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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】シリコーン化合物の包装方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/76 20060101AFI20231010BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B65D83/76 120
C09K3/10 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020529276
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018074181
(87)【国際公開番号】W WO2020048616
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャイム,ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】シェーレー,ペーター
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-104461(JP,A)
【文献】特開2016-064414(JP,A)
【文献】特開2002-011401(JP,A)
【文献】特開昭59-115271(JP,A)
【文献】特表2010-503493(JP,A)
【文献】特開平05-147677(JP,A)
【文献】実開平02-095571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/08 - 83/76
B05C 5/00 - 5/04
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒形容器の内壁とプランジャーの外面との間の間隙に、25℃で測定した5000mPas~100000mPasの粘度を有するシリコーンポリマー(A)を導入することであって、前記シリコーンポリマー(A)が、ビス(トリアルキルシロキシ)ポリジアルキルシロキサンであることを特徴とする、プランジャーで封止される中空の円筒形容器にシリコーン組成物を包装する方法。
【請求項2】
使用されるシリコンポリマー(A)の適用量が、0.001g/cm~0.5g/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコーン組成物が充填された中空の円筒形容器をプランジャーで封止する前に、シリコーンポリマー(A)が、プランジャー壁の外面にのみ適用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
シリコーン組成物が充填された中空の円筒形容器であって、中空の円筒形容器の内壁と、該容器を封止するプランジャーの外面との間の間隙に、25℃で測定した5000mPas~100000mPasの粘度を有するシリコーンポリマー(A)が存在し、前記シリコーンポリマー(A)が、ビス(トリアルキルシロキシ)ポリジアルキルシロキサンであることを特徴とする、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の円筒形容器にシリコーン組成物を包装し、これをプランジャーで封止するための方法、シリコーン組成物を充填したカートリッジ、及び中空の円筒形容器の内面とプランジャーの外面との間の間隙を封止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RTV-1封止剤を充填するための方法が知られている。それらは、単純な適用を可能にする容器に頻繁に充填される。特に、ポリエチレン製のカートリッジに包装することが多い。この場合、円筒形カートリッジを底部端部においてプランジャーで封止するのが先行技術である。これらのプランジャーは、カートリッジ内のRTV-1封止剤を、大気中の湿度の侵入から可能な限り効率的に保護しなければならない。また、一般的にポリエチレン又はポリプロピレンからなるプランジャーも、さらなる重要な要件を満たさなければならない。例えば、プランジャーは、機械的手段によってカートリッジに入れることが可能な限り容易なものでなければならない。この目的のために、一般には、プランジャーを配置する前に、350mPas~1000mPasの粘度範囲の低粘度シリコーンオイルで湿らせる。その結果、プランジャーは滑らかに挿入され、プランジャーの前方にあるカートリッジ内の空気は、プランジャーの前方に気泡が残らないように容易に排出され得る。しかし、実際には示されているように、その気密性は、長期保存を達成可能とするには、依然として不十分である。特に、カートリッジ内の組成物が、温度が上昇する場合には膨張し、温度が低下する場合には収縮するので、保存の全期間中にわたって、プランジャーはさらに移動可能なままでなければならない。そのため、プランジャーの可動性が制限されると、温度が低下した場合には、カートリッジ内に負圧が形成される。外部から空気を吸い込むことで負圧が均衡になる。これにより、下から上にカートリッジ内容物の硬化が増大する。現在では、低粘度シリコーンオイルによるプランジャーの潤滑は、カートリッジ内の望ましくない硬化のための根本的で耐久性のある対策を全く生じないことが実際に示されている。これまで、これは、シリコーンオイルが水蒸気に対して高い透過性を有し、シリコンオイルフィルムが湿気の侵入に対して保護機能を有しないという事実に起因していた。そこで、水蒸気透過性が非常に低く、したがってさらなる防水性を保証する組成物が求められた。DE-C1 4334754号は、ポリブテン及びワックスからなるこのような混合物を記載する。