(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】近接検出装置、ディスプレイユニット及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G01V 8/20 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
G01V8/20 N
G01V8/20 Q
(21)【出願番号】P 2020005515
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】伊知川 禎一
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074465(JP,A)
【文献】特開2016-192591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0217670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312956(US,A1)
【文献】特開2013-195326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置であって、
ディスプレイの表示面の外側に当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置された、当該表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、
前記表示面の外側に前記第1辺に沿って並べて配置された複数の光検出器と、
前記複数の赤外光源の各々について、当該赤外光源に予め定めた対応に従って対応づけられている光検出器で検出した、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源の出射光の第1の検出反射強度として、各赤外光源の出射光の第1の検出反射強度が表す、前記赤外光の反射光の強度が、設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、
前記複数の赤外光源のうちの一つもしくは複数の赤外光源を対象赤外光源として、各対象赤外光源について、当該対象赤外光源である赤外光源に前記対応に従って対応づけられている光検出器よりも、当該対象赤外光源に対して離れている光検出器で検出した、当該対象赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該対象赤外光源の出射光の第2の検出反射強度として、各第2の検出反射強度と、各第1の検出反射強度とより、所定の評価関数に従って求まる評価値に応じて、しきい値が変化するように前記近接検出部に前記しきい値を設定するしきい値設定手段とを有することを特徴とする近接検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の近接検出装置であって、
前記しきい値設定手段は、各第2の検出反射強度の最大値の、各第1の検出反射強度の最大値に対する比を前記評価値として算定し、算定した評価値が所定のレベルより小さいときに、前記評価値が前記所定のレベルより小さくないときに比べ、しきい値が小さくなるように前記近接検出部に前記しきい値を設定することを特徴とする近接検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の近接検出装置であって、
前記しきい値設定手段は、各第2の検出反射強度の最大値の、各第1の検出反射強度の最大値に対する比を前記評価値として算定し、算定した評価値が小さいほど、しきい値が小さくなるように前記近接検出部に前記しきい値を設定することを特徴とする近接検出装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の近接検出装置であって、
前記近接検出部において、各第1の検出反射強度の最大値が設定されたしきい値を超える場合には、前記表示面へのユーザの接近が検出されることを特徴とする近接検出装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の近接検出装置と、当該近接検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたことを特徴とするディスプレイユニット。
【請求項6】
請求項1、2、3または4記載の近接検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備え、前記近接検出装置は、前記表示面へのユーザの接近を検出したときに、当該接近の旨を前記データ処理装置に通知することを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術としては、ディスプレイの表示面の下辺の下方に当該下辺に沿って並べた数個の赤外線LEDからディスプレイの表示面の前方に向けて赤外光を照射し、フォトダイオードで、ユーザの手による赤外光の反射光を検出することにより、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に赤外線LEDには指向性があるため、赤外線LEDから見た方向が、指向角の中心軸に対する角度が大きくなる方向では赤外光の強度が弱くなる。
したがって、上述した数個の赤外線LEDをディスプレイの下辺の下方に設けてユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出する技術では、赤外線LEDの指向角の中心軸の方向について赤外線LEDに近い位置となるディスプレイの下方に、他の領域に比べて赤外光の照射強度が弱い領域が生じ、当該領域へのユーザの手の接近の検出を良好に行えなくなる場合がある。
【0005】
