(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】オストミー器具のための相補材料要素
(51)【国際特許分類】
A61F 5/448 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
A61F5/448
(21)【出願番号】P 2020524856
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 DK2018050279
(87)【国際公開番号】W WO2019091527
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-26
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500085884
【氏名又は名称】コロプラスト アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】リカルド モルガン ヒクモット
(72)【発明者】
【氏名】フィリプ ホレル ラングホルン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフェル ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ヨールゲン ドーケ フォン バルネル
(72)【発明者】
【氏名】アンデルス グロべ スンド
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05496296(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/448
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オストミー器具の基板に取り付け可能であるように構成され、且つ放出層を含む相補材料要素であって、前記放出層は、前記相補材料要素が水分にさらされることに応答して前記相補材料要素から放出可能であるように構成された中和成分を含み、前記相補材料要素は、第1の面及び第2の面を含み、前記第1の面は、第1のカバー層を備え
ており、
前記中和成分は、ストーマ排泄物を中和させるように作用して、皮膚の浸軟、接触性皮膚炎及び/又は接着剤の劣化を回避又は減少させる、
相補材料要素。
【請求項2】
前記第2の面は、第2のカバー層を備える、請求項1に記載の相補材料要素。
【請求項3】
前記第1のカバー層及び前記第2のカバー層は、外周に沿って一緒に封止される、請求項2に記載の相補材料要素。
【請求項4】
前記放出層は、マトリックス構造として提供される、請求項1に記載の相補材料要素。
【請求項5】
前記相補材料要素の前記第2の面は、オストミー器具の基板に取り付けられるように構成される、請求項1に記載の相補材料要素。
【請求項6】
前記第2の面は、接着材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項7】
少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項8】
前記第1のカバー層は、不透水性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項9】
前記第1のカバー層は、透水性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項10】
発泡層は、前記放出層と前記第1のカバー層との間に挿入される、請求項1~9のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項11】
ディスク形状である、請求項1~10のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項12】
前記要素の中心から前記要素の縁まで半径方向に延在する切り欠き部を設けられている、請求項1~11のいずれか一項に記載の相補材料要素。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の相補材料要素と、
オストミー器具のための基板であって、
裏打ち層の第1の面に設けられた接着層を含む基板と
を含む部品のキット。
【請求項14】
前記基板の前記裏打ち層の前記第2の面に取り付けられた身体老廃物収集袋をさらに含む、請求項13に記載の部品のキット。
【請求項15】
前記要素の少なくとも一部分は、前記身体老廃物収集袋の近位内壁の一部を覆うように延在する、請求項14に記載の部品のキット。
【請求項16】
前記基板の前記裏打ち層の前記第2の面に設けられた第1の結合半体と、身体老廃物収集袋であって、前記身体老廃物収集袋の入口開口部の周囲に設けられた第2の結合半体を有する身体老廃物収集袋とをさらに含む、請求項13に記載の部品のキット。
【請求項17】
前記基板は、前記相補材料要素に取り付けるための第2の取付手段を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オストミー器具のための相補材料要素及び部品のキットに関する。
【0002】
本開示は、オストミー器具の基板に取り付け可能であるように構成された相補材料要素の態様を提供する。相補材料要素は、添付の特許請求の範囲によって定義され且つ特徴付けられる。
【背景技術】
【0003】
ストーマ排泄物は、体液及び内臓内容物を含むことが多く、これらは、使用者の皮膚及びオストミー装置の両方に対して攻撃的であり、特に、これらは、オストミー装置を使用者の皮膚表面に取り付けるために適用される接着材料の効率及び完全性に悪影響を与える。一部のオストミストは、長期間にわたって装置を装着することを選択する可能性があるか又はそうせざるを得ない。一般的な使用者、特にこれらのオストミストには、安全で信頼性高く且つ効率的なオストミー装置が非常に望ましい。さらに、ストーマ排泄物の攻撃的な内容物に対して使用者の皮膚を保護する装置が望ましい。
