(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20231010BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A61F13/494 115
A61F13/49 315A
A61F13/49 413
(21)【出願番号】P 2019175954
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 康宏
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007954(JP,A)
【文献】特表2015-515921(JP,A)
【文献】特開2014-117349(JP,A)
【文献】特開2012-200366(JP,A)
【文献】特開2010-233599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部の両側部に、吸収体を有しないサイドフラップを有し、
前記サイドフラップは、前後方向に沿う細長状のサイド弾性部材を有する部分であって、かつ前記吸収体側に位置する第1部分と、前後方向に沿う細長状のサイド弾性部材を有する部分であって、かつ第1部分よりも側方に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分では、複数層のシート層が積層されているとともに、前記サイド弾性部材が最も表側のシート層に対して固定され、前記サイド弾性部材の表側に表側中空部が設けられておらず、
前記第2部分では、三層以上のシート層が積層されているとともに、前記サイド弾性部材と最も表側のシート層との間に内部シート層が介在しており、この内部シート層と前記最も表側のシート層との間に前後方向に続く表側中空部が設けられており、
前記サイド弾性部材の収縮により、前記サイドフラップにおける前記第1部分及び前記第2部分を含む部分が前後方向に収縮して、前後方向に弾性伸長可能なサイドギャザーが形成されている、
使い捨て着用物品であって、
前記サイドフラップは、前記サイドフラップの側縁で折り返された折り返しシート材を二重に有しており、
前記サイドフラップにおける最も表側のシート層及び最も裏側のシート層は、それぞれ外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層であり、
前記第1部分の前記サイド弾性部材は、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層との間に固定されており、
前記第2部分の前記サイド弾性部材は、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層の間に固定されており、
前記第2部分では、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層とが接合されていないことにより、前記第2部分における前記サイド弾性部材よりも表側に表側中空部が形成されている、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記第1部分及び前記第2部分では、前記サイド弾性部材と最も裏側のシート層との間に内部シート層が介在しているとともに、この内部シート層と前記最も裏側のシート層との間に裏側中空部が設けられている、
請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記サイドフラップは、側縁と前記第2部分との間に、複数層のシート層が積層された第3部分を有しており、
前記第3部分は、前記サイド弾性部材を有せず、かつ先端中空部を有する、
請求項1又は2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記サイド弾性部材は、幅方向に5~10mmの間隔で複数本設けられており、
前記
第1部分及び前記第2部分は、前記サイド弾性部材により収縮しているとともに、前後方向に150~300%の伸長率まで伸長可能であり、
前記第3部分の幅方向の寸法は、前記サイドフラップの幅方向の寸法の0.08~0.3倍である、
請求項
3記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層が、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層と接合されていないことにより、前記第1部分及び前記第2部分における前記サイド弾性部材よりも裏側に裏側中空部が形成されている、
請求項
1記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置が、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも幅方向の中央側に離れており、
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも側方における、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層が接合されていないことにより先端中空部が形成されている、
請求項
1又は
5記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前身頃及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に対して取り付けられた、吸収体を内蔵する内装体と、ウエスト開口と、左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
前記内装体の両側部に、前記サイドフラップを有している、
請求項1~
6のいずれか1項に記載の使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股間部の側部の肌触り(柔軟性、クッション性)を向上させた使い捨て着用物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨て着用物品の代表例の一つは、パンツタイプ使い捨ておむつである。パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に対して取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側部と後身頃の外装体の両側部とが接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来のパンツタイプ使い捨ておむつは、股間部の側部が外装体のみにより形成されるものもあったが、最近では、股間部の側部が内装体の側部により形成されるものが多くなっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
いわゆるテープタイプ使い捨ておむつ(特許文献2~4参照)も、使い捨て着用物品の代表例の一つである。一般的なテープタイプ使い捨ておむつは、前後方向中央を含む股間部と、前後方向中央より前側に延びる腹側部分と、前後方向中央より後側に延びる背側部分を有し、腹側部分及び背側部分は左右のウイング部分の間に位置する本体部分を有し、少なくとも背側部分は、股間部よりも幅方向左右両側に延び出たウイング部分を有し、ウイング部分は腹側部分の外面に着脱可能に連結される連結部を有している。使用時には、ウイング部分を腰の両側から腹側部分の外面に回して、ウイング部分の連結部を腹側部分の外面に連結する。
