(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】シングルレバー水栓
(51)【国際特許分類】
F16K 11/078 20060101AFI20231010BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20231010BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F16K11/078 B
E03C1/042 B
E03C1/044
(21)【出願番号】P 2019135995
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤則
(72)【発明者】
【氏名】金森 一真
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017791(JP,A)
【文献】特開2005-315333(JP,A)
【文献】特開2012-057665(JP,A)
【文献】特開2014-066327(JP,A)
【文献】特開2015-165165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
E03C 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を混合して吐出するための弁部を有するシングルレバー水栓であって、
前記弁部は、
水を供給する水供給流路と、
湯を供給する湯供給流路と、
湯水の混合水を吐出する吐出流路と、
前記各流路を区画する壁部と
を備え、
前記壁部は、
前記各流路内の水圧差に基づく負荷が大きく作用する高負荷部と、前記負荷が前記高負荷部より小さく作用する低負荷部を有し、
前記高負荷部の壁厚は、前記低負荷部の壁厚より厚
く、
前記弁部は、
前記各流路が形成されたケースと、
前記ケース内に収容されて、前記水供給流路に連通する水孔、前記湯供給流路に連通する湯孔、及び前記吐出流路に連通する吐出孔を有する固定弁体と、
前記固定弁体に対して摺動可能に設けられて、前記吐出流路からの湯水の混合水の吐出量及び湯水の混合比を変化させる可動弁体とを備え、
前記固定弁体は、前記ケース側に突出し、前記水孔、前記湯孔、及び前記吐出孔のそれぞれの周縁に沿って延びるとともに、前記水孔、前記湯孔、及び前記吐出孔のそれぞれの間が共通化された凸条を備え、
前記各流路を区画する前記ケースの壁部の前記固定弁体側の端面には、底部にパッキンが収容されるとともに前記固定弁体の前記凸条が挿入される溝部が設けられ、
前記高負荷部として、前記凸条における前記湯供給流路と前記吐出流路との間に位置する第1部位、又は、前記凸条における前記湯供給流路と前記水供給流路との間に位置する第2部位を有し、
前記低負荷部として、前記凸条における前記水供給流路と前記吐出流路との間に位置する第3部位を有し、
前記第1部位又は前記第2部位の壁厚は、前記第3部位の壁厚より厚いシングルレバー水栓。
【請求項2】
湯水を混合して吐出するための弁部を有するシングルレバー水栓であって、
前記弁部は、
水を供給する水供給流路と、
湯を供給する湯供給流路と、
湯水の混合水を吐出する吐出流路と、
前記各流路を区画する壁部と
を備え、
前記壁部は、
前記各流路内の水圧差に基づく負荷が大きく作用する高負荷部と、前記負荷が前記高負荷部より小さく作用する低負荷部を有し、
前記高負荷部の壁厚は、前記低負荷部の壁厚より厚
く、
前記弁部は、
前記各流路が形成されたケースと、
前記ケース内に収容されて、前記水供給流路に連通する水孔、前記湯供給流路に連通する湯孔、及び前記吐出流路に連通する吐出孔を有する固定弁体と、
前記固定弁体に対して摺動可能に設けられて、前記吐出流路からの湯水の混合水の吐出量及び湯水の混合比を変化させる可動弁体とを備え、
前記固定弁体は、前記ケース側に突出し、前記水孔、前記湯孔、及び前記吐出孔のそれぞれの周縁に沿って延びるとともに、前記水孔、前記湯孔、及び前記吐出孔のそれぞれの間が共通化された凸条を備え、
前記各流路を区画する前記ケースの壁部の前記固定弁体側の端面には、底部にパッキンが収容されるとともに前記固定弁体の前記凸条が挿入される溝部が設けられ、
前記湯供給流路の周縁に沿って形成された前記溝部より前記湯供給流路側の側壁部は、前記高負荷部として、前記湯供給流路と前記吐出流路との間に位置する第4部位を有し、前記低負荷部として、前記湯供給流路と前記吐出流路との間に位置する以外の第5部位を有し、
