(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】アクセルペダル用安全装置、および、これを備えた自動車の運転装置。
(51)【国際特許分類】
B60K 26/02 20060101AFI20231010BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20231010BHJP
G05G 7/00 20060101ALI20231010BHJP
G05G 9/00 20060101ALI20231010BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60K26/02
G05G1/30 E
G05G7/00 C
G05G9/00 Z
B60T7/04 A
(21)【出願番号】P 2019133175
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519263280
【氏名又は名称】畔上 勝嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】畔上 勝嗣
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第95/031349(JP,A1)
【文献】特開2004-084624(JP,A)
【文献】特開2018-203163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/00 - 26/04
G05G 1/30 - 1/50
G05G 7/00 - 7/16
G05G 9/00 - 9/10
B60T 7/04 - 7/06
F02D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルを踏んだときの前記アクセルペダルの移動量に基づいてエンジン出力を調節する出力調節手段を含む自動車の運転装置に備えられ
たアクセルペダル用安全装置であって、
前記アクセルペダルを回動可能に支持する第1アームと、前記第1アームと連動可能に構成されるとともに前記出力調節手段に回動可能に接続された第2アームとを含み、両アームのうち少なくとも一方に取り付けられたマグネットの吸着力によって
前記両アームが連結状態で回動することにより前記アクセルペダルの移動を前記出力調節手段に伝達するアーム機構と、
前記第1アームの回動角が予め設定した第1の角度に達したときに前記第2アームに当接することで前記連結状態を解除して前記アクセルペダルの移動が前記出力調節手段に伝達されないように前記第2アームの回動範囲を規制する
規制位置と、前記第2アームに当接しないことにより前記連結状態が解除されない退避位置とに変位可能に構成される規制部とを備える、
アクセルペダル用安全装置。
【請求項2】
前記第1アームの回動角が予め設定した第2の角度に達したときに
前記運転装置に含まれるブレーキ装置を作動させる連動手段を備える、
請求項1に記載のアクセルペダル用安全装置。
【請求項3】
前記連動手段は、前記規制部が前記規制位置に位置している場合には前記ブレーキ装置に設けられた係合部に係合することにより前記ブレーキ装置を作動させるとともに、前記規制部が前記退避位置に位置している場合には前記係合部に係合しない位置に移動することにより前記ブレーキ装置を作動させないように構成される、
請求項
2に記載のアクセルペダル用安全装置。
【請求項4】
前記規制位置または前記退避位置に前記規制部を移動させるための駆動部を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のアクセルペダル用安全装置。
【請求項5】
請求項1
から4のいずれか1項に記載のアクセルペダル用安全装置を備える自動車
の運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダル用安全装置、および、これを備えた自動車用運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両を運転するためにはアクセルペダルを踏み込んで車両を発進等させる必要がある。しかしながら、通常の運転状況において、アクセルペダルを最大可動位置まで踏み込んで、すなわち、アクセルの開度が最大となる位置までアクセルペダルを踏み込んだ状態で車両を運転しなければならない状況はあまり発生しない。
【0003】
一方、高齢者などが自動車等の車両を運転する際、ブレーキペダルを踏んでいるつもりで誤ってアクセルペダルを踏むことがある。このような場合において、アクセルペダルを踏んでいることに気づかず、運転者本人はブレーキペダルを踏んでいるものと思い込んでいる場合もある。
【0004】