また、この文献では、疎水性液体、例えば上記シリコーンオイル等の可塑剤の使用は、これらの材料が過剰な水蒸気透過性を有し、したがってプランジャーヘッドの領域における硬化を十分に防止しないため、不十分であると記載されている。ポリブテンを用いることにより、カートリッジ壁に対するプランジャーの非常に良好な封止が達成できる。しかし、ポリブテンとワックスとの混合物は、これらのポリマーが一般にシリコーン封止剤と混和しないので、カートリッジの内容物の汚染をもたらすことが示された。このため、カートリッジの下端の封止剤内に汚れが形成され、封止剤の硬化後もこれらの汚れが目に見えるため、望ましくない。また、これらの混合物は、それらのワックス状の粘稠性のために適用することが困難でもある。さらに、ポリブテン/ワックス混合物によって、プランジャーの必要な長時間持続性の可動性も、あらゆる場合において確保されているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第4334754号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、中空の円筒形容器の内壁とプランジャーの外面との間の間隙に、25℃で測定した5000mPas~100000mPasの粘度を有するシリコーンポリマー(A)を導入することを特徴とする、プランジャーで封止される中空の円筒形容器にシリコーン組成物を包装する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
実際には、プランジャーで封止された、封止剤で満たされた中空の円筒状の本体は、カートリッジと呼ばれることが多い。本発明との関連において、この全包装、すなわち中空の円筒形容器、その中に含まれるシリコーン組成物及びカートリッジの開口部から組成物を押し出すためにも使用される少なくとも1つの封止プランジャーは、カートリッジシステムと称される。中空円筒容器は、好ましくは、円形キャップで製造業者によって端面において封止される。このキャップは、スプレーノズル又は任意の他の装置をそこに取り付けることができるように設計することができる。この取り付けは、ねじ山でねじ込んで行うことが好ましい。
【0006】
本発明との関連において、一端で封止めされていてもよい中空の円筒形容器は、空のカートリッジとも呼ばれる。
【0007】
本発明との関連において、中空円筒形カートリッジという用語は、そのような容器又は理想的には中空円筒形ではないが、製造及び/又は使用の最適化の結果として、中心軸に沿って、及びそれぞれの個々の円周において、空のカートリッジの全長にわたって、好ましくは5%まで変化し得る直径を有する空のカートリッジも含む。
【0008】
中空円筒形の容器を封止するプランジャー自体は円筒壁から構成され、その外面はプランジャーの配置後に空のカートリッジの内面に当接し、その円形のプランジャーヘッドは充填されたシリコーン組成物に当接する。好ましくは、プランジャーは外側に向かって開いている。このため、プランジャー自体は円筒形の中空体を実際に形成する。空洞の大きさは、中空の円筒形容器内のプランジャーの特定の位置によって決まる。
【0009】
本発明に従って使用される中空円筒形容器は、プランジャーで封止されるが、好ましくは市販の空カートリッジ、特に、例えばドイツのエンゲルシュキルヒェンのFischbach KG又はドイツのシュバブミュンヒェンのRitter GmbHから商業的に入手可能なポリエチレン製のカートリッジから選択される。同様に、本発明に従って使用されるプランジャーは、好ましくはこれらの企業から入手可能な市販製品である。
【0010】
本発明に従い包装されるシリコーン組成物は、任意のシリコーン組成物、例えば接着剤又は封止剤として使用することができる架橋性シリコーン組成物、好ましくは、室温で架橋可能なシリコーン組成物、いわゆるRTV-1組成物であって、大気中の湿気の侵入時に硬化するものであることができる。
【0011】
本発明に従って包装されるシリコーン組成物は、好ましくは500Paを超える降伏点及び好ましくは0.9~1.6g/cmの間の密度を有する、好ましくは20℃及び1013hPaでペースト様の物質である。典型的な用途は、例えば、建物の接合部のシーリングである。
【0012】
本発明に従って使用されるシリコーンポリマー(A)は、好ましくは本質的に直鎖状のオルガノポリシロキサン、特に好ましくは以下の一般式のものである。
【0013】
(RO)(3-x)SiO(RSiO)SiR(3-x)(OR(I)
式中、
Rは、同一であっても異なっていてもよく、SiC結合した、置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、
は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子又は置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、これは、任意に酸素又は窒素等のヘテロ原子によって割り込まれていてもよく、
xは、0、1、2又は3であり、及び
zは、20~5000の整数である。
【0014】
SiC結合した1価の炭化水素基Rの例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-n-ブチル、2-n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基のようなヘキシル基、n-ヘプチル基のようなヘプチル基、n-オクチル基及び2,4,4-トリメチルペンチル基のようなイソオクチル基本等のオクチル基、n-ノニル基のようなノニル基、n-デシル基のようなデシル基、n-ドデシル基のようなドデシル基、n-オクタデシル基のようなオクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基のようなシクロアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、n-5-ヘキセニル、4-ビニルシクロヘキシル及び3-ノルボルネニル基のようなアルケニル基;フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基のようなアリール基;o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基等のアルカリル基;並びにベンジル基及びα-及びβ-フェニルエチル基等のアラルキル基である。
