(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪肝疾患及び線維症の治療及び予防のためのペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20231010BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231010BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231010BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20231010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231010BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20231010BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231010BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231010BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231010BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231010BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20231010BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20231010BHJP
A61K 38/04 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
A61K38/17
A61P1/16
A61P3/06
A61P35/00
A61P13/12
A61P9/00
A61P11/00
A61P9/14
A61P25/28
A61P7/00
A61P19/02
A61P1/00
A61P17/00
C07K7/06
C07K7/08
A61K38/04
(21)【出願番号】P 2020531610
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085071
(87)【国際公開番号】W WO2019115812
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-01
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509228260
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・マリオン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-525382(JP,A)
【文献】特開昭64-002572(JP,A)
【文献】国際公開第2017/036852(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/114062(WO,A1)
【文献】特表2020-525504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド配列
が、
【化1】
を含み、
【化2】
は、ステープリングを担持
する、ペプチド。
【請求項2】
2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンを含む、請求項
1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項4】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症からなる群から選択される疾患の治療又は予防において使用するための、請求項1
若しくは2に記載のペプチド又は請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記線維症は、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症又は皮膚線維症である、請求項
4に記載の使用のためのペプチド又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に関する。より詳細には、本発明は、肝疾患、特に、肝脂肪化、特に、非アルコール性脂肪性肝炎の治療及び線維症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
肝疾患の他のいかなる病因も不在下での肝細胞中のトリグリセリドの肝蓄積の存在により定義されるNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)は、西洋諸国において慢性肝疾患の最も一般的な原因である。この臨床組織学的表現型は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に及び、肝炎及び進行性線維症により特徴付けられ、肝硬変及び末期肝疾患並びに肝細胞癌をもたらす。
【0003】
一般集団におけるNAFLDの推定有病率が6~33%に及ぶ一方、NASHの有病率は3~5%に及ぶにすぎないが、NASH関連肝硬変は、米国において肝移植についての第2の主な適応症になりつつある。NAFLDのための入院は、2000年以降97%だけ増加している。
【0004】
NAFLD又はNASHを予防するか、又は治療するための現在承認されている薬物は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝脂肪化(脂肪肝)を予防するか、又は治療するための新たな治療が必要である。
【0006】
線維症は、通常、炎症又は他の損傷の結果として線維結合組織が任意の器官に侵入する病理学的病態である。線維症を治療するためのいくつかの化合物が既知であるが、治療が不十分である。したがって、臨床的に有効な線維症を開発する試行は不成功であり、依然として線維症のための治療を見出すことが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、脂肪組織中のFATP2(脂肪酸輸送タンパク質2)として一般に既知の溶質キャリアファミリー27メンバー2(SLC27A2)の発現を特異的に減少させるPKCα及びその誘導体のキナーゼドメインからのペプチドを提供する。本ペプチドは、単一注射の3ヵ月後に肝臓上の脂肪化の現象を減少させ得、特に、肝臓中の脂肪滴のサイズ、肝損傷の2つのバイオマーカー(すなわち、AST及びALT)のレベル及び肝重量と体重との比を減少させ得る。更に、本ペプチドは、デノボ脂質合成経路を下方調節し(例えば、ACC(アセチル-CoAカルボキシラーゼ)を減少させ)、且つLOXL2肝タンパク質含有量及び循環レベルを減少させ、それにより線維症進行を停止させるそれらの能力により示されるとおり、線維症を減少させ得る。インビボでは、肝トリグリセリド含有量及び線維症面積の有意な減少が本ペプチドによる処置について観察され、そのことは抗脂肪化及び抗線維症効果を実証する。
【0008】
したがって、本発明は、ペプチドに関し、
- ペプチドは、特に、哺乳動物における脂肪組織中のFATP2発現を減少させ得、
- ペプチドは、1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含まず、
- ペプチドは、ヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用し、及び
- ペプチドは、PKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23若しくは25個の連続残基の断片又はPKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの5~40個の連続残基からの断片からの配列を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し、
- ペプチドは、5~80個のアミノ酸又は5~60個のアミノ酸又は5~40個のアミノ酸の長さを有し、及び
- ペプチド配列は、PKCのキナーゼドメインの断片の前記配列内に置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変を含み得る。
【0009】
好ましくは、本ペプチドは、ステープリングなどの化学的架橋プロセスにより修飾されている。
【0010】
好ましくは、本ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有する。
【0011】
好ましくは、本ペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得るか、又は予防し得る。
【0012】
任意選択的に、ペプチド配列は、以下の配列の少なくとも1つ:置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKRVLA(配列番号3);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKRVLA(配列番号9);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKXVLA(配列番号10);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKXVLA(配列番号11);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLMYHIQQV(配列番号4);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLXYHIQQV(配列番号12);LDN;置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIME(配列番号7);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIXE(配列番号14);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVRE(配列番号8);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVRE(配列番号15);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVXE(配列番号16);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKを含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。
【0013】
任意選択的に、ペプチド配列は、以下の配列の少なくとも1つ:置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKRVLA(配列番号3);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKRVLA(配列番号9);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKXVLA(配列番号10);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKXVLA(配列番号11);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLMYHIQQV(配列番号4);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLXYHIQQV(配列番号12);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIME(配列番号7);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIXE(配列番号14);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVRE(配列番号8);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVRE(配列番号15);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVXE(配列番号16);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVXE(配列番号17)を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。
【0014】
任意選択的に、ペプチド配列は、以下の配列の少なくとも1つ:
a)VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸であり、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
b)VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸であり、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
c)VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸であり、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
d)VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択されるアミノ酸であり、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
及び任意の配列a)~d)の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は25個の連続残基の任意の断片の配列
を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在する。
【0015】
任意選択的に、ペプチド配列は、以下の配列の少なくとも1つ:
【化1】
を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し、太字であり且つ下線が施されている残基
【化2】
は、ステープリングを担持し、ステープリングに好適な任意のアミノ酸誘導体であり、及び
Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、
配列は、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する。
【0016】
好ましくは、前記PKCは、アルファ-PKC(αPKC)、βI及びβIIPKCを含むベータ-PKC(βPKC)、デルタ-PKC、シータ-PKC、エータ-PKC及びイプシロン-PKCからなる群から選択される。より好ましくは、前記PKCは、配列番号1のαPKCである。
【0017】
特定の実施形態では、ペプチド配列は、
【化3】
を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し、
【化4】
は、ステープリングを担持し、好ましくはそれぞれ2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであり、
配列は、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する。
【0018】
本発明は、本開示によるペプチドを含む医薬組成物にも関する。本発明は、薬物として使用するための本開示によるペプチドにも関する。本発明は更に、薬物の製造のための本開示によるペプチドの使用に関する。
【0019】
本発明は更に、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症からなる群から選択される疾患の治療又は予防において使用するための本開示によるペプチド又はそれを含む医薬組成物に関する。
