(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】アルミニウム傾斜アルミノシリケートゼオライト組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
C01B39/48
(21)【出願番号】P 2019538744
(86)(22)【出願日】2017-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2017056073
(87)【国際公開番号】W WO2018065885
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-23
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クンケス,エドゥアルド エル
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ,マリツァ アイ.
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】日比野 隆治
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530163(JP,A)
【文献】特開2013-226535(JP,A)
【文献】特表2009-504553(JP,A)
【文献】特開2012-116723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/20-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8環細孔径を有するアルミノシリケートゼオライト結晶を含む組成物であって、該アルミノシリケートゼオライト結晶が表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有し、表面シリカ対アルミナモル比
を、内部シリカ対アルミナモル比の最大値
で除した値が、0.2未満である、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記アルミノシリケートゼオライト結晶が、AEI、AFX、CHA、LEV、AFT、EAB、KFI、SAT、TSC、SAV、ERI、及びこれらの組合せからなる群から選択される構造コードを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルミノシリケートゼオライト結晶がCHAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物がモル基準で約80%以上結晶性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物がモル基準で約80%~約95%結晶性である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が約400m
2/g以上のゼオライトBET表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面シリカ対アルミナモル比
を、内部シリカ対アルミナモル比の最大値で除した値が、下記:
1/50未満である;
1/30未満である;
1/10未満である;
のうちの1つ以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記内部シリカ対アルミナモル比が、約10~約250、又は約50~約250、又は約90~約250、又は約150~約250の範囲の最大値を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記表面シリカ対アルミナモル比が、約5~約60、又は約10~約50、又は約15~約40、又は約20~約40の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、モル基準で、アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約5%以上のアルミニウム富化、又は
アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約10%以上のアルミニウム富化、又は
アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約15%以上のアルミニウム富化、又は
アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約20%以上のアルミニウム富化、又は
アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面に約25%以上のアルミニウム富化、又は
アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約30%以上のアルミニウム富化
を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
アルゴンスパッタリング後のXPSからの正規化Al2p及びSi2p強度に基づくエッチング深さの関数としてSi2p対Al2p比強度傾斜を有し、20nm~50nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が最大で約10であり、250nm~450nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が約10~約15の範囲であり、1000nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が約11.5~約20の範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を製造するための方法であって、
第1のアルミナ源、シリカ源、鉱化剤、及び有機構造規定剤を混合して出発ゲルを形成すること;
圧力容器内で、水熱条件下で第1の期間、出発ゲルを結晶化させること;及び
第2のアルミナ源を第2の期間にわたって圧力容器に添加して、最終結晶化生成物を形成すること
を含み、
前記鉱化剤が、NaOH、KOH、F、水酸化第4級アンモニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択され、
有機構造規定剤が、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族基、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基を有する第4級アンモニウムカチオンを含み、
前記第1の期間が、モル基準で少なくとも約80%結晶性であるアルミノシリケートゼオライト結晶を最終結晶化生成物から得るための全結晶化時間を定義し、及び
前記第2の期間が、約1分~約168時間の範囲であることを特徴とする方法。
【請求項13】
第1のアルミナ源及び第2のアルミナ源が、NaAlO
2、Al(C
3H
7O)
3、Al金属、水溶性アルミニウム塩、及びこれらの組合せからなる群から独立して選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2のアルミナ源がNaAlO