【0015】
基Rは、好ましくは、1~18個の炭素原子を有する、SiC結合した1価の炭化水素基、特に好ましくはメチル、エチル、ビニル又はフェニル基、特にメチル又はビニル基から選択される。
【0016】
基Rの例はRに特定された基である。
【0017】
基Rは、好ましくは、水素原子又は1~20個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基から選択される。
【0018】
xは、好ましくは0、1、又は2、特に好ましくは0である。
【0019】
本発明に従い使用されるシリコーンポリマー(A)は、好ましくはビス(トリアルキルシロキシ)ポリジアルキルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジアルキルシロキサン若しくはビス(ジアルコキシアルキルシロキシ)ポリジアルキルシロキサン又はそれらの混合物、特に好ましくはビス(トリアルキルシロキシ)ポリジアルキルシロキサンである。
【0020】
製造の結果として、D単位をベースとする本発明に従って使用される本質的に直鎖状のシロキサンは、いずれの場合もD単位、T単位及びQ単位の合計に基づいて、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満の分岐のモル比、すなわちT単位及び/又はQ単位を有してもよい。
【0021】
本発明に従って使用されるシリコーンポリマー(A)は、この種のシリコーンポリマーの1種、及び成分(A)が5000mPas~100000mPasの範囲の粘度を有することを条件として、少なくとも2種のシリコーンポリマーの混合物であってよい。
【0022】
本発明に従い使用されるシリコーンポリマー(A)が混合物の形態をとる場合、例えば式(I)の2種以上のシロキサンの混合物をとる場合には、粘度が5000mPas未満又は10000mPasを超えるシロキサンもその製造に使用することができ、ただし成分(A)は5000mPas~100000mPasの範囲の混合粘度を有する。
【0023】
また、本発明に従って使用される成分(A)の製造についても、シリコーンポリマーは有機溶媒(B)と均質に混合することができ、ただし成分(A)は5000mPas~100000mPasの範囲の混合粘度を有する。
【0024】
有機溶媒(B)が使用される場合、そのことは成分(A)の適用を容易にすることができるが、その際には、実質的に芳香族を含まない、直鎖状、分枝状又は環状の炭化水素又はそれらの混合物が好ましい。これらの炭化水素(B)は、特に好ましくは置換された基を有さない。さらに、それらは50モル%を超える飽和炭素-炭素結合を含むことが好ましい。
【0025】
任意に使用される炭化水素(B)は、好ましくは、各々が1000hPaの圧力で、特にそれらが包装される組成物中に保持される場合には、150℃を超える沸点又は150℃から始まる沸点範囲を有し、又はそれらが成分(A)の適用後に除去される場合には、100℃までの沸点又は100℃で終わる沸点範囲を有し、ここで除去は、空のカートリッジの充填及び封止の前又は後に、完全に又は部分的にのみ実施される。
【0026】
100℃までの温度での任意に使用される溶媒(B)の除去は可能であるが好ましくない。さらに、又は加えて、溶媒(B)の除去は、負圧、例えば5mbarの絶対圧までの圧力の適用によって補助され得る。
【0027】
任意に使用される溶媒(B)の例は、沸騰範囲(約1000hPaの圧力で測定)が230~375℃、粘度が2.4~10.3mm/s(40℃で測定)の、Hydrosealという商品名でTotalから市販されているような、13~23個の炭素原子を有する炭化水素、又は例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n-オクタン又は2-メチルオクタンのような5~8個の炭素原子を有する炭化水素のいずれかである。
【0028】
好ましいことではないが、成分(A)を製造するために溶媒(B)が使用される場合、その量は好ましくは90重量%未満、特に好ましくは50%未満、特に25%未満である。
【0029】
本発明は、さらに、シリコーン組成物で充填された中空の円筒形容器であって、その中空円筒形容器の内壁と、前記容器を封止するプランジャーの外面との間隙には、25℃で測定された5000mPas~100000mPasの粘度を有するシリコーンポリマー(A)が存在することを特徴とする中空の円筒形容器に関する。
【0030】
本発明による方法において、使用されるシリコーンポリマー(A)は、空のカートリッジに充填する前には空のカートリッジの下端に、及び/又は充填後かつ空のカートリッジをプランジャーで封止する前にはプランジャーの外面に適用することができる。この場合、シリコーンポリマー(A)は、既知の方法、例えば、ローリング、噴霧、ブラッシング、塗装又は浸漬により、適切な表面に適用することができる。
【0031】
空のカートリッジの内壁にシリコーンポリマー(A)を適用する場合は、それは下端の部分、すなわち空のカートリッジの下端から、空のカートリッジの他端から軸方向に約5cmまでの領域におけることが好ましい。しかし、所望であれば、シリコーンポリマー(A)を空のカートリッジの内壁全体に適用することもできるが、これは好ましくない。
【0032】
