(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231010BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 J
(21)【出願番号】P 2020062584
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-193224(JP,A)
【文献】特開平02-128821(JP,A)
【文献】特開平07-046675(JP,A)
【文献】特開2002-361702(JP,A)
【文献】特開2005-096295(JP,A)
【文献】特開平07-024887(JP,A)
【文献】特開平07-009524(JP,A)
【文献】特開平03-164223(JP,A)
【文献】特開平03-146322(JP,A)
【文献】特開2000-015679(JP,A)
【文献】特開平07-186231(JP,A)
【文献】特開2019-177572(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の射出成形機との通信が可能な管理装置における解析により導出された、可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を
取得する取得部と、
前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、
前記位置の設定条件に基づき可動部材の位置を制御する制御部と、を有する、射出成形機。
【請求項2】
前記圧力設定情報に基づき前記可動部材の位置を制御して成形品を成形した際に検出された圧力を示す圧力実績情報を、前記射出成形機の外部に出力する出力部を有し、
前記取得部は、前記管理装置における前記圧力実績情報と前記圧力設定情報の解析により導出された、前記位置設定情報を取得する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、
前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、
前記位置の設定条件に基づき可動部材の位置を制御する制御部と、を有する、射出成形機と、
複数の前記射出成形機との通信が可能であって、前記圧力設定情報に基づく解析により前記位置設定情報を導出して出力する管理装置と、を有する、射出成形システム。
【請求項4】
可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、
前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、を有し、
前記圧力設定情報は、第一の可動部材の圧力設定情報であり、
前記位置設定情報は、前記第一の可動部材の圧力設定情報に基づく第二の可動部材の位置設定情報であり、
前記条件設定部は、
前記位置設定情報に基づき、前記第二の可動部材の位置の設定条件を設定する、射出成形機。
【請求項5】
可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、
前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、を有する射出成形機と、
前記位置設定情報を出力する管理装置と、を有し、
前記圧力設定情報は、第一の可動部材の圧力設定情報であり、
前記位置設定情報は、前記第一の可動部材の圧力設定情報に基づく第二の可動部材の位置設定情報であり、
前記条件設定部は、
前記位置設定情報に基づき、前記第二の可動部材の位置の設定条件を設定す
る、射出成形システム。
【請求項6】
前記管理装置は、
前記圧力設定情報を解析して、前記位置設定情報を出力する解析部を有する、請求項
5記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記管理装置は、
成形品を成形する際に検出された圧力を示す圧力実績情報を解析して、前記位置設定情報を出力する解析部を有する、請求項
5記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記解析部は、成形品を成形した際に検出された圧力を示す圧力実績情報と、前記圧力設定情報とに基づき、前記位置設定情報を補正し、
前記
取得部は、
補正された前記位置設定情報を
取得する、請求項6又は7に記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、表示装置に表示された成形スケジュール設定モード画面において、オペレータに入力された成形条件データに基づき、連続成形運転を実行する射出成形機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機に対する成形条件の設定には、技術や経験が求められるため、限られたオペレータにしか行うことができず、継続して人材を確保することが難しい。また、成形条件の入力画面では、段階的に成形条件を入力する場合が多く、段階に限りがあるため、複雑な動作を伴う成形条件の設定は困難である。
【0005】
本発明の一態様は、人手を介さずに複雑な動作を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る射出成形機は、複数の射出成形機との通信が可能な管理装置における解析により導出された、可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、前記位置の設定条件に基づき可動部材の位置を制御する制御部と、を有する、射出成形機である。
【0007】