2などの水溶性アルミニウム塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シリカ源がコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、沈降シリカ、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記全結晶化時間が約1時間~約168時間、又は約1時間~約96時間、又は約5時間~約72時間、又は約10時間~約48時間の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記添加工程を、第1の期間の約1/4、約1/3、約1/2、約2/3、又は約3/4で開始する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の期間が、約1分~約96時間、約1分~約72時間、約1分~約48時間、又は約1分~約30時間の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の期間が、約1分~約60分、約1分~約45分、約1分~約30分、約1分~約15分、又は約1分~約10分の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を製造するための方法であって、
第1のアルミナ源、シリカ源、鉱化剤、及び有機構造規定剤を混合して出発ゲルを形成すること;及び
圧力容器内で、水熱条件下で出発ゲルを結晶化させ、この間に、第2のアルミナ源を所定の期間にわたって圧力容器に連続的に添加すること、
を含み、及び
前記鉱化剤が、NaOH、KOH、F、水酸化第4級アンモニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択され、及び
有機構造規定剤が、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族基、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基を有する第4級アンモニウムカチオンを含み、
前記所定の期間が、約1分~約168時間の範囲であり、及びモル基準で少なくとも約80%結晶性であるアルミノシリケートゼオライトを得るための全結晶化時間を定義することを特徴とする方法。
【請求項21】
最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶を濾過、乾燥、及び焼成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミノシリケート(ケイ酸塩)ゼオライト結晶組成物、及び該組成物を製造する方法に関する。より詳細には、本開示は、深さ依存性シリカ対アルミナ(の)モル比を有するアルミノシリケートゼオライト結晶、及び深さ依存性シリカ対アルミナ(の)モル比を有するアルミノシリケートゼオライト結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性アルミノシリケート(ケイ酸塩)ゼオライト材料が広く使用されており、様々な用途を有している。結晶性アルミノシリケートゼオライト材料を製造するための標準的工業的方法には、シリカ源、アルミナ源、鉱化剤(例えば塩基)、及び有機構造規定(指向:directing)剤(テンプレート)から構成されるゲルの調製を伴う。ゲルの結晶化は、圧力容器内で、水熱(hydrothermal)条件下で、バッチ方式で行われる。この標準的工業的方法の下では、生成物の特性改良は、元のゲル又は合成条件に対して行う改善から生じるものである。
【0003】
結晶性アルミノシリケートゼオライト材料中のアルミニウム分布の制御された改変を可能にする合成方法を開発することが当該分野において必要である。
【発明の概要】
【0004】
概要
本書では、アルミノシリケートゼオライト結晶組成物、及び該アルミノシリケートゼオライト結晶組成物の製造方法を開示する。
【0005】
幾つかの実施形態では、その組成物は8環細孔径(サイズ)(8 ring pore size)を有するアルミノシリケートゼオライト結晶を含む。そのアルミノシリケートゼオライト結晶は深さ依存性、シリカ対アルミナモル比を有する。幾つかの実施形態において、アルミノシリケートゼオライト結晶は、表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有し、表面シリカ対アルミナモル比が、内部シリカ対アルミナモル比より高いか又は低いかのいずれかである。ある有利な実施形態では、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より低い。
【0006】
幾つかの実施形態において、本書に開示のアルミノシリケートゼオライト結晶組成物の製造方法は、第1の量の第1のアルミナ源、シリカ源、鉱化剤、及び有機構造規定剤(テンプレート)を混合して出発ゲルを形成することを含む。この方法は、さらに、圧力容器内で、水熱(hydrothermal)条件下で第1の期間に、出発ゲルを結晶化させることを含むことができる。この方法は、さらに、水熱条件下で、第2の量の第2のアルミナ源を第2の期間中、圧力容器に加えて、最終結晶化生成物を形成することを含むことができる。最終結晶化生成物に、場合により、最終アルミノシリケートゼオライト結晶を形成するための、濾過、乾燥、及び焼成のようなさらなる処理を施すことができる。
【0007】
本開示は以下の実施形態を含む。ただし、限定するものではない。
【0008】
実施形態1:8環細孔径を有するアルミノシリケートゼオライト結晶であって、表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有するアルミノシリケートゼオライト結晶を含み、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より高いか低いかのいずれかである、組成物。
【0009】
実施形態2:前記アルミノシリケートゼオライト結晶が、AEI、AFX、CHA、LEV、AFT、EAB、KFI、SAT、TSC、SAV、ERI、及びこれらの組合せからなる群から選択される構造コードを含む、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0010】
実施形態3:前記アルミノシリケートゼオライト結晶がCHAを含む、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0011】
実施形態4:前記組成物がモル基準で約80%以上結晶性である、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0012】
実施形態5:前記組成物がモル基準で約80%~約95%結晶性である、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0013】
実施形態6:前記組成物が約400m2/g以上のゼオライトBET表面積を有する、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0014】
