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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】複数のねじ締結手段を締め付ける方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20231010BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B23P19/06 J
G01B7/00 101
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019219500
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2020097104
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2018 131 305.5
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505279(JP,A)
【文献】特開2001-225231(JP,A)
【文献】特開平08-257851(JP,A)
【文献】特表2010-501875(JP,A)
【文献】特開2015-059755(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3195991(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3593939(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0026039(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に緊締される2つの環状フランジ(2a,2b)に沿って1列に配置された複数のねじ締結位置に位置する複数のねじ締結手段(10)を締め付ける方法であって、各ねじ締結手段(10)は、ねじ山付き部材(11)と、該ねじ山付き部材(11)にねじ嵌められるナット(12)とから成っており、該ナット(12)は、前記2つの環状フランジ(2a,2b)のうちの一方に支持されており、前記ねじ山付き部材(11)は、前記2つの環状フランジ(2a,2b)のうちの他方に支持されており、前記環状フランジは、該環状フランジ(2a,2b)により形成されたリング(2)に沿って移動することができるツールキャリア(3)を有しており、該ツールキャリア(3)のコンポーネント部品は、前記ねじ締結手段(10)を締め付けるための少なくとも1つのツール(4)およびセンサである、方法において、
a)前記リング(2)の全長に沿って少なくとも1回、前記ツールキャリア(3)を移動させ、かつその移動中に繰り返し、
-前記リング(2)に対する前記ツールキャリア(3)の目下の各長手方向位置を位置を示す値として検出し、かつ
-前記目下の各位置において前記2つの環状フランジ間の目下のギャップ寸法を、前記センサによりギャップ寸法値として検出し、
かつ前記位置を示す値および前記ギャップ寸法値を、個々のギャップ寸法値を、それぞれの割り当てられた各位置を示す値と結び付けてデータセットとして記憶する制御・評価ユニットに送り、
b)前記制御・評価ユニットは、前記データセットに含まれる前記ギャップ寸法値から、最大ギャップ寸法値または平均寸法を上回るギャップ寸法値を決定し、かつ決定された前記ギャップ寸法値に割り当てられた位置を示す値をプライマリ位置として決定し、
c)続いて前記ツールにより、前記プライマリ位置または周方向において前記プライマリ位置にすぐに続くねじ締結位置に位置する前記ねじ締結手段(10)を締め付けることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップa)~c)を1回または複数回繰り返す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