このような問題は、赤外光の照射強度が弱い領域が生じないように、多数の赤外線LEDを狭間隔で配置すれば解決するが、このようにすると赤外線LEDの必要数の増加に伴いコストの増大を招く。
【0006】
そこで、本発明は、比較的少ない数の赤外線LEDを用いつつ、ディスプレイの表示面の全領域について、ユーザの手の接近を良好に検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置された、当該表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に前記第1辺に沿って並べて配置された複数の光検出器と、前記各赤外光源が出射した赤外光の反射光の、当該赤外光を出射した前記赤外光源に比較的近い位置にある前記光検出器で検出した強度である第1の検出反射強度を用いて、設定された感度で前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、一つの前記赤外光源のみが赤外光を出射しているときに、当該赤外光源に対して比較的離れた位置にある光検出器で検出された反射光の強度と、前記第1の検出反射強度とが、前記表示面の前方の前記第1辺に近い領域内で反射が生じている蓋然性が大きいことを表している場合に、当該領域内で反射が生じている蓋然性が大きいことを表していない場合に比べ、感度が高くなるように前記感度を前記近接検出部に設定する感度設定部とを設けたものである。
【0008】
また、前記課題達成のために、本発明は、ディスプレイの表示面へのユーザの接近を検出する近接検出装置に、ディスプレイの表示面の外側に当該表示面の一辺である第1辺に沿って並べて配置された、当該表示面の前方を通る赤外光を出射する複数の赤外光源と、前記表示面の外側に前記第1辺に沿って並べて配置された複数の光検出器と、前記複数の赤外光源の各々について、当該赤外光源に予め定めた対応に従って対応づけられている光検出器で検出した、当該赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該赤外光源の出射光の第1の検出反射強度として、各赤外光源の出射光の第1の検出反射強度が表す、前記赤外光の反射光の強度が、設定されたしきい値を超える場合に前記表示面へのユーザの接近を検出する近接検出部と、前記複数の赤外光源のうちの一つもしくは複数の赤外光源を対象赤外光源として、各対象赤外光源について、当該対象赤外光源である赤外光源に前記対応に従って対応づけられている光検出器よりも、当該対象赤外光源に対して離れている光検出器で検出した、当該対象赤外光源が出射した赤外光の反射光の強度を、当該対象赤外光源の出射光の第2の検出反射強度として、各第2の検出反射強度と、各第1の検出反射強度とより、所定の評価関数に従って求まる評価値に応じて、しきい値が変化するように前記近接検出部に前記しきい値を設定するしきい値設定手段とを設けたものである。
【0009】
ここで、このような近接検出装置は、前記しきい値設定手段において、各第2の検出反射強度の最大値の、各第1の検出反射強度の最大値に対する比を前記評価値として算定し、算定した評価値が所定のレベルより小さいときに、前記評価値が前記所定のレベルより小さくないときに比べ、しきい値が小さくなるように前記近接検出部に前記しきい値を設定するように構成してもよい。
【0010】
または、このような近接検出装置は、前記しきい値設定手段において、各第2の検出反射強度の最大値の、各第1の検出反射強度の最大値に対する比を前記評価値として算定し、算定した評価値が小さいほど、しきい値が小さくなるように前記近接検出部に前記しきい値を設定するように構成してもよい。
【0011】
また、これらこの近接検出装置は、前記近接検出部において、各第1の検出反射強度の最大値が設定されたしきい値を超える場合に、前記表示面へのユーザの接近が検出されるように構成してもよい。
【0012】
以上のような近接検出装置によれば、赤外光の照射強度が弱くなる赤外光源が配置されたディスプレイの辺に近い領域で反射が生じているかどうかを検出し、当該領域で反射が生じている場合にはユーザの手の検出感度を高めるので、当該領域のみユーザの接近の検出感度を高めた形態で、ユーザの手のディスプレイの表示面への接近を検出できる。
【0013】
したがって、ディスプレイの表示面の全領域についてユーザの手の接近を良好に検出することができる。
ここで、本発明は、併せて、以上の近接検出装置と、当該近接検出装置と一体化された前記ディスプレイを備えたディスプレイユニットも提供する。
また、本発明は、以上の近接検出装置と、前記ディスプレイと、前記ディスプレイを表示出力に用いるデータ処理装置を備え、前記近接検出装置が、前記表示面へのユーザの接近を検出したときに、当該接近の旨を前記データ処理装置に通知する情報処理システムも提供する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、比較的少ない数の赤外線LEDを用いつつ、ディスプレイの表示面の全領域について、ユーザの手の接近を良好に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るディスプレイの配置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る近接検出センサの配置を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る近接検出センサの動作シーケンスを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る近接検出センサの他の動作シーケンスを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る近接検出センサの領域検出の原理を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る近接検出処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る近接検出センサの他の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る情報処理システムの構成を示す。