【0020】
任意選択的に、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び肝脂肪化(脂肪肝)からなる群から選択される。好ましくは、疾患は、肝脂肪化(脂肪肝)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。より好ましくは、疾患は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0021】
任意選択的に、線維症は、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症又は皮膚線維症である。好ましくは、線維症は、肝線維症である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】重要な脂肪酸輸送体及び受容体の発現レベルに対する脂肪組織標的化PATAD処置の効果である。1群当たりn=4匹の動物、GAPDHを参照遺伝子として使用した。FATPの6つのアイソフォーム(FATP1~6、SLC27A1~SLC27A6としても既知)が存在する。Fatp1(脂肪酸輸送タンパク質1)、Fatp2(脂肪酸輸送タンパク質2)、Fatp3(脂肪酸輸送タンパク質3)、Fatp4(脂肪酸輸送タンパク質4)、Fatp5(脂肪酸輸送タンパク質5)、Fatp6(脂肪酸輸送タンパク質6)、FFAR1(遊離脂肪酸受容体1)、FFAR2(遊離脂肪酸受容体2)、FFAR3(遊離脂肪酸受容体3)、FFAR4(遊離脂肪酸受容体4)。「低スクランブル」は、ステープル形態と同じアミノ酸残基を有するが、維持されたアルファヘリックス構造がランダムに再配置された2つのペプチドの組み合わせ:スクランブルペプチド配列A及びスクランブルペプチド配列Bを指す。「ステープル」は、2つのステープルドペプチドの組み合わせ:ステープルドペプチド配列A及びステープルドペプチド配列Bを指す。
図1Aは、PATAD注射脂肪組織中のFATP及びFFARアイソフォームの発現レベルを示し、FATP2発現レベルが有意に低減される。
【
図1B】
図1B及び1Cは、皮下PATAD注射後の肝臓及び筋肉中のFATP及びFFARアイソフォームの発現レベルを示す。
【
図2】ADPIFペプチドは、脂肪組織中のFATP2発現レベルの低減及びGLP-1循環レベルの増加においてPATADペプチドよりも活性である。(A)高脂肪/高糖食餌を給餌した4ヵ月齢の雄マウスをこの実験セットに使用した。X軸上の指示された条件の11日後の異なるマウスからの脂肪組織中のFATP2の正規化発現レベルである。1群当たりn=4匹の動物、GAPDHを参照遺伝子として使用した。(B)注射11日後の同じマウス中のGLP-1の循環濃度であり、PATAD及びADPIFはGLP1循環レベルを低脂肪対照まで再び回復し得、スクランブル注射マウスは減少したGLP-1濃度を提示したことを示す。
【
図3AB】脂肪組織標的化PATAD及びADPIF処置3ヵ月後の肝臓及び循環アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)に対する効果である。(A)1回の単独PATAD注射3ヵ月後の対照(左側)及びPATAD(右側)処置マウスからの固定肝からの冷凍切片の蛍光染色である。(B)時間(日齢)における肝臓と体重との比をPATADペプチドについて1群当たりn=1匹の動物についてプロットした。
【
図3CD】(C)指示された処置のマウスの血漿中のELISAアプローチにより測定されたAST及びALTの両方の平均値である。1群当たりn=4つの試料。PATAD及びADPIFは、AST及びALTの循環レベルの低減において両方とも有効である。ADPIFは、ALTの循環レベルの低減においてより活性であり、それは肝細胞損傷の改善を意味する。
【
図4】ADPIFペプチドは、高血糖症の予防においてPATADペプチドよりも活性である。(A)0日目におけるPATAD(PATAD 417)又はADPIF(CPCペプチドA-MRP)処置の単一注射後の食餌誘発性肥満(DIO)(対照HFD)及び対照(対照通常食)の絶食雄における30分間のグルコースボーラスにおける日数における時点系列である。グルコースボーラスを同時に注射し、それは肝臓を迂回し、血流中に直接向かう。(B)PATAD(PATAD 417)及びADPIF(PATAD 417-MRP)ペプチドによる処置前(-5日目)、処置時及び処置後(+6日目)の曲線下面積の測定による食餌誘発性肥満(DIO)(対照HFD)及び対照(対照通常食)の絶食雄における耐糖能に対する効果である。
【
図5】ADPIFは、DIO雄マウスにおけるリジルオキシダーゼ様2タンパク質(LOXL2)及び脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)の肝タンパク質含有量の減少においてPATADよりも活性である。(A)LOXL2は、線維症進行についての既知の重要な作用因子である。皮下脂肪組織中のビヒクル、PATAD又はADPIF注射3ヵ月後の肝抽出物上のLOXL2を測定したELISA結果。肝タンパク質含有量の有意な減少は、PATAD又はADPIF処置後のいずれでも観察され、ADPIFが最も有効なペプチドである。1群当たりn=4匹のマウス。(B)FABP4は、細胞中の脂質媒介プロセスの重要な作用因子であり、NAFLDに伴って肝臓中で上昇する。本発明者らは、スクランブル又はPATAD若しくはADPIF単一注射3ヵ月後のFABP4タンパク質含有量を測定した。FABP4は、PATAD又はADPIF注射後のいずれでも有意に低減し、ADPIFはPATADよりも活性である。
【
図6】肝含有量及びプロファイルにおけるセラミドに対するAPDIFの効果である。セラミドは、NAFLDに関与することが既知の生物活性脂質のグループである。本発明者らは、皮下脂肪組織中の週1回注射の頻度におけるADPIFの3回注射後のセラミドプロファイルに対するADPIF注射の効果を測定し、決定した。ADPIFは、全体的に肝セラミド含有量の減少を誘発させ、異なるセラミド間で変動する。
【
図7】脂肪組織標的化ADPIF処置3ヵ月後の肝トリグリセリド含有量に対する効果である。1回の単独ADPIF注射3ヵ月後の対照(左側)及びADPIF(右側)処置マウスからの固定肝からの冷凍切片の蛍光染色であり、肝臓中の総トリグリセリドの全体的減少を示す脂肪滴の直径の減少を示す。マウスは、実験終了時において7ヵ月齢のDIO雄マウスであった。
【
図8】ADPIFペプチド処置は、DIO雄マウスにおいて11日後にデノボ脂質合成経路遺伝子を下方調節する。脂肪組織中のADPIFペプチド注射11日後、脂肪酸シンターゼ(Fasn)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)及びステロール調節エレメント結合転写因子1(Srebf1)の肝発現レベルは、対照と比べて有意に減少し、ADPIF処置マウスの肝臓中のデノボ脂質合成が停止したことを示した。
【
図9】ADPIF処置は、肝臓中の線維症病変を低減させる。(A)皮下脂肪組織中のADPIF注射3ヵ月後の非処置DIO-NASH及びADPIF処置DIO-NASHの肝臓からの冷凍切片の免疫染色写真である。コラーゲンIV及びLOXL2が非処置DIO-NASHにおいて高度に発現され、ADPIF処置DIO-NASHにおいて低減される。(B)LOXL2も分泌されるため、本発明者らは、LOXL2の循環レベルに対するADPIFの効果を測定し、ADPIF処置(単独注射3ヵ月後)がLOXL2レベルを半分だけ低減させることを見出した。(C)肝切片を透過型電子顕微鏡により分析して非処置DIO-NASHの肝臓中の線維化貯留を同定した。このような線維化貯留は、皮下脂肪組織中のADPIF注射3ヵ月後のDIO-NASH処置肝臓中では見出されなかった。
【
図10】ADPIF処置は、リゾホスファチジルコリン(LPC)脂質に影響を与える。リゾホスファチジルコリン(LPC)は、リゾホスファチジン酸の生成における重要な酵素である線維化促進酵素オートタキシンについての基質である。リゾホスファチジン酸は、肝臓に影響するが、腎臓及び他の軟部組織にも影響する線維症進行における役割を担うことが既知の生物活性脂質である。したがって、本発明者らは、膵臓(A)、脂肪組織(B)、肝臓(C)及び血漿(D)中の異なる(LPC)のレベルを測定した。ADPIF処置(3週間の期間、マウス1匹当たり25μgの1回の皮下注射の頻度において与え、次いで、マウスを最後の注射から1週間後に安楽死させた)は、異なる分析組織中のあるLPCの選択的減少を誘発させる。LPC 18:2は、膵臓、脂肪組織及び肝臓中の全てでADPIF処置後に大部分が低減される脂質である。
【
図11】ADPIFペプチドは、線維症から腎臓を保護する。ビヒクル処置DIO-NASH及びADPIF処置DIO-NASHの腎臓からの冷凍切片を、コラーゲンIV、ZO-1及び核について免疫染色した。ビヒクル処置DIO-NASHにおいて、ADPIF処置よりも多くのコラーゲンIVの貯留が観察される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
驚くべきことに、本発明者らは、脂肪組織中のFATP2(脂肪酸輸送タンパク質2)の発現を特異的に減少させるPKCα及びその誘導体のキナーゼドメインからのペプチドを提供する(
図1A)。本ペプチドは、単一注射の3ヵ月後に肝臓上の脂肪化の現象を減少させ得、特に、肝臓中の脂肪滴のサイズ、肝損傷の2つのバイオマーカー(すなわち、AST及びALT)のレベル及び肝重量と体重との比を減少させ得る(
図3)。更に、本ペプチドは、デノボ脂質合成経路を下方調節し(例えば、ACC(アセチル-CoAカルボキシラーゼ)を減少させ)(
図8)、且つ肝臓中及び循環中のLOXL2タンパク質レベルを減少させ(
図5及び9A)、それにより線維症進行を停止させるそれらの能力により示されるとおり、線維症を減少させ得る。本ペプチドは、腎臓中のコラーゲン沈着も減少させ得る。インビボでは、線維症面積の有意な減少が本ペプチドによる処置について観察され、そのことは抗線維症効果を実証する。
【0024】
したがって、本発明は、
- 本明細書に定義のペプチド、
- 本明細書に定義のペプチドを含む医薬組成物、
- 薬物として使用するための本明細書に定義のペプチド又は薬物の製造のための本明細書に定義のペプチドの使用、
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される疾患の治療又は予防において使用するためのペプチド又はそのペプチドを含む医薬組成物、
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される疾患を治療又は予防するための医薬品の製造のためのペプチドの使用、
- 治療有効量のペプチドを投与することを含む、対象における疾患の治療又は予防のための方法であって、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症を含む血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される方法
に関する。
【0025】
定義
ALMS1、アルシュトレーム症候群タンパク質1は、ALMS1遺伝子によってコードされるタンパク質である。ALMS1遺伝子中の突然変異は、アルシュトレーム症候群を引き起こすことが判明している。これは、いくつかのデータベース、すなわちUniProt ID No Q8TCU4;Gene ID No 7840、HGNG ID No 428に記載されている。参照配列は、mRNAについてNM_015120.4で、タンパク質についてNP_055935.4でGenbankに開示されている。
【0026】
「タンパク質キナーゼC」及び「PKC」(EC 2.7.11.13)という用語は、他のタンパク質の機能を、これらのタンパク質上のセリン及びスレオニンアミノ酸残基のヒドロキシル基のリン酸化により制御することに関与するタンパク質キナーゼ酵素のファミリーに相当し且つそれらを指す。PKCは、典型的には、ジアシルグリセロール(DAG)又はカルシウムイオン(Ca2+)の濃度の増加などのシグナルによって活性化される。PKCは、いくつかのシグナル伝達カスケードで重要な役割を果たす。
【0027】
PKCファミリーは、ヒトにおいて少なくとも15個のアイソザイムを含み、これらは、3つの主なサブファミリー、従来型(又は古典型)PKC、新型PKC及び非典型PKCに分割される。
【0028】
従来型(c)PKCは、アイソフォームα、βI、βII及びγを含む。これらのPKCは、活性化のためにCa2+、DAG及びホスファチジルセリンなどのリン脂質を必要とする。
【0029】
新型(n)PKCは、δ、ε、η及びθアイソフォームを含む。これらのPKCは、活性化のためにDAGを必要とするが、Ca2+を必要としない。
【0030】
非典型(a)PKCは、ζ、ι及びλアイソフォームを含む。これらのPKCは、活性化のためにCa2+もジアシルグリセロールも必要としない。
【0031】
αPKC、PKC-A又はPKC-アルファとも呼ばれるタンパク質キナーゼCアルファ型は、カルシウム及び二次メッセンジャーのジアシルグリセロールによって活性化され得るセリン特異的及びスレオニン特異的タンパク質キナーゼのファミリーに属する。これは、いくつかのデータベース、すなわちUniProt ID No P17252、Gene ID No 9393、HGNG ID No 5578に記載されている。参照配列は、Genbankにおいて、mRNAについてNM_02737.2で、タンパク質についてNP_002728.1で開示されている。ヒトαPKCのタンパク質配列は、配列番号1で開示されている。
【0032】
αPKCのキナーゼドメインは、配列番号1に開示され、配列番号2に示される339位~595位である。
【0033】
「からなる」、「から本質的になる」又は「実質的に含む」:1つ又は複数の要素への言及などの用語を用いる本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書での記述は、特に明記しない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、特定の1つ又は複数の要素「からなる」、「から本質的になる」又はそれを「実質的に含む」本発明の類似の態様又は実施形態に対して支援を与えることを意図している。例えば、特定の配列を含むとされる本明細書に記載のペプチド又はタンパク質は、特に明記しない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、その配列からなるペプチド又はタンパク質も記述しているものとして理解されるべきである。「から本質的になる」とは、ペプチド又はタンパク質がその配列からなるが、それが、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の置換、付加、欠失又はこれらの混合、好ましくは1、2、3、4又は5個の置換、付加、欠失又はこれらの混合も含み得ることを意図している。特に、「~において本質的に存在する」とは、ペプチドが1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の追加のアミノ酸をN及び/又はC末端で含み得、好ましくは1、2、3、4又は5個の追加のアミノ酸及び/又は1、2又は3個の置換、欠失、付加又はこれらの混合を含み得ることを意図することができる。好ましくは置換、付加、欠失又はこれらの混合の数は、配列の長さに依存する。例えば、置換、欠失、付加又はこれらの混合の割合は、30%以下、好ましくは25%以下であり得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「置換」とは、ペプチド配列における単一のアミノ酸の別のアミノ酸による交換を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「欠失」とは、ペプチド配列における単一のアミノ酸の除去を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「挿入」又は「付加」とは、ペプチド配列における単一のアミノ酸の付加に相当し且つそれを指す。
【0037】
