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特許7362566運転制御装置、運転制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】運転制御装置、運転制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20231010BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231010BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231010BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
G08G1/0962
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020137925
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034227
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香月 理絵
(72)【発明者】
【氏名】金子 敏充
(72)【発明者】
【氏名】関根 真弘
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0203455(US,A1)
【文献】特開2020-041907(JP,A)
【文献】特開2001-255937(JP,A)
【文献】特開2018-206036(JP,A)
【文献】国際公開第2020/049685(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057059(WO,A1)
【文献】特開2012-051441(JP,A)
【文献】特開2010-282344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部と、を備え、
前記出力制御部は、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道とを含む出力情報、及び、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いるか否かを確認するメッセージを前記出力部に出力し、
前記生成部は、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いる場合、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道に基づいて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記動力制御部は、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
運転制御装置。
【請求項2】
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部と、を備え、
前記予測部は、前記移動体の運転者による手動運転を教師データとして用いた模倣学習によって、自動運転から手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動を予測し、
前記生成部は、前記模倣学習により得られた手動運転を示す模倣学習結果を、安全基準の観点から修正することによって、前記自動運転制御情報を生成する、
運転制御装置。
【請求項3】
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部と、を備え、
前記出力制御部は、自動運転制御される前記移動体の運転行動が停止であり、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の運転行動が停止以外の場合、障害物と前記移動体との間の安全マージンの設定を受け付ける出力情報を前記出力部に出力し、
前記生成部は、設定された安全マージンを用いて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記動力制御部は、再生成された前記自動運転制御情報により示される運転行動が停止以外の場合、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
運転制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記移動体の運転行動、前記移動体が走行する経路、及び、前記移動体の軌道の少なくとも1つに基づいて前記差異を判定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項5】
前記判定部は、自動運転による目的地までの所要時間と、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間とを更に判定し、
前記出力制御部は、自動運転による前記目的地までの所要時間よりも、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間の方が短い場合、手動運転の方が前記目的地に早く到達することを示す情報を前記出力部に出力する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項6】
出力制御部は、自動運転の運転行動を示す情報と、前記移動体を自動運転する場合の速度と、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の速度と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道と、のうち少なくとも1つが強調された出力情報を前記出力部に出力する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記移動体を自動運転する場合の運転行動と、前記移動体を手動運転する場合の運転行動とが一致しないという条件、及び、自動運転による移動距離よりも手動運転による移動距離の方が長いという条件の両方を満たすと判定された回数が第1の閾値より大きい場合、前記差異があると判定する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項8】
自動運転される前記移動体の軌道又は経路は、前記移動体の位置、姿勢及び速度を示す第1のウェイポイントの列により表され、
手動運転される前記移動体の軌道又は経路は、前記移動体の位置、姿勢及び速度を示す第2のウェイポイントの列により表され、
前記判定部は、前記第1のウェイポイントにより示される位置、姿勢及び速度の少なくとも1つと、前記第1のウェイポイントに対応する前記第2のウェイポイントにより示される位置、姿勢及び速度の少なくとも1つとの差分を取り、前記差分が第2の閾値よりも大きいという条件、及び、自動運転による移動距離よりも手動運転による移動距離の方が長いという条件の両方を満たすと判定された回数が第3の閾値より大きい場合、前記差異があると判定する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項9】
判定部は、自動運転による前記移動体の軌道または経路の特徴を示す第1の特徴を抽出する第1の特徴抽出ネットワークと、手動運転による前記移動体の軌道または経路の特徴を示す第2の特徴を抽出する第2の特徴抽出ネットワークと、前記第1の特徴及び前記第2の特徴の差異を判定する差異判定ネットワークとを用いて、前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項10】
運転制御装置が、自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測するステップと、
前記運転制御装置が、前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定するステップと、
前記運転制御装置が、前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御するステップと、を含み、
前記出力するステップは、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道とを含む出力情報、及び、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いるか否かを確認するメッセージを前記出力部に出力し、
前記生成するステップは、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いる場合、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道に基づいて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記制御するステップは、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
運転制御方法。
【請求項11】
運転制御装置が、自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測するステップと、
前記運転制御装置が、前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定するステップと、
前記運転制御装置が、前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御するステップと、を含み、
前記予測するステップは、前記移動体の運転者による手動運転を教師データとして用いた模倣学習によって、自動運転から手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動を予測し、
