(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20231010BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231010BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2020156675
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉間 一臣
(72)【発明者】
【氏名】草間 知枝
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0801598(KR,B1)
【文献】特開平11-003717(JP,A)
【文献】特開2004-241265(JP,A)
【文献】特開2002-190319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体上に設けられており第1空隙を有する正極活物質含有層とを含む正極と、
負極集電体と、前記負極集電体上に設けられており第2空隙を有する負極活物質含有層とを含む負極と、
ゲルポリマー部分と液体部分とを含み、前記ゲルポリマー部分のゲル分率が20%以上80%以下の範囲内にある電解質と
を具備し、
前記電解質の少なくとも一部は前記正極活物質含有層の前記第1空隙および前記負極活物質含有層の前記第2空隙に保持されており、
前記正極活物質含有層の前記第1空隙における前記電解質の前記ゲルポリマー部分の割合に対する前記液体部分の割合の第1比率r1は0.01≦r1≦10の範囲内にあり、
前記負極活物質含有層の前記第2空隙における前記電解質の前記ゲルポリマー部分の割合に対する前記液体部分の割合の第2比率r2は0.01≦r2≦10の範囲内にあ
り、前記第1比率r1と、前記第2比率r2とが、r1<r2の関係を満たす、二次電池。
【請求項2】
前記正極活物質含有層において、前記正極活物質含有層と前記正極集電体との第1界面側における前記電解質の前記液体部分の量の方が、前記正極活物質含有層の表面側における前記液体部分の量より多く、前記負極活物質含有層において、前記負極活物質含有層と前記負極集電体との第2界面側における前記電解質の前記液体部分の量の方が、前記負極活物質含有層の表面側における前記液体部分の量より多い、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記ゲルポリマー部分のゲル分率が50%以下である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記ゲルポリマー部分のゲル分率が30%以上である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の二次電池を具備する電池パック。
【請求項6】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項
5に記載の電池パック。
【請求項7】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項
5又は6に記載の電池パック。
【請求項8】
請求項
5-7の何れか1項に記載の電池パックを具備する車両。
【請求項9】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項
8に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池や非水電解質二次電池などの二次電池の研究開発が盛んに進められている。二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両用電源、又は携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されている。特に車載用電池として、全固体型リチウムイオン二次電池が盛んに研究されており、その高い安全性が注目されている。
【0003】
全固体型リチウムイオン二次電池は、非水電解質を用いるリチウムイオン二次電池に比べて、固体電解質を用いるため発火の恐れがない。しかしながら、高容量の全固体型リチウムイオン二次電池は未だ実用化されていないのが現状である。この原因の一つとして、固体電解質と活物質との間の界面抵抗が高いことが挙げられる。一方で、比較的に界面を形成しやすく、液状の非水電解質よりも熱的に安全なゲル電解質が実用化されてきたことは知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-165553公報
【文献】特開2015-190847号公報
【文献】国際公開第2018/123458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、寿命性能および出力性能に優れた二次電池および電池パック、並びにこの電池パックを含んだ車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によると、正極と負極と電解質とを具備する二次電池が提供される。正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられており第1空隙を有する正極活物質含有層とを含む。負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられており第2空隙を有する負極活物質含有層とを含む。電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含み、ゲルポリマー部分のゲル分率が20%以上80%以下の範囲内にある。電解質の少なくとも一部は、正極活物質含有層の第1空隙および負極活物質含有層の第2空隙に保持されている。正極活物質含有層の第1空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第1比率r1は、0.01≦r1≦10の範囲内にある。負極活物質含有層の第2空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第2比率r2は、0.01≦r2≦10の範囲内にある。第1比率r1と、前記第2比率r2とは、r1<r2の関係を満たす。
【0007】
他の実施形態によると、上記実施形態に係る二次電池を含む電池パックが提供される。
【0008】
さらに他の実施形態によると、上記実施形態に係る電池パックを具備する車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
【
図2】
図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
【
図4】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
【
図5】
図4に示す二次電池のC部を拡大した断面図。
【
図6】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
【
図7】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
【
図8】
図7に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
【
図9】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
【
図10】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
非水電解質を用いたリチウムイオン二次電池を含め、非水溶媒を含んだ非水電解質を用いる二次電池では、正極表面での非水溶媒の酸化分解反応が起こり得る。また、正極表面での酸化分解反応により生じたプロトンや水が負極表面で還元されて、ガス発生が起こり得る。これら副反応に起因して、充放電とともに電池性能が劣化したり安全性が低下したりし得る。さらに、このような副反応は高温環境下で特に顕著になり、高温での電池の使用を妨げる要因となっている。
【0011】
電解質溶液をゲル化させることで、正極表面での反応性を低減できるとともに、正極での反応により生じた反応生成物の拡散を妨げて負極への物質輸送を抑制できる。そのため、ゲル電解質を用いることにより上述した副反応を抑えられるため、寿命性能や安全性を改善できる。
【0012】
しかしながらゲル電解質は、液状の非水電解質と比較するとイオン伝導度が低い。そのため、ゲル電解質の使用は、二次電池の入出力性能を低下させ得る。
【0013】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と負極と電解質とを具備する。正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられている正極活物質含有層とを含む。正極活物質含有層は、第1空隙を有する。負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられている負極活物質含有層とを含む。負極活物質含有層は、第2空隙を有する。電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含む。電解質のゲルポリマー部分のゲル分率は、20%以上80%以下の範囲内にある。電解質の少なくとも一部は、正極活物質含有層の第1空隙および負極活物質含有層の第2空隙に保持されている。正極活物質含有層の第1空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第1比率r1は、0.01≦r1≦10の範囲内にある。負極活物質含有層の第2空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第2比率r2は、0.01≦r2≦10の範囲内にある。
