(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】放射性液体塞栓物質
(51)【国際特許分類】
C08L 33/16 20060101AFI20231010BHJP
C08F 220/22 20060101ALI20231010BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20231010BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
C08L33/16
C08F220/22 ZBP
A61B17/12
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2020520098
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 US2018055074
(87)【国際公開番号】W WO2019074965
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ、グレゴリー エム
(72)【発明者】
【氏名】ウ、シンピン
(72)【発明者】
【氏名】フィッツ、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ユエ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0184642(US,A1)
【文献】特表2015-536161(JP,A)
【文献】特表2006-518737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F、A61L31/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4,6-トリヨードフェニル5-(2-(2-(アクリロイルオキシ)アセトキシ)アセトキシ)-2-メチル-4-オキソヘキサノエートを含み、少なくとも1つのヨウ素原子は放射性同位体である第1のモノマー、及び、
ビニル基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含む第2のモノマー、
の反応生成物を含む生体適合性ポリマーと、
非生理的溶液と、
を含み、
前記生体適合性ポリマーは、前記非生理的溶液に可溶であり、生理的溶液には不溶である、
ことを特徴とするポリマー組成物。
【請求項2】
2,4,6-トリヨードフェニル5-(2-(2-(アクリロイルオキシ)アセトキシ)アセトキシ)-2-メチル-4-オキソヘキサノエートを含み、少なくとも1つのヨウ素原子は放射性同位体である第1のモノマー、及び、
ビニル基を含む第2のモノマー、
の反応生成物を含む生体適合性ポリマー粒子を含む、
ことを特徴とするポリマー組成物。
【請求項3】
ポリマー組成物であって、該ポリマー組成物は、
1)生体適合性ポリマーであって、
ビニル基と、少なくとも1つの芳香環を有する可視化剤への生分解可能な結合と、を含む第1のモノマーであって、前記少なくとも1つの芳香環は少なくとも1つのヨウ素原子を含み、前記少なくとも1つのヨウ素原子の少なくとも1つは放射性同位体である、第1のモノマーと、
ヒドロキシエチルメタクリレートを含む第2のモノマーと、
の反応生成物を含む生体適合性ポリマー、及び、
2)以下の式
【化1】
を有する化合物(ここで、nは0~100である)、
の反応生成物である葉酸-ポリマーコンジュゲートと、
非生理的溶液と、
を含み、
前記葉酸-ポリマーコンジュゲートは、前記非生理的溶液に可溶であり、生理的溶液には不溶であり、
前記葉酸-ポリマーコンジュゲートは、以下の式
【化2】
(ここで、nは0~100である)を備える、
ことを特徴とするポリマー組成物。
【請求項4】
前記
第2のモノマーは、
ヒドロキシエチルメタクリレートである、
ことを特徴とする請求項
1乃至3
のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー粒子は、
1)前記第1のモノマーと、
前記第2のモノマーと、
の反応生成物を含む生体適合性ポリマー、及び、
2)以下の式
【化3】
を有する化合物(ここで、nは0~100である)、
の反応生成物である葉酸-ポリマーコンジュゲートを含む、
ことを特徴とする請求項
2に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記葉酸-ポリマーコンジュゲートは、以下の式
【化4】
(ここで、nは0~100である)を備える、
ことを特徴とする請求項
5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
nは、1、2、3、4、5、6、又は100である、
ことを特徴とする請求項3、
5、又は
6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記
少なくとも1つの芳香環は、トリヨードフェ
ニルを含む、
ことを特徴とする請求項
3に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記第1のモノマーは、1-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニルオキシ)エチル-3,5-ジアセタミド-2,4,6-トリヨードベンゾエート、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート、2,4,6-トリヨードフェニル5-(2-(2-(アクリロイルオキシ)アセトキシ)アセトキシ)-2-メチル-4-オキソヘキサノエート、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする請求項3
又は4に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記放射性同位体は、
123I、
124I、
125I、
131I、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記放射性同位体は、
123Iである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記放射性同位体は、