続いて、この時点までにまだ締め付けられていないねじ締結手段(10)を全て、前記ツール(4)により順次締め付ける、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記センサとしてレーザスキャナ(5)を設ける、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記レーザスキャナ(5)の測定ビームを、前記2つの環状フランジ(2a,2b)の間の接触面に位置合わせする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ツールキャリア(3)に、前記環状フランジ(2a,2b)により形成された前記リングに沿った複数のローラ(7)を配置する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記位置を示す値を距離センサ(16)により検出する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記距離センサ(16)は、前記ツールキャリア(3)の前記複数のローラ(7)のうちの少なくとも1つと、各ローラ軸を検出するロータリーエンコーダまたは角度エンコーダを有している、請求項7に関連する請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記距離センサ(16)は、測定ホイール(17)および測定ホイール軸を検出するロータリーエンコーダまたは角度エンコーダ(13)を有している、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記測定ホイール(17)は、前記環状フランジ(2a,2b)のうちの一方に支持されている、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記リングに沿って移動するために前記ツールキャリア(3)に電気的な移動駆動装置が設けられており、前記制御・評価ユニットは、移動駆動装置制御信号によって、締め付けるべき前記各ねじ締結手段(10)の前記ねじ締結位置に前記ツールが向かい合って位置する長手方向位置まで前記ツールキャリア(3)を移動させるように構成されており、かつツール制御信号によって、前記各ねじ締結手段(10)の締付けを実施するように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記締め付けるべきねじ締結手段の各長手方向位置へ移動させるための前記制御・評価ユニットは、距離制御モジュールを有しており、該距離制御モジュールは、目標変数としての所定の距離長さに到達すると前記移動駆動装置を停止させるように構成された距離制御器を有している、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に緊締される2つの環状フランジに沿って1列に配置された複数のねじ締結位置に位置する複数のねじ締結手段を締め付ける方法に関し、各ねじ締結手段は、ねじ山付き部材と、該ねじ山付き部材にねじ嵌められるナットとから成っており、ナットは、2つの環状フランジのうちの一方に支持されており、ねじ山付き部材は、2つの環状フランジのうちの他方に支持されており、環状フランジは、該環状フランジにより形成されたリングに沿って移動することができるツールキャリアを有しており、該ツールキャリアのコンポーネント部品は、ねじ締結手段を締め付けるための少なくとも1つのツールおよびセンサである。
【0002】
このような装置は、欧州特許出願公開第3195991号明細書から公知である。前記装置は、フランジに沿って1列に配置された複数のねじ締結手段を連続的に締め付けるために用いられる。各個別のねじ締結手段は、半径方向に延在するボルトヘッドによりフランジに対して下側から支持された、ねじ山が設けられたボルトの形態のねじ山付き部材と、ねじ山が設けられたボルトのねじ山部分にねじ嵌められ、フランジ上に支持されたねじ山付きナットとから成っている。ねじ締結手段の締付けまたは再締付けはそれぞれ、ナットがねじ山に沿って再調整されることにより行われる。このことは、自動運転移動手段に配置されたツールを使用して行われる。ツールが配置された移動手段は位置センサにより制御されて駆動され、ツールがねじ山付きボルトおよびねじ山付きナットのねじ嵌め軸線に対して正確に軸方向で位置合わせされた状態で位置していることがセンサ信号から導かれるまで、前記センサにより位置信号が検出される。このために、制御技術に関する位置センサの位置信号は、移動手段を駆動するための信号を形成するように処理される。さらに制御システムは、締付け手順を制御するように構成されている。
