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7362342フィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外装用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】フィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外装用部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20231010BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231010BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20231010BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231010BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20231010BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L53/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/22
C08K5/098
C08K5/101
C08K5/13
C08K5/3435
C08L23/08
C08L23/12
C08L23/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019144193
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024955
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周一
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸昌
(72)【発明者】
【氏名】平野 一之介
(72)【発明者】
【氏名】中根 健
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-041251(JP,A)
【文献】特開平08-072625(JP,A)
【文献】特開2014-224272(JP,A)
【文献】国際公開第2005/103159(WO,A1)
【文献】特開2002-069249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00
C08K 3/013
C08K 3/04
C08K 3/22
C08K 5/098
C08K 5/101
C08K 5/13
C08K 5/3435
C08L 23/08
C08L 23/12
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体部(A1)70~100質量%、及び、極限粘度〔η〕が2.0~8.0dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体部(A2)0~30質量%(成分(A1)と成分(A2)の合計は100質量%)からなるプロピレン系重合体(A)60~75質量部、
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)(α-オレフィンの炭素原子数は3~10である)0~5質量部、
無機フィラー(C)(但し、酸化チタンを除く。)25~35質量部、
酸化防止剤(D)として、分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)0.01~1.0質量部と、分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)0.01~1.0質量部、
耐候安定剤(E)として、分子量1000の未満のベンゾエート系光安定剤(E-1)0.01~0.5質量部と、分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(E-2)0.01~0.5質量部、
顔料(F)として、カーボンブラック(F-1)0.4~1.0質量部と、酸化チタン(F-2)0.1~0.5質量部と、緑系顔料又は青系顔料(F-3)0.05~0.5質量部、
及び、
脂肪酸金属塩(G)0.01~1.0質量部
[但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量部とする。]
を含むフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物であって、
前記酸化防止剤(D-1)として、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを含み、
前記酸化防止剤(D-2)として、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレートを含む、フィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物
【請求項2】
プロピレン系重合体(A)が、プロピレン・エチレンブロック共重合体である請求項1に記載のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる自動車外装用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性、衝撃性、耐熱性の各物性に優れると共に、良好な漆黒性を発現するフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外装用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、その優れた機械物性や成形性、さらには他材料に比べて相対的に有利なコストパーフォーマンスの点から、自動車部品や家電部品など様々な分野での利用が進んでいる。近年では、様々な物性を向上する為に、エチレン・プロピレンブロック共重合体と、エチレン・α-オレフィン共重合体等のゴム成分と、無機フィラーと、その他の各種添加剤とを配合した組成物が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、結晶性エチレン・プロピレンブロック共重合体と、エラストマーと、無機充填剤と、有機燐系酸化防止剤と、窒素原子を含まず且つ分子量が500以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と、窒素原子を含むヒンダードフェノール系酸化防止剤と、N-H結合を有しないヒンダードアミン系光安定剤とを含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。そして、このポリプロピレン樹脂組成物は、耐候性、プラズマ処理後の塗装性及び塗装塗膜の耐黄変性に優れていると記載されている。
【0004】
特許文献2には、プロピレン-エチレンブロック共重合体と、オレフィン系エラストマーと、無機フィラーと、黒色顔料と、白色顔料と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とを含有するポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。そして、このポリプロピレン樹脂組成物は、耐候性、プラズマ処理後の塗装性及び塗装塗膜の耐黄変性に優れていると記載されている。