【0015】
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。負極、正極及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、セパレータにも保持され得る。つまり電解質は、電極群に保持され得る。
【0016】
また、第1の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0017】
さらに、第1の実施形態に係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0018】
第1の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0019】
係る二次電池が含む電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含んでいる。ゲルポリマー部分は、ゲル状非水電解質を含む。電解質のゲルポリマー部分を、ゲル電解質と呼ぶことがある。液体部分は、例えば、後述する液状非水電解質を含む。電解質の液体部分を、電解液と呼ぶことがある。このような電解質を含んでいる二次電池では、ゲルポリマー部分による正極および負極での副反応を抑制する効果が得られると同時に、液体部分による優れたリチウムイオン伝導性が得られる。
【0020】
後述するとおり、ゲルポリマー部分としてのゲル状非水電解質は、例えば、液状非水電解質と高分子材料とを複合化して調製される。ゲルポリマー部分には、高分子材料が架橋して成るゲルの部分と、電解液の部分とが含まれる。ゲルポリマー部分におけるゲルの部分の比率、即ちゲル分率は、20%以上80%以下の範囲内にある。ゲルポリマー部分のゲル分率が20%以上であると、正極における副反応を抑制する効果が得られ、ひいては負極での副反応を引き起こす反応物を低減できるため、負極における副反応を抑制する効果も得られる。そのため、ゲル分率が20%以上であることで、二次電池の寿命性能や高温耐久性を高くすることができる。ゲル分率が80%以下であれば、ゲルポリマー部分における電気抵抗の上昇を抑えることができるとともに、ゲルポリマー部分におけるリチウムイオンの拡散が妨げられない。そのため、ゲル分率が80%以下であることで、二次電池の入出力性能を高く維持することができる。
【0021】
また、ゲルポリマー部分のゲル分率が20%以上であることで、電解質内でゲルポリマー部分で構成される領域と液体部分で構成される領域とを区別することが容易である。そのため、電極群中のゲルポリマー部分と液体部分の分布を調整できる。
【0022】
例えば、正極活物質含有層において、正極活物質含有層と正極集電体との第1界面側における電解質の液体部分の量の方が、正極活物質含有層の表面側における液体部分の量より多いことが好ましい。同様に、負極活物質含有層において、負極活物質含有層と負極集電体側との第2界面側における電解質の液体部分の量の方が、負極活物質含有層の表面側における液体部分の量より多いことが好ましい。言い換えると、正極および負極のそれぞれにおいて、集電体付近では電解質の液体部分の方が多く、電極活物質の表面(電極表面)ではゲルポリマー部分の方が多いことが好ましい。このような分布は、電極内部よりも電極表面にゲルポリマー部分が偏っている分布とも言える。電解質がこのように分布していることで、集電体側の電極内部の電気抵抗を低く抑えつつ、電極表面にて副反応の反応物となる物質の拡散を抑制できる。後者については、具体的には、正極表面では副反応により生じた反応物質の負極への移動を阻害でき、負極表面では当該反応物質の到達を抑制できる。そのため、このような分布により、二次電池の出力性能を高く維持しつつ、寿命性能を向上できる。
【0023】
ここで、正極活物質含有層のうち、第1界面と交差する厚さ方向に沿って第1界面側の半分と残りの半分とを比較したときに、前者に含まれている電解質の液体部分の方が多い状態にあり得る。同様に、負極活物質含有層のうち、第2界面と交差する厚さ方向に沿って第2界面側の半分と残りの半分とを比較したときに、前者に含まれている電解質の液体部分の方が多い状態にあり得る。
【0024】
正極活物質含有層が有する第1空隙のうち、電解質のゲルポリマー部分が充填されている割合に対する液体部分が充填されている割合を、第1比率r1とする(r1=[第1空隙における液体部分の割合/第1空隙におけるゲルポリマー部分の割合])。第1比率r1は、0.01≦r1≦10の範囲内にある。第1比率r1の値がこの範囲内にあることで、係る二次電池は良好なサイクル性能と出力性能を示すことができる。これは、第1比率r1の値がこの範囲内にあると、正極における反応性を抑制しつつ、正極活物質含有層内のリチウムイオン拡散が十分に得られるためである。第1比率r1が0.1≦r1≦1の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
負極活物質含有層が有する第2空隙のうち、電解質のゲルポリマー部分が充填されている割合に対する液体部分が充填されている割合を、第2比率r2とする(r2=[第2空隙における液体部分の割合/第2空隙におけるゲルポリマー部分の割合])。第2比率r2は、0.01≦r2≦10の範囲内にある。第2比率r2の値がこの範囲内にあることで、係る二次電池は良好なサイクル性能と出力性能を示すことができる。第2比率r2が0.1≦r2≦1の範囲内にあることがより好ましい。
【0026】
第1比率r1と、第2比率r2とが、r1≦r2の関係を満たすことが好ましい。つまり、正極に含まれている電解液の割合が負極に含まれている電解液の割合より少ないことが好ましい。言い換えると、負極と比較して正極の方がゲルポリマー部分を多く含んでいることが好ましい。上述したとおり、正極での副反応を抑制することは、負極での副反応を抑制することにもつながる。そのため、正極におけるゲルポリマー部分の割合を多めにしつつ負極における液体部分の割合を多めにすることで、効果的に電池内の副反応を抑制すると同時に入出力性能を高くできる。
【0027】
正極活物質含有層に含まれている第1空隙の全てが、電解質のゲルポリマー部分または液体部分で充填されていることが望ましい。同様に、負極活物質含有層に含まれている第2空隙の全てが、電解質のゲルポリマー部分または液体部分で充填されていることが望ましい。このように各電極の活物質含有層の全体に亘って電解質が含浸されていることで、電極内で充放電に寄与しない部分を低減できる。
【0028】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0029】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極活物質含有層とを含む。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤とを含むことができる。
【0030】
負極活物質含有層は、1種類の負極活物質を単独で含んでもよく、負極活物質を2種類以上含んでもよい。
【0031】
例えば、負極活物質の例には、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi3O7、0≦y≦3)、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(例えば、Li4+xTi5O12、0≦x≦3)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、直方晶型(orthorhombic)チタン複合酸化物、及び単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
【0032】
上記直方晶型チタン含有複合酸化物の例として、Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σで表される化合物が挙げられる。ここで、M(I)は、Sr,Ba,Ca,Mg,Na,Cs,Rb及びKからなる群より選択される少なくとも1つである。M(II)はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Y,Fe,Co,Cr,Mn,Ni,及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦a≦6、0≦b<2、0≦c<6、0≦d<6、-0.5≦σ≦0.5である。直方晶型チタン含有複合酸化物の具体例として、Li2+aNa2Ti6O14(0≦a≦6)が挙げられる。
【0033】
