する。
【0083】
(7)ノーマルモードで適用した場合
図12は、実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)で、ノーマルモードの場合について説明するための図である。
外部からの動作モード信号ASTBYは低い電圧で入力され、スイッチング電源装置100がノーマルモードで動作するように指令される。信号BURSTはLレベルである。入力電圧VINがオフ状態からオン状態になると、入力電圧VINに対応する信号VSENもLレベルからHレベルになり、SST信号の電圧が上昇を開始し、放電電流IFSSも、ある値から次第に小さな値に減少する。そして、ソフトスタート期間TSSKにおいて、基準周波数信号VFBは高い周波数から次第に低い周波数に変化し、ゲート電圧VGH、VGLのHレベル、Lレベルの繰り返し(オン/オフ周波数)もそれに合わせて変化する。信号VSENがLレベルからHレベルに変化した場合、Hレベルの高さ(入力電圧モニター信号VSENの大きさ)により、放電電流IFSSの大きさも変化する。それにより、ソフトスタート開始時TSSTのオン/オフ周波数が入力電圧VINの大きさに応じて変化する。
【0084】
[実施形態2]
図13は、実施形態2に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)で、バーストモードの場合について説明するための図である。
実施形態2に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)は、基本的には図11に示す回路を含め、実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)と同様の構成を有するが、外部から入力される動作モード信号ASTBYにより、バーストモードの動作モードを有する点が異なる。
なお、図13上に、ASTBY信号の電圧として、VA1、VA2及びVA3が記載されている。この他に、明細書中に電圧VA0を記載した。これらの電圧の大小関係は、VA0<VA1<VA2<VA3である。
また、図13上には、BURST信号の電圧として、VB1<VB2の大小関係を有する、VB1とVB2が記載されている。
【0085】
実施形態2に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)では、動作モード信号ASTBYが電圧VA3以上となり、バーストモードで動作する。BURST端子には電圧VB2まで上昇し、電圧VB2になると下降し、再び上昇することを繰り返す概ノコギリ刃的な信号が印加される。
BURST端子の電圧がVB1以下に下降すると、SST信号の電圧が0Vから上昇を開始する。SST信号の電圧が0.5Vになると、発振が開始され、基準周波数信号VFBの発振波形が出て、ゲート電圧VGH、VGLがHレベル、Lレベルを繰り返すソフトスタートを開始する。
【0086】
実施形態2に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)では、動作モード信号ASTBYの電圧がVA3以上、かつ、信号BURSTの電圧がVB2以上となると入力補正機能をオンさせる。ここで、入力補正機能とは、ソフトスタート開始時TSSTにおけるオン/オフ周波数が入力電源の入力電圧VINに応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することをいう。
入力電圧モニター信号VSENが短時間オフで動作モード信号ASTBYの電圧が低下しない場合(VA3以上の場合)には、入力補正機能はオン状態を継続する。
動作モード信号ASTBYの電圧がVA3未満かつ、かつ、信号BURSTの電圧がVB2未満となると入力補正機能はオフする。
【0087】
入力補正機能がオン状態である期間では、ソフトスタート期間TSSKの初期のソフトスタート開始時TSSTに、放電電流IFSSは、入力補正機能がオフ状態である期間の場合に比べ、小さな電流値から更に小さな電流値に減少する。即ち、入力補正機能がオンの場合より、オン/オフ周波数が低い状態から(周期が長い状態から)ソフトスタートを開始する。
なお、ソフトスタート時における出力電圧の残り具合について図6を用いて説明したが、バーストモードでは、ソフトスタート開始時における出力電圧の残りが生じやすいため、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することによりサージ電流の発生を効果的に抑制できる。
【0088】
[実施形態3]
図14は、実施形態3に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)で、アクティブスタンバイモードの場合について説明するための図である。
