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  • 特許-複層ガラスの製造方法および複層ガラス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】複層ガラスの製造方法および複層ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
C03C27/06 101H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020095558
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021187711
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山形 寛
(72)【発明者】
【氏名】堀 慶朗
(72)【発明者】
【氏名】田村 稔
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0217816(US,A1)
【文献】特表2012-508335(JP,A)
【文献】特開2000-086306(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159423(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017709(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/004709(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00 - 29/00
E06B 3/66 - 3/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された第一ガラス板と、第二ガラス板を準備し、
前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプを前記第二ガラス板に形成し、
前記第一ガラス板および前記第二ガラス板のうちの少なくとも一方の周縁部に封着材を塗布し、
前記第一ガラス板の前記凹部にゲッター材を設置し、
減圧環境下において、前記封着材を加熱し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を合わせることで、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の周縁部を前記封着材によって封着し、
封着後、前記ゲッター材をスポット加熱し、この加熱によって前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間に形成された密閉空間の気体を吸着し、
準備する前記第一ガラス板は金属膜を有するコーティングガラスであり、
前記凹部は前記金属膜がある面側で開口し、
前記金属膜のうち前記開口の周縁領域は除去されている
ことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の複層ガラスの製造方法において、
チャンバーを備えた減圧装置が用いられ、
前記第二ガラス板に前記ガラスバンプを形成し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板のうちの一方の周縁部に封着材を塗布し、且つ、前記第一ガラス板の前記凹部に前記ゲッター材を設置した後、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を前記チャンバー内に投入し、
前記チャンバー内を減圧し、
減圧環境下において、前記封着材を加熱して前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の周縁部を封着し、
封着後、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を前記チャンバー内から取り出して前記ゲッター材をスポット加熱して前記密閉空間の気体を吸着する
ことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複層ガラスの製造方法において、
準備する前記第二ガラス板は金属膜を有さない非コーティングガラスである
ことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の複層ガラスの製造方法において、
前記封着材は、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の双方の周縁部に塗布する
ことを特徴とする複層ガラスの製造方法。
【請求項5】
周縁部が封着材によって封着された第一ガラス板および第二ガラス板によって構成され、
前記第一ガラス板には、ゲッター材が配置された凹部が形成され、
前記第二ガラス板には、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプが形成され
前記第一ガラス板は、前記第二ガラス板に対向する面側に金属膜を有するコーティングガラスであり、
前記凹部は前記金属膜がある面側で開口し、
前記金属膜のうち前記開口の周縁領域は除去されている