124Iである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記放射性同位体は、
125Iである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記放射性同位体は、
131Iである、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1乃至1
4のいずれか1項に記載のポリマー組成物を、塞栓を必要とする管腔に送達すること、を含む塞栓方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年10月9日に出願された米国仮特許出願番号第62/569,941号の利益を請求し、引用によってその全体の開示を本明細書に取り込む。
【0002】
(技術分野)
本明細書では、液体塞栓製剤及びポリマー粒子製剤及びこれらの製剤を使用する医学的治療方法を一般に説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
液体塞栓製剤及びそれらの製剤を使用する医学的治療方法が、本明細書に一般に説明されている。いくつかの実施形態において、製剤又は溶液は、動静脈奇形(AVM)及び固形腫瘍の塞栓形成に使用するために、液体から固体に変化することができる。製剤は、放射性ヨウ素同位体に共有結合された生体適合性ポリマーと、非生理的溶液と、を含むことができる。
【0004】
液体塞栓物質は、液体状態でマイクロカテーテルを通じて導入され、体内で固体状態にすぐに変化する。変化は、一般に反応又は沈殿によって制御される。反応により機能する材料では、材料は液体状態で導入され、化学反応を経て固体に変化する。沈殿により機能する材料では、材料は非生理的条件で導入され、生理的な条件に曝されると固体に変化する。非生理的条件は、水混和性有機溶媒、温度、及びpHを含む。
【0005】
いくつかの実施形態は、血流を閉塞するための標準的な方法及びマイクロカテーテル/カテーテルを使用して、脈管構造内に展開され得る液体塞栓製剤に関連する。いくつかの実施形態において、液体塞栓製剤は、生体適合性ポリマーと、生体適合性ポリマーを溶解する水混和性溶媒と、から構成され、生体適合性ポリマーは、複数のヨウ素を含む芳香環への生体安定性又は生分解性の結合を有し、ヨウ素原子のいくつかは安定であり、いくつかは放射性である。
【0006】
1つの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートを含むことができる。いくつかの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、マイクロベンション社によってPHILの名称で販売されているポリマーである。
【0007】
1つの実施形態において、生分解性結合は、加水分解により切断されやすい。別の実施形態において、生分解性結合は、酵素作用により切断されやすい。別の実施形態では、結合は生体安定性及び/又は実質的に生体安定性である。生体安定性は、非生分解性であることができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、ヨウ素の安定同位体は、127Iであり、ヨウ素の放射性同位体は、123I、124I、125I又は131Iである。1つの実施形態において、ヨウ素の放射性同位体は、123Iである。1つの実施形態において、ヨウ素の放射性同位体は、124Iである。1つの実施形態において、ヨウ素の放射性同位体は、125Iである。1つの実施形態において、ヨウ素の放射性同位体は、131Iである。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリマー粒子又は液体塞栓ポリマーは、葉酸又はその誘導体を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
液体塞栓製剤を説明する。いくつかの実施形態では、液体塞栓製剤を使用する医学的治療方法を説明する。
【0011】
一般的に言えば、液体塞栓製剤は、(i)生分解性又は生体安定性の結合を介して結合された複数のヨウ素原子を有する芳香環を備える生体適合性ポリマー及び(ii)生体適合性ポリマーを溶解する水混和性溶媒を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、液体塞栓ポリマーの機能は、血液又は他の生理液と接触した場合に、脈管構造内で又は他の解剖学的構造内で凝固して血管又は構造を閉塞し、医学的に関連する技術を使用して画像化された場合にポリマーの視覚化を可能とすることである。液体塞栓ポリマーの溶解度は、ポリマー組成を慎重に選択して達成され、生理的条件で実質的に不溶性となるようにする。液体塞栓ポリマーは、可視化種を含むモノマーと任意の他のモノマーとを含むプレポリマー溶液の反応生成物である、及び/又は該反応生成物を含む。可視化種を含むモノマーと他のモノマーとのモノマーの比率は、モノマーの構造に依存し、実験的に決定されることが最適である。
【0013】
可視化種を有する1つの又は複数のモノマーは、蛍光透視法又はコンピュータ断層撮影法のような医学的に関連する画像化技術を使用して画像化された場合に、液体塞栓ポリマーを可視化することができる。可視化種を備えるモノマーの特徴は、医学的に関連する画像化技術下で視認可能なコアと、生分解性の結合でコアに付着した重合可能な部分と、である。
【0014】
ポリマーは、ヨウ素を含むコア、特に複数のヨウ素原子を備える芳香環を備えるモノマーの使用により、蛍光透視法及びCTイメージング下で可視化されることができる。1つの実施形態において、ヨウ素を含むコアは、トリヨードフェノールである。蛍光透視法又はCTイメージングを使用して液体塞栓を可視化するためのヨウ素の濃度は、液体塞栓溶液の20%~50%w/wの範囲であり得る。
【0015】
重合可能な部分は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル基、及びそれらの誘導体を含むフリーラジカル重合が可能な部分を含むことができる。代わりに、他の反応性化学物質を、液体塞栓ポリマーを重合するために採用する、換言すると、求核剤/N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、求核剤/ハロゲン化物、ビニルスルホン/アクリレート、又はマレイミド/アクリレートを採用することもできる。いくつかの実施形態において、重合可能な部分は、アクリレート及びアクリルアミドである。