【発明の概要】
【0004】
そのような要求、例えば長期にわたる装着時間及び/又は皮膚のより高い保護度合いの要求を満たすオストミー装置を提供するために多くの試みがなされてきたが、オストミー装置の満足のいく程度に長い装着時間又は皮膚の保護を達成するための十分な効率をもたらすことは、引き続き満たされていないニーズである。オストミスト(オストミー器具使用者)及びヘルスケアの専門家は、そのような要求をより良好に満たすオストミー装置の改良を歓迎するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
添付図面は、実施形態のさらなる理解をもたらすために含まれ、及び本明細書に組み込まれ且つその一部である。図面は、実施形態を示し、且つ記載と共に実施形態の原理を説明する役割を果たす。他の実施形態及び実施形態の意図した利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することによってより良好に理解されることが容易に理解される。図面の要素は、必ずしも互いに縮尺通りではない。同様の参照符号は、対応する同様の部分を指す。
【0006】
【
図1】オストミー器具の身体側部材の一実施形態の概略的な断面図である。
【
図3】相補材料要素の実施形態の概略的な断面斜視図である。
【
図4】縁が封止された状態の相補材料要素の実施形態の概略的な断面図である。
【
図5】タブ部材を備える相補材料要素の実施形態の概略的な断面図である。
【
図6】発泡層を備える相補材料要素の実施形態の概略的な断面斜視図である。
【
図7】切り欠き部を備える相補材料要素の実施形態の上面図である。
【
図8】相補材料要素が収集袋の近位内壁の上側を覆って延在している状態の器具の実施形態の断面図である。
【
図9】非対称的な相補材料要素がさらに上方に延在している状態の器具の実施形態の断面図である。
【
図10】非対称的な相補材料要素がさらに下方に延在している状態の器具の実施形態の断面図である。
【
図11】補的材料要素を備える器具の実施形態の断面図であり、ここで、相補材料要素が点で取り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部をなし、例として本発明が実施され得る特定の実施形態が示されている添付図面に言及する。この点について、「上部」、「底部」、「前」、「後」、「前方」、「後方」などの方向の用語を、説明している図面の向きを参照して使用する。実施形態の構成要素は、いくつかの異なる向きに位置決めされ得るため、方向の用語は、説明のために使用され、何ら限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を用い得ること及び構造的又は論理的な変更形態がなされ得ることが理解される。従って、以下の詳細な説明は、限定ととられるべきではなく、及び本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0008】
本明細書で説明する様々な例示的な実施形態の特徴は、特に具体的に断りのない限り、互いに組み合わされ得ることが理解される。
【0009】
本開示を通して、単語「ストーマ」及び「オストミー」は、人の腸又は尿路系を迂回する、外科的に形成された開口部を示すために使用される。これらの単語は、交換可能に使用され、且つ差別化された意味を意図するものではない。同様のことは、いずれの単語又はそれらから派生する表現、例えば「ストーマの」、「オストミー」などにも当てはまる。また、ストーマから放出される固形老廃物及び液状老廃物は、いずれもストーマの「排泄物」、「老廃物」及び「流体」と交換可能に呼ばれ得る。
【0010】
本明細書では、(ストーマ)排泄物は、多かれ少なかれ粘性のある形態の糞便及び/若しくは尿並びに/又は消化管の上皮層から分泌されるムチンである、ストーマからの流出物を意味する。結腸造瘻の場合、排泄物は、実質的に固形物であり得るが、回腸造瘻は、より液状の排泄物を生じる。排泄物は、酵素及び他の成分を備える消化液を含有し得、これらの酵素及び他の成分は、皮膚に攻撃性があることがあるため、皮膚と接触すると皮膚の浸軟及び接触性皮膚炎を引き起こす可能性があり、且つ排泄物は、接着剤を攻撃して劣化させ得る成分を含み得る。
【0011】
オストミー手術を受けた対象者は、「オストミスト」又は「オストメイト」 - さらにまた「患者」又は「使用者」と呼ばれ得る。しかしながら、場合により、「使用者」は、ヘルスケアの専門家(HCP)、例えば外科医又はオストミーケア看護師などにも関連し得るか又はそれらを指し得る。そのような場合、「使用者」は、「患者」自身でないことが明記され得るか又は文脈から暗示される。
【0012】
下記では、装置又は装置の一部の近位側の面を指す場合には常に、オストミー器具が使用者によって装着されるときの、皮膚に対面する側の面を指す。同様に、装置又は装置の一部の遠位側の面を指す場合には常に、オストミー器具が使用者によって装着されるときの、皮膚から見て外方に向く側の面を指す。換言すると、近位側の面は、器具が使用者に取り付けられているときの、使用者に最も近い側の面であり、及び遠位側の面は、反対側の側面 - 使用中に使用者から最も離れている側の面を指す。
【0013】
軸方向は、器具が使用者によって装着されるときのストーマの方向と定義される。従って、軸方向は、使用者の皮膚又は腹部表面に対してほぼ垂直である。
【0014】
