(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】通信装置、通信中継システム、親局装置
(51)【国際特許分類】
H04L 47/28 20220101AFI20231010BHJP
H04L 47/56 20220101ALI20231010BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20231010BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20231010BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20231010BHJP
【FI】
H04L47/28
H04L47/56
H04W16/26
H04W16/28 130
H04W24/08
(21)【出願番号】P 2019143696
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 健一
(72)【発明者】
【氏名】丹後 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】山浦 隆博
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0100948(US,A1)
【文献】特表2018-523403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164404(US,A1)
【文献】特開2018-014562(JP,A)
【文献】特開2005-026935(JP,A)
【文献】特開2017-092919(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130048(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/013332(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0124729(US,A1)
【文献】Nokia, Nokia Shanghai Bell,TSN performance requirements evaluation[online],3GPP TSG RAN WG2 #103bis R2-1814992,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_103bis/Docs/R2-1814992.zip>,2018年09月28日,pp.1-9
【文献】西村 和人 ほか,モバイルフロントホールにおける低遅延レイヤ2スイッチング技術 Low-latency layer 2 switch technology for mobile front haul,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.118 No.208 [online] IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2018年08月30日,第118巻,pp.41-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/28
H04L 47/56
H04W 16/26
H04W 16/28
H04W 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる通信方式で無線信号データの伝送を行う第1のネットワークと第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる通信装置であって、
前記第1のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第1通信部と、
前記第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第2通信部と、
前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得する遅延パラメータ取得部と、
前記遅延パラメータ取得部によって取得された前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる遅延パラメータ反映部と、を備え
、
前記遅延パラメータ反映部は、前記無線信号データに関する情報であって前記無線信号データが経由するリンクごとの前記第1のネットワーク、前記第2のネットワークの種類と遅延パラメータを含むマップ情報を用いて、前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる、通信装置。
【請求項2】
前記遅延パラメータ反映部は、所定の遅延パラメータに対して前記第1のネットワークの遅延パラメータの加算、減算の少なくともいずれかを行うことで前記第2のネットワークの遅延パラメータを生成する、請求項
1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記遅延パラメータ反映部によって前記第1のネットワークの遅延パラメータが反映された前記第2のネットワークの遅延パラメータを他の装置に通知するパラメータ通知部を、さらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記所定の遅延パラメータは、前記無線信号データのストリームの最大許容遅延時間であり、
前記遅延パラメータ反映部は、前記最大許容遅延時間から前記第1のネットワークにおける片方向遅延時間を減算することで前記第2のネットワークの最大許容遅延時間を生成する、請求項
2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第2のネットワークの遅延計測を行う遅延計測部を、さらに備え、
前記遅延計測部は、他の装置から遅延計測の要求があった場合、タイムスタンプ値に前記第1のネットワークの遅延パラメータを加算して遅延計測の応答を返す、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1のネットワークのステータスを取得するステータス取得部を、さらに備え、
前記ステータス取得部によって取得された前記ステータスがオペレーショナルステートであった場合に、前記遅延パラメータ取得部は、前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記マップ情報に基づいて、前記第1通信部を介して前記第1のネットワークの側で前記第2のネットワークと同一の通信方式で通信するか否かを判定する再変換判定部を、さらに備え、
前記再変換判定部によって前記第1のネットワークの側で前記第2のネットワークと同一の通信方式で通信すると判定された場合、
前記遅延パラメータ反映部は、前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させるときに、前記第1のネットワークにおける片方向遅延時間の半分を前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1のネットワークは、CPRIを用いたネットワークであり、
前記第2のネットワークは、eCPRI(Common Public Radio Interface)を用いたネットワークである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
