(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ファンフィルタユニットの監視システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20231010BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20231010BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20231010BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/06 101A
F24F11/70
(21)【出願番号】P 2020186770
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安達 東彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 誠
(72)【発明者】
【氏名】八木 星弥
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217616(JP,A)
【文献】特開2003-279115(JP,A)
【文献】特開2015-188875(JP,A)
【文献】特開2005-257258(JP,A)
【文献】特開2012-102999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 11/00-11/89
B01D 46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンフィルタユニットと制御部を有するファンフィルタユニットの監視システムであって、
前記ファンフィルタユニットは、
ファンと、ファンフィルタユニットチャンバ内の圧力を検出する第1の圧力センサとを有し、
前記ファンによって外部から取り入れられた空気を、塵埃を濾過するフィルタに通過させて清浄化対象空間に送り出し、
前記制御部は、
前記清浄化対象空間の圧力を検出する第2の圧力センサからの信号に基づいて、前記ファンを駆動するモータの回転数を制御
し、
前記第1の圧力センサからの信号と前記第2の圧力センサからの信号から、前記フィルタの圧力損失を算出し、
算出した前記フィルタの圧力損失
の変動値と定めておいた第1の圧力損失値と
を比較し、算出した前記フィルタの圧力損失の変動値が第1の圧力損失値を超えていたとき、前記第1の圧力センサからの信号と前記第2の圧力センサからの信号の差分圧力の変動値を、第2の圧力損失値に加えて新たな第2の圧力損失値とし、
変更後の前記第2の圧力損失値と算出した前記フィルタの圧力損失
の変動値を比較し、
変更後の前記第2の圧力損失値を超えていれば目詰まりが生じたとする信号を出力す
るファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
算出した前記フィルタの圧力損失値
の変動値が前記第1の圧力損失値を超えた場合には、前記第1の圧力センサからの信号と前記第2の圧力センサからの信号の差分
圧力の変動値を、前記第2の圧力損失値に加えて新たな前記第2の圧力損失値に変更するファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
算出した前記フィルタの圧力損失値
の変動値が前記第1の圧力損失値未満である場合には、前記第2の圧力損失値を変更しないファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
前記清浄化対象空間の圧力が、定めておいた圧力となるように、前記ファンを駆動するモータの回転数を制御するファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
定めておいた前記圧力となるように、PID制御をするファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
目詰まりが生じたとする信号を、上位機器、表示部、もしくは表示灯に出力するファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記ファンフィルタユニットは複数からなっており、
前記制御部は、
複数の前記ファンフィルタユニットそれぞれの前記第1の圧力センサからの信号を受け取り、前記ファンフィルタユニットそれぞれの目詰まりが生じたとする信号を出力するかを判定するファンフィルタユニットの監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載のファンフィルタユニットの監視システムにおいて、
前記制御部は、
PLCとインバータとを有し、
前記モータは、
DCブラシレスモータもしくはACモータであり、