【0016】
生体分解性結合により、可視化コアをポリマーから分離することができる。ポリマーから分離後、コアは、拡散によって又はポリマーに対する異物反応を含む細胞によって除去される。生分解性結合は、加水分解を受けやすいものと、酵素作用を受けやすいものと、の2種類に分けることができる。加水分解を受けやすい結合は、一般にエステル又はポリエステルである。エステルは、ヒドロキシル基を無水コハク酸又は無水グルタル酸などの無水物と反応させること、又はラクチド、グリコリド、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート等の環状エステルと反応させることによって導入することができる。分解速度は、エステルの選択と、生分解性結合の中に挿入するエステルの数と、によって制御可能である。酵素作用を受けやすい結合は、一般に、マトリクスメタロプロテアーゼ、コラゲナーゼ、エラスターゼ、カテプシンのような特定の酵素によって分解されるペプチドである。マトリクスメタロプロテアーゼによって分解されるペプチド配列は、Gly-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Ser-Gln、Gly-Pro-Gln-Gly\Pro-Ala-Gly-Gln、Lys-Pro-Leu-Gly-Leu-Lys-Ala-Arg-Lys、Gly-Pro-Gln-Ile-Trp-Gly-Gln、及びGln-Pro-Gln-Gly-Leu-Ala-Lysを含むことができる。カテプシンによって分解されるペプチド配列は、Gly-Phe-Gln-Gly-Val-Gln-Phe-Ala-Gly-Phe、Gly-Phe-Gly-Ser-Val-Gln-Phe-Ala-Gly-Phe、及びGly-Phe-Gly-Ser-Thr-Phe-Phe-Ala-Gly-Pheを含む。コラゲナーゼによって分解されるペプチド配列は、Gly-Gly-Leu-Gly-Pro-Ala-Gly-Gly-Lys及びAla-Pro-Gly-Leuを含む。パパインによって分解されるペプチド配列は、Gly-Phe-Leu-Glyを含む。カスパーゼ-3によって分解されるペプチド配列は、Asp-Glu-Val-Asp-Thrを含む。分解速度は、ペプチド配列の選択によって制御できる。
【0017】
使用可能な他のモノマーは、2つの特徴、つまり、重合可能な部分を含むことと、所望の溶解特性につながる構造を有することを有することとを有することができる。好適な重合可能な部分は、フリーラジカル重合を可能とするものであることができ、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニル基及びそれらの誘導体を含む。代わりに、他の反応性化学物質を、液体塞栓ポリマーを重合するために採用する、換言すると、求核剤/N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、求核剤/ハロゲン化物、ビニルスルホン/アクリレート、又はマレイミド/アクリレートを採用することができる。いくつかの実施形態において、重合可能な部分は、アクリレートとアクリルアミドを含む。一般に、他のモノマーは、可視化種でモノマーを補うことができる。調製したポリマーの疎水性が高く水混和性溶媒に溶解しない場合、親水性モノマーを更に導入して、溶解度を変えることができる。調製したポリマーの親水性が高く、水に溶解する場合、更に疎水性モノマーを導入して溶解度を変えることができる。他のモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリルアミド、n-オクチルメタクリレート、及びメチルメタクリレートを含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、可視化種と任意に他のモノマーとを備えるモノマー溶液から重合されることができる。モノマーを溶解するために使用される溶媒は、所望のモノマーを溶解する任意の溶媒であることができる。好適な溶媒は、メタノール及びアセトニトリルを含む。他の実施形態において、溶媒は、ジメチルスルホキシド(DSMO)又はテトラヒドロフラン(THF)であることができる。いくつかの実施形態において、溶媒は水であることができる。
【0019】
溶液中のモノマーの重合を開始させる重合開始剤を使用することができる。重合は、酸化還元、放射線、熱又は他の既知の方法によって開始させることができる。プレポリマー溶液の放射線架橋は、好適な開始剤を用いた紫外線光又は可視光で、又は開始剤を用いない電離放射線(例えば、電子線又はガンマ線)で達成することができる。重合は、加熱ウェルのような熱源を使用して溶液を従来通りに加熱することによる、又はプレポリマー溶液に赤外線光を照射することによる熱の適用によって達成できる。
【0020】
いくつかの実施形態において、重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又は水溶性AIBN誘導体(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)である。他の開始剤は、これに限るものでないが、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を含むAIBN誘導体と、N,N,N’、N’-テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、及びそれらの組み合わせなどの他の開始剤と、を含むことができ、アゾビスイソブチロニトリルを含む。いくつかの実施形態において、開始剤濃度は、プレポリマー溶液の約0.5%w/w未満であり得る。重合反応は、約80℃のような高温で実行することができる。重合が完了した後、液体塞栓ポリマーを非溶媒中での沈殿によって回収し、真空下で乾燥させることができる。
【0021】
1つの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートを含むことができる。いくつかの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、マイクロベンション社によってPHILの名称で販売されているポリマーである。