異なる通信方式で無線信号データの伝送を行う第1のネットワークと第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる通信装置と、前記通信装置に対して設定情報を送信するネットワーク設定装置と、を備える通信中継システムであって、
前記ネットワーク設定装置は、
前記無線信号データに関するストリームパラメータに基づいて、TSN(Time-Sensitive Networking)設定情報を生成するTSN設定情報生成部と、
前記通信装置に前記TSN設定情報を送信するTSN設定情報送信部と、を備え、
前記通信装置は、
前記第1のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第1通信部と、
前記第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第2通信部と、
前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得する遅延パラメータ取得部と、
前記遅延パラメータ取得部によって取得された前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる遅延パラメータ反映部と、
前記ネットワーク設定装置から受信した前記TSN設定情報に基づいてTSNの設定を行うTSN設定部と、
前記TSN設定部によって行われたTSNの設定に基づいて、TSNの送受信を制御するTSN送受信制御部と、を備え
、
前記遅延パラメータ反映部は、前記無線信号データに関する情報であって前記無線信号データが経由するリンクごとの前記第1のネットワーク、前記第2のネットワークの種類と遅延パラメータを含むマップ情報を用いて、前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる、通信中継システム。
【請求項10】
異なる通信方式で無線信号データの伝送を行う第1のネットワークと第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる通信装置と、アンテナを備える無線装置と、前記無線装置を制御する無線制御装置と、前記無線装置と通信できる中継装置と、を備える通信中継システムであって、
前記通信装置は、前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得して前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させ、
前記
無線装置は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)で通信を行い、
前記無線制御装置は、MIMOによる前記無線信号データの複数のフローそれぞれが前記アンテナに到達するタイミングと、MIMOによる信号合成にかかる遅延時間と、の少なくともいずれかに基づいて前記無線装置における前記無線信号データのバッファ量を決定
し、
前記通信装置は、前記無線信号データに関する情報であって前記無線信号データが経由するリンクごとの前記第1のネットワーク、前記第2のネットワークの種類と遅延パラメータを含むマップ情報を用いて、前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる、通信中継システム。
【請求項11】
異なる通信方式で無線信号データの伝送を行う第1のネットワークと第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる通信装置と、前記無線信号データの転送処理を行うブリッジ装置と、を備える親局装置であって、
前記通信装置は、
前記第1のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第1通信部と、
前記第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第2通信部と、
前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得する遅延パラメータ取得部と、
前記遅延パラメータ取得部によって取得された前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる遅延パラメータ反映部と、を備え
、
前記遅延パラメータ反映部は、前記無線信号データに関する情報であって前記無線信号データが経由するリンクごとの前記第1のネットワーク、前記第2のネットワークの種類と遅延パラメータを含むマップ情報を用いて、前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる、親局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置、通信中継システム、親局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話、スマートフォン等の移動通信端末装置を屋内で使用可能とするための通信中継システム(光リピータシステム)が知られている。このような通信中継システムでは、例えば、無線基地局に接続された1台の親局装置に複数の子局装置を接続して実効的に無線基地局の通信エリアを拡大することにより、大規模な商業施設やオフィスビルといった広範囲の室内エリアをカバーしている。
【0003】
また、通信中継システムにおいて、無線装置(RE:Radio Equipment)と無線制御装置(REC:Radio Equipment Control)を接続するネットワークは、フロントホール(Fronthaul)と呼ばれる。従来のフロントホールでは、例えば、CPRI(Common Public Radio Interface)を用いた通信方式(回線交換方式)により、無線装置と無線制御装置の間で無線信号データ(IQ信号)が伝送されている。
【0004】
近年では、フロントホールの低コスト化を実現するため、例えば、無線信号データを、イーサネット(Ethernet)(登録商標)を用いたパケット交換方式で伝送する技術がある。今後は、既存のCPRIによって無線信号データを伝送する装置から、イーサネットによって無線信号データを伝送する装置へ、置き換えが進むと考えられる。しかし、完全に置き換えが進むまでには、CPRIとイーサネットの両方の通信方式を介して無線信号データが伝送されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-163232号公報
【文献】特開2018-88580号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】"CPRI Specification V7.0 (2015-10-09)", 2015 Ericsson AB, Huawei Technologies Co. Ltd, NEC Corporation, Alcatel Lucent, and Nokia Networks.
【文献】"eCPRI Specification V1.2 (2018-06-25)", 2018 Ericsson AB, Huawei Technologies Co. Ltd, NEC Corporation and Nokia.
【文献】"IEEE 1914.3-2018 - IEEE Standard for Radio over Ethernet Encapsulations and Mappings", IEEE, 2018-10-05
【文献】"802.1CM-2018 - Time-Sensitive Networking for Fronthaul", IEEE, 2018-06-08