情報処理システムは、自動車に搭載されるシステムであり、カーナビゲーションアプリケーションやメディアプレイヤアプリケーション等を実行するデータ処理装置1、データ処理装置1が映像表示に用いるディスプレイ2、近接検出装置3、データ処理装置1が利用する、その他の周辺装置4を備えている。
【0017】
ここで、
図2に示すように、ディスプレイ2と近接検出装置3は一体化されたディスプレイユニット10の形態で、自動車のダッシュボードの運転席と助手席の間の位置に表示面を後方に向けて配置される。
【0018】
図1に戻り、近接検出装置3は、近接検出センサ31と近接検出コントローラ32を備えている。
近接検出センサ31は、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1とPD2の、赤外光を検出する2つのフォトダイードを備えている。
また、近接検出コントローラ32は、LED1、LED2、LED3、LED4を駆動して発光させる駆動部321、PD1とPD2が出力する電流信号をPD1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号に変換し出力する検出部322、駆動部321と検出部322の動作を制御すると共に検出部322が変換した信号が表す赤外光の強度より、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1に通知する検出制御部323とを備えている。
【0019】
次に、
図3a、bに示すように、ディスプレイ2に対して、左右方向、上下方向、前後方向を定めるものとして、LED1、LED2、LED3、LED4は、当該順序で左から右に向かって、ディスプレイ2の下辺の少し下の位置におおよそ等間隔で配置されている。ただし、前方向はディスプレイ2の表示方向である。
【0020】
また、PD1は、LED1とLED2の中間の位置に配置され、PD2は、LED3とLED4の中間の位置に配置され、それぞれ入射する赤外光の反射光を電流信号に変換する。
【0021】
図3a、b中の矢印は、LED1、LED2、LED3、LED4の指向角の中心軸を表しており、LED1、LED2、LED3、LED4は、ディスプレイ2の前方上方に向けて斜めに赤外光を照射する。
【0022】
図3cは、前後方向に見たLED1、LED2、LED3、LED4による赤外光の照射強度の分布を表しており、ディスプレイ2の下方の部分には、いずれのLEDから見ても中心軸に対する角度が大きくなる方向となるために、赤外光の照射強度が弱くなる領域が生じる。
【0023】
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、
図4aに示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御する。
ここで、各サイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1とを出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A4とPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号E2とを出力するピリオドとを含む。
【0024】
次に、
図4bに検出部322の構成を示す。
図示するように、検出部322は、PD1とPD2の二つのフォトダイオードのそれぞれに対応して設けた信号処理部3221とアナログデジタル変換器3222(A/D3222)のセットを備えている。
【0025】
各セットの信号処理部3221は、対応するフォトダイオードが出力する電流信号の電圧信号への変換などの信号処理を行い、各セットのアナログデジタル変換器3222は、同セットの信号処理部3221が出力する電圧信号をデジタル変換して検出制御部323に出力する。
【0026】
ここで、近接検出コントローラ32の検出制御部323は、
図4aに示すサイクルに代えて、
図5aに示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御してもよい。
【0027】
図5aに示すサイクルは、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1を出力するピリオドと、駆動部321がLED2のみを発光し、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A2を出力するピリオドと、駆動部321がLED3のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A4を出力するピリオドと、駆動部321がLED1のみを発光し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1を出力するピリオドと、駆動部321がLED4のみを発光させ、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号E2とを出力するピリオドとを含む。
【0028】
ここで、このように、近接検出コントローラ32の検出制御部323が、
図5aに示すサイクルが繰り返し行われるように、駆動部321と検出部322の動作を制御する場合、検出部322は、
図4bに示す構成に代えて、
図5bに示すように構成する。
【0029】
