(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】トレミー管を用いた水中打設の施工方法および当該施工方法に用いる水中投入装置
(51)【国際特許分類】
E02D 15/10 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
E02D15/10
(21)【出願番号】P 2020042010
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕一
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-235722(JP,A)
【文献】特開平02-178417(JP,A)
【文献】特開平03-028419(JP,A)
【文献】特開2016-008480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に気密弁が設けられたトレミー管を備えた水中投入装置を用いて、水底に材料を堆積させる水中打設の施工方法であって、
トレミー管を水中に保持する保持工程と、
前記保持工程で保持され
、前記気密弁が閉じられた状態の前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって気体を圧送することによって、当該管内に充満している水を管外に排出して当該管内に空洞部を設ける気体圧送工程と、
前記気体圧送工程終了後、前記気体の圧送を停止している状態において、前記気密弁が閉じられており、且つ前記空洞部が設けられているトレミー管の下端部を海底に押し込み、トレミー管を海底に立設する設置工程と、
前記設置工程後、前記気体の圧送を停止している状態において、前記気密弁が開かれた状態の前記上端部から、前記空洞部に、前記材料を投入する材料投入工程と、を含むことを特徴とする施工方法。
【請求項2】
前記材料投入工程によって前記空洞部に投入された前記材料を、前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって圧送した気体によって押圧する押圧工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
トレミー管を備えた水中投入装置を用いて、水底に材料を堆積させる水中打設の施工方法であって、
トレミー管を水中に保持する保持工程と、
前記保持工程で保持された前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって気体を圧送することによって、当該管内に充満している水を管外に排出して当該管内に空洞部を設ける気体圧送工程と、
前記気体圧送工程によって設けられた前記空洞部に、前記材料を投入する材料投入工程と、を含み、
前記気体圧送工程の前に、前記トレミー管の管内に水が充満している状態の当該管内に、前記トレミー管の管径と略等しい直径を有する塊を形成することができる分量以上の前記材料を投入して当該トレミー管の上端部にて当該塊を形成することによって当該トレミー管を閉塞する塊形成工程を含み、
前記気体圧送工程では、気体を圧送して前記塊形成工程によって形成された前記塊を押圧することによって当該塊を押し下げて
前記トレミー管内の水を排出し、当該塊の上方に前記空洞部を設け、
前記材料投入工程は、前記気体圧送工程によって前記塊の上方に設けられた前記空洞部に、前記材料を更に投入することを特徴とす
る施工方法。
【請求項4】
前記水底に堆積させた前記材料の堆積物の上部の高さを計測する計測工程と、
前記計測工程によって計測した高さが、所定値であるかを判定する判定工程と、
前記判定工程により前記計測した高さが前記所定値であると判定されると前記トレミー管を引き上げる管引き上げ工程と、
を更に含む、ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の施工方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の施工方法に用いる、
上端部に気密弁が設けられたトレミー管を備えた水中投入装置であって、
水中に保持された
前記気密弁が閉じられた状態の前記トレミー管の管内に、当該トレミー管の上端部から気体を圧送する気体圧送部と、
前記気体圧送部によって前記管内に気体が圧送されることによって当該管内に設けられた空洞部に
、前記気密弁が開かれた状態の前記上端部から、前記材料を投入する材料投入部と、を備え
、
前記気体圧送部は、前記材料投入部から前記空洞部に前記材料が投入されている間、前記気体の圧送を停止する、ことを特徴とする水中投入装置。
【請求項6】
前記気体圧送部は、前記材料投入部によって前記空洞部に投入された前記材料を、気体を圧送して押圧することを特徴とする請求項5に記載の水中投入装置。
【請求項7】