前記第4部位の壁厚は、前記第5部位の壁厚より厚いシングルレバー水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を混合して吐出するシングルレバー水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルレバー水栓は、一つの操作レバーの操作によって作動される弁部により、湯水の混合比を適宜に変化させた混合水を吐出口から吐水させることができる。特許文献1には、水供給流路、湯供給流路、及び混合水の吐出流路が設けられたパッキンガイドと、パッキンガイドの内底部にパッキンを介して固定された固定弁体と、固定弁体と摺動可能に設けられた可動弁体を備えた弁部を有するシングルレバー水栓に係る発明が記載されている。固定弁体には、各流路のそれぞれに連通される水孔、湯孔、吐出孔が設けられており、可動弁体には、湯及び水の混合室が設けられている。そして、操作レバーの操作によって可動弁体を固定弁体に対して摺動させることにより、吐出口から吐水される混合水の吐出量や湯水の混合比を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるシングルレバー水栓では、パッキンの変形による水漏れを抑制するために、パッキンガイドにパッキンを収容するためのパッキン溝を設け、固定弁体にパッキン溝に係合するとともにパッキン溝内に収容されたパッキンをその底部方向に押圧する凸条を設けている。パッキン溝に係合した凸条でパッキンを押圧することにより、各流路間に水圧差が生じてもパッキンが変形し難く、水漏れが生じ難いとされている。
【0005】
しかし、各流路間に生じた水圧差による負荷は、パッキンだけでなく、各流路を区画する壁部にも作用することになる。そのため、高い負荷が作用した部分の壁部は変形し易くなり、壁部の変形によっても水漏れが発生してしまう場合がある。
【0006】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シングルレバー水栓の弁部の強度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のシングルレバー水栓は、湯水を混合して吐出するための弁部を有するシングルレバー水栓であって、前記弁部は、水を供給する水供給流路と、湯を供給する湯供給流路と、湯水の混合水を吐出する吐出流路と、前記各流路を区画する壁部とを備え、前記壁部は、前記各流路内の水圧差に基づく負荷が大きく作用する高負荷部と、前記負荷が前記高負荷部より小さく作用する低負荷部を有し、前記高負荷部の壁厚は、前記低負荷部の壁厚より厚い。
【0008】
上記構成によれば、水供給流路、湯供給流路、吐出流路の各流路を区画する壁部は、各流路内の水圧差に基づく負荷の高低により、その壁厚が異なっている。流路内の水圧差に基づく高い負荷が作用する高負荷部では、それより低い負荷が作用する低負荷部より壁厚が厚くされている。そのため、水圧差に基づく高い負荷が壁部に作用しても、その変形が抑制される。弁部の強度が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シングルレバー水栓の弁部の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】シングルレバー水栓の弁部を分解して示す斜視図。
【
図3】第1実施形態の固定弁体について説明する図であり、(a)は、固定弁体を下方側から見た斜視図、(b)は固定弁体の下面図。
【
図4】第2実施形態の下ケースについて説明する図であり、(a)は、下ケースを上方側から見た一部破断斜視図、(b)は下ケースの上面図。
【
図5】第1実施形態の固定弁体と下ケースとの係合部分での断面図であり、(a)は、
図3(b)の5A‐5A線断面に対応する部分での拡大断面図、(b)は、
図3(b)の5B‐5B線断面に対応する部分での拡大断面図。
【
図6】第2実施形態の固定弁体と下ケースとの係合部分での断面図であり、
図4(b)の6‐6線断面に対応する部分での拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下に、本発明を具体化した第1実施形態のシングルレバー水栓について説明する。本実施形態のシングルレバー水栓は、センサーによって作動する電磁弁が搭載されたセンサー付きシングルレバー水栓である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のシングルレバー水栓は、流し台の天板等の取付板上に取り付けられるベース部材10と、ベース部材10の上方に設けられた弁部材20と、弁部材20の上方に取り付けられる図示しない操作レバーを備えている。以下では、シングルレバー水栓の軸線方向を上下方向、軸線方向に直交する方向を水平方向と言う。
【0013】
