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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】タービン排気室及びタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/30 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
F01D25/30 A
F01D25/30 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020032261
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134736
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-025002(JP,U)
【文献】米国特許第06419448(US,B1)
【文献】特開2006-083801(JP,A)
【文献】実開昭57-015905(JP,U)
【文献】特開昭49-108406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
該ケーシングの内部に設けられ、タービン動翼を通過した流体が流れ込む排気流路を前記ケーシングと共に画定するとともに、軸線方向において流体流れ方向の下流側に向かって外周面の半径が漸次増大するベアリングコーンと、
を備え、
前記ベアリングコーンの前記排気流路側の面には、半径方向内側に窪んだ凹溝が円周方向に亘って形成され
前記凹溝は、前記ベアリングコーンの前記流体流れ方向における終端を含んでいるタービン排気室。
【請求項2】
前記ベアリングコーンの前記軸線方向において、前記ベアリングコーンの前記流体流れ方向における始端から前記凹溝の前記流体流れ方向における始端までの距離をH、前記ベアリングコーンの前記流体流れ方向における始端から終端までの距離をLとしたとき、0.1≦H/L≦0.9とされている請求項1に記載のタービン排気室。
【請求項3】
前記ベアリングコーンの前記半径方向において、前記凹溝のうち最も内側に位置する部分は、前記ベアリングコーンの前記流体流れ方向における始端よりも外側に位置している請求項1又は2に記載のタービン排気室。
【請求項4】
前記凹溝の前記流体流れ方向における始端を頂点として、前記凹溝の前記流体流れ方向における始端に接続された前記凹溝の面と前記凹溝の前記流体流れ方向における始端から延長された前記ベアリングコーンの面とがなす角度をθとしたとき、20°≦θ≦150°とされている請求項1から3のいずれかに記載のタービン排気室。
【請求項5】
前記凹溝は、前記ベアリングコーンの前記円周方向において深さに分布を持っている請求項1から4のいずれかに記載のタービン排気室。
【請求項6】
前記凹溝は、前記ベアリングコーンの前記軸線に対して180°対称となる二箇所が最も深くされている請求項5に記載のタービン排気室。
【請求項7】
前記二箇所は、互いに水平方向に位置している請求項6に記載のタービン排気室。
【請求項8】
前記凹溝は、鉛直方向下方に対応する一箇所が最も浅くされている請求項5から7のいずれかに記載のタービン排気室。
【請求項9】
前記凹溝は、鉛直方向に対応する二箇所の深さがゼロとされている請求項8に記載のタービン排気室。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のタービン排気室と、
前記タービン動翼が設けられたタービンロータと、
を備えているタービン。
【請求項11】
復水器を備え、
該復水器は、前記タービン排気室の鉛直方向下方に設置され、
前記凹溝は、互いに水平方向に位置する二箇所が最も深くされているとともに前記鉛直方向下方に対応する一箇所が最も浅くされている請求項10に記載のタービン。
【請求項12】
前記タービンロータは、所定の方向にのみ回転する請求項10又は11に記載のタービン。
【請求項13】
前記タービンロータは、いずれの方向にも回転する請求項10又は11に記載のタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービン排気室及びタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービンの排気室において、タービン動翼を通過した蒸気がケーシングに衝突してはね返ることでベアリングコーンに沿って逆流することがある。蒸気が逆流した場合、順方向(動翼から排気室へ向かう方向)に蒸気が流通するための流路の有効断面積が減少するので、蒸気タービンとしての性能が低下してしまう。このため、ベアリングコーンに沿った蒸気の逆流を低減することが要求されている。
【0003】