【0005】
従来、テープタイプ使い捨ておむつとしては、吸収体の側縁より側方に延び出たサイドフラップが脚周りに沿うように切除され、未切除の部分がウイング部分として残された一体型(例えば特許文献2参照)のほか、本体部分を形成するアセンブリの側縁に、別途製造された連結テープが取り付けられ、この連結テープがウイング部分となる別体型(例えば特許文献3、4参照)が知られている。また、別体型としては、本体部分を形成するアセンブリに、左右のウイング部分を含むユニットを取り付けたものも提案されている(例えば特許文献6参照)。
【0006】
このようなテープタイプ使い捨ておむつでは、股間部の側部はサイドフラップの側部により形成される。
【0007】
ところで、これらの使い捨て着用物品では、脚に対するフィット性を確保するために、股間部の側部のシート層の間に、脚周りに沿う方向又は前後方向に沿って細長状の弾性部材を内蔵させることが知られている。
【0008】
しかし、従来の使い捨て着用物品では、装着や購入に際して製品を手で持ったとき又は装着中における、股間部の側部の肌触り、特に股間部の側部におけるシート層の柔軟性やクッション性(圧縮復元性)に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-122396号公報
【文献】特開2016-083077号公報
【文献】特開2010-22550号公報
【文献】特開2011-72736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、股間部の側部の肌触りを改善すること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した使い捨て着用物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
股間部の両側部に、吸収体を有しないサイドフラップを有し、
前記サイドフラップは、前後方向に沿う細長状のサイド弾性部材を有する部分であって、かつ前記吸収体側に位置する第1部分と、前後方向に沿う細長状のサイド弾性部材を有する部分であって、かつ第1部分よりも側方に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分では、複数層のシート層が積層されているとともに、前記サイド弾性部材が最も表側のシート層に対して固定され、前記サイド弾性部材の表側に表側中空部が設けられておらず、
前記第2部分では、三層以上のシート層が積層されているとともに、前記サイド弾性部材と最も表側のシート層との間に内部シート層が介在しており、この内部シート層と前記最も表側のシート層との間に前後方向に続く表側中空部が設けられており、
前記サイド弾性部材の収縮により、前記サイドフラップにおける前記第1部分及び前記第2部分を含む部分が前後方向に収縮して、前後方向に弾性伸長可能なサイドギャザーが形成されている、
ことを特徴とする使い捨て着用物品。
【0012】
(作用効果)
本使い捨て着用物品では、サイド弾性部材の収縮により、サイドフラップの第1部分及び第2部分を含む部分が前後方向に収縮してサイドギャザーの各襞が前後方向に並んで形成される。ここで、第2部分にサイドギャザーが形成されると、サイドギャザーの襞は表側中空部が表側に大きく膨らむことにより形成され、大きく柔らか(つまりクッション性に富む)なものとなる。したがって、この大きく柔らかな襞により、股間部の側部の肌触りが良好となる(ふっくら、ふわふわしたものとなる)。
ただし、サイドフラップの表側の全体に表側中空部による大きな襞が形成されると、装着者の肌との間に隙間が生じやすくなる。
そこで、本使い捨て着用物品では、吸収体側に位置する第1部分では、サイド弾性部材を最も表側のシート層に対して固定し、サイド弾性部材の表側に表側中空部を設けないことにより、サイド弾性部材により形成される襞を小さくし、かつ肌に対してしっかりと密着するようにしつつ、より肌触りに影響する側部については、第1部分の側方に位置する第2部分で、サイド弾性部材と最も表側のシート層との間に内部シート層を介在させて表側中空部を設けることにより、大きく柔らかな襞を形成し、肌触りを良好にしたものである。
【0013】
<第2の態様>
前記第1部分及び前記第2部分では、前記サイド弾性部材と最も裏側のシート層との間に内部シート層が介在しているとともに、この内部シート層と前記最も裏側のシート層との間に裏側中空部が設けられている、
第1の態様の使い捨て着用物品。
【0014】
(作用効果)
本使い捨て着用物品では、サイドフラップの裏側は肌との密着性が問題とならない。よって、本態様のように第1部分及び第2部分の両方におけるサイド弾性部材よりも裏側に裏側中空部を設け、より広範囲に大きく柔らかな襞を形成することにより、製品外面の手触りが良好となる。
【0015】
<第3の態様>
前記サイドフラップは、側縁と前記第2部分との間に、複数層のシート層が積層された第3部分を有しており、
前記第3部分は、前記サイド弾性部材を有せず、かつ先端中空部を有する、
第1又は2の態様の使い捨て着用物品。
【0016】
(作用効果)
第2部分はサイドフラップの側縁まで設けられていてもよいが、本態様のようにサイド弾性部材を有せず、先端中空部を有する第3部分を有していると、第2部分の前後方向の収縮の影響により第3部分も収縮してより大きく柔らかな襞が形成され、特に装着者の脚に対する肌触りが柔軟なものとなるため好ましい。
【0017】
<第4の態様>
前記サイド弾性部材は、幅方向に5~10mmの間隔で複数本設けられており、
前記1部分及び前記第2部分は、前記サイド弾性部材により収縮しているとともに、前後方向に150~300%の伸長率まで伸長可能であり、
前記第3部分の幅方向の寸法は、前記サイドフラップの幅方向の寸法の0.08~0.3倍である、
第4の態様の使い捨て着用物品。
【0018】
(作用効果)
前述の第3部分を設ける場合、第1部分及び第2部分の伸長率及び第3部分の幅は本態様の範囲内であると、特に好ましい。
【0019】
<第5の態様>
前記サイドフラップは、前記サイドフラップの側縁で折り返された折り返しシート材を二重に有しており、
前記サイドフラップにおける最も表側のシート層及び最も裏側のシート層は、それぞれ外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層であり、
前記第1部分の前記サイド弾性部材は、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層との間に固定されており、
前記第2部分の前記サイド弾性部材は、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層の間に固定されており、
前記第2部分では、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層とが接合されていないことにより、前記第2部分における前記サイド弾性部材よりも表側に表側中空部が形成されている、
第1~4のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0020】
(作用効果)
本使い捨て着用物品は、サイドフラップに二重の折り返しシート材を配置することにより、前述の第1部分及び第2部分を形成するものである。この場合、二重の折り返しシート材のそれぞれが折り返しに対する復元力を有するため、より少ないシート材で、より優れたクッション性を有する襞がサイドフラップに形成されるようになる。