ことを特徴とする複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚のガラス板の間に減圧された密閉空間が形成された複層ガラスの製造方法および複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の板ガラスの間に減圧空間が形成された複層ガラスが知られている(特許文献1参照)。この複層ガラスは、第1の板ガラスおよび第2の板ガラスと、第1、第2の板ガラスの周縁部を封着した封着材と、第1の板ガラスの表面(第2の板ガラス側の面)に固着されていると共に気体を吸着する吸着材とを備えている。第1、第2の板ガラスおよび封着材によって密閉空間が形成されている。第2の板ガラスには排気口が形成されており、この排気口が排気管を介して真空ポンプに接続され、真空ポンプの作動によって排気口および排気管を通して密閉空間の気体を排気することで密閉空間が減圧状態とされる。このように減圧状態とされた後に排気口は塞がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/136151号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の複層ガラスでは、第2の板ガラスに取り付けられた排気管は一般にキャップによって覆われて保護されるが、キャップが第2の板ガラスの表面から突出して位置する。このため、例えば複層ガラスに対して更に別のガラス(板ガラスや複層ガラス)をスペーサーを介して取り付け、複層ガラスと別のガラスとの間に中間層を形成する場合には、中間層の見込み幅寸法はキャップが別のガラスに干渉しない程度に大きい寸法とする必要があり、十分な断熱性が得られるとしても中間層の見込み幅寸法を小さくすることは困難である。
【0005】
本発明は、ガラス板から突出する部分をなくすことができる複層ガラスの製造方法および複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複層ガラスの製造方法は、凹部が形成された第一ガラス板と、第二ガラス板を準備し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプを前記第二ガラス板に形成し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板のうちの少なくとも一方の周縁部に封着材を塗布し、前記第一ガラス板の前記凹部にゲッター材を設置し、減圧環境下において、前記封着材を加熱し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を合わせることで、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の周縁部を前記封着材によって封着し、封着後、前記ゲッター材をスポット加熱し、この加熱によって前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間に形成された密閉空間の気体を吸着することを特徴とする。
また、本発明の複層ガラスは、周縁部が封着材によって封着された第一ガラス板および第二ガラス板によって構成され、前記第一ガラス板には、ゲッター材が配置された凹部が形成され、前記第二ガラス板には、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプが形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラス板から突出する部分をなくすことができる複層ガラスの製造方法および複層ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法における各工程を示す説明図。
図2】前記実施形態に係る製造方法におけるガラスバンプの加工を示す概略図。
図3】前記実施形態に係る製造方法における真空環境下の工程に関する概略図。
図4】前記実施形態に係る製造方法におけるスポット加熱を示す概略図。
図5】前記実施形態に係る製造方法によって製造される複層ガラスを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1においては、本実施形態に係る複層ガラスの製造方法の概略工程を示している。複層ガラスの製造方法は、第一ガラス板1を所定寸法に切断する切断工程S11と、第一ガラス板1の周縁に座ぐり加工および糸面取り加工を施す座ぐりおよび面取り工程S12と、第一ガラス板1を洗浄する洗浄工程S13と、第一ガラス板1に封着材5を塗布する塗布工程S14と、第一ガラス板1に塗布した封着材5を仮焼成する仮焼成工程S15と、第一ガラス板1に吸着材であるゲッター材7を設置する設置工程S16と、第二ガラス板2を所定寸法に切断する切断工程S21と、第二ガラス板2に糸面取り加工を施す面取り工程S22と、第二ガラス板2を洗浄する洗浄工程S23と、第二ガラス板2にガラスバンプ6(ガラス突起)を形成するバンプ加工工程S24と、第一ガラス板1および第二ガラス板2の周縁部を封着する封着工程S30と、第一ガラス板1および第二ガラス板2の間に形成された密閉空間8の気体を吸着する吸着工程S41と、第一ガラス板1および第二ガラス板2を組み合わせてなる複層ガラス3を冷却する冷却工程S42とを備えている。
【0010】
第一ガラス板1は、第二ガラス板2に対向配置される表面2Aに金属膜10が設けられたLow-Eガラス(Low Emissivity(低放射)ガラス)によって形成されている。第二ガラス板2は、表面に金属膜などが設けられていないフロートガラスによって形成されている。封着材5は、本実施形態では低融点ガラスフリットであるが、低融点の金属材料や樹脂材料などを封着材として用いることもできる。ゲッター材7は、トリウム、バナジウム、チタンなどを含んでおり、加熱されることで化学反応を生じて密閉空間8の気体を吸着する特性を有する。
