(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】建設機械の荷重計測装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20231010BHJP
B66C 23/36 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B66C13/16 H
B66C23/36 A
(21)【出願番号】P 2019197173
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】沢井 秋司
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-127171(JP,U)
【文献】実開昭57-135578(JP,U)
【文献】特開昭57-027893(JP,A)
【文献】特開昭51-124251(JP,A)
【文献】実開昭49-074666(JP,U)
【文献】実開昭51-009470(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
23/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏可能なブームが設けられるとともに、ウィンチから繰出されるロープが前記ブームの後端部から前端部に向かって延設される建設機械において、前記ロープに作用する荷重を計測する荷重計測装置であって、
前記ブームの幅方向に互いに対して離れて配置される一対の板状部を備え、前記ブームの前記幅方向に沿う回動軸を中心として、前記ブームに対して回動可能に前記ブームに取付けられるブラケットと、
前記ブームの前記幅方向に沿う中心軸を有し、前記ブラケットの前記一対の板状部の間に前記中心軸に沿って延設されるシャフトと、
前記ウィンチと前記ブームの前記前端部との間において前記ロープが掛けられ
、前記シャフトの前記中心軸を中心として回転可能な状態で、前記シャフトに支持されるシーブであって、前記回動軸を中心としてブラケット及びシャフトと一緒に、前記ブームに対して回動可能なシーブと、
前記中心軸に沿う方向について前記シャフトの一端に
、前記ブラケットの前記一対の板状部の一方を介して取付けられる第1の油圧シリンダと、
前記中心軸に沿う前記方向について前記第1の油圧シリンダとは反対側の端で
、前記ブラケットの前記一対の板状部の他方を介して前記シャフトに取付けられる第2の油圧シリンダと、
を具備する荷重計測装置。
【請求項2】
前記シーブは、
前記回動軸を中心として前記シャフト
及び前記ブラケットと一緒に回動可能に前記ブームの前記後端部に取付けられるとともに、前記シャフトに対して前記シャフトの前記中心軸に沿って移動可能である、請求項1の荷重計測装置。
【請求項3】
前記第1の油圧シリンダ及び前記第2の油圧シリンダのそれぞれに作用する圧力を検知するセンサと、
前記センサでの前記圧力の検知結果に基づいて、前記シーブに作用する荷重を算出し、前記シーブに作用する前記荷重に基づいて前記ロープに作用する前記荷重を算出するコントローラと、
をさらに具備する、請求項1又は2の荷重計測装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ブームのブーム長及び前記ブームの起伏角度を取得するとともに、前記ブームの前記ブーム長及び前記起伏角度に基づいて、前記ロープに作用する前記荷重について限界荷重を設定し、算出した前記ロープに作用する前記荷重が前記限界荷重を超えている場合は、警告させる、請求項3の荷重計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械においてロープに作用する荷重を計測する荷重計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、起伏可能なブームが設けられる建設機械としてクレーンが開示されている。このクレーンでは、ウィンチから繰出されるロープが、ブームの後端部から前端部に向かってブームの長手方向に沿って延設される。そして、シーブが、シャフトを介してブームに取付けられ、ロープは、ブームの後端部と前端部との間において、シーブに掛けられる。そして、シャフトに、油圧シリンダが取付けられ、油圧シリンダに作用する圧力が検知される。