【0021】
<第6の態様>
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層が、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層と接合されていないことにより、前記第1部分及び前記第2部分における前記サイド弾性部材よりも裏側に裏側中空部が形成されている、
第5の態様の使い捨て着用物品。
【0022】
(作用効果)
本態様によれば、より少ないシート材で、第2の態様と同様に、第1部分及び第2部分の両方におけるサイド弾性部材よりも裏側に裏側中空部を設けることができる。
【0023】
<第7の態様>
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置が、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも幅方向の中央側に離れており、
前記内部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも側方における、前記外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層が接合されていないことにより先端中空部が形成されている、
第5又は6の態様の使い捨て着用物品。
【0024】
(作用効果)
本態様によれば、より少ないシート材で、第3の態様の第3部分を設けることができる。
【0025】
<第8の態様>
前身頃及び後身頃の少なくとも胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に対して取り付けられた、吸収体を内蔵する内装体と、ウエスト開口と、左右一対の脚開口とを備えた、パンツタイプ使い捨て着用物品であって、
前記内装体の両側部に、前記サイドフラップを有している、
第1~7のいずれか1つの態様の使い捨て着用物品。
【0026】
(作用効果)
パンツタイプ使い捨て着用物品に応用する場合、このように内装体の両側部に、前述のサイドフラップを設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、股間部の側部の肌触りが改善する、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。
【
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
【
図5】(a)
図1の4-4断面図、及び(b)
図1の5-5断面図である。
【
図6】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
【
図7】展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。
【
図8】展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。
【
図10】
図1の2-2断面に相当する他の例の断面図である。
【
図11】
図1の2-2断面に相当する他の例の断面図である。
【
図12】(a)
図1の4-4断面に相当する他の例の断面図、及び(b)
図1の5-5断面に相当する他の例の断面図である
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、使い捨て着用物品の一例として、パンツタイプ使い捨ておむつについて、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0030】
図1~
図6は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する長方形の前外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する長方形の後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部を経て後外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bに設けられた内装体200とを備えている。前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されており、これにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなっている。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0031】
本パンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出たウエスト延出部分12Eがウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体としてほぼ砂時計形状をなしている。
【0032】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示例ではほぼ長方形である。内装体200は、
図3~
図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担うものである。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シートを示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0033】
内装体200の幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、例えば吸収体56の幅方向WDの寸法の1~2倍とすることができる。
【0034】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0035】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0036】
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0037】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体56へ移行させて吸収体56による吸収性能を高めるとともに、吸収した液の吸収体56からの逆戻り現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0038】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、25~60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0039】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0040】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0041】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
【0042】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5~20mm程度が適当である。