【0011】
ガラスバンプ6は、図2に示すレーザー装置60を用いて第二ガラス板2に形成される。レーザー装置60は、レーザーヘッド61と、レーザーヘッド61からのレーザービーム65を開放および遮断するシャッター62と、レーザービーム径を所定径に拡大するエキスパンダー63と、エキスパンダー63からのレーザービーム65を所定の焦点位置に集めるレンズ64とを備えており、レーザー装置60からのレーザービーム65が第二ガラス板2に当てられることでガラスバンプ6が第二ガラス板2から突出して形成される。
ガラスバンプ6は平面視円形状であり、その径寸法は0.4~0.5mm程度である。また、ガラスバンプ6は断面半円形状(本実施形態では半楕円形状)であり、その突出寸法は0.1~0.2mm程度である。
第二ガラス板2のうちガラスバンプ6の周囲部分には、環状の窪みが形成される。このため、ガラスバンプ6がレーザー加工によって形成される際に密度が低下することを抑えることができ、所定密度に維持できる。
第一ガラス板1および第二ガラス板2の間に形成される密閉空間8の見込み幅寸法は、ガラスバンプ6の突出寸法によって定められる。
【0012】
切断工程S11は、切り線を形成する切り線形成装置(図示省略)と、切り線が形成されたガラス板を折り割る折割り装置(図示省略)とを用いて実行される。具体的には、先ず、切り線形成装置のカッターホイールにより第一ガラス板1に対して所定形状の切り線を形成する。次に、切り線を形成した第一ガラス板1の不要部分を折割り装置の押し棒により押すことで、当該不要部分を折り割る。このようにして、第一ガラス板1を所定寸法に切断する。
座ぐりおよび面取り工程S12は、切断工程S11の実行後に行われる。
糸面取り加工は、ガラス板の周縁を研磨する研磨装置(図示省略)を用いて実行される。具体的には、研磨装置の研磨ホイールを回転させながら第一ガラス板1の周縁に沿って当てることで周縁研磨を行い、これにより、第一ガラス板1の周縁に糸面取り加工を施す。
座ぐり加工は、ガラス板に座ぐりを形成する座ぐり装置(図示省略)を用いて実行される。座ぐり装置は、例えばダイヤモンド粉末をコーティングした冶具を装着したボール盤などである。具体的には、座ぐり装置の冶具を第一ガラス板1の表面2A上の所定位置に配置し、表面2Aとの接触面を水などの冷却媒体で除熱しながら冶具を回転させて第一ガラス板1に向かって所定量前進させることで、第一ガラス板1を所定深さまで座ぐる。これにより、第一ガラス板1に円形状の凹部2Bを形成する。凹部2Bを形成した後、回転砥石などを用いて凹部2Bの開口の周縁領域2Cにおける金属膜10を除去する。なお、座ぐり加工は糸面取り加工前に行ってもよい。
洗浄工程S13では、面取り工程S12の実行後、第一ガラス板1を水洗浄し、ガラス粉等を除去する。
塗布工程S14は、ガラス板に封着材5を塗布する塗布装置(図示省略)を用いて行われる。具体的には、塗布装置のノズルから液状状態の封着材5を吐出しながら当該ノズルを第一ガラス板1の表面の周縁部に沿って移動させることで、封着材5の第一ガラス板1への塗布を行う。
仮焼成工程S15は、塗布工程S14の実行後、封着材5を焼結させる加熱装置(図示省略)を用いて実行される。具体的には、加熱装置のセラミックヒーターなどによって封着材5を250℃以上まで加熱して仮焼成する。
設置工程S16では、座ぐりおよび面取り工程S12の実行後、本実施形態では更に塗布工程S14および仮焼成工程S15を実行した後に、第一ガラス板1の凹部2Bにゲッター材7を設置する。
【0013】
切断工程S21は、切断工程S11と同様に第二ガラス板2に対して実行され、第二ガラス板2を所定寸法に切断するので、詳細な説明を省略する。
面取り工程S22は、切断工程S21の実行後に行われる。糸面取り加工は、座ぐりおよび面取り工程S12における糸面取り加工と同様に第二ガラス板2の周縁に対して実行されるので、詳細な説明を省略する。
洗浄工程S23は、面取り工程S22の実行後に行われる。洗浄工程S23は洗浄工程S13と同様に第二ガラス板2に対して実行されるので、詳細な説明を省略する。
バンプ加工工程S24では、前述したレーザー加工によって第二ガラス板2にガラスバンプ6を形成する。ガラスバンプ6は所定間隔を隔てて複数形成する。
【0014】
封着工程S30は、前述した工程S11~S16,S21~S24の完了後に減圧装置としての真空装置35を用いて行われる。
真空装置35は、チャンバー36と、チャンバー36内に設置された二つの設置台37,38(図3参照)と、チャンバー36内を減圧して真空状態とする吸引装置(図示省略)とを備えており、設置台37,38には、電熱線などを備えた加熱装置が組み込まれている。設置台37,38は、図3に示すように、台本体391と、台本体391に固定されたガラス支持部392およびガラス押え部393とを備えており、図3(A)に示すように鉛直方向に対して斜めであって二つの台本体391が略V字状となる配置状態から図3(B)に示すように台本体391が鉛直方向に沿って直立する配置状態まで可動に設けられている。
【0015】
封着工程S30は、第一ガラス板1および第二ガラス板2をチャンバー36内に投入する投入工程S31と、投入された第一ガラス板1および第二ガラス板2を位置合わせする位置合わせ工程S32と、位置合わせ後に封着材5を加熱する加熱工程S33と、加熱後に封着材5が固まるまで待機する固定工程S34とを備えている。