そして、検知された圧力から、シーブに作用する荷重が算出され、算出されたシーブに作用する荷重から、ロープに作用する荷重(張力)が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のように建設機械においてロープに作用する荷重(張力)を計測する荷重計測装置では、構成を複雑化することなく、かつ、適切にロープに作用する荷重が計測されることが、求められている。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、構成が複雑化することなく、かつ、適切にロープに作用する荷重を計測する建設機械の荷重計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様は、起伏可能なブームが設けられるとともに、ウィンチから繰出されるロープが前記ブームの後端部から前端部に向かって延設される建設機械において、前記ロープに作用する荷重を計測する荷重計測装置であって、前記ブームの幅方向に互いに対して離れて配置される一対の板状部を備え、前記ブームの前記幅方向に沿う回動軸を中心として、前記ブームに対して回動可能に前記ブームに取付けられるブラケットと、前記ブームの前記幅方向に沿う中心軸を有し、前記ブラケットの前記一対の板状部の間に前記中心軸に沿って延設されるシャフトと、前記ウィンチと前記ブームの前記前端部との間において前記ロープが掛けられ、前記シャフトの前記中心軸を中心として回転可能な状態で、前記シャフトに支持されるシーブであって、前記回動軸を中心としてブラケット及びシャフトと一緒に、前記ブームに対して回動可能なシーブと、前記中心軸に沿う方向について前記シャフトの一端に、前記ブラケットの前記一対の板状部の一方を介して取付けられる第1の油圧シリンダと、前記中心軸に沿う前記方向について前記第1の油圧シリンダとは反対側の端で、前記ブラケットの前記一対の板状部の他方を介して前記シャフトに取付けられる第2の油圧シリンダと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構成が複雑化することなく、かつ、適切にロープに作用する荷重を計測する建設機械の荷重計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係るアースドリルクレーンの一例を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aのアースドリルクレーンのブームの前端部を矢印Hの方向から視た状態で示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1Aのアースドリルクレーンにおいて、ブームの後端部に取付けられるシーブ(ガイドシーブ)及びその近傍の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1Aのアースドリルクレーンにおいて、ブームの後端部に取付けられるシーブ(ガイドシーブ)及びその近傍の構成を、旋回体の幅方向の一方側から視た状態で示す概略図である。
【
図4】
図4は、
図1Aのアースドリルクレーンにおいて、ブームの後端部に取付けられるシーブ(ガイドシーブ)及びその近傍の構成を、旋回体の後方側から視た状態で示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る荷重計測装置の制御系を概略的に示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る荷重計測装置のコントローラによって行われる、ロープに作用する荷重の計測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、建設機械として、アースドリルクレーンを例に挙げて説明する。
図1Aは、本実施形態に係るアースドリルクレーン1の一例を示す。
図1Aに示すように、アースドリルクレーン1は、走行車体2と、走行車体2上に設置される旋回体3と、を備える。旋回体3には、運転室5が設けられる。旋回体3は、鉛直方向に沿う旋回軸を中心として、走行車体2に対して旋回可能である。また、旋回体3には、ブーム6が連結される。ブーム6は、旋回体3と一体に走行車体2に対して旋回可能である。
【0011】