蒸気の逆流を低減する対策例としては、排気室の壁面に境界層吸込み機構を設けて逆流を抑制する方法や、排気室の軸方向に凹部を形成して逆流をその凹部に案内する方法がある。
【0004】
また、特許文献1には、排気室の後方に半径方向チャンネルを設けて、排気室内の蒸気を下方に導く構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-137460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
境界層吸込み機構や排気室の軸方向に凹部を設けた場合、タービン動翼近傍における蒸気の逆流を効率的に低減できない可能性がある。また、特許文献1の構成では、蒸気タービンの大型化や複雑化が懸念される。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされてものであって、ベアリングコーンに沿った流体の逆流を低減できるタービン排気室及びタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のタービン排気室及びタービンは以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係るタービン排気室は、ケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ、タービン動翼を通過した流体が流れ込む排気流路を前記ケーシングと共に画定するとともに、軸線方向において流体流れ方向の下流側に向かって外周面の半径が漸次増大するベアリングコーンと、を備え、前記ベアリングコーンの前記排気流路側の面には、半径方向内側に窪んだ凹溝が円周方向に亘って形成されている。
【0009】
また、本開示の一態様に係るタービンは、蒸気のタービン排気室と、前記タービン動翼が設けられたタービンロータと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ベアリングコーンに沿った流体の逆流を低減できるタービン排気室及びタービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るタービン排気室及びタービンの回転軸線を通る断面図である。
図2】比較例としてのタービン排気室及びタービンの回転軸線を通る断面図である。
図3図1に示すタービン排気室の部分拡大図である。
図4】アスターンタービンのタービン排気室の部分拡大図である。
図5図1に示すタービン排気室の部分拡大図である。
図6】凹溝の深さ分布を示した図である。
図7】凹溝の深さ分布をグラフ化した図である。
図8】凹溝の深さ分布を示した図である。
図9】比較例としてのタービン排気室の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係るタービン排気室及びタービンついて図を参照して説明する。
【0013】
まず、タービン1の構成について説明する。
図1に示すように、タービン1は、例えば軸流タービンとされ、タービン動翼12が取り付けられたタービンロータ10と、タービンロータ10の一部を包囲するケーシング30と、ケーシング30と共に排気流路21を画定するベアリングコーン40と、を備えている。
【0014】
タービンロータ10は、タービン動翼12が流体(例えば、蒸気)から受ける反力によって回転軸線C周りに回転する。なお、タービン動翼12から流出した直後の蒸気は、図1において左側からに右側に向かって流れている。
【0015】
ケーシング30は、タービンロータ10の一部を回転軸線C周りに包囲している。また、ケーシング30の内部(半径方向内側)には、ベアリングコーン40が設置されており、ケーシング30と共にタービン排気室20を形成している。
【0016】
ケーシング30とベアリングコーン40とによって形成されているタービン排気室20は、その内部が排気流路21とされている。すなわち、排気流路21は、ケーシング30とベアリングコーン40とによって画定されている。
【0017】
排気流路21はタービン動翼12を通過した蒸気が流れ込む流路であり、また、タービン動翼12を通過した蒸気を復水器(図示せず)まで導くための流路である。
【0018】
図示しない復水器は、例えば、図1の下方(タービン1の鉛直方向下方に相当)に設置されている。この場合、タービン動翼12を通過した蒸気は、タービン排気室20の内部(排気流路21)で流れの向きが変更されつつ下方の復水器(図示せず)に向かって導かれる。
【0019】
次に、ベアリングコーン40の詳細な構成について説明する。
ベアリングコーン40は、上述の通り、ケーシング30と共に排気流路21を画定する部材であり、タービン動翼12に隣接して配置されている。
【0020】