【0022】
安定ヨウ素の放射性ヨウ素への置換は、合成工程の任意のステップで実行することができる。1つの実施形態において、安定ヨウ素の放射性ヨウ素への置換は、液体塞栓ポリマーの調製の終了後に行うことができる。液体塞栓ポリマーの調製後に、ジメチルスルホキシドに再溶解させ、放射性ヨウ素のナトリウム塩を加える。ナトリウム塩が完全に溶解した後、30%過酸化水素水を加える。反応溶液を任意に加熱し、置換を促進させることができる。反応が完了したときに、水中での沈殿とジメチルスルホキシド中での溶解とを繰り返し、液体塞栓ポリマーを精製する。
【0023】
別の実施形態において、複数のヨウ素原子を含む芳香環への生体安定性又は生分解性結合を有する重合可能な部分を含むモノマーに、置換を実施することができる。液体塞栓ポリマーについて説明したものと同じ反応方法をモノマーに使用してもよい。
【0024】
本明細書に記載の実施形態は、123I、124I、125I及び131Iを含むヨウ素の放射性同位体を使用することができる。それぞれの同位体は、組織を取り除き、画像化を可能とする固有の特性がある。1つの実施形態において、破壊的なベータ線放出、医療用画像化に使用可能なガンマ線放出、及び短い半減期から、使用する同位体は131Iである。
【0025】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポリマーは、少なくとも1つのヨウ素を含むモノマーを含むことができる。ヨウ素化モノマーの例は、これに限られないが、トリヨードフェノール、1-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニルオキシ)エチル-3,5-ジアセタミド-2,4,6-トリヨードベンゾエート、及び2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレートを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、ヨウ素を含む任意のモノマーを使用することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子又は液体塞栓ポリマーは、トリヨードフェノール及び3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5ジオンを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子又は液体塞栓ポリマーは、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子又は液体塞栓ポリマーは、トリヨードフェノール及びヒドロキシエチルメタクリレートを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子又は液体塞栓ポリマーは、鎖延長されたラクチドユニットを有し、アクリレートでキャップされたトリヨードフェノールを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、放射性ヨウ素塩を過酸化水素とともに使用し、ヨウ素化モノマーのヨウ素原子を放射性ヨウ素とを交換することができる。いくつかの実施形態において、塩は、ナトリウム塩である。
【0031】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子は放射線収量を有することができる。この放射線収量は、均一な条件下で得ることができる。その中で、放射線収量は、約1%~約15%、約1%~約5%、約5%~約20%、約10%~約15%、約5%~約15%、約10%~約12%、又は約5%~約30%であることができる。
【0032】
他の実施形態において、放射線収量は、不均一な条件下で得ることができる。その中で、放射線収量は、約1%~約75%、約50%~約75%、約50%~約60%、約70%~約75%、約70%~約80%、約40%~約45%、又は約70%~約75%であることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、ポリマー粒子は、約50%~約90%、約70%~約90%、約70%~約75%、約85%~約90%、約80%~約90%、約70%より大きい、約80%より大きい、約85%より大きい、約90%より大きい放射線化学純度を有することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、放射線収量を有することができる。この放射線収量は均一な条件下で得ることができる。その中で、放射線収量は、約1%~約15%、約1%~約5%、約5%~約20%、約10%~約15%、約5%~約15%、約10%~約12%、又は約5%~約30%であることができる。
【0035】
他の実施形態において、放射線収量は、不均一な条件下で得ることができる。その中で、放射線収量は、約1%~約75%、約50%~約75%、約50%~約60%、約70%~約75%、約70%~約80%、約40%~約45%、又は約70%~約75%であることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、液体塞栓ポリマーは、約50%~約90%、約70%~約90%、約70%~約75%、約85%~約90%、約80%~約90%、約70%より大きい、約80%より大きい、約85%より大きい、約90%より大きい放射線化学純度を有することができる。
【0037】
水混和性溶媒を、液体塞栓ポリマーを溶解するために使用する。水溶液中の液体塞栓ポリマーの濃度は、約2.5%~約25%の範囲、より好ましくは約5%~約15%の範囲であることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、液体塞栓デバイスは、液体塞栓ポリマーを水混和性溶媒に溶解し、適切なバイアル又は他の容器に入れ、そのバイアルに蓋をすることによって調製される。使用前の好適な滅菌方法は、オートクレーブである。
【0039】
液体塞栓製剤は、ニードル及びシリンジを使用してバイアルから取り出される。早期の液体塞栓ポリマーの沈殿を防ぐために、液体塞栓ポリマーを溶解するために使用されたものと同じ水混和性溶媒のボーラスで、送達カテーテルを洗い流す。この洗浄により、液体塞栓ポリマーで送達カテーテルが詰まることを防ぐ。次に、液体塞栓製剤を含むシリンジを、所望の血管又は他の解剖学的部位に配置された、マイクロカテーテル、カニューレ等のような送達カテーテルの近位端に接続する。
