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特許7362532粘着剤組成物、粘着フィルム及び光拡散フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着フィルム及び光拡散フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20231010BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231010BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231010BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231010BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231010BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020064171
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161244
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井関 啓人
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 孝太郎
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-001745(JP,A)
【文献】特開2016-044203(JP,A)
【文献】特開2019-112574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を含み、重量平均分子量が20万~200万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、
重量平均分子量が0.1万~2万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、
架橋剤(C)と、
光拡散粒子(D)とを含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であり
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度が、75℃以上130℃以下であり、
前記光拡散粒子(D)の屈折率は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率よりも大きい、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記光拡散粒子(D)は、体積中位径が1~6μmである架橋ベンゾグアノミン樹脂の粒子であり、
100質量部の前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対する前記光拡散粒子(D)の含有量は、4質量部以上30質量部以下である、請求項に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(C)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上4質量部以下であり、
前記架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、15質量部以上25質量部以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層の両面に離型フィルムの層が形成されてなり、
当該粘着剤層の単位面積辺りに含まれる光拡散粒子(D)の量が、1.4g/m以上6.9g/m以下である、粘着シート。
【請求項6】
樹脂フィルムからなる基材層の一方の面に、
請求項1~の何れか一項に記載の粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層を備える、光拡散フィルム。
【請求項7】
前記基材層における前記粘着剤層が形成された面の裏面に、印刷層が形成されてなる、請求項に記載の光拡散フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着フィルム及び光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光源から発する光を均一に拡散させるための光拡散フィルムは、光柱や光壁等の照明看板や電飾看板、自然光を拡散するパネルや窓、採光板に用いられている。従来の方法では、光拡散フィルム内に、光拡散粒子を分散させることで、光拡散性や光源からの隠蔽性などの性能を付与させている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明樹脂と、架橋メラミン樹脂を含む球状体である光拡散剤と、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートとを含む光拡散シートが記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には所定の形状と粒度分布とを有する無機粒子を、透明樹脂中に分散せしめた樹脂層を有することにより透明光を散乱させる光拡散層であって、当該透明樹脂として粘着性物質を用いることにより、粘着層に光拡散機能を付与することを特徴とする光拡散粘着層が記載されている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、重量平均分子量が50万~300万の第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、重量平均分子量が8000~30万の第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散粒子(D)とを含有し、アクリル酸エステル重合体(A)と第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体(B)との配合比、および官能基、ならびに光拡散粒子(D)の含有量が特定された粘着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-175227号公報(2011年9月8日公開)
【文献】特開2001-133606号公報(2001年5月18日公開)
【文献】特開2013-10839号公報(2013年1月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