【0005】
特許文献3には、ポリプロピレンと、タルクと、エラストマーと、分子量が600~950のピペリジン誘導体で形成されたヒンダードアミン系耐光安定剤と、N-H結合を有しかつ分子量が1000以上のヒンダードアミン系耐光安定剤と、N-CH結合を有しかつ分子量が600以上のヒンダードアミン系耐光安定剤と、トリアリールフォスファイト系耐熱安定剤とを含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。また、金属の酸化物、硫化物、硫酸塩等の無機顔料、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンジジン系等の有機顔料を配合できることが記載されている。そして、このポリプロピレン系樹脂組成物は、耐光性に優れ、光沢変化の少ない成形品を長時間連続的に射出成形することができると記載されている。
【0006】
特許文献4には、結晶性ポリプロピレン成分及びプロピレンエチレンランダム共重合体成分からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体と、プロピレン重合体と、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴムと、分子量が700以上のヒンダードアミン系光安定剤とを含むポプロピレンブロック共重合体組成物が開示されている。また、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質を配合できることが記載されている。そして、このポプロピレンブロック共重合体組成物は、延性、寸法安定性、表面品質、耐候性、ガラス内面に生ずる曇りを防止に優れていると記載されている。
【0007】
特許文献5には、結晶性プロピレンブロック共重合体と、結晶性プロピレン単独重合体と、特定の組成を有するエラストマー性重合体組成物と、無機充填剤と、ヒンダードアミン系耐候安定剤と、ヒンダードフェノール系紫外線吸収剤とを含む自動車外装用樹脂組成物が開示されている。そして、この自動車外装用樹脂組成物は、流動性、物性(曲げ弾性率、耐衝撃性、硬度、脆化温度など)のバランスに優れ、加熱収縮率が小さく、フローマーク、ウエルドマークの少ない射出成形品を容易に成形できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-107897号公報
【文献】特開平9-95592号公報
【文献】特開2002-012720号公報
【文献】特開2008-101091号公報
【文献】特開2005-146013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、各物性に優れると共に、以上説明した従来技術においては検討されていなかった漆黒性の外観の必要性に着目した。すなわち本発明の目的は、剛性、衝撃性、耐熱性の各物性に優れると共に、良好な漆黒性を発現するフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外装用部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の組成を有するフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物が非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
【0011】
[1]プロピレン単独重合体部(A1)70~100質量%、及び、極限粘度〔η〕が2.0~8.0dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体部(A2)0~30質量%(成分(A1)と成分(A2)の合計は100質量%)からなるプロピレン系重合体(A)60~75質量部、
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)(α-オレフィンの炭素原子数は3~10である)0~5質量部、
無機フィラー(C)25~35質量部、
酸化防止剤(D)として、分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)0.01~1.0質量部と、分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)0.01~1.0質量部、
耐候安定剤(E)として、分子量1000の未満のベンゾエート系光安定剤(E-1)0.01~0.5質量部と、分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(E-2)0.01~0.5質量部、
顔料(F)として、カーボンブラック(F-1)0.4~1.0質量部と、酸化チタン(F-2)0.5質量部以下と、緑系顔料又は青系顔料(F-3)0.05~0.5質量部、及び、
脂肪酸金属塩(G)0.01~1.0質量部
[但し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量を100質量部とする。]
を含むフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物。
【0012】
[2]プロピレン系重合体(A)が、プロピレン・エチレンブロック共重合体である[1]に記載のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物。
【0013】
[3][1]又[2]に記載のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形してなる自動車外装用部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、剛性、衝撃性、耐熱性の各物性に優れると共に、良好な漆黒性を示すフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物及び自動車外装用部品を提供できる。
【0015】
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は特定の組成を有するので、剛性、衝撃性、耐熱性の各物性に優れている。また、特定の量の無機フィラー(C)と、特定の量の3種類の顔料(F-1)、(F-2)及び(F-3)[特に顔料(F-3)]とを組み合わせることにより、高級感のある良好な漆黒性を発現する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<プロピレン系重合体(A)>
本発明に用いるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体部(A1)70~100質量%、及び、極限粘度〔η〕が2.0~8.0dl/gであるエチレン・プロピレン共重合体部(A2)0~30質量%(成分(A1)と成分(A2)の合計は100質量%)からなるプロピレン系重合体である。
【0017】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体であっても良いし、プロピレン・エチレンブロック共重合体であっても良い。プロピレン単独重合体である場合はプロピレン単独重合体部(A1)の量は100質量%であり、プロピレン・エチレンブロック共重合体である場合はプロピレン単独重合体部(A1)の量は100質量%未満である。特にプロピレン系重合体(A)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。
【0018】