前記生成するステップは、前記模倣学習により得られた手動運転を示す模倣学習結果を、安全基準の観点から修正することによって、前記自動運転制御情報を生成する、
運転制御方法。
【請求項12】
運転制御装置が、自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測するステップと、
前記運転制御装置が、前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定するステップと、
前記運転制御装置が、前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力するステップと、
前記運転制御装置が、自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御するステップと、を含み、
前記出力するステップは、自動運転制御される前記移動体の運転行動が停止であり、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の運転行動が停止以外の場合、障害物と前記移動体との間の安全マージンの設定を受け付ける出力情報を前記出力部に出力し、
前記生成するステップは、設定された安全マージンを用いて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記制御するステップは、再生成された前記自動運転制御情報により示される運転行動が停止以外の場合、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
運転制御方法。
【請求項13】
前記判定するステップは、前記移動体の運転行動、前記移動体が走行する経路、及び、前記移動体の軌道の少なくとも1つに基づいて前記差異を判定する、
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の運転制御方法。
【請求項14】
前記判定するステップは、自動運転による目的地までの所要時間と、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間とを更に判定し、
前記出力するステップは、自動運転による前記目的地までの所要時間よりも、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間の方が短い場合、手動運転の方が前記目的地に早く到達することを示す情報を前記出力部に出力する、
請求項10乃至13のいずれか1項に記載の運転制御方法。
【請求項15】
出力するステップは、自動運転の運転行動を示す情報と、前記移動体を自動運転する場合の速度と、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の速度と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道と、のうち少なくとも1つが強調された出力情報を前記出力部に出力する、
請求項10乃至14のいずれか1項に記載の運転制御方法。
【請求項16】
前記判定するステップは、前記移動体を自動運転する場合の運転行動と、前記移動体を手動運転する場合の運転行動とが一致しないという条件、及び、自動運転による移動距離よりも手動運転による移動距離の方が長いという条件の両方を満たすと判定された回数が第1の閾値より大きい場合、前記差異があると判定する、
請求項10乃至15のいずれか1項に記載の運転制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部、として機能させ、
前記出力制御部は、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道とを含む出力情報、及び、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いるか否かを確認するメッセージを前記出力部に出力し、
前記生成部は、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いる場合、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道に基づいて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記動力制御部は、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
プログラム。
【請求項18】
コンピュータを、
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部、として機能させ、
前記予測部は、前記移動体の運転者による手動運転を教師データとして用いた模倣学習によって、自動運転から手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動を予測し、
前記生成部は、前記模倣学習により得られた手動運転を示す模倣学習結果を、安全基準の観点から修正することによって、前記自動運転制御情報を生成する、
プログラム。
【請求項19】
コンピュータを、
自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する生成部と、
自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する予測部と、
前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する判定部と、
前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する出力制御部と、
自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する動力制御部、として機能させ、
前記出力制御部は、自動運転制御される前記移動体の運転行動が停止であり、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の運転行動が停止以外の場合、障害物と前記移動体との間の安全マージンの設定を受け付ける出力情報を前記出力部に出力し、
前記生成部は、設定された安全マージンを用いて前記自動運転制御情報を再生成し、
前記動力制御部は、再生成された前記自動運転制御情報により示される運転行動が停止以外の場合、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する、
プログラム。
【請求項20】
前記判定部は、前記移動体の運転行動、前記移動体が走行する経路、及び、前記移動体の軌道の少なくとも1つに基づいて前記差異を判定する、
請求項17乃至19のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項21】
前記判定部は、自動運転による目的地までの所要時間と、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間とを更に判定し、
前記出力制御部は、自動運転による前記目的地までの所要時間よりも、手動運転に切り替えた場合の前記目的地までの所要時間の方が短い場合、手動運転の方が前記目的地に早く到達することを示す情報を前記出力部に出力する、
請求項17乃至20のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項22】
出力制御部は、自動運転の運転行動を示す情報と、前記移動体を自動運転する場合の速度と、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の速度と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道と、のうち少なくとも1つが強調された出力情報を前記出力部に出力する、
請求項17乃至21のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項23】
前記判定部は、前記移動体を自動運転する場合の運転行動と、前記移動体を手動運転する場合の運転行動とが一致しないという条件、及び、自動運転による移動距離よりも手動運転による移動距離の方が長いという条件の両方を満たすと判定された回数が第1の閾値より大きい場合、前記差異があると判定する、
請求項17乃至22のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は運転制御装置、運転制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体の自動運転に関する技術が従来から知られている。例えば、自動運転中の車両の安全監視システムが潜在的な不安全さを監視し、不安全と判定した場合に、車両の運転者に運転の引継ぎを促す技術が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-4402号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Soren Kammel,Julius Ziegler,Benjamin Pitzer,Moritz Werling,Tobias Gindele,Daniel Jagzent,et.al.,“Team AnnieWAY′s Autonomous System for the 2007 DARPA Urban Challenge,”Journal of Field Robotics,25(9),pp.615-639,2008.
【文献】Wenda Xu,Junqing Wei,John M.Dolan,Huijing Zhao,Hongbin Zha,“A Real-Time Motion Planner with Trajectory Optimization for Autonomous Vehicles,”Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation,pp.2061-2067,2012.