樹脂粒子を光拡散粒子として含む(メタ)アクリル系粘着剤は、当該樹脂粒子の光拡散性が高いという観点から、光拡散フィルムの用途に期待される。しなしながら、特許文献1および2は、樹脂粒子を含むことによる粘着剤組成物における粘着力の低下という課題について何ら知見を開示していない。また、光拡散フィルムは照明看板や電飾看板など、基材フィルムに対して印刷を行い、用いる場合が多いが、印刷を行う場合は、印刷後の粘着力の低下が懸念される。特許文献3では、偏光板等の光学部材の用途で用いられることから、この懸念に対して何ら知見を開示しておらず、改善の余地がない。
【0008】
本発明の一態様は、高い光拡散性を備えつつ、高い接着性を備える新規な接着剤剤組成物、およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、架橋性官能基を含み、重量平均分子量が20万~200万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、重量平均分子量が0.1万~2万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散粒子(D)とを含有し、前記光拡散粒子(D)の屈折率は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率よりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い光拡散性を備えつつ、高い接着性を備える新規な接着剤剤組成物、およびその関連技術を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層1を備えた粘着フィルム11の概略を説明する図である。
図2】本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層1を備えた光拡散フィルム20の概略を説明する図である。
図3】本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層1を備えた光拡散フィルム21の概略を説明する図である。
図4】本発明の一態様に係る光拡散フィルム21の使用の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」は、(メタ)アクリル酸及びその誘導体をモノマーとする重合体であり、コポリマーである。「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味する。さらに、「(メタ)アクリル単量体」は、アクリル酸、その誘導体、メタクリル酸及びその誘導体の少なくともいずれかを意味する。
【0014】
<粘着剤組成物>
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散粒子(D)とを含有している。また、一態様に係る粘着剤組成物は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0015】
〔(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、質量平均分子量が20万~200万のアクリル酸エステル共重合体である。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体を含み、架橋性官能基を有する単量体成分として、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体を含んでいる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はその他の単量体を含んでいてもよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体の例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシ(メタ)アクリレート、2-エトキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが含まれる。これらアクリル単量体成分は、一種でもそれ以上でもよい。
【0018】
なかでも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体は、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレートなどのブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレートであることが好ましい。これらの中でも、優れた粘着力を良好に保持でき、フィルムや印刷後の添加成分が粘着剤に移行することによる性能低下を防ぐことができる観点から、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレートの2種類を用いることが最も好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体の含有量が、アクリル共重合体に含まれる単量体成分の80質量%以上であり、より好ましくは、95質量%以上であることで、被着体への接着力を高めつつ、後述する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と相溶することができる。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体を含んでいることが好ましい。
【0021】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル単量体の例には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸及びシトラコン酸が含まれる。これらの単量体は、一種でもそれ以上でもよい。
【0022】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体を含む場合、その含有量は10質量%未満、好ましくは5質量%未満であることが好ましい。これにより、粘着剤を架橋させることができ、好適な粘着力を付与しつつ、例えば、積層体を被着体から剥がしたときに、十分な凝集力を保ち、糊残りが生じることを防止できる。
【0023】
その他、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、(メタ)アクリル単量体と共重合可能な単量体を含んでいてもよい。当該共重合可能な単量体には、例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステル、ビニルエーテル、アクリロニトリル、及びスチレンなどが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、質量平均分子量(Mw)が20万~200万であり、質量平均分子量が20万~150万であることがより好ましく、質量平均分子量が20万~100万であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の質量平均分子量が20万以上であることで、最低限の凝集力が付与でき、塗工時の溶剤量を減らせる。また、質量平均分子量が200万以下であることで、適切な粘性を示すことから、塗布時の作業性が良好になることが期待できる。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて標準ポリスチレン換算法により求められ得る。