【文献】"IEEE 802.1Qcc-2018 - IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks--Bridges and Bridged Networks -- Amendment 31: Stream Reservation Protocol (SRP) Enhancements and Performance Improvements", IEEE, 2018-10-31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フロントホールでは、無線信号データの伝送は、遅延の要求条件を満たす必要がある。例えば、イーサネットスイッチを用いて無線信号データを伝送する際に、遅延を低減するために、優先順位を設定する方法がある。しかしながら、その方法では、伝送経路にCPRIとイーサネットなどの異なる通信方式が用いられている場合に、無線信号データの伝送が遅延の要求条件を満たすようにすることには対応できない。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、異なる通信方式のネットワークを介して無線信号データの伝送を行う場合にも遅延の要求条件を満たした伝送を可能とする通信装置、通信中継システム、親局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の通信装置は、異なる通信方式で無線信号データの伝送を行う第1のネットワークと第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる。通信装置は、前記第1のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第1通信部と、前記第2のネットワークを介して他の通信装置と通信できる第2通信部と、前記第1のネットワークの遅延パラメータを取得する遅延パラメータ取得部と、前記遅延パラメータ取得部によって取得された前記第1のネットワークの遅延パラメータを前記第2のネットワークの遅延パラメータに反映させる遅延パラメータ反映部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の通信中継システムの全体機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態のCPRI-イーサネット変換装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態のRF-イーサネット変換装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態のCPRI中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態の無線装置(CPRI)の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態の無線装置(Ethernet)の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態のイーサネットブリッジ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態のネットワーク設定装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態の無線制御装置(RF)の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態の無線制御装置(CPRI)の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態の無線制御装置(Ethernet)の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施形態の第1の遅延反映処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態の第2の遅延反映処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態の第1のTSN設定処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態の第2のTSN設定処理を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態のバッファ量指示処理を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施形態の遅延通知処理を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、実施形態のバッファ量設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下の説明において、遅延時間のことを単に「遅延」と称する場合がある。
図1は、実施形態の通信中継システムSの全体機能構成を示すブロック図である。通信中継システムSは、例えば、いわゆる不感地帯の一種である大規模な商業施設やオフィスビル内に配置され、
図1に示す各装置を備える。
【0012】
無線制御装置(RF)1aは、RF-イーサネット変換装置4と同軸ケーブル等で接続され、RF(Radio Frequency)信号を入出力するインタフェースを備える。また、無線制御装置(RF)1aは、バックホールを介して通信のコアネットワークCNと通信できる。無線制御装置(RF)1aは、例えば、4G(第4世代移動通信システム)の基地局である。
【0013】
無線制御装置(CPRI)1bは、CPRI-イーサネット変換装置3aと光ファイバ等で接続され、CPRI(Common Public Radio Interface)で通信を行う。CPRIを用いたネットワーク(CPRIネットワーク)は、第1のネットワークの一例である。また、無線制御装置(CPRI)1bは、バックホールを介してコアネットワークCNと通信できる。無線制御装置(CPRI)1bは、例えば、4Gの基地局である。
【0014】
無線制御装置(Ethernet)1cは、イーサネットブリッジ装置5aなどと光ファイバ等で接続され、IEEE 802.3規格で定義されるEthernetで通信を行う。この通信の上位層のプロトコルにはeCPRIなどが用いられる。eCPRIを用いたネットワークは、第2のネットワークの一例である。また、無線制御装置(Ethernet)1cは、バックホールを介してコアネットワークCNと通信できる。無線制御装置(Ethernet)1cは、例えば、5G(第5世代移動通信システム)の基地局である。
【0015】
なお、無線制御装置(RF)1a、無線制御装置(CPRI)1b、無線制御装置(Ethernet)1cを特に区別しないときは、無線制御装置1と称する場合がある(他の装置についても同様)。無線制御装置1は、後述する無線装置2(無線装置(CPRI)2a、無線装置(Ethernet)2b)の制御を行う。また、無線制御装置1と無線装置2の間のネットワークをフロントホールと称する。
【0016】
無線装置(CPRI)2a(2a1、2a2、2a3)は、CPRI-イーサネット変換装置3bやCPRI中継装置7と光ファイバ等で接続され、CPRIで通信を行う。
【0017】
無線装置(Ethernet)2b(2b1、2b2、2b3)は、イーサネットブリッジ装置5cやイーサネットブリッジ装置5bと光ファイバ等で接続され、Ethernetで通信を行う。
【0018】
無線装置2は、無線制御装置1からのデータとRF信号の変換を行い、アンテナを用いて、図示しないユーザ端末(携帯電話、スマートフォン等の移動通信端末装置)と無線通信を行う。
【0019】