上記単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LixTi1-yM1yNb2-zM2zO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M1は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M2は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LixNb2TiO7(0≦x≦5)が挙げられる。
【0034】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LixTi1-yM3y+zNb2-zO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M3は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoより選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦x<5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0035】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。あるいは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0036】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0037】
負極活物質含有層中の負極活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0038】
負極集電体には、活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。例えば、負極集電体は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。負極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する負極集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0039】
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0040】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0041】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、負極活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
【0042】
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
【0043】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0044】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0045】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLixFePO4;0<x≦1、LixFe1-yMnyPO4;0<x≦1、0<y≦1、LixCoPO4;0<x≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。
【0046】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4;0<x≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-y-zCoyMnzO2;0<x≦1、0<y<1、0<z<1、y+z<1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。
【0047】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F(0≦x≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0048】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0049】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0050】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0051】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック及び黒鉛のような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0052】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0053】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0054】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0055】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0056】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0057】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0058】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0059】
正極は、例えば、負極活物質の代わりに正極活物質を用いて、負極と同様の方法により作製することができる。
【0060】
3)電解質
電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含む。液体部分は、例えば、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される液状非水電解質を含む。ゲルポリマー部分は、例えば、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製されるゲル状非水電解質を含む。
【0061】
電解質における電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0062】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0063】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0064】
ゲル状非水電解質(ゲルポリマー部分)の調製に用いることのできる高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate;PMMA)又はこれらの混合物が含まれる。これら高分子材料は、1種類を単独で使用してもよく、複数種類を混合して使用してもよい。
【0065】
また、液状非水電解質(液体部分)及びゲル状非水電解質(ゲルポリマー部分)と共に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等をさらに用いてもよい。
【0066】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0067】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0068】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
【0069】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0070】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0071】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0072】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0073】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0074】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。
【0075】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0076】
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0077】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0078】
次に、第1の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0079】