「置換、付加、欠失」とは、1つのアミノ酸の置換、付加、欠失を意図している。次に、「1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」、「1、2、3、4又は5個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」又は「1、2又は3個の置換、欠失、付加又はこれらの混合」を指す場合、それはそれぞれ、「置換、付加、欠失又はこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の改変」、「置換、付加、欠失又はこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変」又は「置換、欠失、付加又はこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変」を意味する。「1、2、3、4又は5個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」は、「1~5個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」も意味する。「1、2又は3個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」は、「1~3個の置換、付加、欠失又はこれらの混合」も意味する。
【0038】
本明細書に開示されるペプチド配列において、アミノ酸は、以下の命名法に従い、それらの1つの文字コードで表される:A:アラニン;C:システイン;D:アスパラギン酸;E:グルタミン酸;F:フェニルアラニン;G:グリシン;H:ヒスチジン;I:イソロイシン;K:リジン;L:ロイシン;M:メチオニン;N:アスパラギン;P:プロリン;Q:グルタミン;R:アルギニン;S:セリン;T:スレオニン;V:バリン;W:トリプトファン及びY:チロシン。
【0039】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は「同一性」は、2つのペプチドのアミノ酸とアミノ酸との正確な対応を指す。同一性のパーセントは、配列を整列させ、2つの整列させた配列間の正確な一致数を計数し、より短い配列の長さで割って、結果に100を乗じることによって2つの分子間の配列情報の直接的な比較によって決定することができる。
【0040】
配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、グローバル又はローカルアライメントアルゴリズムを用いる2つのペプチド配列のアライメントによって決定することができる。同様な長さの配列は、長さ全体にわたって配列を最適に整列させるグローバルアライメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を用いて整列させることが好ましい一方、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を用いて整列させることが好ましい。次いで、配列は、これらが少なくとも特定の最小割合の配列同一性を共有するとき(例えば、デフォルトパラメータを用いてプログラムGAP又はBESTFITによって最適に整列されるとき)、「実質的に同一」又は「本質的に同様」と称され得る。GAPは、Needleman及びWunschグローバルアライメントアルゴリズムを用いて、2つの配列をそれらの長さ全体(完全長)にわたって整列させ、一致数を最大化し、且つギャップ数を極小化する。グローバルアライメントは、2つの配列が同様な長さを有する場合、配列同一性を決定するために適切に使用される。
【0041】
「増加した」、「増加させる」又は「増強させる」とは、同じ条件下で試験される分子の不在下で測定された測定値と比べるとき、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%だけ増加した測定値を指すことを意図している。「減少した」又は「減少させる」とは、同じ条件下で試験される分子の不在下で測定された測定値と比べるとき、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%だけ減少した測定値を指すことを意図している。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」又は「治療すること」という用語は、疾患の治癒、軽減又は遅延など、患者の健康状態を改善することを意図する任意の行為を指す。これは、予防的処置及び治療的処置を含む。例えば、これは、NAFLDからNASHへの、NASHから線維症を伴うNASHへの、NASHから肝硬変への、NASH又は肝硬変から肝細胞癌への進化の遅延又は遮断を指し得る。治療という用語は、特に、肝脂肪化の修正、遅延又は低減を明示している。「治療」という用語は、肝脂肪化、肝炎、肝線維症、肝酵素(AST及びALTなどのアミノトランスフェラーゼ)及び/又は脂肪肝指数(Bedgni et al,BMC Gastroenterol.2006 Nov 2;6:33)の改善も明示している。特に、治療は、肝脂肪化、肝炎、肝線維症、肝酵素(AST及びALTなどのアミノトランスフェラーゼ)及び/又は脂肪肝指数を低下させるか、又は減少させるか、又は遅延させる。線維症に関して、これは、線維症の進化の遅延又は遮断を指し得る。特に、治療という用語は、線維症の修正、遅延又は低減を明示している。
【0043】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝線維症、肝炎、肝硬変又は肝細胞癌を治療するか又はその進行若しくは発症を遅延させる、本開示のペプチドの量又は本開示の医薬組成物の量を指す。これは、線維症を治療するか又は遅延させる、本開示のペプチドの量又は本開示の医薬組成物の量も指し得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「有効成分(active principle)」、「活性成分(active ingredient)」及び「医薬品有効成分」という用語は、治療効果を有する医薬組成物の構成成分に相当し且つそれを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝線維症、肝炎、肝硬変、肝細胞癌又は線維症などの疾患を治療するか又はその進行若しくは発症を遅延させ得る、本開示のペプチドなどの活性成分又は本開示による医薬組成物によって誘発された効果を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「賦形剤又は薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物中に存在する有効成分以外の任意の成分を指す。その添加は、特定の一貫性又は他の物理的若しくは味覚的特性を最終生成物に付与することを目的とし得る。賦形剤又は薬学的に許容される担体は、有効成分とのいかなる相互作用、特に化学的相互作用も欠いている必要がある。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」は、置き換え可能であり、動物、好ましくは哺乳動物、更により好ましくは成人、児童、新生児及び出生前のヒトを含むヒトを指す。
【0048】
本明細書では、「約」という用語は、所定値の±10%の値の範囲を指す。例えば、「約50」は、50の±10%の値、すなわち45~55の範囲にある値を含む。好ましくは、「約」という用語は、所定値の±5%の値の範囲を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「非アルコール性脂肪肝疾患」及び「NAFLD」は、1日当たり20g未満のアルコール摂取の存在下での大血管脂肪化の存在により定義される疾患を指す。NAFLDは、米国において最も一般的な肝疾患であり、一般にインスリン耐性/2型真性糖尿病及び肥満症に関連する。NAFLDは、脂肪化、脂肪性肝炎、肝硬変及び場合により肝細胞癌により顕在化される。NAFLDの概要については、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるTolman and Dalpiaz(2007)Ther.Clin.Risk.Manag.,3(6):1153-1163参照。
【0050】
本明細書で使用される場合、「脂肪化」、「肝脂肪化」、及び「脂肪肝」という用語は、肝細胞中のトリグリセリド及び他の脂肪の蓄積を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「非アルコール性脂肪性肝炎」又は「NASH」という用語は、肝臓中の脂肪の蓄積により引き起こされる肝炎及び損傷を指す。NASHは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と呼ばれる病態のグループの一部である。NASHは、アルコール性肝疾患と似ているが、アルコールをほとんど飲まないか、又は全く飲まない人々において生じる。NASHの主な特徴は肝臓中の脂肪であり、炎症及び損傷を伴う。NASHを有するほとんどの人々は体調が良く、肝臓の問題を抱えていることに気付かない。これにもかかわらず、NASHは重度であり得、肝臓が永久的に損傷され、瘢痕化され、もはや適切に機能し得ない肝硬変をもたらし得る。NASHは、通常、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)などの定型的な血液検査パネルに含まれる肝臓検査における上昇を有することが見出された人々において最初に疑われる。更なる評価が肝疾患についての明らかな理由(例えば、医薬品、ウイルス性肝炎又はアルコールの過剰摂取)を示さない場合、及び肝臓のx線又は撮像試験が脂肪を示す場合、NASHが疑われる。NASHの診断を証明し、それを単なる脂肪肝から区別する唯一の手段は、肝生検である。
【0052】
本明細書で使用される場合、組織学的に定義される「肝硬変」という用語は、線維症及び正常の肝臓構造の構造的に異常な結節への変換により特徴付けられるびまん性肝臓プロセスである。
【0053】
NAFLDは、NAFLD活動性スコア(NAS)によりNASHと区別することができ、それは、脂肪化(0~3)、小葉炎症(0~2)、及び肝細胞バルーニング(0~2)についての肝生検の組織病理学的スコアの合計である。<3のNASはNAFLDに対応し、3~4は境界型NASHに対応し、>5はNASHに対応する。生検は、線維症(0~4)についてもスコアリングされる。
【0054】
ペプチド
本開示によるペプチドは、以下の特徴を提示する:
- これが1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含まないこと、
- 好ましくは、これがヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用すること、
- これがPKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの断片、好ましくはPKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は25個の連続残基の断片からの配列を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在すること、及び
- ペプチド配列がPKCのキナーゼドメインの断片の前記配列内に置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択される1、2、3、4又は5個のアミノ酸改変を含み得ること。
【0055】
本ペプチドは、以下の特徴の1つ又はいくつかを更に提示し得る:
- これが80個未満のアミノ酸、より好ましくは60個未満のアミノ酸、いっそう好ましくは40個未満のアミノ酸、いっそうより好ましくは30個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これが少なくとも5個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これが架橋により修飾されていること、
- これがALMS1-PKC相互作用を妨害し得、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得るか、若しくは防止し得;又はこれがALMS1-PKC相互作用を妨害し得ず、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得ないか、若しくは防止し得ないこと、
- これが脂肪組織中のFATP発現の発現レベルを改変し、好ましくはこれが脂肪組織中のFATP2発現を減少させること、
- これが肝脂肪化、肝臓中の脂肪の量、肝臓中の脂肪滴のサイズ、及び/又は脂肪肝指数を減少させること、
- これが脂肪細胞中のヘムオキシゲナーゼ1の発現レベルを誘発させること。
【0056】
本ペプチドは、以下の特徴の1つ又はいくつかを更に提示し得る:
- これが80個未満のアミノ酸、より好ましくは60個未満のアミノ酸、いっそう好ましくは40個未満のアミノ酸、いっそうより好ましくは30個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これが少なくとも5個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも5個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これが架橋により修飾されていること、
- これがALMS1-PKC相互作用を妨害し得ず、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得ないか、又は防止し得ないこと、
- これがコラーゲンIV及びLOXL2(リジルオキシダーゼホモログ2)の発現の発現レベルを改変し、優先的には、これがコラーゲンIV及びLOXL2の発現、特に、肝臓及び/又は血漿中のLOXL2発現を減少させること、
- これが線維症を減少させること、
- これが組織中及び循環中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の脂質含有量、優先的には、18:2 LPCを減少させ得ること。
【0057】
一態様では、本開示のペプチドは、PKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの断片からの配列を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在する。PKCは、従来型PKC、新型PKC及び非典型PKCから選択することができる。特に、PKCは、従来型PKCから選択することができる。好ましくは、PKCは、α、βI、βII及びγPKCからなる群から選択することができる。より好ましくは、PKCは、α、βI及びβIIPKCからなる群から選択することができる。いっそうより好ましくは、PKCは、αPKC、好ましくはヒトαPKC、より好ましくは配列番号1のヒトαPKCである。ヒトαPKCのキナーゼドメインは、配列番号2に開示されている。
【0058】
PKCのキナーゼドメインの断片は、PKCのキナーゼドメインの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は25個の連続残基を有する。一態様では、PKCのキナーゼドメインの断片は、PKCのキナーゼドメインの5~40個の連続残基(任意選択的に、5~30個又は5~25個又は7~25個又は8~25個又は9~25個又は10~25個又は11~25個又は12~25個)を有する。
【0059】
断片が選択されるPKCのキナーゼドメインは、好ましくは配列番号2の配列と少なくとも40%の同一性、より好ましくは配列番号2の配列と少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%の同一性を有する。
【0060】
好ましくは、PKCのキナーゼドメインの断片の前記配列は、本ペプチドの配列の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%に対応する。特定の実施形態では、本開示によるペプチド配列は、配列番号1の断片の配列において存在する。
【0061】