半径方向は、ストーマの方向に対して直角である、軸方向に対して直角と定義される。一部の文では、単語「内側」及び「外側」が使用され得る。これらの修飾語は、一般的に、半径方向を参照して理解され、「外側」要素への言及は、この要素が、「内側」と言及される要素よりも、オストミー器具の中心部分から離れていることを意味する。さらに、「最も内側」は、構成要素の中心を形成し、且つ/又は構成要素の中心に隣接している構成要素の部分であると解釈されるべきである。同様に、「最も外側」は、構成要素の外縁若しくは外面形状を形成し、且つ/又は外縁若しくは外面形状に隣接している構成要素の部分であると解釈されるべきである。
【0015】
本開示におけるいくつかの特徴又は効果に対する、修飾語としての表現「実質的に」の使用は、単に、いずれの逸脱も、通常、当業者によって予期されるであろう許容範囲内にあることを意味することを意図する。
【0016】
一態様では、本開示は、オストミー器具の基板に取り付け可能であるように構成され、且つ放出層を含む相補材料要素であって、放出層は、相補材料要素が水分にさらされることに応答して相補材料要素から放出可能であるように構成された中和成分を含み、相補材料要素は、第1の面及び第2の面を含み、第1の面は、第1のカバー層を備える、相補材料要素に関する。
【0017】
相補材料要素(下記では「CME」と示す)は、オストミー器具の基板から分離され、且つそれに取り付け可能である要素であると理解される。表現「基板」は、オストミー器具の技術分野内で一般に使用され、当業者は、この用語を熟知している。用語「基板」は、器具を使用者のストーマの周囲の皮膚表面、通常、接着インターフェースによって取り付けるオストミー器具の要素又は部分に使用される。従って、本開示では、用語「CME」は、オストミー器具の基板ではなく、それ自体が「スタンドアロン」の要素である要素を意味することを意図する。「CME」は、オストミー器具の基板に取り付けられるように構成されるが、さもなければ個別の又は異なる要素である。
【0018】
特に、「CME」の放出層は、中和成分を含む。中和成分は、「CME」が水分にさらされることに応答して「CME」から放出されるように構成される。従って、「CME」が、使用者によって装着されるオストミー器具の基板に取り付けられる(それと一緒に使用される)と、ストーマ排泄物の水分含量は、「CME」からの中和成分の放出を開始、維持及び/又は加速するように作用する。中和成分に好適な材料は、下記で説明する。
【0019】
オストミー器具が、ストーマを取り囲む皮膚に適用されると、基板上の接着剤が理想的には皮膚に密着、すなわち封止して、上述の通り皮膚にダメージを与える可能性があり且つ接着剤を劣化させる傾向があるストーマ排泄物が基板の接着剤の下側に伝わることを回避する。基板の接着剤の下側に伝わるか又は染み出るいずれのストーマ排泄物も可能な限り回避される必要がある。なぜなら、そのような排泄物は、皮膚の浸軟、接触性皮膚炎及び接着剤の劣化を引き起こし、接着剤の不具合、最終的に使用者の衣服へのストーマ排泄物の漏れを生じる可能性があり、使用者にとって汚名を着せる恥ずかしい思いをさせ、明らかに不快であるためである。しかしながら、経験から、そのような問題のいずれか又は全ての種類を回避することは、極めて困難であり、使用者は、定期的にこれらの問題に直面していることが分かっている。
【0020】
本開示によれば、そのような接着剤の不具合は、「CME」の放出層に含まれる中和組成物が、水分が存在すると放出されるように構成され、それによりストーマ排泄物の攻撃的な内容物を中和させるように作用して、皮膚の浸軟、接触性皮膚炎及び/又は接着剤の劣化を回避又は減少させるのを支援することで克服され得る。加えて及び/又は代わりに、中和組成物は、ストーマ排泄物の損傷効果をゆっくりにする、すなわち減速させるように作用し、場合によりオストミー器具の装着時間の延長又は長期にわたる装着時間をもたらし、これは、次に、現実的な利点及び経済的な利点の両方をもたらす。
【0021】
個々の使用者のストーマ及び身体(皮膚表面)に合うようにオストミー器具の基板を準備するとき、器具の基板にあるオストミー受け入れ開口部を正しい形状及びサイズにトリミング又は切断(例えば、特別な鋏を用いて)することを伴うことが多い。それにより、切断された縁がストーマに食い込むことを回避するため、且つ基板にあるそのような開口部のかなりの精度での適合が困難であるため、切断/適合は、ほとんどの場合、器具が使用者のストーマの周囲に適用されるとき、接着剤基板にある被切断開口部の縁と使用者のストーマとの間に小さい間隙(距離)を残す。しかしながら、そのような間隙は、とりわけ腸の蠕動運動に起因してストーマが「機能する」(すなわち拡張及び収縮する)ための余裕をもたらすことを支援する。多くの場合、ストーマは、ストーマ排泄物を送るときに拡大し、及びそうでないときに短くなる。この間隙は、ストーマ周囲間隙とも呼ばれる。ストーマ排泄物は、必然的に、ストーマ周囲間隙に流入し、且つ時間が経つにつれて、皮膚と基板との間の接着インターフェースの下側に伝わることができる。
【0022】
従って、オストミー受け入れ開口部及び/又はストーマ周囲間隙の提供は、基板の接着層の損傷及び劣化のリスクにも寄与し、これに皮膚刺激、浸軟及び/又は他の皮膚の問題が追随する可能性がある。
【0023】
オストミー器具のための基板と共に、中和成分を含む放出層を含む「CME」を提供することにより、中和成分は、ストーマ排泄物と接触してストーマ周囲間隙内に向けられ得る。それにより、使用者の皮膚及びストーマ周囲間隙にあり、且つそれに隣接する基板の接着層の両方ともストーマ排泄物の損傷効果から保護される。ストーマ排泄物がストーマから出てストーマ受け入れ開口部を通過し、収集袋に移るとき、少量の中和成分が収集袋に押し入れられ得るが、本開示の「CME」は、中和成分の大部分が特にストーマ周囲間隙に流れるように向けられて、ストーマ排泄物と相互作用し、その有害成分を中和させ、且つ接着層の劣化を回避するか又は遅らせることを保証するように構成される。