【0040】
液体塞栓製剤が注入されると、マイクロカテーテルから、水混和性溶媒の洗浄溶液が押し出される。送達カテーテル内の液体塞栓製剤の進行状況は、選択した可視化種に対応する画像化技術を使用して観察することができる。注入を続けると、液体塞栓製剤は、標的の送達部位に入る。固体化された液体塞栓ポリマーは、標的部位を長期間、閉塞する。時間の経過と共に、可視化種を液体塞栓ポリマーに結合する生分解性結合が壊れ、液体塞栓ポリマーの可視度が低下する。
【0041】
他の実施形態において、本明細書に記載の放射性ヨウ素含有ポリマーは、細胞レベルで癌を標的とするために使用することができる。いくつかの実施形態において、これらのポリマーは、実施例に記載のものであることができる。
【0042】
放射性ヨウ素含有ポリマーは、粒子に形成することができる。これらの粒子は、約10nm~約50nm、約10nm~約40nm、約10nm~約30nm、約10nm~約20nm、約20nm~約50nm、約30nm~約50nm、約40nm~約50nm、又は約20nm~約40nmの直径を有することができる。多くの異なる方法を、本明細書に記載のヨウ素含有ポリマーから粒子を調製するために使用することができる。1つの実施形態では、ヨウ素含有ポリマーを、空気、水、又は油のような媒体中に高圧でノズルを通して押し込むことで、粒子を形成することができる。いくつかの実施形態において、ノズルは、インクジェットプリンタで使用されているノズルと同様であることができる。次に、得られる粒子は、例えば静電技術、遠心分離、ろ過、ふるい、又はそれらの組み合わせを使用し、サイズによって分離されてもよい。
【0043】
本明細書に記載のポリマー粒子又は液体塞栓粒子は、共有結合的に葉酸で官能化することができる。
【化1】
【0044】
(葉酸)
ある実施形態において、葉酸は、ポリ(エチレングリコール)を使用して官能化されることができる。ある実施形態において、官能化葉酸は、以下の構造:
【化2】
を有することができ、nは0~100である。
別の実施形態において、官能化葉酸は、以下の構造:
【化3】
を有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、官能化葉酸は、塞栓粒子又は他の粒子上のヒドロキシル基と反応し得る。
【0046】
代わりの実施形態において、葉酸は、合成時にポリマー構造に結合することができ、記載の方法によって粒子に形成されることができる。
【0047】
細胞分裂には葉酸(ビタミンB9、葉酸塩)を使用することができる。それゆえ、癌細胞のような急速に分裂する細胞は、その表面に葉酸受容体を過剰発現する。いくつかの実施形態において、官能化葉酸を備える放射性ポリマーは、癌細胞上の葉酸受容体によって取り込まれ得る。これは、放射線療法を、正常細胞と比較して癌細胞に更に標的化することができる。線量に応じて、放射線は、癌性細胞を破壊する又は損傷するために治療的に使用されてもよく、又はより低い放射線量では、診断マーカーとして使用されてもよい。
【0048】
葉酸で官能化された放射性粒子を送達するために、リピオドール、造影剤、生理食塩水等の生体適合性液体を含む懸濁液に、粒子を入れてもよい。懸濁液は、粒子のサイズ及び数に応じて、使用前に混合する又は撹拌する必要がある。いくつかの実施形態において、懸濁液を、カテーテル、マイクロカテーテル、シリンジ/ニードル等を通じて腫瘍に直接注入してもよい。別の実施形態において、懸濁液は、化学療法剤として血流中に注入されてもよい。
【0049】
治療線量又は診断線量で注射されると、ガンマカメラのような外部監視機器を使用して、粒子が高く取り込まれた体内の領域を特定することができる。この方法は、例えば、以前は未知であった転移を検出するために使用することができる。それは細胞レベルに作用するので、この方法は、元の腫瘍の場所の外側のごくわずかな細胞の転移にさえ敏感である。
【0050】
いくつかの実施形態において、葉酸で官能化された治療量のポリマーを含む容器を提供する。いくつかの実施形態において、容器は、バイアル、ボトル、シリンジ、IVバッグ、IVボトル等であることができる。いくつかの実施形態において、容器は、医学的に関連する方法を使用して、葉酸で官能化されたポリマーを患者に送達するために使用することが可能な任意の容器であることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の放射性ポリマー粒子を用いる治療方法を説明する。方法は、ポリマー粒子を含む溶液を治療部位に注入することを含み得る。治療部位は、血管であり得る。他の実施形態において、治療部位は、治療を必要とする任意の管腔であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の放射性液体塞栓ポリマーを使用する治療方法について説明する。方法は、溶解された液体塞栓ポリマー粒子を含む溶液を治療部位に注入することを含むことができる。ある状態に遭遇すると、液体塞栓ポリマーは沈殿する。その状態は、pH変化、温度変化、又は溶解度の変化であることができる。治療部位は、血管であることができる。他の実施形態において、治療部位は、治療を必要とする任意の管腔であることができる。
【0053】
本明細書に記載のポリマー粒子及び/又は液体塞栓ポリマーは、ニードル及びシリンジを使用して送達される、及び/又はカテーテルもしくはマイクロカテーテルを通じて注入されることができる。
【0054】
本明細書に記載のポリマー粒子を含むキットについても説明する。キットは、溶液を含む容器を含むことができる。溶液は、本明細書に記載の放射性ポリマー粒子を含むことができる。キットは、取扱説明書も含むことができる。キットは、送達のためのシリンジ、又はカテーテル、又はマイクロカテーテルも含むことができる。
【0055】
本明細書に記載の液体塞栓ポリマーを含むキットについても説明する。キットは、溶液を含む容器を含むことができる。溶液は、本明細書に記載の放射性液体塞栓ポリマー粒子を含むことができる。キットは、取扱説明書も含むことができる。キットは、送達のためのシリンジ、又はカテーテル、又はマイクロカテーテルも含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、キットは、粒子溶液又は液体塞栓ポリマーを、カテーテル又はマイクロカテーテルを通して洗い流すための溶液を更に含むことができる。