本発明の実施形態に係る射出成形機は、可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、を有し、前記圧力設定情報は、第一の可動部材の圧力設定情報であり、前記位置設定情報は、前記第一の可動部材の圧力設定情報に基づく第二の可動部材の位置設定情報であり、前記条件設定部は、前記位置設定情報に基づき、前記第二の可動部材の位置の設定条件を設定する、射出成形機である。
【0008】
本発明の実施形態に係る射出成形システムは、可動部材の圧力設定情報に基づく可動部材の位置設定情報を取得する取得部と、前記位置設定情報に基づき、前記可動部材の位置の設定条件を設定する条件設定部と、前記位置の設定条件に基づき可動部材の位置を制御する制御部と、を有する、射出成形機と、複数の前記射出成形機との通信が可能であって、前記圧力設定情報に基づく解析により前記位置設定情報を導出して出力する管理装置と、を有する射出成形システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、人手を介さずに複雑な動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】射出成形システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図4】第一の実施形態の射出成形機と管理装置の機能を説明する図である。
【
図5】第一の実施形態の射出成形システムの動作を説明する第一のシーケンス図である。
【
図6】第一の実施形態の射出成形システムの動作を説明する第二のシーケンス図である。
【
図7】第二の実施形態の射出成形機の機能を説明する図である。
【
図8】第二の実施形態の射出成形機の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
以下に、図面を参照して、第一の実施形態について説明する。はじめに、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の射出成形システムに含まれる射出成形機について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0013】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0014】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0015】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。
【0016】
型締装置100は、例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取り付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取り付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0017】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0018】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開が行われる。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
尚、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
尚、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0030】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0031】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0032】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0033】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0034】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0035】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0036】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0037】
尚、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0038】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。尚、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取り付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配置される可動部材830と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される力を検出する圧力検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される力を検出する。検出した力は、制御装置700で圧力に換算される。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する力を検出する。