図1は、第1の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。
図3は、
図2に示すB部をさらに拡大断面図である。
【0080】
図1乃至
図3に示す二次電池100は、
図1及び
図2に示す袋状外装部材2と、
図1に示す電極群1と、
図3に示す電解質8とを具備する。電極群1及び電解質8は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質8は、電極群1に保持されている。
【0081】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0082】
図1に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、
図2に示すように、負極3と、セパレータ4と、正極5とを含む。セパレータ4は、負極3と正極5との間に介在している。
【0083】
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図2に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
図3に示すとおり、負極活物質含有層3bには、負極活物質3dが含まれている。上述したように負極活物質含有層3bは結着剤や導電剤などといった負極活物質3d以外の材料を含むこともできるが、簡略化のため負極活物質3d以外の材料の図示を省略している。負極活物質含有層3bにおいて、負極活物質3d、結着剤、及び導電剤の間には、第2空隙3eが含まれる。
【0084】
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
図3に示すとおり、正極活物質含有層5bには、正極活物質5dが含まれている。上述したように正極活物質含有層5bは結着剤や導電剤などといった正極活物質5d以外の材料を含むこともできるが、簡略化のため正極活物質5d以外の材料の図示を省略している。正極活物質含有層5bにおいて、正極活物質5d、結着剤、及び導電剤の間には、第1空隙5eが含まれる。
【0085】
例示するセパレータ4は、合成樹脂繊維4aからなる不織布である。セパレータ4内の合成樹脂繊維4a間には、第3空隙4bが含まれる。
【0086】
電解質8は、ゲルポリマー部分8a及び液体部分8bを含む。ゲルポリマー部分8aは、部分的に正極5の正極活物質含有層5b内の第1空隙5eの一部に保持されており、部分的に負極3の負極活物質含有層3b内の第2空隙3eの一部に保持されており、部分的にセパレータ4内の第3空隙4bに保持されている。液体部分8bは、正極活物質含有層5b内の第1空隙5eの一部および負極活物質含有層3b内の第2空隙3eの一部に保持されている。つまり、正極5の正極活物質含有層5bでは、第1空隙5eの一部に電解質8のゲルポリマー部分8aが充填されており、第1空隙5eの他の一部に液体部分8bが保持されている。正極活物質含有層5bにおいて、正極活物質含有層5bと正極集電体5aとの第1界面95側の方が、セパレータ4側と比較して液体部分8bの量が多い。同様に、負極3の負極活物質含有層3bでは、第2空隙3eの一部に電解質8のゲルポリマー部分8aが充填されており、第2空隙3eの他の一部に液体部分8bが保持されている。負極活物質含有層3bにおいて、負極活物質含有層3bと負極集電体3aとの第2界面93側の方が、セパレータ4側と比較して液体部分8bの量が多い。
【0087】
図1に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、負極集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、正極端子7は、正極集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0088】
第1の実施形態に係る二次電池は、
図1及び
図2に示す構成の二次電池に限らず、例えば
図4及び
図5に示す構成の電池であってもよい。
【0089】
図4は、第1の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。
図5は、
図4に示す二次電池のC部を拡大した断面図である。
【0090】
図4及び
図5に示す二次電池100は、
図4及び
図5に示す電極群1と、
図4に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0091】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0092】
電極群1は、
図5に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、負極3と正極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0093】
電極群1は、複数の負極3を含んでいる。複数の負極3は、それぞれが、負極集電体3aと、負極集電体3aの両面に担持された負極活物質含有層3bとを備えている。また、電極群1は、複数の正極5を含んでいる。複数の正極5は、それぞれが、正極集電体5aと、正極集電体5aの両面に担持された正極活物質含有層5bとを備えている。
【0094】
各負極3の負極集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも負極活物質含有層3bが担持されていない部分3cを含む。この部分3cは、負極集電タブとして働く。
図5に示すように、負極集電タブとして働く部分3cは、正極5と重なっていない。また、複数の負極集電タブ(部分3c)は、帯状の負極端子6に電気的に接続されている。帯状の負極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0095】
また、図示しないが、各正極5の正極集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも正極活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、正極集電タブとして働く。正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)と同様に、負極3と重なっていない。また、正極集電タブは、負極集電タブ(部分3c)に対し電極群1の反対側に位置する。正極集電タブは、帯状の正極端子7に電気的に接続されている。帯状の正極端子7の先端は、負極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0096】
<製造方法>
係る二次電池を製造する方法を説明する。
【0097】
上述した方法により、正極および負極を作製する。正極および負極を用いて電極群を作製する。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させて積層させることで、積層型(スタック型)の電極群を得ることができる。或いは、正極と負極の間にセパレータが位置するように、正極と負極とセパレータとを積層させて得られた積層体を捲回することで、捲回型電極群を得ることができる。さらに、捲回体にプレス処理を施すことで、扁平形状の捲回型電極群を得ることができる。
【0098】
液状電解質を調製する。液状電解質にゲル化剤を添加することで、電解質前駆体溶液を調製する。ゲル化剤としては、例えば、上述した高分子材料を用いることができる。
【0099】
電極群に電解質前駆体溶液を含浸させる。例えば、加熱によりゲル化剤を重合化させることで、ゲル化した電解質を得る。ゲル化の際、ゲル化剤の体積収縮が多くなる条件で重合化反応を進行させた方が、ゲルポリマー部分と液体部分とがより区別された状態になりやすい。また、ゲル化剤の体積収縮率が大きい方が、電極表面に向かってゲルポリマー部分が集中しやすく、集電体側の電極内部における液体部分の充填量を多くできる。
【0100】
ゲル化剤を適宜選択することによって、得られるゲルポリマー部分のゲル分率を調整できる。例えば、架橋性が高いモノマーユニットを含んだゲル化剤を用いた方が、ゲル分率が高くなりやすい。
【0101】
上述の第1比率r1及び第2比率r2は、ゲル化剤の添加量を調整することで制御できる。ゲル化剤が多い方が、第1比率r1及び第2比率r2は小さくなる傾向がある。また、第1比率r1及び第2比率r2は、ゲル化剤の重合の度合いの影響を受ける。例えば、ゲル化剤に含まれている酸性基の量が多い方が、それぞれの値が小さくなる傾向がある。その他、各電極の作製条件や重合化反応の条件によって第1比率r1及び第2比率r2は影響される。
【0102】
電極群を外装部材に収容した状態で電解質のゲル化を行うことで、二次電池を得ることができる。或いは、ゲル化を行った後に、ゲル電解質および電解液が含浸された電極群を外装部材に収容して、二次電池を得てもよい。
【0103】
<測定方法>
二次電池に関する測定を行う方法を説明する。具体的には、電解質に含まれているゲルポリマー部分のゲル分率の測定方法、及び正極活物質含有層および負極活物質含有層のそれぞれにおける電解質のゲルポリマー部分に対する液体部分の第1比率r1及び第2比率r2を求める方法を説明する。
【0104】