前記水底に堆積させた前記材料の堆積物の高さを計測する計測部を前記トレミー管の外側に更に備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の水中投入装置。
【請求項8】
前記トレミー管の下端部の側における外周面には、水平方向に突出した均し部が設けられており、
前記均し部は、水平方向に広がる面を有していることを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載の水中投入装置。
【請求項9】
前記トレミー管の下端部の側に配設されている筒状の汚濁防止膜であって、当該トレミー管の下端部の側から管軸方向に沿って下方に延びる形状を有する汚濁防止膜を、更に備えており、
前記汚濁防止膜は、前記管軸方向に沿った長さが可変であることを特徴とする請求項5から8の何れか1項に記載の水中投入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレミー管を用いた水中打設の施工方法および当該施工方法に用いる水中投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底地盤の深堀跡の埋め戻し、および港湾における埋め立て、潜堤築堤、浅場造成等をおこなう工事において、海中への土砂投入に際してトレミー管を用いることがある。トレミー管を、上端を水面上に出す一方で下端を海底に向けて海中に配置し、上端から土砂を投入する。このようにトレミー管を用いることにより、海中での汚濁発生を抑え、環境に配慮した施工をすることができる。
【0003】
そのようなトレミー管として、静水面付近に開口部を有する内管の周囲に、管径および管長ともに内管よりも大きな外管を配置した二重管からなるトレミー管がある(特許文献1~3)。
【0004】
また、カルシア改質土の海域投入方法として、直接投入(底開パージ)、グラブ投入、トレミー式ポンプ打設が知られている。このトレミー式ポンプ打設工法は、トレミー管を海域の所定位置に保持し、海上に出ている投入口側から、カルシア改質土をポンプ圧送して連続的にトレミー管内に送り込み、海底側から排出して打設する工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-129568号公報
【文献】特開2002-129569号公報
【文献】特開2011-69076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレミー管を用いた水中打設工法の従前技術は、トレミー管内に水(海水)が充満した状態で材料を投入して海底に堆積させる。そのため、材料がトレミー管内において水と接触して分散してしまうという問題がある。カルシア改質土やセメント改良土等の固化処理土の場合には、水との混合により強度発現が小さくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、トレミー管内において投入材料と水との接触を抑えることができる、トレミー管を備えた水中投入装置を用いておこなう構造物等の施工方法、および当該水中投入装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る施工方法は、トレミー管を備えた水中投入装置を用いて、水底に材料を堆積させる水中打設の施工方法であって、トレミー管を水中に保持する保持工程と、前記保持工程で保持された前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって気体を圧送することによって、当該管内に充満している水を管外に排出して当該管内に空洞部を設ける気体圧送工程と、前記気体圧送工程によって設けられた前記空洞部に、前記材料を投入する材料投入工程と、を含む。
【0009】
前記の構成によれば、管内の水を排出することによって設けられた空洞部内に材料を投入するため、材料と水との接触を抑えることができる。これにより、固化処理土を投入する場合であっても、固化処理土と水(海水)とが混合する事態を回避することができる。そのため、前記の構成の施工方法によれば、濁りの発生抑制や固化処理土の強度低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記施工方法は、前記材料投入工程によって前記空洞部に投入された前記材料を、前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって圧送した気体によって押圧する押圧工程を更に含んでもよい。
【0011】
前記の構成によれば、管内に投入された材料を気体によって押圧するため、材料を管から速やかに排出することができる。
【0012】