【0057】
容器は、バイアル、チューブ、シリンジ等であることができる。
【0058】
(実施例1)
(ヨウ素含有モノマーの調製)
250ミリリットルのトルエンに、15gのトリヨードフェノール、22.9gの3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5ジオン、及び25マイクロリットルのオクチル酸第一スズを加えた。溶液を18時間還流した。溶液を25℃に冷却した後、50mlのトルエンに溶解させた3mlの塩化アクリロイル及び5.2mlのトリエチルアミンを加えた。混合物を5時間撹拌し、ろ過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させた。
【0059】
(実施例2)
(ヨウ素含有ポリマーの調製)
3ミリリットルのジメチルスルホキシドに、1.8gの平均5つのラクチドユニットで延長されてアクリレートでキャップされたトリヨードフェノール鎖、0.2gのヒドロキシエチルメタクリレート、及び10mgのアゾビスイソブチロニトリルを加えた。全ての成分が完全に溶解させ、溶液を80℃で4時間置いた。室温に冷却後、エチルエーテル中で沈殿させポリマーを回収し、真空下で乾燥させた。
【0060】
(実施例3)
(ヨウ素含有ポリマーのヨウ素の交換(机上))
実施例2のヨウ素含有ポリマーのジメチルスルホキシド溶液中に、撹拌しながらNa131Iを加える。Na131Iが完全に溶解した後、過酸化水素(30%水溶液)を加える。反応は、交換プロセスを促進するために任意に加熱される。10分の反応時間(又は必要に応じてより長く)の後、DMSO溶液を蒸留水に注ぎ、ヨウ素含有ポリマーを沈殿させる。沈殿物をろ過し、続いてDMSOに再溶解させ、DI水で更に2回再沈殿させる。その後、固体を凍結乾燥して、水を除去し、生成物を固体として得る。
【0061】
(実施例4)
(液体塞栓製剤の調製)
9gのジメチルスルホキシドに、1gの実施例3のポリマーを加えた。次に、液体塞栓製剤をバイアルに等分して入れ、蓋をした。バイアルは、121℃で15分間オートクレーブした。
【0062】
(実施例5)
(均一条件下でNa
125Iを用いたPHILの求電子放射性ヨウ素化)
過剰当量のNa
125I(10
-5M NaOH溶液に溶解、pH=8)を、2,4,6-トリヨードフェニル5-(2-(2-(アクリロイルオキシ)アセトキシ)アセトキシ)-2-メチル-4-オキソヘキサノエートと、ヒドロキシエチルメタクリレートとをテトラヒドラフラン(THF)中に含む1000ppmの液体塞栓物質の溶液に加える。1つの実施形態において、この液体塞栓物質は、マイクロベンション社によってPHILの名称で販売されている。例えば、30分、60分及び90分の延長された反応時間の後、反応物を急冷させ、ポリマーを水中で沈殿させて回収する。放射線収量及びポリマー回収率を表1に示す。
表1:液体塞栓物質の求電子放射性ヨウ素化の収量と条件の概要
【表1】
【0063】
(実施例6)
(不均一条件下でのNa125Iを用いたPHILの求電子放射性ヨウ素化)
ジクロロメタン(80~120μL)中に2,4,6-トリヨードフェニル5-(2-(2-(アクリロイルオキシ)アセトキシ)アセトキシ)-2-メチル-4-オキソヘキサノエート及びヒドロキシエチルメタクリレート(50~200μg)を含む液体塞栓ポリマーの溶液に、CH3CN中の0.1%TFA中のNa125I溶液(101.72mCi/mL)を加えた。1つの実施形態において、この液体塞栓物質は、マイクロベンション社によってPHILの名前で販売されている。この溶液に、50μgのヨードゲン(DCM中1mg/mL)を加える。この溶液を、室温で5~15分反応させる。放射線収量は、15分より長く反応時間を延長しても効果がない。反応物を、メタ重亜硫酸ナトリウム(PBS中10mg/mL)で急冷させる。反応物を、2000rpmで15分間、遠心分離し、ペレットを上清から分離する。ペレットは、ジクロロメタンで2回洗浄する。この方法では、100μgの液体塞栓ポリマーの出発物質から、平均2.7MBqの放射線が得られたことが推測される。
【0064】
(実施例7)
(ミリグラムスケールでのヨードゲンによる不均一条件下でのNa
125Iを用いたPHILの求電子放射性ヨウ素化)
Na
125Iアリコート(2mCi~5mCi)を、無菌N
2気流下で、蒸発乾固させた。0.1%TFA(v/v)を含むCH
2Cl
2を、Na
125I残渣に加え、短くボルテックスさせ、CH
2Cl
2中のPHILの懸濁液を含む放射性ヨウ化チューブに移した。ヨードゲンを加え、放射性ヨウ素化混合物をボルテックスし(約1分)、超音波処理した(約5分)。CH
2Cl
2を
125I-PHILペレットから除去した。ペレットを、2×0.4mL CH
2Cl
2、1×1mL Na
2S
2O
5(10mg/mL 水)、1×1mL蒸留H
2Oで洗浄し、真空下で乾燥させた。乾燥
125I-PHILペレットを1mLのTHFに溶解させ、ITLC及びTLC分析にかけた。結果を表2に示す。
表2:ミリグラムスケールでの酸化剤としてヨードゲンを使用した液体塞栓物質の求電子放射性ヨウ素化の収量及び条件の概要
【表2】
【0065】
(実施例8)
(ミリグラムスケールでのクロロアミン-Tによる不均一条件下でのNa125Iを用いたPHILの求電子放射性ヨウ素化)
CH2Cl2中のPHIL懸濁液と、1×10-5M NaOH中のNa125Iアリコートと、を含む放射性ヨウ素化チューブに、続いて、クロラミン-Tと0.1%TFA(v/v)を含むCH2Cl2とを加えた。反応混合物を、約2分間ボルテックスし、約5分間超音波処理した。CH2Cl2層及び再懸濁した125I-PHILペレットを、1×1mL Na2S2O5(10mg/mL 水)で洗浄した。有機相及び水相を除去し、固形残渣を、1×1mLのNa2S2O5(10mg/mL 水)及び2×1mLの蒸留H2Oで再び洗浄した。洗浄した125I-PHILペレットを真空下で乾燥させた。乾燥125I-PHILペレットを、1mLのTHFに溶解させ、ITLC分析にかけた。出発物質として12mgのPHILを使用した2つの反応から、放射化学収量は73%、比放射線は0.083(mCi/mg)、及び放射化学純度は97%(ITLCによる%)であった。