こうした状況下では、運転者本人はブレーキをかけて減速しようとしているにも関わらず間違ってアクセルペダルを踏んでいるため車両が停止しない状態が生じ得る。そして、運転者は、車両を停止させようとしてアクセル開度が最大となる位置付近までアクセルペダルをより強く踏み込んでしまい、運転者の意に反して車両を急発進、急加速等させることにより暴走させてしまうことがある。
【0005】
特許文献1には、先端側にブレーキペダルを備えるとともに右側面側にアクセルパッドを備えたサブペダルを備え、サブペダルに右足を載せた状態で爪先を左右に動かすことによりアクセルパッドを介してアクセルを操作し、サブペダルを踏み込む動作によりブレーキペダルが押し下げられることで制動力が作用するように構成されたアクセルペダルの安全装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の安全装置では、アクセル操作およびブレーキ操作を行う場合における足の動作方向を異なるものとすることによりアクセルの誤操作を防止することはできるものの、通常のアクセル操作のようにアクセルペダルを踏み込む動作によりアクセル操作を行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、アクセルペダルを踏むときのアクセルペダルの移動量が大きい場合にアクセルペダルを用いたアクセル操作を規制することができるアクセルペダル用安全装置、および、これを備えた自動車の運転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアクセルペダル用安全装置は、アクセルペダルを踏んだときのアクセルペダルの移動量に基づいてエンジンの出力を調節する出力調節手段を含む自動車の運転装置に備えられたアクセルペダル用安全装置であって、アクセルペダルを回動可能に支持する第1アームと、第1アームと連動可能に構成されるととともに出力調節手段に回動可能に接続された第2アームとを含み、両アームのうち少なくとも一方に取り付けられたマグネットの吸着力によって両アームが連結状態で回動することによりアクセルペダルの移動を出力調節手段に伝達するアーム機構と、第1アームの回動角が予め設定した第1の角度に達したときに第2アームに当接することで連結状態を解除してアクセルペダルの移動が出力調節手段に伝達されないように第2アームの回動範囲を規制する規制位置と、第2アームに当接しないことにより連結状態が解除されない退避位置とに変位可能に構成される規制部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のアクセルペダル用安全装置において、第1アームの回転角が予め設定した第2の角度に達したときに運転装置に含まれるブレーキ装置を作動させる連動手段を備えてもよい。
【0011】
本発明のアクセルペダル用安全装置において、連動手段は、規制部が規制位置に位置している場合にはブレーキ装置に設けられた係合部に係合することによりブレーキ装置を作動させるとともに、規制部が退避位置に位置している場合には係合部に係合しない位置に移動することによりブレーキ装置を作動させないように構成してもよい。
【0012】
本発明のアクセルペダル用安全装置において、規制位置または退避位置に規制部を移動させるための駆動部を備えてもよい。
本発明の自動車の運転装置は、上記発明のいずれかに係るアクセルペダル用安全装置を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアクセルペダル用安全装置および自動車の運転装置によれば、アクセルペダルを回動可能に支持する第1アームの回動角が予め設定した第1の角度に達したときに規制部が第2アームに当接することにより両アームの連結状態を解除し、アクセルペダルの移動が出力調節手段に伝達されないように規制することができる。これにより、第1の角度を超えてアクセルペダルを踏み込んだときにアクセルペダルの踏み込み量がエンジンの出力調節手段に伝達されるのを防ぐことができる。この結果、アクセルペダルを踏むときの同ペダルの移動量が大きい場合にアクセルペダルを用いたアクセル操作を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は本発明の一実施形態であるアクセルペダル用安全装置を備えた自動車用運転装置の全体構成図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す構成からブレーキ装置を取り除いた状態を示す図である。
図1(c)は、同図(a)に示すA方向から見たときの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、第1アームとその周辺の構成を示す図である。
図2(b)は、第2アームとその周辺の構成を示す図である。
【
図3】
図1(a)に示すアクセルペダル用安全装置の規制部を退避位置に移動させた状態を示す図である。
【
図4】
図1(a)に示すB方向から見たときの自動車用運転装置の構成を示す側面図と、同側面図に含まれる第1アーム、第2アーム、係合アームの位置関係を示す模式図を四角枠内に示す図である。