実施形態3に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)は、基本的には図11に示す回路を含め、実施形態1に係るスイッチング電源装置100(及びその制御回路SWC)と同様の構成を有するが、外部から入力される動作モード信号ASTBYによりアクティブスタンバイモードの動作モードを有する点が異なる。
【0089】
実施形態3に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)では、動作モード信号ASTBYの電圧がVA1~VA3になるとアクティブスタンバイモードで動作する。
ある一定の入力電源電圧になると、SST信号の電圧が0Vから上昇を開始する。SST信号の電圧が0.5Vになると、発振が開始され、基準周波数信号VFBの発振波形が出て、ゲート電圧VGH、VGLがHレベル、Lレベルを繰り返すソフトスタートを開始する。
【0090】
実施形態3に係るスイッチング電源装置(及びその制御回路)では、動作モード信号ASTBYの電圧がVA2以上、かつ、SST信号の電圧が1.5V以上となると入力補正機能をオンさせる。
入力電圧モニター信号VSENが短時間オフで動作モード信号ASTBYの電圧が低下しない場合(VA1以上の場合)には、入力補正機能はオン状態を継続する。
動作モード信号ASTBYが2.2V未満、かつ、SST信号の電圧が1.5V未満となると入力補正機能はオフする。
【0091】
入力補正機能がオン状態である期間では、ソフトスタート期間(TSSK)の初期のソフトスタート開始時(TSST)に、放電電流IFSSは、入力補正機能がオフ状態である期間の場合に比べ、小さな電流値から更に小さな電流値に減少する。即ち、入力補正機能がオンの場合より、オン/オフ周波数が低い状態から(周期が長い状態から)ソフトスタートを開始する。
なお、ソフトスタート時における出力電圧の残り具合について図6を用いて説明したが、アクティブスタンバイモードでは、短時間の入力電圧(VI)の低下の際に、ソフトスタート開始時における出力電圧の残りが生じやすいため、ソフトスタート開始時(TSST)におけるオン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することによりサージ電流の発生を効果的に抑制できる。
また、ノーマルモードと、アクティブスタンバイモードと、バーストモードとを比較すると、ソフトスタート時における出力電圧の残り具合は、バーストモードが一番残りやすく、次にアクティブスタンバイモードが残りやすく、その次がノーマルモードの場合である。従って、バーストモードの場合、ソフトスタート開始時(TSST)におけるオン/オフ周波数が前記入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することによるサージ電流の発生を最も効果的に抑制でき、その次にアクティブスタンバイモードの場合、その次にノーマルモードの場合となる。
【0092】
[実施形態4]
実施形態4は実施形態1におけるスイッチング素子Q1、Q2を次のように変更した実施形態である。
実施形態1で、スイッチング素子Q1、Q2をMOSFETの代わりに、IGBT(Insulated-Gate-Bipolar-Transistorの略、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を使用した実施形態。
実施形態2で、スイッチング素子Q1、Q2をMOSFETの代わりに、IGBTを使用した実施形態。
実施形態3で、スイッチング素子Q1、Q2をMOSFETの代わりに、IGBTを使用した実施形態。
【0093】
以上、本発明を上記した実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0094】
(1)上記した実施形態1~4における回路(図11参照)、スイッチング素子Q1、Q2等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において適宜変更してもよい。
【0095】
(2)上記した実施形態1~4においては、スイッチング手段(SW)をハーフブリッジ構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フルブリッジ構成としてもよい。