【0066】
(実施例9)
(放射性液体塞栓物質への葉酸の結合)
【化4】
(葉酸-PEG-NH
2(3)の合成)
葉酸(1、4.41g、10mmol)を、無水ジメチルスルホキシド(DSMO、100mL)とトリエチルアミン(TEA、0.5mL)の混合物に溶解させ、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、1.9g、10mmol)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、1.15g、10mmol)によって、窒素無水条件下で2時間室温で活性化させる。1モル当量のポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)を、50mLのDMSOに溶解させる。撹拌しながら、活性化葉酸溶液を、ポリ(エチレングリコール)ビス(アミン)の溶液中に滴下して加える。得られた混合物を、窒素無水条件下で、室温で約24時間撹拌する。最終生成物3をHPLCによって精製する。
【0067】
(葉酸-PEG-PHILコンジュゲート(4)の合成)
PHILポリマー(0.5mmol)を、50mLの無水DSMOに溶解させ、続いて、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI、0.81g、5mmol)を加える。反応物を、無水窒素下で4時間撹拌する。葉酸-PEG-NH2(3、5mmol)を10mLの無水DSMOに溶解させる。得られた溶液を、PHILポリマー溶液に滴下して加える。反応混合物を、室温で6時間撹拌する。溶液を、ロトバップを使用して乾燥させ、粗生成物をDSMOに再溶解させ、メチルtert-ブチルエーテル中で繰り返し沈殿させることで精製し、最終生成物4を得る。
【0068】
(実施例10)
(ナノ粒子の調製)
ナノ/マイクロ粒子を、沈殿法を使用して実施例9で調製された溶液から調製する。ジメチルスルホキシド溶液を、激しく撹拌させている水の中にゆっくりと分散させる。ジメチルスルホキシドは、水中に分散し、水中に拡散し、葉酸と結合した放射性ポリマーの小さな粒子が形成される。粒子を回収し、遠心分離により繰り返し洗浄することができる。最後に、粒子を、凍結乾燥を使用して乾燥させる。より小さな粒子サイズが必要な場合は、適切に梱包される前に機械的に粉砕してもよい。
【0069】
(実施例11)
(ナノ粒子の調製)
実施例9で調製された溶液から、アトマイゼーション法を使用してナノ/マイクロ粒子を調製する。ジメチルスルホキシド溶液を、同軸ガスフローを使用し、加熱された針を通じてゆっくりと注入する。ジメチルスルホキシドがガスによって蒸発すると、葉酸と結合した放射性ポリマーの小さな粒子が形成される。粒子は、水中で回収され、遠心分離で繰り返し洗浄する。最後に、凍結乾燥を使用し、粒子を乾燥させる。より小さな粒子サイズが必要な場合は、適切に梱包される前に機械的に粉砕してもよい。
【0070】
本発明を、特定の実施形態を参照して特に示して説明したが、上記の変形例及び他の特徴及び機能、又はそれらの代替は、望ましくは多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わせることができることが理解される。現時点で予期されず、又は予想されない様々な代替、修正、変形又は改善が、当業者によって後になされてもよく、それらは以下の請求項の範囲に含まれることが意図される。
【0071】
特に明記しない限り、本明細書及び請求項で使用される、成分の量、分子量のような特性、重量、反応条件等を示す全ての数字は、全ての場合に「約」という用語によって変更されると理解されるべきである。従って、反対が示されない限り、明細書及び添付の請求項に記載の数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に基づいて変動しうる近似値である。少なくとも、そして、均等論の及ぶ範囲を請求項の範囲に限定使用とするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮し、通常の概数の手法を適用することによって少なくとも理解されるべきである。
【0072】
本発明を説明する文脈で(特に、以下の請求項の文脈で)使用される「a」、「an」「the」の用語及び類似の指示対象は、本明細書で他が示されているのでない限り又は明確に文脈に反するのでない限り、単数及び複数の両方を包含すると理解されるべきである。本明細書における数値範囲の列挙は、範囲内に含まれるそれぞれの個別の値をそれぞれ独立して参照する簡略な方法として機能することを単に意図する。本明細書に他が示されているのではない限り、各個別の値は、それが個別に本明細書に示されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で他が示されていない限り又は明確に文脈に反しない限り、任意の好適な順番で実施され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての実施例の使用又は例示的な言語(例えば、「等」)は、本発明をよりよく説明することを単に意図し、他に請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。明細書における言語は、本発明の実施に必須の請求されていない要素を示すものと理解されるべきではない。
【0073】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループの要素は、グループの他の要素若しくは本明細書に見られる他の要素と任意に組み合わせて、又は個別に、参照され及び請求され得る。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1つ以上の要素がグループ内に含まれるか削除されることが予想される。包含又は削除が生じた場合、本明細書は、修正されたようなグループを含むものとみなされ、添付の請求項で使用されている全てのマーカッシュグループの記載を満たす。
【0074】