プロピレン系重合体(A)において、プロピレン単独重合体部(A1)の量は70~100質量%であり、好ましくは75~95質量%、より好ましくは80~90質量%である。エチレン・プロピレン共重合体部(A2)の量は0~30質量%であり、好ましくは5~25質量%、より好ましくは10~20質量%である。
【0019】
プロピレン系重合体(A)中のプロピレン単独重合体部(A1)及びエチレン・プロピレン共重合体部(A2)の各量は、後述する実施例の欄に記載のとおり、デカン不溶部とデカン可溶部の量によって求めることができる。具体的には、デカン不溶部とは、一般にn-デカン溶剤に室温(23℃)で不溶な成分であり、通常はプロピレン系重合体(A)中に占めるプロピレン単独重合体部(A1)と等価である。一方、デカン可溶部は、通常はプロピレン単独重合体部以外の部分(すなわちエチレン・プロピレン共重合体部(A2))と等価である。
【0020】
エチレン・プロピレン共重合体部(A2)の極限粘度〔η〕は2.0~8.0dl/gである。
【0021】
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は好ましくは5~300g/10分、より好ましくは10~250g/10分である。
【0022】
プロピレン系重合体(A)は、公知の方法により製造できる。プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン重合用触媒を用いてプロピレンを重合し、さらにプロピレンとエチレンを共重合させることにより、プロピレン系ブロック共重合体が得られる。固体状チタン触媒成分(I)は、例えば、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び必要に応じて電子供与体を含む。この固体状チタン触媒成分(I)には公知の成分を制限無く用いることができる。有機金属化合物触媒成分(II)は、周期表の第1族、第2族及び第13族から選ばれる金属元素を含む成分である。例えば、第13族金属を含む化合物(有機アルミニウム化合物等)、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物等を用いることができる。中でも、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0023】
プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合し、次いでプロピレンとエチレンを共重合させるか、又は予備重合させて得られる予備重合触媒の存在下にプロピレンを重合し、次いでプロピレンとエチレンの共重合を行う等の方法で製造できる。重合は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。
【0024】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
本発明に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンと炭素原子数が3~10のα-オレフィンとの共重合体であり、通常はランダム共重合体である。
【0025】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)を構成する炭素原子数3~8のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテンが挙げられる。α-オレフィンは一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。中でも、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体(C)としては、特にエチレン-オクテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体が好ましい。
【0026】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のエチレン含量は、好ましくは70~95モル%、より好ましくは75~95モル%である。
【0027】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~30g/10分、より好ましくは1~10g/10分である。
【0028】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度は、好ましくは850~900g/cm、より好ましくは850~890g/cmである。
【0029】
<無機フィラー(C)>
本発明に用いる無機フィラー(C)の種類は特に限定されず、公知の各種無機フィラーを用いることができる。具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄が挙げられる。さらに亜鉛、銅、鉄、アルミニウム等の金属粉末あるいは金属繊維も挙げられる。これらは一種を単独で用いても良いし、2 種以上を組み合わせて用いても良い。中でも、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維が好ましく、特に剛性と衝撃のバランスが良好なタルクが好ましい。
【0030】
タルク等の無機フィラー(C)の平均粒径は、通常は1~15μm、好ましくは1~6μmである。平均粒径がこれら範囲の上限値以下であると、剛性及び耐衝撃性の良好な物性バランスを維持できる傾向にある。この平均粒径はレーザー回折法で測定した値である。
【0031】
<酸化防止剤(D)>
本発明に用いる酸化防止剤(D)は、分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)と、分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)である。
【0032】
分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)の種類は特に限定されず、公知の各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)は、市販品として入手できる。好ましい市販品は、例えば、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製、Irganox(登録商標)1010、分子量=1177.7)である。
【0033】
分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)の種類は特に限定されず、公知の各種ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)は、市販品として入手できる。好ましい市販品は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製、Irganox(登録商標)1076、分子量=530.9)、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート(BASFジャパン株式会社製、Irganox(登録商標)3114、分子量=784.0)である。
【0034】
<耐候安定剤(E)>
本発明に用いる耐候安定剤(E)は、分子量1000の未満のベンゾエート系光安定剤(E-1)と、分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(E-2)である。なお、耐候安定剤(E)は、紫外線吸収剤と称して市販されている場合もある。
【0035】