PKCのキナーゼドメインの断片が1つのメチオニン及び/又は1つのプロリン及び/又は1つのアルギニンを含む場合、配列は、全てのプロリン残基及び/又は全てのメチオニン残基及び/又は全てのアルギニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。例えば、配列は、全てのプロリン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。或いは、配列は、全てのメチオニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。そうでなければ、配列は、全てのアルギニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。一態様では、配列は、全てのプロリン及びメチオニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。別の態様では、配列は、全てのプロリン及びアルギニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。追加の態様では、配列は、全てのメチオニン及びアルギニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。より好ましくは、配列は、全てのプロリン残基、全てのメチオニン残基及び全てのアルギニン残基を除去するように改変することができる(すなわち、置換を導入することによる)。
【0062】
好ましくは、本ペプチドは、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択される20個以下、好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下のアミノ酸改変を含む。特に好ましい実施形態では、本ペプチドは、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個、好ましくは1、2、3、4又は5個、より好ましくは1、2又は3個のアミノ酸改変を含み得る。
【0063】
例えば、本ペプチドは、キナーゼドメインPKCの断片の配列、好ましくは配列番号2の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%の同一性を有する。一実施形態では、配列番号2に対応するペプチドの配列の一部は、配列番号2の断片の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%の同一性を有する。
【0064】
例えば、PKCのキナーゼドメインの断片の配列は、配列番号1の339~432位、配列番号1の434~544位、配列番号1の546~561位、配列番号1の563~565位又は配列番号1の568~595位の配列に属し得る。
【0065】
一実施形態では、PKCのキナーゼドメインの断片の配列は、以下の残基:配列番号1のG433、E545、S562、S566を含み得ない。
【0066】
一態様では、本開示のペプチドは、アルファヘリックス構造を有する。本明細書で使用される場合、「アルファヘリックス」、「α-ヘリックス」、「古典型ポーリング-コリー-ブランソンα-ヘリックス」及び「3.613-ヘリックス」は、互いに同等であり且つ互いを指す。「アルファヘリックス」という用語は、全ての骨格N-H基が、水素結合を、タンパク質配列に沿って3~4個の残基前に位置するアミノ酸の骨格C=O基に提供する、右巻き又はらせん構造(ヘリックス)である、タンパク質の二次構造における共通モチーフを指す。アルファヘリックスは、約3.6個の残基の1ヘリックスターン当たりの残基の平均数を有し、13個の原子が水素結合によって形成された環に含まれる。
【0067】
特定の実施形態では、本開示のペプチドは、アルファヘリックス構造を有し、且つ/又はアルファヘリックス構造と予測される配列を有する。ペプチドの構造を決定するための方法、例えば円二色性又はNMRは、当業者に周知である。同様に、ペプチドのアルファヘリックス構造を予測するための方法も当業者に周知であり、例えばSTRIDE(Frishman D.,Argos P.,Proteins,vol.23,no 4、1995,p.566-579);DEFINE(Richards F.M.,Kundrot C.E.,Proteins,vol.3,no 2,1988,p.71-84);DSSP(Touw et al.Nucleic Acids Research 2015;43:D364-D368;Kabsch&Sander.Biopolymers.1983,22,2577-2637)である。
【0068】
アルファヘリックスは、以下の位置においてキナーゼドメイン中に位置する:配列番号1の372~377;381~392;425~432;437~456;466~468;502~504;507~510;518~533;543~552;563~572;577~579;587~593及び595~597。
【0069】
したがって、本ペプチドは、以下の配列:
- VECTMVEKRVLA(配列番号3)、
- LMYHIQQV(配列番号4)、
- LDN、
- PDY、
- PEII(配列番号5)、
- SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6)、
- EDEDELFQSIME(配列番号7)、
- PAK、
- GERDVRE(配列番号8)、
- AFF
の少なくとも1つを含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得る。
【0070】
特定の実施形態では、本ペプチドは、以下の配列:
- VECTMVEKRVLA(配列番号3)、及び
- GERDVRE(配列番号8)
の少なくとも1つを含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得る。
【0071】
任意選択的に、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LMYHIQQV(配列番号4);LXYHIQQV(配列番号12);LDN;SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);EDEDELFQSIME(配列番号7);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKを含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xは、α-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸である。例えば、Xは、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択することができる。一態様では、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LMYHIQQV(配列番号4);LXYHIQQV(配列番号12);SVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);EDEDELFQSIME(配列番号7);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17)を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。特に、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:VECTMVEKRVLA(配列番号3);VECTXVEKRVLA(配列番号9);VECTMVEKXVLA(配列番号10);VECTXVEKXVLA(配列番号11);LXYHIQQV(配列番号12);SVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);EDEDELFQSIXE(配列番号14);GERDVRE(配列番号8);GEXDVRE(配列番号15);GERDVXE(配列番号16);GEXDVXE(配列番号17)を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。例えば、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:VECTMVEKRVLA又はVECTTVEKEVLA(配列番号19)を含み得る。
【0072】
任意選択的に、本ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の置換、欠失、付加又はこれらの混合、好ましくは1、2、3、4又は5個の置換、欠失、付加又はこれらの混合、より好ましくは1、2又は3個の置換を含む。
【0073】
任意選択的に、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKRVLA(配列番号3);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変から選択されるアミノ酸の改変を任意選択的に有するVECTXVEKRVLA(配列番号9);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKXVLA(配列番号10);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKXVLA(配列番号11);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLMYHIQQV(配列番号4);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLXYHIQQV(配列番号12);LDN;置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIME(配列番号7);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIXE(配列番号14);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVRE(配列番号8);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVRE(配列番号15);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVXE(配列番号16);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVXE(配列番号17);LDN;AFF;PDY;XDY;PEII(配列番号5);XEII(配列番号18);PAK;XAKを含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xは、α-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択することができる。
【0074】
一態様では、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKRVLA(配列番号3);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変から選択されるアミノ酸の改変を任意選択的に有するVECTXVEKRVLA(配列番号9);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKXVLA(配列番号10);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKXVLA(配列番号11);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLMYHIQQV(配列番号4);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するLXYHIQQV(配列番号12);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEMLA(配列番号6);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するSVDWWAYGVLLYEXLA(配列番号13);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIME(配列番号7);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するEDEDELFQSIXE(配列番号14);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVRE(配列番号8);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVRE(配列番号15);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVXE(配列番号16);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVXE(配列番号17)を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xは、α-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択することができる。
【0075】
特に、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKRVLA(配列番号3);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変から選択されるアミノ酸の改変を任意選択的に有するVECTXVEKRVLA(配列番号9);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTMVEKXVLA(配列番号10);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するVECTXVEKXVLA(配列番号11);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVRE(配列番号8);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVRE(配列番号15);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGERDVXE(配列番号16);置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有するGEXDVXE(配列番号17)を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸である。好ましくは、Xは、α-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸である。例えば、Xは、A、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、より好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択することができる。
【0076】
例えば、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:VECTMVEKRVLA又はVECTTVEKEVLA(配列番号19)を含み得る。
【0077】
一態様では、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:
a)VECTXVEKXVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号20)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸であり、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
b)VECTMVEKRVLALLDKXXFLTQLHS(配列番号21)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸であり、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
c)VECTXVEKRVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号22)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸であり、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
