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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】逆止弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20231010BHJP
   F25B 41/20 20210101ALI20231010BHJP
【FI】
F16K15/02
F25B41/20 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020121162
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018217
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-34622(JP,U)
【文献】特開2008-128314(JP,A)
【文献】特開2010-139031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0081922(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
F25B 41/20
F25B 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、
前記弁本体は、前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、前記弁体が着座可能な弁座部と、前記弁座部に着座した前記弁体により閉じられる弁口と、を有し、
前記弁体は、前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から二次側に最大に離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、
前記弁ホルダには、筒状の周面を貫通して前記外管部の内部と前記弁口とを連通する連通孔が設けられ、
前記弁開位置に移動した前記弁体によって前記連通孔の一部が塞がれ、前記連通孔が塞がれない部分の開度が50%以上であることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記連通孔は、側面視で円形に形成され、前記弁体は、円柱状または有底円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記弁開位置に移動した前記弁体によって前記連通孔が塞がれない部分の開度が55~75%であることを特徴とする請求項1または2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁座部と対向する前記弁体の先端面は、全面が平坦に形成されるか、または、前記弁座部に当接する外周部が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記外管部は、一次側の第一管部と、前記弁座部が固定される第二管部と、二次側にて前記弁ホルダの外側を覆う第三管部と、を備え、
前記第二管部の径寸法D2と、前記第三管部の径寸法D3と、の関係がD2<D3であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記外管部は、一次側の第一管部と、前記弁座部が固定される第二管部と、二次側にて前記弁ホルダの外側を覆う第三管部と、を備え、
第一管部の径寸法D1と、前記第二管部の径寸法D2と、前記第三管部の径寸法D3と、の関係がD1<D2<D3であり、
前記弁座部の内径は、前記第一管部の内径と略同一であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の逆止弁を備えた冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、逆止弁として、外管の内部に設けられる弁本体と、弁本体の内部に設けられる弁体と、を備え、弁本体は、弁口を構成する弁座部と、弁体を移動自在に収容する筒状の弁ホルダと、を有したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この逆止弁において、弁ホルダ(弁筐体)には、外管の内部と弁口とを連通する連通孔(導通孔)が設けられており、流体の通常の流れである正流に対して、弁体が弁ホルダ内の出口側に移動し、弁口(流入口)から流入した流体が連通孔から外管内部を通過して流出口から流出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭47-34622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の逆止弁では、正流時に弁体が弁開位置に移動して連通孔が全開放されることになるが、連通孔を通過