測定を行う際、二次電池を放電した後、二次電池を解体する。解体は、例えば、アルゴン等の不活性雰囲気下のグローブボックス内で行う。
【0105】
(ゲル分率の測定方法)
以下の手順で電解質のゲルポリマー部分のゲル分率を測定することができる。
【0106】
解体した二次電池から、セパレータ部分のゲル電解質(電解質のゲルポリマー部分)を採取する。例えば、セパレータごとゲル電解質を採取する。セパレータを含まない電池の場合は、例えば、正極と負極との間の空間に位置するゲル電解質を採取する。
【0107】
劇物及び有機溶剤であるキシレンを110℃に加熱する。加熱したキシレンに、採取したゲル電解質の試料を24時間浸漬保持する。その後、試料を取り出し、温度100℃、真空度1.3kPa以下で24時間以上乾燥させる。
【0108】
ここで、乾燥した試料を用いて、ゲル電解質の質量Mdryを測定する。キシレンに浸漬する前の高分子ポリマー試料の質量をMwetとして、架橋度をMwetとMdryとの比であるMdry/Mwetを「ゲル分率」として表す。すなわち、ゲル電解質を溶剤で溶かした時に、溶かされずに残存する部分をゲル(架橋部分はゲルとして残る)とし、このゲル部分の質量と溶剤で溶かす前の質量との比(百分率)を「ゲル分率」として、架橋の進行の程度を評価する。
【0109】
(第1比率r1及び第2比率r2の算出方法)
二次電池を解体して、電極を取り出す。得られた電極に対し、ジエチルカーボネート等を用いることで電解質の液体部分を洗い出す。このように洗浄して得られた電極に対し、減圧乾燥を行う。
【0110】
乾燥させた電極から、約50×50mmサイズの試料を切り出す。これを折りたたんで測定セルに採り、初期圧5kPa(約0.7psia、細孔径約250μm相当)及び終止圧約6万psia(細孔径約0.003μm相当)の条件で測定を行う。
【0111】
細孔径分布の測定装置には、例えば、島津オートポア9520形を用いることができる。水銀圧入法による細孔径分布から、細孔体積と、空隙のモード径及びメディアン径とを求めることができる。
【0112】
なお、水銀圧入法の解析原理はWashburnの式(1)に基づく。
【0113】
D=-4γcosθ/P (1)式
ここで、Pは加える圧力、Dは細孔直径、γは水銀の表面張力(480dyne・cm-1)、θは水銀と細孔壁面の接触角で140°である。γ、θは定数であるからWashburnの式より、加えた圧力Pと細孔径Dとの関係が求められ、そのときの水銀侵入容積を測定することにより、細孔径とその容積分布を導くことができる。
【0114】
上記のとおり洗浄および減圧乾燥させた電極では、ゲルポリマー部分が含侵している部分には、ゲルポリマー部分が電極内に残っている。そのことから、その後、水銀圧入法により算出される空隙の体積から、単位面積当たりの電極内に含侵していた液体部分の量を求めることができる。また、その際に活物質含有層の充填率を算出することも可能である。具体的には、得られた電極に対し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面観察を行い、断面SEM像から得られる活物質含有層の膜厚から、単位面積当たりの空隙率を算出できる。そこから、先で求めた液体部分の量を引き去ることで、ゲルポリマー部分の含侵量を見積もることができる。
【0115】
以上のようにして、正極および負極のそれぞれについてゲルポリマー部分に対する液体部分の比率(液体部分/ゲルポリマー部分)を求める。こうして、正極側における第1比率r1と、負極側における第2比率r2を得ることができる。
【0116】
(ゲルポリマー部分と液体部分の分布の確認方法)
次のようにして、正極活物質含有層および負極活物質含有層における、電解質のゲルポリマー部分と液体部分の分布を確認できる。具体的には、電極活物質含有層において、活物質含有層と集電体との界面側と、活物質含有層の表面側とを比較したときに、集電体との界面側の方が液体部分の量が多いか少ないか確認できる。
【0117】
上述した第1比率r1及び第2比率r2の算出方法と同様に、二次電池を解体して取り出した電極に対し洗浄および減圧乾燥を行う。集電体に対し平行な切断面が活物質含有層の厚さ方向への中心位置に得られるように、活物質含有層を切断する。
【0118】
得られた半分サイズの活物質含有層のそれぞれから約50×50mmサイズの試料を切り出し、これら試料を用いて、上述した水銀圧入法により各々に含浸していた単位面積当たりの液体部分の量を求める。こうして集電体側の半分に含まれていた液体部分の量およびもう一方の半分に含まれていた液体部分の量を、それぞれ求めることができる。
【0119】
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と負極と電解質とを具備する。正極は、正極集電体と、その上の正極活物質含有層とを含む。正極活物質含有層は、第1空隙を有する。負極は、負極集電体と、その上の負極活物質含有層とを含む。負極活物質含有層は、第2空隙を有する。電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含む。ゲルポリマー部分のゲル分率は、20%以上80%以下である。電解質は、正極活物質含有層の第1空隙および負極活物質含有層の第2空隙に、少なくとも部分的に保持されている。正極活物質含有層の第1空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第1比率r1は、0.01≦r1≦10の範囲内にある。負極活物質含有層の第2空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第2比率r2は、0.01≦r2≦10の範囲内にある。当該二次電池は、優れた寿命性能および出力性能を示すことができる。
【0120】
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、組電池が提供される。第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0121】
第2の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0122】
次に、第2の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0123】
図6は、第2の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。
図6に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第1の実施形態に係る二次電池である。
【0124】
バスバー21は、例えば、1つの単電池100aの負極端子6と、隣に位置する単電池100bの正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、
図6の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0125】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に電気的に接続されている。
【0126】
第2の実施形態に係る組電池は、第1の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、優れた寿命性能および出力性能を示すことができる。
【0127】
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第2の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第1の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0128】
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0129】
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0130】
次に、第3の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0131】
図7は、第3の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図8は、
図7に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0132】
図7及び
図8に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0133】
図7に示す収容容器31は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、矩形型の形状を有する。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0134】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0135】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、