【0067】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0069】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0070】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0071】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0072】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0073】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0074】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、圧力検出器360によって検出される。圧力検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、圧力検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、圧力検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0075】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0076】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0077】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0078】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0079】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0080】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0081】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0082】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0083】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0084】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0085】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0086】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0087】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0088】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0089】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0090】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。
【0091】
尚、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0092】
尚、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0093】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0094】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0095】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や表示画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネルは、制御装置700による制御下で、表示画面を表示する。タッチパネルの表示画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネルの表示画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の入力操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネルは、ユーザによる表示画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、表示画面に表示される情報を確認しながら、表示画面に設けられた入力操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが表示画面に設けられた入力操作部を操作することにより、入力操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネルに表示される表示画面の切り替え等であってもよい。
【0096】
尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネルとして一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0097】
(射出成形システム)
以下に、
図3を参照して、射出成形機10を含む射出成形システムについて説明する。
図3は、射出成形システムのシステム構成の一例を示す図である。
【0098】
本実施形態の射出成形システム1は、射出成形機10と、管理装置20とを含む。射出成形機10と管理装置20とは、例えば、ネットワークN等を介して通信可能に接続される。ネットワークNは、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット等である。また、射出成形機10と管理装置20との間の通信は、無線通信であっても有線通信であっても良く、データの受け渡しが可能な状態であれば良い。尚、射出成形機10と管理装置20とは、ネットワークNを介さずに通信を行っても良い。
【0099】
また、
図3の例では、射出成形システム1に含まれる射出成形機10を1台としているが、射出成形システム1に含まれる射出成形機10の数は限定されない。射出成形システム1には、任意の台数の射出成形機10が含まれても良い。
【0100】
本実施形態の管理装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置と、ROM(Read Only Member)、RAM(Random access memory)等の記憶装置とを有するコンピュータである。
【0101】
本実施形態の管理装置20は、例えば、射出成形機10の1成形サイクルにおけるスクリュ330の位置と時間の関係を示す位置設定情報を射出成形機10へ送信し、射出成形機10に、位置設定情報に基づき成形品を成形させる。
【0102】
また、本実施形態の射出成形機10は、管理装置20から、位置設定情報を受信すると、受信した位置設定情報に基づき、スクリュ330の位置の設定条件を設定し、この設定条件に基づき、スクリュ330の位置を制御して、成形品を成形する。
【0103】
次に、
図4を参照して、射出成形システム1の有する射出成形機10と管理装置20の機能について説明する。
【0104】
図4は、第一の実施形態の射出成形機と管理装置の機能を説明する図である。本実施形態の射出成形機10の制御装置700は、通信部710と、条件設定部720と、制御部730と、を有する。通信部710、条件設定部720、制御部730は、例えば、制御装置700の有するCPU701が、記憶媒体702に格納されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0105】
通信部710は、管理装置20との間の情報の送受信を行う。具体的には、通信部710は、管理装置20から送信される位置設定情報を受信する受信部の一例である。また、通信部710は、管理装置20において補正された位置設定情報を、管理装置20から受信する受信部の一例である。
【0106】
条件設定部720は、通信部710が受信した位置設定情報に基づき、1成形サイクルにおけるスクリュ330の位置を示す一連の設定条件を設定する。具体的には、条件設定部720は、スクリュ330の位置とタイミングとを対応付けた条件を設定する。位置設定情報に基づき、位置の設定条件を設定するとは、位置と時間の関係を示す位置設定情報を、そのまま位置の設定条件として設定することである。
【0107】
また、条件設定部720は、管理装置20において、補正された位置設定情報に基づき、スクリュ330の位置を示す一連の設定条件を設定する。管理装置20による位置設定情報の補正の詳細は、後述する
図6で説明する。
【0108】
設定条件として設定されるスクリュ330の位置は、例えば、計量工程における計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置を含む。また、設定条件として設定されるスクリュ330の位置は、充填工程における充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置を含む。また、設定条件として設定されるスクリュ330の位置は、例えば、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後の保圧工程におけるスクリュ330の位置を含む。
【0109】
つまり、本実施形態では、射出成形機10は、保圧工程においても、スクリュ330の位置を制御することで、保持圧力を制御する。
【0110】
制御部730は、条件設定部720が設定した位置の設定条件に基づき、スクリュ330の位置を制御して、成形品の成形を行う。
【0111】
本実施形態の管理装置20は、入力受付部21、解析部22、出力部23を有する。本実施形態の入力受付部21は、管理装置20に対する入力を受け付ける。
【0112】
具体的には、入力受付部21は、解析部22によって解析される解析対象の情報の入力を受け付ける。
【0113】
解析部22は、入力受付部21から入力された情報を解析し、1成形サイクルにおけるスクリュ330の位置と時間の関係を示す位置設定情報を解析結果として出力する。解析部22の詳細は後述する。
【0114】
尚、本実施形態では、位置設定情報は、1成形サイクルにおけるスクリュ330の位置を示す情報としたが、これに限定されない。位置設定情報は、1成形サイクルに含まれる工程の一部におけるスクリュ330の位置と時間の関係を示す情報であっても良い。
【0115】
また、本実施形態の位置設定情報は、1成形サイクル、又は、1成形サイクルに含まれる工程の一部における型締装置100のクロスヘッド151や可動プラテン120の位置と時間の関係を示す情報や、エジェクタ装置200のエジェクタロッド210の位置と時間の関係を示す情報であっても良い。
【0116】
出力部23は、解析部22が取得した解析結果である位置設定情報を、射出成形機10へ出力(送信)する。
【0117】
以下に、入力受付部21が受け付ける入力と、解析部22による解析について説明する。
【0118】
本実施形態の入力受付部21は、例えば、スクリュ330の圧力の設定条件を示す圧力設定情報の入力を受け付ける。圧力設定情報は、スクリュ330の圧力の設定値を含む。
【0119】
解析部22は、入力受付部21が受け付けた圧力設定情報を解析し、射出成形機10において成形品の成形を行った場合に、圧力検出器360を用いて検出される圧力が、設定値となるスクリュ330の位置とタイミングとを導出する。