する際の流体の圧力損失が大きくなり、流体の流量が抑制されるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、正流時における流体の圧力損失を低減して流量を大きくすることができる逆止弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の逆止弁は、軸方向に延びる筒状の外管部と、前記外管部に内蔵される弁本体と、前記弁本体に設けられる弁体と、を備えた逆止弁であって、前記弁本体は、前記弁体を支持する筒状の弁ホルダと、前記弁体が着座可能な弁座部と、前記弁座部に着座した前記弁体により閉じられる弁口と、を有し、前記弁体は、前記弁ホルダ内において、前記弁座部に着座する弁閉位置と、前記弁座部から二次側に最大に離れた弁開位置と、の間を軸方向に移動自在に設けられ、前記弁ホルダには、筒状の周面を貫通して前記外管部の内部と前記弁口とを連通する連通孔が設けられ、前記弁開位置に移動した前記弁体によって前記連通孔の一部が塞がれ、前記連通孔が塞がれない部分の開度が50%以上であることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁開位置に移動した弁体によって弁ホルダの連通孔の一部が塞がれることで、連通孔を通過する際の流体の圧力損失が低減され、正流時の流量を大きくすることができる。
【0008】
この際、前記連通孔は、側面視で円形に形成され、前記弁体は、円柱状または有底円筒状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、側面視で円形に形成された連通孔の場合、弁体が連通孔を全開放してしまうと、弁体の先端面と弁ホルダの内面との境界部分で流体の渦が生じて圧力損失が大きくなるのに対し、連通孔の一部(二次側の円弧状の部分)を弁体が塞ぐことで、連通孔を通過する流れがスムーズになり、流体の渦が生じにくくなって圧力損失を抑制することができる。
【0009】
さらに、前記弁開位置に移動した前記弁体によって前記連通孔が塞がれない部分の開度が55~75%であることが好ましい。
【0010】
また、前記弁座部と対向する前記弁体の先端面は、全面が平坦に形成されるか、または、前記弁座部に当接する外周部が平坦に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、弁体の先端面の少なくとも外周部が平坦に形成されていることで、弁ホルダの内周面と摺接する弁体の外周面は、その先端部が軸方向と直交する端縁を有することになり、弁開位置に移動した際に連通孔を塞ぐ面積を一定にすることができ、流量を安定させることができる。
【0011】
また、前記外管部は、一次側の第一管部と、前記弁座部が固定される第二管部と、二次側にて前記弁ホルダの外側を覆う第三管部と、を備え、前記第二管部の径寸法D2と、前記第三管部の径寸法D3と、の関係がD2<D3であることが好ましい。
【0012】
また、前記外管部は、一次側の第一管部と、前記弁座部が固定される第二管部と、二次側にて前記弁ホルダの外側を覆う第三管部と、を備え、第一管部の径寸法D1と、前記第二管部の径寸法D2と、前記第三管部の径寸法D3と、の関係がD1<D2<D3であり、前記弁座部の内径は、前記第一管部の内径と略同一であることが好ましい。
【0013】
本発明の冷凍サイクルシステムは、前記いずれかの逆止弁を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の逆止弁および冷凍サイクルシステムによれば、弁ホルダの連通孔を通過する際の流体の圧力損失が抑制され、正流時の流量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る逆止弁を示す断面図である。
図2】前記逆止弁の要部を拡大して示す拡大断面図である。
図3】前記逆止弁の連通孔の開度を説明する図である。
図4】前記逆止弁と比較例とにおける流体の流れを説明する図である。
図5】前記連通孔の弁開度と流量との関係を示すグラフである。
図6】前記逆止弁の変形例を示す拡大断面図である。
図7】前記逆止弁の変形例を示す拡大断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る逆止弁を示す断面図である。
図9】前記逆止弁の要部を拡大して示す拡大断面図および側面図である。
図10】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態に係る逆止弁を図1図5に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の逆止弁1は、一次側(図1の左側)から二次側(図1の右側)への流体の流れ(正流)を許可し、二次側から一次側への流体の流れ(逆流)を禁止する弁装置である。逆止弁1は、軸線Lに沿った軸方向に延びる円筒状の外管部2と、外管部2に内蔵される弁本体3と、弁本体3に設けられる弁体4と、を備えている。弁本体3は、弁体4を支持する筒状の弁ホルダ5と、弁体4が着座可能な弁座部6と、が一体に形成された黄銅製部材であり、弁座部6には、着座した弁体4により閉じられる弁口7が形成されている。