また、前記施工方法は、前記気体圧送工程の前に、前記トレミー管の管内に水が充満している状態の当該管内に、前記トレミー管の管径と略等しい直径を有する塊を形成することができる分量以上の前記材料を投入して当該トレミー管の上端部にて当該塊を形成することによって当該トレミー管を閉塞する塊形成工程を含み、前記気体圧送工程では、気体を圧送して前記塊形成工程によって形成された前記塊を押圧することによって当該塊を押し下げて当該塊の上方に前記空洞部を設け、前記材料投入工程は、前記気体圧送工程によって前記塊の上方に設けられた前記空洞部に、前記材料を更に投入する構成としてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、塊形成工程によって、トレミー管の上端部に、管に嵌る大きさの塊が形成される。この状態で気体圧送工程によって当該塊を押し下げることにより、水中に保持した直後の管内にあった水はトレミー管の下端部から排出され、管内の水の水位は、押し下げられた塊の下端に位置することになる。これにより、管内の塊の上方に空洞部が設けられることになり、その空洞部に材料を投入すれば、投入した材料には水が接触しない。この方法によれば、材料と水との接触を限定的なものとすることができる。
【0014】
また、前記施工方法は、前記水底に堆積させた前記材料の堆積物の上部の高さを計測する計測工程と、前記計測工程によって計測した高さが、所定値であるかを判定する判定工程と、前記判定工程により前記計測した高さが前記所定値であると判定されると前記トレミー管を引き上げる管引き上げ工程と、を更に含んでもよい。
【0015】
前記の構成によれば、計測工程により堆積物の高さを計測することにより、堆積状況を把握することができる。そのため、堆積が完了することが判れば、水底の別の箇所にトレミー管を移動する作業を効率的におこなうことができる、また、完了の有無ではなく、堆積の途中で管を少し引き上げることも可能である。
【0016】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る水中投入装置は、前記施工方法に用いる、トレミー管を備えた水中投入装置であって、水中に保持された前記トレミー管の管内に、当該トレミー管の上端部から気体を圧送する気体圧送部と、前記気体圧送部によって前記管内に気体が圧送されることによって当該管内に設けられた空洞部に前記材料を投入する材料投入部と、を備えている。
【0017】
前記の構成によれば、空洞部に材料を投入するため、材料と水との接触を抑えることができる。これにより、固化処理土を投入する場合であっても、固化処理土と水(海水)とが混合する事態を回避することができる。そのため、前記の構成によれば、濁りの発生抑制や固化処理土の強度低下を抑制することができる。
【0018】
また、前記水中投入装置は、前記気体供給部が、前記材料投入部によって前記空洞部に投入された前記材料を、気体を圧送して押圧してもよい。
【0019】
前記の構成によれば、管内に投入された材料を気体によって押圧するため、材料を管から速やかに排出することができる。
【0020】
また、前記水中投入装置は、前記水底に堆積させた前記材料の堆積物の高さを計測する計測部を前記トレミー管の外側に更に備えていてもよい。
【0021】
前記の構成によれば、前記堆積物の上部の上昇状況に応じてトレミー管を引き上げることができる。
【0022】
また、前記水中投入装置は、前記トレミー管の下端部の側における外周面には、水平方向に突出した均し部が設けられており、前記均し部は、水平方向に広がる面を有していてもよい。
【0023】
前記の構成によれば、均し部の水平の面によって、前記水底に堆積された前記材料の堆積物の上面を一定の高さで側方に流動させることができる。
【0024】
また、前記水中投入装置は、前記トレミー管の下端部の側に配設されている筒状の汚濁防止膜であって、当該トレミー管の下端部の側から管軸方向に沿って下方に延びる形状を有する汚濁防止膜を、更に備えており、前記汚濁防止膜は、前記管軸方向に沿った長さが可変である構成としてもよい。
【0025】
前記の構成によれば、汚濁防止膜が設けられていることにより、前記トレミー管の下端から落下した投下材料により汚濁が生じても汚濁範囲を限定的とすることができる。また、そのため、前記トレミー管の下端を、海底または先に投下されて堆積している堆積物から上方に向かって離間した位置に配置することができる。また、汚濁防止膜の分だけトレミー管の管長を短くすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、トレミー管内において投入材料と水との接触を抑えた水中打設の施工方法および当該施工方法に用いる水中投入装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態1に係る施工方法に用いる水中投入装置の概略的構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る施工方法の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る施工方法の処理フローを説明する図である。