【0026】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のガラス転移温度は、凝集力を発現させる観点から、-80℃以上であることが好ましく、-60℃以上であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のガラス転移温度は、また、表面タックを好適に発現させる観点から-20℃以下であることが好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のガラス転移温度は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体のモノマーである(メタ)アクリル単量体の質量割合に応じたガラス転移温度の総和である。アクリル酸のガラス転移温度Tgは、下記式により求められる。下記式中、Tg~Tgは、(メタ)アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル単量体1~nのそれぞれのガラス転移温度(K)を表す。また、下記式中、w~wは、(メタ)アクリル単量体1~nの質量における総量に対する個々の単量体の質量の比を表す。nは、(メタ)アクリル単量体の種類を表し、二以上の整数である。
【0028】
【数1】
【0029】
なお、アクリル酸のガラス転移温度Tgは、絶対温度(K)を用いて求められるが、本明細書ではセルシウス度(℃)で表示する。
【0030】
(メタ)アクリル単量体のガラス転移温度Tgは、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて下記の条件で測定して得られたDSCカーブの変曲点の温度である。
示差走査熱量(DSC)測定装置 「EXSTAR6000」(セイコーインスツルメンツ社製)
雰囲気 窒素気流
測定試料の量 10mg
昇温速度 10℃/分
【0031】
(メタ)アクリル単量体の代表的なガラス転移温度は、メタクリル酸メチル:103℃、n-ブチルメタクリレート:21℃、ブチルアクリレート:-57℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート:55℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート:-15℃、アクリル酸:166℃、メタクリル酸:185℃などである。
【0032】
〔(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、質量平均分子量が0.1万~2万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体の共重合体であり、その他の単量体を含んでいてもよい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の主たる単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の主たる単量体成分と同じものが例示され、中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体は、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートであることが好ましく、ガラス転移温度が比較的に高いとの観点から、t-ブチルメタクリレートであることが最も好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の主たる単量体成分となる(メタ)アクリル単量体の含有量が、アクリル共重合体に含まれる単量体成分の80質量%以上であり、より好ましくは、95質量%以上であることで、被着体への密着性を高めつつ、上述の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と互いに架橋できる。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体を含んでいることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体を含む場合、その含有量は20質量%未満、好ましくは10質量%未満であることが好ましい。これにより、粘着剤を架橋させることができ、好適な粘着力を付与しつつ、例えば、積層体を被着体から剥がしたときに、十分な凝集力を保ち、糊残りが生じることを防止できる。
【0036】
その他、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と同様のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル単量体、(メタ)アクリル単量体と共重合可能な単量体を含んでいてもよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、質量平均分子量が0.1万~2万である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との構造および質量平均分子量の違いから、粘着剤組成物から形成された粘着剤層において、基材フィルムおよび被着体との界面に偏在する。このため、光拡散粒子(D)が粘着剤層の表面に露出することを防止できる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、基材フィルムおよび被着体との界面付近で架橋剤と架橋構造を形成することから、適度な硬さを有する粘着剤層を形成できる。このため、後述する光拡散粒子(D)を粘着剤組成物に配合しても、当該粘着剤組成物から形成される粘着層の粘着性が低下することを抑制できる。
【0038】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度の範囲は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度の範囲は、75℃以上であり、130℃以下であることがさらに好ましく、さらには90℃以上120℃以下であることが最も好ましい。
【0039】
一態様に係る粘着剤組成物は、例えば、インクジェット印刷における印刷媒体である基材フィルムを被着体に貼り付けるために用いられる粘着剤組成物であり得る。当該基材フィルムは、後述するインキによって印刷が行なわれる。ここでインキには添加成分が含まれており、添加成分が基材フィルムを経て粘着剤層に移行することがある。一態様に係る粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度の範囲を上述の範囲とすることで、当該粘着剤組成物から形成される粘着剤層がインキに含まれる添加成分に起因して性能低下することを防ぐことができる。
【0040】