【0120】
解析部22は、このように導出された結果を、スクリュ330の位置と時間の関係を示す位置設定情報として、出力部23に出力する。
【0121】
本実施形態の解析部22は、位置設定情報を、スクリュ330の位置と時間の関係を示す波形データとして出力しても良い。
【0122】
射出成形機10は、波形データを受信すると、波形データが示す位置と時間の関係に基づき、スクリュ330の位置の設定条件を設定し、スクリュ330を位置の設定条件にしたがって移動させる。
【0123】
また、入力受付部21は、圧力設定情報の代わりに、射出成形機10で成形品の成形を行ったときの圧力の実績を示す圧力実績情報を入力として受け付けても良い。圧力実績情報とは、射出成形機10において成形品の成形を行った際に、圧力検出器360を用いて検出された、1成形サイクル分のスクリュ330の圧力を示す情報である。
【0124】
この場合、解析部22は、圧力実績情報を解析して、位置設定情報を導出し、出力部23に出力する。
【0125】
また、解析部22は、入力受付部21が受け付けたスクリュ330の圧力設定情報を解析し、射出成形機10による成形品の成形における、検出される型締力が設定値となる型締装置100の位置とタイミングとを導出しても良い。その場合、解析部22は、型締装置100の位置と時間の関係を、波形データとして出力しても良い。
【0126】
射出成形機10は、通信部710により、型締装置100の位置設定情報である波形データを受信すると、条件設定部720により、位置設定情報に基づき、型締装置100の位置の設定条件を設定する。
【0127】
さらに、解析部22は、入力受付部21が受け付けたスクリュ330の圧力設定情報を解析し、射出成形機10による成形品の成形における、エジェクタロッド210の位置とタイミングとを導出しても良い。その場合、解析部22は、エジェクタ装置200の位置と時間の関係を、波形データとして出力しても良い。
【0128】
射出成形機10は、通信部710により、エジェクタ装置200の位置設定情報である波形データを受信すると、条件設定部720により、位置設定情報に基づき、エジェクタ装置200の位置の設定条件を設定する。
【0129】
また、解析部22は、入力受付部21が受け付けたスクリュ330の圧力設定情報を解析し、射出成形機10による成形品の成形における、型締装置100及びエジェクタ装置200の位置とタイミングとを導出しても良い。その場合、解析部22は、型締装置100及びエジェクタ装置200のそれぞれの位置と時間の関係を、波形データとして出力しても良い。
【0130】
射出成形機10は、通信部710により、型締装置100及びエジェクタ装置200の位置設定情報である波形データを受信すると、条件設定部720により、各装置の位置設定情報に基づき、型締装置100の位置の設定条件と、エジェクタ装置200の位置の設定条件とを設定する。
【0131】
このように、本実施形態では、スクリュ330を第一の可動部材とし、型締装置100とエジェクタ装置200を第二の可動部材とした場合に、射出成形機10は、第一の可動部材の圧力設定情報を管理装置20で解析した結果の第二の位置設定情報を取得する。
【0132】
そして、射出成形機10は、第二の位置設定情報に基づき、第二の可動部材の位置の設定条件を設定する。
【0133】
また、入力受付部21は、キャビティ空間801の形状を示す情報の入力を受け付けても良い。この場合、解析部22は、キャビティ空間801の形状を示す情報を解析し、キャビティ空間801へ充填される樹脂の量と、射出の開始から経過した時間との関係を導出する。そして、解析部22は、導出された関係に基づき、位置設定情報を出力する。
【0134】
また、入力受付部21は、キャビティ空間801の形状を示す情報と共に、キャビティ空間801に充填される樹脂の種類を示す情報、射出成形機10の仕様を示す情報の入力を受け付けても良い。また、入力受付部21は、キャビティ空間801の形状を示す情報と共に、解析の条件が入力されても良い。
【0135】
解析の条件とは、例えば、キャビティ空間801に充填される樹脂の先端の流動速度を一定することである。この場合、解析部22は、キャビティ空間801の形状を示す情報に基づき、樹脂の先端の流動速度を一定にするに、スクリュ330の位置と時間の関係を示す波形データを生成する。
【0136】
本実施形態では、充填工程における樹脂の先端の流動速度を一定にすることで、凹凸が存在するような複雑な形状の成形品であっても、外観を損なわずに成形品を成形できる。
【0137】
また、解析の条件とは、キャビティ空間801における入口(ゲート)の内圧を一定とすることであっても良いし、キャビティ空間801の内部の温度を一定にすること等であっても良い。
【0138】
解析部22に入力される解析の条件は、上述したものに限定されない。解析の条件は、成形品の形状や、射出成形機10の仕様等に応じて設定されても良く、上述した条件以外の条件であっても良い。
【0139】
また、本実施形態の解析部22は、例えば、機械学習を行う学習部として機能しても良い。この場合、入力受付部21は、例えば、圧力設定情報と、この圧力設定情報に基づき成形された成形品の画像を示す画像データとを対応付けた情報の入力を受け付ける。
【0140】
解析部22は、入力受付部21が受け付けた情報を用いて機械学習を行い、圧力設定情報と成形品の形状との関係を示す学習モデルを生成し、保持しても良い。
【0141】
解析部22は、入力受付部21から成形品の画像を示す画像データが入力されると、学習モデルを用いて最適な圧力設定情報を推定し、推定した圧力設定情報に基づき、位置設定情報を出力しても良い。
【0142】
尚、上述した学習モデルは、管理装置20以外の装置で生成されたものであっても良く、その場合は、解析部22は、学習モデルを保持していれば良い。