実施形態7:前記表面シリカ対アルミナモル比が、下記の、すなわち、前記内部シリカ対アルミナモル比の最大値より少なくとも約50倍高いか、又は低い;前記内部シリカ対アルミナモル比の最大値より少なくとも約30倍高いか、又は低い;前記内部シリカ対アルミナモル比の最大値より少なくとも約10倍高いか、又は低い;前記内部シリカ対アルミナモル比の最大値より少なくとも約5倍高いか、又は低い;前記内部シリカ対アルミナモル比の最大値より少なくとも約1.5倍高いか、又は低い;のうちの1つ以上である、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。特定の実施形態においては、表面シリカ対アルミナモル比が上記のいずれかの量だけ低いことが有利である。
【0015】
実施形態8:前記内部シリカ対アルミナのモル比が、約10~約250、又は約50~約250、又は約90~約250、又は約150~約250の範囲の最大値を有する、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0016】
実施形態9:前記表面内部シリカ対アルミナのモル比が、約5~約60、又は約10~約50、又は約15~約40、又は約20~約40の範囲である、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0017】
実施形態10:前記組成物が、モル基準で、アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約5%以上のアルミニウム富化(濃化:enrichment);又はアルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約10%以上のアルミニウム富化;又はアルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約15%以上のアルミニウム富化;又はアルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約20%以上のアルミニウム富化;又はアルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約25%以上のアルミニウム富化;又はアルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比してアルミノシリケートゼオライト結晶の表面上に約30%以上のアルミニウム富化を有する、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0018】
実施形態11:アルゴンスパッタリング後のXPSからの正規化(normalized)Al2p及びSi2p強度に基づくエッチング深さの関数としてのSi2p対Al2p比強度傾斜(勾配:gradient)を有し、20nm~50nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が最大で約10であり、250nm~450nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が約10~約15の範囲であり、1000nmエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度が約11.5~約20の範囲である、前記いずれかの実施形態に記載の組成物。
【0019】
実施形態12:下記:すなわち、第1の量の第1のアルミナ源、シリカ源、鉱化剤、及び有機構造規定剤を混合して出発ゲルを形成すること、出発ゲルを圧力容器内で、水熱条件下で、第1の期間に、結晶化させること、圧力容器内へ第2の量の第2のアルミナ源を第2の期間中にわたって添加して最終結晶化生成物を形成することを含む、方法。なお、この方法の最終結晶化生成物は、例えば、本発明の組成物について上記した特徴のいずれかを有することができることに留意すべきである。
【0020】
実施形態13:第1のアルミナ源が第2のアルミナ源と同じである、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0021】
実施形態14:第1アルミナ源及び第2アルミナ源が、NaAlO2、Al(C3H7O)3、Al金属、水溶性アルミニウム塩、及びこれらの組合せからなる群から独立して選択される、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0022】
実施形態15:第2のアルミナ源がNaAlO2などの水溶性アルミニウム塩である、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0023】
実施形態16:前記シリカ源がコロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、沈降シリカ、及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0024】
実施形態17:前記鉱化剤が、NaOH、KOH、F-、水酸化第4級アンモニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0025】
実施形態18:有機構造規定剤が、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族基、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基を有する第4級アンモニウムカチオンを含む、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0026】
実施形態19:前記出発ゲルから得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が、約5~約250、又は約10~約150、又は約10~約100、又は約15~約60の範囲のシリカ対アルミナのモル比を有する、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0027】
実施形態20:前記出発ゲルから得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が均一な分布のシリカ対アルミナモル比を有し、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が深さ依存性、シリカ対アルミナモル比傾斜を示す、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0028】
実施形態21:前記最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が、表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有し、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より高いか、又は低い、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0029】