ベアリングコーン40は、タービン動翼12から流出した直後の蒸気流れの方向沿って外周面の半径が漸次増大した略円錐形状とされている。このとき、ベアリングコーン40の軸線は、タービンロータ10の回転軸線Cと一致している。
【0021】
ベアリングコーン40の半径方向内側には、タービンロータ10を軸支するための軸受(図示せず)が設置されている。すなわち、ベアリングコーン40は、タービンロータ10用の軸受を覆っているカバーでもある。
【0022】
本実施形態において、ベアリングコーン40の排気流路21側の表面には、凹溝50が形成されている。
凹溝50は、ベアリングコーン40の表面が半径方向内側に所定の深さを持って窪むように、かつ、ベアリングコーン40の周方向に亘って形成された溝である。
凹溝50は、ベアリングコーン40の軸線方向において、一部の区間にのみ形成されている。図1の場合、凹溝50は、ベアリングコーン40の軸線方向において、ベアリングコーン40の終端42から約1/3程度の一部区間にのみ形成されている。
【0023】
上記のように凹溝50を設けることによって、タービン動翼12を通過して排気流路21に流れ込んだ後にケーシング30の側壁31に衝突してはね返りベアリングコーン40に沿って逆流しようとする蒸気を凹溝50に導いて留めることができる。これにより、ベアリングコーン40に沿った蒸気の逆流を低減できる。
【0024】
比較例としての図2に示すように、凹溝50が形成されていないベアリングコーン140の場合、タービン動翼112を通過して排気流路121に流れ込んだ後にケーシング130の側壁131に衝突してはね返った蒸気は、そのままベアリングコーン140に沿ってタービン動翼112に向かって逆流してしまう。この場合、逆流が生じている領域R1の分だけ排気流路121の有効断面積が縮小してしまい、タービン排気室120の性能が低下する可能性がある。
【0025】
次に、凹溝50の詳細な構成について説明する。
[凹溝50の始端51について]
図3に示すように、凹溝50は、ベアリングコーン40の軸線方向において、ベアリングコーン40の始端41から凹溝50の始端51までの距離をH、ベアリングコーン40の始端41から終端42までの距離(排気室長)をLとしたとき、0.1≦H/L≦0.9とされていることが好ましい。
【0026】
上記のようにH/Lの範囲を設定することで、タービン動翼112に向かって逆流しようとする蒸気を効率的に凹溝50に導くことができる。
【0027】
ここで言うベアリングコーン40の始端41とは、タービン動翼12から流出した直後の蒸気流れの方向の上流側に位置している端部であり、タービン動翼12側の端部でもある。一方、ベアリングコーン40の終端42とは、蒸気流れの方向の下流側に位置している端部であり、ケーシング30の側壁31側の端部である。このとき、ベアリングコーン40の終端42とケーシング30の側壁31とは接続されていてもよい。
また、凹溝50の始端51とは、タービン動翼12から流出した直後の蒸気流れの方向の上流側に位置している端部であり、ベアリングコーン40のうち凹溝50が形成されている部分と形成されていない部分(本来のベアリングコーン40)との境界に位置している端部である。
【0028】
なお、図3に示すような通常のタービンに設けられるタービン排気室20の場合、0.5≦H/L≦0.7であればより好ましい。これによって、ベアリングコーン40の始端41と凹溝50の始端51とを離間させることができ、凹溝50に導かれた蒸気がタービン動翼12まで逆流することを更に低減できる。
ここで言う通常のタービンとは、例えばアスターンタービンのようにタービンロータが逆回転可能なタービンではなく、所定の方向にのみ回転するようなタービンのことである。
【0029】
一方、図4に示すように、タービン排気室20Bが通常のタービン排気室20(図3参照)に比べて軸線方向に長いアスターンタービンの場合、0.1≦H/L≦0.9の範囲であればよい。
【0030】
[凹溝50の底面53の位置について]
図3に示すように、ベアリングコーン40の半径方向において、凹溝50の底面53のうち最も内側に位置する部分が、ベアリングコーン40の始端41よりも外側に位置していることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、凹溝50の深さが過剰に深くなることを防止して、凹溝50の加工性を向上させることができる。また、タービン動翼12に向かって逆流しようとする蒸気を効率的に凹溝50に導くことができる。
また、タービン動翼12からベアリングコーン40に沿って流れて凹溝50に流入する蒸気を考えたとき、凹溝50が深すぎると、始端41近傍の凹溝50で淀みが発生しやすくなる。淀みが発生すると、ケーシング30の側壁31に衝突してはね返り凹溝50に導かれた蒸気と干渉してしまい損失が発生する可能性がある。そこで、凹溝50の深さを定めておくことで淀みの発生を抑制することができる。