空のカートリッジの内壁にシリコーンポリマー(A)を適用する場合は、好ましくは、ブラッシング又は塗装で実施される。
【0033】
プランジャーにシリコーンポリマー(A)を適用する場合は、好ましくは、ブラッシング又は塗装で実施される。
【0034】
本発明に従って使用されるシリコーンポリマー(A)の適用量は、好ましくは0.001g/cm~0.5g/cm、特に好ましくは0.005g/cm~0.1g/cm、特に0.01g/cm~0.02g/cmである。
【0035】
本発明による方法の一変形例(V1)において、シリコーンポリマー(A)は、空のカートリッジに充填する前に、空のカートリッジの内壁にのみ適用される。
【0036】
本発明に従う方法のさらなる変形例(V2)において、シリコーンポリマー(A)は、シリコーン組成物が充填された空のカートリッジをプランジャーで封止する前に、プランジャー壁の外面にのみ適用される。この場合は、0.005g/cm~0.1g/cm、特に0.01g/cm~0.1g/cmの量が好ましい。
【0037】
本発明に従う方法のさらなる変形例(V3)において、シリコーンポリマー(A)は、空のカートリッジに充填する前に、空のカートリッジの下端において空のカートリッジの内壁に、充填後かつカートリッジをプランジャーで封止する前に、プランジャー壁の外面に適用される。
【0038】
本発明による方法では、変形例(V2)が好ましい。
【0039】
全ての変形例を含む本発明の方法は、好ましくはシリコーン組成物を充填するために典型的に使用される条件、好ましくは周囲の大気中の圧力、すなわち約1013hPa、及び室温、すなわち約23℃、及び約50%の相対的大気湿度で実施される。
【0040】
本発明はさらに、中空の円筒形容器の内壁と該容器を封止するプランジャーの外面との間の間隙を、封止剤により封止するための方法であって、該封止剤が、25℃で測定して5000mPas~100000mPasの粘度を有するシリコーンポリマー(A)であることを特徴とする方法に関する。
【0041】
驚くべきことに、25℃で測定された5000mPas~100000mPasの動粘度を有するシリコーンポリマーは、高い水蒸気透過性にもかかわらず、プランジャーと中空円筒形容器の内壁との間隙を恒久的に封止し、長期保存期間にわたって潤滑性を確保するのに理想的に適していることが、現在明らかになった。
【0042】
本発明による方法はまた、反応性の高い封止剤を含む市販のカートリッジシステムが、包装されたシリコーン組成物の望ましくない反応の発生なしに、長期間にわたる困難な気候条件下で保存できるという利点を有する。
【0043】
本発明による方法は、プランジャーを空のカートリッジに自動的に導入すること(いわゆるプランジャー配置)が非常に容易であるという利点を有する。
【0044】
本発明による方法は、封止剤の気泡を含まない充填が達成可能である、すなわち、プランジャーヘッドと封止剤の間に空気が封入されないという利点を有する。
【0045】
本発明による方法は、温度が頻繁に変化する場合でも、プランジャーヘッドと封止剤の間にガス気泡が生じないという利点を有する。
【実施例
【0046】
以下に記載する実施例では、特に記載のない限り、全ての粘度データは25℃の温度を指す。特に記載のない限り、以下の実施例は、周囲の大気中の圧力、すなわち約1013hPa、及び室温、すなわち約23℃、及び約50%の相対的大気湿度で実施される。さらに、特に記載のない限り、全ての部及びパーセントは重量による。
【0047】
本発明に関連して、本発明に従い使用される成分(A)の動粘度は、特に記載のない限り、Anton Paar社の「Physica MCR 300」回転レオメータを用いて25℃でDIN 53019に従って測定する。200mPa・sより大きい値には、コーンプレート測定システム(測定コーンCP 50-1を有するSearleシステム)を使用する。剪断速度は、ポリマーの粘度に対して調整され、すなわち:62 1/秒で5000~999mPa・s;50 1/秒で10000~12499mPa・s;38.5 1/秒で12500~15999mPa・s;33 1/秒で16000~19999mPa・s;25 1/秒で20000~24999mPa・s;20 1/秒で25000~29999mPa・s;17 1/秒で30000~39999mPa・s;10 1/秒で40000~59999mPa・s;5 1/秒で60000~149999mPa・sである。
【0048】
測定システムの温度を測定温度に設定した後、ならし運転期、予備剪断、粘度測定からなる3段階の測定プログラムを適用する。測定を行う予定の粘度に依存して、前記の剪断速度まで1分間かけて剪断速度を段階的に上昇させることによってならし運転期を実施する。所与の剪断速度に到達したら、予備剪断を30秒間一定の剪断速度で行い、次に各々4.8秒間で25回の個々の測定を行い、粘度を測定し、そこから平均値を決定する。平均値はmPa・sで示した動粘度に相当する。
【0049】
[実施例1]
<充填>
この方法の効率を調べるために、ドイツ、ミュンヘンのWacker Chemie AGから入手可能な、ELASTOSIL(R) 6000という名称の市販の酢酸エステル架橋シリコーン封止剤を、ドイツ、エンゲルシュキルヒェンのFischbach KGのE310タイプのポリエチレン製の市販の空のカートリッジに充填した。空のカートリッジは市販の充填システムを用いて充填し、Fischbach社のK02タイプのHDPEプランジャーで封止した。その直前に、粘度12500mPasのα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンを、ブラシを用いてプランジャー壁の外周に塗装した。適用した油の量は0.2gであった。したがって、約0.01g/cmの適用量を達成した。
【0050】
<保存>