イーサネットブリッジ装置5は、RF-イーサネット変換装置4やCPRI-イーサネット変換装置3、ネットワーク設定装置6(6a、6b)、無線制御装置(Ethernet)1c、無線装置(Ethernet)2b3と光ファイバ等で接続され、Ethernetのブリッジ処理(スイッチ処理)を行う。ブリッジ処理とは、Ethernetフレームの転送処理を指し、IEEE 802.1のTSN(Time-Sensitive Networking)規格などで定義される転送処理である。
【0020】
ネットワーク設定装置6は、フロントホールにおいて、リアルタイムで高信頼なネットワークを実現するために、各装置のTSN送受信制御部(例えば、TSN送受信制御部320(
図2)、TSN送受信制御部415(
図3)、TSN送受信制御部224(
図6)、TSN送受信制御部509(
図7)、TSN送受信制御部132(
図11))に対して設定情報を送信する。ネットワーク設定装置6は、TSN規格にしたがって、CNC(Centralized Network Configuration)と呼ばれる機能を実現する。
【0021】
CPRI中継装置7は、CPRIで伝送された無線信号データ(IQ信号)を中継する装置である。CPRI中継装置7は、IQ信号を分配・合成する機能を備える。例えば、CPRI中継装置7は、無線制御装置1から送信されたIQ信号を複製し、複数の無線装置2へ送信する機能を備える。また、CPRI中継装置7は、無線装置2から受信したIQ信号を合成して無線制御装置1に送信する機能を備える。
【0022】
なお、
図1の符号M1で示すRF-イーサネット変換装置4、CPRI-イーサネット変換装置3a、イーサネットブリッジ装置5aを、1つの親局装置として実現してもよい。同様に、符号M2で示すCPRI-イーサネット変換装置3b、CPRI-イーサネット変換装置3c、イーサネットブリッジ装置5bを、1つの親局装置として実現してもよい。また、符号M3で示すCPRI-イーサネット変換装置3e、イーサネットブリッジ装置5cを、1つの親局装置として実現してもよい。
【0023】
次に、
図2~
図11を参照して、各装置の機能構成について説明する。なお、
図2~
図11において、各構成同士を接続する線やその線の矢印は主な情報の流れを示すものであり、線で接続されていない部分を情報が流れたり、線の矢印と逆向きに情報が流れたりする場合もある。また、複数の装置で同名称、異符号で同様の機能構成がある場合は、いずれかの装置の説明でその機能構成について説明し、その他の装置の説明ではその機能構成の説明を適宜省略する。また、説明を簡潔にするために、名称の符号を省略する場合がある。
【0024】
図2は、実施形態のCPRI-イーサネット変換装置3の機能構成を示すブロック図である。CPRI-イーサネット変換装置3は、(互いに)異なる通信方式で無線信号データの伝送を行うCPRIネットワーク(第1のネットワーク)とイーサネットによるネットワーク(第2のネットワーク)を介して他の通信装置と通信できる通信装置であって、各部301~321を備える。
【0025】
(CPRIパラメータ取得処理)
CPRI通信部301(第1通信部)は、CPRIで定義されるプロトコルに従ってCPRIリンクを介して他の通信装置とデータの送受信を行うことができる。CPRIで伝送されるデータには、IQ信号を含むユーザプレーンデータの他、無線装置2の制御などを行う制御・管理プレーンデータ、時刻同期用データなどが含まれる。
【0026】
ステータス取得部305は、CPRI通信部301を介してCPRIネットワークのステータスを監視(取得)し、対象のポートのCPRIリンクがオペレーショナルステートであるか否かを判定する。オペレーショナルステートであると、CPRIパラメータ取得部306(遅延パラメータ取得部)は、CPRIパラメータを取得する。CPRIパラメータは、例えば、CPRI遅延計測部303によって得られる遅延である。また、CPRIパラメータ取得部306は、CPRI中継装置7の信号合成遅延(信号合成に要する遅延時間)も取得する。これらの値は、CPRIパラメータ記憶部307に記憶される。なお、CPRIパラメータは、CPRIパラメータ取得部306によって取得されるのではなく、予めCPRIパラメータ設定部309により設定され、CPRIパラメータ記憶部307に記憶されるようにしてもよい。
【0027】
(再変換判定処理)
上述のCPRIパラメータ取得処理の後、再変換判定処理を行う。本実施形態においては、CPRIの遅延パラメータをeCPRIまたはTSNのパラメータに反映させる。その場合、CPRIネットワークとeCPRIネットワーク(イーサネットによるネットワーク)の変換が2回以上であると、eCPRIやTSNのパラメータへの反映が重複して行われ、正確な情報を伝達することができない。
【0028】
このため、例えば、変換が2回の場合には、片方向遅延のうち、半分をeCPRIやTSNのパラメータとして通知する。このため、CPRI-イーサネット変換装置3は、再変換判定部308を備える。再変換判定部308は、CPRI通信部301を介してCPRIネットワークの側でeCPRIネットワークと同一の通信方式で通信するか否かを判定する。つまり、再変換判定部308は、再変換判定処理において、CPRIネットワークの側に再びeCPRIネットワークがあり、eCPRIに変換されているかどうかを判定する。
【0029】
このために、CPRI-イーサネット変換装置3はマップ情報取得部302を備える。CPRIでは、イーサネットのフレームを送受信するための仕組みが用意されている。つまり、マップ情報取得部302は、CPRIのネットワークを経由してイーサネット接続されている装置のマップ情報通知部(不図示)からマップ情報を取得する。マップ情報にはCPRIのどのリンクがどのeCPRIのフローにマップされたかが定義されているため、再変換判定部308は、マップ情報に基づいて再変換が行われているかを判定する。
【0030】
(マップ情報等)
ここで、マップ情報等について説明する。
図19は、実施形態のマップ情報等を示す図である。マップ情報は、無線信号データに関する情報であって、無線信号データが経由するリンクごとのCPRIネットワーク、eCPRIネットワークの種類と、遅延パラメータを含む。具体的には、マップ情報は、マップ情報を識別するためのマップ情報ID、マップまたはデマップのどちらの処理を行うかを示す種別、マップまたはデマップを行うプロトコルパラメータを含む。また、マップ情報は、さらに、出力を行うリンクを指定する宛先リンク、入力とするリンクを指定する送信元リンク、IQ信号の識別を行うためのフローID、ストリームパラメータを含む。
【0031】
プロトコルパラメータは、アプリケーション層のプロトコルを指定するアプリケーションプロトコルと、アプリケーションプロトコルのスプリット(データ形式)と、トランスポート層プロトコルを指定するトランスポートプロトコルと、ネットワーク層プロトコルを指定するネットワークプロトコルと、データリンク層プロトコルを指定するデータリンクプロトコルと、を含む。
【0032】
また、ストリームパラメータは、そのフローの送信または受信の周期、イーサネットの最大フレームサイズ、周期内に送信または受信する最大フレーム数、ストリームの最大許容遅延時間、優先度(PCP(Priority Code Point))を含む。優先度は、ネットワーク設定装置6が生成するTSN設定情報(詳細は後述)に基づいて設定される。
【0033】
宛先リンクおよび送信元リンクには、Ethernetリンク情報のEthernetリンクID、CPRIリンク情報のCPRIリンクID、RFリンク情報のRFリンクIDが指定される。
【0034】