実施形態22:前記第1の期間が、モル基準で少なくとも約80%結晶性であるアルミノシリケートゼオライト結晶を最終結晶化生成物から得るための全結晶化時間を定義する、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0030】
実施形態23:前記全結晶化時間が約1時間~約168時間、又は約1時間~約96時間、又は約5時間~約72時間、又は約10時間~約48時間の範囲である、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0031】
実施形態24:前記添加工程を、第1の期間の約1/4、約1/3、約1/2、約2/3、又は約3/4で開始する、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0032】
実施形態25:前記第2の期間が、約1分~約168時間、約1分~約96時間、約1分~約72時間、約1分~約48時間、又は約1分~約30時間の範囲である、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0033】
実施形態26:前記第2の期間が、約1分~約60分、約1分~約45分、約1分~約30分、約1分~約15分、又は約1分~約10分の範囲である、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0034】
実施形態27:前記添加工程が、第2の期間にわたって前記第2の量の第2のアルミナ源を連続的に添加することを含み、前記第2の期間が第1の期間と等しく、前記第2の期間を第1の期間と同時に実行する(進行させる)、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0035】
実施形態28:最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶を濾過、乾燥、及び焼成することをさらに含む、前記いずれかの実施形態に記載の方法。
【0036】
本開示についてのこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡単に説明する添付図面とともに以下の詳細な説明を読むことから明らかになろう。本開示は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の上述の実施形態の任意の組合せ、及び、このような特徴又は要素が本明細書における特定の実施形態の説明で明白に組み合わされているかどうかにかかわらず、本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ又はそれ以上の特徴又は要素の組合せを包含する。本開示は、全体的に解釈されることを意図しており、その結果、開示発明の様々な態様及び実施形態では分離可能な特徴又は要素であっても、文脈上明らかに別段の指示がない限り、組み合わせることも意図していると見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本開示についての上記した及び他の特徴、特性、並びに様々な利点は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明を考慮することでより明らかとなる。
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態による、アルミノシリケートゼオライト結晶の製造方法を示す。
【
図2】[
図2A~2G]本発明の実施形態に従って調製したアルミノシリケート構造の走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析の組合せから得られた元素マップ画像を示す。(A)及び(E)は対照群-第2のアルミナ源の中間段階添加なし;(B)は結晶化の10時間後に第2のアルミナ源を添加したとき;(C)及び(F)は結晶化の15時間後に第2のアルミナ源を添加したとき:(D)及び(G)は結晶化の20時間後に第2のアルミナ源を添加したときである。
【
図3】[
図3A~3C]本発明の実施形態に従って調製したアルミノシリケートゼオライト結晶中のアルミニウム濃度について、アルゴンイオンスパッタリングを用いたX線光電子分光法(XPS)で測定された代表的な深さ方向プロファイルを示す。(A)は対照-第2のアルミナ源の中間段階添加なし;(B)は結晶化の15時間後に第2のアルミナ源を添加したとき;(C)は結晶化の20時間後に第2のアルミナ源を添加したときである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義及び測定
用語「表面シリカ対アルミナ(の)モル比」は、約20nmから約50nmのエッチング深さで測定されるSi2p対Al2p強度比についての、アルゴンスパッタリング測定によるXPSから誘導されるシリカ対アルミナ(の)モル比を指す。
【0040】
用語「内部シリカ対アルミナ(の)モル比」は、約250nmを超えるエッチング深さで測定されるSi2p対Al2p強度比についての、アルゴンスパッタリング測定によるXPSから誘導されるシリカ対アルミナ(の)モル比を指す。
【0041】
用語「中心シリカ対アルミナ(の)モル比」は、約1000nmのエッチング深さで測定されるSi2p対Al2p強度比についての、アルゴンスパッタリング測定によるXPSから誘導されるシリカ対アルミナ(の)モル比を指す。
【0042】
ケイ素対アルミニウムモル比はXPS、及びアルゴンスパッタリングによって測定することができる。XPS測定は、ThermoFisher-SCIENTIFIC社製のK-アルファXPSシステムを使用して行うことができる。分析チャンバは、1×10-9トル(Torr)以下のベース圧を有しており、二重集束半球型分析器、深さ方向分布測定(depth profiling)用のアルゴンイオン源、帯電中和用の低エネルギー電子/イオンフラッド源結合装置、及び単色化AlKαX線源を備えている。そのビームサイズは400μmである。深さ方向プロファイル測定のために、各サンプル表面に、2mm×2mm領域にラスターされる、0.1nm/sの速度でアルゴンスパッタガンを使用してスパッタリングを行う。アルゴンスパッタガンについては、3000eVのイオンエネルギー、3×10-7トルのアルゴンに設定する。各スパッタリングサイクルは100秒に設定し、これにより10nm/サイクルのスパッタリング量が付与される。XPSスペクトルは、AlK-α線(hD=1486.7eV)を用いて40.0eVの一定のパスエネルギーで測定する。結合エネルギー(BE)は、偶発(不定:adventitious)C1sピーク、284.8eVを基準とする。XPS分析は、Si2p(結合エネルギー=102.8eV)及びAl2p(結合エネルギー=74.2eV)のコア準位に関する電子放出に関連する信号の正規化比を提供する。XPSスペクトルのフィッティングにはシャーリー(Shirley)バックグラウンド及び混合ガウス-ローレンツ(Gaussian-Lorentzian)ライン形状を用いる。これらの強度比は、表面ケイ素対アルミニウム元素比を示すものであるが、この絶対量を正確には表していない可能性がある。しかしながら、試料間による、又は、同じ試料の表面からバルク(内部又は中心部分)へのSi2p/Al2p比の相対的変化が組成変化を正確に反映する。