【0024】
経験により、ストーマ排泄物は、いくつかある要因の中で特にストーマのタイプに依存して、ストーマから出るとき、実質的に連続的に流れ得るか、又は収集袋に一気に入り得ることが分かっている。オストミー器具の使用者が立位であるとき、ストーマ排泄物は、重力に起因して連続的に下方に流れ、それにより、器具が装着されるときにストーマの下(真下又は下側)に位置する基板の部分を主に「濡らす」又は「汚す」ように作用し得る。しかしながら、ストーマ排泄物は、上方にも次第に広がって、器具が装着されるときにストーマの上に(より高く又は上側を覆って)位置する基板の部分を「濡らす」又は「汚す」ことが知られている。
【0025】
特に、収集袋の遠位壁がストーマのより近くに押圧された状態で(例えば、使用者の衣服、ベルト、ズボンの裏地などにより)ストーマ排泄物が収集袋内に一気に入ると、ストーマ排泄物は、ストーマの上の(より高い又は上側を覆う)領域も含め、基板の中心部分一面に広がり得ることが知られている。衣服が収集袋の遠位壁をストーマに押し付けている状態で、収集袋を装着している使用者に関し、ストーマ排泄物は、基板、収集袋の遠位壁及び基板と収集袋との間の取り付け部(おそらく基板と収集袋との間の結合配置構成)によって画定された体積部に閉じ込められて、そこを満たし得る。従って、ストーマ排泄物は、重力によって直ちに又は専ら下方に押しやられるだけでなく、収集袋にある入口開口部の上にある(上側を覆う)収集袋の領域を「濡らす」又は「汚し」、場合によりストーマ周囲間隙も「汚す」ような(そこに作用する力による)影響も受け得る。
【0026】
要するに、オストミー器具の通常の使用中、ストーマ排泄物は、それ自体、単に重力によって収集袋のリザーバ体積部の「底部」に押しやられる「理想的な挙動」を行うわけではない。むしろ、ストーマ排泄物は、ストーマの上にある(より高い又は上側を覆う)領域/場所を含め、収集袋の入口開口部からいずれの方向にも移動することができる(又はそのように追いやられる)。場合により、ストーマ排泄物は、収集袋の(遠位及び/又は近位)壁を汚し、且つ基板の遠位面のいずれの場所にも進み、且つストーマ周囲間隙に「戻る」こともできる。従って、ストーマ排泄物が「行き着いて」問題をもたらす箇所を予測することは、簡単ではない。本開示は、「緩和する」中和成分を放出するように構成される「CME」を提供することにより、接着剤の不具合を回避若しくは防止するか、又は少なくとも使用者の皮膚表面、ストーマ及び/若しくはオストミー器具の構成要素の、起こり得るストーマ排泄物による損傷及び有害作用の影響を低下させることを支援する解決法を提供する。
【0027】
上記から、本開示の発明の考えでは、本発明者らは、中和成分がその有益な効果をもたらすことができるようにするために、中和成分が、本来、ストーマの表面の近くに若しくはそれに直接接触して、又はストーマ周囲間隙若しくは皮膚表面に直接提供される必要がないことを認識したことが理解される。実際、中和成分の効果は、とりわけ、オストミー器具が装着されるとき、ストーマ周囲間隙、収集袋の入口開口部の周囲及び/又は基板上、例えば使用者の皮膚から見て外方に向く基板の遠位面上を含め、基板の中心部分上にある収集袋の領域に中和成分を放出できるようにすることによって達成可能であることが認識された。いくつかの実装形態では、「CME」は、基板の近位面(使用者の皮膚に対面する)及び基板の遠位面(収集袋の収集体積部の内部に対面するか又はそこに曝露されている)の両方に向かって中和成分を放出するように適合され得る。
【0028】
実施形態では、「CME」は、ストーマ及び/又は使用者からのストーマ排泄物を受け入れるように構成される開口部を含む。実施形態では、開口部は、基板の貫通穴よりも小さいか又はそれに対応し得る。基板の穴及び「CME」の開口部のサイズは、ストーマに合うように、適用前に切断することによって適合され得る。実施形態では、開口部は、基板の貫通穴よりも大きいか又はそれに対応し得る。実施形態では、基板の穴は、適用前に大きく切断され得、及び「CME」の開口部が大きい場合、「CME」の切断は、不要であり得る。
【0029】
実施形態では、「CME」は、開口部を取り囲む縁である内縁に沿って封止される。そのようなシーリングは、保存中、「CME」の内容物が「CME」から流れて逃げることを防止し得る。実施形態では、「CME」は、開口部に沿ってシーリングを破損する手段を含むため、中和成分が使用中に放出され得る。実施形態では、シーリングは、ラベル又はストリングを含み、これは、「CME」から取り外されるとき、封止された縁を破って開ける。
【0030】
実施形態では、「CME」は、内縁に沿って開かれ、それにより使用準備が整った製品を提供する。
【0031】
「CME」は、要素の第1の面にカバー層を備える。実施形態では、第1の面は、「CME」の遠位側の面にある。カバー層は、「CME」が収集袋の内部に付着しないようにすることを促し、及びカバー層は、中和成分の放出を制御できる。
【0032】
実施形態では、第2の面の相補材料要素は、第2のカバー層を備える。実施形態では、第2の面は、「CME」の近位側の面にある。実施形態では、第1及び第2のカバー層は、外周に沿って一緒に封止されて、放出層を含む閉鎖エンベロープを画定する。実施形態では、外縁に沿ったシーリングは、全体的に流体密封されるのではなく、エンベロープの内部のガスのポケットがシーリングプロセス中に逃げることができるようにする。
【0033】
実施形態では、相補材料要素の第2の面は、オストミー器具の基板に取り付けられるように構成される。表面は、接着材料を含み得る。接着材料は、例えば、連続的な接着層、パターン状に被覆された接着層であり得るか、又は接着材料は、1つ以上の離散した領域に配置され得る。実施形態では、接着材料は、ストーマに適応するように穴の周囲に同心円に配置される。実施形態では、複数の個々の接着剤領域は、「CME」の外面に設けられる。実施形態では、相補材料要素は、少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含む。剥離ライナーは、接着材料を覆い得、且つ使用前に取り除かれる。