Etherenetリンク情報は、Ethernetリンクを識別するためのEthenretリンクIDと、Ethernet通信部のポート番号、通信相手装置のMAC(Media Access Control)アドレス、自装置のMACアドレス、通信相手装置のIPアドレス、自装置のIPアドレス、通信相手装置のUDP(User Datagram Protocol)ポート番号、自装置のUDPポートを含む。
【0035】
CPRIリンク情報は、CPRIリンクを識別するためのCPRIリンクIDとCPRI通信部のポート番号を含む。
【0036】
RFリンク情報は、RFリンクを識別するためのRFリンクIDとRFインタフェース部のポート番号を含む。
【0037】
各装置のマップ部(例えば、マップ部311(
図2)、マップ部407(
図3)、マップ部231(
図6)、マップ部123(
図11))とデマップ部(例えば、デマップ部313(
図2)、デマップ部409(
図3)、デマップ部233(
図6)、デマップ部125(
図11))は、上記のマップ情報を参照してそれぞれマップ処理とデマップ処理を行う。なお、マップ情報は予め各装置内でMACアドレスや接続されている各リンクのポートの情報から設定を行ってもよいし、無線制御装置1からネットワークを介して設定されてもよい。
【0038】
(パラメータ反映処理)
パラメータ反映部310(遅延パラメータ反映部)は、CPRIパラメータ取得部306によって取得されたCPRIネットワークの遅延パラメータをeCPRIネットワークの遅延パラメータに反映させる。例えば、パラメータ反映部310は、所定の遅延パラメータに対してCPRIネットワークの遅延パラメータの加算、減算の少なくともいずれかを行うことでeCPRIネットワークの遅延パラメータを生成する。具体的には、例えば、所定の遅延パラメータは、無線信号データのストリームの最大許容遅延時間であり、パラメータ反映部310は、最大許容遅延時間からCPRIネットワークにおける片方向遅延時間を減算することでeCPRIネットワークの最大許容遅延時間を生成する。
【0039】
また、例えば、再変換判定結果に基づいて、パラメータ反映部310は、CPRIパラメータに含まれる伝搬遅延などをストリームパラメータやeCPRIの遅延計測に反映させる。具体的には、パラメータ反映部310は、再変換されていると判定された場合は、ストリームパラメータの最大許容遅延時間から、CPRIパラメータから算出した片方向遅延の半分の値を減算した値を最大許容遅延時間として通知する。
【0040】
また、パラメータ反映部310は、eCPRIの遅延計測については、受信したタイムスタンプ値にCPRIパラメータ(遅延パラメータ)から算出した片方向遅延の半分の値を加算してタイムスタンプを付加し、応答フレームを送信した時刻のタイムスタンプ値として本来の値からCPRIパラメータから算出した片方向遅延の半分の値を減算した値を通知する。
【0041】
また、パラメータ反映部310は、再変換されていないと判定された場合は、ストリームパラメータの最大許容遅延時間から、CPRIパラメータから算出した片方向遅延の値を減算した値を最大許容遅延時間として通知する。また、パラメータ反映部310は、eCPRIの遅延計測については、受信したタイムスタンプ値にCPRIパラメータから算出した片方向遅延の値を加算してタイムスタンプを付加し、応答フレームを送信した時刻のタイムスタンプ値として本来の値から、CPRIパラメータから算出した片方向遅延の値を減算した値を通知する。
【0042】
ストリームパラメータ通知部314(パラメータ通知部)は、パラメータ反映部310によってCPRIネットワークの遅延パラメータが反映されたeCPRIネットワークの遅延パラメータを他の装置に通知する。
【0043】
また、eCPRI遅延計測部316(遅延計測部)は、eCPRIネットワークの遅延計測を行う。eCPRI遅延計測部316は、他の装置から遅延計測の要求があった場合、タイムスタンプ値にCPRIネットワークの遅延パラメータを加算して遅延計測の応答を返す。
【0044】
また、TSN設定部319は、ネットワーク設定装置6から受信したTSN設定情報に基づいてTSNの設定を行う。また、TSN送受信制御部320は、TSN設定部319によって行われたTSNの設定に基づいて、TSNの送受信を制御する。
【0045】
図3は、実施形態のRF-イーサネット変換装置4の機能構成を示すブロック図である。RF-イーサネット変換装置4は、各部401~416を備える。
【0046】
(下り信号処理)
無線インタフェース部401は、無線制御装置(RF)1aからRF信号を入力すると、信号増幅やフィルタ処理、ダウンコンバート等の無線受信処理を行ってアナログ信号を生成する。その後、AD変換部402は、そのアナログ信号をデジタルIQ信号に変換する。その後、マップ部407は、マップ情報に従い、例えばeCPRIのフォーマットにマッピングする。TSN送受信制御部415は、そのマッピングされた信号について優先度制御をして送信する。また、イーサネット通信部416は、イーサネットで定義される送信のための処理を行い、イーサネットフレームとして、eCPRIネットワークに送信する。
【0047】
(上り信号処理)
イーサネット通信部416は、受信したイーサネットフレームについてEthernetで定義される受信のための処理をする。その後、TSN送受信制御部415は、必要に応じフィルタリングなどを行い、デマップ部409に転送する。デマップ部409は、例えば、eCPRIのフォーマットに基づいて必要なデジタルIQ信号(デジタル信号)を取り出し、DA変換部403に伝送する。DA変換部403は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、無線インタフェース部401に伝送する。無線インタフェース部401は、アップコンバート、フィルタ処理、信号増幅等の無線送信処理を行ってRF信号を生成し、無線制御装置(RF)1aへRF信号を送信する。
【0048】
(ストリームパラメータ通知処理)
RFパラメータ設定部404は、RFに関するパラメータを予め設定し、RFパラメータ記憶部405に記憶させる。RFパラメータには、例えば、無線インタフェース部401に接続される同軸ケーブルなどの長さから算出された伝搬時間が含まれる。パラメータ反映部406は、RFパラメータに含まれる伝搬遅延などをストリームパラメータやeCPRIの遅延計測に反映させる。具体的には、パラメータ反映部406は、ストリームパラメータの最大許容遅延時間から、RFパラメータから算出した片方向遅延の値を減算した値を最大許容遅延時間とする。また、パラメータ反映部406は、eCPRIの遅延計測においては、受信したタイムスタンプ値にRFパラメータから算出した片方向遅延の値を加算してタイムスタンプを付加し、応答フレームを送信した時刻のタイムスタンプ値として本来の値から、RFパラメータから算出した片方向遅延の値を減算した値を算出する。
【0049】
ストリームパラメータ通知部412は、パラメータ反映部406によって算出(反映)されたパラメータを他の装置に通知する。
【0050】
図4は、実施形態のCPRI中継装置7の機能構成を示すブロック図である。CPRI中継装置7は、各部701~711を備える。
【0051】
(下り信号処理)
CPRI通信部701は、無線制御装置1などから送信された光信号を受信すると光電気変換を行い、信号分配部704に伝送する。信号分配部704は、CPRIのユーザプレーンに含まれるデジタル信号化されたIQ信号をそれぞれの無線装置2に分配するために複製を行う。CPRI通信部707、709、711は、分配されたIQ信号を受け取り、電気光変換を行い、光信号を送信する。
【0052】
(上り信号処理)
CPRI通信部707、709、711は、無線装置2などから送信された光信号を入力して、光電気変換し、信号合成部705へ転送する。信号合成部705は、例えば、CPRIのフォーマットに基づいて必要なIQ信号を取り出し、合成する。