【
図4】
図1に示す水中投入装置の一部分の断面を示す矢視断面図である。
【
図5】
図1に示す水中投入装置の一部分を示す部分正面図である。
【
図6】
図1に示す水中投入装置の変形例を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る施工方法の処理フローを示すフローチャート図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係る施工方法の処理フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態のトレミー管を用いた水中打設の施工方法と、その施工方法に用いるトレミー管を備えた水中投入装置について、
図1から
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の水中投入装置の概略構成を示す断面図である。本実施形態1に係る水中投入装置1は、水中への土砂投入に際して用いられ、当該土砂等による構造物の構築のほか、海底地盤の深堀跡の埋め戻し、および港湾における埋め立て、浅場造成等の施工において用いられる。
【0029】
(1)水中投入装置1の構成
水中投入装置1は、
図1に示すように、トレミー管10と、トレミー管10に材料を投入するベルトコンベア100(材料投入部)とを備えている。なお、トレミー管への材料投入はベルトコンベアだけではなく、バックホウやグラブ等による投入であっても良い。更に水中投入装置1は、トレミー管10の上端部12側からトレミー管10内に気体を圧送する気体圧送部30を備えている。更に、水中投入装置1は、海底に投入して堆積した材料の堆積物の高さを計測する計測部60を備えている。
【0030】
トレミー管10は、直管構造を有しており、上端部12から材料が投入され、下端部14から当該材料を排出する。これにより、鉛直方向にトレミー管10を設置することにより、上端部12を海上に位置させ、下端部14を海底に向け、下端部14から排出される材料を海底に押圧して堆積させることができる。
【0031】
ホッパー20は、トレミー管10の上端部12に連結されており、ベルトコンベア100からのトレミー管10の内部への材料の投入を円滑にするために天頂に向かって開口し、下端に設けられた貫通穴が、トレミー管10の上端部12と連通している。
【0032】
ベルトコンベア100は、ホッパー20の天頂の開口部の上方まで、材料を運ぶとともに、運んできた材料を、ホッパー20内に落下させる。ホッパー20には、貫通穴に向かって下方に傾斜した傾斜路24が設けられており、ベルトコンベア100から落下した材料は、ホッパー20内に落下してトレミー管10の上端部12に至る。ベルトコンベア100は、後述する気体圧送部30によってトレミー管10の下端部14近傍まで押し下げられた水面に向かって、空洞部10aとなったトレミー管10内に材料を投入する。
【0033】
気体圧送部30は、気体を圧送する供給源31と、供給源31から延びた送気パイプ32とを有する。送気パイプ32は、先端がホッパー20の下端のトレミー管10の貫通穴に挿入されて、上端部12に設けた気密弁(図示せず)を閉じた後にトレミー管10の上端部12からトレミー管10内に向けて圧縮した気体を送気する構成となっている。これにより、水中に保持されて管内に水が充満している状態のトレミー管10内の水面を圧送した気体によって押し下げることができる。水面が押し下げられたことによってトレミー管10内には、空洞部10a(単に空洞と称する場合もある)が形成される。更に、気体圧送部30は、当該空洞になったトレミー管10内に投入された材料を、気体を圧送して押圧することができる。なお、気体圧送部30は、トレミー管10の上端部12からトレミー管10内に向けて圧縮した気体を送気する構成であれば、送気パイプ32の先端の接続箇所は、上述のものに限定されない。また、ホッパー20がトレミー管10の上端部12から取り外せる態様であってもよい。
【0034】
計測部60は、トレミー管10から海底に投入されて堆積した材料(以下、堆積物と称することがある)の堆積高を計測する。一例としては、
図1に示すように、トレミー管10の外側に取り付けられた計測器により実現できる。計測方法としては、超音波による計測のほか、外側に取り付けた接触センサーによる計測、錘を先端に付けた紐を海底に下ろして計測するなどの方法を採用することができる。
【0035】
なお、トレミー管10には、他にも構成が具備されているが、それらについては後述し、以下では、以上で説明した水中投入装置1を用いた本実施形態の施工方法について説明する。
【0036】
(2)施工方法
本実施形態の施工方法は、以上で説明した水中投入装置1を用いておこなう。以下、