また、凹溝50が深すぎると、タービン1を構成する他の部材(図示せず)に干渉するおそれがあり設計の難度が上がってしまう可能性がある。
【0032】
[凹溝50の角度について]
図5に示すように、凹溝50の始端51に接続された凹溝50の面54は、ベアリングコーン40の延長面45に対して所定の角度θを成していることが好ましい。
【0033】
ベアリングコーン40の延長面45とは、ベアリングコーン40の始端41から軸線方向に沿って漸次拡径しながら延びるベアリングコーン40の面を凹溝50の始端51からそのまま延長させた仮想的な面である。延長面45は、例えば、凹溝50が形成されてない本来のベアリングコーン40の面に一致する。
【0034】
角度θは、凹溝50の始端51を頂点として、凹溝50の面54とベアリングコーン40の延長面45とがなす角度であり、20°≦θ≦150°であることが好ましい。
【0035】
上記のようにθの範囲を設定することで、タービン動翼112に向かって逆流しようとする蒸気を凹溝50に受け入れやすくなる。
【0036】
[凹溝50の深さ分布について]
図1等に示した凹溝50の深さは、全周方向に亘って一定の深さである必要はなく、例えば図6及び図7に示すように、円周方向において分布があってもよい。
ここで、図6は、ベアリングコーン40を軸線方向から見たときの凹溝50の深さ分布を示した図である。図7は、凹溝50の深さ分布を周方向に沿って0°から360°まで展開したグラフである。
【0037】
図6に示すように、水平方向を0°-180°としたとき、図7に示すように、凹溝50の深さ(底面53の位置)を、水平方向に位置する二箇所が最大深さDmax、鉛直方向下方(270°)に位置する箇所が最小深さDminとなるように滑らかに分布させる。なお、この場合、鉛直方向下方には復水器(図示せず)が設置されている。
【0038】
上記のように、復水器が鉛直方向下方に設置されている場合、排気流路21を流れる蒸気は、水平方向に位置する二箇所で最大の流量となる。なぜなら、当該二箇所は、鉛直方向上方から下方に向かって流れ込む蒸気と当該二箇所に直接的に流れ込む蒸気とが合流される箇所だからである。
また、排気流路21を流れる蒸気は、鉛直方向下方に位置する箇所で最小の流量となる。なぜなら、復水器が鉛直方向下方に設置されているので、当該箇所に流れ込んだ蒸気は復水器にそのまま導かれるだけだからである。
【0039】
水平方向に位置する二箇所の深さを最大深さDmax、鉛直方向下方に対応する箇所の深さを最小深さDminとすることで、蒸気の流量が大きく逆流が生じやすい二箇所で特に効率的に蒸気の逆流を低減でき、蒸気の流量が小さく逆流が生じにくい箇所では凹溝50による流体摩擦を低減できる。
【0040】
なお、最小深さDminとされる箇所は鉛直方向下方の一箇所に限られず、図8に示すように、鉛直方向上方(90°)に対応する箇所も最小深さDminとしてもよい。このとき、Dmin=0、すなわち、凹溝50が形成されていない構成としてもよい。これによって、その領域では凹溝50による流体摩擦を更に低減できる。
【0041】
また、上記の説明では復水器(図示せず)が鉛直方向下方に設置されている場合を例にして説明したが、蒸気が最終的に流れ込む位置を勘案して凹溝50の深さ分布を決定してもよい。
【0042】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
凹溝50が円周方向に亘って形成されているので、ベアリングコーン40に沿って逆流しようとする蒸気を凹溝50に導いて留めることで、蒸気の逆流を低減できる。また、凹溝50は、タービン動翼12に隣接するベアリングコーン40に形成されているので、タービン動翼12近傍における蒸気の逆流を効果的に低減できる。これによって、タービン動翼12からの蒸気が流れ込む排気流路21の有効断面積の減少を抑制して、タービン排気室20の性能の低下を抑制できる。
【0043】
また、比較例としての図9に示すように、タービン排気室220を軸線方向にdLだけ延長して流体を循環させる領域R2を確保した場合と比べて、タービン排気室220の大型化を回避できる。また、軸線方向にタービン排気室220をdLだけ延長して流体を循環させる領域R2を確保した場合、主流の先に領域R2が位置するので、排気流路221の有効断面積が減少する可能性がある。
しかし、本実施形態のように、半径方向内側に窪んだ凹溝50であれば主流蒸気の妨げになりにくいので、排気流路21の有効断面積の減少を抑制できる。
【0044】
また、0.1≦H/L≦0.9としているので、逆流しようとする蒸気を効率的に凹溝50に導くことができる。なお、H/L<0.1の場合、ベアリングコーン40の始端41から凹溝50の始端51までの距離が短くなり、凹溝50に導かれた蒸気がタービン動翼12まで逆流してエロージョンが発生する可能性がある。一方、0.9<H/Lの場合、凹溝50の長さ寸法が短くなる可能性があり、逆流しようとする蒸気を凹溝50に導いて留めることができない可能性がある。