また、ブーム6では、長手方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)が規定される。そして、ブーム6では、長手方向の一方側が前方側(矢印X1側)となり、前方側とは反対側が後方側(矢印X2側)となる。ブーム6は、後端部で旋回体3に取付けられる。また、ブーム6は、旋回体3に対して起伏可能である。このため、ブーム6では、長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)起伏方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)が、規定される。ブーム6が旋回体3に対して起きる又は伏せることにより、ブーム6の水平面に対する起伏角度θが変化する。また、ブーム6では、長手方向及び起伏方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)幅方向(
図1Aの紙面に対して垂直又は略垂直な方向)が、規定される。ブーム6の幅方向は、旋回体3の幅方向と、一致又は略一致する。また、ブーム6は、長手方向に伸縮可能である。ブーム6が伸長又は収縮することにより、ブームの長手方向についてのブーム長Dが変化する。
【0012】
図1Bは、ブーム6の前端部を
図1Aの矢印Hの方向から、すなわち、ブーム6の前方側から視た状態で示す。
図1Bでは、矢印W1及び矢印W2で示す方向が、ブーム6の幅方向となる。旋回体3には、ウィンチ11,21が設けられる。ウィンチ(ケリーバウィンチ)11からは、ロープ(ケリーバロープ)12が繰出される。ロープ12は、ブーム6の後端部(基端部)から前端部(先端部)に向かってブーム6の長手方向に沿って延設される。ブーム6では、ブーム6が起きる側(矢印Y1側)の端面であるブーム上面に沿って、ロープ12が延設される。また、
図1A及び
図1Bに示すように、旋回体3には、シーブ13が取付けられ、ブーム6の前端部には、シーブ14,15が取付けられる。ウィンチ11から繰出されたロープ12は、シーブ13に掛けられた後、シーブ14,15の順に掛けられる。また、ロープ12は、シーブ13によって、ウィンチ11へガイドされる。
【0013】
また、ロープ12は、ケリーバ17に接続される。ケリーバ17は、ブーム6の前端部のシーブ15から、ロープ12を介して吊下げられる。ブーム6の前端部から吊下げられるケリーバ17は、ロープ12の接続位置から鉛直下側へ向かって延設される。また、ケリーバ17では、ロープ12の接続位置とは反対側の端部に、ドリリングバケット18が取付けられる。ドリリングバケット18は、鉛直方向に沿うケリーバ17の中心軸を中心として、ケリーバ17に対して回転駆動される。アースドリルクレーン1では、ウィンチ11に巻取られているロープ12をさらに繰出すことにより、ロープ12を介して吊下げられるケリーバ17及びドリリングバケット18が鉛直下側に移動する。そして、アースドリルクレーン1では、ケリーバ17及びドリリングバケット18を鉛直下側へ移動させながらドリリングバケット18を回転駆動することにより、地面に掘削孔を形成する。
【0014】
ウィンチ(サブウィンチ)21からは、ロープ(サブロープ)22が繰出される。ロープ22は、ブーム6の後端部から前端部に向かってブーム6の長手方向に沿って延設される。ブーム6では、ブーム上面に沿って、ロープ22が延設される。また、
図1A及び
図1Bに示すように、ブーム6の後端部には、シーブ(ガイドシーブ)23が取付けられ、ブーム6の前端部に、シーブ24,25が取付けられる。ウィンチ21から繰出されたロープ22は、シーブ23に掛けられた後、シーブ24,25の順に掛けられる。また、ロープ22は、シーブ23によって、ウィンチ21へガイドされる。また、ロープ22は、フック27に接続される。フック27は、ブーム6の前端部のシーブ25から、ロープ22を介して吊下げられる。そして、ブーム6の前端部からロープ22を介して吊下げられるフック27に吊荷を引掛けることにより、吊荷を吊上げ可能になる。
【0015】
図2乃至
図4は、ブーム6の後端部に取付けられるシーブ(ガイドシーブ)23及びその近傍の構成を示す。
図2は、斜視図を示し、ロープ22を省略して示す。また、
図3は、旋回体3の幅方向の一方側から視た状態を示し、ブーム6の幅方向の一方側から視た状態を示す。
図4は、旋回体3の後方側から視た状態を示し、ブーム6が起きる側(ブーム上面側)から視た状態を示す。なお、
図2及び
図4では、矢印W1及び矢印W2で示す方向が、ブーム6の幅方向となり、
図3では、紙面に対して垂直又は略垂直な方向が、ブーム6の幅方向となる。
【0016】
シーブ(ガイドシーブ)23には、前述のように、ウィンチ21とブーム6の前端部との間において、ウィンチ21から繰出されるロープ22が掛けられる。
図2乃至