【0043】
元素マップはSEM及びSEM/EDXにより得ることができる。ゼオライトをエポキシ樹脂中に混合し、次にポリ塩化ビニル粉末ホルダー中で硬化させる。その後、ダイヤモンド懸濁液を使用して、そのホルダーを粉砕し研磨してエポキシに埋め込まれたゼオライトを露出させる。そのゼオライトに約30nmの炭素(形態学試料用には約4nmのPt)を被覆する。反射電子(後方散乱電子:backscatter electron)像(BEI)及び二次電子像(SEI)は、デュアルBruker Quantax SDDシステム(XFlash5030又は6160シリーズ30mm2-60mm2)を備えたJEOL(JSM6500F又はJSM7800F)ショットキー電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)上で処理した。スペクトル分解能は127eVである。SEIは5KeVで処理した。BEIは10KeVで得た。エネルギー分散分光法(EDS)分析を10mmの作動距離及び15kVの加速電圧で行った。システム標準を用いた半定量分析は検出器効率に関し約5%から約10%の間で変動する可能性がある。
【0044】
組成物の結晶化度はX線回折により測定することができる。試料を乳鉢と乳棒を使用して粉砕し、次に平らな台紙の試料ホルダーに装填した。データ収集には、PANalytical MPD X’Pert Pro回折システムを使用した。銅アノード管(波長:CuKα1=1.54060Å)を45kV及び40mAで操作した。ブラッグ-ブレンターノ(Bragg-Brentano)配置を採用し、データを3°から80°2θ、ステップサイズ0.016°、カウント時間60秒/ステップで取得した。相同定及びピークフィッティングは、Jade Plusソフトウエアバージョン9.5.0及びICDD(国際回折データセンター)提供のPDF-4+2015(粉末回折ファイル)データベースを使用して実行した。リートベルト精密化法をBruker AXS Topasソフトウエアバージョン4.2を用いて実施した。
【0045】
ゼオライトBET表面積分析及び窒素細孔径分布は、マイクロメリティックトライスター(Micromeritics TriStar)3000シリーズ機器で分析した。試料について、マイクロメリティックススマートプレップ(Micromeritics SmartPrep)脱気装置で合計6時間脱気した(乾燥窒素流下で、300℃まで2時間上昇させ、次いで300℃に4時間保持した)。窒素BET表面積は0.08~0.20間の5つの分圧点を用いて決定する。また、窒素細孔径(BJH)は33個の脱着点を用いて決定する。
【0046】
アルミノシリケートゼオライト結晶サイズはSEM像から推定することができる。
【0047】
詳細な説明
本開示は、深さ依存性シリカ対アルミナモル比傾斜を有するアルミノシリケートゼオライト結晶、及びそれらの製造方法に関する。これらのアルミノシリケートゼオライト結晶を利用する新しい触媒組成物が想定される。表面富化(表面濃化:surface enrichment)のレベル及び表面で富化される種が何であるか(すなわち、シリカ又はアルミナのいずれか)に応じて、特定の性能特性を改変することができる。例えば、いかなる特定の作用理論にも拘束されるものではないが、シリカ量が結晶表面で富化される実施形態(すなわち、シリカ対アルミナモル比が結晶の内部よりも表面の方が高い場合)では、水熱安定性が向上する可能性がある。また、いかなる特定の作用理論にも拘束されるものではないが、アルミナ量が結晶表面で富化される他の実施形態(すなわち、シリカ対アルミナモル比が結晶内部よりも表面の方が低い場合)では、生成する組成物は、結晶表面近傍の触媒活性部位の濃度がより高いため、増強した触媒活性を発揮することができ、これにより活性部位への物質移動が改善される。
【0048】
アルミノシリケートゼオライト結晶組成物
幾つかの実施形態では、本開示は、8環細孔径を有するアルミノシリケートゼオライト結晶を含み、該アルミノシリケートゼオライト結晶が深さ依存性のシリカ対アルミナモル比を有するものである組成物に関する。幾つかの実施形態において、アルミノシリケートゼオライト結晶は、表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有し、表面シリカ対アルミナ比が内部シリカ対アルミナモル比より高いか又は低いかのいずれかである。例えば、表面シリカ対アルミナモル比は、内部シリカ対アルミナモル比の最大値よりも、少なくとも約50倍低い、少なくとも約40倍低い、少なくとも約30倍低い、少なくとも約20倍低い、少なくとも約10倍低い、少なくとも約5倍低い、少なくとも約4倍低い、少なくとも約3倍低い、少なくとも約2倍低い、又は少なくとも約1.5倍低い。逆に、表面シリカ対アルミナモル比を、上記した各量だけ高くすることもできる。明快にするため、第1の比が第2の比より「X倍低い」とは、該第1の比が該第2の比の1/Xであると言い換えることができることに留意されるべきである。例えば、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナ比より50倍低い場合、表面シリカ対アルミナモル比は内部シリカ対アルミナ比の1/50である。
【0049】
幾つかの実施形態では、組成物は、アルゴンスパッタリング後のXPSからの正規化したAl2p及びSi2p強度に基づくエッチング深さの関数としてSi2p対Al2p比強度傾斜を有することができる。ここで、20nm~50nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は最大約10であり、250nm~450nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は約10~約15の範囲であり、1000nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は約11.5~約20の範囲である。
【0050】
幾つかの実施形態では、内部シリカ対アルミナモル比は、約10~約250、約50~約250、約90~約250、約150~約250、又は約200の範囲の最大値を有することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、表面シリカ対アルミナモル比は、約5~約60、約10~約50、約15~約40、約20~約40、又は約35の範囲である。
【0052】
幾つかの実施形態では、組成物は、アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比して、アルミノシリケートゼオライト結晶の表面で、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、又は約30%以上(モル基準で)のアルミニウム富化を有する。
【0053】
幾つかの実施形態では、組成物は、モル基準で、約80%以上、約85%以上、又は約90%以上結晶性であってもよい。特定の実施形態においては、組成物は、約80%~約95%結晶性又は約82%~約92%結晶性であってもよい。