投入工程S31では、先ずチャンバー36を開き、図3(A)に示すように斜め配置状態の設置台37,38に第一ガラス板1および第二ガラス板2を設置する。第一ガラス板1および第二ガラス板2の下縁はガラス支持部392に支持され、第一ガラス板1および第二ガラス板2の上縁はガラス押え部393に押さえられてガラス転倒が防止される。第一ガラス板1および第二ガラス板2の設置後にはチャンバー36を閉鎖し、吸引装置によってチャンバー36内の減圧を開始する。チャンバー36内は加熱工程S33の開始前までに真空状態とされる。
位置合わせ工程S32では、投入工程S31の実行後、設置台37,38を図3(A)に示す斜め状態から図3(B)に示すように直立した配置状態とし、これにより、第一ガラス板1および第二ガラス板2が互いに対向した位置とされる。
加熱工程S33では、位置合わせ工程S32の実行後、真空環境下において、設置台37,38に設置された第一ガラス板1および第二ガラス板2を前述した加熱装置によって300℃まで加熱する。これにより、封着材5も300℃まで加熱される。
固定工程S34は、設置台37,38を互いに接近移動し、300℃まで加熱された封着材5を第二ガラス板2に当接させる。また、第二ガラス板2におけるガラスバンプ6が第一ガラス板1の表面に当接し、第一ガラス板1および第二ガラス板2の間にガラスバンプ6の突出寸法に対応した所定間隔の空間が形成される。その後、加熱工程S33における加熱は停止され、所定時間待機して封着材5の温度を低下させる。温度の低下によって封着材5が固まることで、第一ガラス板1および第二ガラス板2を封着してこれらの間に密閉空間8を有した複層ガラス3を形成する。なお、封着材5の加熱時には気体(ガス)が発生するが、温度低下して固まった後は気体の発生がおさまる。固定工程S34の完了後はチャンバー36内から複層ガラス3を取り出す。
【0016】
吸着工程S41では、固定工程S34の実行後、高周波加熱装置(図示省略)を用いて行われる。具体的には、図4に示すように、高周波加熱装置の加熱部40を第一ガラス板1の凹部2Bの近傍に配置し、加熱部40から凹部2Bに設置されたゲッター材7に対して高周波によって700℃までスポット加熱する。このようにスポット加熱されたゲッター材7は活性化し、化学反応によって密閉空間8における気体を吸着する。ここで、前記吸着は、加熱工程S33および固定工程S34が完了した後、つまり、封着材5などから密閉空間8に気体が発生することがおさまった後に行われるので、密閉空間8に残存した気体を十分に吸着できる。これにより、密閉空間8は真空状態とされる。複層ガラス3は真空断熱ガラスとして構成される。
また、第一ガラス板1には金属膜10が設けられているが、金属膜10のうち凹部2Bの開口の周縁領域2Cが除去されているので、高周波が金属膜10に伝わって影響を受けることがない。
冷却工程S42では、吸着工程S41の実行後、複層ガラス3を室温冷却する。これにより、スポット加熱された複層ガラス3を常温に戻す。
【0017】
以上の工程S11~S16,S21~S24,S31~S34,S41,S42を経て、複層ガラス3が製造される。製造された複層ガラス3は、図5に示すように、他の複層ガラス3などのガラスとスペーサー9を介して組み合わされて複層の真空断熱ガラス4を構成する。
【0018】
[変形例]
前記実施形態では、吸着工程S41は、チャンバー36内から複層ガラス3を取り出した後に行っているが、チャンバー36内に高周波加熱装置を備える場合には取り出し前に行ってもよい。
前記実施形態では、第一ガラス板1を金属膜10が設けられたLow-Eガラスとしているが、これに限らず、フロートガラスとしてもよい。この場合、金属膜10自体がないので金属膜10のうち凹部2Bの開口の周縁領域2Cを除去する必要がなくなる。
前記実施形態では、真空装置35は、略V字状に配置可能な設置台37,38を備えており、略V字状の配置とすることで設置台37,38に第一ガラス板1および第二ガラス板2を載せやすくしているが、この配置状態にしなくても第一ガラス板1および第二ガラス板2を設置可能な構成であれば、設置台37,38は始めから直立していてもよい。
前記実施形態では、加熱工程S33において第一ガラス板1および第二ガラス板2を加熱することによって封着材5を加熱しているが、これに限らず、レーザー、遠赤外線ランプなどによって封着材5を直接に加熱してもよい。
前記実施形態では、チャンバー36内を真空状態となるまで減圧しているが、複層ガラス3の密閉空間8が外部の大気圧よりも低い圧力であって真空状態にまでする必要がない場合には、真空状態になるまで減圧しなくてもよい。
前記実施形態では、第一ガラス板1および第二ガラス板2の周縁に糸面取り加工を施しているが、省略してもよい。
【0019】
[本発明のまとめ]
本発明の複層ガラスの製造方法は、凹部が形成された第一ガラス板と、第二ガラス板を準備し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプを前記第二ガラス板に形成し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板のうちの少なくとも一方の周縁部に封着材を塗布し、前記第一ガラス板の前記凹部にゲッター材を設置し、減圧環境下において、前記封着材を加熱し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を合わせることで、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の周縁部を前記封着材によって封着し、封着後、前記ゲッター材をスポット加熱し、この加熱によって前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間に形成された密閉空間の気体を吸着することを特徴とする。