【0003】
実際には、風力発電所のタワー部分のねじ嵌め部の典型である環状フランジ同士の接触面は、互いに正確に平行であるようには構成されていない。よって前記接触面は、完全に平面的には互いに支持し合わない。むしろ、少なくとも部分的に周方向に延在するギャップが、環状フランジがねじ嵌められる前には環状フランジ間にまだ残留しており、前記ギャップの高さは環状フランジの中心軸線に対して、半径方向内側に向かって増大している。とりわけ製造関連の誤差により、ギャップは不規則なギャップ高さひいてはギャップ寸法を有していることがある。タワー部分を不動に結合するために、前記ギャップは続いて、環状フランジの全周にわたりねじ締結位置に配置された複数のねじ締結手段により閉じられる。
【0004】
つまり本発明の目的は、特にこのタイプのフランジ結合の場合には、不規則な高さを有するギャップが2つの環状フランジ間に存在することが多いということを考慮した、ねじ締結手段を締め付ける代替方法を提案することにある。
【0005】
この目的は、請求項1記載の特徴を有する、ねじ締結手段を締め付ける方法により達成される。本発明の好適なまたは有利な実施形態は、各従属請求項から導かれる。
【0006】
ねじ締結手段を締め付ける、本発明による方法は、
a)リングの全長に沿って少なくとも1回、ツールキャリアを移動させ、かつその移動中に繰り返し、
-リングに対するツールキャリアの目下の各長手方向位置を位置を示す値として検出し、かつ
-目下の各位置において2つの環状フランジ間の目下のギャップ寸法を、センサによりギャップ寸法値として検出し、
位置を示す値およびギャップ寸法値を、個々のギャップ寸法値を、それぞれの割り当てられた各位置を示す値と結び付けてデータセットとして記憶する制御・評価ユニットに送り、
b)制御・評価ユニットは、データセットに含まれるギャップ寸法値から、最大ギャップ寸法値または平均寸法を上回るギャップ寸法値を決定し、かつ決定された前記ギャップ寸法値に割り当てられた位置を示す値をプライマリ位置として決定し、
c)続いてツールにより、プライマリ位置または周方向においてプライマリ位置にすぐに続くねじ締結位置に位置するねじ締結手段を締め付ける、という点にある。
【0007】
換言すると、ギャップ寸法の実際に存在するプロファイルが、2つの環状フランジの間の多数の個々のギャップ寸法値を介して検出される。ギャップ寸法値は、特に各位置における環状フランジ間の鉛直方向の間隙を意味する。典型的には内側に向かって増大する、環状フランジ間のギャップ寸法は、形状、製造および/または向きに関する誤差により影響を及ぼされ、本発明による方法により、ねじ締結手段の達成可能なアセンブリ予備締付け力が増大されるように、段階的に閉じられる。その結果、風力発電所のタワー部分のねじ嵌め部の典型である環状フランジ結合部が、軸方向において互いに支持し合うことになりかつねじ締結手段により互いに向かって引き寄せられており、ねじ締結手段の位置は、構造を考慮して決定されているため、既知である。ねじ締結手段は、周方向において常に一貫して相互間隔、つまり周方向間隔を有している。
【0008】
位置を示す値は、各ねじ締結手段、つまり各ねじ締結位置に関して連続的に決定され得る。換言すると、ツールキャリアは第1のねじ締結手段から、この第1のねじ締結手段に隣接するように配置されたねじ締結手段へ移動させられ、この場合、各位置を示す値に対する各ギャップ寸法値が、各位置において検出される。このことは、ツールキャリアが第1のねじ締結手段に戻ってくるまで続けられる。
【0009】
ツールキャリアは、好適には自動運転するように構成されており、この場合、ツールキャリアは制御・評価ユニットにより制御されて、リングの長さに沿って各位置へ移動させられる。択一的に、ギャップ寸法値と結び付けられる位置を示す値は、ねじ嵌めの順序通りにまたはねじ嵌めの位置において検出されるのではなく、リングの全長に沿った如何なる位置でも任意に検出され得る。
【0010】
前記ステップa)~c)は、特にねじ締結手段の均一な締付けを保証しかつ最終的に2つの環状フランジ間のギャップ無しの結合を実現するように、好適には1回または複数回繰り返される。
【0011】