【0054】
幾つかの実施形態において、組成物は、約400m2/g以上、又は約450m2/g以上のゼオライトBET表面積を有してもよい。特定の実施形態において、組成物は、約400m2/g~約900m2/g、約450m2/g~約900m2/g、約400m2/g~約750m2/g、約450m2/g~約750m2/g、約400m2/g~約600m2/g、又は約450m2/g~約550m2/gまでの範囲のゼオライトBET表面積を有してもよい。
【0055】
幾つかの実施形態では、組成物は、最大約10μmの、又は、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約8μm、約0.1μm~約6μm、約0.1μm~約5μm、約0.1μm~約4μm、約0.1μm~約3μm、約0.1μm~約2μm、約0.1μm~約1μm、約0.1μm~約0.5μm、約1μm~約10μm、約1μm~約8μm、約1μm~約6μm、約1μm~約5μm、約1μm~約4μm、約1μm~約3μm、又は約1μm~約2μmまでの範囲の結晶サイズを有することができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の様々なアルミノシリケートゼオライト結晶組成物は、AEI、AFX、CHA、LEV、AFT、EAB、KFI、SAT、TSC、SAV、ERI、及びこれらの組合せからなる群から選択される構造コードを含む。一実施形態では、アルミノシリケートゼオライト結晶はCHAを含む。一実施形態では、アルミノシリケートゼオライト結晶はCHAを含む。
【0057】
アルミノシリケートゼオライト結晶組成物の製造方法
幾つかの実施形態では、
図1に示す、アルミノシリケートゼオライト結晶組成物を製造する方法100は、ブロック102に従って、第1の量の第1のアルミナ源、シリカ源、鉱化剤、及び有機構造規定剤(テンプレート)を混合して、ブロック104に従い、出発ゲルを形成することを含む。さらに、この方法は、ブロック106に従って、撹拌圧力容器内で100℃を超える温度及び自生圧力で第1の期間に出発ゲルを結晶化させることを含むことができる。この方法は、さらに、ブロック108に従って、例えばHPLCポンプを介して純溶液として第2の量の第2のアルミナ源を第2の期間にわたって撹拌圧力容器に加えて、ブロック110に従い、最終結晶化生成物を形成することを含むことができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、第1の期間は、少なくとも約80%結晶性の最終的な結晶化生成物からアルミノシリケートゼオライト結晶を得るための全結晶化時間を定義する。幾つかの実施形態では、最終結晶化生成物から生じるアルミノシリケートゼオライト結晶は、約80%~約95%の結晶性、又は約82%~約92%の結晶性であることができる。全結晶化時間は、約1時間~約168時間、約1時間~約96時間、約5時間~約72時間、約10時間~約48時間、又は約30時間の範囲であってもよい。
【0059】
上述のプロセスは、表面でのアルミナ富化が望まれる(すなわち、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より低い)実施形態に向けられているが、上記の説明において、第2のアルミナ源の代わりに第2のシリカ源を用いることによって、その逆の結果(表面シリカ対アルミナモル比がより高い場合)を達成するように容易に適合させることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、添加工程は、第1の期間の約1/4、約1/3、約1/2、約2/3、又は約3/4で開始する。例えば、第1の期間が約30時間である場合には、添加工程は約7.5時間(第1の期間の1/4)、約10時間(第1の期間の1/3)、約15時間(第1の期間の1/2)、約20時間(第1の期間の2/3)、又は約22.5時間(第1の期間の3/4)で開始することができる。他の実施形態では、添加工程を第1の期間中の他の時点で開始することもできる。特定の実施形態では、添加工程は第1の期間の開始と同時に開始してもよい(すなわち、結晶化工程と添加工程は同時に開始してもよい)。有利な実施形態では、結晶化工程が中断するのを回避するために、出発ゲル内の結晶核形成が既に始まった後に、添加工程を開始させる。核形成の正確な開始点は、使用する出発材料の種類及び結晶化パラメータに応じて変わるが、実施例に記載されているように日常的な実験で決定することができる。
【0061】
第2の期間は、約1分~約168時間、約1分~約96時間、約1分~約72時間、約1分~約48時間、約1分~約30時間、約1分~約60分、約1分~約45分、約1分~約30分、約1分~約15分、又は約1分~約10分の範囲である。
【0062】
幾つかの実施形態では、第2の期間を第1の期間に等しくしてもよく、第2の期間を第1の期間と同時に実行してもよく、また、第2の量の第2のアルミナ源は第2の期間を通してずっと連続的に添加することもできる。幾つかの実施形態では、第2の量の第2のアルミナ源は、第2の期間を通して徐々に増加する添加速度で添加してもよい。例えば、第1の期間及び第2の期間は、両方とも30時間とし、その30時間を通して、添加される追加アルミニウムの量が出発ゲル中に見出される量の最大約50%となるように同時に進行させることができる。特定の実施形態では、添加する追加アルミニウムは、徐々に増加する流速で添加することもできる。得られる生成物は、深さ依存性のシリカ対アルミナモル比(すなわち、アルミニウム傾斜)を有するアルミノシリケートゼオライト結晶の形態である。上記の第2の量のアルミナ源として添加するアルミナの量は、プロセス中に使用する全アルミナのパーセントとして、例えば、プロセスで使用する全アルミナの約1%から本質的に100%までのいずれかの量(例えば、約20~約95%)となるように相当変わり得る。
【0063】
図1に戻って、幾つかの実施形態にあっては、方法100としては、ブロック112に従って、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶を濾過及び/又は乾燥及び/又は焼成することをさらに任意に含むことができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、第1のアルミナ源は、第2のアルミナ源と同じであってもよい。他の実施形態では、第1のアルミナ源は第2のアルミナ源とは異なるものであってもよい。第1のアルミナ源及び第2のアルミナ源としては、NaAlO2、Al(C3H7O)3、Al金属、水溶性アルミニウム塩、及びこれらの組合せからなる群から独立して選択することができる。
【0065】
シリカ源としては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、ケイ酸ナトリウム、沈降シリカ、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0066】
鉱化剤としては、NaOH、KOH、及びF-、水酸化第4級アンモニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0067】