図2および
図3を用いて施工方法を説明する。なお、説明の便宜上、
図3にはトレミー管10の直管部分のみを図示し、ホッパー20等の他の構成について図示および説明を省略する。
【0037】
図2は、本実施形態に係る施工方法の処理フローを示すフローチャート図である。また、
図3は、当該処理フローを説明する図である。
【0038】
本実施形態に係る構造物の施工方法では、トレミー管10を水中に保持する保持工程を含む。更に、保持工程で保持されたトレミー管10の上端部12からトレミー管10内に向かって気体を圧送して、トレミー管10内に充満している水を管外に排出する気体圧送工程を含む。なお、使用する気体としては、空気を使用するが、二酸化炭素あるいは窒素または酸素、あるいはこれらの混合物であっても良い。この気体圧送工程によって、トレミー管10内を空洞にすることができる。換言すれば、トレミー管10内に空洞部10aを設けることができる。更に、本実施形態に係る構造物の施工方法では、気体圧送工程によって設けられた空洞部10aを設けたトレミー管10の下端部14を海底に押し込み海底に立設する設置工程の後に、当該空洞部10aに、材料を投入する材料投入工程を含む。更に、本実施形態に係る構造物の施工方法では、前記材料投入工程によって前記空洞部10aに投入された前記材料を、前記トレミー管の上端部から当該トレミー管の管内に向かって圧送した気体によって押圧する押圧工程を含む。また、本実施形態では、海底に投入して堆積した堆積物の高さを計測する計測工程と、計測工程によって計測した高さが所定値であるかを判定する判定工程を含む。更に、判定工程によって、計測した高さが所定値であると判定されるとトレミー管10を引き上げる管引き上げ工程を含む。以下に、各工程について説明する。
【0039】
<保持工程>
図2に示すステップS1では、或る海域内においてトレミー管10の位置を決定して、当該位置にトレミー管10を保持する保持工程をおこなう。位置とは、堆積物(構造体)を施工する箇所のことである。より具体的には、材料を投入する海域までトレミー管10を運搬し、堆積物(構造体)を施工する箇所の海上付近にて、トレミー管10を、トレミー管内の海水を排出させた際に海底部の土砂等が巻きあがらない程度にトレミー管10の下端部14を海底から離間させた位置で管軸を鉛直方向に立てた状態で保持する。
図3の(i)には、その様子を示す。なお、保持工程によって保持されたトレミー管10は、管内が海水で充たされた状態である。
【0040】
<気体圧送工程>
図2に示すステップS2は、ステップS1の保持工程で保持されたトレミー管10の上端部からトレミー管10の管内に向かって気体を圧送する気体圧送工程をおこなう。具体的には、気体圧送工程では、保持工程によって水中に保持されたトレミー管10内に水が充満している状態のトレミー管10内の水面を、圧送する気体によって押し下げて管内に空洞部10aを設ける。圧送した気体が下端部14から噴出し、濁りを発生することが無いように、
図3の(i)に示すように、下端部14側において管内に僅かに海水が残留するようにすることが好ましい。気体の圧送は、気体圧送部30(
図1)によっておこなわれる。これにより、トレミー管10内に充満している水を管外に排出することができ、管内に空洞部10aを設けることができる。
図3の(i)には、トレミー管10内に気体を圧送して、管内に空洞部10aを設けた様子を示す。なお、トレミー管内の海水の残留量または残留位置を確認するためにトレミー管10内に液面計、水位センサー、感知センサー等を設置しておくことが望ましい。
【0041】
<設置工程>
図2に示すステップS3は、ステップS2の気体圧送工程終了後、トレミー管の下端部14を海底に押し込み海底に立設する設置工程をおこなう。本実施形態では、気体の圧送を停止しても、トレミー管10の上端部12に設けた気密弁を閉じた状態とするため、下端部14から海水が管内に逆流することはない。気密弁を閉じた状態でホッパー20経由でトレミー管10内に材料を供給して、その後弁を開ける。また、これに加えて、気密弁を閉じた状態でトレミー管10の下端部14を海底に挿し込んでおき、トレミー管10に材料を供給する時点で弁を開けることによって、逆流をより一層防ぐことができる。
図3の(ii)に、空洞部10aが設けられたトレミー管の下端部14を海底に押し込み海底に立設させた様子を示す。
【0042】
<材料投入工程>
図2に示すステップS4は、ステップS3の設置工程によって立設されたトレミー管10の空洞部10aに、材料を投入する材料投入工程をおこなう。材料投入は、ベルトコンベア100等によっておこなわれ、材料はホッパー20(
図1)を介してトレミー管10の上端部12から直管構造部分に投入される。
図3の(iii)には、材料がトレミー管10内の下端部14から上端部12近傍まで充填された状態を示す。
【0043】
