IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋スチレン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】スチレン系難燃樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20231010BHJP
   C08L 101/04 20060101ALI20231010BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20231010BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20231010BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20231010BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L101/04
C08K13/02
C08L91/00
C08L25/18
C08J3/20 Z CET
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523074
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2019021715
(87)【国際公開番号】W WO2019235378
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2018106798
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】今野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宝晃
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 利春
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 圭太
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059041(JP,A)
【文献】特開2018-058942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系難燃樹脂組成物を製造する方法において、
前記スチレン系難燃樹脂組成物は、(A)臭素化ポリマー型難燃剤と、(B)スチレン系樹脂と、(C)安定剤と、(D)流動パラフィンを含み、臭素含有量が18質量%以上42質量%以下であり、
前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と前記(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(C)安定剤を5質量部以上30質量部以下(10質量部以上18質量部以下である場合を除く。)で含有し、
少なくとも前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と、前記(D)流動パラフィンを混合させた後、押出機で樹脂温度210℃未満で溶融混練することを特徴とするスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(C)安定剤が、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、ノボラック型エポキシ樹脂及びアルキルホスファイトから選ばれる少なくとも2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と前記(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(D)流動パラフィンを1質量部以上8質量部以下で含有することを特徴とする請求項1または2に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤が、
(a)ブタンジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体であり、
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5質量%以上90質量%以下であり、
(c)ブタジエン中に、1,2-ブタジエンを含有し、
(d)重量平均分子量(Mw)が1,000以上であり、
(e)1H-NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満であり、
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記押出機が二軸押出機であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法によりスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する工程と、
前記スチレン系難燃性樹脂組成物を成形する工程と、を有することを特徴とする難燃性樹脂成形体の製造方法
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法によりスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する工程と、
前記スチレン系難燃性樹脂組成物と、さらなるスチレン系樹脂とを成形する工程と、を有することを特徴とする難燃性樹脂成形体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤とを含む難燃性樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂成形体に難燃性を付与するために用いられる難燃剤としては、一般にヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)が用いられていたが、HBCDは、生体内蓄積性を有し、水生生物に有毒であり、分解しにくいという点から、代替品として臭素化ポリマー型難燃剤が検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、臭素化ポリマー型難燃剤の安定剤としてはアルキルホスファイト、エポキシ化合物が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
用途としては、押出成形用に使用される。押出成形の際は、分散性を考慮し、高濃度難燃剤マスターバッチ組成物が用いられる(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-516019号公報