有機構造規定剤(テンプレート)としては、第4級アンモニウム塩からなる群から選択することができる。具体例としては、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族基、及びこれらの組合せからなる群から選択される置換基を有する第4級アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0068】
幾つかの実施形態では、出発ゲルから得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が均一な分布のシリカ対アルミナのモル比を有し、一方、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が深さ依存性のシリカ対アルミナモル比傾斜を示す。例えば、出発ゲルから得られるアルミノシリケートゼオライト結晶は、約5~約250、約10~約150、約10~約100、約15~約60、又は約56の範囲のシリカ対アルミナモル比を有する。
【0069】
最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶は、表面シリカ対アルミナモル比及び内部シリカ対アルミナモル比を有してもよい。表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より低いものであってもよい。例えば、例えば、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶の表面シリカ対アルミナモル比は、最終結晶生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶の内部シリカ対アルミナモル比の最大値より、少なくとも約50倍低い、少なくとも約40倍低い、少なくとも約30倍低い、少なくとも約20倍低い、少なくとも約10倍低い、少なくとも約5倍低い、少なくとも約4倍低い、少なくとも約3倍低い、少なくとも約2倍低い、又は少なくとも約1.5倍低い場合があってもよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶は、アルゴンスパッタリング後のXPSからの正規化したAl2p及びSi2p強度に基づくエッチング深さの関数としてSi2p対Al2p比強度傾斜を有し得る。ここで、20nm~50nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は最大約10であり、250nm~450nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は約10~約15の範囲であり、1000nmのエッチング深さでのSi2p対Al2p比強度は約11.5~約20の範囲である。
【0071】
幾つかの実施形態では、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶の内部シリカ対アルミナモル比は、約10~約250、約50~約250、約90~約250、約150~約250、又は約200の範囲の最大値を有することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、最終結晶化生成物から生じるアルミノシリケートゼオライト結晶の表面シリカ対アルミナのモル比は、約5~約60、約10~約50、約15~約40、約20~約40、又は約35の範囲である。
【0073】
幾つかの実施形態において、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶は、アルミノシリケートゼオライト結晶の中心に比して、アルミノシリケートゼオライト結晶の表面に約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、又は約30%以上のアルミニウム富化を有する。
【0074】
幾つかの実施形態では、最終的な結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶が、約400m2/g以上、又は約450m2/g以上のゼオライトBET表面積を有してもよい。特定の実施形態において、組成物は、約400m2/g~約900m2/g、約450m2/g~約900m2/g、約400m2/g~約750m2/g、約450m2/g~約750m2/g、約400m2/g~約600m2/g、又は約450m2/g~約550m2/gまでの範囲のゼオライトBET表面積を有してもよい。
【0075】
幾つかの実施形態では、最終結晶化生成物から得られるアルミノシリケートゼオライト結晶は、最大約10μmの、又は、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約8μm、約0.1μm~約6μm、約0.1μm~約5μm、約0.1μm~約4μm、約0.1μm~約3μm、約0.1μm~約2μm、約0.1μm~約1μm、約0.1μm~約0.5μm、約1μm~約10μm、約1μm~約8μm、約1μm~約6μm、約1μm~約5μm、約1μm~約4μm、約1μm~約3μm、又は約1μm~約2μmまでの範囲の結晶サイズを有することができる。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本明細書に記載の実施形態の理解を助けるために記載するものであり、本明細書に記載し特許請求した実施形態を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。現在知られているか又は今後開発される全ての等価物(均等物)の置換、ならびに処方の変更又は実験計画のわずかな変更を含む、当業者の知識の範囲内にある変形は、本明細書に組み込まれる実施形態の範囲に該当すると見なされるべきである。実施例はアルミナの表面富化が望まれる(すなわち、表面シリカ対アルミナモル比が内部シリカ対アルミナモル比より低い場合)実施形態に関するものであるが、そのプロセスは、以下の実施例で第2のアルミナ源の代わりに第2のシリカ源を用いることにより、上記と逆の結果(表面シリカ対アルミナモル比がより高い)を達成すべく容易に適合させることができる。
【0077】
実施例1:対照-中間段階における第2のアルミナ源の添加なし
公称シリカ対アルミナ比(SAR)が56の出発アルミノシリケートゲルを以下の手順により調製した。まず、50質量%NaOH水溶液1.78g、脱イオン水65.9g、アルミニウムイソプロポキシド1.62g、及びトリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド25質量%水溶液13.5gを混合し、25℃で1時間攪拌した。この混合物に40質量%コロイダルシリカ33.1gを添加し、生成したゲルをさらに30分間攪拌した後、600mL攪拌オートクレーブ反応器に入れた。そのゲルを自生圧力下、160℃で30時間結晶化させた(8時間の温度勾配で)。室温に冷却した後、結晶性物質を濾過し、脱イオン水で洗浄し、乾燥し(90℃で12時間)、そして焼成(540℃で6時間)してゼオライト生成物を得た。生成物のX線回折パターンはCHA(87%結晶化度)及び非晶質相を示した。元素分析によって決定した実際のSARは48.7であった。