【0034】
実施形態では、第1のカバー層は、不透水性であるか又は低い透水性を有する。これにより、放出層は、「CME」から第1のカバー層を通して意図せずに漏れないようにすることを促す。放出層が粘性であるか又は揮発性成分を含む場合、不透水性カバー層は、より良好な保存安定性を提供する。実施形態では、第1のカバーは、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、PVDC(ポリ二塩化ビニル)フィルム又はこれらを含むラミネートなどのポリマーフィルムを含み得る。
【0035】
実施形態では、第1のカバー層は、透水性である。これにより、ストーマからの排泄物からの水分は、より大きい表面にわたって放出層に入ることができ、それにより中和成分のより迅速な放出を達成する。実施形態では、カバー層は、中和成分の制御放出をもたらすように設計される。実施形態では、第1のカバー層は、不織又はネットであり得る。実施形態では、第1のカバー層は、複数の穴が設けられた不透過性フィルムである。
【0036】
実施形態では、第2のカバー層は、不透水性であるか又は低い透水性を有する。実施形態では、第2のカバーは、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、PVDC(ポリ二塩化ビニル)フィルム又はこれらを含むラミネートなどのポリマーフィルムを含み得る。
【0037】
実施形態では、第2のカバー層は、透水性である。実施形態では、カバー層は、不織又はネットであり得る。実施形態では、第2のカバー層は、複数の穴が設けられた不透過性フィルムである。
【0038】
実施形態では、第1のカバー層及び第2のカバー層は、同じ材料から作製される。
【0039】
実施形態では、カバー層は、透明、半透明又は不透明であり得、中和成分の内容物を外部から検査できるようにする。実施形態では、カバー層は、透明性がなく、エンベロープに入るストーマからのいずれの排泄物も視覚的に隠すようにする。
【0040】
実施形態では、「CME」の少なくとも1つの面は、あるパターンを示すようにエンボス加工される。実施形態では、エンボス加工は、第1及び第2の層を線又は点のパターンに一緒に取り付けることによってもたらされる。
【0041】
実施形態では、放出層と第1のカバー層との間に発泡層が挿入される。そのような発泡層は、排泄物によって濡らされ、それにより「CME」の第1の面にわたって放出層を排泄物からの水分に曝露させ得る。
【0042】
相補材料要素は、任意の好適な形状を有し得る。実施形態では、要素は、ディスク形状であり、任意選択的に、ストーマを収容する中心貫通穴を備える。実施形態では、「CME」は、穴を備えずに設けられるため、使用者は、穴を使用者のストーマに適合し得る。実施形態では、それは、実質的に平坦なシートのような構成を有する。実施形態では、相補材料要素は、円、卵形又は液滴形状である外周を有する。
【0043】
実施形態では、相補材料要素は、要素の縁から半径方向内向きに延在する切り欠き部を設けられている。そのような切り欠き部は、ストーマの周囲への要素の簡単な配置を促進する。
【0044】
実施形態では、放出層がマトリックス構造として提供される。実施形態では、放出層は、2種以上の中和成分を含み得る。実施形態では、中和成分は、2種類以上の中和成分を含み得る(例えば、ストーマ排泄物の異なる物質を中和させるため)。いくつかの実装形態では、1種の中和成分によって提供される有益な効果及び/又は1種の中和成分は、別の種類の中和成分及び/又は中和成分が存在することによって増幅され、接着剤の不具合、皮膚浸軟、接触性皮膚炎、漏出事故などの普及を防止するか又は少なくとも低下させる点でさらに良好な結果をもたらし得る。
【0045】
実施形態では、放出層のマトリックス構造は、中和成分を組み込んでいる。中和成分は、マトリックス中に溶解し得るか、又はマトリックス中に粒子として分散され得る。実施形態では、マトリックスは、被覆中和物質粒子を含む。マトリックスは、中和成分のキャリアとしての機能を果たし、且つ中和成分を放出するように構成される。実施形態では、マトリックスは、マトリックスが一定の条件にさらされるか又は曝露されると中和成分を放出するように構成される。そのような条件は、例えば、水分を含むストーマ排泄物の存在又は他の源からの水分、例えば使用者の体からの汗の存在下であり得る。
【0046】
収集袋の収集体積部内では、湿度は、100%の湿度の近くに迅速に到達するため、水分の存在がかなりある。実施形態では、中和成分の放出は、収集袋内の高相対湿度に起因して、オストミー器具を使用者に適用した直後に開始する。
【0047】
実施形態では、マトリックスは、ゲル、フォーム、フィルム層、又は紙、又はコーティングの1つ以上を含む。そのようなコーティングは、例えば、固体コーティング又は粉体コーティングであり得る。実施形態では、マトリックス及び中和成分は、ゾルなどのコロイド溶液を形成する。マトリックスの1つの好適な例は、50%w/wのポリイソブチレン(PIB)、及び25%w/wのCMC、及び25%w/wのペクチンの接着剤を含む。
【0048】
実施形態では、水溶性フィルムの形態のマトリックスは、PVOHベースの熱可塑性フィルム、例えばkurakay WS Film Division(商標)(Portage、Indiana、United States)からのMonosol(登録商標)7031フィルムを含む。
【0049】