プライマリ位置における、またはプライマリ位置の範囲内での、ねじの初回締付けの後に、ステップa)~c)はそれぞれ繰り返されてよく、この場合、新規の位置を示す値および/または他のギャップ寸法値が決定され、制御・評価ユニットのデータセットに記憶される。最大ギャップ寸法値または平均寸法を上回るギャップ寸法値が、リングの円周上の多数の位置で新たに決定された、新規に決定されたギャップ寸法値により順次決定される。前記決定されたギャップ寸法値に割り当てられた位置を示す値は、続いてねじ締結手段がツールにより締め付けられる新規のプライマリ位置として決定される。決定された前記新規のプライマリ位置に直接には如何なるねじ締結手段も存在しない場合には、周方向において新規のプライマリ位置のすぐ前または後ろのねじ締結位置におけるねじ締結手段が、ステップc)に従って代わりに締め付けられる。
【0012】
これらのステップは、ギャップが閉じられるまで繰り返されてもよく、この場合、環状フランジの様々な位置に存在し得る複数のプライマリ位置が連続的に決定され得る。つまり、環状フランジ間のギャップが実質的に閉じられるまで、複数の任意には異なるねじ締結手段が連続的に締め付けられる。この場合、制御・評価ユニットは、この制御・評価ユニットが次のねじ締結位置、つまりねじ締結手段を締め付ける新規のプライマリ位置を提案するように考えられてよい。
【0013】
これにより、好適には続いて、この時点までにまだ締め付けられていないねじ締結手段が全て、ツールにより締め付けられる。その結果、環状フランジ間のギャップは完全に閉じられ、別のねじ締結手段が連続的に、対角線に沿って、放射状に、または任意の方式で締め付けられかつ/または再度締め付けられる。
【0014】
さらに好適には、レーザスキャナがセンサとして設けられている。環状フランジと、その間に位置するギャップとが、レーザスキャナにより格子方式または線形方式でスキャンされ、これにより、ギャップの高さが測定されひいては各ねじ締結位置におけるギャップ寸法値が決定される。レーザスキャナは、好適には二次元レーザスキャナである。
【0015】
レーザスキャナの測定ビームは、好適には2つの環状フランジの間の接触面に位置合わせされている。換言すると、測定ビームは、間にギャップが位置する、リングギャップの内面に対して、つまり残留ギャップまたは残留環状フランジそれぞれに対して垂直に向けられるように、位置合わせされている。
【0016】
1つの好適な実施形態では、ツールキャリアには、環状フランジにより形成されたリングに沿った複数のローラが配置されている。つまり、フランジ結合部の上面で支持されるように、ツールキャリアには、ツールキャリアにおける水平方向の回転軸線上に取り付けられた複数のローラが設けられている、ということが1つの設計実施形態により提供される。前記ローラの目的はとりわけ、ツールが配置されたツールキャリアの重量を支持することにある。
【0017】
追加的に、例えば風力発電所のタワーの内壁に対してツールキャリアを横方向において支持するために、ツールキャリアには、ツールキャリアにおける実質的に鉛直方向の回転軸線上に取り付けられた追加的なローラが設けられてよい。前記ローラの回転軸線は、タワーの内壁に対して実質的に平行になるように配置されている。
【0018】
複数のローラ、つまり水平方向の回転軸線上に取り付けられたローラおよび実質的に鉛直方向の回転軸線またはタワーの内壁に対して平行な回転軸線上に取り付けられたローラは、全てが駆動される必要はない。むしろ、複数のローラのうちのいくつかのみ、例えば単一のローラのみが駆動される設計実施形態が好適である。この例における残りのローラは、非駆動型のアイドリングローラである。
【0019】
特にツールキャリアの多くの重量を支持するローラに関しては、被駆動ローラであることが有利である。よって1つの設計実施形態により、各被駆動ローラは、水平方向の回転軸線上に取り付けられたローラのうちの1つである、ということを提案する。
【0020】
ねじ締結位置の位置を示す値は、好適には距離センサにより検出される。制御・評価ユニットは、測定した位置を示す値を用いてプライマリ位置を決定すると、距離センサの信号から、ツールがねじ締結位置に位置しているということが導かれるまで、ツールキャリアを制御して、リングに対するその目下の位置からプライマリ位置へ変位させることができる。ねじ締結位置は、締め付けられる各ねじ締結手段のねじ嵌め軸線を意味する。
【0021】