【文献】Mayank Bansal,Alex Krizhevsky, Abhijit Ogale,“ChauffeurNet:Learning to Drive by Imitating the Best and Synthesizing the Worst,”、[online]、[令和2年7月29日検索]、インターネット<URL:https://arxiv.org/abs/1812.03079>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の技術では、安全に自動運転制御された移動体が、交通流を乱す可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の運転制御装置は、生成部と予測部と判定部と出力制御部と動力制御部とを備える。生成部は、自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する。予測部は、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する。判定部は、前記自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の前記移動体の挙動との差異を判定する。出力制御部は、前記差異がある場合、前記移動体の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部に出力する。動力制御部は、自動運転又は手動運転により前記移動体の動力部を制御する。前記出力制御部は、前記移動体を自動運転する場合の経路又は軌道と、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道とを含む出力情報、及び、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いるか否かを確認するメッセージを前記出力部に出力する。前記生成部は、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いる場合、前記移動体を手動運転する場合の経路又は軌道に基づいて前記自動運転制御情報を再生成する。前記動力制御部は、再生成された前記自動運転制御情報により前記動力部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の移動体の例を示す図。
図2】第1実施形態の移動体の機能構成の例を示す図。
図3】第1実施形態の処理部の動作例を説明するための図。
図4】第1実施形態の運転行動の差異を判定する処理の例を説明するための図。
図5】第1実施形態の運転行動の差異を判定する処理の例を示すフローチャート。
図6】第1実施形態の軌道の差異を判定する処理の例を説明するための図。
図7】第1実施形態の軌道の差異を判定する処理の例を示すフローチャート。
図8】ステップS22の処理の例を示すフローチャート。
図9】第1実施形態の軌道の差異を判定するネットワークの構成例を示す図。
図10】第1実施形態の出力情報の例1を示す図。
図11】第1実施形態の出力情報の例2を示す図。
図12】第1実施形態の出力情報の例3を示す図。
図13】第1実施形態の出力情報の例4を示す図。
図14】第1実施形態の出力情報の例5を示す図。
図15】第1実施形態の出力情報の例6を示す図。
図16】第2実施形態の処理部の動作例を説明するための図。
図17】第1及び第2実施形態の運転制御装置の主要部のハードウェア構成の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、運転制御装置、運転制御方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態の運転制御装置は、例えば移動体に搭載される。
【0010】
[移動体の例]
図1は第1実施形態の移動体10の例を示す図である。
【0011】
移動体10は、運転制御装置20、出力部10A、センサ10B、センサ10C、動力制御部10G及び動力部10Hを備える。
【0012】
移動体10は任意でよい。移動体10は、例えば車両、ドローン、船舶、台車及び自律移動ロボット等である。車両は、例えば自動二輪車、自動四輪車及び自転車等である。第1実施形態の移動体10は、人による運転操作を介する手動運転による走行と、人による運転操作を介さない自動運転による走行(自律走行)と、が可能な移動体である。
【0013】
運転制御装置20は、例えばECU(Electronic Control Unit)として構成される。
【0014】
なお、運転制御装置20は、移動体10に搭載された形態に限定されない。運転制御装置20は、静止物に搭載されていてもよい。静止物は、例えば地面に固定された物等の移動不可能な物である。地面に固定された静止物は、例えばガードレール、ポール、駐車車両及び道路標識等である。また例えば、静止物は、地面に対して静止した状態の物である。また、運転制御装置20は、クラウドシステム上で処理を実行するクラウドサーバに搭載されていてもよい。
【0015】
動力部10Hは、移動体10に搭載された駆動デバイスである。動力部10Hは、例えば、エンジン、モータ及び車輪等である。
【0016】
動力制御部10Gは、動力部10Hの駆動制御をする。
【0017】
出力部10Aは情報を出力する。出力部10Aは、例えば、情報を送信する通信機能、情報を表示する表示機能、及び、情報を示す音を出力する音出力機能の少なくとも1つを備える。第1実施形態では、出力部10Aが、通信部10D、ディスプレイ10E及びスピーカ10Fを備えた構成を例にして説明する。
【0018】
通信部10Dは、情報を他の装置へ送信する。例えば、通信部10Dは、通信回線を介して情報を他の装置へ送信する。ディスプレイ10Eは、情報を表示する。ディスプレイ10Eは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、投影装置及びライト等である。スピーカ10Fは、情報を示す音を出力する。
【0019】
センサ10Bは移動体10の周辺の情報を取得するセンサである。例えば単眼カメラ、ステレオカメラ、魚眼カメラ及び赤外線カメラ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等である。ここでは、センサ10Bの一例としてカメラを用いて説明する。カメラ(10B)の数は任意でよい。また、撮像される画像はRGBの3チャネルで構成されたカラー画像であってもよく、グレースケールで表現された1チャネルのモノクロ画像であってもよい。カメラ(10B)は、移動体10周辺の時系列の画像を撮像する。カメラ(10B)は、例えば移動体10の周辺を時系列に撮像することにより、時系列の画像を撮像する。移動体10の周辺は、例えば当該移動体10から予め定められた範囲内の領域である。この範囲は、例えばカメラ(10B)の撮像可能な範囲である。