【文献】特表2012-512942号公報
【文献】特開2013-23508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、スチレン系樹脂と臭素化ポリマー型難燃剤とを含有する熱安定性の優れた難燃性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、臭素化ポリマー型難燃剤と、スチレン系樹脂と、安定剤と、流動パラフィン又はエポキシ化植物油と、を用いて難燃性樹脂組成物(溶融物)を製造する際に、少なくとも臭素化ポリマー型難燃剤と、流動パラフィン又はエポキシ化植物油を混合させた後、押出機で樹脂温度210℃未満で溶融混練することによって本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.スチレン系難燃樹脂組成物を製造する方法において、
前記スチレン系難燃樹脂組成物は、(A)臭素化ポリマー型難燃剤と、(B)スチレン系樹脂と、(C)安定剤と、(D)流動パラフィンを含み、臭素含有量が18質量%以上42質量%以下であり、
前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と前記(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(C)安定剤を5質量部以上30質量部以下(10質量部以上18質量部以下である場合を除く。)で含有し、
少なくとも前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と、前記(D)流動パラフィンを混合させた後、押出機で樹脂温度210℃未満で溶融混練することを特徴とするスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
2.前記(C)安定剤が、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、ノボラック型エポキシ樹脂及びアルキルホスファイトから選ばれる少なくとも2種以上であることを特徴とする前記1に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
3.前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤と前記(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(D)流動パラフィンを1質量部以上8質量部以下で含有することを特徴とする前記1または2に記載のスチレン系難燃樹脂組成物の押出製造方法。
4.前記(A)臭素化ポリマー型難燃剤が、
(a)ブタンジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体であり、
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5質量%以上90質量%以下であり、
(c)ブタジエン中に、1,2-ブタジエンを含有し、
(d)重量平均分子量(Mw)が1,000以上であり、
(e)1H-NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満であり、
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上である
ことを特徴とする前記1から3のいずれかに記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
5.前記押出機が二軸押出機であることを特徴とする前記1から4のいずれかに記載のスチレン系難燃樹脂組成物の製造方法。
6.前記1から5のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法によりスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する工程と、
前記スチレン系難燃性樹脂組成物を成形する工程と、を有することを特徴とする難燃性樹脂成形体の製造方法
7.前記1から5のいずれかに記載のスチレン系難燃性樹脂組成物の製造方法によりスチレン系難燃性樹脂組成物を製造する工程と、
前記スチレン系難燃性樹脂組成物と、さらなるスチレン系樹脂とを成形する工程と、を有することを特徴とする難燃性樹脂成形体の製造方法
【発明の効果】
【0009】
本発明に関わるスチレン系難燃樹脂組成物の押出製造方法は、臭素化ポリマー型難燃剤を安定化させ、臭素化ポリマー型難燃剤の高濃度な熱可塑性樹脂組成物が製造可能となり、良好な外観を有する押出成形品を供給出来る為、産業上の利用価値は極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪(A)臭素化ポリマー型難燃剤≫
本発明に使用される(A)臭素化ポリマー型難燃剤は、従来公知のものであり、特許文献1や2で開示されるものがそのまま使用できる。好ましくは、以下の(a)から(f)の特徴を有する臭素化共重合体が好ましく用いられる。
(a)ブタンジエン及びビニル芳香族炭化水素を単量体成分として有する共重合体である。
(b)臭素化前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体の含有量が5質量%以上90質量%以下である。
(c)ブタジエン中に、1,2-ブタジエンを含有する。
(d)重量平均分子量(Mw)が1,000以上である。
(e)1H-NMR分光法による未臭素化非芳香族二重結合含有量が、臭素化前の共重合体の非芳香族二重結合含有量基準で50%未満である。
(f)熱重量分析(TGA、Thermogravimetric Analysis)による5%減量温度が200℃以上である。
【0011】
中でも、上記(a)から(f)の特徴を有し、ビニル芳香族炭化水素がスチレンである、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化スチレン・ブタジエンランダム共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体などがより好ましく挙げられる。特に臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体が好ましく、具体的には、ランクセス社の「EMERALD INNOVATION 3000」やICL社の「FR122P」、アルベマール社の「GREEN CREST」などの市販品が挙げられる。
【0012】
本発明において、臭素化ポリマー型難燃剤は、樹脂組成物中の臭素含有量が18質量%以上42質量%以下となるように添加量を調整する。
【0013】
≪(B)スチレン系樹脂≫