ここで、本実施形態の施工方法は、トレミー管を用いて海底に投入、打設される周知の材料を投入材料として採用できる。具体例を挙げれば、浚渫土、PS灰系改質土、カルシア改質土、石灰系改質土、セメント改質土、粘性土、または土砂などを採用可能である。いずれの材料であっても、
図1に示したトレミー管10に或る程度の量を投入すると、トレミー管10の内周面に対して、材料に含まれる粒状物(土、砂、小石の粒子)あるいは材料に含まれる液体(主には水)が接触する。そして、材料が摺動可能にトレミー管10内を閉塞する状態となる。このように摺動可能に閉塞する状態となれば、後述するようにトレミー管10の上端部12側から気体を圧送すれば、閉塞した材料の上部を気体によって押圧して、当該材料を管軸方向下方に摺動させることができる。なお、砂等の材料で水分が不足する場合、材料供給前の材料に液体(主には水)を供給しても良く、材料供給時や気体圧送前の材料にホッパー20やトレミー管10の上部から液体(主には水)を供給しても良い。
【0044】
そのため、トレミー管10に投入する材料の量としては、以上のように材料が摺動可能に閉塞する量であればよい。トレミー管10内の管軸方向の堆積量で言えば、トレミー管10の直管構造部分が全て材料によって充填される量を投入してもよいし、あるいは
図3の(iii)に示すように直管構造部分の上端部12側に空洞が残る程度の量を投入してもよい。
【0045】
<押圧工程>
図2に示すステップS5では、ステップS4の材料投入工程によってトレミー管10内に投入された材料を、トレミー管10の上端部12側から下端部14に向かって気体を送ることによって押圧する押圧工程をおこなう。
図3の(iv)に、トレミー管10に投入された材料が上端部12側から送られている気体によって押圧されて、一部が下端部14から海底に排出されている様子を示す。上端部12側から送る気体は、先の気体圧送工程と同じく、気体圧送部30(
図1)によっておこなう。押圧工程は、材料投入工程による所定量の材料のトレミー管10への投入が完了し次第、上端部12に設けた気密弁を閉塞し開始することができる。当該完了は、投入に要する時間を予め求めておき投入開始からの時間を経過により判断することができる。あるいは、トレミー管10内の所定の高さまで材料が排出されたことを検知するセンサーによる検知結果により判断することができる。しかしながら、これらの態様に限定されるものではない。
【0046】
ここで、気体圧送部30(
図1)は気体の圧送の強さを変更調整できる。例えばトレミー管10内の材料の高さを先述したセンサーで計測し、高さの低下速度を勘案して、材料を全て吐出してさらに気体が下端部14から噴出し、濁りを発生することが無いように、空気圧の調整や停止等の操作をおこなう。
【0047】
このように押圧工程において材料をトレミー管10の下端部14から排出した後、トレミー管10を引き上げて、2層目の打設または下端部14を海底から離すことをおこなう。
図3の(v)に、トレミー管10を引き上げている様子を示す。なお、管の引き上げは、或る高さに至るまで段階的におこなってもよいし、或る高さまで一度で引き上げてもよい。トレミー管10の引き上げは、図示しない引き上げ装置によりおこなう。なお、引き上げに関しては、打設面まで1回で打ち上げる場合と複数層に分けて打設する場合がある。そのため、前者の場合には、所定の高さは最終的な計画高さであり、後者の場合のように複数層に分けて施工する場合には、各層の計画高さを所定の高さとする。
【0048】
<計測工程>
図2に示すステップS6では、水底に堆積させた材料の堆積物の高さ(堆積高)を計測する計測工程をおこなう。計測工程は、計測部60によっておこなわれる。なお、計測工程は、ステップS5の押圧工程の間に押圧と並行しておこなうことが可能である。
【0049】
<判定工程>
図2に示すステップS7では、ステップS6の計測工程によって計測した高さが、所定値であるかを判定する判定工程をおこなう。判定工程は、計測部60においておこなうことができる。しかしながら、これに限定されず、図示しない判定部に設けて、計測部60から取得した実測値を所定値と比較して判定することも可能である。
【0050】
また、判定工程では、ステップS6の計測工程によって計測した高さが所定値であると判定すると(
図2のステップS7から延びるYES)、その判定結果を、図示しない引き上げ装置に出力して、ステップS8に移行する。一方、ステップS6の計測工程によって計測した高さが所定値に満たないと判定すると(
図2のステップS7から延びるNO)、ステップS4の材料投入工程に戻って再び材料投入をおこなう(
図3の(vi))。そして、ステップS5の押圧工程(
図3の(vii))と、ステップS6の計測工程と、ステップS7の判定工程とを当該高さが所定値に達するまでおこなう。
【0051】