距離センサは、好適には複数のローラのうちの少なくとも1つと、各ローラ軸を検出する1つのロータリーエンコーダまたは角度エンコーダとを有している。1つまたは複数のローラは、リングまたは環状フランジそれぞれに沿ったツールの目下の長手方向位置が、前記ローラにより位置を示す値として記録され得るように構成されている。
【0022】
角度エンコーダは、各ローラの回転角度を検出し、ローラが移動した正確な距離は、制御・評価ユニットにおいて前記回転角度から算出することができるようになっており、これにより、次のねじ締結手段への接近経路の制御における正確な値が得られる。つまり、経路の制御が正確かつ検証可能になるように設計されている。さらに、ローラまたはローラ軸それぞれの回転速度は、ロータリーエンコーダまたは角度エンコーダにより決定され得る。
【0023】
被駆動ローラは特定の滑りにより作動することが多いため、回転角度がコード化されるローラが被駆動ローラではなく、複数の非駆動ローラのうちの1つであると有利である。
【0024】
回転角度がコード化されるローラは、好適にはツールキャリアを横方向において支持する追加的なローラである。この設計実施形態の利点は、風力発電所のタワーの場合の内壁が、典型的には比較的平滑であり、これにより前記面を走行するローラは、特に正確で再現可能な角度値を示す、という点にある。
【0025】
択一的に、距離センサは、測定ホイールおよび測定ホイール軸を検出するロータリーエンコーダまたは角度エンコーダを有している。測定ホイールは、好適には環状フランジのうちの1つに対して配置されている。よってこの場合、測定ホイールは、好適には水平方向に位置合わせされておりかつ各環状フランジの内周面に沿って走行する。測定ホイールは、この測定ホイールが1つのまたは他方の環状フランジの水平方向の接触面上を転動するように、ツールキャリアに鉛直方向に配置されてもよい。
【0026】
本発明は、リングに沿って移動するためのツールキャリアに電気的な移動駆動装置が設けられており、制御・評価ユニットは、移動駆動装置制御信号により、締め付けられる各ねじ締結手段のねじ締結位置にツールが対向して位置する長手方向位置までツールキャリアを移動させるように構成されており、かつツール制御信号により、各ねじ締結手段の締付けを実施するように構成されている、という技術的な教示を含む。つまり制御・評価ユニットは、センサにより検出された位置を示す値およびギャップ寸法値を受信し、これらの位置を示す値およびギャップ寸法値を整然と記憶するようになっており、制御・評価ユニットはさらに、ツールキャリアの駆動装置と、各ねじ締結手段の締付け手順とを制御するようになっている。
【0027】
締め付けられるねじ締結手段の各長手方向位置へ移動させるための制御・評価ユニットは、好適には距離制御モジュールを有しており、距離制御モジュールは、目標変数としての所定の距離長さに到達すると移動駆動装置を停止させるように構成された距離制御器を有している。制御ユニットの1つのモジュールとして設けられた距離制御器は、制御ユニットにおいてそれぞれ事前に規定された基準値または目標値としての距離変数に到達すると移動駆動装置を停止させ、ひいてはツールキャリアの移動を中断させるように構成されている。ツールが配置されているツールキャリアは、距離センサの信号から、ツールが周方向においてプライマリ位置に最も近いねじ締結位置に位置しているということが導かれるまで制御されて、移動駆動装置により駆動される。このために、制御技術に関する距離センサの信号は、移動手段を駆動するための移動駆動装置制御信号を形成するように処理される。
【0028】
制御・評価ユニットはさらに、ツール制御信号により、各ねじ締結手段の締付け手順を制御するように構成されている。
【0029】
さらなる詳細および利点は、図示の例示的な実施形態の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ねじ締結手段締付け装置の、キャリッジとして構成された移動ツールキャリアを有する、風力発電所のタワーの相互に連結された2つの環状部分を部分的にのみ示す斜視図である。
図2図1に示した2つの部分の断面図である。
図3図1に示したねじ締結手段締付け装置のユニットの測定ホイールを示す斜視図である。
図4図1に示したねじ締結手段締付け装置のユニットの距離センサを示す図である。
【0031】