本発明の樹脂組成物に用いられる(B)スチレン系樹脂としては、スチレンのホモポリマー、スチレンと共重合可能なモノマーとのコポリマー、及びこれらにゴム補強したスチレン系樹脂が挙げられる。例えば、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合樹脂(AAS)、アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂等である。これらのスチレン系樹脂は単独乃至2種以上を同時に用いることも出来る。最も好ましいのはポリスチレンである。
【0014】
≪(C)安定剤≫
(C)安定剤としては特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルホスファイト等が挙げられる。(C)安定剤は、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、ノボラック型エポキシ樹脂及びアルキルホスファイトから選ばれる少なくとも2種以上であることが好ましい。
【0015】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられるが、好ましくはフェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、DL-α-トコフェロール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等を挙げることができる。
【0016】
ハロゲン捕捉剤は、樹脂組成物の製造プロセスの過程で生成する遊離ハロゲンを捕捉する成分である。例えば、炭酸マグネシウム化合物(ドロマイト系化合物、ハイドロタルサイト系化合物など)、過塩素酸マグネシウム化合物、アルミノケイ酸塩化合物(ゼオライトなど)、有機錫化合物等が挙げられる。中でも黒異物発生の抑制効果の点から、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とが好ましい。ドロマイト系化合物とは、CaMg(CO32或いはこれを含む化合物であり、ハイドロタルサイト系化合物は、Mg6Al2(OH)16CO3・nH2Oなどに代表される天然に産出する粘土鉱物の一種である。これらハロゲン捕捉剤は、単独で使用しても良いが、ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物とを併用することで、黒異物発生の抑制効果に加えて、変色の発生を効果的に抑制することができる。ドロマイト系化合物とハイドロタルサイト系化合物の質量比率は、好ましくは、ドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=10/90から90/10であり、より好ましくはドロマイト系化合物/ハイドロタルサイト系化合物=30/70から70/30である。
【0017】
ノボラック型エポキシ樹脂は、市販されているものを適用できる。例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である。好ましくはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
【0018】
アルキルホスファイトは、市販されているものを適用できる。例えば、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト及び、ジ-(2,4-ジ-(t-ブチル)フェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0019】
(C)安定剤の添加量は、(A)臭素化ポリマー型難燃剤と(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下が好ましい。酸化防止剤の添加量としては、好ましくは0.8質量部以上7質量部以下である。ハロゲン捕捉剤の添加量としては、好ましくは0.8質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上10質量部以下である。ノボラック型エポキシ樹脂の添加量としては、好ましくは4質量部以上25質量部以下である。アルキルホスファイトの添加量としては、好ましくは4質量部以上25質量部以下である。係る範囲であれば、樹脂組成物中における臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性を改善し、臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物や変色の発生が効果的に抑制される。
【0020】
≪(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油≫
本発明において用いられる流動パラフィンは、沸点的には潤滑油留分に属する、きわめて純度の高い液状飽和炭化水素の混合物であると定義される公知のもの(ホワイトオイルと称される)であれば差し支えない。
【0021】
本発明において用いられるエポキシ化植物油としては市販されているものを適用できる。例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油である。好ましくはエポキシ化大豆油である。
【0022】
(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油の添加量は、(A)臭素化ポリマー型難燃剤と(B)スチレン系樹脂との合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上8質量部以下、より好ましくは3質量部以上6質量部以下である。係る範囲であれば、樹脂組成物中における(A)臭素化ポリマー型難燃剤の熱安定性を改善し、(A)臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物や変色の発生が効果的に抑制される。
【0023】
≪他の添加剤≫
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤を添加する事が出来る。例えば、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族アマイド系滑剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸系滑剤等の滑剤、タルク、マイカ、シリカ等の充填剤、ガラス繊維等の補強剤、顔料、染料等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の帯電防止剤である。
【0024】
≪製造方法≫