図8に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0136】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0137】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0138】
プリント配線基板34は、収容容器31の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板34は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0139】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0140】
サーミスタ345は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0141】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0142】
保護回路346は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
【0143】
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0144】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0145】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0146】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0147】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0148】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0149】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0150】
第3の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る二次電池又は第2の実施形態に係る組電池を備えている。従って、優れた寿命性能および出力性能を示すことができる。
【0151】
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0152】
第4の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0153】
第4の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0154】
第4の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0155】
第4の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0156】
次に、第4の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0157】
図9は、第4の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0158】
図9に示す車両400は、車両本体40と、第3の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図9に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0159】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0160】
図9では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0161】
次に、
図10を参照しながら、第4の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0162】
図10は、第4の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。
図10に示す車両400は、電気自動車である。
【0163】
図10に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0164】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、
図10に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0165】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0166】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0167】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0168】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0169】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0170】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0171】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば
図10に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0172】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0173】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0174】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0175】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0176】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0177】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0178】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0179】
第4の実施形態に係る車両は、第3の実施形態に係る電池パックを搭載している。従って、高い性能および信頼性を示すことができる。
【0180】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0181】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として一次粒子の平均粒子径が0.002mmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2複合酸化物を90質量%、導電剤として黒鉛粉末を5質量%、結着剤として5質量%のPVdFを配合して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に分散して、活物質含有層形成用のスラリーを調製した。上記の配合量は、それぞれ、正極活物質含有層の重量に対する重量である。調製したスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム合金箔(純度99.3%)の両面に塗布し、乾燥して、プレス前の正極を得た。プレス前の正極にプレスを施して、正極活物質含有層の厚さが40μmの正極を作製した。
【0182】
<負極の作製>
負極活物質として、平均粒子径0.6μm、比表面積10m2/gのLi4Ti5O12粒子と、導電剤として平均粒子径6μmの黒鉛粉末と、結着剤としてPVdFとを質量比で95:3:2となるように配合してN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に分散させた。この分散液を、ボールミル(回転数1000rpm)を用いて、2時間の攪拌時間に亘り攪拌に供してスラリーを調製した。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム合金箔(純度99.3%)の両面に塗布し、乾燥し、加熱プレス工程を経ることにより、負極を作成した。作製した負極は、片面の負極活物質含有層の厚さが59μm、電極密度が2.2g/cm3であった。また、この負極の集電体を除く負極多孔度は、35%であった。
【0183】
<電解質の調製>
プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:2の混合溶媒を調製した。次いで、この混合溶媒にLiPF6を1.2M溶解し、ゲル化剤としてポリアクリロニトリル(PAN)の高分子体を2質量%加えた。ここで、ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が30%になるような組成のゲル化剤を用いた。こうして、電解質前駆体溶液を調製した。