なお、判定工程では、計測した高さが所定値になったことを報知する態様であってもよい。この場合、報知は、計測部60あるいは図示しない判定部においてランプが点灯するなどの態様で実現可能である。
【0052】
<管引き上げ工程>
図2に示すステップS8では、ステップS7の判定工程からの判定結果を受けて、トレミー管10を引き上げる管引き上げ工程をおこなう。なお、引き上げ工程は、図示しない引き上げ装置によっておこなう。以上によって一連の施工方法が完了するが、引き上げたトレミー管10を別の場所に移動して必要に応じて以上の施工方法を繰り返してもよい。
【0053】
(3)水中投入装置1に具備される他の構成要素
水中投入装置1のより具体的な構成を以下において説明する。
図4は、トレミー管10の拡大断面図である。なお、
図3と同様に、説明の便宜上、
図4ではホッパー等の図示を省略している。
【0054】
図4に示すように、トレミー管10には、下端部14の側における外周面に、トレミー管10の管軸に対して垂直方向に突出した均し部70が設けられている。均し部70は鋼製もしくは硬度の高いゴム、プラスチック素材、が望ましく、溶接、嵌めこみ、接着等によりトレミー管10に設置される。この均し部70は、管軸方向を鉛直方向と平行にしてトレミー管10を設置した場合に、水平方向に突出した状態となる形状を有しており、均し部70の下面には水平方向に広がる平坦な均し面70a(面)を有している。この均し部70の均し面70aが、堆積物の上面を一定の高さで側方に流動させる。
【0055】
具体的には、均し部70は、トレミー管10を上端部12側から見た上面視において、
図4の紙面右側に示すように外縁が円形の形状を有している。この形状は、均し面70aの形状に相当する。なお、形状はこれに限定されるものではなく、
図4に示す変形例の平坦部70´のように、外縁が四角形の形状を有していてもよい。また、均し部70の大きさや設置位置については、投入する材料の材質に応じて決めればよく、特に定めはない。
【0056】
水中投入装置1は、更に、トレミー管10の下端部14側に、汚濁防止膜40が配設されている。
【0057】
汚濁防止膜40は、下端部14から離れるに従って管径方向に広がった形状を有する円錐型の管体である。なお、汚濁防止膜40は、円錐型の管体に限らず、管軸方向に沿って下方に延びる円筒状の管体でも構わない。汚濁防止膜40は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンといった樹脂から構成することができる。
【0058】
また、汚濁防止膜40における下端部14と反対側の端部には、汚濁防止膜40の端部に沿った環状の錘50が取り付けられている。環状の錘50は、ワイヤ等から構成することができる。
【0059】
ここで、本実施形態では、トレミー管10を海底面や堆積させた堆積物に挿し込んだ状況で使用する。しかしながら、挿し込みができない状況が有り得る。あるいは、材料圧入工程や管引き上げ工程の際に、トレミー管10内の残材料が落下する可能性がある。これらの状況において、残材料等がトレミー管10の下端部14から落下して、海底に到達するまでの間の、汚濁防止膜40により、落下していく材料から発生する汚濁の拡散が防止される。また、その際に海底に着弾した衝撃で海中に巻き上がった砂等の拡散を、汚濁防止膜40が防止する。環状の錘50は、汚濁防止膜40が海底に向かって広がった形状を維持するためにある。
【0060】
なお、汚濁防止膜40は、管軸方向に沿った長さが可変であってもよい。長さが可変であれば、トレミー管10の下端部14と、海底または先に投下されて堆積している堆積物との間の距離を厳密に制御する必要がなく、トレミー管10の設置作業の効率を向上させることができる。
【0061】
ここで、
図5に示した汚濁防止膜40を具備するトレミー管10の管軸方向に沿った断面図を
図6に示す。
図6に示すように、汚濁防止膜40の上端部には、先述の平坦部70が設けられていてもよい。
【0062】
(4)本実施形態の作用効果
本実施形態の構成によれば、空洞となった管内に材料を投入するため、材料と海水との接触を抑えることができる。これにより、濁りの発生を抑制することができる。材料と海水とが混合する事態を回避することができるため、投入材料が固化処理土の場合には強度低下を抑制することができる。
【0063】
(5)変形例
本実施形態では、トレミー管内に空洞部10aを設けるにあたって、トレミー管の下端部14から排水する構成となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、均し部70の上部に水抜き孔を設置し、水抜き孔から排水してもよい。この場合には、施工方法において保持工程においてトレミー管を海底に立設させ、この状態で水抜き孔から排水して管内に空洞部10aを設ける気体圧送工程とをおこなう。すなわち、先述の態様では、トレミー管を海底に立設させる前にトレミー管を水中に保持した状態で下端部14から排水をおこない、その後に海底に立設させる手順をとっている。しかしながら、本変形例では、先にトレミー管を海底に立設させた後に、水抜き孔から排水する。なお、本変形例の場合には、押圧工程中において水抜き孔を閉じておく必要がある。