【0017】
外管部2は、銅製の一体成形部材であり、一次側の一次継手部11と、二次側の二次継手部12と、一次継手部11よりも拡径された第一拡径部13と、第一拡径部13よりも拡径されて二次継手部12に連続する第二拡径部14と、を備えている。一次継手部11は、一次配管(不図示)に連結される一次開口部11Aと、一次開口部11Aに連続する円筒状の一次円筒部11Bと、一次円筒部11Bから第一拡径部13に向かって拡径される第一連結部11Cと、を有し、一次開口部11Aは、一次円筒部11Bよりも若干拡径されている。二次継手部12は、二次配管(不図示)に連結される二次開口部12Aと、二次開口部12Aに連続する円筒状の二次円筒部12Bと、二次円筒部12Bから第二拡径部14に向かって拡径される第二連結部12Cと、を有し、二次開口部12Aは、二次円筒部12Bよりも若干拡径されている。
【0018】
第一拡径部13は、その内部に圧入された弁座部6を保持する部位であり、周面の4箇所には、径方向内側に変形して弁座部6を固定する固定部13Aが形成されている。これらの固定部13Aは、プレス装置のポンチによってカシメ変形され、弁座部6の環状凹部25に食い込むことで、弁座部6が外管部2内部の所定位置に固定されるようになっている。第二拡径部14は、その内周面と弁ホルダ5の外周面とが所定の隙間を介して対向し、この隙間を流体が円滑に流れる程度の内径寸法を有した円筒状に形成されている。第二拡径部14と第一拡径部13の境界部分には、第一拡径部13に向かって縮径される段差部14Aが設けられている。以上の外管部2において、一次継手部11の一次円筒部11B(第一管部)の内径寸法D1(図1参照)と、第一拡径部13(第二管部)の内径寸法D2(図2参照)と、第二拡径部14(第三管部)の径寸法D3(図2参照)とは、D1<D2<D3の関係となっている。
【0019】
弁本体3の弁ホルダ5には、円筒状の周面を径方向に貫通する連通孔21が4箇所に設けられ、これらの連通孔21によって、弁ホルダ5の内部と外管部2の第二拡径部14の内部とが連通されている。連通孔21は、側面視で円形に形成されている。すなわち、連通孔21は、弁ホルダ5に対して軸直交方向からドリル等による穴開け加工によって形成されている。弁ホルダ5の二次側端部近傍の内面には、SUS製で円環状の弁ストッパー22が取り付けられ、弁開位置(図1、2に示す位置)に移動した弁体4が弁ストッパー22に当接することで、弁体4の弁開位置よりも二次側への移動が規制されている。すなわち、弁開位置とは、弁体4が弁座部6から離れた位置で、なおかつ、弁体4が弁ストッパー22に当接したことで、弁ストッパー22よりも二次側に弁体4が移動することが規制された位置(弁ストロークにおける二次側方向最大位置)のことである。
【0020】
弁座部6は、一次側に延びる円筒部23を有し、この円筒部23の二次側(弁ホルダ5側)端部の内面にはテーパ状の弁座面24が設けられ、弁閉位置に移動した弁体4が弁座面24に着座するようになっている。弁座部6の内径である弁口7の内径寸法D4(図2参照)は、一次継手部11の一次円筒部11B(第一管部)の内径寸法D1(図1参照)と略同一である。円筒部23の一次側端部近傍の外面には、外管部2の固定部13Aが食い込む環状凹部25が形成されている。また、弁座部6の二次側端部外面には、径方向に突出した環状凸部26が形成され、この環状凸部26が外管部2の段差部14A内面に当接することで、弁本体3が外管部2に対して位置決めされており、CO冷媒等の超高圧で使用する場合、弁閉時に弁座部6が弁閉方向に受ける力をこの段差部14A内面で受けることができるため、弁座部6の圧入ずれ防止の効果がある。環状凸部26には、その周方向の一部が切り欠かれたDカット部27が形成されている。
【0021】
弁体4は、円柱状の樹脂製部材であって、その外径は、弁ホルダ5の内径よりも若干小さく、弁ホルダ5の内周面に沿って弁ホルダ5内を軸方向に移動可能に設けられている。弁体4は、円柱状の周面である外周面31と、一次側の端面である先端面32と、二次側の端面である後端面33と、を有している。弁体4の先端面32および後端面33は、それぞれ全面が平坦に形成されている。なお、弁体4は、円柱状に限らず、先端面32側が底となり後端面33側が開口した有底円筒状に形成されていてもよい。なお、弁体4は、円柱状の外周面31の形状が、軸線方向Lの途中の一定範囲において、外径が縮径された形状であってもよく、例えば、先端面32および後端面33の外径よりも縮径した部分を途中に有し、この縮径した部分が全周に矩形状またはR状の凹部で構成されていてもよい。
【0022】