【0020】
第1実施形態では、カメラ(10B)が、移動体10の前方を撮影方向として含むように設置されている場合を例にして説明する。すなわち、第1実施形態では、カメラ(10B)は、移動体10の前方を時系列に撮像する。
【0021】
センサ10Cは、移動体10の状態を測定するセンサである。測定情報は、例えば移動体10の速度、並びに、移動体10のハンドルの舵角を含む。センサ10Cは、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)、速度センサ及び舵角センサ等である。IMUは、移動体10の三軸加速度及び三軸角速度を含む測定情報を測定する。速度センサは、タイヤの回転量から速度を測定する。舵角センサは、移動体10のハンドルの舵角を測定する。
【0022】
次に、第1実施形態の移動体10の機能構成の例について詳細に説明する。
【0023】
[機能構成の例]
図2は第1実施形態の移動体10の機能構成の例を示す図である。第1実施形態の説明では、移動体10が車両である場合を例にして説明する。
【0024】
移動体10は、出力部10A、センサ10B及び10C、動力部10H、並びに、運転制御装置20を備える。出力部10Aは、通信部10D、ディスプレイ10E及びスピーカ10Fを備える。運転制御装置20は、動力制御部10G、処理部20A及び記憶部20Bを備える。
【0025】
処理部20A、記憶部20B、出力部10A、センサ10B、センサ10C及び動力制御部10Gは、バス10Iを介して接続されている。動力部10Hは、動力制御部10Gに接続されている。
【0026】
なお、出力部10A(通信部10D、ディスプレイ10E及びスピーカ10F)、センサ10B、センサ10C、動力制御部10G及び記憶部20Bは、ネットワークを介して接続されていてもよい。接続に使用されるネットワークの通信方式は、有線方式であっても無線方式であってもよい。また、接続に使用されるネットワークは、有線方式と無線方式とを組み合わせることにより実現されていてもよい。
【0027】
記憶部20Bは情報を記憶する。記憶部20Bは、例えば半導体メモリ素子、ハードディスク及び光ディスク等である。半導体メモリ素子は、例えばRAM(Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等である。なお、記憶部20Bは、運転制御装置20の外部に設けられた記憶装置であってもよい。また、記憶部20Bは、記憶媒体であってもよい。具体的には、記憶媒体は、プログラムや各種情報を、LAN(Local Area Network)やインターネットなどを介してダウンロードして記憶または一時記憶したものであってもよい。また、記憶部20Bを、複数の記憶媒体から構成してもよい。
【0028】
処理部20Aは、生成部21、予測部22、判定部23及び出力制御部24を備える。処理部20A(生成部21、予測部22、判定部23及び出力制御部24)は、例えば1又は複数のプロセッサにより実現される。
【0029】
処理部20Aは、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現されてもよい。また例えば、処理部20Aは、専用のIC(Integrated Circuit)等のプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現されてもよい。また例えば、処理部20Aは、ソフトウェア及びハードウェアを併用することにより実現されてもよい。
【0030】
なお、実施形態において用いられる「プロセッサ」の文言は、例えば、CPU、GPU(Graphical Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイスを含む。プログラマブル論理デバイスは、例えば単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等を含む。
【0031】
プロセッサは、記憶部20Bに保存されたプログラムを読み出し実行することで、処理部20Aを実現する。なお、記憶部20Bにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成してもよい。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで、処理部20Aを実現する。
【0032】
なお、動力制御部10Gも、処理部20Aにより実現されていてもよい。
【0033】
次に、処理部20Aの各機能について説明する。
【0034】
図3は第1実施形態の処理部20Aの動作例を説明するための図である。生成部21は、センサ10B及び10Cからセンサデータを取得し、通信部10D及び記憶部20D等から地図データを取得する。
【0035】
地図データには、例えば走行可能範囲,参照経路(走行を推奨する車線の中央に引かれた線)、交通ルール(道路標示、道路標識、法定速度及び信号機の位置)、及び、構造物等が含まれる。
【0036】
センサデータには,例えば移動体10の状態(位置、姿勢、速度及び加速度)、障害物(歩行者及び車両等)の予測軌道、及び、信号機の信号の状態などが含まれる。
【0037】
生成部21は、自動運転によって移動体の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する。自動運転制御情報には、例えば追い越し、追従及び停止等の運転行動、軌道並びに経路の少なくとも1つが含まれる。軌道は、移動体10の位置及び姿勢を示す情報(例えばウェイポイント)の列を、時刻情報をパラメータとして表したデータである。経路は、軌道から時刻情報を削除したデータである。
【0038】
運転行動を含む自動運転制御情報は、例えば非特許文献1の方法により生成できる。また、軌道を含む自動運転制御情報は、例えば非特許文献2の方法により生成できる。生成部21は、生成された自動運転制御情報を動力制御部10Gに入力する。
【0039】