実施形態では、マトリックスは、水(水分)又はストーマ排泄物の成分中で可溶性であるように構成される。マトリックスは、徐々に溶け得、徐々にとは、本明細書では、マトリックスが瞬間的に劣化しないが、基板を装着している間に徐々に溶解することを意味する。実施形態では、ストーマからの排泄物が放出層の上側を覆って浮いているとき、マトリックスは、溶解し、及び中和成分は、洗い流され、及び中和成分の少なくとも一部は、ストーマ周囲間隙に入る。
【0050】
実施形態では、マトリックスは、水分を吸収し且つ吸湿によって湿潤されると、ゲルのような物質に変化するように構成される。ゲルは、初期の乾燥形態で送達され、且つその後、水分と接触するとゲルに膨潤するように構成され得る。ゲルは、水又は排泄物(水分)の成分中で徐々に溶け得るか又は不溶性であるが、ストーマ排泄物及び/又は水分に曝露されると中和成分を放出でき得る。マトリックスに好適な材料の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)ベースのマトリックス及びCMC又はゼラチンなどの親水コロイドであり得る。
【0051】
実施形態では、マトリックスは、多糖類及び/又は親水コロイドを含む。多糖類又は親水コロイドは、排泄物に曝露されると溶解又は水和し、それにより中和成分を放出するように構成され得る。
【0052】
実施形態では、マトリックスは、タンパク質を含む。
【0053】
実施形態では、マトリックスは、実質的に非接着性である。非接着性により、マトリックスが接着性ではない(付着しない)と理解されるべきである。しかしながら、いくつかの実装形態では、マトリックスは、特定の条件下において、湿潤されるとわずかに粘着性であるようになるように構成される。非接着性マトリックスは、袋の遠位壁に付着する傾向が少ない。実施形態では、マトリックスは、粘着性であり得るが、第1のカバー層の存在により、マトリックスが袋の遠位壁に付着することを防止し得る。
【0054】
一態様では、本開示は、本明細書で開示されるような相補材料要素と、オストミー器具のための基板とを含む部品のキットに関する。基板は、裏打ち層の第1の面に設けられた接着層を含む。任意選択的に、基板は、裏打ち層の第1の接着面に設けられた剥離ライナーを含む。
【0055】
実施形態では、基板の裏打ち層の第2の面に取り付けられた身体老廃物収集袋である。
【0056】
実施形態では、要素の少なくとも一部分は、収集袋の近位内壁の部分を覆うように半径方向に延在する。これにより、放出層をより大きい面積にすることを容易にし、且つ「CME」の厚さを薄くすることができ、それにより器具の柔軟性を高める。
【0057】
実施形態では、基板の裏打ち層の第2の面に設けられた第1の結合半体であり、及び収集袋の入口開口部の周囲に設けられた第2の結合半体を有する身体老廃物収集袋である。
【0058】
実施形態では、基板は、相補材料要素に取り付けるための第2の取付手段を含む。
【0059】
実施形態では、相補材料要素は、使用者又はヘルスケアの専門家によって基板に取り付け可能である。代わりに、要素は、製造時に基板に取り付けられ、且つ取り付けられた構成で使用者に届けられる。そのような取り付けは、とりわけ、使用者のストーマへの開口部のサイズ及び形状のカスタマイズが求められるとき、基板にあるストーマ受け入れ開口部を簡単に適合できるようにする。実施形態では、「CME」は、溶接、ラミネーション、ホットメルト接着剤又は両面接着テープによって基板に取り付けられる。
【0060】
実施形態では、部品のキットは、基板の裏打ち層の第2の面に取り付けられた身体老廃物収集袋をさらに含む。これらの実施形態では、収集袋は、製造時に既に基板に取り付けられており、且つオストミー器具分野で一般に理解されるようなワンピースオストミー器具であると理解され得る。本開示のワンピースオストミー器具のそのような実施形態は、取り付けられた又は取り付け可能な相補材料要素と組み合わせられることに起因して、長期にわたる装着時間を有し得るワンピース器具を提供する。従って、収集袋は、結合配置構成により、基板に対して取り外し可能に又は永久的に取り付け可能であり得る。
【0061】
実施形態では、基板の裏打ち層の第2の面は、第1の結合半体を設けられる。身体老廃物収集袋は、収集袋の入口開口部の周囲に設けられた第2の結合半体を含む。これは、同様にこの分野で一般に理解されるようにツーピースオストミー器具と一緒に使用され、且つまたツーピースオストミー器具の耐用年数又は装着時間を向上させる本開示の相補材料要素を提供する。
【0062】
実施形態では、基板は、相補材料要素に取り付けるための第2の取付手段を含む。これらの実施形態では、要素は、基板の第2の取付手段に係合するか又は取り付けるための第1の取付手段を含む。
【0063】
実施形態では、相補材料要素は、リング形状の要素又はディスク形状の要素として構成される。それにより、「CME」は、使用者又はヘルスケアの専門家によって直観的に簡単に操作される。これは、特に、基板が使用者の皮膚に適用される前に使用者又はヘルスケアの専門家によって「CME」がオストミー器具の基板と組み合わせられて取り付けられる(すなわち製造時に基板に取り付けられていない)ときに好都合であるが、それに限らない。
【0064】
実施形態では、「CME」は、ストーマ及び/又は使用者からのストーマ排泄物を受け入れるように構成される開口部を含む。いくつかの実装形態では、「CME」は、中心開口部を含むリング形状の要素であり、ここで、リング形状の要素(「CME」)は、基板にあるストーマ受け入れ開口部と位置合わせされ、且つ個々のストーマのサイズ及び形状と良好に適合するようにカスタマイズされるように構成されるため、基板への「CME」の取り付けが特に直観的になる。
【0065】
実施形態では、収集袋は、基板にストーマ収集袋を取り付けるために、基板上の結合インターフェースの第1の半体と結合するように構成される結合インターフェースの第2の半体を含む。