【0045】
また、ベアリングコーン40の半径方向において、凹溝50のうち最も内側に位置する部分は、ベアリングコーン40の始端41よりも外側に位置しているので、逆流しようとする蒸気を効率的に凹溝50に導くことができる。
【0046】
また、20°≦θ≦150°としているので、逆流しようとする蒸気を排気流路21から凹溝50受け入れやすくなる。これによって、更に蒸気の逆流を低減できる。
【0047】
また、凹溝50は、互いに水平方向に位置している二箇所が最も深くされているので(最大深さDmax)、例えばタービン排気室20の下方に復水器が設置されている場合、蒸気の流量が大きく逆流が生じやすい二箇所で効率的に蒸気の逆流を低減できる。また、凹溝50は、鉛直方向下方に対応する箇所が最も浅くされているので(最小深さDmin)、流体の流量が小さく逆流が生じにくい鉛直方向下方に対応する領域では凹溝50による流体摩擦を低減できる。
【0048】
以上の通り説明した本開示の一実施形態は、例えば以下の通り把握される。
本態様に係るタービン排気室(20)は、ケーシング(30)と、該ケーシング(30)の内部に設けられ、タービン動翼(12)を通過した流体が流れ込む排気流路21を前記ケーシング(30)と共に画定するとともに、軸線方向において流体流れ方向の下流側に向かって外周面の半径が漸次増大するベアリングコーン(40)と、を備え、前記ベアリングコーン(40)の前記排気流路21側の面には、半径方向内側に窪んだ凹溝(50)が円周方向に亘って形成されている。
ここで言う流体とは、例えば蒸気である。
【0049】
本態様に係るタービン排気室(20)は、ケーシング(30)と、ケーシング(30)の内部に設けられ、タービン動翼(12)を通過した流体が流れ込む排気流路21をケーシング(30)と共に画定するとともに、流体流れ方向の下流側に向かって外周面の半径が漸次増大するベアリングコーン(40)と、を備え、ベアリングコーン(40)の前記排気流路21側の面には、径方向内側に窪んだ凹溝(50)が円周方向に亘って形成されているので、ベアリングコーン(40)に沿って逆流しようとする流体を凹溝(50)に導いて留めることで、流体の逆流を低減できる。また、凹溝(50)は、タービン動翼(12)に隣接するベアリングコーン(40)に形成されているので、タービン動翼(12)近傍における流体の逆流を効果的に低減できる。これによって、タービン動翼(12)からの流体が流通する流路(排気流路21)の有効断面積の減少を抑制して、タービン排気室(20)の性能の低下を抑制できる。
【0050】
また、タービン排気室(20)を軸線方向に延長して流体を循環させる領域(R2)を確保した場合と比べて、タービン排気室(20)の大型化を回避できる。また、軸線方向にタービン排気室(20)を延長して流体を循環させる領域(R2)を確保した場合、主流の先に循環領域(R2)が位置するので、流路の有効断面積が減少する可能性がある。しかし、半径方向内側に窪んだ凹溝(50)は主流の妨げになりにくいので、流路の有効断面積の減少を抑制できる。
【0051】
本態様に係るタービン排気室(20)は、前記ベアリングコーン(40)の前記軸線方向において、前記ベアリングコーン(40)の前記流体流れ方向における始端(41)から前記凹溝(50)の前記流体流れ方向における始端までの距離をH、前記ベアリングコーン(40)の前記流体流れ方向における始端(41)から終端(42)までの距離をLとしたとき、0.1≦H/L≦0.9とされている。
【0052】
本態様に係るタービン排気室(20)は、ベアリングコーン(40)の軸線方向において、ベアリングコーン(40)の流体流れ方向における始端(41)から凹溝(50)の流体流れ方向における始端(51)までの距離をH、ベアリングコーン(40)の流体流れ方向における始端(41)から終端(42)までの距離をLとしたとき、0.1≦H/L≦0.9とされているので、逆流しようとする流体を効率的に凹溝(50)に導くことができる。
【0053】
なお、H/L<0.1の場合、ベアリングコーン(40)の始端(41)から凹溝(50)の始端(51)までの距離が短くなり、凹溝(50)に導かれた流体がタービン動翼(12)まで逆流してエロージョンが発生する可能性がある。一方、0.9<H/Lの場合、凹溝(50)の長さ寸法が短くなる可能性があり、逆流しようとする流体を凹溝(50)に導いて留めることができない可能性がある。
【0054】
本態様に係るタービン排気室(20)は、前記ベアリングコーン(40)の前記半径方向において、前記凹溝(50)のうち最も内側に位置する部分は、前記ベアリングコーン(40)の前記流体流れ方向における始端(41)よりも外側に位置している。