予測部22は、自動運転中に、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体10の挙動を予測する。自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体10の挙動を予測する方法の例については、第2実施形態で説明する。
【0040】
判定部23は、自動運転制御情報により自動運転制御される移動体10の挙動と、手動運転に切り替えた場合の移動体10の挙動との差異を判定する。判定部は、例えば移動体10の運転行動、移動体10が走行する経路、及び、移動体10の軌道の少なくとも1つに基づいて差異を判定する。
【0041】
出力制御部24は、出力部10Aに出力される出力情報を出力制御する。出力情報には、例えば障害物、走行可能範囲、道路標識、道路表示及び運転行動(例えば停止)などが含まれる。出力制御部24は、例えば判定部23により差異があると判定された場合、移動体10の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促すメッセージ、及び、手動運転への切り替えを推奨するメッセージなどを含む出力情報を、出力部10Aに出力する。
【0042】
図4は第1実施形態の運転行動の差異を判定する処理の例を説明するための図である。判定部23は、生成部21から、自動運転行動(例えば停止)を示す情報を受け付け、予測部22から、手動運転行動(例えば追い越し)を示す情報を受け付ける。判定部23は、自動運転行動と手動運転行動との差異を判定し、差異のあり/なし、自動運転行動及び手動運転行動などを含む情報を、出力制御部24に入力する。出力制御部24は、手動運転の推薦、自動運転行動及び手動運転行動などを含む出力情報を出力部10Aに出力する。なお、手動運転を推薦するか否かを決定する処理は、判定部23で行ってもよいし、出力制御部24で行ってもよい。
【0043】
図5は第1実施形態の運転行動の差異を判定する処理の例を示すフローチャートである。はじめに、判定部23が、iに0を設定する(ステップS1)。次に、判定部23が、bhv_a≠bhv_hであるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、bhv_aは、生成部21により生成された自動運転の運転行動を示す。bhv_hは、ステップS2の判定時の状況で、予測部22により予測された手動運転の運転行動を示す。
【0044】
bhv_a≠bhv_hである場合(ステップS2、Yes)、判定部23は、dist_a<dist_hであるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、dist_aは、生成部21により生成された自動運転が行われた場合の移動距離を示す。dist_hは、ステップS3の判定時の状況で、予測部22により予測された手動運転が行われた場合の移動距離を示す。
【0045】
dist_a<dist_hである場合(ステップS3,Yes)、判定部23は、iをインクリメント(1加算)し(ステップS4)、処理はステップS6に進む。
【0046】
bhv_a≠bhv_hでない場合(ステップS2、No)、または、dist_a<dist_hでない場合(ステップS3、No)、すなわちbhv_a=bhv_hの場合、または、dist_a≧dist_hの場合、判定部23は、iに0を設定し(ステップS5)、ステップS6の処理に進む。
【0047】
次に、判定部23は、i>i_maxであるか否かを判定する(ステップS6)。ここで、i_maxは、iの値を判定する閾値である。i>i_maxである場合(ステップS6、Yes)、判定部23は運転行動に差異があると判定し(ステップS7)、i≦i_maxである場合(ステップS6、No)、判定部23は運転行動に差異がないと判定する(ステップS8)。
【0048】
すなわち、判定部23は、運転行動の違い(bhv_a≠bhv_h)、及び、移動距離の違い(dist_a<dist_h)の2つの条件をi_max回より多い回数、連続して満たした場合に、運転行動に差異があると判定する。i_maxが設定されている理由は、手動または自動の運転行動の判定の揺らぎを考慮しないためである。具体的には、手動または自動の運転行動の判定が毎回の判定で異なる場合、手動運転の推薦結果(推薦する/推薦しない)が頻繁に変化する(判定が揺らぐ)。この揺らぎを抑えるために、i_max回より多く連続して運転行動の差が生じた場合にのみ、運転行動の差があると判定する。
【0049】
次に、判定部23は、判定処理の終了指令を取得したか否かを判定する(ステップS9)。判定処理の終了指令は、例えば自動運転から手動運転への切り替えを推薦する出力情報(例えば、表示情報及び音声案内等)を必要としなくなったユーザからの操作入力などに応じて取得される。終了指令を取得した場合(ステップS9,Yes)、処理は終了する。終了指令を取得していない場合(ステップS9,No)、処理はステップS2に戻る。
【0050】
図6は第1実施形態の軌道の差異を判定する処理の例を説明するための図である。判定部23は、生成部21から、自動運転軌道を示す情報を受け付け、予測部22から、手動運転軌道を示す情報を受け付ける。判定部23は、自動運転軌道と手動運転軌道との差異を判定し、差異のあり/なし、自動運転軌道及び手動運転軌道などを含む情報を、出力制御部24に入力する。出力制御部24は、手動運転の推薦、自動運転軌道及び手動運転軌道などを含む出力情報を出力部10Aに出力する。
【0051】
図7は第1実施形態の軌道の差異を判定する処理の例を示すフローチャートである。はじめに、判定部23が、iに0を設定する(ステップS21)。
【0052】
次に、判定部23が、d_trj=trj_a-trj_hを算出する(ステップS22)。ここで、trj_aは、生成部21により生成された自動運転が行われた場合の移動体10の軌道を示す。trj_hは、ステップS22の処理時の状況で、予測部22により予測された手動運転が行われた場合の移動体10の軌道を示す。d_trjは、自動運転が行われた場合の移動体10の軌道と、手動運転が行われた場合の移動体10の軌道との差を示す。なお、ステップS22の処理の詳細は図8を参照して後述する。
【0053】
次に、判定部23が、d_trj>d_maxであるか否かを判定する(ステップS23)。ここで、d_maxは、d_trjの値を判定する閾値である。
【0054】
d_trj>d_maxである場合(ステップS23、Yes)、判定部23は、dist_a<dist_hであるか否かを判定する(ステップS24)。ここで、dist_aは、生成部21により生成された自動運転が行われた場合の移動距離を示す。dist_hは、ステップS24の判定時の状況で、予測部22により予測された手動運転が行われた場合の移動距離を示す。