【0064】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態2に係る構造物の施工方法の処理フローを、
図7に示す。また、
図8は、当該処理フローを説明する図である。
【0065】
本実施形態の施工方法は、実施形態1で説明した水中投入装置1を用いておこなうことができる。なお、説明の便宜上、
図8にはトレミー管10の直管部分のみを図示し、ホッパー20等の他の構成について図示および説明を省略する。
【0066】
上述の実施形態1では、保持工程によって保持されて管内に水が充満している状態の水面を、圧送する気体によって押し下げてトレミー管10内を空洞にする。これに対して、本実施形態2では、保持工程によって保持されて水で満たされている状態のトレミー管10内に、トレミー管10の管径と略等しい直径を有する塊を形成することができる分量以上の材料を投入する塊形成工程を含む。これにより、トレミー管10の上端部12にて材料の塊を形成することによってトレミー管10を閉塞する。以下、本実施形態の施工方法について更に説明する。
【0067】
本実施形態では、
図7に示すステップS1の保持工程によってトレミー管10を海中に保持して、上端部12近傍まで海水が上がっている状態(
図8の(i))において、トレミー管10の管径と略等しい直径を有する塊を形成することができる分量以上の材料を投入する。ここで、投入する材料は、粘性材料とする。また、投入する分量は、管径から予め求めることができる。当該分量以上の材料を投入することによって、上端部12近傍に当該材料の塊200が形成される(
図8の(ii))。これが、
図7のステップS1´に示す塊形成工程である。トレミー管10を閉塞させている塊200は、その下部においてトレミー管10内の海水と接触している。
【0068】
続くステップS2は、実施形態1のステップS2と同じ気体圧送工程である。しかしながら、本実施形態では、気体圧送工程によってトレミー管10の上端部12から圧送された気体によって、塊200がトレミー管10内を摺動しながら押し下げられる。この点において、水面を気体によって押し下げる実施形態1と異なる。塊200がトレミー管10内を押し下げられると、気密弁(図示せず)と塊200の間には、トレミー管10の内周面が露出した空洞(空洞部10a)が形成される。空洞に関しては、実施形態1の気体圧送工程によって形成される空洞部10aと等しいが、実施形態1の場合は、空洞部10aの下端が海水面であるのに対して、本実施形態では、空洞部10aの下端は塊200の上部である。なお、塊200を形成する材料は粘性土とするが、後工程において空洞部10aに投入される材料は、同一材料を用いても良いが、互いに異なる材料であってもよく、砂質土であってもよい。
【0069】
なお、このステップ2の気体圧送工程においては、
図8の(iii)に示すように塊200を前記トレミー管の下端部まで押し下げてもよいが、トレミー管の中間部分まで押し下げた状態としてもよい。また、塊200が中間部分まで押し下げられた状態で、トレミー管10を移動してもよい。
【0070】
続くステップS3は、ステップS2の気体圧送工程によって空洞部10aが設けられた状態のトレミー管の下端部14を海底に押し込み海底に立設する設置工程をおこなう(
図8の(iv))。続くステップS4では、空洞部10aに材料を投下する(
図8の(v))。
【0071】
続くステップS5では、実施形態1のステップS5と同様に、トレミー管10内に気体を送る。これにより、塊200と塊200の上部に投入された材料とが、下端部14から海底に向けて投入(排出)される。
【0072】
以後の工程は、実施形態1のステップS5~ステップS8と同じである。要するに、本実施形態では、トレミー管10の設置に伴ってトレミー管10内に上がった海水を排出するにあたって、排出方法が実施形態1と異なる。すなわち、本実施形態では、トレミー管10内に上がった海水の海水面に直接気体をあてて当該海水面を押し下げるのではなく、塊200によって海水面近傍に栓を形成し、その栓を押し下げることによって当該海水面を押し下げる。本実施形態の施工方法によっても、実施形態1と同じく、トレミー管10に投入する材料が海水と接触して混合する事態を避けることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 水中投入装置
10 トレミー管
10a 空洞部
12 上端部
14 下端部
20 ホッパー
24 傾斜路
30 気体圧送部
31 供給源
32 送気パイプ
40 汚濁防止膜
60 計測部
70 均し部
70a 均し面(面)
100 ベルトコンベア