【0184】
<二次電池の作製>
上記で得られた正極と、厚さが20μmの不織布であるセパレータと、負極とを、正極活物質含有層と負極活物質含有層が向かい合うように、これらの間にセパレータを介在させて積層して、積層体を得た。次に、この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して電極群を作製した。これを90℃で加熱プレスすることにより、扁平型電極群を作製した。
【0185】
得られた電極群を、厚さが0.25mmのステンレスからなる薄型の金属缶に収納した。なお、この金属缶には、内圧が2気圧以上になるとガスをリークする弁が設置されていた。この金属缶に、上記電解質前駆体溶液を導入し、上記電極群に含浸させた。このように溶液を含浸させた電極群を、60℃で25時間に亘って加熱することで電解質をゲル化し、二次電池を作製した。このとき正極におけるゲルポリマー部分と液体部分との第1比率r1を0.5、負極におけるゲルポリマー部分と液体部分と第2比率r2を0.7となるように調整した。
【0186】
(実施例2)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が50%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸させた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0187】
(実施例3)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が80%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸させた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0188】
(実施例4)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が20%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸さた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0189】
(実施例5-8)
電解質前駆体溶液におけるゲル化剤の含有量を、それぞれ1質量%、3質量%、4質量%、及び5質量%に変更した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0190】
(実施例9)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.2、第2比率r2は0.7となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0191】
(実施例10)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.01、第2比率r2は0.7となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0192】
(参考例11)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は1、第2比率r2は0.7となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0193】
(参考例12)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は10、第2比率r2は0.7となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0194】
(実施例13)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.5、第2比率r2は1となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0195】
(実施例14)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.5、第2比率r2は10となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0196】
(参考例15)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.5、第2比率r2は0.5となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0197】
(参考例16)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.5、第2比率r2は0.1となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0198】
(参考例17)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.5、第2比率r2は0.01となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0199】
(参考例18)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.01、第2比率r2は0.01となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0200】
(参考例19)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は10、第2比率r2は10となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0201】
(参考例20)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は1、第2比率r2は1となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0202】
(実施例21)
ゲル化剤として、PANの代わりにゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が30%になるような組成のポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0203】
(実施例22)
ゲル化剤として、PANの代わりにゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が30%になるような組成のポリエチレンオキサイド(PEO)を用いた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0204】
(実施例23)
ゲル化剤として、PANの代わりにゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が30%になるような組成のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0205】
(比較例1)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が5%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸させた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0206】
(比較例2)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が10%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸させた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0207】
(比較例3)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0、第2比率r2は0となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0208】
(比較例4)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は0.001、第2比率r2は0.001となるように調整した以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0209】
(比較例5)
正極および負極におけるゲルポリマー部分に対する液体部分の比率を、それぞれ第1比率r1は100、第2比率r2は100となるように調整した以外は、比較例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0210】
(比較例6)
ゲル化した際にゲルポリマー部分のゲル分率が90%になるような組成のPANの高分子体をゲル化剤として2質量%含んだ電解質前駆体溶液を電極群に含浸させた以外は、実施例1に記載と同様の作製方法にて電池を作製した。