【0055】
dist_a<dist_hである場合(ステップS24,Yes)、判定部23は、iをインクリメント(1加算)し(ステップS25)、処理はステップS27に進む。
【0056】
d_trj>d_maxでない場合(ステップS23,No)、または、dist_a<dist_hでない場合(ステップS24、No)、判定部23は、iに0を設定し(ステップS5)、ステップS27の処理に進む。
【0057】
次に、判定部23は、i>i_maxであるか否かを判定する(ステップS27)。ここで、i_maxは、iの値を判定する閾値である。i>i_maxである場合(ステップS27、Yes)、判定部23は運転行動に差異があると判定し(ステップS28)、i≦i_maxである場合(ステップS27、No)、判定部23は運転行動に差異がないと判定する(ステップS29)。
【0058】
すなわち、判定部23は、2つの条件(軌道の差分が閾値より大きく(d_trj>d_max)、かつ、手動運転の移動距離よりも自動運転の移動距離が小さい(dist_a<dist_h))をi_max回より多い回数、連続して満たした場合に、軌道に差異があると判定する。
【0059】
次に、判定部23は、判定処理の終了指令を取得したか否かを判定する(ステップS9)。判定処理の終了指令は、例えば自動運転から手動運転への切り替えを推薦する出力情報(例えば、表示情報及び音声案内等)を必要としなくなったユーザからの操作入力などに応じて取得される。終了指令を取得した場合(ステップS30,Yes)、処理は終了する。終了指令を取得していない場合(ステップS30,No)、処理はステップS22に戻る。
【0060】
図8はステップS22の処理の例を示すフローチャートである。はじめに、判定部23が、iに0を設定する(ステップS41)。
【0061】
次に、判定部23が、wp_aiに自動運転軌道のi番目のウェイポイントを設定する(ステップS42)。自動運転軌道のウェイポイントは、例えばwp=(x,y,θ,v)により表される。ここで、x及びyは、移動体10の座標を示す。θは、移動体10の姿勢を表す角度(例えばステアリング)を示す。vは、移動体10の速度を示す。
【0062】
次に、判定部23が、wp_hiに手動運転軌道のi番目のウェイポイントを設定する(ステップS43)。
【0063】
次に、判定部23が、wp_aiとwp_hiとの差d_i=wp_ai-wp_hiを算出する(ステップS44)。差d_iは、wp_aiに含まれるx,y,θ及びvの少なくとも1つと、wp_hiに含まれるx,y,θ及びvの少なくとも1つとの差をとることにより判定される。次に、判定部23が、d_trj[i]にd_iを設定する(ステップS45)。次に、判定部23は、iをインクリメント(1加算)する(ステップS46)。
【0064】
次に、判定部23は、iが軌道の終端d_trj[j]を示すjよりも大きいか否かを判定する(ステップS47)。iが軌道の終端d_trj[j]を示すj以下の場合(ステップS47,No)、処理はステップS42に戻る。iが軌道の終端d_trj[j]を示すjよりも大きい場合(ステップS47,Yes)、処理を終了する。
【0065】
上述のステップS22のd_trjは、Σd_trj[i]により算出される。なお、上述の図7及び図8のフローチャートの処理は、移動体10の軌道を、移動体10の経路に置き換えて行われてもよい。また、差異判定に軌道を用いて、時刻情報を含めない走行軌跡(すなわち経路)として判定結果を利用してもよい。
【0066】
また、判定部23は、機械学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて、自動運転が継続される場合の軌道と、自動運転から手動運転に切り替えられた場合の予測軌道との差異を判定してもよい。
【0067】
図9は第1実施形態の軌道の差異を判定するネットワークの構成例を示す図である。判定部23は、例えば特徴抽出ネットワーク101a及び101b、並びに、差異判定ネットワーク102を用いて、自動運転の軌道と、手動運転の予測軌道との差異を判定する。特徴抽出ネットワーク101aは、自動運転の軌道の特徴を抽出するネットワークである。特徴抽出ネットワーク101bは、手動運転の予測軌道の特徴を抽出するネットワークである。差異判定ネットワーク102は、特徴抽出ネットワーク101a及び101bにより抽出された両特徴に差異があるか否かを判定するネットワークである。ここでの特徴とは、自動運転の軌道と手動運転の予測軌道との差異の判定に必要なデータである。特徴を示すデータは、そのデータの定義を含め、特徴抽出ネットワーク101a及び101bにより自動で抽出される。
【0068】
なお、判定の対象が軌道ではなく経路である場合も、軌道の場合と同様の機械学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて判定することができる。
【0069】
[出力情報の例]
図10は第1実施形態の出力情報の例1を示す図である。図10は、手動運転の場合は通行できるにもかかわらず、障害物200と自車(移動体10)との安全マージンにより自動運転では通行できない(停止する)と判定された場合の出力情報の例を示す。また、図10の出力情報では、運転行動(停止します)を示す情報201が、例えば点滅させる、赤字にする、及び、太字にする等の方法で強調表示されている。また、図10の出力情報では、手動運転を薦める理由を搭乗者に伝達するメッセージ202を含む。なお、メッセージ202は、音声により出力されてもよいし、表示情報により出力されてもよい。
【0070】
メッセージ202は、例えば以下の処理により出力される。まず、判定部23が、自動運転による目的地(目標地)までの所要時間と、手動運転に切り替えた場合の目的地までの所要時間とを判定する。そして、出力制御部24は、自動運転による目的地までの所要時間よりも、手動運転に切り替えた場合の目的地までの所要時間の方が短い場合、手動運転の方が目的地に早く到達することを示すメッセージ202を出力部10Aに出力する。
【0071】
図10のような状況下では、例えば自動運転でも制御できるように、過度に安全性が担保された移動体10が、周囲の車両(例えば前方又は後方の手動運転中の車両等)と同調せず、交通流を乱す可能性がある。上述のメッセージ202が出力されることによって、自動運転から手動運転へ切り替えを促すことにより、安全に自動運転制御された移動体が、交通流を乱さないようにすることができる。