【0043】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0044】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0045】
吸収体56は長方形形状でも良いが、
図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と起き上がりギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0046】
また、吸収体56の寸法は適宜定めることができるが、前外装体12Fと重なる位置から股間部を経て後外装体12Bと重なる位置まで延びていることが好ましく、図示例のように前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在させることができる。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0047】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、このふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0048】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0049】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0050】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0051】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0052】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0053】
包装シート58の包装構造は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻付け、かつその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合するのが好ましい。
【0054】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の側部から起き上がる起き上がり部分68を有しており、この起き上がり部分68が、装着者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。図示例の起き上がりギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立するもの等、適宜の変更が可能である。
【0055】
より詳細に説明すると、図示例の起き上がりギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の起き上がり部分68とされ、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0056】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がり部分68が
図3に矢印で示すように肌に当接するように起き上がる。
【0057】
図示例の起き上がりギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲構造では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは好ましい。
【0058】
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブローン不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができる。この場合の不織布の繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470~1240dtexが好ましく、620~940dtexがより好ましい。ギャザー弾性部材63の取付け状態での伸長率は、150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。ギャザー弾性部材63の本数は2~6本が好ましく、3~5本がより好ましい。ギャザー弾性部材63の配置間隔は3~10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
【0059】
起き上がりギャザー60の起き上がり部分68では、ギャザーシート62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザーシート62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザーシート62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザーシート62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザーシート62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0060】
同様に、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0061】
(サイドフラップ)
内装体200の両側部には、吸収体56の側方に延び出たサイドフラップ70が設けられている。各サイドフラップ70は、図示例のように、折り返し等なく、側方にのみ延び出た扁平な部分となっていることが好ましい。各サイドフラップ70の幅方向WDの寸法は適宜定めることができるが、例えば内装体200の幅方向WDの寸法の0.1~0.2倍とすることができる。
【0062】
各サイドフラップ70は、
図9に示すように、前後方向LDに沿う細長状のサイド弾性部材75を有する部分であって、かつ吸収体56側(幅方向WDの中央側)に位置する第1部分P1と、前後方向LDに沿う細長状のサイド弾性部材75を有する部分であって、かつ第1部分P1よりも側方に位置する第2部分P2とを有している。そして、第1部分P1では、四層のシート層が積層されているとともに、サイド弾性部材75が最も表側のシート層71に対して固定され、サイド弾性部材75の表側に表側中空部H1が設けられておらず、第2部分P2では、四層のシート層が積層されているとともに、サイド弾性部材75と最も表側のシート層71との間に内部シート層76が介在しており、この内部シート層76と最も表側のシート層71との間に、前後方向LDに連続的(間欠的でもよい)に続く表側中空部H1が設けられている。
【0063】
この結果、本サイドフラップ70では、サイドフラップ70における第1部分P1及び第2部分P2を含む部分が前後方向LDに収縮して、前後方向LDに弾性伸長可能なサイドギャザーの各襞が前後方向LDに並んで形成される。ここで、吸収体56側に位置する第1部分P1では、サイド弾性部材75が最も表側のシート層71に対して固定され、サイド弾性部材75の表側に表側中空部H1がないことにより、サイド弾性部材75により形成される襞が小さくなり、かつ肌に対してしっかりと密着するようになる。また、より肌触りに影響する側部については、第1部分P1の側方に位置する第2部分P2で、サイド弾性部材75と最も表側のシート層71との間に内部シート層76が介在され、表側中空部H1が設けられることにより、