本発明の複層ガラスの製造方法によれば、減圧環境下において第一、第二ガラス板を合わせて封着するので、第一、第二ガラス板のいずれにも、貫通した排気口を形成して排気管を取り付ける必要がない。このため、排気管自体やこれを保護するキャップをなくすことができ、例えば複層ガラスに対して更に別のガラスをスペーサーを介して取り付け、複層ガラスと別のガラスとの間に中間層を形成する場合、前述したキャップがない分、中間層の見込み幅寸法を小さい寸法に設定することができる。
また、本発明では、第一、第二ガラス板の加熱による周縁部の封着後にゲッター材をスポット加熱するので、封着材から気体が出きった後にゲッター材によって密閉空間の気体を十分に吸着できる。
更に、本発明では、第一ガラス板にゲッター材を設置する一方、第二ガラス板にガラスバンプを加工するので、例えば第一ガラス板および第二ガラス板のうちの一方だけにゲッター材を設置し、且つ、ガラスバンプを加工したり、また、第一ガラス板および第二ガラス板の双方にガラスバンプを加工したりする場合と比べて、製造効率が高く、複層ガラスの生産性を向上できる。
【0020】
本発明の複層ガラスの製造方法では、チャンバーを備えた減圧装置が用いられ、前記第二ガラス板に前記ガラスバンプを形成し、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板のうちの一方の周縁部に封着材を塗布し、且つ、前記第一ガラス板の前記凹部に前記ゲッター材を設置した後、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を前記チャンバー内に投入し、前記チャンバー内を減圧し、減圧環境下において、前記封着材を加熱して前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の周縁部を封着し、封着後、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板を前記チャンバー内から取り出して前記ゲッター材をスポット加熱して前記密閉空間の気体を吸着してもよい。
このような構成によれば、例えばチャンバー内でゲッター材をスポット加熱する場合と比べて、次の第一ガラス板および第二ガラス板をチャンバー内に投入でき、製造効率を向上できる。
【0021】
本発明の複層ガラスの製造方法では、準備する前記第一ガラス板は金属膜を有するコーティングガラスであり、前記凹部は前記金属膜がある面側で開口し、前記金属膜のうち前記開口の周縁領域は除去されていてもよい。
このような構成によれば、金属膜のうち凹部の開口の周縁領域が除去されているので、高周波が金属膜に伝わることなくゲッター材をスポット加熱できる。
【0022】
本発明の複層ガラスの製造方法では、準備する前記第二ガラス板は金属膜を有さない非コーティングガラスであってもよい。
このような構成によれば、第二ガラス板は金属膜を有さないので、第二ガラス板をレーザー加工してガラスバンプを形成しても、前述したように存在しない金属膜が影響を受けることがない。
【0023】
本発明の複層ガラスの製造方法では、前記封着材は、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の双方の周縁部に塗布してもよい。
このような構成によれば、第一ガラス板および第二ガラス板の一方だけに封着材を塗布する場合と比べて、密着力を高めることができる。
【0024】
本発明の複層ガラスは、周縁部が封着材によって封着された第一ガラス板および第二ガラス板によって構成され、前記第一ガラス板には、ゲッター材が配置された凹部が形成され、前記第二ガラス板には、前記第一ガラス板および前記第二ガラス板の間隔を維持するガラスバンプが形成されることを特徴とする。
本発明の複層ガラスによれば、前述した複層ガラスの製造方法における作用効果を発揮可能な複層ガラスを構成できる。
【0025】
本発明の複層ガラスでは、前記第一ガラス板は、前記第二ガラス板に対向する面側に金属膜を有するコーティングガラスであり、前記凹部は前記金属膜がある面側で開口し、前記金属膜のうち前記開口の周縁領域は除去されていてもよい。
本発明の複層ガラスによれば、金属膜のうち凹部の開口の周縁領域が除去されているので、高周波が金属膜に伝わることなくゲッター材をスポット加熱して密閉空間の気体を吸着できる。
【符号の説明】
【0026】
1…第一ガラス板、10…金属膜、2…第二ガラス板、2A…表面、2B…凹部、2C…周縁領域、3…複層ガラス、35…真空装置、36…チャンバー、4…真空断熱ガラス、5…封着材、6…ガラスバンプ、7…ゲッター材、8…密閉空間、S11,S21…切断工程、S12…座ぐりおよび面取り工程、S13,S23…洗浄工程、S14…塗布工程、S15…仮焼成工程、S16…設置工程、S22…面取り工程、S24…バンプ加工工程、S30…封着工程、S31…投入工程、S32…位置合わせ工程、S33…加熱工程、S34…固定工程、S41…吸着工程、S42…冷却工程。
図1
図2
図3
図4
図5