【0072】
なお、出力制御部24は、自動運転制御される移動体10の運転行動が停止であり、手動運転に切り替えた場合の移動体10の運転行動が停止以外の場合(停止せずに進行できる運転行動の場合)、障害物200と移動体との間の安全マージンの設定を受け付ける出力情報を出力部10Aに出力してもよい。この場合、生成部21は、設定された安全マージンを用いて自動運転制御情報を再生成する。そして、動力制御部10Gが、再生成された自動運転制御情報により示される運転行動が停止以外の場合、再生成された自動運転制御情報により動力部10Hを制御する。
【0073】
図11は第1実施形態の出力情報の例2を示す図である。図11は、自動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(0km/h)とを示す情報203aを含む出力情報の例を示す。情報203aは、例えば赤色で表示される。自動運転の軌道(経路)が出力されることによって、移動体10の走行可能範囲が特定できる。なお、速度は終端位置のみならず、経路上の複数の位置で表示されてもよい。出力制御部24は、例えば移動体10の経路及び速度を表示情報により出力し、メッセージ202を音声により出力する。これにより自動運転が目標地(目的地)への到達が遅らせる可能性があることを、移動体10の搭乗者へ伝達し、手動運転への変更を促す。メッセージ202が出力されることによって、搭乗者が手動運転への切り替えを判断しやすくなる。
【0074】
図12は第1実施形態の出力情報の例3を示す図である。図12は、自動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(0km/h)とを示す情報203a、及び、手動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(30km/h)とを示す情報203b、を含む出力情報の例を示す。情報203aは、例えば赤色で表示され、情報203bは、例えば緑色で表示される。また、情報203a及び203bの少なくとも一方を、例えば点滅させる等によって強調表示してもよい。自動運転の軌道と、手動運転の軌道とを搭乗者に提示することで、搭乗者が手動運転への切り替えを判断しやすくすることができる。また、出力制御部24は、例えば自動運転経路(赤の経路)ではなく、手動運転経路(緑の経路)を手動運転で走行することを勧めるメッセージ202を表示する。また例えば、出力制御部24は、手動運転を継続するか、自動運転に切り替えるかを選択させる選択肢を出力し、搭乗者から選択を受け付ける出力情報を出力してもよい。
【0075】
図13は第1実施形態の出力情報の例4を示す図である。図14は第1実施形態の出力情報の例5を示す図である。図15は第1実施形態の出力情報の例6を示す図である。図10から12では画像に認識結果および自動運転軌道および手動運転軌道のCGを重層したが、図13から15はCGのみを表示している。なお、画像とCGを重層するか否かは開発コストに応じて決定され,運転の状況(停止や追い越しなど)とは無関係である。図13乃至図14は、自動運転を継続した場合、自動運転経路の一部が白い実線204(はみ出し禁止線)を超えてしまうため、自動運転を継続できない状況における出力情報の例を示す。
【0076】
図13の例では、運転行動(停止します)を示す情報201を含む出力情報が出力されている。図14の例では、自動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(0km/h)とを示す情報203aを含む出力情報が出力されている。図13及び図14は、手動運転経路が、自動運転では実行されない前提で出力される出力情報の例である。
【0077】
一方、図15の例は、自動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(0km/h)とを示す情報203a、及び、手動運転の軌道(経路)と、終端位置での速度(40km/h)とを示す情報203b、を含む出力情報を出力し、メッセージ202によって、どちらの経路を自動運転するか搭乗者に質問している。図15のように、承認されれば、自動運転で手動運転経路を走行できように制御してもよい。具体的には、生成部21は、移動体10を手動運転する場合の経路又は軌道を自動運転で用いる場合、移動体10を手動運転する場合の経路又は軌道に基づいて自動運転制御情報を再生成する。そして、動力制御部10Gが、再生成された自動運転制御情報により動力部10Hを制御する。
【0078】
なお、出力制御部24は、上述の図10乃至図15で示した出力情報を出力するときに、自動運転の運転行動を示す情報201と、移動体10を自動運転する場合の速度、経路又は軌道(例えば上述の情報203a)と、移動体10を手動運転する場合の速度、経路又は軌道(例えば上述の情報203b)と、のうち少なくとも1つを強調して出力してもよい。
【0079】
以上、説明したように第1実施形態の運転制御装置20では、生成部21は、自動運転によって移動体10の挙動を制御する自動運転制御情報を生成する。予測部22は、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動を予測する。判定部23は、自動運転制御情報により自動運転制御される前記移動体の挙動と、手動運転に切り替えた場合の移動体の挙動との差異を判定する。出力制御部24は、当該差異がある場合、移動体10の運転者に自動運転又は手動運転の選択を促す情報を出力部10Aに出力する。動力制御部10Gは、自動運転又は手動運転により移動体10の動力部10Hを制御する。
【0080】
これにより第1実施形態の運転制御装置20によれば、安全に自動運転制御された移動体10によって交通流が乱されないようにすることができる。具体的には、判定部23が、手動運転に切り替えた場合に予測される移動体10の挙動と、自動運転制御を継続した場合の移動体10の挙動との差異を判定できるので、手動運転の効率の方が良い場合に搭乗者に手動運転を促すことができる。移動体10の自動運転中であっても、手動運転を適宜取り入れることを可能にすることで、移動のボトルネックを解消し、交通流を乱さない効率的な運転が可能になる。
【0081】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の説明については省略し、第1実施形態と異なる箇所について説明する。