d)VECTMVEKXVLALLDKPPFLTQLHS(配列番号23)(Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸であり、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する)、
及び任意の配列a)~d)の少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は25個の連続残基の任意の断片の配列
を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得る。
【0078】
別の特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、それをアルファヘリックス構造で維持するために設計又は修飾される。当該技術分野において既知であるように、これは、生物学的効果に重要ではないアミノ酸の置換によるアミノ酸の修飾、非天然アミノ酸の使用、ペプチド環化及びペプチド骨格への修飾若しくはペプチド鎖のアミノ酸間の化学結合の付加を含む様々な方法を介して達成することができる。このような修飾は、例えば、それらの熱安定性及びプロテアーゼ安定性を増大させるために行うことができる。
【0079】
特に、本開示のペプチドは、化学的架橋によって修飾される。例えば、本ペプチドは、ステープルドペプチドである。一実施形態では、本開示のペプチドは、ステープル化されている。「ステープルドペプチド」又は「ステッチドペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ペプチド二次構造が、ペプチド中の隣接するα-ヘリックスのターンを接続する1つ以上の人工的な分子架橋(ブリッジ)で安定化されている、人工的に修飾されたペプチドを指す。ステープルドペプチドを調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えばその開示が参照により本明細書に組み込まれるVerdine&Hilinski(2012,Methods Enzymol,503,3-33)、国際公開第10033617号パンフレット及び国際公開第10011313号パンフレットに記載されている。
【0080】
一実施形態では、本開示のステープルドペプチドの架橋は、i+3、及び/又はi+4、及び/又はi+7架橋である。ペプチドにおいて、「i+3架橋」は、アミノ酸、「i」アミノ酸と、iアミノ酸から3個のアミノ酸残基の距離で存在する別のアミノ酸との間の架橋である。ペプチドにおいて、「i+4架橋」は、アミノ酸、「i」アミノ酸と、iアミノ酸から4個のアミノ酸残基の距離で存在する別のアミノ酸との間の架橋である。ペプチドにおいて、「i+7架橋」は、アミノ酸、「i」アミノ酸と、iアミノ酸から7個のアミノ酸残基の距離で存在する別のアミノ酸との間の架橋である。
【0081】
最短配列、特に、3~4個の残基を含むものについて、架橋は、i+3及びi+4であり、それは、この配列の外側の残基間に導入される。配列が十分長い場合、i+7の架橋が好ましい。
【0082】
ある特定のペプチドに関するこの態様を説明するため、本ペプチドは、以下の配列の少なくとも1つ:
【化5】
を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在し得、太字であり且つ下線が施されている残基
【化6】
は、ステープリングを担持し、ステープリングに好適な任意のアミノ酸誘導体であり、及び
Xは、M、P及びRを除く任意のアミノ酸であり、好ましくはα-ヘリックス二次構造に好ましいアミノ酸であり、より好ましくはA、D、N、C、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びY、いっそうより好ましくはA、D、N、G、Q、E、H、L、K、F、S、W及びYからなる群から選択され、及び
配列は、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する。
【0083】
例えば、i+7ステープリングに関して、第1の
【化7】
は、2-(7-オクテニル)アミノ酸(例えば、2-(7-オクテニル)アラニン又は2-(7-オクテニル)アルギニン)であり、且つ第2の
【化8】
は、2-(4-ペンテニル)アミノ酸(例えば、2-(4-ペンテニル)アラニン又は2-(4-ペンテニル)セリン)である。具体的な組み合わせは、2-(7-オクテニル)アラニン及び2-(4-ペンテニル)アラニン;2-(7-オクテニル)アラニン及び2-(4-ペンテニル)セリン;2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)アラニン;又は2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであり得る。
【0084】
特定の実施形態では、本ペプチドは、
【化9】
であり得、
【化10】
は、ステープリングを担持し、好ましくはそれぞれ2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンであり、
配列は、置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2、3、4又は5個の改変、より好ましくは置換、欠失、付加及びこれらの混合から選択されるアミノ酸の1、2又は3個の改変を任意選択的に有する。
【0085】
特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、環式ペプチドである。本明細書で使用される場合、「環式ペプチド」又は「環状ペプチド」は、N末端及びC末端、又はN末端及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはC末端アミノ酸、又はC末端及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはN末端アミノ酸、あるアミノ酸の側鎖及び別のアミノ酸の側鎖、好ましくはN末端アミノ酸及びC末端アミノ酸が共有結合で連結され、環構造を生成するペプチドに相当し且つそれを指す。本明細書で使用される場合、「N末端」、「アミノ末端」、「NH2末端」、「N末端(N-terminal end)」及び「アミン末端」という用語は、ペプチドの最初のアミノ酸に存在する遊離アミノ基(-NH2)に相当し且つそれを指す。本明細書で使用される場合、「C末端」、「カルボキシル末端」、「カルボキシ末端」、「C末端(C-terminal end)」及び「COOH末端」という用語は、ペプチドの最後のアミノ酸に存在する遊離カルボキシル基(-COOH)に相当し且つそれを指す。
【0086】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、80個未満のアミノ酸、より好ましくは60個未満のアミノ酸、なお好ましくは40個未満のアミノ酸及び更により好ましくは30個未満のアミノ酸の長さを有する。特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、25個未満のアミノ酸の長さを有する。別の特定の実施形態では、20個未満のアミノ酸、より好ましくは15個未満のアミノ酸の長さを有する。好ましくは、本ペプチドは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個を超えるアミノ酸の最小長さを有する。例えば、本ペプチドは、少なくとも4個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも6個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有する。
【0087】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、ALMS1-PKC相互作用を妨害し得、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得るか、又は防止し得る。換言すると、本開示によるペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を遮断し得る。或いは、本開示によるペプチドは、ALMS1-PKC相互作用を妨害し得ず、特に、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を減少させ得ないか、又は防止し得ない。換言すると、本開示によるペプチドは、ALMS1とαPKCとの間の相互作用を遮断し得ない。
【0088】
αPKCのALMS1への結合に対するペプチドの効果を決定するため、当業者により既知の任意の技術、特にタンパク質相互作用を決定するのに好適な任意の方法を実行することができる。例えば、組換え又は精製されたネイティブALMS1又はαPKCを、表面プラズモン共鳴チップ及びチップの上を流れる他の分子に結合させて、例えば、Biacore(General Electric,USA)機において結合親和性を評価することができる。
【0089】
αPKCのALMS1への結合に対するペプチドの効果は、試験ペプチドの不在下及び存在下でのαPKCのALMS1への結合を測定することにより、且つαPKCのALMS1への結合を比較することにより決定される。
【0090】
特に、ALMS1を釣り餌(bait)として使用する免疫沈降アッセイを実行することができる。このアッセイは、インスリンの不在下で及び/又は存在下、好ましくはインスリンの不在下で培養した細胞、特に脂肪細胞を用いて実行することができる。試験されるペプチドを培養基中に添加する。次いで、αPKCを免疫検出する。
【0091】
「減少した」、「減少させる」又は「防止する」とは、同じ条件下で試験される分子の不在下で測定された結合値と比べるとき、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%だけ減少した結合値を指すことを意図している。
【0092】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、脂肪細胞中のFATP2の発現を減少させ得る。
【0093】
FATP2は、溶質キャリアファミリー27メンバー2(SLC27A2)とも呼ばれる。このタンパク質は、データベースUniProtKBにO14975のもと開示されている。遺伝子は、UniGeneデータベースにHs.11729のもと記載されている。参照の配列は、NCBIにおいてアイソフォーム1についてはNP_003636.2及びNM_003645.3のもと並びにアイソフォーム2についてはNP_001153101.1及びNM_001159629.1のもと見出すことができる。
【0094】
「減少した」又は「減少させる」とは、同じ条件下でペプチドの不在下で測定された発現値と比べるとき、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%だけ減少した発現値を指すことを意図している。発現は、タンパク質レベル(例えば、抗体を用いて)又はmRNAレベルのいずれかにおいて測定することができる。
【0095】
発現は、免疫組織化学、半定量的ウエスタンブロットなどの任意の利用可能な方法により、又はタンパク質若しくは抗体アレイによりタンパク質レベルにおいて測定することができる。FATP2に指向される抗体は、例えば、Origeneから参照番号TA350424若しくはTA333990;又はSanta Cruz Biotechnologyから参照番号sc-393906で市販されている。
【0096】
発現は、任意の利用可能な方法によりmRNAレベルにおいても測定することもできる。好ましくはFATP2の発現レベルは、定量的RT-PCR、リアルタイム定量的RT-PCR、Nanostring技術PCRにより、又はRNA-Seqなどのハイスループットシーケンシング技術若しくはマイクロ流体系を使用するシーケンシング技術によりmRNA転写産物の量を測定することにより決定される。より具体的には、発現は、実施例のセクションに規定される方法により測定される。
【0097】
特定の実施形態では、脂肪組織中の本ペプチドにより引き起こされるFATP2発現に対する効果は、好ましくはFATP2に特異的である。この実施形態では、本ペプチドは、特に哺乳動物における脂肪組織中の他のFATP、すなわち、FATP1、FATP3、FATP4、FATP5及びFATP6の発現に対する効果を有し得ないか、又はあまり有し得ない。
【0098】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、肝脂肪化、肝臓中の脂肪の量、肝臓中の脂肪滴のサイズ及び/又は脂肪肝指数を減少させ得る。
【0099】
特定の実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴
- これが1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含まないこと、
- これがヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用すること、及び
- これがPKC(タンパク質キナーゼC)のキナーゼドメインの断片からの配列を含むか、それにおいて本質的に存在するか、又はそれにおいて存在すること
を提示し、並びに、1つ、2つ、3つ、4つ又は全ての以下の特徴を更に提示する:
- これが脂肪組織中のFATP発現の発現レベルを改変すること、優先的には、これが脂肪組織中のFATP2発現を減少させること、
- これが肝脂肪化、肝臓中の脂肪の量、肝臓中の脂肪滴のサイズ及び/又は脂肪肝指数を減少させること、
- これが少なくとも4個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これがヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用すること、
- これが架橋により修飾されていること。
【0100】
より具体的な実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴を提示する:
- これが肝脂肪化、肝臓中の脂肪の量、肝臓中の脂肪滴のサイズ及び/又は脂肪肝指数を減少させること、
- これが1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含まないこと、
- これが少なくとも4個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これがヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用すること。
【0101】
別のより具体的な実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の特徴を提示する:
- これが脂肪組織中のFATP2発現を減少させること、
- これが1つのメチオニン、1つのプロリン及び1つのアルギニンを同時に含まないこと、
- これが少なくとも4個のアミノ酸、且つ40個未満のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ30個未満のアミノ酸の長さ、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、且つ25個未満のアミノ酸の長さを有すること、
- これがヘリックス、好ましくはアルファヘリックスである二次構造を採用すること。
【0102】
一実施形態では、本開示によるペプチドは、コラーゲン、特に、コラーゲンIV及びLOXL2の発現を減少させ得る。優先的には、これはLOXL2の発現、特に、肝臓中及び/又は血漿中のLOXL2発現を減少させる。
【0103】
これは、組織中及び循環中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の脂質含有量、優先的には、18:2 LPCを減少させ得る。
【0104】