【
図5】第1アームの回転角が角度αよりも小さくなる位置までアクセルペダルを踏み込んだ状態における自動車用運転装置の側面構成を
図4と同様に示す図である。
【
図6】第1アームの回転角が角度αとなる位置までアクセルペダルを踏み込んだときの状態を
図4と同様に示す図である。
【
図7】第1アームの回転角が角度βとなる位置までアクセルペダルを踏み込んだときの構成を
図4と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態であるアクセルペダル用安全装置について、図面を参照しながら説明する。図中に示す「X」は自動車用運転装置10の長手方向と直交する水平方向を、「Y」は自動車用運転装置10の長手方向と略平行な方向を、「Z」はX方向およびY方向に各々直交する方向を示す。
【0016】
図1(a)は、アクセルペダル用安全装置40を含む自動車用運転装置10の全体構成図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す自動車用運転装置10からブレーキ装置を取り除いた状態を示す図である。
図1(c)は、
図1(b)に示すA方向から見たときの構成を示す側面図である。
【0017】
図1(a)~
図1(c)に示すように、自動車用運転装置10は、エンジンの出力を調節するアクセル装置20と、アクセルペダル用安全装置(以下、単に「安全装置」と表記する)40と、制動力を作用させるブレーキ装置30を備える。アクセル装置20は、アクセルペダル22と、アクセルペダル22の踏み込み(移動)量に基づいてエンジンの出力を調節する位置検知部(出力調節手段)24とを備える。位置検知部24は、アクセルペダル22の踏み込み量(移動量)を不図示のECU(エンジンコントロールユニット)の伝達する機能を有する。より具体的には、位置検知部24は、アクセルペダル22の踏み込み量に対応する後段にて詳述する第2アーム54の原点位置G(
図4参照)からの回動角を電気信号に変換して上記ECUに送信する。なお、本実施形態では、位置検知部24を出力調節手段としているが、例えば、エンジンのスロットルバルブの絞り量を調節するアクセルワイヤを出力調節手段として用いてもよい。
【0018】
ブレーキ装置30は、ブレーキペダル32を支持するブレーキアーム34と、ブレーキアーム34を回動可能に支持する回動支持部36とを備える。回動支持部36は、ブレーキアーム34を回動可能に支持しており、ブレーキペダル32の踏み込み量に基づいて制動力を作用させる機能を有する。また、回動支持部36は、ブレーキアーム34に対して踏み込み方向と反対方向に付勢力を作用させているためブレーキペダル32に踏力が作用していない場合にはブレーキアーム34は制動力を作用させない非制動位置に保持される。
【0019】
安全装置40は、アクセルペダル22の踏み込み量を位置検知部24に回動角として伝達するアーム機構50と、アーム機構50の回動範囲を規制する規制部60を含む。
【0020】
アーム機構50は、アクセルペダル22を回動可能に支持する第1アーム52と、位置検知部24にアクセルペダル22の踏み込み量を伝達する機能を有し第1アーム52と連動可能に構成された第2アーム54と、第1アーム52を回転可能に支持する支持部56とを含む。
【0021】
図2(a)は、第1アーム52および同アーム52の周辺構成を示す図である。
図2(a)に示すように、第1アーム52は、一端にアクセルペダル22が取り付けられた正面視において略L字状をなすアーム本体52aと、このアーム本体52aのアクセルペダル22と離間した位置に取り付けられた軸52bを含む。この軸52bは、アーム本体52aの下側に同本体52aと略直交するように溶接固定されている。また、軸52bには、軸52bおよびアーム本体52aと略直交方向に延びる連結棒52cが取り付けられており、この連結棒52cを介して第2アーム54と連結するためのマグネットプレート52dが取り付けられている。このマグネットプレート52dは、例えば、ネオジム磁石などを含んで構成されており、正面視において略長方形状をなすように形成されている。
【0022】
一方、支持部56には、
図1(c)に示すように、軸52bを支持する支持プレート56a,56b,56cが両端側と中間部とに各々設けられており、各支持プレート56a,56b,56cに設けられた貫通孔(不図示)に軸52bが挿通されることにより第1アーム52を回転自在に支持している。
【0023】
また、支持プレート56cは、上端の一部が略水平方向に突き出して突出部56c-1を形成している。この突出部56c-1は、第1アーム52に当接する位置に設けられている。ここで、第1アーム52の他端部には、
図1(c)に示すように弾性バネ53が取り付けられており、同バネ53の弾性力によって突出部56c-1に接近する方向へ第1アーム52の他端部は付勢されている。このため、第1アーム52に踏力が作用していない状態において、第1アーム52は他端側が突出部56c-1に当接する初期位置Fに位置決めされる。上記構成により、アクセルペダル22に踏力が作用していない場合において、同ペダル22を支持する第1アーム52は初期位置Fに保持される。