図4に示すように、シーブ23は、シャフト31及びブラケット32を介して、ブーム6の後端部に取付けられる。ブラケット32は、ブーム6に直接的に取付けられる。ブラケット32は、ブーム6への取付け位置(接続位置)に形成される回動軸P1を中心として、ブーム6に対して回動可能である。ブラケット32のブーム6に対する回動軸P1は、ブーム6の幅方向に沿う。
【0017】
また、ブラケット32は、一対の板状部35A,35Bを備える。板状部35A,35Bは、ブーム6の幅方向について互いに対して離れて配置される。ブラケット32は、ブーム6の幅方向について板状部35A,35Bの間でブーム6を挟む状態で、ブーム6に取付けられる。シーブ23は、シャフト31を介して、ブラケット32に取付けられる。また、シャフト31及びシーブ23は、ブラケット32と一緒に、ブーム6に対して回動軸P1を中心として回動可能である。
【0018】
シャフト31は、中心軸P2を有し、中心軸P2に沿って延設される。シャフト31は、中心軸P2がブーム6の幅方向に沿う状態で、ブラケット32に取付けられる。中心軸P2に沿う方向についてシャフト31の一端は、ブラケット32の板状部35Aに接続され、中心軸P2に沿う方向についてシャフト31の他端は、ブラケット32の板状部35Bに接続される。また、シーブ23は、シャフト31の中心軸P2を中心として回転可能に、シャフト31によって支持される。そして、シーブ23は、シャフト31に対してシャフト31の中心軸P2に沿って、移動可能である。すなわち、シーブ23は、シャフト31及びブラケット32に対して、ブーム6の幅方向に沿って移動可能である。
【0019】
本実施形態のアースドリルクレーン1は、ロープ22に作用する荷重T、すなわち、ロープ22に作用する張力を計測する荷重計測装置40を備える。前述のアースドリルクレーン1では、ロープ22に作用する荷重Tの大きさは、フック27によって吊上げられる吊荷の荷重の大きさと、一致又は略一致する。したがって、本実施形態のアースドリルクレーン1では、荷重計測装置40によって、吊荷の荷重が計測される。荷重計測装置40は、前述したシーブ(ガイドシーブ)23、シャフト31及びブラケット32を備える。
【0020】
また、荷重計測装置40は、一対の油圧シリンダ37A,37Bを備える。油圧シリンダ37A,37Bのそれぞれは、中心軸としてシリンダ軸(Qa,Qbの対応する一方)を有し、油圧シリンダ37A,37Bのそれぞれは、シリンダ軸(Qa,Qbの対応する一方)に沿って伸縮可能である。油圧シリンダ37A,37Bのそれぞれの一端は、旋回体3に接続される。油圧シリンダ(第1の油圧シリンダ)37Aの他端は、ブラケット32の板状部35Aを介して、シャフト31に接続される。このため、油圧シリンダ37Aは、中心軸P2に沿う方向(ブーム6の幅方向)についてシャフト31の一端に、取付けられる。また、油圧シリンダ(第2の油圧シリンダ)37Bの他端は、ブラケット32の板状部35Bを介して、シャフト31に接続される。このため、油圧シリンダ37Bは、中心軸P2に沿う方向(ブーム6の幅方向)について油圧シリンダ37Aの取付け位置とは反対側の端で、シャフト31に取付けられる。
【0021】
アースドリルクレーン1では、フック27によって吊上げられる荷重が変化し、ロープ22に作用する荷重Tが変化することにより、ロープ22からシーブ23に作用する荷重Fが変化する。そして、荷重Fが変化することにより、油圧シリンダ37Aに作用する荷重Ra及び油圧シリンダ37Bに作用する荷重Rbのそれぞれが変化し、油圧シリンダ37A,37Bのそれぞれの油圧が変化する。
【0022】
ここで、ブラケット32の回動軸P1からシャフト31の中心軸P2(シーブ23の回転軸)までの距離La、及び、ブラケット32の回動軸P1から油圧シリンダ37Aのシリンダ軸Qa及び油圧シリンダ37Bのシリンダ軸Qbのそれぞれまでの距離Lbを、規定する。本実施形態では、回動軸P1から油圧シリンダ37Aのシリンダ軸Qaまでの距離、及び、回動軸P1から油圧シリンダ37Bのシリンダ軸Qbまでの距離は、距離Lbで同一であるとする。距離La,Lbは、ブーム6の起伏状態が変化しても、変化しない値である。また、シーブ23への接点におけるロープ22の開き角度αを規定する。開き角度αは、ブーム6の前端部からシーブ23までのロープ22の延設方向に沿う仮想線M1とウィンチ21からシーブ23までのロープの延設方向に沿う仮想線M2とによって形成される角度である。開き角度αは、ブーム6の起伏状態の変化に対応して、すなわち、前述したブーム6の起伏角度θの変化に対応して、変化する。