図6に示すように、サイド弾性部材75により形成される襞が大きく柔らか(つまりクッション性に富む)なものとなる。したがって、この大きく柔らかな襞により、股間部の側部の肌触りが良好となる(ふっくら、ふわふわしたものとなる)。
【0064】
サイドフラップ70のシート層71~74をなすシート材は特に限定されず、前述の起き上がりギャザー60や前述の外装体12F,12Bで利用可能な不織布等、適宜の不織布を選択することができる。
図3、
図4、
図9及び
図11に示す例では、後述するように起き上がりギャザー60のギャザーシート62を延長してシート層71~74を形成している。
図10に示すように、起き上がりギャザー60とは別の専用シート材79を追加し、サイドフラップ70を構築してもよい。前者の場合、サイドフラップ70の前後端は起き上がりギャザー60の前後端(つまりこの場合内装体200の前後端)に一致するが、後者の場合にはサイドフラップ70の前後端は起き上がりギャザー60の前後端より前後方向の中央側に位置していてもよい。
【0065】
サイドフラップ70の一部又は全部のシート層71~74は、それぞれ別体のシート材で形成されていてもよいし、一枚のシート材が一回又は複数回折り返されて形成されていてもよい。内部シート層76は、前述のギャザーシート62や、液不透過性シート11、又は後述する外装体12F,12Bと同様の不織布の中から適宜選択することができるほか、前述のギャザーシート62や、液不透過性シート11を適宜延長や折り返しする等により形成することができる。
【0066】
サイド弾性部材75も特に限定されず、前述のギャザー弾性部材63と同様の細長状の弾性部材を使用することができる。展開状態のサイド伸縮領域SGにおけるサイド弾性部材75の伸長率は、150~350%が好ましく、200~270%がより好ましい。サイド弾性部材75の本数は2~16本が好ましく、6~10本がより好ましい。サイド弾性部材75の配置間隔は5~10mmが適当である。特に、サイド弾性部材75が、幅方向WDに間隔を空けて複数本設けられる場合、展開状態のサイド伸縮領域SGにおけるサイド弾性部材75の伸長率は、側方に位置するものほど低いと、サイド伸縮領域SGの肌側への立ち上がりが緩くなり、サイド伸縮領域SGが適切な装着状態となりやすくなるため好ましい。サイド伸縮領域SGの立ち上がりがきついと、サイドフラップ70が内側に折りかえって脚と使い捨て着用物品の表面との間に挟まれ、漏れにつながるおそれがある。
【0067】
サイド弾性部材75は、その表裏両側に位置するシート層71~74に固定することができる。シート層71~74の貼り合わせや、その間に挟まれるサイド弾性部材75の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤HMや、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段を用いることができる。シート層71~74同士の接合面積が大きいと柔軟性を損ねるため、サイド弾性部材75の接着部以外の部分は接合しないか、又は弱く接合するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりサイド弾性部材75の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布してシート層71~74の間に挟むことにより、当該サイド弾性部材75の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、その表裏両側に位置するシート層71~74へのサイド弾性部材75の固定と、その表裏両側に位置するシート層71~74同士の接合とを行う構造となっている。
【0068】
前後方向LDにおけるサイド弾性部材75の取付け範囲、すなわち、サイド伸縮領域SGの前後方向LDの範囲は、図示例のように、前外装体12Fと重なる部分から後外装体12Bと重なる部分までとなっていることが好ましいが、これに限定されない。したがって、例えば、サイド伸縮領域SGの前端が前外装体の後端に位置しているか、又はこれよりも後側に位置していてもよい。同様に、サイド伸縮領域SGの後端が後外装体の前端に位置しているか、又はこれよりも前側に位置していてもよい。また、サイド伸縮領域SGの前後方向LDの範囲は、起き上がりギャザー60のギャザー弾性部材63による収縮部分と同じか、それよりも前後両側に延びているのも好ましい。
【0069】
第1部分P1は、図示例ではシート層71~74が四層となっているが、サイド弾性部材75を挟むために二層以上のシート層が積層されていればよい。サイド弾性部材75は、第1部分P1に複数本配置されているのが好ましいが、一本のみでもよい。第1部分P1のサイド弾性部材75は、最も表側のシート層71に対して
図9に示すように直接固定されていてもよいし、
図10に示すように、最も表側のシート層71に対して接着された内部シート層76を介して間接的に固定されていてもよい。いずれにせよ、このような配置であると、サイド弾性部材75は最も表側のシート層71まで接合されるため、表側中空部H1は形成されず、したがって表側中空部H1を有する場合のような大きな襞が形成されることがない。
【0070】
サイドフラップ70の裏側は肌との密着性が問題とならないため、第1部分P1はサイド弾性部材75と最も裏側のシート層74との間に内部シート層76が介在している(三層以上とする)とともに、この内部シート層76と最も裏側のシート層74との間に裏側中空部H2が設けられているのも好ましい。
図9、
図11に示す四層構造では、第1部分P1の最も表側のシート層71とその裏側に隣接する二番目のシート層72との間にサイド弾性部材75が固定されているため、表側から数えて二番目のシート層72と三番目のシート層73との間、三番目のシート層73と最も裏側のシート層74との間の少なくとも一方を非接合とすることにより、裏側中空部H2を設けることができる。また、
図10に示す四層構造では、第1部分P1の三番目のシート層73と最も裏側のシート層74とが接合されることにより裏側中空部H2が設けられておらず、第2部分P2の三番目のシート層73と最も裏側のシート層74とが非接合とされることにより裏側中空部H2が設けられている。サイドフラップ70の全体にわたり裏側中空部H2を設けない構造とすることも可能である。
【0071】
第2部分P2は、図示例ではシート層が四層71~74となっているが、サイド弾性部材75を挟むため及び表側中空部H1を形成するために三層以上のシート層が積層されるとともに、サイド弾性部材75と最も表側のシート層71との間に内部シート層76が介在していればよい。サイド弾性部材75は、第2部分P2に複数本配置されているのが好ましいが、一本のみでもよい。第2部分P2に形成される表側中空部H1は、サイド弾性部材75よりも表側の複数のシート層71,72を非接合にすることにより形成することができる。換言すると、サイド弾性部材75は、表側中空部H1よりも裏側に位置するシート層72~74の間に固定される。例えば、
図9~
図11に示す四層構造では、最も表側のシート層71とその裏側に隣接する二番目のシート層72とを非接合とすることにより、表側中空部H1が形成され、二番目のシート層72と三番目のシート層73との間にサイド弾性部材75が固定されているが、三番目のシート層73と最も裏側のシート層74との間にサイド弾性部材75が固定され、二番目のシート層72と三番目のシート層73との非接合部77により表側中空部H1が形成されていてもよい。この場合、最も表側のシート層71と二番目のシート層72は接合されていてもよいし、非接合であってもよい(表側中空部H1が二段形成されていてもよい)。
