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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】使い捨て着用物品の包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/07 20170101AFI20231010BHJP
【FI】
B65D85/07
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019172175
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021049998
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 侑加
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070175(JP,A)
【文献】特表2009-536069(JP,A)
【文献】特開2014-198064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0120241(US,A1)
【文献】特開2019-064132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/07
B65D 30/00-33/38
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て着用物品と、これを包む樹脂製の包装フィルムと、を有しており、
前記包装フィルムにおける外面及び内面の少なくとも一方には、深さ5~11μmのエンボス凹部が形成されているとともに、このエンボス凹部を有する面と反対側の面には、前記エンボス凹部を有する部分が押し出されてエンボス凸部が形成されており、
前記包装フィルムにおける少なくとも前記深さのエンボス凹部を有する領域では、外面の光沢度が20~69%で、かつ全光線透過率が15%以下である、
ことを特徴とする、使い捨て着用物品の包装体。
【請求項2】
前記包装フィルムは、前記エンボス凹部を内面に有し、この内面のエンボス凹部と対応するエンボス凸部を外面に有する、
請求項1記載の使い捨て着用物品の包装体。
【請求項3】
前記エンボス凹部は、底部の重心間隔が1.5~3.0mmとなる所定のパターンで配列された、底部の長径が0.2~0.7mmのドット状凹部を含む、
請求項1又は2記載の使い捨て着用物品の包装体。
【請求項4】
前記包装フィルムにおける、前記エンボス凹部を有しない部分の厚みが、前記エンボス凹部の深さの1~11倍である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品の包装体。
【請求項5】
前記包装フィルムからなる六面体状の収容部分を有し、
多数の前記使い捨て着用物品が前記収容部分に収容されており、
前記収容部分は、前記エンボス凹部及び前記エンボス凸部を有しており、
前記収容部分における前記エンボス凹部及び前記エンボス凸部を有する領域が、前記多数の使い捨て着用物品の膨張力により周方向に張っている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品を樹脂製包装フィルムで包装してなる物品の包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、使い捨ておむつや、生理用ナプキン等の使い捨て着用物品は、樹脂製の包装フィルムで包装されて販売されている。このような使い捨て着用物品の包装体の販売時の外観は、包装フィルムにより構成されるため、包装フィルムには審美性が要求される。
【0003】
包装フィルムの審美性を向上させるものとして、包装フィルムに所定のパターンでエンボス凹部を形成することが提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0004】
しかしながら、樹脂製の包装フィルムにエンボス凹部を形成する場合、加工の容易性を考慮すると、エンボス凹部は浅い方が好ましいが、そうすると、エンボスの視認性が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-070175号公報
【文献】特開2018-070176号公報
【文献】特開2018-070177号公報
【文献】特開2019-011104号公報