本明細書では、発明者たちが知る本発明を実施するためのベストモードを含む特定の実施形態が記載されている。当然、これらの記載されている実施形態の変形例は、上記の説明を読めば当業者には明らかである。発明者は、当業者がそのような変形例を適切に採用することを予期しており、発明者は、本明細書で特に記載したものとは他の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用可能な法によって許容されるような添付の請求項に記載された主題の全ての変形例及び均等物を含む。更には、他の方法が本明細書に示されていない限り、又は文脈から明確に反するのではない限り、上述した要素の任意の組み合わせが、本発明に包含される。
【0075】
更に、本明細書を通じて、特許及び印刷された出版物への様々な引用がなされた。それぞれの上記の参考文献及び印刷された出版物は、その全体が引用によって個別に本明細書に取り込まれる。
【0076】
最後に、本明細書に開示されている本発明の実施形態は、本発明の原理を説明するものであることが理解されるべきである。採用し得る他の修正は、本発明の範囲にある。従って、限定ではなく例として、本発明の代替的な構成を、本明細書の開示に従って行うことができる。従って、本発明は、示されて且つ説明されているものに正確に限定されるものではない。
【0077】
[付記]
[付記1]
少なくとも1つの芳香環を有する可視化剤への結合を有する重合可能な部分を含み、前記少なくとも1つの芳香環は少なくとも1つのヨウ素原子を含み、前記少なくとも1つのヨウ素原子の少なくとも1つは放射性同位体である第1のモノマー、及び、
重合可能な部分と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含む第2のモノマー、
の反応生成物を含む実質的に安定な生体適合性ポリマーと、
非生理的溶液と、
を含み、
前記実質的に安定な生体適合性ポリマーは、前記非生理的溶液に可溶であり、生理的溶液には不溶である、
ことを特徴とするポリマー組成物。
【0078】
[付記2]
前記結合は、生分解性である、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物
【0079】
[付記3]
葉酸又はその官能化形態を更に含む、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0080】
[付記4]
前記放射性同位体は、123I、124I、125I、131I、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0081】
[付記5]
前記放射性同位体は、123Iである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0082】
[付記6]
前記放射性同位体は、124Iである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0083】
[付記7]
前記放射性同位体は、125Iである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0084】
[付記8]
前記放射性同位体は、131Iである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0085】
[付記9]
前記第1のモノマーは、官能化トリヨードフェノール、1-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニルオキシ)エチル-3,5-ジアセタミド-2,4,6-トリヨードベンゾエート、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする付記1に記載のポリマー組成物。
【0086】
[付記10]
少なくとも1つの芳香環を有する可視化剤への結合を有する重合可能な部分を含み、前記少なくとも1つの芳香環は少なくとも1つのヨウ素原子を含み、前記少なくとも1つのヨウ素原子の少なくとも1つは放射性同位体である第1のモノマー、及び、
重合可能な部分を含む第2のモノマー、
の反応生成物を含む実質的に安定な生体適合性ポリマー粒子を含む、
ことを特徴とするポリマー組成物。
【0087】
[付記11]
前記結合は、生分解性である、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0088】
[付記12]
葉酸又はその官能化形態を更に含む、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0089】
[付記13]
前記放射性同位体は、123I、124I、125I、131I、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0090】
[付記14]
前記放射性同位体は、123Iである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0091】
[付記15]
前記放射性同位体は、124Iである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0092】
[付記16]
前記放射性同位体は、125Iである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0093】
[付記17]
前記放射性同位体は、131Iである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0094】
[付記18]
前記第1のモノマーは、官能化トリヨードフェノール、1-((2-(メタクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニルオキシ)エチル-3,5-ジアセタミド-2,4,6-トリヨードベンゾエート、2-オキソ-2-(1-オキソ-1-(1-オキソ-1-(2,4,6-トリヨードフェノキシ)プロパン-2-イルオキシ)プロパン-2-イルオキシ)エトキシ)エチルアクリレート、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする付記10に記載のポリマー組成物。
【0095】
[付記19]
付記1に記載のポリマー組成物を、塞栓を必要とする管腔に送達すること、を含む塞栓方法。
【0096】
[付記20]
付記10に記載のポリマー組成物を、塞栓を必要とする管腔に送達すること、を含む塞栓方法。