【0072】
前述のようにサイドフラップ70の裏側は肌との密着性が問題とならないため、第2部分P2はサイド弾性部材75と最も裏側のシート層74との間に内部シート層76が介在している(三層以上とする)とともに、この内部シート層76と最も裏側のシート層74との間に裏側中空部H2が設けられているのも好ましい。
図9~
図11に示す四層構造では、最も表側のシート層71とその裏側に隣接する二番目のシート層72とを非接合とすることにより、表側中空部H1が形成され、二番目のシート層72と三番目のシート層73との間にサイド弾性部材75が固定されているため、三番目のシート層73と最も裏側のシート層74とを非接合とすることにより、裏側中空部H2を設けることができる。第2部分P2の裏側中空部H2は第1部分P1から連続するものであってもよいし、第1部分P1の裏側中空部H2と区画された(から独立した)別の裏側中空部であってもよい。
【0073】
第2部分P2は、
図11に示すようにサイドフラップ70の側縁まで設けられていてもよいが、
図9及び
図10に示すように、側縁と第2部分P2との間に、サイド弾性部材75を有せず、先端中空部H3を有する第3部分P3を有していると、第2部分P2の前後方向LDの収縮の影響により第3部分P3も収縮してより大きく柔らかな襞が形成され、特に装着者の脚に対する肌触りが柔軟なものとなるため好ましい。
【0074】
第3部分P3は、サイド弾性部材75を固定する必要がないため、先端中空部H3を形成するために二層以上のシート層が積層されていればよい。このため、
図9及び
図10に示す例では、第3部分P3は、内部シート層76を設けずに二層71,74にしているが、よりクッション性を高めるために、シート層を四層以上積層してもよい。第3部分P3の先端中空部H3は、図示例のように第2部分P2の表側中空部H1及び裏側中空部H2から連続するものであってもよいし、第2部分P2の表側中空部H1及び裏側中空部H2の少なくとも一方と区画された(から独立した)別の中空部であってもよい。
【0075】
第1部分P1、第2部分P2及び第3部分P3の幅方向WDの寸法は、適宜定めればよいが、通常の場合、第1部分P1の幅方向WDの寸法はサイドフラップ70の幅方向WDの寸法の0.08~0.3倍とすることができる。第2部分P2の幅方向WDの寸法はサイドフラップ70の幅方向WDの寸法の0.08~0.3倍、第1部分P1の幅方向WDの寸法の0.4~2.5倍とすることができる。また、第3部分P3の幅方向WDの寸法は、サイドフラップ70の幅方向WDの寸法の0.08~0.3倍とすることができる。例えば、乳幼児用の使い捨ておむつの場合、第3部分P3の幅方向WDの寸法は、2~15mm(特に5~10mm)程度とすることができる。
【0076】
表側中空部H1の幅方向WDの寸法は適宜定めることができ、第2部分P2の全体としてもよいし、第2部分P2の幅方向WDの寸法よりも短く、例えば0.5~1.5倍、特に好ましくは0.5~1倍としてもよい。裏側中空部H2の幅方向WDの寸法は適宜定めることができ、第1部分P1の全体としてもよいし、第1部分P1の幅方向WDの寸法よりも短く、例えば0.5~4倍、特に好ましくは0.5~1倍としてもよい。先端中空部H3の幅方向WDの寸法は適宜定めることができ、第3部分P3の全体としてもよいし、第3部分P3の幅方向WDの寸法よりも短く、例えば0.5~1倍としてもよい。
【0077】
表側中空部H1、裏側中空部H2、及び先端中空部H3の前後方向LDの寸法は同じであっても異なっていてもよい。表側中空部H1、裏側中空部H2、及び先端中空部H3の前後方向LDの寸法は、製品全長Yの30%以上、特に40%以上であることが好ましい。また、図示例のような前外装体12F及び後外装体12Bが離間したパンツタイプ使い捨て着用物品の場合、表側中空部H1、裏側中空部H2、及び先端中空部H3は、前外装体12F及び後外装体12Bとそれぞれ重なる位置まで前後方向LDに延びていることが好ましく、内装体200の前後方向LD全体にわたり延びていてもよい。
【0078】
表側中空部H1、裏側中空部H2、及び先端中空部H3は、その表側及び裏側に位置するシート層同士を非接合とし、かつ幅方向WDの少なくとも一方側をホットメルト接着剤HM等により閉じることにより形成することができる。図示例のように、表側中空部H1、裏側中空部H2、及び先端中空部H3中空部の幅方向WDの少なくとも一方の縁は、中空部を形成するシート材の折り返しにより形成するのも好ましい。この場合、折り返しに対する復元力により、中空部に形成される襞のクッション性が特に向上する。
【0079】
一つの好ましい例は、
図9及び
図11に示す構造である。このサイドフラップ70は、その側縁で折り返された折り返しシート材を二重に有しており、最も表側のシート層71及び最も裏側のシート層74は、それぞれ外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層となっている。また、第1部分P1のサイド弾性部材75は、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層71と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層72との間に固定されている。また、第2部分P2のサイド弾性部材75は、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層72及び裏側のシート層73の間に固定されており、第2部分P2では、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層71と、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層72とが接合されていないことにより、第2部分P2におけるサイド弾性部材75よりも表側に表側中空部H1がそれぞれ形成されている。この場合、二重の折り返しシート材のそれぞれが折り返しに対する復元力を有するため、より少ないシート材で、より優れたクッション性を有する襞がサイドフラップ70に形成されるようになる。
【0080】
他の好ましい例は、
図10に示す構造である。このサイドフラップ70は、その側縁で折り返された折り返しシート材を二重に有しており、最も表側のシート層71及び最も裏側のシート層74は、それぞれ外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層及び裏側のシート層となっている。この点では、
図9に示す構造と同じであるが、
図10に示す構造では、第1部分P1及び第2部分P2のサイド弾性部材75がともに、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層72及び裏側のシート層73の間に固定されているとともに、第1部分P1では、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層72と、最も表側のシート層71とが接合されている。
【0081】
また、
図9及び