〔架橋剤(C)〕
架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を架橋する架橋剤である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体が主鎖骨格に有する水酸基およびカルボキシル基と反応することで(メタ)アクリル酸エステル共重合体の架橋物を生成する。
【0041】
(イソシアネート系架橋剤)
本発明の一態様に係る粘着剤組成物に含まれる架橋剤は、好ましくは、イソシアネート系架橋剤である。イソシアネート系架橋剤の含有量は、100質量部の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対して、0.5質量部以上4質量部以下であることが好ましい。これにより、光拡散粒子(D)を含みつつも、高い接着力を備えた粘着剤組成物が得られる。
【0042】
イソシアネート系架橋剤の例には、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ポリイソシアネート化合物が含まれる。
【0043】
脂肪族又は脂環式イソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4-シクロヘキサンビスメチルイソシアネートのような水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、及び、4,4-メチレンビスシクロヘキシルイソシアネートのような水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)が含まれる。粘着剤組成物に起因する変色を抑制する観点から、イソシアネート系架橋剤は、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートであることが好ましい。さらに粘着剤組成物のポットライフを長くする観点から、2官能型のポリイソシアネートであることがより好ましい。
【0044】
また、イソシアネート系架橋剤の例には、イソシアネート化合物の2量体もしくは3量体が含まれる。このようなポリイソシアネートの例には、ウレトジオンもしくはイソシアヌレート、イソシアネート化合物とポリオール樹脂とのプレポリマーが含まれる。
【0045】
また、このようなイソシアネート系架橋剤の例には、イソシアネートと、多価アルコール又は尿素化合物などとのアダクト体が含まれる。当該多価アルコールの例には、プロピレングリコール(2官能アルコール)、ブチレングリコール(2官能アルコール)、トリメチロールプロパン(TMP,3官能アルコール)、グリセリン(3官能アルコール)及びペンタエリスリトール(4官能アルコール)が含まれる。
【0046】
上記のアダクト体の例には、トリレンジイソシアネートと3官能アルコールとの付加物、イソホロンジイソシアネートと2官能アルコールとの付加物、イソホロンジイソシアネートと3官能アルコールとの付加物が含まれる。
【0047】
イソシアネート系架橋剤は、市販品であってもよい。
【0048】
(その他の架橋剤)
イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤の例には、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オルガノシラン系架橋剤、エポキシ系架橋剤及び酸無水物系架橋剤が含まれる。メラミン系架橋剤の例には、ニカラック(登録商標)MS-11及びMS-001(共に日本カーバイド工業株式会社製)、ならびに、マイコート715(日本サイテックインダストリーズ株式会社製、「マイコート」はオルネクスジャパン株式会社の登録商標)が含まれる。
【0049】
〔光拡散粒子(D)〕
本発明の一態様に係る粘着剤組成物が含有する光拡散粒子(D)の屈折率は粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率よりも高い。粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率は1.47~1.53の範囲内であってよく、当該範囲内でより低い屈折率を有していることが好ましい。
【0050】
粘着剤組成物が含有する光拡散粒子(D)の屈折率と、アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率との差は、0.05~0.30であることが好ましく、0.10~0.20であることがより好ましい。
【0051】
このような観点から、光拡散粒子(D)は、架橋ベンゾグアナミン樹脂ビーズ(屈折率1.65~1.66)、および架橋メラミン樹脂ビーズ(屈折率1.65~1.66)であることが好ましい。メラミン樹脂は、ホルムアルデヒドの放散量が多いことから、ホルムアルデヒド放散量が少ない架橋ベンゾグアナミン樹脂ビーズであることがより好ましい。また、光拡散粒子(D)の粒子の形状は球状であることが好ましく、これにより、光源から発せられた光が、粘着剤組成物から形成した粘着剤層を透過したときに均一に反射、拡散でき、当該粘着剤層自身に十分な光拡散性を付与できる。粘着剤組成物において、光拡散粒子(D)として無機粒子ではなく、架橋ベンゾグアナミン樹脂の粒子を用いることは、高い光拡散性を粘着剤組成物に付与する観点から好ましい。しかしながら、光拡散粒子(D)として樹脂の粒子を粘着剤組成物に配合すると、当該光拡散粒子(D)が粘着剤層の表面に現れ、その結果、粘着剤組成物の粘着性が低下する。本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、質量平均分子量が20万~200万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と質量平均分子量が0.1~2万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との構造および質量平均分子量の違いから、粘着剤組成物から形成された粘着剤層において、基材フィルムおよび被着体との界面に偏在する。このため、光拡散粒子(D)が粘着剤層の表面に露出することを防止することで、粘着力低下を抑制する。
【0052】
光拡散粒子(D)の好ましい体積中位径は1~6μmであり、さらに好ましくは1~3μmである。光拡散粒子(D)が、体積中位径1~3μmの範囲内であれば、光拡散粒子(D)の平行線透過率が極小値を示す。これのため、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を介して光源(被着体)に貼り付けたフィルム越しに見える当該光源の形状が十分に隠蔽できる。
【0053】
光拡散粒子(D)の好ましい添加量の範囲は、100質量部の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対し、4質量部以上30質量部以下である。
【0054】
<粘着フィルム>
図1を用いて、本発明の一態様に係る粘着フィルム10についてより詳細に説明する。
【0055】