【0078】
得られたSEM画像及びSEM/EDX画像を
図2A及び
図2Eに示す。これらはアルミノシリケートゼオライト結晶全体にわたりアルミニウムの分布が均一であることを示している。
図3Aは、実施例1に従って調製したアルミノシリケートゼオライト結晶中のアルミニウム濃度の代表的な深さ方向プロファイルを示すが、アルミノシリケートゼオライト結晶の様々な深さでのアルミニウム分布が均一であるという観察結果をさらに裏付けている。
図3Aは、アルミノシリケートゼオライト結晶の表面からアルミノシリケートゼオライト結晶の内部部分までのアルミニウム濃度の変動がほとんどないことを示している。例えば、アルミニウム対ケイ素強度比で8%の変動を示している。XPS画像の明度(brightness)又は強度に基づいて、アルミナ濃度を推定することができる。
図3Aに示すように、その画像明度はエッチング深さ全体にわたって比較的均一であり、アルミニウムが比較的均一に分布していることを示唆している。
【0079】
実施例2:結晶化15時間後に第2のアルミナ源を添加
実施例1で調製したゲルの結晶化の間に、アルミン酸ナトリウムの11.7%水溶液(USALCO38 20%Al2O3、19%Na2O)7.76mlを、HPLCポンプを介してオートクレーブに注入した。この注入は、等温結晶化期間の開始から15時間後に、2ml/分の流速で実施した。実施例1と同様にして生成物を単離した。生成物のX線回折パターンはCHA(82%結晶化度)及び非晶質相を示した。元素分析による実際のSARは36.3であった。
【0080】
得られたSEM画像及びSEM/EDX画像を
図2C及び
図2Fに示す。これら図は、アルミノシリケートゼオライト結晶の表面上にアルミニウムの富化状態を示している。
図3Bは、実施例2に従って調製されたアルミノシリケートゼオライト結晶中のアルミニウム濃度の代表的な深さ方向プロファイルを示すが、アルミノシリケートゼオライト結晶の表面から少なくとも450nm下に延在する強いアルミニウム傾斜が観察できることをさらに裏付けている。
図3Bは、内部アルミニウム濃度に対して43%の表面アルミニウム富化状態を示す。表面におけるアルミニウムの富化状態は、
図3Bの表面領域における画像の明度によって証明できる。
【0081】
実施例3:結晶化20時間後に第2のアルミナ源を添加
アルミン酸ナトリウム注入を等温結晶化期間の開始後20時間で実施したことを除いて、結晶化と注入を実施例2と同様に行った。実施例1及び2と同様にして生成物を単離した。生成物のX線回折パターンはCHA(92%結晶化度)及び非晶質相を示した。元素分析による実際のSARは39.7であった。
【0082】
得られたSEM画像及びSEM/EDX画像を
図2D及び2Gに示す。これらの図は、アルミノケイゼオライト結晶の表面に偏析(segregated)アルミニウム相の存在を示している。
図3Cは、実施例3に従って調製されたアルミノシリケートゼオライト結晶中のアルミニウム濃度の代表的な深さ方向プロファイルを示すが、(表面下の最初の100nmにのみ存在し、かつ、表面下及び内部の組成が
図3Aと同様である)より表在的な(superficial)アルミニウム富化状態を示している。表面におけるアルミニウム富化状態は、
図3Cの表面領域における画像の明度によって証明できる。この観察に縛られることなく、実施例3の結果は、アルミノシリケートゼオライト結晶からのアルミニウムに富む相の偏析を示唆する。
【0083】
実施例1~3のアルミノシリケートゼオライト結晶についての様々なエッチング深さでの定量的Si2p対Al2p強度比を以下の表に要約する。
【0084】
【0085】
実施例4
(参照例):結晶化10時間後に第2のアルミナ源を添加
アルミン酸ナトリウム注入を等温結晶化期間の開始後10時間で実施したことを除いて、結晶化と注入を実施例2及び3と同様に行った。実施例1~3と同様に生成物を単離した。第2のアルミナ源を早期に添加すると、結晶化プロセスが妨害され、
図2Bに示すように非晶質アルミノシリケート生成物がもたらされた。いかなる特定の動作理論にも拘束されるものではないが、結晶核形成中に第2のアルミナ源の添加が行われ、これによりゼオライト材料の結晶化が妨害されたものと考えられる。
【0086】
本明細書で論じた材料及び方法の説明に関して(特に特許請求の範囲に関連して)用語「a」、「an」、「the」及び類似の指示語(referents)の使用は、本明細書中に別段に示さない限り、又はその文脈から明らかに矛盾しない限り、その単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。本明細書中のいろいろな値の範囲に関する記載は、本明細書中に別段の指示がない限り、単にその範囲内に含まれる各個別の値を個々に指すための簡潔な方法として役立つことを意図している。それぞれ別々の値は、あたかも本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれるものである。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈から明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。いかなる実施例、又は本明細書で例示を表す言語(例えば、「のような」(such as))も、単に材料及び方法をよりよく説明することを意図しており、特に特許請求の範囲で明記しない限り、その範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求の範囲で特定していない要素は、開示した材料及び方法の実施に必須なものであると示すものと解釈されるべきではない。
【0087】
本明細書における「一の実施形態」、「幾つかの実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」の記載は、その実施形態に関連して記載した特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも一の実施形態中に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所における「1つ以上の実施形態では」、「幾つかの実施形態では」、「一実施形態では」、又は「実施形態では」といった記載は、必ずしも、本開示中の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態で適切な方法で組合せることができる。
【0088】
本明細書に開示した実施形態は特定の実施形態に関連して説明したものであるが、これらの実施形態は、本開示の原理及び適用例についての説明であることが理解されるべきである。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に様々な改変及び変形を加えることができることは当業者には明らかである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれる改変形態及び変形形態及びそれらに均等な形態を含むことを意図しており、上記の実施形態は、限定することを目的とするものではなく説明することを目的として提示したものである。