図10に示される例では、内部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層73が、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として裏側のシート層74と接合されていないことにより、第1部分P1及び第2部分P2におけるサイド弾性部材75よりも裏側に裏側中空部H2が形成されている。よって、より少ないシート材で、第1部分P1及び第2部分P2の両方におけるサイド弾性部材75よりも裏側に裏側中空部H2を設けることができる。
【0082】
さらに、
図9及び
図10に示される例では、内部に位置する折り返しシート材の折り位置が、外部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも吸収体56側(幅方向WDの中央側)に離れており、内部に位置する折り返しシート材の折り位置よりも側方における、外部に位置する折り返しシート材の折り位置を境として表側のシート層71及び裏側のシート層74が接合されていないことにより先端中空部H3が形成されている。よって、これらの例では、より少ないシート材で、先端中空部H3を有する第3部分P3を設けることができる。
【0083】
図9に示す例のように、起き上がりギャザー60のシートを利用してサイドフラップ70を構築すると好ましい。すなわち、前述のサイドフラップ70の折り返しシート材は、起き上がりギャザー60のシートの二層構造が、起き上がりギャザー60の付根部分65からサイドフラップ70の側縁まで延びる第1二層部分601と、起き上がりギャザー60のシートの二層構造がサイドフラップ70の側縁で折り返されて幅方向WDの中央側に延びる第2二層部分602とにより形成することができる。
【0084】
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、内装体200の裏面には、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にわたるカバー不織布13を備えていることが好ましい。カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13に用いる不織布は、例えば外装体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができる。
【0085】
(外装体)
外装体12F,12Bは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の前外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である長方形の後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっている(外装二分割タイプ)。この前後方向の離間距離12dは例えば全長Yの40~60%程度とすることができる。図示例では、前外装体12F及び後外装体12Bの下縁は幅方向WDに沿う直線状となっているが、前外装体12F及び後外装体12Bの少なくとも一方の下縁が脚周りに沿うような曲線状となっていてもよい。また、
図12に示すように、外装体12F,12Bが、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的なものとすることもできる(外装一体タイプ)。
【0086】
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本例では、前外装体12F及び後外装体12Bの前後方向寸法が同じとなっている。
図8に示すように、後外装体12Bの前後方向寸法を前外装体12Fの前後方向寸法よりも長くし、後外装体12Bに胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを設け、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を設けない構造とすることもできる。この場合において又はこれとは逆に、図示しないが、前外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た鼠蹊カバー部を設けることもできる。
【0087】
外装体12F,12Bは、
図4及び
図5に示されるように、内側シート層12H及び外側シート層12Sと、これらの間に設けられた弾性部材16~19とを有する。各シート層は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、前外装体12F及び後外装体12Bの一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁や脚開口LO側の縁等の適宜の位置で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分の間に弾性部材16~19を設けることができる。図示例では、ウエスト部Wに、それぞれシート材の折り返しを含む部分を有している。例えば、ウエスト部Wでは、外側シート層12Sを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、内側シート層12Hを形成するシート材は、第2シート層を形成するシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されている。また、この折り返し部分は、内装体200のウエスト開口WO側の端部と重なる位置まで、外装体の幅方向全体にわたり延在する内装カバー層12rとなっている。内装カバー層12rは、内側シート層12Hを形成するシート材を折り返して形成せずに、専用のシート材を貼り付けてもよい。
【0088】
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、弾性部材16~19が内蔵され、弾性部材の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、外装体12F,12Bは、自然長の状態では弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材の長手方向に伸長すると、皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材16~19としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材16~19としてはスパンデックス等の合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0089】
図示例の弾性部材16~19についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wには、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、2~12mmの間隔、特に3~7mmの間隔で、2~15本程度、特に4~10本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に220~320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さのウエスト弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部でウエスト弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0090】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uには、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材15,19が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられていると好ましい。ウエスト下方弾性部材15,19としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。