すなわち、上記した実施形態1~4においては、直流入力電源(VIN)・一次コイル(W1)の他端側間に(共振コンデンサC11を介して)直列に配置したスイッチング素子Q1及びQ2の接続部を一次コイル(W1)の一端側に接続し、スイッチング素子Q1及びQ2をオン/オフするハーフブリッジ構成とした(図11等参照)が、これを、例えば、直列に配置したスイッチング素子Q11及びQ12と、同じく直列に配置したスイッチング素子Q13及びQ14と、を設け、スイッチング素子Q11・Q12の接続部を一次コイル(W1)の一端側に、スイッチング素子Q13・Q14の接続部を(共振コンデンサC11を介して)一次コイル(W1)の他端側に接続し、スイッチング素子Q11のQ12との接続部との反対側は、スイッチング素子Q13のQ14との接続部との反対側と接続し、スイッチング素子Q12のQ11との接続部との反対側は、スイッチング素子Q14のQ13との接続部との反対側と接続するフルブリッジ構成とする(Q11、Q12、Q13及びQ14は図示せず)。そして、スイッチング素子Q11及びQ14は、ハーフブリッジの場合のスイッチング素子Q1と同じタイミングで、同時にオン/オフする。同様に、スイッチング素子Q12及びQ13は、ハーフブリッジの場合のスイッチング素子Q2と同じタイミングで、同時にオン/オフする。このようなフルブリッジ構成としてもよい。フルブリッジにすると、大電力のコンバータに適する。
【0096】
(3)上記した実施形態1~4においては、入力電源の電圧に応じて第1のコンデンサC4の放電期間を変化させ、それに応じてオン/オフ周波数を変化させるようにして、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御したが、これを、入力電源の電圧に応じて第1のコンデンサC4の充電期間を変化させ、それに応じてオン/オフ周波数を変化させるようにして、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御してもよい。
詳しく説明すると、実施形態1~4においては、入力電源(VI)の電圧に応じて第1のコンデンサ(C4)の放電電流を変化させることで放電期間(TH1)を変化させ、放電期間(TH1)に対応してスイッチング手段(SW)をオン/オフさせて(放電期間TH1中、ゲート電圧VGH、VGLを交互にHレベルにして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオンさせて)スイッチング手段(SW)のオン/オフ周波数を変化させたが、これを、入力電源(VI)の電圧に応じて第1のコンデンサC4の充電電流を変化させることで充電期間(TJ1)を変化させ、充電期間(TJ1)に対応してスイッチング手段(SW)をオン/オフさせて(充電期間TJ1中、ゲート電圧VGH、VGLを交互にHレベルにして、スイッチング素子Q1、Q2を交互にオンさせて)スイッチング手段(SW)のオン/オフ周波数を変化させるようにしてもよい(図11図1(B)、図7等参照)。
このようにしても、ソフトスタート開始時におけるオン/オフ周波数が入力電源の電圧に応じて変化するようにオン/オフ周波数を制御することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
100、1000…スイッチング電源装置、SWC、SWC11…スイッチング電源装置の制御回路(スイッチング制御部)、TRAN…トランス、W1…一次コイル、W3、W4…二次コイル、C11…共振コンデンサ、D11、D12…ダイオード、VO1…出力端子(陽極側)、VO2…出力端子(陰極側)、200…負荷、SW…スイッチング手段、Q1、Q2…スイッチング素子、D1、D2…ドレイン、S1、S2…ソース、G1、G2…ゲート、CH、CL…浮遊容量、VGH、VGL…ゲート電圧、VDH、VDL…ドレイン電圧、IDH、IDL…ドレイン電流、ISG…サージ電流、VIN…直流の入力電源の入力電圧、IT1、IT2…定電流源、MFC、MFC11…動作周波数制御部、IFSS…放電電流、IFSSC、IFSSC11…IFSS電流制御部、SSTC、SSTC11…SST制御部、DRC…駆動タイミング生成部、SFC、SFC11…ソフトスタート制御部、VSEN…入力電圧モニター信号(端子)、VFB…基準周波数信号、SST…SST信号(端子)、ASTBY…動作モード信号(端子)、TJ1、TJ2、TJ11…充電期間、TH1、TH2、TH11…放電期間、T1、T2、T11…周期、SS…ソフトスタート信号、SSC…ソフトスタート電流制御信号、OUT…動作タイミング信号、VR…基準電源、VR21、VR22…参照電源、COM1…比較器、Q21、Q22…トランジスタ、R1、R2、R3、R4…抵抗、C3…コンデンサ、C4…第1のコンデンサ、C5…第2のコンデンサ、PC2…フォトトランジスタ、ta、tb、tc、td、te、tf…タイミング、TSSK…ソフトスタート期間、TSST…ソフトスタート開始時、TSSF…ソフトスタート終了時、VSST1…ソフトスタートを開始するSST信号電圧値、VSST2…ソフトスタートが終了するSST信号電圧値、41…論理積素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17