【0066】
実施形態では、基板の遠位面は、基板を収集袋に結合するために、結合インターフェースの第1の半体を含む。一実施形態では、結合半体は、収集袋に提供された接着フランジの形態の別の結合半体に取り付けるための面を提供するように適合されたフランジである。実施形態では、結合インターフェースの第1の半体は、任意選択的に接着剤を含む、柔軟性があり平坦な環状フランジとして構成される。第1の結合半体は、接着剤により、収集袋の入口開口部の周囲に提供された第2の結合半体と結合するように適合される。接着剤結合は、構成要素間に解放可能な又は永久的な接着剤結合係合を提供し得る。
【0067】
実施形態では、結合半体は、収集袋に提供された連結リングの形態の別の結合半体に取り付けるための、遠位面からそれに対して垂直に突出する直立フランジを含む環状リングである。一実施形態では、基板の遠位面に第1の結合半体が取り付けられる。実施形態では、第1の結合半体は、接着剤又は溶接によって遠位面に取り付けられるが、他の取付方法も容認できる。他のタイプの好適な結合配置構成は、オストミーケア分野内で広く利用可能である。
【0068】
本明細書では、中和成分は、ストーマ排泄物の皮膚 - 又は接着剤 - への攻撃性のレベルを中和するか又は少なくとも最小限にすることができる中和物質を意味する。
【0069】
実施形態では、中和成分は、粘土、例えば親有機性粘土、例えばベントナイト又はラポナイト(laponite)などの合成粘土を含む。そのような粘土の例は、欧州特許第1 140 009号明細書に開示されている。
【0070】
実施形態では、中和成分は、ジャガイモ由来の阻害物質又はプロテアーゼ阻害剤を含む。ジャガイモタンパク質などのジャガイモ由来の阻害物質の例は、欧州特許第1 736 136号明細書に開示されている。
【0071】
実施形態では、中和成分は、接着剤を含み得る。他の実施形態では、中和成分は、粉体を含む。他の実施形態では、中和成分は、液体を含む。他の実施形態では、中和成分は、ゲルを含む。他の実施形態では、中和成分は、複数のペレットを含む。さらに他の実施形態では、中和成分は、接着剤、粉体、液体、ゲル及び/又は複数のペレットの任意の1つ以上の組み合わせを含む。これらの各選択肢は、例えば、限定するものではないが、可操作性、保存可能期間、異なる種類のストーマ排泄物に対する適合性(結腸造瘻の排泄物は、回腸造瘻及び人工膀胱の排泄物よりも遥かにより固形である傾向を有する)、製造中の加工特性などを含め、1つ以上の異なる利点をもたらす。標的オストミー/オストミスト群の特定の条件を満たすように、これらの選択肢を個々に又は組み合わせて選択的に適用することにより、オストミー器具の適合性及び漏れのリスクを低下させることを含む、上述の問題を軽減するか又はなくすことにおける改善が著しく向上され得る。
【0072】
特に、中和成分が接着剤を含む実施形態では、好適な材料は、例えば、限定するものではないが、接着糊などの接着剤を含む。糊タイプの接着剤に好適な材料は、国際公開第2010/069334号パンフレットに開示されるタイプの接着剤を含む。他のタイプの接着糊も容認できる。
【0073】
図面の詳細な説明
図1は、相補材料要素60と、相補材料要素60が取り付けられる基板20と、箇所100で基板に結合され、且つ使用者のストーマ110から出るストーマ排泄物を収集するように構成されたストーマ排泄物収集袋50とを含むオストミー器具10の一実施形態の概略的な側面断面図である。基板20は、ストーマ110を取り囲む皮膚表面Sに接着剤で取り付けられる。ストーマ110を直接取り囲む領域又はゾーン、ストーマ周囲間隙120と指定される領域又はゾーンも示されている。
図1の実施形態は、相補材料要素60の第1の面130に配置された第1のカバー層80をさらに示す。相補材料要素の第2の面は、第2のカバー層140を設けられている。第2のカバー層140は、基板20の裏打ち層40の中心部分に取り付けられている。
【0074】
図2は、上側から見た相補的要素60の実施形態の概略図である。相補材料要素は、ここでは、対称的なディスク形状であると示されているが、例えば
図7に示すような切り欠き部150のあるディスクなどの他の形状があり得る。
図7には、ストーマの周囲への簡単な配置を促進する切り欠き部150が示されている。実施形態では、相補材料要素は、非対称的な形状を有し得る。相補材料要素は、ストーマを収容するための貫通穴を設けられ得る。
【0075】
図3は、
図2に示すA-A線に沿って取った相補材料要素60の断面斜視図を示す。相補材料要素60は、中和成分マトリックス70を含む。相補材料要素の第1の面130は、第1のカバー層を設けられ、及び相補材料要素の第2の面140は、第2のカバー層90を設けられている。第1のカバー層80及び第2のカバー層90は、相補材料要素の外周160に沿って封止されて、中和成分マトリックス70を含む閉鎖エンベロープを生じる。第2のカバー層90は、基板に取り付けるための接着材料(図示せず)を備え得る。
【0076】
図4には、外周160に沿って封止された第1のカバー層80及び第2のカバー層90で包まれている相補材料要素60の断面図が示されている。中心部分170には、中和成分マトリックス70が存在しないか又は実質的に存在せず、第1のカバー80及び第2のカバー層90を互いに隣同士にするか、又は単に無視できる程度の量の中和成分マトリックス70によって分離されるようにする。使用前、中心部分に貫通穴が開けられて、相補材料要素60をストーマの周囲に合うように適合する。
図5には、第1のカバー層80及び/又は第2のカバー層90の外縁部分がタブ部分180に半径方向に長くされ、それにより、タブ部分180が基板から引き離されるとき、相補材料要素60の簡単な除去を促進する実施形態の断面斜視図が示されている。
【0077】