【文献】特開2019-011105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、包装フィルムにおけるエンボス加工の容易性を損ねずに、エンボスの視認性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した使い捨て着用物品の包装体は次のとおりである。
<第1の態様>
使い捨て着用物品と、これを包む樹脂製の包装フィルムと、を有しており、
前記包装フィルムにおける外面及び内面の少なくとも一方には、深さ5~50μmのエンボス凹部が形成されているとともに、このエンボス凹部を有する面と反対側の面には、前記エンボス凹部を有する部分が押し出されてエンボス凸部が形成されており、
前記包装フィルムにおける少なくとも前記深さのエンボス凹部を有する領域では、外面の光沢度が20%以上で、かつ外面の全光線透過率が25%以下である、
ことを特徴とする、使い捨て着用物品の包装体。
【0008】
(作用効果)
本物品の包装体は、包装フィルムに形成されるエンボス凹部が比較的浅く、したがってエンボス凸部も比較的低いものでありながら、包装フィルムの外面の光沢度を十分に高くし、かつ透明性を十分に低くして、正反射光を強くすることにより、包装フィルムの視認角度によってエンボスの凹凸による微小な反射光の変化が目立つようになり、エンボスの視認性、つまりエンボスによる審美性に優れるものとなる。もちろん、包装フィルムに形成されるエンボス凹部が比較的浅く、したがってエンボス凸部も比較的低いため、エンボス加工の容易性が損なわれることもない。
なお、光沢度は、JIS Z 8741-1997に規定される「鏡面光沢度?測定方法」に準拠して測定される角度60度の光沢度を意味し、例えば日本電色工業株式会社の光沢計VG7000を用いて測定することができる。また、全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に規定される「プラスチック?透明材料の全光線透過率の試験方法-第 1 部:シングルビーム法」に準拠して測定される値を意味する。
【0009】
<第2の態様>
前記包装フィルムは、前記エンボス凹部を内面に有し、この内面のエンボス凹部と対応するエンボス凸部を外面に有する、
第1の態様の使い捨て着用物品の包装体。
【0010】
(作用効果)
本態様の包装フィルムの外面に形成される凸部は、角がより丸いものとなるため、外面におけるエンボスの視認性は低いものとなる。しかし、このような場合であっても、光沢度及び全光線透過率を前述の範囲内とすることにより、エンボスの視認性を改善することができる。
【0011】
<第3の態様>
前記エンボス凹部は、底部の重心間隔が1.5~3.0mmとなる所定のパターンで配列された、底部の長径が0.2~0.7mmのドット状凹部を含む、
第1又は2の態様の使い捨て着用物品の包装体。
【0012】
(作用効果)
前述のエンボスの視認性の向上において、エンボス凹部の寸法は特に限定されるものではないが、本態様のドットパターンであると好ましい。なお、重心間隔は最も近いエンボス凹部に対する間隔を意味し、長径とはエンボス凹部が円形の場合には直径を意味する。
【0013】
<第4の態様>
前記包装フィルムにおける、前記エンボス凹部を有しない部分の厚みが、前記エンボス凹部の深さの1~11倍である、
第1~3のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品の包装体。
【0014】
(作用効果)
エンボス凹部の深さ及び包装フィルムの厚みが本態様の範囲内にあると、エンボス加工の容易性が高いものとなるが、エンボスの視認性は低いものとなる。しかし、このような場合であっても、光沢度及び全光線透過率を前述の範囲内とすることにより、エンボスの視認性を改善することができる。
【0015】
<第5の態様>
前記包装フィルムからなる六面体状の収容部分を有し、
多数の前記使い捨て着用物品が前記収容部分に収容されており、
前記収容部分は、前記エンボス凹部及び前記エンボス凸部を有しており、
前記収容部分における前記エンボス凹部及び前記エンボス凸部を有する領域が、前記多数の使い捨て着用物品の膨張力により周方向に張っている、
第1~4のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品の包装体。
【0016】
(作用効果)