本発明の樹脂組成物の製造方法は、溶融混練の前に、少なくとも(A)臭素化ポリマー型難燃剤と、(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油を十分に混合する事前混合(予備ブレンド)を行う工程を有する。事前混合の際、十分に混合できるのであれば(B)スチレン系樹脂、(C)安定剤、他の添加剤を加えても良い。(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油は事前混合とは別に別フィーダーから添加しても良いが、(A)臭素化ポリマー型難燃剤を(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油と事前混合せず、別フィーダーから添加して溶融混練すると、(A)臭素化ポリマー型難燃剤の熱劣化による黒異物や変色が発生してしまう。事前混合の混合方法としては、例えばミキサー型混合機、V型ブレンダー、及びタンブラー型混合機等の混合装置を用いた方法が挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、事前混合したブレンド物を、押出機で樹脂温度210℃未満で溶融混練する工程を有する。押出溶融混練方法は特に制限はなく公知の溶融技術を適用出来る。好適な溶融混練装置として、単軸押出機、特殊単軸押出機、及び二軸押出機等がある。好ましくは、二軸押出機である。押出機の溶融技術としては混練装置の途中からブレンド物をサイドフィーダーで供給する方法、及び液体をフィードノズルより、公知の液体運搬用ポンプで樹脂圧力以上の吐出圧で供給する方法がある。
【0026】
≪成形体≫
本発明の第一の成形体は、本発明の製造方法により製造されたスチレン系難燃性樹脂組成物を成形してなる。また、本発明の第二の成形体は、本発明の製造方法により製造されたスチレン系難燃性樹脂組成物と、さらなるスチレン系樹脂とを成形してなる。本発明の第二の成形体は、本発明の製造方法により製造されたスチレン系難燃性樹脂組成物をマスターバッチとして用いた成形体である。さらなるスチレン系樹脂としては、(B)スチレン系樹脂として説明したスチレン系樹脂が挙げられる。成形方法としては、射出成形、押出成形等の公知の方法が適用できる。
【実施例
【0027】
以下に例を挙げて具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
〔(A)臭素化ポリマー型難燃剤〕
ランクセス社製「EMERALD INNOVATION 3000」(前記(a)から(f)の特徴を有する臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素含有量:60質量%)
【0029】
〔(B)スチレン系樹脂〕
重量平均分子量(Mw)20万、メタノール可溶成分量1.2質量%であるスチレンのホモポリマー(ポリスチレン)を使用した。尚、重量平均分子量(Mw)、メタノール可溶成分量は以下の方法で測定した。
【0030】
〈重量平均分子量(Mw)の測定〉
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製「Shodex GPC-101」
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製「PLgel 10μm MIXED-C」
移動相:クロロホルム
試料濃度:0.2質量%
温度:40℃(オーブン)
検出器:示差屈折計
本発明における各成分の分子量測定は、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0031】
〈メタノール可溶成分量の測定〉
試料1gを溶媒(メチルエチルケトン)40mlに溶解し、10倍量の貧溶媒(メタノール)400mlでポリスチレンを再沈させ、再沈ポリスチレンの質量を求め、残分をメタノール可溶成分量とした。
【0032】
〔(C)安定剤〕
C-1:酸化防止剤 BASFジャパン社製「Irganox 1076」(オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)
C-2:ハロゲン捕捉剤 味の素ファインテクノ株式会社製「プレンライザーHC-100B」(ドロマイト系化合物)
C-3:ハロゲン捕捉剤 日東化成株式会社製「MC-63A」(ハイドロタルサイト系化合物)
C-4:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 ハンツマン・ジャパン社製「ARALDITE(登録商標)ECN 1280」
【0033】
〔(D)流動パラフィン又はエポキシ化植物油〕
D-1:流動パラフィン エクソンモービル社製「クリストール N352」
【0034】
D-2:エポキシ化大豆油 日油株式会社製「ニューサイザー510R」
【0035】
(実施例1から4、比較例1から6(実施例2,4は参考例)
表1に示す配合量で、各成分を混合機に投入して予備ブレンド(事前混合)を行い(比較例1、2は(A)成分と(D)成分の予備ブレンドなし)、ブレンド物を二軸押出機(東芝株式会社製「TEM26SS:14バレル」)に定量フィーダを用いて供給し、シリンダー温度180℃(比較例3は220℃)、総供給量30kg/時間、スクリュー回転数300rpmの押出条件で溶融混練した。尚、比較例1、2は(B)スチレン系樹脂と(C)安定剤と(D)流動パラフィンまたはエポキシ化植物油を予備ブレンドしたが、(A)臭素化ポリマー型難燃剤は別フィードした。押し出されたストランドは水冷してからペレタイザーへ導き、樹脂組成物のペレットを得た。樹脂温度の測定は、押出機のダイス穴に樹脂温度計を挿入して測定を行った。得られた樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を以下の方法で測定し、下記異物評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
〔臭素含有量の測定方法〕
樹脂組成物のペレット中の臭素含有量を燃焼-イオンクロマトグラフィーにて以下の条件で測定した。
機種:三菱化学株式会社製「AQF-100」及びダイオネクス社製「DX-120」
燃焼管温度:1000℃
検出器:電気伝導度検出器
カラム:AS12A
流量:1.5ml/min
溶離液組成:2.7mM-Na2CO3+0.3mM-NaHCO3
試料導入量:5μl
試料量:3mg
【0037】
〔異物評価〕
樹脂組成物のペレットを射出成形機(日本製鋼所株式社製「J100E-P」)にて、縦×横×厚さ=90mm×90mm×2mmの成形体を、樹脂温度:180℃、金型温度:40℃の条件で成形した。目視にて黒異物の発生状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:黒異物が0個以上4個以下発生。
×:黒異物が5個以上発生。
【0038】
【表1】
【0039】
表1より本発明の実施例より、本発明の規定を満足する物は、臭素化ポリマー型難燃剤の劣化による異物発生が無い事がわかる。しかし本発明の規定を満足しない比較例で製造したものは、臭素化ポリマー型難燃剤の劣化による異物発生が発生している事がわかる。