【0024】
図2(b)は、第2アーム54および同アーム54の周辺構成を示す図である。
図2(b)に示すように、第2アーム54は、正面視において略U字状に形成されており、一端に連結板54aが取り付けられ、他端側が位置検知部24に回動可能な状態で接続される。位置検知部24はアクセルペダル22の踏み込み方向P(
図4参照)と反対の方向Q(
図6参照)に同ペダル22を付勢している。また、第2アーム54は、連結板54aの近傍に溶接等の固定手段により回転支持ブラケット54bが取り付けられている。
【0025】
この回転支持ブラケット54bは、筒状に構成されており、
図1(a)および
図1(b)に示すように第1アーム52の軸52bが回転自在な状態で挿通される。上記構成により、第1アーム52の軸52b周りに両アーム52,54を回転可能な状態で取り付けることができる。このため、両アーム52,54を連結状態で回動させることが可能となる。
【0026】
規制部60は、
図1(a)~
図1(c)に示すように、2本のガイドバー62,64と、両ガイドバー62,64を連結する側板66と、ガイドバー64に固定されたガイド板68とを含む。この規制部60は、第1アーム52が初期位置Fから角度α(第1の角度)(
図6参照)を超えて踏み込み方向P(
図4参照)に回動する(換言すると、第1アーム52の初期位置Fからの回動角が角度αに達した)ときに、第2アーム54が踏み込み方向Pに回動しないように第2アーム54の回動範囲を規制する。ここで、角度αの大きさは、通常運転時のアクセル操作において常用されるアクセルペダル22の踏み込み量で同ペダル22を踏んだときの第1アーム52の回動角度よりも大きくなるように設定するのが好ましい。これにより、アクセルペダル22の踏み込み量が常用範囲を超えた場合に第2アーム54の回動を規制できる。各ガイドバー62,64は、各々支持プレート56a,56bに設けられた孔(不図示)にX方向にスライド可能な状態で挿通されており、軸端を側板66に各々溶接固定される。
【0027】
ガイド板68は、上部が第2アーム54の連結板54aと上下方向に向き合うよう略L字状に折れ曲がっており、ネジ69を螺合するためのネジ孔(不図示)が上部に設けられている。このネジ69は、アクセルペダル22が踏み込まれてアーム機構50が回動するのに伴って初期位置Fから角度α(
図6参照)だけ第1アーム52が回動したときに第2アーム54の連結板54aに当接する規制位置H1に配置されている。
【0028】
これにより、第2アーム54が角度αを超えて回動しないように回動範囲を規制できる。また、ネジ69のねじ込み量を調整することにより第2アーム54の回動範囲を調整することも可能である。
【0029】
上記構成により、アクセルペダル22が回動するのに伴って第1アーム52が角度αだけ回動すると、第2アーム54の連結板54aにネジ69のねじ先が当接し、その当接力によって第1アーム52のマグネットプレート52dから第2アーム54の連結板54aが引き離される。この際、第2アーム54には弾性バネ53の付勢力が作用しているため、この付勢力によって反対方向Q(
図6参照)に第2アーム54が回動する。
【0030】
図3は、安全装置40の規制部60を退避位置H2に移動させた状態を示す図である。
図3に示すように、規制部60は、上述した連結板54aをX方向にスライドさせる駆動ユニット70を含む。この駆動ユニット70は、駆動モータ72と、駆動モータ72の駆動力によってX方向にスライドする引き出しアーム74から構成される。この引き出しアーム74は、一端が規制部60の側板66に連結されている。そして、駆動モータ72は、引き出しアーム74を介して連結板54aをX方向にスライドさせることにより、上述した連結板54aにネジ69が当接して第2アーム54の回動範囲を規制する規制位置H1(
図1(a)参照)、または、ネジ69が第2アーム54と当接しない退避位置H2に移動させる機能を有する。
【0031】
これにより、第2アーム54の連結板54aに一時的にネジ69が当接しないようにできる。このため、第1アーム52の回動角が角度αを超える位置までアクセルペダル22を踏み込んだ場合においても、アクセルペダル22の踏み込み量に応じた信号を位置検知部24から不図示のECU(エンジンコントロールユニット)に発信させてエンジン出力を調節することができる。
【0032】
本実施形態では、駆動ユニット70を用いて規制部60を規制位置H1から退避位置H2に移動可能に設けているが、退避位置H2に移動させる必要が無い場合には駆動ユニット70を設けなくともよい
【0033】
また、安全装置40は、