前述の光沢度及び全光線透過率によるエンボスの視認性向上は、正反射を利用するものであるため、皺が寄りやすい包装形態よりも、本態様のような皴が寄りにくい包装形態に適用する方がエンボスの視認性が良好となるため好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エンボス加工の容易性を損ねずに、エンボスの視認性を向上させることができる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】物品の包装体の斜視図である。
図2】物品の包装体の断面図である。
図3】物品の包装体の斜視図である。
図4】包装フィルムの(a)断面図及び(b)平面図である。
図5】エンボスパターンを示す正面図である。
図6】エンボスパターンを示す正面図である。
図7】試験方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、使い捨て着用物品の包装体についてより詳細に説明する。図1及び図2は、一例としての使い捨て着用物品の包装体1を示している。この使い捨て着用物品の包装体1は、樹脂製の包装フィルム20により使い捨て着用物品10を包装してなるものである。
【0020】
包装フィルム20の素材は特に限定されないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなど、通常包装に使用されるプラスチックフィルムを単体で又は複合素材として使用することができる。衛生用品の分野では、ポリエチレンフィルムが汎用されているため好ましく、中でも柔軟性に富むLDPE(低密度ポリエチレン:密度0.900~0.925g/cm3)やMDPE(中密度ポリエチレン:密度0.925~0.940g/cm3)が好適である。フィルムの厚み(後述するエンボス凹部21やエンボス凸部22以外の部分の厚み)としては、50~100μm程度が好適である。
【0021】
包装フィルム20による包装構造は特に限定されず、図示例のようなガセット袋包装とするほか、図示しないが、三方閉じ包装、四方閉じ包装、オーバーラップ包装(キャラメル包装又はフィンシールともいわれる)、ピロー包装、深絞り真空包装等の公知のフィルム包装を採用することができる。ガセット袋包装としては、図1に示すような側面折り込み型とする他、図3に示すような上下面折り込み型とすることもできる。
【0022】
より詳細には、図1及び図2に示される使い捨て着用物品の包装体1、及び図3に示される使い捨て着用物品の包装体1は、包装フィルム20からなる六面体状の収容部分2を有し、この収容部分2に多数の使い捨て着用物品10が収容されている。また、使い捨て着用物品の包装体1は、収容部分2以外に、図1及び図2に示される例のように手挿入スリット3hを有する手提げ部3や、図3に示される例の手提げ紐4のような付属部分を有していても、有しなくても(収容部分2のみでも)よい。
【0023】
包装体1は、包装フィルム20により使い捨て着用物品を緩く包装するものであっても、きつく包装するものであってもよい。また、包装体1内に使い捨て着用物品が規則的に入っていても、不規則に入っていてもよい。例えば、使い捨て着用物品の包装体1では、図示例のように多数の使い捨て着用物品10が積層されかつ圧縮された状態で収容され、その結果として収容部分2の正面、背面及び両側面が、多数の使い捨て着用物品10の膨張力により周方向にぴんと張っていることが多い。
【0024】
包装フィルム20の外面には、商品名、商品やキャラクターの写真若しくは絵、装飾のための模様(水玉模様や花柄等)、商品説明(使用方法や使用補助、サイズ等の機能表示、製造者や商品名)等の文字情報、光学的に読取可能な一次元コードや二次元コード含むデザインを印刷することができる。
【0025】
デザインが印刷されたデザイン領域25は、包装フィルム20の全体にわたり一体的に設けられていてもよいし、包装フィルム20の一部にだけに設けられ、他の部位はデザインが印刷されていない非デザイン領域26となっていてもよい。例えば、図示例の包装体1を構成する包装フィルム20のうち、収容部分2の正面の一部、背面の一部及び側面の一部に、それぞれデザイン領域25が設けられ、手提げ部3等の付属部分にはデザイン領域25が設けられていなくてもよい。また、デザイン領域25は、収容部分2の複数の面にわたり設けられていても、各面ごとに設けられていてもよいし、一つの面の複数個所に個別にデザイン領域25が設けられていてもよい。
【0026】