【0023】
また、開き角度αの二等分線Mαを規定するとともに、ブラケット32の回動軸P1から二等分線Mαまでの距離Lαを規定する。ここで、仮想線M1と二等分線Mαとの間の角度、及び、仮想線M2と二等分線Mαとの間の角度は、α/2となる。また、油圧シリンダ37Aの荷重Raと油圧シリンダ37Bの荷重Rbとの和である荷重合計値Rを、規定する。前述のようにパラメータを規定した場合、距離Laと距離Lαとの関係は、開き角度αを用いて、式(1)のようになる。また、ブラケット32の回動軸P1の軸回りのモーメントの釣合いから、荷重合計値Rとシーブ23に作用する荷重Fとの関係は、距離Lb,Lαを用いて、式(2)のようになる。そして、シーブ23に作用する荷重Fとロープ22に作用する荷重T(吊荷の荷重)との関係は、開き角度αを用いて、式(3)のようになる。なお、
図3には、シリンダ軸Qa,Qb、距離La,Lb,Lα、仮想線M1,M2、開き角度α及び二等分線Mαが示されるとともに、荷重Ra(Rb),F,Tが示される。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
したがって、油圧シリンダ37Aの荷重Ra及び油圧シリンダ37Bの荷重Rbが検出されることにより、荷重合計値Rが算出され、算出された荷重合計値R及び式(2)等を用いて、シーブ23に作用する荷重Fを算出可能となる。そして、算出した荷重F及び式(3)を用いて、ロープ22に作用する荷重Tを算出可能となる。したがって、アースドリルクレーン1では、油圧シリンダ37Aの荷重Ra及び油圧シリンダ37Bの荷重Rbに基づいて、ロープ22に作用する荷重Tを計測可能となる。
【0028】
図5は、荷重計測装置40の制御系を示す。荷重計測装置40は、コントローラ41を備える。コントローラ41は、例えば、コンピュータを構成し。コントローラ41は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含むプロセッサ又は集積回路(制御回路)、及び、メモリ等の記憶媒体を備える。コントローラ41に設けられるプロセッサ又は集積回路は、1つであってもよく、複数であってもよい。コントローラ41は、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。
【0029】
また、荷重計測装置40は、圧力センサ(センサ)42A,42Bを備える。圧力センサ42Aは、油圧シリンダ(第1の油圧シリンダ)37Aに作用する圧力(油圧)を検知する。圧力センサ42Bは、油圧シリンダ(第2の油圧シリンダ)37Bに作用する圧力(油圧)を検知する。コントローラ41は、圧力センサ42Aでの圧力の検知結果から、油圧シリンダ37Aに作用する荷重Raを取得し、圧力センサ42Bでの圧力の検知結果から、油圧シリンダ37Bに作用する荷重Rbを取得する。
【0030】
また、荷重計測装置40は、ユーザインタフェース43を備える。ユーザインタフェース43は、操作部材を備え、操作部材では、作業者等によって操作指令が入力される。操作部材としては、ボタン、ダイヤル、タッチパネル及びリモコン等が挙げられ、ある一例では、操作部材は、運転室5の内部に設けられる。コントローラ41は、操作部材で入力された指令に基づいて、処理を行う。また、ユーザインタフェース43は、作業者等に情報を告知する告知装置を備える。告知装置は、画面表示、音の発信、及び、ライトの点灯等のいずれかによって、告知を行う。ある一例では、告知装置は、運転室5の内部に設けられる表示画面を備える。告知装置では、例えば、荷重計測装置40によって計測された荷重Tに関する情報、及び、作業者への警告情報等が、告知される。
【0031】
また、本実施形態では、アースドリルクレーン1は、角度センサ45及び長さセンサ46を備える。角度センサ45は、ブーム6の起伏角度θを検知する。コントローラ41は、角度センサ45での検知結果から、ブーム6の起伏角度θを含むブーム6の起伏状態に関する情報を取得する。また、長さセンサ46は、ブーム6の長手方向についてのブーム長Dを検知する。コントローラ41は、長さセンサ46での検知結果から、ブーム6のブーム長Dを含むブーム6の長手方向についての伸縮状態に関する情報を取得する。
【0032】
図6は、荷重計測装置40のコントローラ41によって行われる、ロープ22に作用する荷重Tの計測処理を示す。ある一例では、
図6に示す処理は、コントローラ41によって、所定の間隔で定期的に行われる。別のある一例では、