図1に示すように、ベース部材10には、給水通路11、給湯通路12、及び吐出通路13が貫設されている。給水通路11及び給湯通路12の下端開口部にはそれぞれ図示しない給水源及び給湯源に接続された給水管及び給湯管が連結されている。ベース部材10の外周には下部ケース14が回動可能に取り付けられており、下部ケース14の側方には吐出管14aが突設されている。給水管及び給湯管から供給された水、湯は、給水通路11及び給湯通路12を介して弁部材20の内部に供給されて混合され、弁部材20から吐出通路13及び吐出管14aを経て外部に吐出される。吐出管14aの吐出口近傍には、人を感知する図示しないセンサーが取り付けられており、吐出通路13の下流側には、センサーによって作動する図示しない電磁弁が取り付けられている。
【0014】
図1に示すように、弁部材20は、ベース部材10の上部外周に形成されたネジ部15との螺合によって取り付けられた収容筒21の内部にユニット化されて収容されている。
図1及び
図2に示すように、弁部材20は、有底筒状の下ケース30と、下ケース30の上部に取り付けられた筒状の上ケース22を備えている。
図1に示すように、下ケース30は、その下面に突設された一対の位置決め突起35がベース部材10の上面に形成された一対の位置決め凹部16のそれぞれに係合することにより、ベース部材10に位置決めされている。また、下ケース30と上ケース22は、突起22aと凹部30aとの係合によって固定されている。
【0015】
図2に示すように、下ケース30の内部には、固定弁体50、可動弁体60、及びパッキン40が収容されている。固定弁体50は、突起30bと凹部50aとの係合により下ケース30に位置決めされている。可動弁体60は、固定弁体50の上面に接するようにして配置され、固定弁体50に対して水平方向へ摺動可能とされている。固定弁体50及び可動弁体60は、高い耐摩耗性を得るためにセラミックにより形成されている。
【0016】
可動弁体60には連通孔61が形成され、連通孔61には通水音を低減させるための網体25が取り付けられている。可動弁体60の上面は支持体24によって閉塞され、連通孔61の上部側に湯水を混合するための混合室62が画定されている。
【0017】
上ケース22の内部には軸支体26が設けられ、軸支体26は、可動弁体60の上面に固定された支持体24とともに上ケース22の中心軸線Cを中心にして水平方向に回動可能とされている。軸支体26には、開口26aを介して連結片27の基端部27aが挿入されて、連結片27の基端部27aは、支持体24の凹部24aに係合している。連結片27の先端部27bには、図示しない操作レバーが取り付けられている。操作レバーの上下方向への回動操作及び水平方向への回動操作により、連結片27、軸支体26、支持体24を介して可動弁体60が固定弁体50に対して相対移動し、これにより吐出口から適宜の量、温度の混合水が吐出される。
【0018】
図2及び
図4(a)に示すように、下ケース30の底壁には、ベース部材10の給水通路11に連通する水供給流路31、ベース部材10の給湯通路12に連通する湯供給流路32、ベース部材10の吐出通路13に連通する吐出流路33が形成されている。水供給流路31及び湯供給流路32の下端開口部には、パッキン34がそれぞれ取り付けられて、給水通路11と水供給流路31との間、及び給湯通路12と湯供給流路32との間の水密性を担保している。なお、
図4は第2実施形態のシングルレバー水栓の下ケース30について説明する図であるが、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33を区画する壁部の壁厚以外の構成は第1実施形態と第2実施形態で共通するため、ここでは、同じ図面を参照して説明する。
【0019】
図4(a)に示すように、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33は、相互に隣接して設けられ、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33を区画する区画壁36は、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33のそれぞれの間が共通化されている。各流路31、32、33を区画する区画壁36の固定弁体50側の端面である上端面には、下ケース30と固定弁体50との間の水密性を担保するパッキン40を収容するための溝部37が凹設されている。溝部37も区画壁36と同様に、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33のそれぞれの間が共通化されている。湯供給流路32と吐出流路33との間の区画壁36を区画壁36a、溝部37を溝部37aとし、水供給流路31と吐出流路33との間の区画壁36を区画壁36b、溝部37を溝部37bとし、水供給流路31と湯供給流路32との間の区画壁36を区画壁36c、溝部37を溝部37cとする。