【0055】
本態様に係るタービン排気室(20)は、ベアリングコーン(40)の半径方向において、凹溝(50)のうち最も内側に位置する部分は、ベアリングコーン(40)の流体流れ方向における始端(41)よりも外側に位置しているので、逆流しようとする流体を効率的に凹溝(50)に導くことができる。
【0056】
本態様に係るタービン排気室(20)は、前記凹溝(50)の前記流体流れ方向における始端(51)を頂点として、前記凹溝(50)の前記流体流れ方向における始端(51)に接続された前記凹溝(50)の面(54)と前記凹溝(50)の前記流体流れ方向における始端(51)から延長された前記ベアリングコーン(40)の面(45)とがなす角度をθとしたとき、20°≦θ≦150°とされている。
【0057】
本態様に係るタービン排気室(20)は、凹溝(50)の流体流れ方向における始端(51)を頂点として、凹溝(50)の流体流れ方向における始端(51)に接続された凹溝(50)の面(54)と凹溝(50)の流体流れ方向における始端(51)から延長されたベアリングコーン(40)の面(45)とがなす角度をθとしたとき、20°≦θ≦150°とされているので、逆流しようとする流体を排気流路21から凹溝(50)に受け入れやすくなる。これによって、更に流体の逆流を低減できる。
【0058】
本態様に係るタービン排気室(20)において、前記凹溝(50)は、前記ベアリングコーン(40)の前記円周方向において深さに分布を持っている。
【0059】
本態様に係るタービン排気室(20)において、凹溝(50)は、ベアリングコーン(40)の円周方向において深さに分布を持っているので、例えば、逆流が生じやすい部分の凹溝(50)を深くすることでその領域では効率的に流体の逆流を低減して、逆流が生じにくい部分の凹溝(50)を浅くすることでその領域では流体摩擦を低減できる。
【0060】
本態様に係るタービン排気室(20)において、前記凹溝(50)は、前記ベアリングコーン(40)の前記軸線に対して180°対称となる二箇所が最も深くされている。
【0061】
本態様に係るタービン排気室(20)において、凹溝(50)は、前記ベアリングコーン(40)の前記軸線に対して180°対称となる二箇所が最も深くされているので、流体の流量が大きく逆流が生じやすい領域をその二箇所に対応させることで、その領域で効率的に流体の逆流を低減できる。
【0062】
本態様に係るタービン排気室(20)において、前記二箇所は、互いに水平方向に位置している。
【0063】
本態様に係るタービン排気室(20)において、二箇所は、互いに水平方向に位置しているので、例えばタービン排気室(20)の下方に復水器が設置されている場合、流体の流量が大きく逆流が生じやすい水平方向の二箇所で効率的に流体の逆流を低減できる。
【0064】
本態様に係るタービン排気室(20)において、前記凹溝(50)は、鉛直方向下方に対応する一箇所が最も浅くされている。
【0065】
本態様に係るタービン排気室(20)において、凹溝(50)は、鉛直方向下方に対応する箇所が最も浅くされているので、流体の流量が小さく逆流が生じにくい鉛直方向下方に対応する領域では凹溝(50)による流体摩擦を低減できる。
【0066】
本態様に係るタービン排気室(20)において、前記凹溝(50)は、鉛直方向に対応する二箇所の深さがゼロとされている。
【0067】
本態様に係るタービン排気室(20)において、凹溝(50)は、鉛直方向に対応する二箇所の深さがゼロとされているので、鉛直方向に対応する領域では凹溝(50)が形成されていないことになり、その領域では凹溝(50)による流体摩擦を更に低減できる。
【0068】
本態様に係るタービン(1)は、上記のタービン排気室(20)と、前記タービン動翼(12)が設けられたタービンロータ(10)と、を備えている。
【0069】
本態様に係るタービン(1)は、復水器を備え、該復水器は、前記タービン排気室(20)の鉛直方向下方に設置され、前記凹溝(50)は、互いに水平方向に位置する二箇所が最も深くされているとともに前記鉛直方向下方に対応する一箇所が最も浅くされている。
【0070】
本態様に係るタービン(1)において、前記タービンロータ(10)は、所定の方向にのみ回転する。
【0071】
本態様に係るタービン(1)において、前記タービンロータ(10)は、いずれの方向にも回転する。
ここで言うタービン(1)は、例えばアスターンタービンである。
【符号の説明】
【0072】
1 タービン
10 タービンロータ
12 タービン動翼
20,20B タービン排気室
21 排気流路
30 ケーシング
40 ベアリングコーン
41 始端
42 終端
45 延長面
50 凹溝
51 始端
53 底面
54 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9