【0143】
次に、
図5を参照して、射出成形システム1の動作について説明する。
図5は、第一の実施形態の射出成形システムの動作を説明する第一のシーケンス図である。
【0144】
本実施形態の射出成形システム1において、管理装置20は、入力受付部21により、入力を受け付ける(ステップS501)。
【0145】
続いて、管理装置20は、入力受付部21が受け付けた情報を用いて解析を行い(ステップS502)、出力部23により、解析結果の位置設定情報を、射出成形機10へ送信する(ステップS503)。
【0146】
射出成形機10は、制御装置700の通信部710により、位置設定情報を受信すると(ステップS504)、条件設定部720により、位置設定情報に基づくスクリュ330の位置の設定条件を設定する(ステップS505)。
【0147】
続いて、射出成形機10は、制御部730により、位置の設定条件に基づき、スクリュ330の位置を制御し、成形品を成形する(ステップS506)。
【0148】
尚、
図5では、射出成形機10における位置設定情報の受信から成形までを一連の処理として説明したが、これに限定されない。例えば、射出成形システム1では、射出成形機10は、位置の設定条件を設定する処理(ステップS505)までの処理は、成形品の成形を行う前の事前処理として、成形品を成形する処理とは別に、独立して行われても良い。
【0149】
このように、本実施形態では、射出成形機10は、外部(管理装置20)から入力される位置設定情報に基づき位置の設定条件が設定される。したがって、本実施形態では、人手を介さずにスクリュ330の位置を制御するための一連の設定条件を設定することができる。つまり、本実施形態によれば、射出成形機10に対し、人手を介さずに複雑な動作を行わせることができる。
【0150】
また、本実施形態では、充填工程と保圧工程の両方において、位置の設定条件に基づきスクリュ330を移動させても良い。言い換えれば、本実施形態では、保圧工程においても、位置の設定条件に基づくスクリュ330の位置と移動速度の制御が行われても良い。
【0151】
また、本実施形態では、スクリュ330の位置と移動速度を、位置の設定条件に基づき制御する。このため、本実施形態では、特に、スクリュ330の位置の微調整等において、スクリュ330の位置を圧力の設定条件に基づいて制御する場合と比較して、制御が容易になる。
【0152】
尚、本実施形態では、保圧工程に含まれる一部の工程において、位置の設定条件に基づく制御を行い、この他の工程において、圧力の設定条件に基づく制御を行っても良い。
【0153】
また、本実施形態の射出成形システム1において、射出成形機10は、位置の設定条件に基づき成形品の成形を行ったときの圧力実績情報を、圧力検出器360を介して取得し、この圧力実績情報を管理装置20に送信しても良い。
【0154】
管理装置20は、位置設定情報の送信先である射出成形機10から、圧力実績情報を受信すると、解析部22により、圧力実績情報と、入力受付部21が入力を受け付けた圧力設定情報とを比較し、その差分が最小となるように、位置設定情報を補正しても良い。そして、管理装置20は、補正後の位置設定情報を射出成形機10に送信し、射出成形機10に対し、補正後の位置設定情報に基づく補正後の位置の設定条件を設定させても良い。
【0155】
また、本実施形態の射出成形システム1において、複数の射出成形機10が含まれる場合には、管理装置20は、各射出成形機10に対して、位置設定情報を送信しても良い。尚、複数の射出成形機10は、それぞれの仕様が同じものとする。
【0156】
以下に、
図6を参照して、射出成形システム1Aにおいて、管理装置20が補正後の位置設定情報を複数の射出成形機10に送信する場合の動作を説明する。
【0157】
図6は、第一の実施形態の射出成形システムの動作を説明する第二のシーケンス図である。
図6の例では、射出成形システム1に、射出成形機10-1と射出成形機10-2が含まれるものとする。
【0158】
図6のステップS601からステップS606までの処理は、
図5のステップS501からステップS506までの処理と同様であるから、説明を省略する。
【0159】
ステップS606において、射出成形機10-1が位置の設定条件に基づく成形品の成形が完了すると、1成形サイクルの圧力実績情報を取得する(ステップS607)。続いて、射出成形機10-1は、通信部710により、圧力実績情報を管理装置20へ送信する(ステップS608)。
【0160】
管理装置20は、圧力実績情報を受信すると、解析部22により、圧力実績情報と、圧力設定情報との差分に基づき、ステップS602の解析結果として取得した位置設定情報を補正し、補正後の位置設定情報を取得する(ステップS609)。
【0161】
具体的には、解析部22は、圧力設定情報が示す各時点での設定値と、圧力実績情報が示す各時点での圧力との差分がある場合に、圧力実績情報が示す圧力を設定値に近づけるように、スクリュ330の位置と時間の関係を補正した波形データを導出する。
【0162】
続いて、管理装置20は、出力部23により、ステップS609で取得した補正後の位置設定情報を、射出成形機10-1と射出成形機10-2とに送信する(ステップS610、611)。
【0163】
射出成形機10-1は、補正後の位置設定情報を受信すると、補正後の位置設定情報に基づき、位置の設定条件を補正する(ステップS612)。
【0164】
射出成形機10-2は、補正後の位置設定情報に基づき、位置の設定条件を設定する(ステップS613)。
【0165】
このように、射出成形システム1では、解析部22の処理によって得られた位置設定情報に基づき成形品を成形した際に検出された圧力の実績に基づき、位置設定情報を補正することができる。
【0166】