【0020】
図2、
図3(a)及び(b)に示すように、固定弁体50には、四半円弧状の水孔51及び四半円弧状の湯孔52がほぼ同一円周上において貫設されている。固定弁体50の水孔51と湯孔52との間の位置には、ほぼ半円状の吐出孔53が貫設されている。これらの水孔51、湯孔52及び吐出孔53は、下ケース30における水供給流路31、湯供給流路32及び吐出流路33にそれぞれ連通されている。
【0021】
図3(a)に示すように、固定弁体50の下面には、水孔51、湯孔52、及び吐出孔53のそれぞれの周縁を取り囲むように延びる凸条54が突設されている。凸条54は、水孔51、湯孔52、及び吐出孔53のそれぞれの間が共通化されている。湯孔52と吐出孔53との間の凸条54を凸条54aとし、水孔51と吐出孔53との間の凸条54を凸条54bとし、水孔51と湯孔52との間の凸条54を凸条54cとする。凸条54は、
図5(a)及び(b)に示すように、溝部37内に挿入されて係合する部分であり、その壁厚は、凸条54が収容された溝部37の幅よりやや小さくなるように設定されている。
【0022】
図2及び
図4に示すように、パッキン40は、下ケース30の溝部37と同形状に形成されており、溝部37内に収容されて、固定弁体50の凸条54によって、溝部37の底面に向けて押圧されている。パッキン40は、溝部37や区画壁36と同様に、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33のそれぞれの間が共通化されている。湯供給流路32と吐出流路33との間の溝部37a内に収容されるパッキン40をパッキン40aとし、水供給流路31と吐出流路33との間の溝部37b内に収容されるパッキン40をパッキン40bとし、水供給流路31と湯供給流路32との間の溝部37a内に収容されるパッキン40をパッキン40cとする。
【0023】
本実施形態のシングルレバー水栓では、弁部材20において水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33のそれぞれを区画する壁部が、下ケース30に形成された区画壁36と、区画壁36の溝部37内に収容された固定弁体50の凸条54とで構成されている。本実施形態のシングルレバー水栓では、固定弁体50の凸条54の壁厚が部位によって異なっている。
図3(b)及び
図5に示すように、湯孔52と吐出孔53との間の凸条54aの壁厚N1が、水孔51と吐出孔53との間の凸条54bの壁厚N3より厚い。これにより、対応する下ケース30の区画壁36でも区画壁36aの壁厚L1が、区画壁36bの壁厚L3より厚くなっている。つまり、弁部材20において水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33のそれぞれを区画する壁部は、湯供給流路32と吐出流路33の間の壁部が、水供給流路31と吐出流路33の間の壁部より厚くなっている。
【0024】
また、凸条54aの壁厚N1が凸条54bの壁厚N3より厚いことにより、溝部37aの幅M1が溝部37bの幅M3より広く、溝部37a内に収容されたパッキン40aの幅が、溝部37b内に収容されたパッキン40bの幅より広い。
【0025】
次に、第1実施形態のシングルレバー水栓の作用について説明する。
操作レバーを上方へ回動操作すると、給水管からの水がベース部材10の給水通路11、下ケース30の水供給流路31を経て固定弁体50の水孔51に到る。また、給湯管からの湯がベース部材10の給湯通路12、下ケース30の湯供給流路32を経て固定弁体50の湯孔52に到る。水孔51からの水及び湯孔52からの湯は可動弁体60の連通孔61を介して混合室62で混合され、固定弁体50の吐出孔53、下ケース30の吐出流路33、ベース部材10の吐出通路13を経て吐出管14aに導かれる。
【0026】
操作レバーを左右方向へ回動操作すると、可動弁体60が固定弁体50に対して摺動して、可動弁体60の連通孔61と固定弁体50の水孔51との連通面積及び可動弁体60の連通孔61と固定弁体50の湯孔52との連通面積の割合が変化する。可動弁体60の混合室62で混合される湯水の混合比が変化することで、適宜の温度に調整された混合水が吐出管14aから吐出される。
【0027】
吐出管14aからの吐水時に吐出口に手を翳すと、センサーが反応して電磁弁によって吐出通路13が閉塞される。このとき、給水源の水圧が給湯源の水圧より高いと、吐出流路33内の水圧が水供給流路31の水圧と同程度にまで急激に上昇する。そのため、吐出流路33と湯供給流路32との間の壁部に対して、水圧差に基づく高い負荷が作用する。
【0028】