図5bに示す構成において、制御部は、マルチプレクサ3223(MPX3223)と、一つの信号処理部3221と、一つのアナログデジタル変換器3222を備える。
マルチプレクサ3223は、
図5aに示したサイクルにおいて、検出部322がPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号A1、A2、E2を出力するピリオドでは、PD1の出力する電流信号を選択して信号処理部3221に出力し、検出部322がPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号A3、A4、E1を出力するピリオドでは、PD2の出力する電流信号を選択して信号処理部3221に出力する。信号処理部3221は、マルチプレクサ3223から入力する電流信号の電圧信号への変換などの信号処理を行い、アナログデジタル変換器3222は、信号処理部3221が出力する電圧信号をデジタル変換して検出制御部323に出力する。
【0030】
ここで、
図5aに示すサイクルはPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号とPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号とを同時に取得するピリオドを含まないので、同時に取得するピリオドを含む
図4aに示すサイクルでは
図4bに示すように検出部322に2セット必要であった信号処理部3221とアナログデジタル変換器3222のセットを、
図5bに示すように1セットに削減できる有利性がある。
【0031】
図4a、
図5aのサイクルにおいて、LED1のみを発光したときのPD2に入射した赤外光の強度を表す強度信号E1は、
図6a1に示す、ディスプレイ2の左方上方の領域A_E1においてユーザの手による反射が発生したときに、他の領域で反射が発生した場合に比べて大きな値を示す。
【0032】
これは、ディスプレイ2の左方上方の領域A_E1は、LED1の出射する赤外光によって比較的強い強度で照射されており、かつ、LED1とPD2と領域A_E1との位置関係が、
図6a1に示すように領域A_E1で生じた反射によるLED1の出射する赤外光の反射光がPD2に比較的強い強度で到達する位置関係にあるのに対して、他の領域は、LED1の出射する赤外光の照射の強度が比較的弱い領域か、LED1とPD2との位置関係が、
図6a2に示すように、その領域内で生じた反射によるLED1の出射する赤外光の反射光がPD2に到達しないか比較的弱い強度でしか到達しない位置関係となる領域となるからである。
【0033】
また、同様に、
図4a、
図5aのサイクルにおいて、LED4のみを発光したときのPD1に入射した赤外光の強度を表す強度信号E2は、
図6bに示す、ディスプレイ2の右方上方の領域A_E2においてユーザの手による反射が発生したときに、他の領域で反射が発生した場合に比べて大きな値を示す。
【0034】
したがって、強度信号E1、E2の大きさは、ユーザの手がディスプレイ2の上方の領域(領域A_E1、または、領域A_E2)に位置しているのかどうかの目安となる。
次に、近接検出コントローラ32の検出制御部323が行う近接検出処理について説明する。
図7に、この近接検出処理の手順を示す。
図示するように、検出制御部323は、
図4aまたは
図5aに示す各回のサイクルにおいて、強度信号A1、A2、A3、A4、E1、E2を検出部322から取得したならば(ステップ702)、強度信号A1、A2、A3、A4の評価指数Vを所定の評価関数f()を用いてV=f(A1、A2、A3、A4)により算出する(ステップ704)。評価関数f()は、強度信号A1、A2、A3、A4から、表示面の前方の表示面の近傍の物体による反射の大きさを算出する関数とする。一例としては、評価関数f()としては、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を算出する関数や、A1、A2、A3、A4の一次結合関数(a×A1+b×A2+c×A3+d×A4)などを用いることができる。
【0035】
また、強度信号A1、A2、A3、A4の最大値max(A1、A2、A3、A4)をMAとして算出し(ステップ706)、MAが所定のしきい値Thminを超えているかどうかを調べ(ステップ708)、超えていなければ、そのままステップ702に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1、E2の検出部322からの取得を待つ。しきい値Thminとしては、ディスプレイ2の表示面の前方の表示面の近傍でユーザの手による反射が生じているときに、MAが取り得る最小の値を用いる。
【0036】
一方、MAが所定のしきい値Thminを超えていれば(ステップ708)、強度信号E1、E2の最大値をMEとして算出する(ステップ710)。
そして、EYを、EY=ME/MAによって算出し(ステップ712)、EYの値に応じて、しきい値Thを調整する(ステップ714)。
ステップ714では、EYが小さいときに、EYが大きいときよりも、しきい値Thが小さくなるように、しきい値Thの調整を行う。より具体的には、ステップ714では、たとえば、EYが予め定めた所定値より小さいときにしきい値Thを第1の値に設定し、EYが所定値より小さくないときにしきい値Thを第1の値より大きな第2の値に設定する。または、EYが小さくなるほど小さくなるようにしきい値Thを設定する。
【0037】
そして、ステップ704で算出したVとしきい値Thを比較し(ステップ716)、Vがしきい値Thより大きくなければ、そのままステップ702に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1、E2の検出部322からの取得を待つ。
【0038】