本開示によるペプチドは、その細胞内取り込み又は侵入を容易にするための部分、特にPTD(タンパク質導入ドメイン)を更に含み得る。PTDは、一般的に、10~20個のアミノ酸の特定のアミノ酸配列を含む(Matsushita and Matsui,(2005),J Mol Med 83,324-328;Vives et al,Biochimic et Biophysica Acta,2008,1786,126-138)。PTDは、主にアルギニン又はリジンなどの塩基性アミノ酸から構成され、PTDの代表的な例としては、ポリR8(RRRRRRRR(配列番号33))又は(RRPRRPRRPRRPRRP(配列番号34))などのアルギニンリッチペプチド、(RQIKIWFQNRRMKWKK(配列番号35))又はHIV-Tat(YGRKKRRQRRR(配列番号36))などのアンテナペディア若しくはペネトラチンペプチドが挙げられる。
【0105】
本開示によるペプチドは、天然アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸から作ることができる。「非天然アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸(すなわちアラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、プロリン、スレオニン、システイン、メチオニン)の類似体又は誘導体と定義される。これらは、修飾された側鎖、例えばより短いか、より長いか、又は異なる官能基を有する側鎖を提示する。特に、D異性体がプロテアーゼに感じやすくないため、D異性体及びL異性体が企図される。加えて、タンパク質分解耐性を増加させるために、ペプチド結合の一部又は全てにおける修飾も企図され、特に(-CO-NH-)よる、(-CH2-NH-)、(-NH-CO-)、(-CH2-O-)、(-CH2-S-)、(-CH2-CH2-)、(-CO-CH2-)、(-CHOH-CH2-)、(-N=N-)及び/又は(-CH=CH-)によるものである。ペプチドは、カルボキシルC末端(-COO-)及びアミド末端(-CONH2)を提示することができる。本ペプチドは、本明細書に開示されるにように、ペプチドのD-レトロ-インベルソ(retro-inverso)配列でもあり得る。N末端は、特にアセチルラジカルで修飾され得る。
【0106】
任意選択的に、本ペプチドは、その安定性を増加させるために、ペグ化することができる。更に、任意選択的に、本ペプチドは、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどの非水性のプロトン性溶媒中で製剤化することができる。本ペプチドは、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体ミクロスフェアデポー製剤にもパッケージ化され得る。多くの徐放性送達システムが存在し、これらの多くは、本開示で使用するのに適切である。例えば、PLGA、ポリ乳酸又はポリグリコール酸などの分解性ポリマーに基づくポリマーベースの徐放性組成物は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2005/117830号パンフレット及び/又は国際公開第2006/075124号パンフレットに記載されるものなど、脂質ベースのデポー製剤として好適である。活性剤の生体分解性ポリマーデポー製剤への製剤化は、十分に確立されており、且つ当該技術分野において周知であり、したがって、本開示のペプチドは、これらの既知の方法を用いて製剤化され得る。好ましくは、本開示の組成物は、ペプチドを機能的濃度で少なくとも1ヶ月間放出することができる。
【0107】
追加の態様では、本開示によるペプチドは、肝臓中のNAFLD又はNASHに関連する脂肪化及び任意の肝障害の現象を減少させる。肝臓中の脂肪化の現象は、当業者から既知の任意の方法により評価することができる。特に、これは、実施例のセクションに記載の方法により評価される。例えば、脂肪化は、撮像又は生検により測定することができる。肝臓中の脂肪化の現象を減少させるペプチドは、当該技術分野において既知の任意の技術を使用して簡便にスクリーニングすることができる。特に、肝臓中の脂肪化を評価する方法は、肝臓中の脂肪、肝臓中の脂肪滴のサイズの測定及び/又は脂肪肝指数の測定に好適な任意の方法を含み得る(Bedgni et al,BMC Gastroenterol.2006 Nov 2;6:33)。
【0108】
「ペプチド」とは、上記開示のペプチド又は上記開示の異なるペプチドの組み合わせを指すことを意図している。例えば、2、3、4、5又は6つの異なるペプチド、好ましくは2又は3つ、好ましくは2つのペプチドを使用することができる。
【0109】
組み合わせ
本開示によるペプチドは、1つ以上の追加の活性薬物、例えば、抗糖尿病薬、脂質低下剤、抗肥満症剤、降圧剤、抗脂肪化薬、抗炎症剤及びペルオキシソーム増殖因子活性化因子受容体(peroxisome proliferator-activator receptor)のアゴニストと組み合わせて使用することができる。
【0110】
したがって、本発明は、
- 特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物と組み合わせた、疾患の治療又は予防において使用するための本明細書に開示のペプチド又はそのペプチドを含む医薬組成物であって、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される線維症であるペプチド又はそのペプチドを含む医薬組成物、
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される疾患の治療又は予防において使用するための、本明細書に開示のペプチド及び特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物を含む医薬組成物、
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される疾患の治療又は予防における同時、別個又は逐次使用のための、本開示によるペプチド及び特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物を含む製品、併用製剤又はキット、
- 特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物と組み合わせた、疾患を治療又は予防するための医薬品の製造のためのペプチドの使用であって、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される使用、
- 非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される疾患を治療又は予防するための医薬品の製造のための、本明細書に開示のペプチド及び特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物の使用、
- 治療有効量の本明細書に開示のペプチド及び特に、本明細書に開示の治療有効量の1つ以上の追加の活性薬物を投与することを含む、対象における疾患の治療又は予防のための方法であって、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される方法、
- 本明細書に開示のペプチド及び特に、本明細書に開示の1つ以上の追加の活性薬物を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む、対象における疾患の治療又は予防のための方法であって、疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝脂肪化(脂肪肝)、肝炎、肝硬変、肝細胞癌及び線維症、特に、肝硬変を含む肝線維症、腎線維症、心房線維症、心内膜心筋線維症及び陳旧性心筋梗塞を含む心臓線維症、嚢胞性線維症及び放射線誘発性肺線維症を含む肺線維症、動脈線維症などの血管線維症、脳線維症、骨髄線維症、関節線維症、腸線維症、腹膜線維症、後腹膜線維症及び皮膚線維症からなる群から選択される線維症からなる群から選択される方法
に関する。
【0111】
特に、治療有効量又は治療有効量以下の1つ以上の追加の活性薬物を使用することができる。「治療量以下」とは、例えば、従来の治療薬量(特に同じ適応症及び/又は同じ投与経路及び/又は投与頻度についての)の90、80、70、60、50、40、30、20又は10%であり得る量を指すことを意図する。
【0112】
抗糖尿病薬は、例えば、インスリン、インスリン誘導体及び模倣体;インスリン分泌促進物質(例えば、スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、グリピジド));グリフロジン(例えば、エンパグリフロジン及びダパグリフロジン);グリブリド及びAmaryl;リラグルチド(NN2211);インスリン分泌促進性スルホニル尿素受容体リガンド(例えば、メグリチニド、例えば、ナテグリニド及びレパグリニド);チアゾリジンジオン(例えば、(例えば、インスリン感受性促進により)インスリン作用を増強させ、したがって末梢組織中のグルコース利用を促進するロシグリタゾン(AVANDIA)、トログリタゾン(REZULIN)、ピオグリタゾン(ACTOS)、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、トログリタゾン、エングリタゾン、シグリタゾン、アダグリタゾン、ダルグリタゾン;タンパク質チロシンホスファターゼ-IB(PTP-1B)阻害剤(例えば、PTP-112);コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤(例えば、トルセトラピブ)、GSK3(グリコゲンシンターゼキナーゼ-3)阻害剤(例えば、SB-517955、SB-4195052、SB-216763、NN-57-05441及びNN-57-05445);RXRリガンド(例えば、GW-0791及びAGN-194204);ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤(例えば、T-1095又はカナグリフロジン);グリコゲンホスホリラーゼA阻害剤(例えば、BAY R3401);ビグアニド(例えば、メトホルミン及びグルコース利用を促進し、肝グルコース産生を低減させ、及び/又は腸グルコース放出を縮小することにより作用する他の薬剤);アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース及びミギイトイ(migiitoi))並びに炭水化物消化及び結果的に腸からの吸収を減速させ、食後高血糖を低減させる他の薬剤;GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-1類似体(例えば、エクセンジン-4及びGLP-1模倣薬);並びにDPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤(例えば、ビルダグリプチン)であり得る。これは、Expert Opin Investig Drugs 2003,12(4):623-633の
図1~7に記載の抗糖尿病薬でもよい。抗糖尿病薬は、αPKC及びALMS1の結合を防止する分子(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/114062号パンフレットに開示のもの)も含み得る。
【0113】
脂質低下剤は、例えば、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素A(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤、例えば、ロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン及びリバスタチン;スクアレンシンターゼ阻害剤;FXR(ファルネソイドX受容体)及びLXR(肝臓X受容体)リガンド(例えば、オベチコール酸);胆汁酸吸着剤(例えば、コレスチラミン及びコレセベラム);フィブラート;ニコチン酸及びアスピリン;アラムコール、膜貫通Gタンパク質共役受容体(TGR)5アゴニストであり得る。
【0114】
抗肥満症剤は、例えば、オルリスタット、リモナバント、フェンテルミン、トピラマート、qnexa及びロカセリン(locaserin)であり得る。
【0115】
降圧剤は、例えば、ループ利尿薬(例えば、エタクリン酸、フロセミド及びトラセミド);アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(例えば、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル、キナプリル、ラミプリル及びトランドラプリル);Na-K-ATPアーゼ膜ポンプの阻害剤(例えば、ジゴキシン);ニュートラルエンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤(例えば、サクビトリル);ACE/NEP阻害剤(例えば、オマパトリラト、サムパトリラト及びファシドトリル);アンジオテンシンIIアンタゴニスト(例えば、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン及びバルサルタン、特に、バルサルタン);NEP阻害剤及びアンジオテンシンIIアンタゴニストの組み合わせ(例えば、サクビトリル及びバルサルタン(すなわち、Entresto));レニン阻害剤(例えば、ジテキレン、ザンキレン、テルラキレン、アリスキレン、RO66-1132及びRO-66-1168);ベータアドレナリン作動性受容体遮断剤(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール);強心剤(例えば、ジゴキシン、ドブタミン及びミルリノン);カルシウムチャネル遮断剤(例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピン及びベラパミル);アルドステロン受容体アンタゴニスト;並びにアルドステロンシンターゼ阻害剤であり得る。
【0116】
ペルオキシソーム増殖因子活性化因子受容体のアゴニストは、例えば、フェノフィブラート、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、テサグリタザル、BMS-298585、L-796449、特許出願の国際公開第2004/103995号パンフレットに具体的に記載されている化合物、すなわち、実施例1~35の化合物若しくは請求項21に具体的に列挙されている化合物又は特許出願の国際公開第03/043985号パンフレットに具体的に記載されている化合物、すなわち、実施例1~7の化合物若しくは請求項19に具体的に列挙されている化合物、特に、(R)-1-{4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-オキサゾール-4-イルメトキシ]-ベンゼンスルホニル}-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-2-カルボン酸又はその塩であり得る。
【0117】
他の目的薬物は、例えば、セニクリビロク、シムツズマブ、セロンセルチブ、エムリカサンであり得る。
【0118】
特定の実施形態では、本ペプチドと組み合わせて使用される1つ以上の追加の活性薬物は、GLP-1類似体(例えば、リラグルチド)、オベチコール酸、グリフロジン、シムツズマブ(GS6624)、セリクリビロク、アラムコール、ガレクチン3阻害剤(例えば、GR-MD-02)、TGR5アゴニスト及び二重FXR/TGR5アゴニスト(例えば、INT-777又はINT-767)並びにエムリカサンのうちから選択することができる。
【0119】
抗炎症剤は、当業者に既知の任意の薬物(例えば、サリチル酸、種々の形態のイブプロフェン及び種々の形態のナプロキセンを含む非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、ステロイド系抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、抗炎症性抗TNFアルファ抗体)並びにこれらの組み合わせであり得る。
【0120】
医薬組成物の剤型、投与の経路、投与量及びレジメンは、当然ながら、治療される病態、病気の重症度、患者の年齢、体重及び性別などに依存する。
【0121】
本開示の医薬組成物又は治療用組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下又は眼内投与などに製剤化することができる。
【0122】