図6には、中和成分マトリックス70を含む実施形態の断面斜視図が示されており、中和成分マトリックス70は、中和成分マトリックス70の第1の面130と第1のカバー層80との間に挿入された発泡層200を設けられている。発泡層200は、ストーマからの排泄物の分配を促して、放出層70の第1の面80全体に到達するようにし、それにより中和成分マトリックス70からの中和成分のより迅速な放出をもたらす。第1のカバー層80は、相補材料要素60が収集袋50に付着することを防止し得る。相補材料要素60の第2の面140は、相補材料要素60を基板に取り付けるための接着材料210を設けられている。
【0078】
図8は、相補材料要素60が取り付けられている状態の器具の実施形態の断面図を示す。相補材料要素は、貫通穴190から外縁部分に半径方向に延在する。相補材料要素は、基板20の中心部分の上側を覆って、さらに収集袋50を取り付けるための箇所100の上側を覆って延在し、収集袋50の近位内壁230の一部分を覆うようにしている。相補材料要素は、近位内壁に取り付けられるか又は基板にのみ取り付けられ得る。基板への取り付けは、連続的な領域にわたるか又は離散した点若しくは線にあり得る。実施形態では、相補材料要素は、溶接、ラミネーション又は接着剤によって取り付けられ得る。
【0079】
図9及び
図10は、非対称的な相補材料要素が基板に取り付けられている状態の器具の実施形態を示す。
図9では、相補材料要素60は、収集袋の底部の方に向かって延在するよりも、収集袋の上部の方に向かって遠くに延在する。延長部分220が収集袋50の遠位内壁240に取り付けられ得る。
図10では、相補材料要素60は、収集袋の上部の方に向かって延在するよりも、収集袋の底部の方に向かって遠くに延在する。延長部220は、収集袋50の近位内壁230に取り付けられていなくてもよい。
【0080】
図11では、相補材料要素60は、離散した点210において基板20に取り付けられている。この構成は、基板が適用及び使用中に曲げられるとき、基板と相補材料要素との組み合わせにより柔軟性をもたらすことを促す。
【0081】
特定の実施形態を本明細書で図示及び説明したが、様々な代替形態及び/又は均等な実装形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、図示及び説明した特定の実施形態の代わりとなり得ることが当業者によって理解される。本出願は、本明細書で説明したようなオストミー器具のための身体側部材のいずれの適合形態又は変形形態も網羅するものとする。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものとする。
本発明は更に以下の態様を含んでいる:
《態様1》
オストミー器具の基板に取り付け可能であるように構成され、且つ放出層を含む相補材料要素であって、前記放出層は、前記相補材料要素が水分にさらされることに応答して前記相補材料要素から放出可能であるように構成された中和成分を含み、前記相補材料要素は、第1の面及び第2の面を含み、前記第1の面は、第1のカバー層を備える、相補材料要素。
《態様2》
前記第2の面は、第2のカバー層を備える、態様1に記載の相補材料要素。
《態様3》
前記第1のカバー層及び前記第2のカバー層は、外周に沿って一緒に封止される、態様2に記載の相補材料要素。
《態様4》
前記放出層は、マトリックス構造として提供される、態様1に記載の相補材料要素。
《態様5》
前記相補材料要素の前記第2の面は、オストミー器具の基板に取り付けられるように構成される、態様1に記載の相補材料要素。
《態様6》
前記第2の面は、接着材料を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様7》
少なくとも1つの剥離ライナーをさらに含む、態様1~6のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様8》
前記第1のカバー層は、不透水性である、態様1~7のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様9》
前記第1のカバー層は、透水性である、態様1~7のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様10》
発泡層は、前記放出層と前記第1のカバー層との間に挿入される、態様1~9のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様11》
ディスク形状である、態様1~10のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様12》
前記要素の中心から前記要素の縁まで半径方向に延在する切り欠き部を設けられている、態様1~11のいずれか一つに記載の相補材料要素。
《態様13》
態様1~12のいずれか一つに記載の相補材料要素と、
オストミー器具のための基板であって、
裏打ち層の第1の面に設けられた接着層、及び
任意選択的に、前記裏打ち層の前記第1の接着面に設けられた剥離ライナー
を含む基板と
を含む部品のキット。
《態様14》
前記基板の前記裏打ち層の前記第2の面に取り付けられた身体老廃物収集袋をさらに含む、態様13に記載の部品のキット。
《態様15》
前記要素の少なくとも一部分は、収集袋の近位内壁の一部を覆うように延在する、態様13又は14に記載の部品のキット。
《態様16》
前記基板の前記裏打ち層の前記第2の面に設けられた第1の結合半体と、身体老廃物収集袋であって、前記収集袋の入口開口部の周囲に設けられた第2の結合半体を有する身体老廃物収集袋とをさらに含む、態様13に記載の部品のキット。
《態様17》
前記基板は、前記相補材料要素に取り付けるための第2の取付手段を含む、態様13~16のいずれか一つに記載の部品のキット。