【0082】
第2実施形態では、予測部22が手動運転を模倣学習し、その模倣学習結果を生成部21による自動運転制御情報の生成処理に用いる場合について説明する。
【0083】
図16は第2実施形態の処理部20A-2の動作例を説明するための図である。模倣学習される手動運転は、運転行動(例えば追い越しなど)、軌道及び経路の少なくとも1つを含む。
【0084】
第2実施形態の予測部22は、移動体10の運転者による手動運転を教師データとして用いた模倣学習によって、自動運転から手動運転に切り替えた場合の移動体10の挙動を予測する。模倣学習の例としては、例えば、非特許文献3に記載されたChauffeurNet内のAgentRNNが該当する。予測部22は、例えばAgentRNNを用いることによって、学習を通じて教師データの運転軌道に近い軌道を出力できるようになる。
【0085】
第2実施形態では、予測部22が手動運転を模倣学習するが、自動運転が定める安全基準を満たさない手動運転を模倣する可能性もある。そのため、第2実施形態の生成部21は、模倣学習により得られた手動運転を示す模倣学習結果を、安全基準の観点から修正することによって、自動運転制御情報を生成する。具体的には、生成部21は、模倣学習結果として得られた手動運転を修正する修正処理を実行する。
【0086】
修正処理では、手動運転が安全基準を満たしているか否かがチェックされる。例えば、修正処理では、手動運転が交通ルール(例えば道路標識及び法定速度など)を違反していないかチェックされる。また、手動運転の軌道をチェックされるときには、移動体10の加速度及び角加速度等が安全性を満たしているかもチェックされる。
【0087】
生成部21は、手動運転が安全基準を満たしていない場合、当該手動運転を修正する。具体的には、生成部21は、模倣学習結果に含まれる次点の手動運転を使用したり、手動運転軌道のウェイポイントの速度を変更したり、当該手動運転に応じた自動運転をアルゴリズムベースで生成し直したりする。
【0088】
なお、生成部21による自動運転制御情報の生成処理を流用し、当該生成処理の内部で用いるパラメータを変更することで、手動運転を模擬することも可能である。ここでのパラメータとは、軌道候補の安全チェックに用いるパラメータを指す。当該パラメータには、例えば、軌道と障害物との最小距離、軌道上を自車が走行した場合の最大加速度、及び、最大角速度などがある。生成部21は、自動運転の場合、事故の可能性を最小限にするために、パラメータに大きな安全率をかけるが、手動運転を模倣する場合には、この安全率を小さくする。
【0089】
最後に、第1及び第2実施形態の運転制御装置20の主要部のハードウェア構成の例について説明する。
【0090】
[ハードウェア構成の例]
図17は第1及び第2実施形態の運転制御装置20のハードウェア構成の例を示す図である。運転制御装置20は、制御装置301、主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306を備える。主記憶装置302、補助記憶装置303、表示装置304、入力装置305及び通信装置306は、バス310を介して接続されている。
【0091】
なお、運転制御装置20は、表示装置304、入力装置305及び通信装置306は備えていなくてもよい。例えば、運転制御装置20が他の装置と接続される場合、当該他の装置の表示機能、入力機能及び通信機能を利用してもよい。
【0092】
制御装置301は補助記憶装置303から主記憶装置302に読み出されたプログラムを実行する。制御装置301は、例えばCPU等の1以上のプロセッサである。主記憶装置302はROM(Read Only Memory)、及び、RAM等のメモリである。補助記憶装置303はメモリカード、及び、HDD(Hard Disk Drive)等である。
【0093】
表示装置304は情報を表示する。表示装置304は、例えば液晶ディスプレイである。入力装置305は、情報の入力を受け付ける。入力装置305は、例えばハードウェアキー等である。なお表示装置304及び入力装置305は、表示機能と入力機能とを兼ねる液晶タッチパネル等でもよい。通信装置306は他の装置と通信する。
【0094】
運転制御装置20で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、メモリカード、CD-R、及び、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供される。
【0095】
また運転制御装置20で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また運転制御装置20が実行するプログラムを、ダウンロードさせずにインターネット等のネットワーク経由で提供するように構成してもよい。
【0096】
また運転制御装置20で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0097】
運転制御装置20で実行されるプログラムは、運転制御装置20の機能のうち、プログラムにより実現可能な機能を含むモジュール構成となっている。
【0098】
プログラムにより実現される機能は、制御装置301が補助記憶装置303等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、主記憶装置302にロードされる。すなわちプログラムにより実現される機能は、主記憶装置302上に生成される。
【0099】
なお運転制御装置20の機能の一部を、IC等のハードウェアにより実現してもよい。ICは、例えば専用の処理を実行するプロセッサである。
【0100】
また複数のプロセッサを用いて各機能を実現する場合、各プロセッサは、各機能のうち1つを実現してもよいし、各機能のうち2つ以上を実現してもよい。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
10 移動体
10A 出力部
10B センサ
10C センサ
10D 通信部
10E ディスプレイ
10F スピーカ
10G 動力制御部
10H 動力部
10I バス
20 運転制御装置
21 生成部
22 予測部
23 判定部
24 出力制御部
301 制御装置
302 主記憶装置
303 補助記憶装置
304 表示装置
305 入力装置
306 通信装置
310 バス
図1
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