図1に示す、粘着フィルム1は、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成されてなる。図1に示す、粘着フィルム10は、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層1と、その両面において、剥離フィルム4aおよび4bを備えている。
【0056】
〔粘着剤層1〕
本発明の一態様に係る粘着フィルム10が備える粘着剤層1は、その塗布量が20~200g/mであることが好ましく、30~60g/mであることがさらに好ましい。粘着剤層1は、本発明の一態様に係る粘着フィルム10は、上述するアクリル樹脂100質量部に対して4質量部以上30質量部以下の架橋ベンゾグアノミン樹脂の粒子を含む、粘着剤組成物から、20~200g/mであるように粘着剤層1を形成することによって、粘着剤層1の上面視における単位面積辺りに含まれる架橋ベンゾグアノミン樹脂の粒子の量を、1.4~6.9g/mに調整できる。これによって、全光線透過率、および平行線透過率が低く粘着剤層が得られ、当該粘着剤層を備えた光拡散フィルムは、高い光拡散性を備え、かつ、光拡散フィルム越しに見る光源の形状が十分に隠蔽できる。
【0057】
なお、粘着剤層1の上面視における単位面積辺りに含まれる架橋ベンゾグアノミン樹脂の粒子の量Dは、以下の式(1)によって算出できる。下記式中、Qは粘着組成物の乾燥後の塗布量(g/m2)、aは乾燥後の粘着剤層に含まれる光拡散粒子の質量(g)、bは乾燥後の粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の質量(g)を表す。
【0058】
【数2】
【0059】
〔剥離フィルム4aおよび4b〕
剥離フィルム4aおよび4bは、離型性を有し、それら何れか一方の表面において粘着フィルムが備えている粘着剤層1を形成できれば、その種類は限定されない。また、剥離フィルム4aおよび4bはそれぞれが、互いに異なる離型性を有する2種のフィルムであり得る。また、剥離フィルム4aおよび4bの何れか一方は、光拡散フィルムを被着体に貼り付ける前において、粘着剤層1を保護できるフィルムとして使用される。このような離型フィルムには、表面にシリコーン樹脂、またはフッ素樹脂などによって表面処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0060】
<光拡散フィルム20>
図2図3を用いて、本発明の一態様に係る光拡散フィルム20の使用について説明する。図2は、本発明の一態様に係る光拡散フィルム20の概略を説明する図である。
【0061】
図2に示す、本発明の一態様に係る光拡散フィルム20は、本発明の一態様に係る粘着剤組成物によって形成された粘着剤層1に、基材フィルム(基材層)2が積層されてなる。粘着剤層1は、図1に示す、粘着フィルム10が備える粘着剤層1と同じであるため、その説明を省略する。
【0062】
図3に示す、本発明の一態様に係る光拡散フィルム21は、本発明の一態様に係る粘着剤組成物によって形成された粘着剤層1に、基材フィルム2が積層され、基材フィルム2における粘着剤層1が形成された面の裏面に印刷層3が形成されている。
【0063】
〔基材フィルム〕
基材フィルム2には、光拡散粒子(D)との屈折率比が大きい熱可塑性樹脂を用いることができ、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、および非晶性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびABS樹脂などからなる群から選択される熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0064】
また、基材フィルム2には、例えば、光拡散粒子(D)と同程度の屈折率を有する無機粒子が含まれていてもよい。無機粒子の屈折率は、1.40~2.80であることが好ましく、1.40~1.70であることがより好ましい。屈折率が1.40~2.80である無機粒子を用いることで、基材フィルムに高い光拡散性を付与できる。
【0065】
また、無機粒子の体積中位径は、1μm~6μmであることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。光拡散粒子の平行線透過率が極小値を示す。これのため、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を介して光源(被着体)に貼り付けたフィルム越しに見える当該光源の形状が十分に隠蔽できる。なお、無機粒子の体積中位径は、レーザー回折法によって測定することができる。
【0066】
上述の屈折率および体積中位径から、無機粒子には、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア、チタニア、硫酸バリウム、およびハイドロタルサイト類などが挙げられる。これらの無機粒子は、2種以上を併用してもよい。
【0067】
基材フィルム2において樹脂粒子に代えて無機粒子を用いても、光拡散フィルム20は、粘着剤組成物から形成される粘着剤層1において、高い光拡散性を備える。
【0068】
〔印刷層3〕
図3に示す、光拡散フィルム21が備えている印刷層3は、樹脂フィルム1上にインキを塗布することによって形成される層である。インキは、インクジェット印刷、スクリーン印刷において使用される公知のインキであればよく、例えば、溶剤型インキ、水性エマルジョン型インキ、光硬化型インキなどが挙げられる。また、印刷層3は単一のインキ層でなくともよく、例えば、カラーインキ層の上に、クリアインキから形成されるクリアインキ層を備えていてもよく、オーバーラミネート層を設けてもよい。
【0069】
例えば、光拡散フィルムは照明看板や電飾看板など基材フィルムに対して印刷を行い、用いる場合が多い。印刷を行う場合、インキに含まれる添加剤成分に起因して、粘着剤層1における粘着力の低下が懸念される。しかしながら、本発明の一態様に係る粘着剤組成物によって形成された粘着剤層1は、高い光拡散性を備えつつ、高い接着性を有し、インキによる印刷後も優れた粘着力を良好に保持できることも利点の1つである。これについて、特許文献3(特開2013-10839号公報)では、偏光板等の光学部材の用途で用いられることから、この懸念に対して何ら知見を開示しておらず、改善の余地がない。
【0070】
また、上述の通り、光拡散フィルム21は基材フィルム2を備え、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層1を備えている。光拡散フィルム21は、粘着剤層1によった高い拡散性と、高い接着力とを備えている。また、光拡散フィルム21は基材フィルム2が、光拡散粒子(D)として樹脂粒子を含んでいなくともよい。これにより、基材フィルム2の表面におけるインキなどによる印字性を高めることができることも利点である。
【0071】
なお、光拡散フィルム21は、被着体である光源5に貼り付ける前において、剥離フィルム4bが剥離される。
【0072】