弁体4は、弁閉位置において、先端面32の外周縁が弁座部6の弁座面24に当接して着座し、これにより弁口7が閉じて二次側から一次側への流体の逆流が阻止されるようになっている。一方、図1、2に示す弁開位置において、弁体4は、後端面33の外周部が弁ストッパー22に当接して移動が規制される。この弁開位置において、弁体4の先端面32が連通孔21の二次側端縁よりも一次側に位置するようになっている。すなわち、弁開位置に移動した弁体4の外周面31によって連通孔21の一部が塞がれるようになっている。
【0023】
弁開位置にある弁体4と連通孔21との位置関係、それに伴う連通孔21の弁開度、および流体の流量について図3図5も参照して説明する。図3は、弁体4によって連通孔21の一部が塞がれている様子を示している。図3に符号Aで示すように、弁体4の先端面32が連通孔21の軸方向の中心に位置する場合、連通孔21は、その孔直径の半分が塞がれ半分が開いていることから、連通孔21の弁開度は50%となる。図3に符号Bで示す位置に弁体4の先端面32がある場合、連通孔21は、その孔直径の1/4が塞がれ3/4が開いていることから、連通孔21の弁開度は75%となる。弁体4が連通孔21に重ならなければ、連通孔21の弁開度は100%となる。ここで、連通孔21の弁開度は、以下のように定義されている。連通孔21の弁開度とは、軸線L方向の連通孔21の孔直径(最大長さ)に対する、弁開位置時に連通孔21の塞がれていない部分の軸線L方向の最大長さの比率のことである。
【0024】
図4(A)は、本実施形態の逆止弁1における弁開時の流体の流れを示し、図4(B)は、比較例として弁開時に連通孔21の弁開度が100%となる逆止弁100における弁開時の流体の流れを示している。図4(B)に示すように、比較例の逆止弁100では、弁体4の先端面32が連通孔21の端縁と同じ位置に位置するため、円形の連通孔21が隣り合う部分において、弁ホルダ5の内周面と弁体4の先端面32との境界部分に図に示すように流体の渦が発生し、この渦により流体の流れが阻害され、流体の圧力損失が増大して流量が小さくなってしまう。これに対して、図4(A)に示すように、本実施形態の逆止弁1では、流体の渦が発生する部位がなく、弁ホルダ5の内部に流入した流体がスムーズに連通孔21に向かって流れることで、流体の圧力損失が小さくなっている。また、弁体4の先端面32が連通孔21の端縁よりも二次側に位置した場合でも、弁体4の先端面32が連通孔21の端縁と同じ位置に位置した場合と同様に、弁ホルダ5の内周面と弁体4の先端面32との境界部分に流体の渦が発生し、この渦により流体の流れが阻害され、流体の圧力損失が増大して流量が小さくなってしまう。
【0025】
図5は、連通孔21の弁開度と流量との関係を示すグラフである。このグラフは、連通孔21の弁開度を50%~100%の間で変化させ、弁開度ごとの流量をシミュレーションにより算出し、弁開度が100%のときの流量を1.0としてプロットしたものである。図5に示すように、流体の流量は、弁開度が65%のときに最大値を示し、弁開度が100%のときの流量に対して1.1倍となっている。また、流量は、弁開度が55%から75%の間において、弁開度が100%のときの流量に対して1.08倍以上となっている。
【0026】
次に、図6および図7を参照して逆止弁1における弁体4の変形例について説明する。図6(A)に示す第1変形例の弁体4は、弁座面24に当接可能な弁シート34Aと、この弁シート34Aを係止する係止リング34Bと、係止リング34Bをカシメ固定するカシメ片34Cと、を有して先端面32が構成されている。この弁体4では、弁シート34Aの一次側が平坦に形成され、すなわち弁座部6に当接する弁体4の外周部が平坦に形成されている。
【0027】
図6(B)に示す第2変形例の弁体4は、先端面32が外周側で平坦に形成された平坦面部35Aと、中央部で一次側に突出した円柱状の突出部35Bと、を有して形成されている。この弁体4では、先端面32の外周部を構成する平坦面部35Aが弁座部6に当接する。弁開位置の弁体4では、弁口7から流入した流体が突出部35Bに当たってから、平坦面部35Aに沿って連通孔21に案内されるようになっている。図6(C)に示す第3変形例の弁体4は、先端面32が一次側に突出した球面状に形成され、図6(D)に示す第4変形例の弁体4は、先端面32が一次側に突出した円錐台状に形成され、図7(A)に示す第5変形例の弁体4は、先端面32が一次側に突出した円錐状に形成され、これらの弁体4でも、流体が先端面32に沿って連通孔21に案内されるようになっている。
【0028】
図7(B)に示す第6変形例の弁体4は、先端面32が外周側で平坦に形成された平坦面部36Aと、中央部で一次側に突出した円錐状の突出部36Bと、を有して形成されている。この弁体4では、先端面32の外周部を構成する平坦面部36Aが弁座部6に当接する。弁開位置の弁体4では、弁口7から流入した流体が突出部36Bに当たってから、平坦面部36Aに沿って連通孔21に案内されるようになっている。図7(C)に示す第7変形例の弁体4は、先端面32が外周側で平坦に形成された平坦面部37Aと、中央部で二次側に凹んだ凹状部37Bと、を有して形成され、図7(D)に示す第8変形例の弁体4は、先端面32が外周側で平坦に形成された平坦面部38Aと、中央部で二次側に円錐状に凹んだ凹状部38Bと、を有して形成され、これらの弁体4では、先端面32の外周部を構成する平坦面部37A,38Aが弁座部6に当接する。