前記フィルタは、HEPAフィルタであるファンフィルタユニットの監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンフィルタユニットの監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風速(風量)を自動で制御するファンフィルタユニット(以下FFU)のフィルタの目詰まりを検出する方法が特許文献1に記載されている。この特許文献1には「電動モータ17への供給電力が基準値を超えると、もはや電動モータ17の制御によってHEPAフィルター18の目詰まりを補償することができないので、フィルター交換を促すためのフィルター交換信号をリモコンユニット40に送信する。」と記載されている(段落番号0031を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、風速を自動で制御するFFUのフィルタ目詰まりを検出する技術が記載されている。しかし、特許文献1では、モータの電流をモニタし、電流が基準値を超えるとフィルタ目詰まりを検出する。そのため、清浄化対象空間の圧力を一定に維持するために風速を自動で制御するFFUの場合、外乱により清浄化対象空間の圧力が変化した時に、圧力を維持するためにモータが増速し、電流値が大きくなりフィルタ目詰まりを誤検出してしまう可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、外乱により清浄化対象空間の圧力が変化してもフィルタ目詰まりを誤検出することがなく、フィルタの目詰まりを検出するファンフィルタユニットの監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい一例としては、ファンフィルタユニットと制御部を有するファンフィルタユニットの監視システムであって、
前記ファンフィルタユニットは、
ファンと、ファンフィルタユニットチャンバ内の圧力を検出する第1の圧力センサとを有し、
前記ファンによって外部から取り入れられた空気を、塵埃を濾過するフィルタに通過させ
て清浄化対象空間に送り出し、
前記制御部は、
前記清浄化対象空間の圧力を検出する第2の圧力センサからの信号に基づいて、前記ファンを駆動するモータの回転数を制御し、
前記第1の圧力センサからの信号と前記第2の圧力センサからの信号から、前記フィルタの圧力損失を算出し、
算出した前記フィルタの圧力損失の変動値と定めておいた第1の圧力損失値とを比較し、算出した前記フィルタの圧力損失の変動値が第1の圧力損失値を超えていたとき、前記第1の圧力センサからの信号と前記第2の圧力センサからの信号の差分圧力の変動値を、前記第2の圧力損失値に加えて新たな前記第2の圧力損失値とし、
変更後の前記第2の圧力損失値と算出した前記フィルタの圧力損失の変動値を比較し、変更後の前記第2の圧力損失値を超えていれば目詰まりが生じたとする信号を出力するファンフィルタユニットの監視システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外乱により清浄化対象空間の圧力が変化してもフィルタ目詰まりを誤検出することがなく、フィルタの目詰まりを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1としてのファンフィルタユニットの監視システムの構成を示す図である。
【
図3】フィルタ目詰まりに関する計算部の処理フローを示す図である。
【
図4】実施例1の圧力に関するタイムチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1としてのファンフィルタユニットの監視システムの構成を示す図である。
図1においてファンフィルタユニット(以下、FFUという)1は、ファン11、ファン11を上側から包囲するFFUチャンバ12、ファン11を駆動するためのモータ13およびファン11の吹出口に設けたフィルタ14から構成される。FFU1は、ファン11によって外部から取り入れられた空気を、塵埃を濾過するフィルタに通過させて清浄化対象空間2に送り出す。
【0011】
清浄化対象空間2としては、クリーンエア装置、半導体製造装置、バイオなどにおける清浄化される空間である。
【0012】
FFUチャンバ(FFUの容器)12の内部の圧力を検出する第1の圧力センサ22は、FFUチャンバ12内に取り付けられ、FFUチャンバ12内の圧力を検出する。
【0013】
清浄化対象空間2の圧力を検出する第2の圧力センサ21は、清浄化対象空間2内に取り付けられ、清浄化対象空間2の圧力を検出する。第2の圧力センサ21は、制御部3に圧力値(P1)の信号を出力する。制御部3は、圧力値(P1)の信号と設定した圧力値に基づいて、ファンによる風速を制御するため、モータ13に対して回転数制御信号を出力する。その回転数制御信号により清浄化対象空間2の圧力が設定した圧力値となるように制御される。また、第1の圧力センサ22からは制御部3にFFUチャンバ12内の圧力値(P2)の信号が出力される。
【0014】
図2は、本実施例の機能ブロックを示す図である。制御部3のモータ回転数制御部24は、第2の圧力センサからの圧力値(P1)の信号と設定した圧力値に基づいて、清浄化対象空間2の圧力が設定した圧力値となるようにモータ13に回転数制御信号を出力する。
【0015】
また、制御部3のフィルタ目詰まりに関する計算部23は、清浄化対象空間圧力センサ21から入力された清浄化対象空間2の圧力(P1)と、FFUチャンバ内圧力センサ22から入力されたFFUチャンバ12内の圧力(P2)の差P2-P1が、フィルタ目詰まりとなる設定した圧力損失値(P3)、つまり第2の圧力損失値(P3)以上となった時にフィルタ目詰まりを検出したとしてフィルタ目詰まりの信号を出力する。フィルタ目詰まりの信号の出力先としては、上位機器31、表示部32、表示灯33がある。
【0016】
上位機器31としては、半導体製造装置を制御するコンピュータ、クリーンルームを監視もしくは制御する制御盤、もしくは清浄化対象空間2を制御するPLC(Programmable Logic Controller)などがある。
【0017】
表示部32としては、タッチパネルなどがある。表示灯33としてはランプがある。FFU1と接続した表示部32や表示灯33があれば、上位機器31の代わりに、フィルタ目詰まりが検出されたことを管理者等に知らせることができる。また、この第2の圧力損失値P3は、P2-P1の変動値ΔPが、ある程度大きいときには、元のP3にΔP分だけ加算された値に更新される。
【0018】