図4は、光拡散フィルム21の使用の概略を説明する図である。図4に示すように、本発明の一態様に係る光拡散フィルム21は、光源5が備える光透過性基材5bに貼り付けて使用される。光透過性基材5bに貼り付けられた光拡散フィルム21は、光源5aによって、光透過性基材5b越しに光Lが照射される。光拡散フィルム21は、粘着剤層1を備えていることによって、光Lを好適に拡散させつつ、過度に光Lを遮蔽しない。よって、内照標識等の内照表示装置、透過型投影機等のスクリーン、自然光を拡散するパネルや窓や採光板やアーケード等に用いられる光拡散フィルムとして好適に用いられる。
【0073】
発光源5aは、限定されるものではないが、例えば、発行ダイオード(LED)、有機EL、無機EL、放電ランプ、及びレーザーなどが挙げられる。
【0074】
光透過性基材5bは、ガラス、または透明樹脂から成形された基材であり得る。光透過性基材5bに用いられるガラスには、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、及びリン酸塩ガラスに代表される各種ガラスが挙げられる。
【0075】
また、光透過性基材5bに用いられる透明樹脂には、アクリル樹脂、塩化ビニルに代表されるハロゲン含有樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0076】
<光拡散フィルムの製造方法>
本発明の一態様に係る光拡散フィルムの製造方法は、基材フィルムを準備する工程と、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から粘着剤層を形成する工程とを包含している。
【0077】
基材フィルムを準備する工程は、公知の基材フィルムを購入することで準備してもよく、熱可塑性樹脂に混練して、混練物を得た後、押出製法、カレンダー製法、ゾルキャスト製法、溶融キャスト製法など種々のフィルム製膜方法によって、当該混練物から基材フィルムとして成膜してもよい。本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、当該粘着剤組成物自身に光拡散粒子(D)を含んでいる。このため、基材フィルムに、例えば、光拡散粒子(D)である架橋ベンゾグアナミン樹脂の粒子を配合せずとも、好適な光拡散性を有している。このため、熱可塑性樹脂に架橋ベンゾグアナミン樹脂の粒子を配合することを回避でき、その結果、製膜時の架橋ベンゾグアナミン樹脂に起因する基材フィルムの黄変や、基材フィルムにおける印字性の低下を回避できることも、本発明の一態様に係る粘着剤組成物が有する利点の1つである。
【0078】
本発明の一態様に係る粘着剤組成物から粘着剤層を形成する工程は、離型フィルムまたは基材フィルムの一方の面に粘着剤層を形成する工程と、形成した粘着剤層に別の離型フィルムを貼り付ける工程とを包含している。粘着剤層を形成する工程は、粘着剤組成物を塗布する段階と、塗布した粘着剤組成物を乾燥する段階とを含むとよい。なお、離型フィルムの一方の面に粘着剤層を形成し、形成した粘着剤層に別の離型フィルムを積層すれば、本発明の一態様に係る粘着フィルムが得られることを留意されたい。
【0079】
粘着剤組成物を塗布する段階は、基材フィルム、または離型フィルム上に粘着剤組成物を塗布する工程であり得、粘着剤組成物を塗布する方法には、公知の塗工方法が挙げられる。このような塗工方法の例には、スクリーン印刷、グラビア印刷、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、コンマコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スプレー塗装、静電塗装及び浸漬塗装が含まれる。なお、粘着剤組成物は、塗布作業性の観点から例えば、酢酸エチル等の公知の希釈溶剤を含んでいることが好ましい。
【0080】
塗布した粘着剤組成物を乾燥する段階は、例えば、公知の加熱装置による加熱により、塗工液組成物又はインキを乾燥する工程であり得、公知の加熱装置には、例えば、赤外線ヒータ、熱風ヒータ、又は、オーブン又はホットプレートなどの加熱装置が挙げられる。当該粘着剤層を形成する工程では、粘着剤組成物に含まれる希釈剤の蒸発と、粘着剤組成物に含まれる樹脂の架橋反応とが促進され、粘着剤層が形成され得る。なお、粘着剤組成物を乾燥する段階において、粘着剤層を加熱する温度を150℃よりも低くすることによって、粘着剤層に含まれる光拡散粒子(D)の黄変を防止できることも、一態様に係る粘着剤組成物の利点の1つである。
【0081】
粘着剤層を形成する工程において、基材フィルムに粘着剤層を形成した場合、当該粘着剤層に剥離フィルムを貼り付け、粘着剤層を保護してもよい。また、剥離フィルムに粘着剤層を形成した場合、粘着剤層に樹脂フィルムを貼り付けるとよい。
【0082】
その後、インクジェット印刷、スクリーン印刷によって、基材フィルムの表面には、印刷層が形成され得る。
【0083】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、架橋性官能基を含み、重量平均分子量が20万~200万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、重量平均分子量が0.1万~2万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、架橋剤(C)と、光拡散粒子(D)とを含有し、前記光拡散粒子(D)の屈折率は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の屈折率よりも大きい。
【0084】
これにより、高い光拡散性と、高い接着力を備えた粘着剤層を形成できる。
【0085】
また、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度が、75℃以上130℃以下であることが好ましい。本態様は、高い接着力を備えた粘着剤層を形成するために好ましい。
【0086】
また、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、前記光拡散粒子(D)は、体積中位径が1~6μmである架橋ベンゾグアノミン樹脂の粒子であり、100質量部の前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対する前記光拡散粒子(D)の含有量は、4質量部以上30質量部以下であることが好ましい。本態様は、高い光拡散性と、高い接着力を備えた粘着剤層を形成するためにより好ましい。
【0087】
また、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、前記架橋剤(C)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上4質量部以下であり、前記架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。
【0088】