【0029】
以上の本実施形態によれば、弁開位置に移動した弁体4によって弁ホルダ5の連通孔21の一部が塞がれることで、連通孔21を通過する際の流体の圧力損失が低減され、正流時の流量を大きくすることができる。
【0030】
また、側面視で円形に形成された連通孔21の二次側の円弧状の部分を弁体4が塞ぐことで、弁体4の先端面32と弁ホルダ5の内周面との境界部分に渦が発生しにくくなり、連通孔21を通過する際の流体の圧力損失を効果的に抑制することができる。
【0031】
また、弁開位置の弁体4によって一部が塞がれた連通孔21の開度を55~75%に設定することで、開度が100%の場合と比較して1.08倍以上の流量を確保することができる。従って、弁開位置時に弁開度が55%から75%の間になるように設定しておけば、弁開度が部品寸法、形状などが多少ばらついても、正流時に最大限の流量を得ることができる。
【0032】
また、弁体4の先端面32の少なくとも外周部が平坦に形成されていることで、弁ホルダ5の内周面と摺接する弁体4の外周面31は、その先端部が軸方向と直交する端縁を有することになり、弁開位置において連通孔21を塞ぐ面積を一定にすることができ、流量を安定させることができる。
【0033】
また、図6(A)~(D)、図7(A),(B)に示す弁体4のように、先端面32の中央部が一次側に突出し、外周部が平坦に形成されていることで、弁口7から流入した流体が先端面32の中央部に当たってから、外周部に沿って連通孔21に案内されることになり、流体をスムーズに連通孔21に流すことができる。
【0034】
また、外管部2において、第一拡径部13(第二管部)の内径寸法D2と、第二拡径部14(第三管部)の径寸法D3とは、D2<D3の関係となっていることで、弁ホルダ5の外径と外管部2の内径との間に空間流路面積が確保できる為、連通孔21から二次側に流出する圧力損失を低減させることができる。また、外管部2において、第一管部の内径寸法D1と、第一拡径部13(第二管部)の内径寸法D2と、第二拡径部14(第三管部)の径寸法D3とは、D1<D2<D3の関係で、かつ、弁座部6の内径である弁口7の内径寸法D4は、第一管部の内径寸法D1と略同一となっていることで、第一管部から弁座部6Aへの流れがスムーズとなるとともに、弁ホルダ5の外径と外管部2の内径との間に空間流路面積が確保できる為、連通孔21から二次側に流出する圧力損失を低減させることができ、より一層、流量を大きくすることができる。
【0035】
次に、図8図9に基づき、本発明の第2実施形態に係る逆止弁1Aについて説明する。本実施形態の逆止弁1Aは、第1実施形態の逆止弁1と同様に、外管部2と、弁本体3と、弁体4と、を備えて構成されている。一方、逆止弁1Aは、弁本体3の一部構成が逆止弁1と相違している。以下、相違点について詳しく説明する。
【0036】
本実施形態の逆止弁1Aの弁本体3は、弁ホルダ5Aと、弁座部6Aと、が別体で構成され、互いに溶接固定されている。弁ホルダ5Aは、SUS製の円筒状部材であって、その周面を径方向に貫通する連通孔21が4箇所に設けられている。また、弁ホルダ5Aの二次側端部は、径方向内側に折り曲げられた弁ストッパー部28が設けられ、弁開位置(図8、9に示す位置)に移動した弁体4が弁ストッパー部28に当接することで、弁体4の弁開位置よりも二次側への移動が規制されている。
【0037】
弁座部6Aは、SUS製の円筒状部材であって、前記弁座部6と同様の円筒部23を有し、この円筒部23の二次側(弁ホルダ5側)端部に環状突起状の弁座29が設けられ、弁閉位置に移動した弁体4が弁座29に着座するようになっている。弁体4は、弁閉位置において、先端面32の外周部が弁座29に当接して着座し、これにより弁口7が閉じて二次側から一次側への流体の逆流が阻止されるようになっている。一方、図8、9に示す弁開位置において、弁体4の先端面32が連通孔21の二次側端縁よりも一次側に位置することで、この弁体4の外周面31によって連通孔21の一部が塞がれるようになっている。
【0038】
図9(B)は、図9(A)の弁本体3を二次側(図の右側)から見た側面図である。図9(B)に示すように、弁座部6Aの環状凸部26には、その周方向の一部が切り欠かれたDカット部27が形成されている。ここで、弁座部6Aの環状凸部26は、外管部2の段差部14A内面に当接するが、これらの間には微小な隙間である液封部26Aが形成されることになる。この液封部26Aに流体である冷媒が入り込んで溜まり、冷媒が冷えて液化した状態で急激に高温に曝された場合、液冷媒が急激に体積膨張することになるが、Dカット部27が液封部26Aに連通していることで、膨張した冷媒が外管部2内部に抜け出すようになっている。従って、冷媒の膨張圧力による外管部2や弁座部6Aの破損や変形が防止できるようになっている。