制御部3は、プロセッサと、メモリなどを備える回路などのハードウエアで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processer)などがある。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを読み出して
図2や
図3の各処理を実行する。
【0019】
図3は、
図2におけるフィルタ目詰まりに関する計算部23の処理フローを示す図である。
【0020】
制御部3は、FFUチャンバ12内圧力(P2)から清浄化対象空間2の圧力(P1)を差し引いた圧力(P2-P1)を算出する(S301)。
【0021】
制御部3は、差分圧力(P2-P1)の変動値ΔPが、第1の圧力損失値Sを超えたか否かを判定する(S302)。Sは、予め管理者等が決めるなどして、制御部内の記録部に記録しておく。Sの値以下の変動値ΔPであれば、フィルタ目詰まりの判定に影響を与えない値であるとして、第2の圧力損失値(P3)を変えなくてもよい。Sの値を超えるある程度の大きな変動値ΔPの場合は、清浄化対象空間の一時的な外乱による圧力変化とみなすことになる。そのため、Sの値を更新することで、清浄化対象空間の一時的な外乱による圧力変化を、フィルタの目詰まりとして誤検出することを防ぐ役割をする。
【0022】
変動値ΔPが、第1の圧力損失値Sを超えたと判定した場合(S302のYES)には、制御部3は、第2の圧力損失値(P3)にΔPを加えて、新たな(更新された)第2の圧力損失値(P3)とする(S303)。
【0023】
S303の後、制御部3は、差分圧力(P2-P1)が、更新された第2の圧力損失値(P3)を超えたかどうかを判定する(S305)。
【0024】
差分圧力(P2-P1)が、第2の圧力損失値(P3)を超えたと判定した場合(S305のYES)には、制御部3は、フィルタ目詰まり信号を出力する(S306)。
【0025】
S302で、ΔPが、第1の圧力損失値Sを超えない場合(S302のNO)には、制御部3は、第2の圧力損失値(P3)を変更(更新)しないとことにする(S304)。
【0026】
S305で、制御部3は、差分圧力(P2-P1)が、更新された第2の圧力損失値(P3)を超えないと判定した場合(S305のNO)には、待機する(S307)。制御部3は、待機後に、S301に戻る。
【0027】
図4は、本実施例の圧力に関するタイムチャートを示す図である。図の上から第1段目は、第2の圧力損失値P3の時間推移の例を示す。第2段目は、フィルタ圧力損失P2-P1の時間推移の例を示す。第3段目は、FFUチャンバ12内圧力値P2の時間推移の例を示す。第4段目は、清浄化対象空間圧力値P1の時間推移の例を示す。
【0028】
フィルタ圧力損失P2-P1は、
図4では、時間の早い段階で、台形で示された変動値ΔPが2つ生じている。早い方の変動値ΔP1は、第1の圧力損失値Sよりピーク値が小さいため、第2の圧力損失値P3は変更されていない。一方、後の方の変動値ΔP2は、第1の圧力損失値Sよりピーク値が大きいため、第2の圧力損失値P3に変動値ΔP2が加わった更新された第2の圧力損失値P3には変更される。つまり、フィルタ目詰まりの判定に使う第2の圧力損失値(P3)は、フィルタ圧力損失P2-P1の変動値ΔPが小さい時は変化しないが、フィルタ圧力損失P2-P1の変動値ΔPが大きい時は、第2の圧力損失値P3は、元の第2の圧力損失値P3にΔPが加算された値に更新される。
【0029】
FFUチャンバ12内圧力値P2およびフィルタ圧力損失P2-P1は、ある程度時間が経過した後(右側)は、定常値から傾斜が緩い増加傾向がみられる。時間が経過することで、フィルタの目詰まりが発生し、フィルタ圧力損失P2-P1が増加することを示している。フィルタ圧力損失P2-P1が、所定時間において第2の圧力損失値P3の値を超えた場合に、フィルタ目詰まりを検出したとしてフィルタ目詰まりの信号を出力することになる。
【0030】
FFU1に用いるフィルタ14としては、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルタが代表例である。また、ファン用モータとしては、DCブラシレスモータまたはACモータが使用される。モータ回転数制御部24は、目標となる圧力値を保つためPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)が使用される。
【実施例2】
【0031】
図1で示した実施例1においては、清浄化対象空間2に対して、FFU1は1台の例を示したが、実施例2ではFFU1を複数台としている(図は省略)。本実施例では、制御部3は、複数台のそれぞれのFFU1からFFUチャンバ内の圧力値を入力し、FFU1に応じてモータ回転数制御信号を出力する。清浄化対象空間2が共通するので、本実施例では、清浄化対象空間2内の圧力を検出する圧力センサは、1つでよい。
【0032】
制御部3は、PLCで構成してもよいし、制御部3をPID制御機器とPLCとの組み合わせで構成してよいし、制御部3をPLCとインバータとの組み合わせで構成してもよい。
【0033】
図1で、上位機器31を表示部32や表示灯33で構成してもよい。もしくは、上位機器31は、表示部32および表示灯33を備える構成としてもよい。
【0034】
なお、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1・・・・FFU
2・・・・清浄化対象空間
3・・・・制御部
11・・・ファン
12・・・FFUチャンバ
13・・・モータ
14・・・フィルタ
21・・・清浄化対象空間圧力センサ
22・・・FFUチャンバ内圧力センサ
31・・・上位機器
32・・・表示部
33・・・表示灯