図1および図2には、風力発電所のタワー(ここには図示せず)の2つの部分1a,1bが部分的に図示されている。2つの部分1a,1bは、各1つの環状フランジ2a,2bを有しており、環状フランジ2a,2bは、環状フランジ2a,2bに沿って円周上に1列にかつ均一に分布するように配置された、ねじ締結位置に位置する多数のねじ締結手段10により互いに緊締される。各ねじ締結手段10は、ねじ山付き部材11と、これにねじ嵌められるナット12とから成っており、この場合、ナット12は第1の環状フランジ2aに支持されており、かつねじ山付き部材11は第2の環状フランジ2bに支持されている。
【0032】
環状フランジ2a,2bにより形成されたリング2に沿って移動可能であるように、ねじ締結手段締付け装置(より詳細には図示せず)のツールキャリア3が配置されている。ツールキャリア3には、ねじ締結手段を締め付けるための液圧作動式のねじ緊締シリンダ6およびギャップ寸法値を測定するためのレーザスキャナ5として構成されたセンサを有するツール4が取り付けられており、この場合、ツールキャリア3は、第1の部分1aおよび第1の環状フランジ2aの内面に沿って複数のローラ7により移動可能である。ツール4およびレーザスキャナ5はさらに、制御・評価ユニット(ここには図示せず)に接続されており、以下にこの制御・評価ユニットの機能モードについて、より詳細に説明する。
【0033】
制御・評価ユニットは、例えばツールキャリア3に取り付けられるか、または電力供給ユニットの外側に配置されるか、またはリードハーネスにより対応するコンポーネントに接続されてよい。
【0034】
第1の環状フランジ2aの上面でツールキャリア3を鉛直方向において支持するために、ツールキャリア3には複数のローラ7が設けられており、これらのローラ7は、ツールキャリア3における水平方向の回転軸線上に支持されており、これらの水平方向の回転軸線の周りで転動する。前記ローラ7の目的はとりわけ、ツールが配置されたツールキャリア3の重量を支持することにあり、この場合、前記ローラ7のうちの1つは被駆動ローラ7である。
【0035】
第1の部分1aおよび第1の環状フランジ2aに対してツールキャリア3を横方向において支持するために、ツールキャリア3はさらに追加的なローラ7を有しており、追加的なローラ7の回転軸線は、第1の部分1aの内壁に対して実質的に平行になるように、またはそれぞれが実質的に鉛直になるように配置されている。
【0036】
環状フランジ2a,2bにより形成されたリング2に沿って移動するツールキャリア3には、電気的な移動駆動装置(ここでより詳細には図示せず)が設けられている。移動駆動装置は、ツールキャリア3の複数のローラ7のうちの少なくとも1つを駆動し、これによりツールキャリア3が、環状フランジ2a,2bの内面8に沿って移動させられることになる。
【0037】
制御・評価ユニットは、移動駆動装置制御信号によって、ツール4が、締め付けるべき各ねじ締結手段10のねじ締結位置と向かい合う特定の長手方向位置まで、ツールキャリア3を移動させるように移動駆動装置を作動させるように構成されている。その後、同じく制御・評価ユニットにより生ぜしめられるツール制御信号による各ねじ締結手段10の締付けが、ねじ緊締シリンダ6により実施される。
【0038】
締め付けるべきねじ締結手段10の各長手方向位置へ移動させるために制御・評価ユニットはさらに、距離制御モジュールを有しており、距離制御モジュールは、目標変数としての所定の距離長さに到達すると移動駆動装置を停止させるように構成された距離制御器を有している。
【0039】
ねじ締結手段10の締付けに関する本発明による方法では、最初にツールキャリア3がリング2の全長に沿って、つまりリング2の円周長さ全体にわたり、少なくとも1回移動させられる。このとき、環状フランジ2a,2bに対するツールキャリア3の複数の長手方向位置が、各位置を示す値として繰り返し検出され、この場合、各現在位置における2つの環状フランジ2a,2b間の目下のギャップ15の寸法が、レーザスキャナ5によりギャップ寸法値として検出される。
【0040】