分子量1000の未満のベンゾエート系光安定剤(E-1)の種類は特に限定されず、公知の各種ベンゾエート系光安定剤を用いることができる。このようなベンゾエート系光安定剤(E-1)は、市販品として入手できる。好ましい市販品は、例えば、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標)120、分子量=438.7)である。
【0036】
分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(E-2)の種類は特に限定されず、公知の各種ヒンダードアミン系光安定剤を用いることができる。このようなヒンダードアミン系光安定剤(E-2)は、市販品として入手できる。好ましい市販品は、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(株式会社ADEKA製、商品名LA-52、分子量=847.2)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(株式会社ADEKA製、商品名LA-57、分子量=792)、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル/トリデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート(株式会社ADEKA製、商品名LA-62、分子量=約900)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル/トリデシル-1,2,3,4-ブタンカルボキシラート(株式会社ADEKA製、商品名LA-67、分子量=約900)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セパケート(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標)770、分子量=480.7)である。
【0037】
<耐候安定剤(E)>
本発明に用いる顔料(F)は、カーボンブラック(F-1)と、酸化チタン(F-2)と、緑系顔料又は青系顔料(F-3)である。
【0038】
カーボンブラック(F-1)の種類は特に限定されず、公知の各種カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラック(F-1)は、市販品として入手できる。その平均粒径も制限されないが、平均一次粒子径は好ましくは10~40nmである。
【0039】
酸化チタン(F-2)の種類や平均粒径は特に限定されず、公知の各種酸化チタンを用いることができる。酸化チタン(F-2)は、市販品として入手できる。
【0040】
緑系顔料又は青系顔料(F-3)の種類は特に限定されず、公知の各種緑系顔料又は各種青系顔料を用いることができる。好ましい具体例としては、フタロシアニン系顔料が挙げられる。緑系顔料又は青系顔料(F-3)は、市販品として入手できる。好ましい市販品は、例えば、青系顔料(クラリアント社製、商品名PV Fast Blue A4R)、緑系顔料(Heubach社製、商品名Vynamon Green 600734)である。
【0041】
<脂肪酸金属塩(G)>
本発明に用いる脂肪酸金属塩(G)の種類は特に限定されず、公知の各種脂肪酸金属塩を用いることができる。具体例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。脂肪酸金属塩(G)は、市販品として入手できる。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、核剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、老化防止剤、軟化剤、分散剤、滑剤などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。添加剤の混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を用いることもできる。
【0043】
<フィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、以上説明した各成分(A)~(G)及び必要に応じて他の任意成分を含む組成物である。以下に説明する各成分の量は、成分(A)~(C)の合計量を100質量部とした場合の量である。
【0044】
プロピレン系重合体(A)の量は60~75質量部であり、好ましくは65~75質量部である。
【0045】
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の量は0~5質量部であり、好ましくは0~4質量部である。
【0046】
無機フィラー(C)の量は25~35質量部であり、好ましくは30~35質量部である。
【0047】
分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-1)の量は0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.1~0.2質量部である。分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)の量は0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.1~0.2質量部質量部である。
【0048】
分子量1000の未満のベンゾエート系光安定剤(E-1)の量は0.01~0.5質量部であり、好ましくは0.05~0.2質量部である。分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(E-2)の量は0.01~0.5質量部であり、好ましくは0.05~0.2質量部である。
【0049】
カーボンブラック(F-1)の量は0.4~1.0質量部であり、好ましくは0.5~0.9質量部である。酸化チタン(F-2)の量は0.5質量部以下であり、好ましくは0.1~0.3質量部である。緑系顔料又は青系顔料(F-3)の量は0.05~0.5質量部であり、好ましくは0.1~0.4質量部である。
【0050】
脂肪酸金属塩(G)の量は0.01~1.0質量部であり、好ましくは0.1~0.5質量部である。
【0051】
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分(A)~(G)及び必要に応じて他の任意成分を配合することにより製造できる。各成分は、任意の順番で逐次配合しても良いし、同時に混合しても良い。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にあるいは逐次に混合又は溶融混練する方法が挙げられる。
【0052】
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは5~100g/10分、より好ましくは5~50g/10分である。
【0053】
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物の成形法は特に限定されず、樹脂組成物の成形法として公知の様々な方法を用いることができる。特に射出成形が好ましい。本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、例えば自動車外装用部品、家庭用品、家電部品など様々な分野に好適に用いることができる。特に、この樹脂組成物を射出成形してなる自動車外装用部品が好適である。自動車外装用部品の具体例としては、バンパー、サイドモール、バックドア、フェンダー、バックパネルが挙げられる。
【実施例