図6に示す処理を行う操作指令をユーザインタフェース43の操作部材において作業者等は入力可能であり、操作指令がユーザインタフェース43において入力されたことに基づいて、コントローラ41は、
図6に示す処理を行う。
【0033】
図6に示すように、荷重Tの計測処理では、コントローラ41は、角度センサ45及び長さセンサ46のそれぞれでの検知結果から、ブーム6の起伏角度θ及びブーム6の長手方向についてのブーム長Dを取得する(S101)。そして、コントローラ41は、取得したブーム6の起伏角度θ及びブーム長Dに基づいて、ロープ22に作用する荷重Tについて限界荷重(定格荷重)Tthを設定する(S102)。すなわち、吊荷の荷重についての限界値(限界荷重)が、設定される。コントローラ41の記憶媒体等には、起伏角度θ及びブーム長Dのそれぞれと限界荷重Tthとの関係を示す情報(テーブル又は関数等)が、記憶されている。コントローラ41は、起伏角度θ及びブーム長Dのそれぞれと限界荷重Tthとの関係を示す情報を用いて、限界荷重Tthを設定する。ある一例では、ブーム6の水平面に対する起伏角度θの増加に対応させて、設定される限界荷重Tthを連続的又は段階的に増加させ、ブーム6の長手方向のブーム長Dの増加に対応させて、設定される限界荷重Tthを連続的又は段階的に減少させる。
【0034】
そして、コントローラ41は、前述したロープ22の開き角度αを算出するとともに、ブラケット32の回動軸P1から二等分線Mαまでの距離Lαを算出する(S103)。ここで、開き角度αは、ブーム6の起伏角度θの変化に対応して、変化する。コントローラ41の記憶媒体等には、起伏角度θと開き角度αとの関係を示す情報(テーブル又は関数等)が記憶されている。コントローラ41は、取得した起伏角度θ、及び、起伏角度θと開き角度αとの関係を示す情報に基づいて、開き角度αを算出する。そして、コントローラ41は、算出した開き角度α及び前述の式(1)等を用いて、距離Lαを算出する。なお、ブラケット32の回動軸P1からシャフト31の中心軸P2までの距離Laは、記憶媒体等に記憶されている。
【0035】
そして、コントローラ41は、圧力センサ42Aでの油圧シリンダ37Aの圧力の検知結果から、油圧シリンダ37Aに作用する荷重Raを取得し、圧力センサ42Bでの油圧シリンダ37Bの圧力の検知結果から、油圧シリンダ37Bに作用する荷重Rbを取得する(S104)。そして、コントローラ41は、油圧シリンダ37Aの荷重Raと油圧シリンダ37Bの荷重Rbとの和である荷重合計値Rを算出する(S105)。そして、コントローラ41は、算出した荷重合計値R、及び、前述した式(2)を用いて、ロープ22からシーブ23に作用する荷重Fを算出する(S106)。これにより、圧力センサ42A,42Bでの検知結果に基づいて、荷重Fが算出される。なお、ブラケット32の回動軸P1から油圧シリンダ37Aのシリンダ軸Qa及び油圧シリンダ37Bのシリンダ軸Qbのそれぞれまでの距離Lbは、記憶媒体等に記憶されている。
【0036】
そして、コントローラ41は、算出したシーブ23に作用する荷重Fに基づいて、ロープ22に作用する荷重(張力)Tを算出する(S107)。これにより、本実施形態では、フック27によって吊上げられる吊荷の荷重が、算出される。荷重Tは、前述した式(3)を用いて、算出される。そして、コントローラ41は、算出したロープ22に作用する荷重Tを、S102で設定した限界荷重Tthと比較する。そして、コントローラ41は、荷重Tが限界荷重Tth以下であるか否かを判定する(S108)。
【0037】
荷重Tが限界荷重Tth以下である場合は(S108-Yes)、コントローラ41は、算出した荷重Tを、ユーザインタフェース43の告知装置等によって告知させる(S109)。なお、ある一例では、荷重Tを告知することなく、コントローラ41は、荷重Tの計測処理を終了してもよい。一方、荷重Tが限界荷重Tthを超えている場合は(S108-No)、コントローラ41は、算出した荷重Tを告知させるとともに、ユーザインタフェース43の告知装置等によって警告させる(S110)。警告によって、作業者等は、ロープ22に作用する荷重T、すなわち、吊荷の荷重が、限界荷重(限界値)Tthを超えていることを認識する。なお、ある一例では、コントローラ41は、前述の警告のみさせ、算出した荷重Tを告知しなくてもよい。
【0038】