【0053】
(遅延計測応答処理)
上流に接続される無線制御装置(CPRI)1bなどでCPRIの機能により遅延計測が実行される場合には、CPRI遅延計測応答部703は、遅延計測のためのデータをCPRI通信部701を介して無線制御装置(CPRI)1bなどに送信する。これにより、無線制御装置1から本装置(CPRI中継装置7)までの遅延を計測することができる。
【0054】
(遅延計測処理)
CPRI遅延計測部706、708、710は、下流に接続される無線装置(CPRI)2a(2a2、2a3)までの遅延を計測する。これはCPRIの規定に従って行われ、CPRI遅延計測部706、708、710からCPRIの同期情報を送信し、途中の装置のCPRIの遅延計測応答部からの応答を受信することにより伝搬遅延を計測する。
【0055】
(信号合成の遅延通知処理)
信号合成部705は、複数のCPRIリンクのIQ信号を合成して上流に送信する。この信号合成は、タイミングを合わせて行う必要があるが、それぞれのCPRI信号は配線長などの違いからタイミングがずれた状態で信号合成部705に入力される。このため、信号合成部705は、バッファリングを行ってタイミングを合わせる。信号合成部遅延通知部702は、バッファリングすることによって遅延する量を他の装置に通知する。この通知は、他の装置のCPRIパラメータ取得部(例えば、CPRIパラメータ取得部306(
図2))からの要求により、受動的に行ってもよいし、能動的に送信してもよい。
【0056】
図5は、実施形態の無線装置(CPRI)2aの機能構成を示すブロック図である。無線装置(CPRI)2aは、各部201~209を備える。
【0057】
(下り信号処理)
CPRI通信部201は、上流からの光信号を光電気変換し、CPRI受信バッファ部205に送信する。CPRI処理部206は、CPRIのフォーマットに基づいて必要なIQ信号(デジタル信号)を取り出し、DA変換部208に伝送する。DA変換部208は、デジタル信号をアナログ信号に変換し、無線インタフェース部209に出力する。無線インタフェース部209は、アップコンバート、フィルタ処理、信号増幅等の無線送信処理を行い、アンテナを介してRF信号を送信する。
【0058】
(上り信号処理)
無線インタフェース部209は、アンテナからのRF信号を受信すると、信号増幅やフィルタ処理、ダウンコンバート等の無線受信処理を行ってアナログ信号を生成し、AD変換部207に伝送する。AD変換部207は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、CPRI処理部206に転送する。CPRI処理部206は、例えば、CPRIのフォーマットにマッピングし、CPRI送信バッファ部204に送信する。CPRI通信部201は、CPRI送信バッファ部204から受けとったデータについて電気光変換を行い、光信号を上流に伝送する。
【0059】
(バッファ量設定)
無線制御装置(CPRI)1bのCPRIバッファ量指示部113(
図10)からのバッファ量設定指示は、CPRIの制御・管理プレーンデータなどを用いて無線装置(CPRI)2aに伝達される。CPRIバッファ量管理部203は、そのバッファ量設定指示に基づいて、CPRI送信バッファ部204とCPRI受信バッファ部205に、それぞれ指示された量のバッファリングを行うように設定する。
【0060】
図6は、実施形態の無線装置(Ethernet)2bの機能構成を示すブロック図である。無線装置(Ethernet)2bは、各部221~239を備える。
【0061】
(バッファ量設定)
無線制御装置(Ethernet)1cのイーサネットバッファ量指示部126(
図11)からのバッファ量設定指示は、eCPRIの制御・管理プレーンデータとして通知される。バッファ量管理部228は、そのバッファ量設定指示に基づいて、イーサネット送信バッファ部230とイーサネット受信バッファ部229に、それぞれ指示された量のバッファリングを行うように設定する。さらに、バッファ量管理部228は、CPRI送信バッファ部234とCPRI受信バッファ部235に、それぞれ指示された量のバッファリングを行うように設定してもよい。
【0062】
図7は、実施形態のイーサネットブリッジ装置5の機能構成を示すブロック図である。イーサネットブリッジ装置5は、各部501~511を備える。
【0063】
(ブリッジ処理)
イーサネット通信部501、502は、イーサネットフレームを受信する。必要に応じて、TSN送受信制御部503、504はそのポートに設定されたTSNの受信制御を行い、ブリッジ処理部506はブリッジ処理を行う。このブリッジ処理は、FDB(Filtering DataBase)と呼ばれるフレームの転送先を決めるデータベースに基づいて行われる。具体的には、フレームの宛先アドレスとVLAN IDから、出力するべきポートを割り出して、そのポートからフレームを出力する。その際、ポート毎に存在するTSN送受信制御部508、509は、TSNの送信制御を行う。ここでは、例えばフレームの優先度に応じた優先度制御が行われ、フレームはイーサネット通信部510、511を介して送信され、転送処理が完了する。
【0064】
(TSN設定処理)
TSNパラメータ通知部505は、ブリッジ処理部506、TSN送受信制御部508、509を経由し、イーサネット通信部510、511を介してTSNパラメータをネットワーク設定装置6のTSNパラメータ取得部604(
図8)に通知する。この動作は、TSNパラメータ取得部604からの要求に応じて受動的に行ってもよいし、能動的に送信してもよい。ネットワーク設定装置6では、必要なパラメータの取得が完了すると、TSN設定情報をTSN設定情報送信部603が送信する。TSN設定部507は、イーサネット通信部510、511、TSN送受信制御部508、509、ブリッジ処理部506を介してTSN設定情報を受信し、各ポートのTSN送受信制御部508、509やブリッジ処理部506にTSN設定情報に基づいた設定を行う。
【0065】
図8は、実施形態のネットワーク設定装置6の機能構成を示すブロック図である。ネットワーク設定装置6は、各部601~605を備える。
【0066】
(TSN設定処理)
ストリームパラメータ取得部602は、イーサネット通信部605を介してストリームパラメータを取得する。ストリームパラメータには、ストリームの識別子、フレームの送信周期、最大フレームサイズ、周期内で送信するフレーム数、最大許容遅延時間などが含まれる。
【0067】
また、TSNパラメータ取得部604は、イーサネット通信部605を介してTSNパラメータを取得する。TSNパラメータには、フレームの優先度(PCP)と送信キューの優先度の対応を表すトラヒッククラステーブル、フレームの転送先を決めるFDB、フレームをブリッジ処理する際の遅延(最大値や最小値)、ポート毎の対向ポートまでの伝搬遅延などが含まれる。
【0068】
TSN設定情報生成部601は、ストリームパラメータとTSNパラメータに基づいてTSN設定情報を生成する。TSN設定情報送信部603は、イーサネット通信部605を介して、TSN設定情報を、CPRI-イーサネット変換装置3や無線装置(Ethernet)2bやイーサネットブリッジ装置5のTSN設定部(TSN設定部319、TSN設定部223、TSN設定部507)に送信する。それらの装置では、イーサネットポート毎にTSN送受信制御部(TSN送受信制御部320、TSN送受信制御部224、TSN送受信制御部508、509)の設定が行われる。
【0069】
TSN設定情報生成部601は、各装置のストリームパラメータ通知部とTSNパラメータ通知部から収集した情報に基づき、各ストリームが最大許容遅延時間を満たすようにTSN設定情報を生成する。
【0070】