したがって、本実施形態によれば、解析部22によって最初に得られた位置設定情報を、射出成形機10の動作に合わせて補正することができ、位置設定情報の精度を向上させることができる。言い換えれば、位置設定情報に基づくスクリュ330の位置の制御によって、圧力検出器360を介して検出される圧力を設定値に近づけることができる。
【0167】
尚、
図6の例では、解析部22は、ステップS607で取得した圧力実績情報と、入力された圧力設定情報との差分を用いて位置設定情報の補正を行うものとしたが、これに限定されない。解析部22は、例えば、ステップS607で取得した圧力実績情報に基づき、新たに位置設定情報を導出し、圧力実績情報から導出した位置設定情報を、補正後の位置設定情報としても良い。
【0168】
また、本実施形態では、解析部22による位置設定情報の補正を複数回繰り返しても良い。補正を繰り返すことで、位置設定情報の精度を向上させることができる。
【0169】
さらに、本実施形態によれば、管理装置20が複数台の射出成形機10に対して位置設定情報を送信することができ、一度に複数台の射出成形機10に対して位置の設定条件を設定させることができる。
【0170】
尚、本実施形態では、射出成形機10は、管理装置20か位置設定情報を受信するものとしたが、射出成形機10による位置設定情報の取得の方法は、これに限定されない。例えば、管理装置20は、位置設定情報を、USBメモリ(Universal Serial Bus)等の可搬型の記録媒体等に格納し、射出成形機10は、この記録媒体から位置設定情報を読み出すことで、位置設定情報を取得しても良い。
【0171】
また、本実施形態では、管理装置20に解析部22を設けるものとしたが、これに限定されない。解析部22は、例えば、射出成形機10の制御装置700に設けられても良い。この場合、射出成形システム1に含まれる複数の射出成形機10のうち、解析部22を有する射出成形機10が、管理装置20を兼ねても良い。
【0172】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態では、射出成形機10が、自機で成形品の成形を行った際に検出したスクリュ330の位置に基づき位置設定情報を設定する点が、第一の実施形態と相違する。以下の第二の実施形態では、第一の実施形態との相違点について説明する。
【0173】
図7は、第二の実施形態の射出成形機の機能を説明する図である。本実施形態の射出成形機10Aは、制御装置700Aを有する。
【0174】
本実施形態の制御装置700Aは、位置実績取得部740、条件設定部720、制御部730を有する。
【0175】
本実施形態の位置実績取得部740は、射出成形機10Aにおいて、成形品の成形が行われた際に、射出モータエンコーダ351を用いて検出されたスクリュ330の位置と時間の関係を示す位置実績情報を取得する。
【0176】
ここで、位置実績取得部740によって取得されるスクリュ330の位置とは、スクリュ330が圧力の設定条件に基づき制御されて、圧力検出器360を用いて検出される圧力が、圧力の設定条件が示す設定値となったときのスクリュ330の位置である。
【0177】
本実施形態の位置実績情報は、例えば、射出モータエンコーダ351を用いて検出されたスクリュ330の位置と、スクリュ330の位置が検出された時刻(射出モータエンコーダ351が制御装置700Aに対して信号を出力した時刻)とを対応付けた情報であっても良い。
【0178】
本実施形態の位置実績取得部740は、位置実績情報を取得すると、条件設定部720へ位置実績情報を出力する。
【0179】
条件設定部720は、位置実績情報に基づき、スクリュ330の位置の設定条件を設定する。
【0180】
次に、
図8を参照して、本実施形態の射出成形機10Aの動作について説明する。
図8は、第二の実施形態の射出成形機の動作を説明するフローチャートである。
【0181】
本実施形態の射出成形機10Aの制御装置700Aは、位置実績取得部740により、成形品の成形が完了すると、1成形サイクル分の位置実績情報を取得する(ステップS801)。
【0182】
続いて、制御装置700Aは、条件設定部720により、位置実績情報に基づき、スクリュ330の位置の設定条件を設定する(ステップS802)。位置実績情報に基づき、スクリュ330の位置の設定条件を設定するとは、位置実績情報を、そのまま位置の設定条件として設定することである。
【0183】
続いて、制御装置700Aは、制御部730により、位置の設定条件に基づき、スクリュ330の位置を制御し、成形品を成形する(ステップS803)。
【0184】
このように、本実施形態の射出成形機10Aは、自機で成形品を成形したときの位置実績情報に基づき、位置の設定条件を設定する。
【0185】
したがって、本実施形態では、一度成形品の成形を行った後は、人手を介さずに位置の設定条件を設定させることができる。
【0186】
尚、本実施形態では、位置実績取得部740は、自機が検出したスクリュ330の位置に基づき位置実績情報を取得するものとしたが、これに限定されない。位置実績情報は、例えば、射出成形機10A以外の射出成形機10において成形品の成形を行った際に取得された情報であっても良い。この場合、射出成形機10A以外の射出成形機10は、射出成形機10Aと同じ仕様であることが好ましい。
【0187】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0188】
10 射出成形機
20 管理装置
21 入力受付部
22 解析部
23 出力部
100 型締装置
110 固定プラテン
120 可動プラテン
150 トグル機構
151 クロスヘッド
130 トグルサポート
200 エジェクタ装置
300 射出装置
400 移動装置
700 制御装置
710 通信部
720 条件設定部
730 制御部