ここで、吐出流路33と湯供給流路32との間の壁部では、固定弁体50の凸条54aの壁厚N1が、吐出流路33と水供給流路31との間の壁部での凸条54bの壁厚N3に比べて厚い。そして、この凸条54の壁厚の違いにより、吐出流路33と湯供給流路32との間の区画壁36aの壁厚が、吐出流路33と水供給流路31との間の区画壁36bの壁厚に比べて厚く、吐出流路33と湯供給流路32とを区画する壁部の壁厚が、吐出流路33と水供給流路31とを区画する壁部の壁厚に比べて厚くなっている。そのため、湯供給流路32と吐出流路33との間の壁部に水圧差に基づく高い負荷が作用しても、壁部が変形することが抑制される。
【0029】
また、凸条54aが押圧するパッキン40aの幅が、凸条54bが押圧するパッキン40bの幅より広い。そのため、高い負荷が掛かってパッキン40aが変形したとしても、パッキン40aによるシール性が担保される。
【0030】
第1実施形態のシングルレバー水栓によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)吐出流路33と湯供給流路32との間の壁部は、吐出流路33及び湯供給流路32内の水圧差に基づく負荷が高い高負荷部であり、吐出流路33と水供給流路31との間の壁部は、吐出流路33及び水供給流路31内の水圧差に基づく負荷が前者より低い低負荷部である。水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33を区画する壁部のうち、高負荷部の壁部の壁厚L1は、低負荷部の壁部の壁厚L3より厚い。そのため、流路内の水圧差に基づく負荷による変形が抑制される。弁部材20の強度が向上し、耐圧性に優れたシングルレバー水栓が得られる。
【0031】
(2)固定弁体50の凸条54は、下ケース30の溝部37内に挿入されて各流路31、32、33を区画する壁部を構成しており、高負荷部では、凸条54aの壁厚N1が、低負荷部の凸条54bの壁厚N3より厚い。そのため、高負荷部での壁部の強度を向上させることができる。
【0032】
(3)固定弁体50は、セラミック製である。そのため、凸条54aの壁厚N1が厚い高負荷部では、壁部の強度を向上させることができる。
(4)高負荷部の壁部の壁厚L1は、固定弁体50の凸条54aの壁厚N1を凸条54bの壁厚N3より厚くすることによって厚くしている。そして、凸条54aの壁厚N1を厚くすることによって、凸条54aが係合する溝部37aの幅M1を広くしており、溝部37aに収容されるパッキン40aの幅を広くしている。そのため、高負荷部では、水圧差に基づく高い負荷が作用したとしてもパッキン40aの変形が抑制される。高負荷部での水漏れの発生が抑制される。
【0033】
(5)高負荷部でのパッキン40aの幅が広いことにより、水圧差に基づく高い負荷が作用してパッキン40aが変形したとしても、シール代を確保することができる。高負荷部での水漏れの発生が抑制される。
【0034】
(第2実施形態)
以下に、本発明を具体化した第2実施形態のシングルレバー水栓について説明する。第2実施形態のシングルレバー水栓は、水供給流路31、湯供給流路32、及び吐出流路33を区画する壁厚を厚くする部位が、下ケース30の区画壁36である点で、第1実施形態のシングルレバー水栓と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0035】
第2実施形態のシングルレバー水栓では、下ケース30の区画壁36に形成された溝部37の幅はすべて同一であり、溝部37に係合される固定弁体50の凸条54の壁厚もすべて同一である。その一方で、下ケース30の湯供給流路32を区画する区画壁36において、パッキン40を収容する溝部37より湯供給流路32側に形成された側壁部38の壁厚を、水圧差に基づく負荷に応じて変化させている。
【0036】
図4(b)及び
図6に示すように、湯供給流路32の周縁に沿って形成された溝部37より湯供給流路32側の側壁部38のうち、湯供給流路32と吐出流路33との間に位置する側壁部38aの壁厚L4が、側壁部38aと対向する位置の側壁部38bの壁厚L5より厚い。
【0037】
次に、第2実施形態のシングルレバー水栓の作用について説明する。
電磁弁の作動により吐出通路13が閉塞すると、吐出流路33と湯供給流路32との間の壁部には、吐出流路33と水供給流路31との間の壁部に比べて、水圧差に基づく負荷が高く作用する。この負荷により、吐出流路33と湯供給流路32との間の区画壁36aの溝部37a内に収容されたパッキン40aが、湯供給流路32側に押圧される。パッキン40aからの押圧力は、湯供給流路32側の側壁部38aに強く作用する。一方で、溝部37より湯供給流路32側の側壁部38のうち、湯供給流路32を介して対向する側壁部38bには、水圧差に基づく負荷がほとんど作用しない。
【0038】