【0091】
また、
図8に示すように前述のように後外装体12Bに臀部カバー部Cを設ける場合や、図示しないが前外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には、ウエスト下方部と同様の弾性部材を設けることができ、これによる幅方向WDの伸長率は150~300%、特に180~260%とすることができる。
【0092】
図示例のウエスト下方部Uのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材16,19を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされていると好ましい。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわた伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。伸縮領域A2のうち、サイドシール部12Aを有する前後方向LD範囲に位置する部分がウエスト下方伸縮領域A3となる。
【0093】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと外側シート層12Sとの間に、弾性部材16~19を供給し、弾性部材16,19を伸縮領域A2に位置する部分のみホットメルト接着剤により固定した後、吸収体56を有する領域において、弾性部材16,19を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材16,19のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。
【0094】
内側シート層12H及び外側シート層12Sを形成するシート材としては、特に限定無く使用できるが不織布が好ましい。不織布を用いる場合、1枚あたりの目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。
【0095】
弾性部材16~19は種々の塗布方法によるホットメルト接着剤HMにより外装体12F,12Bに固定される。内側シート層12H及び外側シート層12Sは、それぞれ弾性部材16~19を有する部分では、弾性部材16~19を固定するためのホットメルト接着剤HMにより接合することが好ましく、弾性部材16~19を有しない部分では、ホットメルト接着剤HMにより接合しても、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着により接合してもよく、また一部又は全部を接着しなくてもよい。図示例の外装体12F,12Bにおける弾性部材16~19を有する部分では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により弾性部材16~19の外周面にのみホットメルト接着剤HMを塗布してシート層間に挟むことにより、当該弾性部材16~19の外周面に塗布したホットメルト接着剤HMのみで、両シート層への弾性部材16~19の固定と、両シート層間の固定とを行っている。弾性部材16~19は伸縮領域A2における伸縮方向の両端部のみ、両シート層に固定してもよい。
【0096】
(内外接合部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内外接合部201,202は、
図2に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0097】
(不織布)
上記説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0098】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0099】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0100】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0101】
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0102】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0103】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0104】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0105】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0106】
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0107】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0108】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0109】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0110】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、テープタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0112】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール部、12B…後外装体、12E…ウエスト延出部分、12F…前外装体、12F,12B…外装体、12H…内側シート層、12S…外側シート層、13…カバー不織布、15,19…ウエスト下方弾性部材、17…ウエスト弾性部材、200…内装体、201,202…内外接合部、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザーシート、63…ギャザー弾性部材、67…倒伏部分、68…起き上がり部分、70…サイドフラップ、71~74…シート層、71…最も表側のシート層、72…二番目のシート層、73…三番目のシート層、74…最も裏側のシート層、75…サイド弾性部材、76…内部シート層、77…非接合部、79…専用シート材、601…第1二層部分、602…第2二層部分、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、A3…ウエスト下方伸縮領域、F…前身頃、B…後身頃、L…中間領域、LD…前後方向、SG…サイド伸縮領域、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口、LO…脚開口、P1…第1部分、P2…第2部分、P3…第3部分、HM…ホットメルト接着剤、H1…表側中空部、H2…裏側中空部、H3…先端中空部。