【0039】
以上の本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、弁開位置に移動した弁体4によって弁ホルダ5Aの連通孔21の一部が塞がれることで、連通孔21を通過する際の流体の圧力損失が低減され、正流時の流量を大きくすることができる。
【0040】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを図10に基づいて説明する。図10は、実施形態の冷凍サイクルシステム50を示す図である。冷凍サイクルシステム50は、例えば、業務用エアコン等の空気調和機に用いられる。この冷凍サイクルシステム50は、室内側熱交換器51、室外側熱交換器52、膨張弁53、四方弁54、並列に接続された3台の圧縮機55、が配管で接続されたものである。逆止弁1,1Aは、各圧縮機55への冷媒の逆流を防ぐために、各圧縮機55における吐出(高圧出力)側と四方弁54との間に、圧縮機55を一次側、四方弁54を二次側として接続されている。
【0041】
冷房運転時には、実線矢印D51で示されているように、室内側熱交換器51で熱を吸収した冷媒が、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1,1Aと四方弁54を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を放出した後、膨張弁53を経て室内側熱交換器51に戻る。暖房運転時には、点線矢印D52で示されているように、室内側熱交換器51で熱を放出した冷媒が、膨張弁53を経て室外側熱交換器52に至る。そして、この室外側熱交換器52で熱を吸収した後、四方弁54を介して圧縮機55へと流れ、圧縮機55で圧縮された後、逆止弁1,1Aと四方弁54を経て室内側熱交換器51に戻る。冷凍サイクルシステム50は、これらのサイクルを繰り返して室内の冷房または暖房を行う。
【0042】
ここで、例えば、冷却負荷が大きい条件では、3台の圧縮機55を同時に運転するため、3台の各逆止弁1,1Aは全開状態となる。また、冷却負荷が小さい条件では、1台の圧縮機55の運転だけで足りるので、他の2台の圧縮機55は運転しない。このときには、2台の逆止弁1,1Aの二次側圧力が一次側圧力より高くなることで二次側からの逆流が生じ、2台の逆止弁1,1Aが閉じた状態となる。
【0043】
なお、以上に説明した実施形態や変形例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の逆止弁の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0044】
例えば、上述の実施形態や変形例では、業務用エアコン等の空気調和機に用いられる逆止弁1,1Aを例示したが、逆止弁は、業務用エアコンに限らず、家庭用エアコンに用いてもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機、冷蔵庫等にも適用可能である。また、以上の様々な冷凍サイクルシステムにおいて、図10の冷凍サイクルの逆止弁取付け例の様に圧縮機の吐出側への取付けに限定するものではなく、様々な冷凍サイクル中の様々な場所での逆流防止用として適用が可能である。また、各冷凍サイクルシステムの冷媒としては、多種多様な冷媒(例えば、各種フロン系冷媒や、炭化水素系冷媒やCO2やアンモニア等といった自然冷媒等)があるが、これらのどの冷媒に対応した冷凍サイクルシステムにも本発明の逆止弁を適用することができる。
【0045】
なお、以上の第1実施形態、第1~8変形例、第2実施形態の説明では、連通孔21については、弁ホルダ5の円筒状の周面を径方向に貫通する4箇所に設けられている構造について説明してきたが、4箇所に限定するものではなく1箇所や、2箇所以上の複数箇所でもよい。また、連通孔21は側面視で円形に形成された孔について、記述してきたが、側面視で円形に限定するものではなく、楕円形等でもよい。また、以上の第1実施形態、第1~8変形例、第2実施形態では、外管部2(継手部材と本体部材)が銅製の一体形成部材の構造の逆止弁について説明してきたが、入口、出口の銅管継手部材と、弁体を収容する本体部材と、を別体とした構造の逆止弁にも適用することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1,1A 逆止弁
2 外管部
3 弁本体
4 弁体
5,5A 弁ホルダ
6,6A 弁座部
7 弁口
11B 一次円筒部(第一管部)
13 第一拡径部(第二管部)
14 第二拡径部(第三管部)
21 連通孔
32 先端面
50 冷凍サイクルシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10