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0055】
実施例及び比較例における物性の測定及び評価は、以下の方法により行なった。
【0056】
[メルトフローレート(MFR)(g/10分)]
ISO 1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
【0057】
[極限粘度[η]]
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈し、その後同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0058】
[デカン可溶部量(Dsol)及び不溶部量(Dinsol)(質量%)]
ガラス製の測定容器に試料[成分(A)]約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この質量を下式においてx2(g)と表した。)、n-デカン500ml、及びn-デカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温して試料を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られた析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得、この質量を10-4gの単位まで測定した(この質量を下式においてx(g)と表した)。この測定値を用いて、室温(すなわち23℃)におけるデカン可溶部量(Dsol)及び不溶部量(Dinsol)を下記式によって決定した。
sol(質量%)=100×(500×x)/(100×x
insol(質量%)=100-Dsol
【0059】
[曲げ弾性率(MPa)]
ASTM D790に準拠し、以下の条件で測定した。
温度:23℃
試験片:127mm(長さ)×12.7mm(幅)×6.35mm(厚み)
曲げ速度:30mm/min
スパン間:100cm
【0060】
[荷重たわみ温度(℃)]
ASTM D648に準拠し、以下の条件で測定した。
試験片:127mm(長さ)×12.7mm(幅)×6.35mm(厚み)
試験片の置き方:エッジワイズ
曲げ応力:0.45MPa
【0061】
[アイゾッド衝撃強度(J/m)]
ASTM D256に準拠し、以下の条件で測定した。
試験片:63.5mm(長さ)×12.7mm(幅)×3.2mm(厚み) ノッチ有
試験温度:-30℃
【0062】
[耐候性試験(SWOM)]
以下の条件で色差(ΔE)を測定し、クラックの有無を確認した。
光源:サンシャインカーボアーク
BPT: 83℃
降雨条件:12/60分
照射時間:2000hr
試験片:60mm(長さ)×40mm(幅)×3mm(厚み)
色差:耐候性試験前のサンプルと耐候試験2000hr後のΔEを算出
色差は以下の条件で色差計を用いて確認
反射法、SCI、光源:C/2
外観:マイクロスコープにてクラックの有無を確認
【0063】
[耐熱性試験]
以下の条件で耐熱性試験を実施した。
試験片(1):63.5mm(長さ)×12.7mm(幅)×3.2mm(厚み)ノッチ有
試験片(2):60mm(長さ)×40mm(幅)×3mm(厚み)
試験機:ギアオーブン
試験温度:120℃
試験時間:2000hr
【0064】
(1)耐熱性試験後の衝撃強度保持率(%)
耐熱性試験後の試験片(1)のアイゾッド衝撃強度を先に説明した方法により測定し、耐熱性試験前のアイゾッド衝撃強度で割って100を掛けることで衝撃強度保持率(%)を算出した。
(2)耐熱性試験後の外観
耐熱性試験後の試験片(2)をマイクロスコープを用いてクラックの有無を確認した。
【0065】
[色調]
JIS Z 8722に準拠し、以下の条件で色調を測定し、JIS Z 8781に従ってL値、a値、b値を算出した。
試験片:90mm(長さ)×50mm(幅)×2mm(厚み)
光源:D65
視野:10°
正反射光処理:SCI
【0066】
なお、組成物のL値、a値、b値が以下の範囲内になる場合、漆黒性に優れる傾向にあるので、本試験ではこれを目標値とする。
L値:<27
a値:-1~0
b値:-1.5~0.5
【0067】
実施例及び比較例においては、成分(A)として、以下の製造例1で得たプロピレン系ブロック共重合体を使用した。
【0068】
<製造例1>
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442ml及び2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とし、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0069】
この均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、均一溶液75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌保持した。
【0070】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mLの四塩化チタンに再懸濁させ、その後再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカン及びヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0071】
この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mLの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mLを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40mL、(1+1)硫酸10mLを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mLメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃HPO溶液1mLとチタンの発色試薬として3%Hを5mL加え、さらにイオン交換水で100mLにメスアップしたこのメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測しこの吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0072】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP 12.5重量%であった。
【0073】
(2)前重合触媒の製造
前記の固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを600g挿入し、70分間攪拌しながら反応させた。
【0074】
(3) 本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を123NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体状チタン触媒成分して0.56g/時間、トリエチルアルミニウム1.9mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.7mL/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は69℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