図4に示すように、包装フィルム20における内面20i(使い捨て着用物品と対向する面)にはエンボス凹部21が形成されており、外面20xには、エンボス凹部21を有する部分が押し出されてエンボス凸部22が形成されている。エンボス凹部21を包装フィルム20の外面20xに形成することにより、エンボス凸部22を包装フィルム20の内面20iに形成してもよいし、エンボス凹部21を包装フィルム20の内外両面20i,20xに形成することにより、エンボス凸部22を包装フィルム20の内外両面20i,20xに形成してもよい。このようなエンボス凹部21及びエンボス凸部22を有する包装フィルム20は、スチールマッチエンボスやスチールラバーエンボス等の公知のエンボス加工を施すことにより製造することができる。
【0027】
エンボス凹部21及びエンボス凸部22は、包装フィルム20の全体にわたり所定のパターンで設けられていてもよいし、包装フィルム20の一部にだけに設けられ、他の部位には設けられていなくてもよい。例えば、図示例の包装体1を構成する包装フィルム20のうち、収容部分2の正面、背面及び両側面だけにエンボス凹部21及びエンボス凸部22が設けられ、手提げ部3等の付属部分にはエンボス凹部21及びエンボス凸部22が設けられていなくてもよい。
【0028】
エンボス凹部21及びエンボス凸部22の個々の形状は、特に限定されるものではない。例えば一つのエンボス凹部21(したがって一つのエンボス凸部22も同様)の形状は、図示例のような円形とするほか、楕円形、三角形や四角形等の各種多角形、雲形や花形等の象形図形、文字形等とすることができる。
【0029】
エンボスパターン(エンボス凹部21及びエンボス凸部22の配列)も特に限定されるものではない。エンボス凹部21及びエンボス凸部22を、図5に示すように斜め格子状に配列したり、図6(a)に示すように水玉模様状に配列したり、図6(b)に示すように七宝模様状に配列したりするのは一つの好ましい例である。これとともに、又はこれに代えて、エンボス凹部21及びエンボス凸部22を、各種の幾何学的図形(例えば水玉模様における円)、象形図形(物の形を抽象化して表した図形(例えば星形)、絵(例えば花の絵)、文字等を表すように配列するのも好ましい。
【0030】
エンボスパターンの寸法は特に限定されるものではないが、例えば、エンボス凹部21は、底部21Bの重心間隔21s(最も近いエンボス凹部21の底部21Bに対する間隔)が1.5~3.0mmとなる所定のパターンで配列されているのは好ましい。また、エンボス凹部21の寸法は特に限定されるものではないが、底部21Bの長径21d(円形の場合には直径)が0.2~0.7mmのドット状凹部であると好ましい。
【0031】
包装フィルム20におけるエンボス凹部21の深さ21h(最大値)は5~50μmであると、包装フィルム20に形成されるエンボス凹部21が比較的浅く、したがってエンボス凸部22も比較的低いため、エンボス加工の容易性が損なわれることもない。より好ましくは、包装フィルム20におけるエンボス凹部21の深さ21hは5~11μmである。しかし、この場合、外面20xにおけるエンボスの視認性は低いものとなる。特に、図示例のように、包装フィルム20における内面20i(使い捨て着用物品と対向する面)にはエンボス凹部21が形成されており、外面20xには、エンボス凹部21を有する部分が押し出されてエンボス凸部22が形成されている場合は、エンボス凸部22の頂部の縁がなだらかになるため、なおさら視認性が低下する。また、包装フィルム20における、エンボス凹部21を有しない部分の厚み20tが、エンボス凹部21の深さ21hの1~11倍であると、エンボス加工の容易性は高いものとなるが、エンボスの視認性は低いものとなる。
【0032】
このような場合であっても(またそうでなくても)エンボスの視認性を向上させるために、包装フィルム20の外面20xのうち、少なくとも上記範囲内の深さ21hのエンボス凹部21を有する領域の外面20xの光沢度は20%以上、特に50%以上であると好ましい。また、同様の理由により、少なくとも上記範囲内の深さ21hのエンボス凹部21を有する領域の外面20xの全光線透過率は25%以下であると好ましい。すなわち、包装フィルム20に形成されるエンボス凹部21が比較的浅く、したがってエンボス凸部22も比較的低いものであっても、包装フィルム20の外面20xの光沢度を十分に高くし、かつ透明性を十分に低くして、正反射光を強くすることにより、包装フィルム20の視認角度によってエンボスの凹凸による微小な反射光の変化が目立つようになり、エンボスの視認性、つまりエンボスによる審美性に優れるものとなる。つまり、包装フィルム20の表面を垂直方向から視認するよりも、斜め方向から視認する方がよりはっきりとエンボスを視認できるようになる。例えば、エンボス凹部21の深さ21h、光沢度及び全光線透過率を調節することにより、包装フィルム20の表面に対して垂直方向からはまったく視認できない又は視認しにくいエンボスが、斜め方向からははっきりと視認できる、といった審美性を有する包装体1とすることも可能である。