本開示の医薬組成物で使用されるペプチドは、治療有効量で存在する。
【0123】
本ペプチドを含む医薬組成物は、当業者に既知である標準的な医薬品実践規範(Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New York)に従って製剤化される。
【0124】
一態様では、本発明は、ペプチド又はその塩を含む、本開示による医薬組成物の非経口注射のための安定な製剤を提供し、このペプチドは、乾燥され、次いで使用前に溶媒中で再構成される。本ペプチド(又は製剤が2つ以上のペプチドを含む実施形態では、ペプチドのそれぞれ)は、非揮発性緩衝液と混合され、乾燥ペプチド粉末に乾燥される。好適な緩衝液としては、グリシン緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、緩衝液は、グリシン緩衝液である。別の実施形態は、緩衝液は、クエン酸緩衝液とリン酸緩衝液との混合物である。製剤が2つ以上のペプチドを含むいくつかの実施形態では、第1の緩衝液と第2の緩衝液とは、同じである。製剤が2つ以上のペプチドを含むいくつかの実施形態では、第1の緩衝液と第2の緩衝液とは、異なる。或いは、本開示による医薬組成物は、水溶液状態で保存され得る。この溶液は、必要に応じて、更なる添加剤又は賦形剤を含有し得、更なる添加剤又は賦形剤は、有効成分と適合性がなければならず、これらが凍結乾燥段階中に除去されない場合、これらは、投与の経路とも適合性がなければならない。非経口投与について、本組成物は、皮内、皮下、筋肉内又は静脈内注射され得る。好ましくは、本組成物又はペプチドは、特に、脂肪組織中で皮下注射し、又は皮下注射することができる。
【0125】
これは、好ましくは体内に埋め込まれた浸透圧ミニポンプ又は他の制御送達装置を用いて配置され得る。好ましくは、これは、他の化合物と混合されて、徐放性デポー製剤を作製することができる。好ましい投与経路は、例えば、インスリンペンに類似する使い捨て又はマルチユニット分配装置を使用することによる皮下注射である。本ペプチドは、いかなる針も用いない皮下投与を可能とする装置、非侵襲系により投与することもできる。
【0126】
更に、本ペプチドは、利用可能な任意の薬物送達系を使用することにより投与することができる。特に、適切な同時投与療法のための皮下薬物送達を可能とし、且つ最適化するために組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素rHuPH20の使用が企図される。
【0127】
本技術を用いると、静脈内投与される一部の生物剤及び化合物を、代わりに皮下送達するか、又は皮膚下で送達することができ、このことは、患者についてより良好な体感を潜在的に提供し、投与時間、注射痛及び注入部位反応を低減させることにより健康系効率を増加させる。
【0128】
一実施形態では、本開示のペプチドは、他の化合物と混合されて、徐放性デポー製剤を作製し得る。次いで、これが皮下注射されて、徐放性デポーを形成することができる。
【0129】
経口投与について、本組成物は、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤及びシロップ剤、エリキシル剤並びに濃縮滴剤などの液状製剤などの従来の経口剤形に製剤化することができる。例えば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などを含む非毒性固体担体又は希釈剤が使用され得る。圧縮錠剤について、粉末状材料に粘着性を付与する薬剤である結合剤も必要である。例えば、デンプン、ゼラチン、乳糖又はデキストロースなどの糖類及び天然又は合成ガムは、結合剤として使用することができる。錠剤の崩壊を容易にするために、錠剤では崩壊剤も必要である。崩壊剤としては、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガム及び架橋ポリマーが挙げられる。更に、製造プロセス中の錠剤材料の表面への接着を防止し、製造中の粉末材料の流動特性を改善するために、滑沢剤及び流動促進剤も錠剤中に含まれる。コロイド状二酸化ケイ素は、流動促進剤として最も一般的に使用され、タルク又はステアリン酸などの化合物は、滑沢剤として最も一般的に使用される。
【0130】
経皮投与について、本組成物は、軟膏剤、クリーム剤又はゲル剤の剤型に製剤化することができ、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドなどの適切な浸透剤又は洗浄剤を用いて浸透を容易にすることができる。
【0131】
経粘膜投与について、鼻腔スプレー、肺内吸入、直腸又は膣坐剤を使用することができる。一実施形態では、本発明は、当該技術分野において既知の方法に従って肺内薬物送達装置を使用して投与される乾燥粉末又は液体製剤のいずれかを用いる肺内経路によって投与され得る。活性化合物は、当該技術分野において既知の方法により、既知の坐剤基剤のいずれかに組み込むことができる。このような基剤の例としては、ココアバター、ポリエチレングリコール(カーボワックス)、ポリエチレンソルビタンモノステアレート及びこれらと、融点又は溶出速度を修正するための他の適合性材料との混合物が挙げられる。
【0132】
本開示による医薬組成物は、活性薬物を実質的に投与時に放出するか、又は投与後の任意の所定の時間若しくは期間に放出するように製剤化され得る。
【0133】
本開示による医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と共に、本開示の1つ以上のペプチドを含むことができる。これらの賦形剤及び/又は担体は、上に記載した投与の剤型に従って選択される。
【0134】
特定の実施形態では、本開示による医薬組成物は、0.01ng~10gの本開示のペプチドを含む。一実施形態では、本開示による医薬組成物は、0.1ng~1gの本開示のペプチドを含む。
【0135】
科学論文及び研究要約、公開された特許出願、付与された特許又は任意の他の文献を含む、本出願で引用された全ての文献は、これらの文献の全ての結果、表、図及びテキストを含む全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
異なる意味を有するが、「含む」、「有する」、「~において存在する」及び「含有する」は、本出願全体において一方を他方に置き換えることができる。
【0137】
本開示の更なる態様及び利点は、以下の実施例で記載されるが、実施例は、例示的なものであり、非限定的なものとして解釈されたい。
【実施例】
【0138】
実施例1:注射11日後の重要な脂肪酸輸送体及び受容体の発現レベルに対する脂肪組織標的化PATAD処置の効果
PATAD皮下注射は脂肪組織中のグルコース吸収の回復に関連するため、本発明者らは、FATP(1~6)(脂肪酸輸送タンパク質1~6)についての6つ全てのアイソフォーム及びFFAR(遊離脂肪酸受容体)についての4つのアイソフォームの発現レベルを測定してそれらの遺伝子に対する任意の効果を評価した。
【0139】
興味深いことに、PATAD注射は、脂肪組織中のFATP2の極めて特異的で且つ大幅な減少を誘発させ、PATAD処置の効果をFATP2発現降下に直接相関付けることを可能とした(
図1A)。PATADペプチドは体内を循環しないこと、その効果は脂肪組織に限定されることが既に示されたため、及びALMS1-PKC相互作用を妨害するその作用機序にも基づき、脂肪組織中のPATADの新規作用は、FATP2を減少させることである。2つの他の主要器官中の輸送体及び受容体の発現レベルは、間接的効果に関連し得る(
図1B~C)。
【0140】
実施例2:ADPIFペプチドは、脂肪組織中のFATP2発現レベルの減少においてPATADペプチドよりも活性である
マウスに単一用量のスクランブルペプチド又はPATAD又はADPIFのいずれかを注射した。注射11日後、マウスを安楽死させ、RNA抽出のために脂肪組織を採取し、次いでリアルタイムPCRを行った。FATP2の発現レベルは低脂肪対照と類似する一方、PATADは、脂肪組織中のFATP2発現レベルの低減において有効であるが、ADPIFよりも有効でない(
図2A)。
【0141】
実施例3:ADPIFは、脂肪組織注射11日後のGLP-1の循環レベルの増加において有効である。
マウスに単一用量のスクランブルペプチド又はPATAD又はADPIFのいずれかを注射した。注射11日後、マウスを安楽死させ、血漿を得、指示される処置のマウスからの循環GLP1の決定のために使用した。PATAD及びADPIFの両方がGLP1の高い循環レベルを回復させ、ADPIFがPATADよりも高い増加を誘発させた(
図2B)。
【0142】
実施例4:脂肪組織標的化PATAD又はADPIF処置のいずれかの単一注射3ヵ月後の肝臓に対する保護効果
提供されたマウスを安楽死させ、分析のためにその血漿及び器官を採取した。日齢に対する肝重量と体重との比を決定し、
図3Bに提示した。PATAD処置に応答する肝臓のサイズは、ビヒクルのみを受容させたDIO糖尿病マウス対照である対照と比べて明らかに減少した。次いで、肝臓の冷凍切片をAdipored及びDAPIにより染色して脂肪滴のレベルを検出した。PATAD又はADPIFにより処置されたマウスは、肝脂肪滴のサイズの減少を明らかに示した(
図3A、右パネル;
図7、右パネル)。肝機能を、肝損傷に正比例してレベルが増加する2つの肝臓関連の強力なバイオマーカー、すなわち(AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)及びALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ))により評価する。興味深いことに、PATAD又はADPIFにより処置されたマウス(単一皮下ペプチド注射による3ヵ月の期間後)は、それら2つのロバストな肝バイオマーカーの大幅な減少を示し(
図3C)、このことは、脂肪化の現象の減少に関連する肝臓に対するPATAD及びADPIFの保護効果を示す。PATAD及びADPIFは、AST及びALTの循環レベルの低減において両方とも有効である。ADPIFはALTの循環レベルの低減においてより活性であり、このことは、肝細胞損傷の改善を意味する。
【0143】
実施例5:ADPIFペプチドは、高血糖症の予防においてPATADペプチドよりも活性である。
これらは、一連の耐糖能試験(GTT)から得られた結果であり、2時点、すなわち、30分及び120分からのデータを使用して両方の対照及びPATAD処置食餌誘発性肥満(DIO)及び糖尿病野生型雄C57/B6マウス(対照)についてのそれらの曲線を作成した。
【0144】
これらのデータは、ペプチドベースADPIFが耐糖能試験においてPATADペプチドよりも良好な効果を有することを示す(
図4)。
【0145】
実施例6:ADPIFペプチドは、LOXL2及びFABP4タンパク質の肝レベルの低減においてPATADペプチドよりも活性である
LOXL2は、コラーゲンの重合化を推進することにより線維症病変の発症を促進する酵素であり、FABP4は、肝臓中の脂質沈着が増加するにつれてレベルが増加する脂質代謝に関与するタンパク質である。単独注射による処置3ヵ月後、指示されるマウスについてのマウスからの肝抽出物を使用し、それらのデータは、ペプチドADPIFが、LOXL2の肝レベルの減少において、それにより肝臓中のより多くの線維症病変を生成する能力の減少において、及び肝トリグリセリドレベルの減少と相関するFABP4のレベルの減少においてPATADよりも強力であることを示す(
図5)。
【0146】
実施例7:脂肪組織中のADPIF処置に応答する循環脂質プロファイル
予想外に、ADPIF脂肪組織注射は脂肪組織中のFATP2の発現レベルの特異的減少並びに筋肉及び肝臓中のFATP及びFFARの関連プロファイルに対して肝臓保護性であることを証明した。これらの変化は、循環する異なる脂質の集団に影響を与える。セラミドは、NAFLDに関与することが既知の生物活性脂質のグループである。本発明者らは、皮下脂肪組織中の週1回注射の頻度におけるADPIFの3回注射後のセラミドプロファイルに対するADPIF注射の効果を測定し、決定した。ADPIFは、全体的に肝セラミド含有量の減少を誘発させ、異なるセラミド間で変動する(
図6)。
【0147】
実施例8:ADPIFは、肝臓中の脂肪滴のサイズの減少において有効である
図7において、処置マウス(実施例6と同じ投与量レジメン)の肝臓からの冷凍切片を脂肪滴について染色し、それはADPIF処置後の肝臓中の脂肪滴のサイズの全体的減少を証明し、それにより肝臓中の脂肪の蓄積の減少を示した。
【0148】
実施例9:驚くべきことに、脂肪組織中のADPIF処置は、肝臓中の重要な脂質合成及びモジュレート酵素の発現レベルを抑制した
ACC及びFASNは、脂質ハンドリングに関与する重要なタンパク質であるSrebf1と一緒に、肝臓中で脂肪酸が合成される脂質合成経路の一部を形成する。ADPIF処置後、それらの酵素は抑制され、それは、脂肪組織中の投与後のADPIF作用が、肝臓中のデノボ脂質合成を遮断し得ることを示した(
図8)。
【0149】
実施例10:脂肪組織中のADPIF処置は、DIO-NASHマウスモデルにおいて肝線維症の進行を遮断する
ADPIF処置マウス(実施例8と同じもの)からの肝冷凍切片をLOXL2又はコラーゲンIVのいずれかの免疫検出に使用し、ADPIFが線維症マーカーの進行の予防において有効であることを示した(
図9A)。血漿中の分泌LOXL2のレベルも有意に低減した(
図9B)。LOXL2の減少及びコラーゲン貯留の減少の結果として、透過型電子顕微鏡観察で非処置DIO-NASH肝臓中で容易に検出された線維症病変(
図9C、左パネル)は、ADPIF処置肝臓中ではもはや検出されなかった。
【0150】
実施例11:ADPIFは、肝臓及び他の組織中の標的化されたリゾホスファチジルコリン(LPC)を選択的に低減させる
LPCについての脂質含有量を、脂肪組織中のADPIF注射3ヵ月後に分析して線維症進行における役割を担う重要な分泌酵素オートタキシンについての既知基質LPCのレベルにADPIFがどのように影響を与え得るかを確認した。驚くべきことに、ADPIFは、試験器官において、選択的なLPCの低減において有効であり、LPC18:2が膵臓、脂肪組織及び肝臓中で最も顕著な低減を提示した(
図10)。
【0151】
実施例12:ADPIFペプチドは、腎臓中のコラーゲンIV貯留の予防、したがって、線維症からの腎臓の保護において有効である
DIOビヒクル処置及びDIO ADPIF処置マウスからの処置3ヵ月後の腎臓の冷凍切片を、コラーゲンIV沈着及びタイトジャンクションについてZO-1抗体により免疫染色して他の軟部組織中の線維症進行に対するADPIFペプチドの効果を評価した。
【0152】
驚くべきことに、ビヒクル処置マウスと比べてADPIF処置マウスの腎臓中のコラーゲンIVの明確な低減が観察され、このことは、ADPIFペプチドが線維症からの腎臓の保護においても有効であることを示した(
図11)。
【0153】
材料及び方法
マウスの飼育
本試験について、マウスはC57/BL6遺伝子バックグランドのものであった。全ての動物を温度及び湿度制御施設中で収容し、12時間ごとの明/暗周期において全期間の間に給餌し、マウスにResearch Dietsからの60%の高脂肪食餌(D12492)を給餌し、水道水を自由に提供した。マウスに給餌し、グルコース負荷試験のためにそれらのグルコース負荷について定期的に試験し、耐糖能異常であれば、それらを処置に使用した。
【0154】
ペプチド配列及び合成
PATADは、脂肪組織中で特異的にグルコース吸収を誘発する能力について生物活性であるPKCアルファアイソフォームに由来する一連のペプチドに与えられた名称である。
ステープルドペプチド配列A:VE CTM-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-EK RVL A-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-L DKP PFL TQL HS(配列番号49)
ステープルドペプチド配列B:S-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-CKG LMT-[2-(4-ペンテニル)アラニン]-HP AKR LGC GPE G(配列番号50)
スクランブルペプチド配列A:KEVPVDTCHLTLMLLFRSVALKQHPE(配列番号51)
スクランブルペプチド配列B:SAECKGRHGTPPGKLMICKGL(配列番号22)。