その後、このようにして得られたカートリッジシステム10個のサンプルを、気候を制御したキャビネット内で以下のように8週間保存した。すなわち、23℃及び50%大気湿度で開始し、サンプルを最初に5℃及び95%大気湿度に1時間かけて冷却し、その後このレベルで11時間維持し、その後1時間かけて50℃及び95%大気湿度に加熱し、次に11時間維持した。その後、サンプルを5℃及び95%相対大気湿度に1時間かけて冷却し、このサイクルを計8週間実施した。2週間ごとに、2つのカートリッジを取り除き、23℃及び50%相対大気湿度で24時間調整し、長さ方向に切断した。プランジャーヘッド部の硬化物を取り除き、ヘラを用いて機械的に非硬化物を除き、秤量した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0051】
[比較例2]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が350mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンを使用する変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0052】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0053】
[比較例3]
<充填>
実施例1による実験を繰り返した。プランジャーに油を差すことを省略した。
【0054】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0055】
[比較例4]
<充填>
カートリッジをその下端においてポリブテンで内部被覆したという変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0056】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0057】
[実施例5]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が5000mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンを使用する変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0058】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0059】
[実施例6]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が60000mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンを使用する変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0060】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。カートリッジを実施例1に記載の試験に供した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0061】
[実施例7]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が75000mPasであるα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンを使用する変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0062】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0063】
[実施例8]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が350000mPasであるα,ω-ビス(ジメトキシメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン85重量%と、粘度が100mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン15重量%との混合物を使用し、この混合物の粘度が80000mPasである変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0064】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0065】
[実施例9]
<充填>
粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンの代わりに、粘度が75000mPasであるα,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン90重量%と、粘度が12500mPasであるα,ω-ビス(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン10重量%との混合物を使用し、この混合物の粘度が65000mPasである変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0066】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0067】
[実施例10]
<充填>
シリコーンオイル0.2gの代わりにシリコーンオイル0.1gを使用し、これは約0.005g/cmの適用量に相当し、自動ローラー装置を用いて適用を行い、この装置を用いて、プランジャーの外壁上にスポンジ状の弾性ゴム材料を完全に塗装する変更を加えて、実施例1による実験を繰り返した。
【0068】
<保存>
サンプルを、実施例1に記載されているように保存した。測定値の平均値を表1に列挙する。
【0069】
【表1】