図1(b)に示すように、アクセルペダル22の踏み込み動作に連動してブレーキ装置30を作動させる機能を有する係合アーム(連動手段)80と、この係合アーム80を上述したガイド板68とともにX方向にスライドさせる機能を有するガイド板82を備える。この係合アーム80は、第1アーム52の軸52bに挿通されたブラケット84aと、ブラケット84aに取り付けられたアーム本体84bと、アーム本体84bの先端側に形成された係合部84cとから構成され、略L字状の外観を呈する。係合部84cは、側面から見たときに弧状に形成されており、第2アーム54が回動するのに伴って回動し、ブレーキアーム34の側面に取り付けられた係合用ローラ34aに係合する。これにより、ブレーキアーム34を踏み込み方向P(
図4参照)へ回動させることができる。
【0034】
また、係合アーム80は、第1アーム52が初期位置Fから角度β(第2の角度)(
図7参照)だけ回動したときに制動力が作用するようにブレーキアーム34の係合用ローラ34aとの係合位置が設定されている。本実施形態において、角度βは、上述した角度αよりも大きくなるように設定されているが、角度βを角度αと同じ大きさとなるように設定してもよい。これにより、アクセルペダル22が踏み込まれていない状態で制動力を作用させることが可能となる。また、
図1(c)に示すように、係合部84cには弾性バネ86が取り付けられ、この弾性バネ86の弾性力によって支持部56側に係合アーム80が付勢されている。
【0035】
ブラケット84aは、
図1(b)に示すように、略円柱状の外観を呈する中空構造を有し、第1アーム52の軸52bが挿通されている。また、ブラケット84aには、軸52bに取り付けられた係合ピン52b-1が係合可能なスリット84a-1が軸端部に設けられている。そして、このスリット84a-1に係合ピン52b-1が係合することによって軸52bの回転動作に連動して係合アーム80をブレーキアーム34の
図1(a)に示す係合用ローラ34aに接近または離間する方向に回動させることができる。
【0036】
ここで、上述した規制部60が規制位置H1から退避位置H2にスライドするときの係合アーム80の動作について説明する。
図1(b)に示すように、係合アーム80は、第1アーム52が初期位置Fに位置している場合には、アーム本体84bが上述した各ガイド板68,82に挟み込まれるように配置されている。そして、規制部60が規制位置H1から退避位置H2に移動するときには、ガイド板68に押されることにより
図1に示す係合用ローラ34aと係合可能な係合位置J1から
図3に示す係合用ローラ34aと係合しない非係合位置J2にスライドすることとなる。非係合位置J2では、上述したブラケット84aもX方向に移動するためスリット84a-1と第1アーム52の軸52bの係合状態も解除される。このため、係合アーム80は軸52bの回動動作に連動して回動しない状態となる。
【0037】
また、退避位置H2から規制位置H1に移動するときには反対側のガイド板82によって押されて規制位置H1に係合アーム80はスライドすることとなる。このように、規制部60のスライド移動に連動して係合アーム80を係合位置J1と非係合位置J2との間でスライド移動させることができる。
【0038】
続いて、
図4~
図7を用いて安全装置40の動作について説明を行う。
図4は、
図1(a)に示すB方向から見たときの自動車用運転装置10の構成を示す側面図と、同側面図に含まれる第1アーム52、第2アーム54、係合アーム80の位置関係を示す模式図を四角枠内に示す図である。この模式図では、第1アーム52を1点鎖線、第2アーム54を破線、係合アーム80を2点鎖線で各々示している。
図5は、アクセルペダル22を踏み込んだときに第1アーム52の回動角が角度αよりも小さい状態においてB方向から見た自動車用運転装置10の側面構成を
図4と同様に示す図である。
図6は、アクセルペダル22を踏み込んだときに第1アーム52の回動角が角度αに達したときの状態を
図4と同様に示す図である。
図7は、アクセルペダル22を踏み込んだときに第1アーム52の回動角が角度βに達したときの状態を
図4と同様に示す図である。
【0039】
図4に示すように、アクセルペダル22に踏力が作用していない状態、すなわち、第1アーム52が初期位置Fに位置している状態では、第2アーム54は上述した位置検知部24の付勢力によって原点位置Gに保持される。また、
図4に示すように、第1アームが初期位置Fに位置している場合には、双方のアーム52,54はマグネットプレート52dに連結板54aが吸着することで連結状態に保持されている。
【0040】
そして、
図4に示す第1アーム52が初期位置Fに位置している状態から
図5に示すアクセルペダル22が踏まれて第1アーム52の回転角が角度α未満となる範囲で回動した場合は、アクセルペダル22が支持されている第1アーム52のマグネットプレート52dに第2アーム54の連結板54aが吸着した状態に維持される。このため、第1アーム52の回動に伴って第2アーム54も回動し、アクセルペダル22の踏み込み量に応じた電気信号が位置検知部24で生成される。
【0041】
一方、