ここで生成されるTSN設定情報には、ストリームのフレームの優先度(PCP)、設定されるトラヒッククラステーブル、優先度制御情報、FDBなどが含まれる。これらの情報は、CPRI-イーサネット変換装置3や無線装置(Ethernet)2bやイーサネットブリッジ装置5において、TSN設定部で受信される。それらの装置では、ストリームのフレームの優先度については、マップ情報設定部によって通知された優先度をデータリンクプロトコルの優先度に割り当て、その優先度でフレームが生成される。
【0071】
また、トラヒッククラステーブル、優先度制御情報についてはTSN送受信制御部に設定が行われる。優先度制御情には例えばIEEE 802.1Qbvで定義されるゲート制御に関する情報や、IEEE 802.1Qbuで定義される各トラヒッククラスのexpressおよびpreemptableの設定が含まれる。また、FDBについては、TSN設定部からブリッジ処理部に設定が行われ、ポートやVLAN IDとMACアドレスとの対応付けが行われる。
【0072】
図9は、実施形態の無線制御装置(RF)1aの機能構成を示すブロック図である。無線制御装置(RF)1aは、各部101~105を備える。
【0073】
(下り信号処理)
イーサネット通信部101は、バックホールからIPパケットを受信する。変復調部102は、IPパケットを無線装置2で送信する無線のデータに変換する。DA変換部103は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。RFインタフェース部105は、RF信号を送出する。
【0074】
(上り信号処理)
RFインタフェース部105は、RF信号を受信する。AD変換部104は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。変復調部102は、デジタル信号をIPパケットに変換する。イーサネット通信部101は、IPパケットをバックホールに送信する。
【0075】
図10は、実施形態の無線制御装置(CPRI)1bの機能構成を示すブロック図である。無線制御装置(CPRI)1bは、各部111~116を備える。
【0076】
ここでは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)で通信が行われるものとする。無線制御装置(CPRI)1bは、MIMOによる無線信号データの複数のフローそれぞれがアンテナに到達するタイミングと、MIMOによる信号合成にかかる遅延時間と、の少なくともいずれかに基づいて無線装置2における無線信号データのバッファ量を決定する。以下、詳述する。
【0077】
(下り信号処理)
イーサネット通信部111は、バックホールからIPパケットを受信する。変復調部112は、IPパケットを無線装置2で送信する無線のIQ信号に変換する。CPRI処理部114は、IQ信号をCPRIのフレームに変換する。RFインタフェース部105は、CPRIのフレームを送出する。
【0078】
(上り信号処理)
CPRI通信部116は、CPRIのフレームを受信する。CPRI処理部114は、CPRIのフレームからIQ信号を取り出す。変復調部112は、IQ信号をIPパケットに変換する。イーサネット通信部111は、IPパケットをバックホールに送信する。
【0079】
(CPRIバッファ量指示)
CPRI遅延計測部115は、CPRIの同期情報を送信し、途中の装置のCPRIの遅延計測応答部からの応答を受信することにより伝搬遅延を計測する。CPRI遅延計測部115は、例えば、同一のMIMOを構成するフローの片方向遅延を計算し、最長の遅延となるリンクに合わせて無線装置2の送信方向および受信方向のCPRIバッファ量(例えば、無線装置(CPRI)2a(
図5)のCPRI送信バッファ部204のバッファ量とCPRI受信バッファ部205のバッファ量など)を指示する。なお、無線装置2でバッファを行うと遅延計測に影響が出る可能性もあるため、予め無線装置2のCPRIバッファ管理部から送受信方向それぞれにどれくらいのバッファ量が設定されているかを考慮に入れてバッファ量を設定することも可能である。また、CPRI中継装置7(
図4)の信号合成部遅延通知部702から得た信号合成遅延を考慮に入れてもよい。
【0080】
図11は、実施形態の無線制御装置(Ethernet)1cの機能構成を示すブロック図である。無線制御装置(Ethernet)1cは、各部121~133を備える。
【0081】
(イーサネットバッファ量指示)
無線制御装置(Ethernet)1cでは、eCPRI遅延計測部128が無線装置2までの伝搬遅延を計測する。イーサネットバッファ量指示部126は、同一のMIMOを構成するフローの片方向遅延を計算し、最長の遅延となるリンクに合わせて無線装置2における送信方向および受信方向のイーサネットバッファ量を指示する。なお、無線装置2でバッファを行うと遅延計測に影響が出る可能性もあるため、予め無線装置2のCPRIバッファ管理部からCPRIにおいて送受信方向それぞれにどれくらいのバッファ量が設定されているか、また、イーサネットにおいて送受信方向それぞれにどれくらいのバッファ量が設定されているか考慮に入れてバッファ量を設定することも可能である。
【0082】
次に、
図12~
図18を参照して、各装置によって実行される処理について説明する。
図12は、実施形態の第1の遅延反映処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、CPRI-イーサネット変換装置3(
図2)によって実行される。
【0083】
まず、ステップS1において、ステータス取得部305は、CPRIネットワークのステータスを取得する。次に、ステップS2において、ステータス取得部305は、対象のポートのCPRIリンクがオペレーショナルステートであるか否かを判定し、Yesの場合はステップS3以降に進み、Noの場合はステップS1に戻る。
【0084】
ステップS3において、CPRI遅延計測部303はCPRIの遅延計測を行う。また、ステップS4において、CPRIパラメータ取得部306は、CPRI中継装置7の信号合成遅延を取得する。ステップS5において、CPRIパラメータ記憶部307は、取得したパラメータを記憶する。
【0085】
次に、ステップS6において、再変換判定部308は、上述の再変換判定を行い、Yesの場合はステップS7に進み、Noの場合はステップS8に進む。
【0086】
ステップS7において、パラメータ反映部310は、CPRIリンクにおける片方向遅延の値を半分にする。
【0087】
ステップS8において、パラメータ反映部310は、最大許容遅延の値からCPRIリンクにおける遅延を減算する。
【0088】
次に、ステップS9において、ストリームパラメータ通知部314は、CPRIリンクの遅延パラメータが反映されたeCPRIネットワークの遅延パラメータを他の装置に送信する。
【0089】
図13は、実施形態の第2の遅延反映処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、CPRI-イーサネット変換装置3(
図2)によって実行される。ステップS1~S7は、
図12と同様である。
【0090】
ステップS7の後、ステップS11において、パラメータ反映部310は、eCPRIの遅延計測において受信したタイムスタンプ値にCPRIの片方向遅延の値を加算するように設定する。
【0091】
次に、ステップS12において、パラメータ反映部310は、応答フレームを送信する時刻のタイムスタンプ値として本来の値からCPRIの片方向遅延の値を減算した値を通知するよう設定する。
【0092】
図14は、実施形態の第1のTSN設定処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、イーサネットブリッジ装置5(