また、本発明の一態様に係る粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対して、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
【0089】
これにより、光拡散粒子(D)を含みつつ、高い接着力を有する粘着剤層を形成でき、印刷後も優れた粘着力を良好に保持できる。
【0090】
本発明の一態様に係る粘着シートは、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層の両面に離型フィルムの層が形成されてなり、当該粘着剤層の単位面積辺りに含まれる光拡散粒子(D)の量が、1.4g/m以上6.9g/m以下である。
【0091】
本発明の一態様は、高い光拡散性と高い接着力とを備えた粘着剤層の粘着フィルムである。
【0092】
本発明の一態様に係る光拡散フィルムは、樹脂フィルムからなる基材層の一方の面に、 本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層を備える。
【0093】
また。本発明の一態様に係る光拡散フィルムは、前記基材層における前記粘着剤層が形成された面の裏面に、印刷層が形成されてなる。本発明の一態様に係る光拡散フィルムは、前記基材層における粘着剤層が形成された面の裏面に、印刷層が形成されてなる。光拡散フィルムは、基材フィルムの表面に高い印字性を付与できる。
【0094】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0095】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0096】
実施例1~12の粘着剤組成物、および、比較例1~7の粘着剤組成物を調製し、全光線透過率、平行透過率、接着性、塗工性、及び光拡散性の評価を行った。
【0097】
<粘着剤組成物の調製>
以下に示す材料を用い、実施例1~12および比較例1~7の粘着剤組成物を調製した。
【0098】
〔アクリル樹脂(A)〕
アクリル樹脂A:EHA/MA/AA=46.5/52.5/1.0
質量平均分子量65万
Tg-39℃(計算値)
屈折率1.527
EHAは、エチルヘキシルアクリレートの略称であり、MAはメタクリル酸の略称であり、AAはアクリル酸の略称である。
〔アクリル樹脂(B)〕
アクリル樹脂B-1:tBMA/2HEMA=90/10,重量平均分子量6000
アクリル樹脂B-2:tBMA/2HEMA=90/10,重量平均分子量3万
アクリル樹脂B-3:BA/2HEA=80/20,重量平均分子量5万
以下の表1に、アクリル樹脂B-1~アクリル樹脂B-3の詳細を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1中、tBMAはtert-ブチルメタクリレートの略称であり、2HEMAは2-ヒドロキシエチルメタアクリレートの略称である。また、表1中、BAはブチルアクリレートの略称であり、2HEAは2-ヒドロキシエチルアクリレートの略称である。
【0101】
〔架橋剤〕
架橋剤-1:デュラネート(登録商標)D-201(旭化成株式会社製)
〔光拡散粒子〕
光拡散粒子-1:エポスターMS(日本触媒株式会社)
平均粒子径2μm、屈折率1.66
光拡散粒子-2:アートパール(登録商標)J-4P(根上工業株式会社製)
平均粒子径2.2μm、屈折率1.50
光拡散粒子-3:トスパール120(日硝産業株式会社製)
平均粒子径2μm、屈折率1.44
【0102】
〔粘着剤組成物の調製〕
100質量部のアクリル樹脂Aに、0.5質量部の架橋剤-1、5質量部の光拡散粒子-1、20質量部の低分子量アクリル樹脂B-1を混合し、ディスパーにて10分間撹拌した後、200メッシュの金網で脱泡ろ過することで、実施例1の粘着剤組成物を調製した。また、表2-1および表2-2に示す組成にて作製した以外は、実施例1の粘着剤組成物と同じ条件にて、実施例2~12の粘着剤組成物、および比較例1~7の粘着剤組成物を調製した。
【0103】
〔粘着シートの作製〕
剥離PETフィルムであるPET75GS(厚さ75μm、リンテック株式会社製)上にアプリケーターを使用して実施例1の粘着剤組成物をコーティングした後、100℃に設定した乾燥機にて1分30秒乾燥し、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。次いで、形成した粘着剤層側に剥離PETフィルムであるPET25LT(厚さ25μm、リンテック株式会社製)を重ね合わせ、ハンドローラーで貼り合わせ、これにより、実施例1の粘着シートを作製した。表2-1および表2-2に示す粘着剤層の厚さにて作製した以外は、実施例1の粘着シートと同じ条件にて実施例2~12の粘着シート、および比較例1~7の粘着シートを作製した。
【0104】
また、PET75GS(リンテック株式会社製)に代えて、剥離紙であるSLK-110W♯6000(住化加工紙株式会社製)を用いた以外は同じ条件にて実施例1~12、および比較例1~7の粘着シートを作製し、印刷後の接着力評価サンプルとした。
【0105】
(粘着シートの単位面積辺りに含まれる光拡散粒子の量(坪量)の評価)
実施例1~12、比較例1~7の粘着剤組成物のそれぞれについて粘着シートの単位面積辺りに含まれる光拡散粒子の量を算出した。まず、予め秤量しておいた、PET75GS(厚さ75μm、リンテック株式会社製)上にアプリケーターを使用して実施例1の粘着剤組成物をコーティングした後、100℃に設定した乾燥機にて1分30秒乾燥し、厚さ30~60μmの粘着剤層を形成した。その後、当該粘着シートにおける粘着剤層の質量を求め、以下の式(1)から粘着シートに含まれる単位面積当たりの光拡散粒子の量を算出した。
【0106】
下記式中、Qは粘着組成物の乾燥後の塗布量(g/m2)、aは乾燥後の粘着剤層に含まれる光拡散粒子の質量(g)、bは乾燥後の粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の質量(g)を表す。
【0107】
【数3】
【0108】
実施例1~12、比較例1~7の粘着シートのそれぞれにおける単位面積当たりの光拡散粒子の量(坪量)を表2-1および表2-2に示す。
【0109】
〔全光線透過率及び平行線透過率の評価〕
実施例1の粘着シートにおけるPET75GSを剥離し、易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである帝人テトロン(登録商標)フィルムタイプHPE(厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)に貼り直し、光拡散フィルムを作製した後、ヘイズメーターNDH-2000(日本電色株式会社製)を使用して全光線透過率及び平行線透過率を測定した。実施例1の光拡散フィルムと同じ条件で、実施例2~12の光拡散フィルムおよび比較例1~7の光拡散フィルムを作製し、全光線透過率及び平行線透過率を評価した。表2-1および表2-2に全光線透過率及び平行線透過率の評価結果を示す。