側壁部38のうち、水圧差に基づく負荷が高い側壁部38aでの壁厚L4は、負荷が低い側壁部38bでの壁厚L5に比べて厚い。そのため、水圧差に基づく高い負荷が作用する側壁部38aの変形が抑制される。
【0039】
第2実施形態のシングルレバー水栓によれば、上記(1)に加えて以下のような効果を得ることができる。
(6)パッキン40を介して湯供給流路32側に位置する側壁部38のうち、水圧差により押圧されたパッキン40aからの押圧力が強く作用する吐出流路33と湯供給流路32との間の側壁部38aの壁厚L4は、湯供給流路32を介して対向する側壁部38bの壁厚L5より厚い。つまり、側壁部38のうち高負荷部の側壁部38aの壁厚L4は、低負荷部の側壁部38bの壁厚L5より厚い。そのため、吐出流路33側からの高い水圧が溝部37a内のパッキン40aに作用して側壁部38aを押圧しても、その変形を抑制することができる。シングルレバー水栓の弁部材20の強度を向上させることができる。
【0040】
(7)側壁部38では、湯供給流路32側の側壁部38aの壁厚L4を厚くする一方で、側壁部38aに対向する位置に側壁部38bの壁厚L5を薄くしている。そのため、湯供給流路32内の流量を確保することができる。
【0041】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、センサー付きシングルレバー水栓について説明したが、電磁弁が搭載されていないシングルレバー水栓に適用してもよい。
【0044】
・第1実施形態では、湯供給流路32と吐出流路33との間の凸条54aの壁厚L1を、水供給流路31と吐出流路33との間の凸条54bの壁厚L3より厚くしたが、これに代えて、又は、これに加えて、水供給流路31と湯供給流路32との間の凸条54cの壁厚を、水供給流路31と吐出流路33との間の凸条54aの壁厚L3より厚くしてもよい。給水源の水圧が給湯源の水圧より高い場合、電磁弁の有無に関わらず、水供給流路31と湯供給流路32との水圧差に基づく負荷による強度を向上させることができる。
【0045】
・第2実施形態では、湯供給流路32と吐出流路33との間に位置する区画壁36aの湯供給流路32側の側壁部38aの壁厚L4を、湯供給流路32を介して対向する側壁部38bの壁厚L5より厚くしたが、これに代えて、又は、これに加えて、湯供給流路32と水供給流路31との間に位置する区画壁36cの湯供給流路32側の側壁部38の壁厚を、湯供給流路32を介して対向する側壁部38の壁厚より厚くしてもよい。これにより、電磁弁の有無に関わらず、水供給流路31と湯供給流路32との水圧差に基づく負荷による強度を向上させることができる。
【0046】
・パッキン40の幅は凸条の幅と同じでなくてもよい。例えば、凸条54の壁厚に関わらずパッキン40の幅をすべて同一としてもよい。この場合、凸条54の壁厚に対してパッキン40の幅が小さい部分の溝部37では、凸条54が収容される部分の溝部37の幅を広くし、パッキン40が収容される部分の溝部37の幅を狭くするような段差をつけてもよい。
【0047】
・各流路31、32、33を区画する壁部の壁厚は、水圧差に基づく負荷が作用する大きさによって段階的に変化させてもよい。例えば、各流路31、32、33を区画する共通化された壁部のうち、湯供給流路32と吐出流路33との間の壁部の壁厚を最も厚くし、水供給流路31と湯供給流路32との間の壁部の壁厚を次に厚くし、水供給流路31と吐出流路33との間の壁部の壁厚を薄くするようにしてもよい。これは、区画壁36の壁厚、凸条54の壁厚、溝部37の幅、パッキン40の幅についても同様である。
【0048】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)固定弁体は、ケース側に突出し、水孔、湯孔、及び吐出孔のそれぞれの周縁に沿って延びるとともに、水孔、湯孔、及び吐出孔のそれぞれの間が共通化された凸条を備え、ケースの壁部の固定弁体側の端面には、底部にパッキンが収容されるとともに固定弁体の凸条が挿入される溝部が設けられ、パッキンにおける湯供給流路と吐出流路との間に位置する部位の幅、又は、パッキンにおける湯供給流路と水供給流路との間に位置する部位の幅は、パッキンにおける水供給流路と吐出流路との間に位置する部位の幅より広い。
【符号の説明】
【0049】
20…弁部材(弁部)、30…下ケース(ケース)、31…水供給流路、32…湯供給流路、33…吐出流路、36、36a、36b、36c…区画壁(壁部)、37、37a、37b、37c…溝部、38…側壁部(壁部)、38a…側壁部(壁部、第4部位)、38b…側壁部(壁部、第5部位)、40、40a、40b、40c…パッキン、50…固定弁体、51…水孔、52…湯孔、53…吐出孔、54…凸条(壁部)、54a…凸条(壁部、第1部位)、54b…凸条(壁部、第3部位)、54c…凸条(壁部、第2部位)、60…可動弁体。