前記位置において検出された位置を示す値および目下のギャップ寸法値は、個々のギャップ寸法値を、割り当てられた各位置を示す値と結び付けてデータセットとして記憶する制御・評価ユニットに送られる。さらに制御・評価ユニットは、データセットに含まれるギャップ寸法値から、最大ギャップ寸法値または平均寸法を上回るギャップ寸法値の位置をプライマリ位置として決定する。換言すると、プライマリ位置は、2つの環状フランジ2a,2b間のギャップ15が最大であるかまたは平均寸法を上回っている環状フランジ2a,2bの円周上の位置に相当し、この場合、当該位置で各ねじ締結手段10が締め付けられることにより、前記ギャップ15が最初に閉じられるか、または少なくとも初めに最小化される。したがって、続いてツールにより締め付けられるねじ締結手段10は、プライマリ位置または周方向においてプライマリ位置の直前または直後のねじ締結位置に位置するねじ締結手段である。
【0041】
プライマリ位置においてねじ締結手段10が締め付けられるとすぐに、これらの方法ステップが再び1回または複数回繰り返されてよい。各ステップは、環状フランジ2a,2b間のギャップ15が実質的に閉じられるまで繰り返されてもよく、この場合、環状フランジ2a,2bの様々な位置に存在し得る複数のプライマリ位置がステップ毎に決定される。つまり、環状フランジ2a,2b間のギャップ15が実質的に閉じられるまで、複数のねじ締結手段10が連続的に締め付けられる。
【0042】
続いて、この時点までにまだ締め付けられていないねじ締結手段10が全て、ツールにより締め付けられる。よって、タワーの2つの部分1a,1bを結合するために設けられた全てのねじ締結手段10が最終的に締め付けられかつ/または再度締め付けられ、例えば形状、製造および向きの点における不正確さの理由で部分1a,1bおよび/または環状フランジ2a,2b間に存在し得るギャップ15が閉じられる。
【0043】
環状フランジ2a,2bに対するツールキャリア3の長手方向位置に相当する各位置を示す値は、図3に示す距離センサ16により検出される。その結果、リング2の全長に沿った多数の位置を示す値が検出され、これらの位置を示す値は、それぞれのケースにおいて、現時点のねじ締結手段10の1つのねじ締結位置に相当している。
【0044】
択一的に、位置を示す値は2つのねじ締結手段10の間の位置において決定されてもよい。ただし有利なのは、ねじ締結手段10の各ねじ締結位置に、それぞれ位置を示す値が割り当てられることである。
【0045】
図3に示すようにツールキャリア3に配置された距離センサ16は、測定ホイール17と、測定ホイール軸を検知する角度エンコーダ13とを有している。択一的または追加的に、距離センサ16はロータリーエンコーダを有していてもよい。測定ホイール17は水平方向に位置合わせされており、図3に見られるように第1の環状フランジ2aの内面8に支持されるようになっており、ツールキャリア3が環状フランジ2a,2bに沿って移動する間、前記内面8上を転動する。つまり測定ホイール17は、第1の環状フランジ2aに支持されている。択一的に、測定ホイール17は第2の環状フランジ2bに支持されてもよい、または図2に示した、各環状フランジ2a,2bの水平方向の接触面14上で転動してもよい。
【0046】
さらに択一的には、距離センサ16が、ツールキャリア3の複数のローラ7のうちの少なくとも1つと、各ローラ軸を検知する1つのロータリーエンコーダまたは角度エンコーダとを有していることも考えられる。換言すると、この場合は独立型の測定ホイール17を省くことができ、この場合、部分1a,1bまたは環状フランジ2a,2bに支持されかつロータリーエンコーダまたは角度エンコーダと協働する、ツールキャリア3の少なくとも1つのローラ7は、各環状フランジ2a,2bに対するツールキャリア3の長手方向位置を決定することができるように構成されている。
【0047】
図4に示すレーザスキャナ5は、2つの環状フランジ2a,2bの内面8に対して垂直に向けられており、この場合、前記レーザスキャナ5の測定ビーム9は、2つの環状フランジ2a,2bの間の接触面に位置合わせされている。レーザスキャナ5は、環状フランジ2a,2bの表面および環状フランジ2a,2b間の目下のギャップ15をスキャンし、そこからギャップの高さに関するギャップ寸法値を決定し、相応する信号を制御・評価ユニットに送るように構成されている。
【符号の説明】
【0048】
1a,1b 部分
2 リング
2a,2b 環状フランジ
3 ツールキャリア
4 ツール
5 レーザスキャナ
6 ねじ緊締シリンダ
7 ローラ
8 内面
9 測定ビーム
10 ねじ締結手段
11 ねじ山付き部材
12 ナット
13 角度エンコーダ
14 接触面
15 ギャップ
16 距離センサ
17 測定ホイール
図1
図2
図3
図4