【0110】
〔接着力評価(剥離強度)〕
実施例1の粘着シートにおける剥離PETフィルム(PET25LT)を易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである帝人テトロン(登録商標)フィルムタイプHPE(厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)に貼り直して、光拡散フィルムを得た。その後、当該光拡散フィルムを25mm×150mmの大きさにカットし、試験片を作製した。アクリル板およびガラス板のそれぞれに、離型PET(PET75GS)を剥離した試験片を貼り付け、2kgのゴムロールを2往復して圧着した。これらの被着体が異なる試験片を23℃、50%RH環境下で24時間放置した。その後、粘着フィルムを長辺(150mm)方向に沿って、180°剥離したときにおける剥離強度を試験速度300mm/分の条件で測定した。表2-1および表2-2に各光拡散フィルムにおける剥離強度の評価結果を示す。
【0111】
〔印刷後の接着力評価(剥離強度)〕
印刷後の接着力評価サンプルとして作製した実施例1のSLK-110W♯6000(厚さ160μm、住化加工紙株式会社製)上に塗工した粘着シートにおける剥離PETフィルム(PET25LT)を透明塩化ビニルフィルムである08C040M(厚さ50μm、日本カーバイド工業株式会社製)に貼り直し、光拡散フィルムを得た。その後、インクジェットプリンタJV300-130(ミマキエンジニアリング株式会社製)を用いて、色を緑色に設定し、2回重ね塗り印刷を行った。印刷に用いたインキは、ソルベントインキ(ミマキエンジニアリング株式会社製)である。
【0112】
印刷後、粘着加工を行った易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである帝人テトロン(登録商標)フィルムタイプHPE(厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)を印刷後の透明塩化ビニルフィルムに貼り合わせ、25mm×150mmの大きさにカットし、試験片を作製した。試験片を作製した後、アクリル板に、離型PET(PET75GS)を剥離した試験片を貼り付け、2kgのゴムロールを2往復して圧着した。この圧着までの作業は、印刷直後に行った。圧着後は、〔接着力評価(剥離強度)〕の接着力評価と同様の条件で接着力を評価した。印刷前後の接着力の評価基準は以下に示す通りであり、表2-1および表2-2に印刷後の接着力評価結果を示す。
優:印刷前後で接着力に大きな変化はなかった(±1N未満であった)。
良:印刷後の接着力が印刷前と比較し、±1~3Nの差があった。
不可:印刷後の接着力が印刷前と比較し、±4N以上差があった。
【0113】
〔塗工性〕
実施例1~12および比較例1~7の粘着剤組成物のそれぞれについて、添加剤の部数を変更したものを作製し、塗工厚みを変更してアプリケーターを用いてコーティングを行った。その際の塗工スジや塗工のしやすさを確認した。塗工性の評価基準は以下に示す通りであり、表2-1および表2-2に塗工性の評価結果を示す。
優:塗工性が非常に容易であって、膜厚も極めて均一であった。
良:塗工性が容易であって、膜厚も均一であった。
可:塗工むらがたまに生じて、一部不均一の箇所があった。
不可:塗工むらが生じ、膜厚も不均一であった。
【0114】
〔光拡散性〕
実施例1の粘着シートにおけるPET75GSを剥離し、易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである帝人テトロン(登録商標)フィルムタイプHPE(厚さ50μm、帝人デュポンフィルム株式会社製)に貼り直し、光拡散フィルムを作製した後、25mm×150mmの大きさに裁断し、試験片を得た。光拡散性の評価は、試験片から8.5cm離れ、背面側から試験片を照らすように白色LED照明(朝日電器株式会社 ALT-2030PIR(D))を配置し、白色LED照明に照らされた試験片を正面から見たときにおける光拡散性を評価した。光拡散性の評価基準は、以下に示す通りであり、表2-1および表2-2に光拡散性の評価結果を示す。
優:十分な光透過性を有し、フィルム越しに見る光源の形状が十分に隠蔽されていた。
良:十分な光透過性を有するが、フィルム越しに光源の形状の隠蔽性が足りなかった。
可:フィルム越しに見る光源の形状は隠蔽されていたが、光透過性が不十分であった。
不可:光源の形状フィルム越しに確認できず、かつ光透過性に劣っていた。
【0115】
【表2-1】
【0116】
【表2-2】
【0117】
表2-1および表2-2に示すように、実施例1~12の光拡散フィルムでは、平行線透過率が85%よりも低く、かつ全光線透過率が、7%よりも低い結果が得られた。これらと合せ、光拡散性評価では、フィルム越しに見る光源の形状が十分に隠蔽されているか、隠蔽性が足りなくとも十分な光透過性を有していることが確認される程度であった。また、実施例1~12の光拡散フィルムは、アクリル板、さらには印刷後のアクリル板に対し、十分な剥離強度を有することを確認できた。
【0118】
これに対し、光拡散粒子-1を用いていない比較例1、3~5の光拡散フィルムでは、平行線透過率および全光線透過率が高い値を示し、結果として、フィルム越しに見る光源の形状は隠蔽されていた光透過性が不十分であるか、光透過性に劣っている結果となった。光拡散粒子-1を用いているが質量平均分子量が0.1万~2万である(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いない比較例2では、接着力が低い結果となった。光拡散粒子-1を用いた比較例6の光散乱フィルムでは、光拡散性の評価は良であったが、質量平均分子量が30000である(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いており、接着力が低い結果となった。光拡散粒子-1を用いた比較例7の光拡散フィルムでも、光拡散性の評価は良であったが、Tgの低い(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を用いていることから、印刷後の接着力が低下する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、内側からの光を用いて情報を表示する内部照明式表示装置(内照表示装置ともいう)や、自然光を拡散する光拡散シートに用いられる。具体的には、照明カバーを用いた照明器具、光柱や光壁等の照明看板や電飾看板や内照標識等の内照表示装置、遊技機、及び自動販売機等に用いられる内照表示装置や、透過型投影機等のスクリーン、自然光を拡散するパネルや窓や採光板やアーケード等に用いられる光拡散シートを提供できる。
【符号の説明】
【0120】
1 粘着剤層
2 樹脂フィルム(基材層)
3 印刷層
4a 剥離フィルム
4b 剥離フィルム
5 光源
5a 発光源(光源)
5b 光透過性基材(光源)
10 光拡散フィルム
11 光拡散フィルム

図1
図2
図3
図4