図6に示すように、アクセルペダル22の踏み込み量が増大し、第1アーム52の初期位置F(
図4参照)からの回動角が角度αに達するとネジ69が第2アーム54の連結板54aに当接する。このため、連結板54aが第1アーム52のマグネットプレート52dと分離され、第2アーム54は位置検知部24の付勢力によって原点位置Gまで反対方向Qに沿って回動する。
【0042】
これにより、アクセルペダル22が大きく踏み込まれた場合にアクセルペダル22の踏み込み量に対応した電気信号がエンジンコントロールユニットに発信されるのを防ぐことができる。
【0043】
また、上述したように第2アーム54は、第1アーム52と分離されると位置検知部24の付勢力によって原点位置Gに復帰した状態となる。一方、アクセルペダル22から足を離すと第1アーム52も弾性バネ53の付勢力によって初期位置F(
図4参照)に復帰し、双方のアーム52,54が再び連結状態となりアクセル操作可能な状態となる。このため、アクセルペダル22から足を一旦離すだけでアクセルペダル22を用いたアクセル操作を再開することが可能である。
【0044】
また、第2アーム54の回動動作に伴って係合アーム80も係合用ローラ34aと係合する位置まで回動しブレーキアーム34を踏み込み方向Pに少し回動させるが、同アーム34の回動角が角度βよりも小さいため制動力は未だ発生していない状態である。
【0045】
図7に示すように、アクセルペダル22の踏み込み量がさらに増大し、第2アーム54の初期位置F(
図4参照)からの回動角が角度βに達すると第1アーム52の軸52bの回転に伴って係合アーム80の係合部84cが係合用ローラ34aに係合することによってブレーキアーム34が踏み込み方向Pに回動して制動力を作用させることができる。これにより、運転者がアクセルペダル22をブレーキペダル32と勘違いして強く踏み込んだような場合において第1アーム52を初期位置Fに復帰させた上で制動力を発生させ自動車を停止させることができる。
【0046】
本実施形態の安全装置40によれば、アクセルペダル22を回動可能に支持する第1アーム52の回動角が角度αに達したときに規制部60が第2アーム54に当接することにより両アーム52,54の連結状態を解除し、アクセルペダル22の移動量が位置検知部24に伝達されないように規制することができる。これにより、角度αを超えてアクセルペダル22が踏み込まれた場合に、アクセルペダル22の踏み込み量が位置検知部24に伝達されるのを防ぐことができる。この結果、アクセルペダル22を踏んだときのアクセルペダル22の移動量が大きい場合に同ペダル22を用いたアクセル操作を規制できる。
【0047】
また、例えば、シフトレバーを操作して自動車を駐車場から前進させて出場する際、運転者がシフトレバーの操作を誤り、シフトレバーを後退にセットしてしまうと前進すべきところ自動車を後退させてしまうことが起こり得る。この際、自動車のタイヤが車止めに接触した状態で駐車されていると、運転者がアクセルペダルを踏んでも自動車は後退しようとするものの、タイヤが車止めを乗り越えることができず自動車が一時的に動かない状況が発生し得る。このような状況で、アクセルペダルを強く踏み込むと、車止めをタイヤが一気に乗り越え、そのまま自動車後方の建物に突っ込んでしまうおそれもある。
【0048】
このような場合においても、安全装置40によれば角度αを超えてアクセルペダル22が踏み込まれることにより同ペダル22を用いたアクセル操作を一時的に遮断できるため暴走事故の発生を抑制できるという利点がある。
【0049】
本実施形態の安全装置40では、アクセルペダル22を踏み込んだときに第1アーム52の回動角が角度βに達するとブレーキ装置30の係合用ローラ34aに係合アーム80が係合することにより制動力を作用させる例を挙げているが、アクセルペダル22の踏み込み動作に連動して制動力を作用させる必要が無い場合には、係合アーム80を設けないものとしてもよい。
【0050】
本実施形態の安全装置40では、第1アーム52にマグネットプレート52dを設けて両アーム52,54を連結させているが、第2アーム54にマグネットプレートを設けるようにしてもよいし、双方のアーム52,54にマグネットプレートを設けて連結させるようにしてもよい。
【0051】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 自動車用運転装置
20 アクセル装置
22 アクセルペダル
24 位置検知部(出力調節手段)
30 ブレーキ装置
32 ブレーキペダル
34 ブレーキアーム
34a 係合用ローラ
36 回動支持部
40 安全装置(アクセルペダル用安全装置)
50 アーム機構
52 第1アーム
52a アーム本体
52b 軸
52b-1 係合ピン
52c 連結棒
52d マグネットプレート
53 弾性バネ
54 第2アーム
54a 連結板
54b 回転支持ブラケット
56 支持部
70 駆動ユニット
80 係合アーム(連動手段)