一方、評価指数Vがしきい値Thより大きい場合には、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出し、データ処理装置1にユーザの手の接近を通知する(ステップ718)。
【0039】
そして、ステップ702に戻り、次回のサイクルの強度信号A1、A2、A3、A4、E1、E2の検出部322からの取得を待つ。
以上、検出制御部323が行う近接検出処理について説明した。
ここで、上述のようにE1、E2は、ディスプレイ2の上方の領域でユーザの手による反射が生じているときには比較的大きな値となり、ディスプレイ2の下方の領域でのユーザの手による反射が生じているときには比較的小さな値となる。
【0040】
一方、MAの大きさは、ユーザの手によって、ディスプレイ2の表示面の前方の表示面の近傍で生じている反射の大きさを表す。
したがって、MAに対してMEが小さい場合、すなわち、以上の近接検出処理のステップ712で算出するEY=ME/MAが小さいときには、ディスプレイ2の上方の領域内ではなく、下方の領域内の位置でユーザの手による反射が発生していると判別することができる。
【0041】
また、ステップ714で、EYが小さいときに、EYが大きいときよりも、しきい値Thが小さくなるように、しきい値Thの調整を行うことにより、赤外光の照射強度が弱くなる領域が生じるディスプレイ2の下方の部分については、ユーザの手の接近を、ディスプレイ2の上方の領域に位置にユーザの手が存在している場合よりも小さなしきい値Thを用いて検出できる。
【0042】
すなわち、赤外光の照射強度が弱くなる領域が生じるディスプレイ2の表示面の下方の部分へのユーザの手の接近の検出感度を、ディスプレイ2の表示面の他の部分へのユーザの手の接近の検出感度より高めた形態で、ユーザの手のディスプレイ2の表示面への接近を検出できるので、赤外光の照射強度が弱くなる領域が生じるディスプレイ2の下方の部分についても、当該部分へのユーザの手の接近を良好に検出することができる。なお、ディスプレイ2の表示面の下方の部分以外の部分についてもユーザの手の検出感度を一律に高めると、ユーザの手がディスプレイ2の表示面から離れているときにもユーザの手の表示面への接近を検出してしまうなどの誤検出を招くこととなるが、本実施形態によれば、そのような誤検出の発生は抑制される。
【0043】
したがって、ディスプレイ2の表示面の全領域についてユーザの手の接近を良好に検出することができる。
ところで、以上の近接検出処理では、評価指数MAとして強度信号A1、A2、A3、A4の最大値を用いたが、評価指数MAとしてはPD1、PD2において検出した反射光の大きさの程度を表すものであれば、他の値を用いるようにしてよい。また、以上の近接検出処理では、評価指数MEとして強度信号E1、E2の最大値を用いたが、評価指数MEとしてはLED1のみを点灯したときにPD2において検出した反射光の大きさとLED4のみを点灯したときにPD1において検出した反射光の大きさの程度を表すものであれば、他の値を用いるようにしてよい。また、以上の近接検出処理では、EYとしてME/MAを用いたが、EYとしては、検知物がディスプレイ領域の上部にあるか下部にあるかにおよその相関性を持つ指標値であれば、他の値を用いるようにしてよい。
【0044】
また、以上の実施形態では、LED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1、PD2の2つのフォトダイオードを用いたが、赤外線LEDの数は4以外の数であって良く、フォトダイオードの数は2以外の数であって良い。
【0045】
ただし、この場合にも、一つまたは比較的離れた複数の赤外線LEDについて、当該赤外線LEDを点灯したときの、点灯した赤外線LEDから比較的離れたフォトダイオードで検出した強度信号を、上述した強度信号E1、E2に代えて、ディスプレイ2の上方の領域に位置にユーザの手が存在しているかどうかを検出するために用いるようにする。
【0046】
すなわち、たとえば、
図8bに示すように、LED1、PD1、LED2、LED3、PD2、LED4、LED5、PD3、LED6の6つの赤外線LEDと3つのフォトダイオードを当該記載の順序に左から右に並べて配置した場合には、LED1のみを点灯したときにPD3で検出した強度信号と、LED6のみを点灯したときにPD1で検出した強度信号の大きさに応じてディスプレイ2の上方の領域に位置にユーザの手が存在しているかどうかを検出するようにする。
【0047】
または、たとえば、LED1のみを点灯したときにPD2で検出した強度信号と、LED6のみを点灯したときにPD2で検出した強度信号の大きさに応じてディスプレイ2の上方の領域に位置にユーザの手が存在しているかどうかを検出するようにする。
【0048】
または、たとえば、LED4またはLED5のみを点灯したときにPD1で検出した強度信号と、LED2またはLED3のみを点灯したときにPD3で検出した強度信号の大きさに応じてディスプレイ2の上方の領域に位置にユーザの手が存在しているかどうかを検出するようにする。
【0049】
また、以上の実施形態では、複数の赤外線LEDと、複数のフォトダイオードを、ディスプレイ2の下辺の少し下の位置に配置したが、これは、ディスプレイ2の任意の辺の少し外側の位置に配置するようにしてよい。すなわち、たとえば、
図8bに示すようにLED1、LED2、LED3、LED4の4つの赤外線LEDと、PD1、PD2の2つのフォトダイオードをディスプレイ2の右辺の少し右側の位置に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…データ処理装置、2…ディスプレイ、3…近接検出装置、4…周辺装置、10…ディスプレイユニット、31…近接検出センサ、32…近接検出コントローラ、321…駆動部、322…検出部、323…検出制御部、3221…信号処理部、3222…アナログデジタル変換器、3223…マルチプレクサ。