【0033】
すべてのエンボス凹部21が上記範囲内の深さ21hである必要はなく、エンボスの視認性を向上させる一部のエンボス凹部21のみが上記範囲内の深さ21hを有するだけでもよい。同様に、包装フィルム20の外面20xの全体の光沢度及び全光線透過率が上記範囲内にある必要はなく、エンボスの視認性を向上させる一部の領域のみ包装フィルム20の外面20xの光沢度及び全光線透過率が上記範囲内となっているだけでもよい。また、包装フィルム20の外面20xの光沢度及び全光線透過率だけでなく、包装フィルム20の内面20iの光沢度及び全光線透過率も、外面20xの光沢度及び全光線透過率と同様であると、包装体1の開封により包装フィルム20の内面20iが露出した際にも、エンボスの視認性が良好となるため好ましいが、包装体1フィルムの内面20iの光沢度は包装フィルム20の外面20xの光沢度より低く(例えば1/2倍以下)てもよい。
【0034】
包装フィルム20の表面の光沢度は、印刷によりニス(光沢度を上げる場合はグロスニス、下げる場合にはマットニス)を包装フィルム20の表面に塗布するOPニス加工や、公知の光沢コートにより調節することができる。特に、エンボス凹部21を形成するためのエンボス加工の後で、エンボス凹部21を有する領域の一部にニス(クリアタイプ)や印刷を施すと、凹凸部分にインクが埋まり、正反射の割合が増えるため好ましい。また、印刷を2層とすると、2層目上面の正反射に1層目上面の正反射の一部が加わるため、より正反射の割合を増やすことができる。
【0035】
包装フィルム20の外面の全光線透過率は20%以下であるとより好ましく、15%以下であると特に好ましい。包装フィルム20の全光線透過率を上記範囲内とするために、包装フィルム20の原料に白色等の着色顔料を内添するか、これとともに又はこれに代えて包装フィルム20の表面に印刷により不透明度の高い着色を施すことができる。
【0036】
前述の光沢度及び全光線透過率によるエンボスの視認性向上は、正反射を利用するものであるため、皺が寄りやすい包装形態よりも、皴が寄りにくい包装形態に適用する方がエンボスの視認性が良好となるため好ましい。具体的には、図示例の包装体1のように、収容部分2におけるエンボス凹部21及びエンボス凸部22を有する領域が、内部の多数の使い捨て着用物品10の膨張力により周方向にぴんと張っていると好ましい。
【0037】
(効果確認試験)
表1及び表2に示すエンボス加工を施した包装フィルムを各種製作し、次の視認性評価試験を行った。すなわち、図7に示すように、直管40W型蛍光灯50が9cmの間隔で平行に2本配置された照明に対し、斜め45度、かつ距離L1(5m)の位置に、水平かつ黒色の上面61を有する試験台60を設置し、この試験台60の上面61に、包装フィルム20を外面が上となるようにピンと張った状態(フィルム素材を延ばさずに皺を無くした状態)で貼り付けた後、試験台60の上面61に対して照明と反対側の斜め45度、かつ距離L2(40cm)の位置から包装フィルム20の外面を作業員により目視し、エンボスの視認性を三段階で評価した。試験結果は表1及び表2に示すとおりとなった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0041】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0042】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0043】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、使い捨ておむつや、生理用ナプキン、使い捨ておむつカバー等の使い捨て着用物品、特に吸収体を備えた吸収性物品の包装体に適しているが、これに限られず他の物品の包装体にも適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…包装体、2…収容部分、10…使い捨て着用物品、20…包装フィルム、20i…内面、20t…厚み、20x…外面、21…エンボス凹部、21B…底部、21d…長径、21h…深さ、21s…重心間隔、22…エンボス凸部、25…デザイン領域、26…非デザイン領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7