図7)によって実行される。
【0093】
まず、ステップS21において、TSNパラメータ通知部505は、TSNパラメータをネットワーク設定装置6に通知する。
【0094】
次に、ステップS22において、TSN設定部507は、ネットワーク設定装置6からTSN設定情報を受信したか否かを判定し、Yesの場合はステップS23に進み、Noの場合はステップS22に戻る。
【0095】
ステップS23において、TSN設定部507は、TSN設定情報に基づいて、各ポートのTSN送受信制御部508、509やブリッジ処理部506に設定を行う。
【0096】
図15は、実施形態の第2のTSN設定処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、ネットワーク設定装置6(
図8)によって実行される。
【0097】
まず、ステップS31において、ストリームパラメータ取得部602は、ストリームパラメータを取得する。
【0098】
次に、ステップS32において、TSNパラメータ取得部604は、TSNパラメータを取得する。
【0099】
次に、ステップS33において、TSN設定情報生成部601は、ストリームパラメータとTSNパラメータに基づいてTSN設定情報を生成する。
【0100】
次に、ステップS34において、TSN設定情報送信部603は、TSN設定情報を、CPRI-イーサネット変換装置3や無線装置(Ethernet)2bやイーサネットブリッジ装置5に送信する。それらの装置では、イーサネットポート毎にTSN送受信制御部の設定が行われる。
【0101】
図16は、実施形態のバッファ量指示処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、無線制御装置(CPRI)1b(
図10)によって実行される。
【0102】
まず、ステップS41において、CPRI遅延計測部115は、無線装置2までの伝搬遅延を計測する。
【0103】
また、ステップS42において、CPRIバッファ量指示部113は、無線装置2の現在のバッファ量を取得する。
【0104】
また、ステップS43において、CPRIバッファ量指示部113は、CPRI中継装置7の信号合成遅延を取得する。
【0105】
次に、ステップS44において、CPRI遅延計測部115は、同一のMIMOを構成するフローの片方向遅延のうち、最大となる遅延を算出する。
【0106】
次に、ステップS45において、CPRIバッファ量指示部113は、最大となる遅延から、それぞれ、伝搬遅延と信号合成遅延を減算した値を無線装置2のバッファ量として無線装置2に指示する。
【0107】
図17は、実施形態の遅延通知処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、CPRI中継装置7(
図4)によって実行される。
【0108】
まず、ステップS51において、信号合成部遅延通知部702は、信号合成部705に設定されているバッファ量を取得する。
【0109】
次に、ステップS52において、信号合成部遅延通知部702は、バッファリングすることによって遅延する量を他の装置に通知する。
【0110】
図18は、実施形態のバッファ量設定処理を示すフローチャートである。この処理は、例えば、無線装置(CPRI)2a(
図5)によって実行される。
【0111】
まず、ステップS61において、CPRIバッファ量管理部203は、無線制御装置(CPRI)1bからバッファ量設定指示を受信する。
【0112】
次に、ステップS62において、CPRIバッファ量管理部203は、そのバッファ量設定指示に基づいて、CPRI送信バッファ部204とCPRI受信バッファ部205に、それぞれ指示された量のバッファ動作を行うように設定する。
【0113】
このように、本実施形態の通信中継システムSによれば、例えば、CPRI-イーサネット変換装置3が、第1のネットワーク(CPRIネットワーク)の遅延パラメータを取得して第2のネットワーク(eCPRIネットワーク)の遅延パラメータに反映させる(以下、単に「反映」ともいう。)ことで、異なる通信方式のネットワークを介して無線信号データの伝送を行う場合にも遅延の要求条件を満たした伝送を可能とすることができる。
【0114】
また、具体的には、例えば、上述のようなマップ情報を用いて、反映を実現することができる。
【0115】
また、反映の具体例としては、例えば、最大許容遅延時間やタイムスタンプ値等を基準にして、遅延パラメータの加算や減算により実現することができる。例えば、フローに関する全体の最大許容遅延時間からCPRIネットワークにおける片方向遅延時間を減算してeCPRIネットワークの最大許容遅延時間を生成することで、反映を実現することができる。
【0116】
また、各装置のパラメータ通知部によって、反映された遅延パラメータを他の装置に通知することができる。
【0117】
また、反映を行うトリガーとしては、例えば、CPRIネットワークのステータスがオペレーショナルステートになった場合を利用することができる。
【0118】
また、上述の再変換がある場合は、CPRIネットワークにおける片方向遅延時間の半分をeCPRIネットワークの遅延パラメータに反映させることで、正確な反映を実現することができる。
【0119】
また、TSN設定情報に基づいたTSNの設定にも適用することができる。
【0120】
また、MIMOで通信が行われている場合は、MIMOによる無線信号データの複数のフローそれぞれがアンテナに到達するタイミングと、MIMOによる信号合成にかかる遅延時間と、の少なくともいずれかに基づいて上述のバッファ量を決定することで、MIMOでの通信を支障なく実現できる。
【0121】
なお、本実施形態の通信中継システムSにおける各装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0122】
また、本実施形態の通信中継システムSにおける各装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークを介して他の通信投資と通信できるコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態のプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、本実施形態のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0124】
例えば、上述の実施形態では、CPRIネットワークを第1のネットワークの例とし、eCPRIネットワークを第2のネットワークの例としたが、これに限定されない。例えば、その逆で、eCPRIネットワークを第1のネットワークの例とし、CPRIネットワークを第2のネットワークの例としてもよい。
【0125】
また、CPRIではなくOBSAI(Open Base Station Architecture Initiative) R3-01を用いて無線信号データを転送する場合にも、本発明を適用できる。
【0126】
また、ネットワーク設定装置6は、イーサネットブリッジ装置5と一体となっていてもよい。すなわち、IEEE 802.1Qcc規格に記載されている完全分散型モデルのように動作する装置として実現してもよい。
【符号の説明】
【0127】
1a 無線制御装置(RF)
1b 無線制御装置(CPRI)
1c 無線制御装置(Ethernet)
2a 無線装置(CPRI)
2b 無線装置(Ethernet)
3 CPRI-イーサネット変換装置
4 RF-イーサネット変換装置
5 イーサネットブリッジ装置
6 ネットワーク設定装置
7 CPRI中継装置
CN コアネットワーク
S 通信中継システム