【0211】
<活物質含有層中の電解質の状態の確認>
先に説明した方法により、上記各例で作製した各々の二次電池ついて、電解質のゲルポリマー部分のゲル分率、正極活物質含有層の第1空隙における電解質のゲルポリマー部分と液体部分との第1比率r1、及び負極活物質含有層の第2空隙における電解質のゲルポリマー部分と液体部分との第2比率r2を求めた。得られた結果を下記表1に示す。
【0212】
また、先に説明した方法により、正極および負極のそれぞれについて、活物質含有層における集電体側とその反対側であるセパレータに面する表面側との間の、電解質の液体部分の量の関係を確認した。比較例3の二次電池以外の何れの二次電池においても、正極および負極ともに、セパレータに近い表面側よりも集電体との界面側(第1界面側、第2界面側)の方が、電極空隙(第1空隙、第2空隙)の体積あたりの電解液部分の量が多かった。比較例3の二次電池については、正極および負極の何れについても、活物質含有層の全体に亘って電極空隙に含まれている電解質をゲルポリマー部分が占めていた。
【0213】
<サイクル寿命試験>
上記各例で作製した各々の二次電池に対し、次の条件でサイクル寿命試験を行った。各充放電サイクルにおいて、45℃環境下で1Aの定電流で2.8Vまで電池を充電した後、30分間の休止時間を設けた。次いで、3Aの定電流で1.5Vまで放電し、再び30分間の休止時間を設けた。この一連の操作を1つの充放電サイクルとし、この充放電サイクルを1000サイクル目まで繰り返した。
【0214】
1サイクル目の放電の際の容量に対する、1000サイクル目の放電の際の容量の比(百分率)を算出し、サイクル容量維持率として記録した(サイクル容量維持率=[(1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100%])。
【0215】
<出力性能試験>
上記各例で作製した各々の二次電池に対し、次の条件で出力性能試験を行った。25℃環境下で電池を2.8Vまで0.2Cで充電し、その後1.5Vまで1Cで放電して電池の容量を確認した。次いで、再度電池を2.8Vまで0.2Cで充電し、5Cの放電電流で放電して電池の容量を確認した。0.2C放電時の放電容量を100%と見なし、この0.2C放電時放電容量に対する5C放電時の放電容量に基づいて、5C/0.2C容量維持率を算出した(5C/0.2C容量維持率=[(5C放電時の容量/0.2C放電時の容量)×100%])。
【0216】
表1に、実施例1-10,13,14,21,22、参考例11,12,15-20及び比較例1-3の各二次電池に用いたゲル化剤の種類および含有量、電解質のゲルポリマー部分のゲル分率、正極および負極のそれぞれにて確認された電極空隙(第1空隙および第2空隙)に含まれている電解質のゲルポリマー部分と液体部分との割合(第1比率r1及び第2比率r2)、サイクル寿命試験の結果、並びに出力性能試験の結果をまとめる。サイクル寿命試験の結果としては、45℃環境下で1000サイクルの充放電を行った際の容量維持率を示す。出力性能としては、0.2Cレートでの放電容量に対する5Cレートでの放電容量の比(5C/0.2C容量維持率)を示す。
【0217】
【0218】
表1が示すとおり、正極における第1比率r1及び負極における第2比率r2がそれぞれ0.01以上10以下の範囲内にあった実施例1-10,13,14,21,22及び参考例11,12,15-20の二次電池は、優れた寿命性能および出力性能を示した。
【0219】
これに対し電解質のゲルポリマー部分のゲル分率が20%未満であった比較例1及び2では、サイクル寿命性能が低かった。比較例1及び2では、電解質のゲル化の度合いが少なかったことに起因して、高温耐久性能が低かったものと推察される。ゲルポリマー部分のゲル分率が80%を超えていた比較例6では、出力性能が低かった。比較例6では、電解質が過剰にゲル化していたことに起因して、電池抵抗が高くなったものと推察される。
【0220】
第1比率r1及び第2比率r2が0.01未満であった比較例3及び4では、出力性能が低かった。比較例3及び4では、電極に保持されている電解質における電解液の割合が少なかったことから、ゲルポリマー部分によるリチウムイオン拡散の低下に起因して、充放電速度が低くなったものと推察される。第1比率r1及び第2比率r2が10を超えていた比較例5では、サイクル寿命性能が低かった。比較例5では、電解質におけるゲルポリマー部分の割合、つまりゲル状電解質の割合が少なかったことに起因して、高温耐久性能が低かったものと推察される。
【0221】
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、正極と負極と電解質とを具備する二次電池が提供される。正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられている正極活物質含有層とを含む。正極活物質含有層は、第1空隙を有する。負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられている負極活物質含有層とを含む。負極活物質含有層は、第2空隙を有する。電解質は、ゲルポリマー部分と液体部分とを含む。電解質のゲルポリマー部分のゲル分率は、20%以上80%以下の範囲内にある。電解質の少なくとも一部は、第1空隙および第2空隙に保持されている。第1空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第1比率r1は、0.01≦r1≦10の範囲内にある。第2空隙における電解質のゲルポリマー部分の割合に対する液体部分の割合の第2比率r2は、0.01≦r2≦10の範囲内にある。当該二次電池は、優れた寿命性能および出力性能を示すことができ、寿命性能および出力性能に優れた電池パック、及びこの電池パックを搭載した車両を提供することができる。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願出願の当初の特許請求の範囲を付記する。
[1] 正極集電体と、前記正極集電体上に設けられており第1空隙を有する正極活物質含有層とを含む正極と、
負極集電体と、前記負極集電体上に設けられており第2空隙を有する負極活物質含有層とを含む負極と、
ゲルポリマー部分と液体部分とを含み、前記ゲルポリマー部分のゲル分率が20%以上80%以下の範囲内にある電解質と
を具備し、
前記電解質の少なくとも一部は前記正極活物質含有層の前記第1空隙および前記負極活物質含有層の前記第2空隙に保持されており、
前記正極活物質含有層の前記第1空隙における前記電解質の前記ゲルポリマー部分の割合に対する前記液体部分の割合の第1比率r1は0.01≦r1≦10の範囲内にあり、
前記負極活物質含有層の前記第2空隙における前記電解質の前記ゲルポリマー部分の割合に対する前記液体部分の割合の第2比率r2は0.01≦r2≦10の範囲内にある、二次電池。
[2] 前記正極活物質含有層において、前記正極活物質含有層と前記正極集電体との第1界面側における前記電解質の前記液体部分の量の方が、前記正極活物質含有層の表面側における前記液体部分の量より多く、前記負極活物質含有層において、前記負極活物質含有層と前記負極集電体との第2界面側における前記電解質の前記液体部分の量の方が、前記負極活物質含有層の表面側における前記液体部分の量より多い、[1]に記載の二次電池。
[3] 前記第1比率r1と、前記第2比率r2とが、r1≦r2の関係を満たす、[1]又は[2]に記載の二次電池。
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載の二次電池を具備する電池パック。
[5] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[4]に記載の電池パック。
[6] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[4]又は[5]に記載の電池パック。
[7] [4]-[6]の何れか1つに記載の電池パックを具備する車両。
[8] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[7]に記載の車両。
【符号の説明】
【0223】
1…電極群、2…外装部材、3…負極、3a…負極集電体、3b…負極活物質含有層、3d…負極活物質、3e…第2空隙、4…セパレータ、4a…合成樹脂繊維、4b…第3空隙、5…正極、5a…正極集電体、5b…正極活物質含有層、5d…正極活物質、5e…第1空隙、6…負極端子、7…正極端子、8…電解質、8a…ゲルポリマー部分、8b…液体部分、21…バスバー、22…正極側リード、23…負極側リード、24…粘着テープ、31…収容容器、32…蓋、33…保護シート、34…プリント配線基板、35…配線、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、93…第2界面、95…第1界面、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、342…正極側コネクタ、343…負極側コネクタ、345…サーミスタ、346…保護回路、342a…配線、343a…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。