本実施形態の荷重計測装置40では、前述のように、ロープ22が掛けられるシーブ23が、シャフト31の中心軸P2を中心として回転可能に、シャフト31に支持される。そして、中心軸P2に沿う方向についてシャフト31の一端に油圧シリンダ37Aが取付けられ、中心軸P2に沿う方向について油圧シリンダ37Aとは反対側の端で、油圧シリンダ37Bがシャフト31に取付けられる。そして、荷重計測装置40では、油圧シリンダ37A,37Bのそれぞれの圧力の検知結果に基づいて、前述のように、ロープ22に作用する荷重Tが算出される。このため、荷重計測装置40の構成が複雑化することなく、ロープ22に作用する荷重Tが計測される。
【0039】
また、本実施形態の荷重計測装置40では、ウィンチ21の駆動が停止され、ロープ22の繰出し動作及び巻取り動作が停止されても、油圧シリンダ37Aに荷重Raが作用し、油圧シリンダ37Bに荷重Rbが作用する。したがって、ウィンチ21の駆動が停止されても、荷重Ra,Rbに基づいて、ロープ22に作用する荷重Tが適切に計測される。
【0040】
また、本実施形態の荷重計測装置40では、中心軸P2に沿う方向についてシャフト31の一端に作用する荷重として、油圧シリンダ37Aに作用する荷重Raが取得され、中心軸P2に沿う方向についてシャフト31の他端に作用する荷重として、油圧シリンダ37Bに作用する荷重Rbが取得される。そして、荷重計測装置40では、荷重Raに荷重Rbを加算した荷重合計値Rを用いて、前述のようにロープ22に作用する荷重Tが算出される。ここで、アースドリルクレーン1では、ロープ22のウィンチ21への巻取り等において、ブーム6の幅方向にロープ22が移動することにより、シーブ23がシャフト31の中心軸P2に沿う方向(ブーム6の幅方向)に移動することがある。本実施形態では、荷重Ra,Rbの荷重合計値Rに基づいて、前述のように荷重Tが算出されるため、中心軸P2に沿ってシーブ23が移動しても、ロープ22に作用する荷重Tが適切に計測される。
【0041】
また、シーブ23は、アースドリルクレーン1においてロープ22をウィンチ21へガイドし、アースドリルクレーン1に必須の部品である。したがって、荷重Tの計測のために新たなシーブを追加する必要がない。したがって、アースドリルクレーン1の構成が複雑化することなく、荷重Tが計測される。また、シーブを追加する必要がないため、ロープ22が掛けられるシーブの数が増加せず、ロープ22の損傷等が有効に防止される。
【0042】
また、荷重計測装置40のコントローラ41は、ブーム長D及びブーム6の起伏角度θに基づいて、荷重Tの限界値として限界荷重(定格荷重)Tthを設定する。このため、ブーム6の起伏状態及び伸縮状態に基づいて、ロープ22に作用する荷重Tの限界荷重Tthが適切に設定される。また、コントローラ41は、算出したロープ22に作用する荷重Tが設定した限界荷重Tthを超えている場合は、警告させる。これにより、作業者等は、ロープ22に作用する荷重Tが過度に高い状態であることを、適切に認識可能になる。すなわち、吊荷の荷重が過度に高い状態であることが、適切に認識される。
【0043】
(変形例)
なお、前述の実施形態等の荷重計測装置40では、フック27に接続されるロープ22に作用する荷重Tが計測されるが、ブーム6の後端部から前端部に向かって延設されるロープに作用する荷重であれば、荷重計測装置40と同様にして、計測可能である。ある変形例では、ケリーバ17に接続されるロープ12に作用する荷重が、荷重計測装置40と同様にして、計測される。
【0044】
また、アースドリルクレーン1以外の建設機械にも、前述の実施形態等と同様の荷重計測装置40が設けられ、前述の実施形態等と同様にしてロープに作用する荷重が計測されてもよい。ある変形例では、メインフック及びサブフックの両方で吊荷を吊上げ可能なクレーンに、前述の荷重計測装置40と同様の構成が適用される。この場合、メインフックに接続されるロープに作用する荷重、及び、サブフックに接続されるロープに作用する荷重の少なくとも一方が、前述の実施形態等と同様にして、計測される。すなわち、メインフックによって吊上げられる吊荷の荷重、及び、サブフックによって吊上げられる吊荷の荷重の少なくとも一方が、前述の実施形態等と同様にして、計測される。
【0045】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0046】
1…アースドリルクレーン、2…走行車体、3…旋回体、6…ブーム、21…ウィンチ(サブウィンチ)、22…ロープ(サブロープ)、23…シーブ、31…シャフト、32…ブラケット、37A,37B…油圧シリンダ、40…荷重計測装置、41…コントローラ、42A,42B…圧力センサ。