【0155】
ADPIFは、PATADペプチドのPKCアルファアイソフォーム誘導体に由来し、2つの特異的突然変異を提示する一連のペプチドに与えられた名称である。
ステープルドペプチドADPIF配列:
【化11】
(
【化12】
は、ステープリングを担持し、好ましくはそれぞれ2-(7-オクテニル)アルギニン及び2-(4-ペンテニル)セリンである)。
【0156】
ステープルド及びスクランブルペプチドは、CPC,USAから95%の純度で購入した。全てのペプチドを最初のDMSO中で溶解させ、次いで無菌生理食塩溶液中で10ng/μLの濃度において希釈した。2.5μLの各ペプチド(ステープルド又はスクランブル)を混合し、次いで各マウスにおける皮下脂肪組織中に直接注射した。
【0157】
ペプチドの投与量レジメン
対照マウスには、スクランブル対照又はビヒクル(0.9%の生理食塩溶液)のいずれかを注射した(後腹膜脂肪/皮下注射:0日目における1回の注射及び指示される試験を実行した。処置マウスには、2つのPATADステープルドペプチドの混合物及びPATADペプチドと同じ手順に従うADPIFステープルドペプチド及びADPIFペプチド試験品を注射した(後腹膜脂肪/皮下注射:0日目における1回の注射及び指示される試験を実行した)。第2の実験系列において、ADPIFを、3週間、後腹膜区域中の皮下脂肪組織中にマウス1匹当たり25ugの投与量において週1回注射し、マウスを最後の注射から1週間後に安楽死させた。マウスを安楽死させ、組織試料及び血漿を単離し、更なる試験のために-80℃において保持した。
【0158】
RNA抽出、cDNA合成、q-RNA及びTaqman
RiboPure(商標)キット(カタログ番号:AM1924;Ambion)を使用して全RNAを異なる組織及び細胞から調製し、次いでTURBO DNA-free(商標)(カタログ番号:AM1907;Ambion)によるDNAアーゼ処置を行った。RNAインテグリティを電気泳動により、且つRNA濃度をHellma(登録商標)Tray Cell(カタログ番号:105.810-uvs;Hellma)を用いるEppendorf Biophotometer Plusにより評価した。BioRadiScript(商標)cDNA合成キット(カタログ番号:170-8891;BioRad)を使用して1μgの全RNAのcDNAへの逆転写を実行した。リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応増幅を、BioRad CFX96(商標)Real-Time Systemにおいて、iQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(カタログ番号:170-8886;BioRAd)及びリアルタイムPCRのためのSYBR GreenベースリアルタイムPCRのための試験標的について最適化されたプライマーセットを使用して実行した。Taqman(登録商標)Fast Advanced Master Mix(カタログ番号:4444557;Applied Biosystems)を用いて特異的遺伝子アッセイを用いてTaqman分析を実行した。CFX Manager Software Version 1.5を使用して標的mRNA CtをGAPDHについてのものに正規化することにより比較サイクル閾値(Ct)法を使用して標的遺伝子の正規化発現倍率を計算し、Lin-Regプログラム(Ruijter et al.,2009)を使用して確認した。全てのプライマーペアは、Biorad又はQuantitectのいずれかから購入した。
【0159】
プライマー仕様は以下の表に見出される。
【0160】
【0161】
肝切片のAdipoRed染色
肝臓を単離し、PBS緩衝液(pH7.4)中で簡単に洗浄した。乾燥肝臓を秤量した後、肝臓と体重との比のため、肝臓のスライス試料を4%のパラホルムアルデヒド(0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2中)中に15分間配置し、PBSで洗浄し、30μMのDAPI(Sigma-Aldrich,USA)を含むAdipoRed色素(1/25;Lonza,Switzerland)中で15分間インキュベートした。PBSで3回洗浄後、試料をスライドグラス上に載せ、Zeiss顕微鏡を使用して写真を撮影した。
【0162】
免疫蛍光実験
免疫蛍光実験のため、新たに採取された肝臓及び腎臓をOptimal Cutting Temperature Compound(商標)(OCT(商標)、カタログ番号4583、Tissue-Tek(登録商標)OCT(商標)、Sakura(登録商標)Finetek,Torrance,California,USA)中に含め、Cryostat Leica CM1950を用いて7μmの冷凍切片を切断した。冷凍切片を1×PBSにより洗浄し、4%のホルムアルデヒド溶液中で15分間固定し(カタログ番号:F555-4L、Sigma-Aldrich,Saint-Louis,Missouri,USA)、次いで0.02%のSDS-PBSにより30秒間透過処理した。ブロッキング溶液は、PBS中5%のウシ血清アルブミン(BSA)であった。一次抗体をブロッキング溶液中で希釈し、一晩インキュベートし、指示される二次抗体をPBS中で30分間希釈した。ヘキスト(カタログ番号D1306、Invitrogen,Carlsbad,California,USA)により核を対比染色した。次いで、スライドにVectashield(登録商標)Mounting Medium(カタログ番号:H-1000、Vector Laboratories,Burlingame,California,USA)を載せた。Zeiss AxioVision又はZeiss ZEN 2012ソフトウェアのいずれかを備えるZeiss Imager.Z2顕微鏡(Carl Zeiss Inc.,Oberkochen,Germany)を用いて画像を取得し、分析した。
【0163】
Abcamからの抗コラーゲンIV抗体ab6586及びGeneTexからのLOXL2抗体GTX105085を使用した。
【0164】
肝抽出物に対する電子顕微鏡撮像のため、試料をカコジル酸緩衝液(0.1M、pH7.4)中のグルタルアルデヒド(2.5%)及びパラホルムアルデヒド(2.5%)中で浸漬した。試料を1%の四酸化オスミウム中で後固定し、段階系列アルコール(50、70、90、及び100%)及びプロピレンオキシドを介してそれぞれ30分間脱水し、Epon 812中に包埋した。準超薄切片をウルトラミクロトーム(Leica Ultracut UCT)上で2μmにおいて切断し、超薄切片を70nmにおいて切断し、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛を用いて造影し、Morgagni 268D電子顕微鏡を用いて70kvにおいて試験した。画像をMega View IIIカメラ(Soft Imaging System)によりデジタル的にキャプチャーした。
【0165】
生化学的アッセイ
血漿決定について
AST及びALTのELISA測定
指示されるマウスからの血漿試料を使用してAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)又はASL(アラニンアミノトランスフェラーゼ)(両方とも肝損傷のロバストな指標因子)のいずれかの血漿含有量を決定し、市販のELISAキットを使用して測定した。これらのパラメータを製造業者の手順に従って決定した。
- SEB214Mu(96個試験用):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)用の酵素結合免疫吸着アッセイキット、Cloud Clone Corp
- SEA207Mu(96個試験用):アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)用の酵素結合免疫吸着アッセイキット、Cloud Clone Corp。
【0166】
LOXL2及びGLP-1測定のため、2つの市販のキット
リジルオキシダーゼ様タンパク質2(LOXL2)酵素結合免疫吸着アッセイキット、ハツカネズミ(Mus musculus)、SEF552Mu、Cloud Clone Corp
RayBioヒト/マウス/ラットGLP-1酵素免疫アッセイキット、EIA-GLP1、RayBiotech
を、製造業者からの指示手順を用いて使用した。
【0167】
肝抽出物の測定のため、LOXL2のための同じキットを使用し、FABP4のため、使用される市販のキットは、脂肪酸結合タンパク質4、脂肪細胞(FABP4)用のElisaキット、SEB693Mu、Cloud Clone Corp.であった。
【0168】
異なる組織及び血漿中の脂質組成のため、全ての試料を犠死直後の採取時にフラッシュ冷凍し、Dijonのリピドミックコア施設(Plateforme de Lipidomique-uBorgogne INSERM UMR866/Labex LipSTIC)に送付した。
【0169】
実施例13.非アルコール性脂肪性肝炎STAMモデルにおけるADPIFペプチドのインビボ効力試験
材料及び方法
試験物質
ペプチドは、上記のADPIFペプチドであった。投与溶液を配合説明書に従って調製した。
【0170】
NASHの誘発
12匹の雄マウスにおいて、生後2日目の200μgのストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich,USA)溶液の単一皮下注射及び4週齢後の高脂肪食餌(HFD、57kcal%の脂肪、カタログ番号HFD32、CLEA Japan,Inc.,日本)の給餌によりNASHを誘発した。
【0171】
薬物投与経路
ペプチドを脂肪組織中にマウス1匹当たり100mLの容量で皮下投与した。
【0172】
処置用量
ペプチドをマウス1匹当たり25マイクログラム(μg)の用量において週1回投与した。
【0173】
動物
C57BL/6マウス(妊娠14日の雌)をJapan SLC,Inc.(Japan)から入手した。試験において使用される全ての動物を収容し、Japanese Pharmacological Society Guidelines for Animal Useに従ってケアした。
【0174】
動物をSPF施設中で温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工明及び暗周期;8:00~20:00の明期)及び換気の制御条件下で維持した。実験室中で高圧を維持して施設の汚染を防止した。
【0175】
動物を、TPXケージ(CLEA Japan)中で収容し、ケージ当たり最大3匹のマウスであった。Sterilized Paper-Clean(Japan SLC)を寝床に使用し、週1回交換した。
【0176】
無菌固体HFDを自由摂取で提供し、ケージ頂部の金属蓋中に配置した。ゴム栓及び吸水管を備える水ボトルから純水を自由摂取で提供した。水ボトルを週1回交換し、清浄し、オートクレーブ中で滅菌し、再使用した。
【0177】
マウスを耳パンチにより識別した。各ケージを規定の識別コードにより標識した。
【0178】
血漿生化学的検査の測定
血漿生化学的検査のため、抗凝固剤(Novo-Heparin、Mochida Pharmaceutical Co.Ltd.,Japan)を有するポリプロピレンチューブ中で非絶食血液を回収し、1,000×gにおいて4℃において15分間遠心分離した。上清を回収し、使用まで-80℃において貯蔵した。血漿ALTレベルを、FUJI DRI-CHEM 7000(Fujifilm,Japan)により測定した。
【0179】
肝トリグリセリド含有量の測定
肝総脂質抽出物をFolch法(Folch J.et al.,J.Biol.Chem.1957;226:497)により得た。肝試料をクロロホルム-メタノール(2:1、v/v)中でホモジナイズし、室温において一晩インキュベートした。クロロホルム-メタノール-水(8:4:3、v/v/v)を用いて洗浄した後、抽出物を蒸発乾固させ、イソプロパノール中で溶解させた。肝トリグリセリド含有量を、Triglyceride E-test(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Japan)により測定した。
【0180】
組織学的分析
HE染色のため、ブアン溶液中で前固定された肝組織のパラフィンブロックから切片を切断し、リリー・マイヤーヘマトキシリン(Muto Pure Chemicals Co.,Ltd.,Japan)及びエオシン溶液(Wako Pure Chemical Industries)により染色した。NAFLD活動性スコア(NAS)をKleiner(Kleiner DE.et al.,Hepatology,2005;41:1313)の基準に従って計算した。
【0181】
コラーゲン沈着を可視化するため、ピクロシリウスレッド溶液(Waldeck,Germany)を使用してブアン固定肝切片を染色した。線維症面積の定量的分析のため、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を200倍の倍率において使用してシリウスレッド染色切片の明視野画像を中心静脈付近でキャプチャーし、ImageJソフトウェア(National Institute of Health,USA)を使用して5つの視野/切片の陽性面積を測定した。
【0182】
試料回収
血漿試料について、残りの血漿を回収し、更なる分析のために-80℃において貯蔵した。
【0183】
肝試料について、左側葉を回収し、6つの小片に切断した。左側葉の2つの小片、左及び右中葉並びに尾状葉を液体窒素中で急速冷凍し、更なる分析のために-80℃において貯蔵した。左側葉の他の2つの小片をブアン溶液中で固定し、次いでパラフィン中に包埋した。試料を組織学的検査のために室温において貯蔵した。左側葉の残りの小片をO.C.T.化合物中で包埋し、液体窒素中で急速冷凍した。試料を更なる分析のために-80℃において貯蔵した。
【0184】
統計的検定
GraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.,USA)でスチューデントt検定を使用して統計的分析を実行した。<0.05のP値を統計的に有意であるとみなした。トレンド又は傾向は、片側t検定が<0.1のP値を返した場合に仮定した。結果を平均±SDとして表現した。
【0185】
実験設計及び処置
試験群
第1群:ADPIFペプチド
6匹のNASHマウスに、マウス1匹当たり25mgの用量におけるADPIFペプチドが補給されたビヒクルを、4~9週齢で週1回、脂肪組織中で皮下投与した。
【0186】
第2群:ビヒクル
6匹のNASHマウスに、マウス1匹当たり100mLの容量におけるビヒクル[生理食塩水中のDMSO]を、4~9週齢で週1回、脂肪組織中で皮下投与した。
【0187】
以下の表は、処置スケジュールをまとめる。
【0188】
【0189】
動物監視及び犠死
生存率、臨床的兆候及び挙動を毎日監視した。処置前に体重を記録した。マウスを毒性、瀕死及び致死の有意な臨床的兆候について各投与の約60分後に観察した。動物を、イソフルラン麻酔(Pfizer Inc.)下での直接心臓穿刺を介する放血により9週齢において犠死させた。
【0190】
結果
体重変化及び全身状態
○体重変化
全ての群の平均体重は、処置期間の間に漸増した。処置期間のいずれの日においても、ADPIFペプチド群とビヒクル群との間の平均体重の有意差は見られなかった。
【0191】
処置期間の間、全ての群の動物は死亡しなかった。本試験において、動物は全身状態の悪化を示さなかった。
【0192】
○肝トリグリセリド
ADPIFペプチド群は、ビヒクル群と比べて肝トリグリセリド含有量の有意な減少を示した。
【0193】
【0194】
●シリウスレッド染色及び線維症面積
ビヒクル群からの肝切片は、肝小葉の末梢領域中の増加したコラーゲン沈着を示した。ADPIFペプチド群は、ビヒクル群と比べて線維症面積(シリウスレッド陽性面積)の有意な減少を示した。
【0195】
【0196】
結論
ADPIFペプチドによる処置は、ビヒクル群と比べて肝トリグリセリド含有量及び線維症面積の有意な減少を示した。ADPIFペプチドは、ビヒクル群と比べて線維症面積を有意に低減させ、このことは本試験において抗線維症効果を実証した。
【0197】
まとめると、ADPIFペプチドは、このNASHモデルにおいて抗線維症効果を示した。
【配列表】