【0075】
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器には、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が10.8モル%になるように供給し、重合温度68℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
【0076】
次いで、得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、このスラリーをガス化させ、気固分離を行った。その後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.44(モル比)、水素/エチレン=0.12(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度70℃、圧力0.6MPa/Gで重合を行った。
【0077】
次いで、得られたプロピレン系ブロック共重合体を80℃で真空乾燥を行った。このプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は14g/10分であり、デカン可溶部(エチレン・プロピレン共重合体部(A2))の量は12質量%であり、デカン可溶部のエチレン含量は47モル%であり、デカン可溶部の極限粘度[η]は2.8dl/gであった。
【0078】
実施例及び比較例においては、成分(B)~成分(G)として、以下の各化合物を使用した。
【0079】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
エチレン・1-ブテンランダム共重合体(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)A1050S、エチレン含量=83モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)=2g/10分、密度=0.862g/cm
【0080】
<無機フィラー(C)>
タルク(林化成株式会社製、商品名GHL-7。平均粒径5.8μm)
【0081】
<酸化防止剤(D)>
「D-1」:分子量1000以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤(ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASFジャパン株式会社製、Irganox(登録商標)1010、分子量=1177.7)
「D-2」:分子量1000未満のヒンダードフェノール系酸化防止剤(D-2)(トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、BASFジャパン株式会社製、Irganox(登録商標)3114、分子量=784.0)
「D-P」:リン系酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製、Irgafos(登録商標)168)
「D-S」:イオウ系酸化防止剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名DMTP「ヨシトミ」)
【0082】
<耐候安定剤(E)>
「E-1」:分子量1000未満のベンゾエート系光安定剤(2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin(登録商標)120、分子量=438.7)
「E-2」:分子量1000未満のヒンダードアミン系光安定剤(テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラート、株式会社ADEKA製、商品名LA-52、分子量=847.2)
【0083】
<顔料(F)>
「F-1」:カーボンブラック(Orion Engineered Carbons社製、商品名HIBLACK 890B、平均一次粒子径=15nm)
「F-2」:酸化チタン(ケマーズ社製、商品名Ti-Pure R-104)
「F-3」:実施例1~4と比較例2~5においては青系顔料(クラリアント社製、商品名PV Fast Blue A4R)を0.05重量部、緑系顔料(Heubach社製、商品名Vynamon Green 600734)を0.15重量部組み合わせ使用した。
【0084】
<脂肪酸金属塩(G)>
脂肪酸金属塩(日油株式会社製、商品名マグネシウムステアレートG)
【0085】
<実施例1~4、比較例1~5>
各成分(A)~(G)を表1に示す配合量(質量部)で混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX(登録商標)30α)を用い、シリンダ温度180℃、スクリュー回転750rpm、押出し量60kg/hの条件で押出し、フィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0086】
得られたフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物から製造した射出成形体(試験片)の物性を表2に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
表1及び2に示す結果から明らかなように、実施例1~4においては、剛性と低温(-30℃)でのアイゾッド撃強度を非常にバランス良く発現した。また、荷重たわみ温度も非常に高かった。したがって、高温時での剛性維持にも有効である。さらにL値、a値、b値が先に説明した目標値となり、高級感のある良好な漆黒性を発現した。また、耐候性(SWOM)、耐熱性試験後の衝撃強度保持率が高く、クラックも発生しなかった。
【0090】
比較例1においては、緑系顔料又は青系顔料(F-3)を配合しなかったので、L値、a値、b値が目標値とならず、漆黒性が発現しなかった。
【0091】
比較例2においては、無機フィラー(C)の配合量が少な過ぎるので、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の点で劣り、物性バランスが悪かった。また荷重たわみ温度が低く、高温時での剛性維持の点でも劣っていた。
【0092】
比較例3においては、無機フィラー(C)の配合量が多過ぎるので、緑系顔料又は青系顔料(F-3)を配合してもL値が目標値とならず、良好な漆黒性は発現しなかった。
【0093】
比較例4においては、一般に高温時の耐熱性の向上の点で優れるイオウ系酸化防止剤(D-S)を配合したが、耐熱性試験においてクラックが発生した。
【0094】
比較例5においては、リン系酸化防止剤(D-P)を配合したが、耐熱性試験においてクラックが発生し、また耐熱性試験後の衝撃強度保持率が低かった。
【0095】
以上の結果から明らかなように、本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は特定の組成を有するので、剛性、衝撃性、耐熱性の各物性に優れている。また、特定の量の無機フィラー(C)と、特定の量の3種類の顔料(F-1)、(F-2)及び(F-3)[特に顔料(F-3)]とを組み合わせることにより、高級感のある良好な漆黒性を発現する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のフィラー含有ポリプロピレン系樹脂組成物は、例えばバンパー、サイドモール、バックドア、フェンダー、バックパネル等の自動車外装用部品、家庭用品、家電部品などの種々の分野の成形体材料として有用であり、特に自動車外装用部品に好適に用いることができる。