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特許7362614癌治療のために免疫チェックポイントを調節する単一特異性および二重特異性タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】癌治療のために免疫チェックポイントを調節する単一特異性および二重特異性タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231010BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231010BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231010BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231010BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231010BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20231010BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231010BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231010BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C07K16/18
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020533119
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 US2018067868
(87)【国際公開番号】W WO2019133817
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】62/611,543
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517297049
【氏名又は名称】エーピー バイオサイエンスィズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】游忠哲
(72)【発明者】
【氏名】徐靜軒
(72)【発明者】
【氏名】黄柏霖
(72)【発明者】
【氏名】甘弘才
(72)【発明者】
【氏名】張渟宜
(72)【発明者】
【氏名】謝欣達
(72)【発明者】
【氏名】何正宏
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】天野 貴子
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527814(JP,A)
【文献】特表2013-538057(JP,A)
【文献】国際公開第03/106498(WO,A2)
【文献】特表2011-505836(JP,A)
【文献】特表2017-514461(JP,A)
【文献】特表2008-544755(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087547(WO,A1)
【文献】特表2015-519375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OX40(CD134)に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、
重鎖可変領域、および軽鎖可変領域がそれぞれ、
配列番号6、および配列番号5のアミノ酸1~108、
配列番号8、および配列番号7のアミノ酸1~108、
配列番号10のアミノ酸128~246、および配列番号10のアミノ酸1~112、ならびに
配列番号13のアミノ酸124~241、および配列番号13のアミノ酸1~108
からなる群より選択されるアミノ酸配列を、重鎖可変領域、および軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合性部分のアミノ酸配列が、配列番号10、11、12、および13からなる群より選択される単鎖可変断片(scFv)配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項3】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項4】
前記二重特異性抗体は、免疫チェックポイントタンパク質結合部位を含む、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項5】
前記免疫チェックポイントタンパク質結合部位は、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)結合部位、PD-1結合部位、上皮増殖因子受容体(EGFR)結合部位、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)結合部位、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)結合部位、またはリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)結合部位を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項6】
PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、
重鎖可変ドメイン、および軽鎖可変ドメインがそれぞれ、
配列番号2、および配列番号1のアミノ酸1~111、ならびに
配列番号4、および配列番号3のアミノ酸1~110
からなる群より選択されるアミノ酸配列を、重鎖可変ドメイン、および軽鎖可変ドメインを含む抗体またはその抗原結合性部分。
【請求項7】
少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む二重特異性抗体であって、前記ポリペプチド鎖は、
OX40結合部位であって、
重鎖可変領域、および軽鎖可変領域がそれぞれ、
配列番号6、および配列番号5のアミノ酸1~108、
配列番号8、および配列番号7のアミノ酸1~108、
配列番号10のアミノ酸128~246、および配列番号10のアミノ酸1~112、ならびに
配列番号13のアミノ酸124~241、および配列番号13のアミノ酸1~108
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域、および軽鎖可変領域
を含むOX40結合部位と、
PD-L1結合部位であって、
重鎖可変ドメイン、および軽鎖可変ドメインがそれぞれ、
配列番号2、および配列番号1のアミノ酸1~111、ならびに
配列番号4、および配列番号3のアミノ酸1~110
からなる群より選択されるアミノ酸配列を、重鎖可変ドメイン、および軽鎖可変ドメイン
を含む、PD-L1結合部位と、
を含む、二重特異性抗体。
【請求項8】
前記ポリペプチド鎖は、さらに、
Fcドメインと、
当該FcドメインのN末端に接続されたFab断片であって、前記PD-L1結合部位を含むFab断片と、
当該FcドメインのC末端に接続されたscFvであって、前記OX40結合部位を含むscFvと、
を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記ポリペプチド鎖は、さらに、前記Fcドメインと前記scFvとの間にリンカーを含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記二重特異性抗体が、一対のポリペプチド鎖を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記二重特異性抗体が、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY抗体である、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記二重特異性抗体が、IgG抗体である、請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記IgG抗体は、IgG1,IgG2,IgG3,またはIgG4抗体である、請求項12に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む二重特異性抗体であって、
前記ポリペプチド鎖は、
Fcドメインと、
当該FcドメインのN末端に接続されたFab断片であって、PD-L1結合
部位を含むFab断片と、
当該FcドメインのC末端に接続されたscFvであって、OX40結合部位
を含むscFvと、
を含み、
さらに、前記Fcドメインと前記scFvとの間にリンカーを含み、
前記PD-L1結合部位を含むFab断片の重鎖可変ドメイン、および軽鎖可
変ドメインがそれぞれ、
配列番号2、および配列番号1のアミノ酸1~111、ならびに
配列番号4、および配列番号3のアミノ酸1~110
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、
前記OX40結合部位を含むscFvが、配列番号18のアミノ酸455~707,配列番号19のアミノ酸455~708,配列番号20のアミノ酸455~701,配列番号21のアミノ酸455~706,配列番号22のアミノ酸455~706,配列番号23のアミノ酸455~706,配列番号24のアミノ酸455~706,配列番号25のアミノ酸455~706,配列番号26のアミノ酸455~706,配列番号27のアミノ酸455~706,配列番号28のアミノ酸455~706,および配列番号29のアミノ酸455~706からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、二重特異性抗体。
【請求項15】
治療薬と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性部分、あるいは請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、
を含む抗体-薬物コンジュゲートであって、当該治療薬は、リンカーによって、当該抗体または当該抗原結合性部分、あるいは当該二重特異性抗体に共有結合的にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性断片と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項6に記載の前記抗体または前記その抗原結合性部分と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性部分を有効量含み、癌を治療するためのものである、医薬組成物。
【請求項20】
前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項6に記載の抗体またはその抗原結合性部分を有効量含み、癌を治療するためのものである、医薬組成物。
【請求項22】
前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を有効量含み、癌を治療するためのものである、医薬組成物。
【請求項24】
前記癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合性部分をコードする核酸分子。
【請求項26】
請求項6に記載の抗体またはその抗原結合性部分をコードする核酸分子。
【請求項27】
請求項7から14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体をコードする核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野)
本発明は、抗体に関する。より詳細には、本発明は、癌治療のための抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要なタイプは、T(胸腺由来)およびB(骨髄由来)である。これらの細胞は、リンパ球発達経路に運命付けられた骨髄および胎児肝臓の造血幹細胞に由来する。これらの幹細胞の後代は、Bリンパ球またはTリンパ球に成熟するための分岐経路に従う。ヒトBリンパ球発達は、完全に骨髄内において生じる。その一方で、T細胞は、骨髄を去って血流によって胸腺まで移動する未成熟前駆体から発達し、そこで、それらは、増殖し、成熟Tリンパ球へと分化する。
【0003】
(T細胞)
T細胞は、最も大量で(血液リンパ球の約75%)、強力な免疫キラー細胞である。抗腫瘍性免疫応答におけるエフェクターT細胞の役割は、インビトロ研究および、腫瘍のいくつかのタイプにおけるCD8+T細胞の高浸潤が好ましい臨床予後と相関関係を有するという観察によって強く支持される(Fridman et al.,2012)。エフェクターナイーブT細胞の活性化は、少なくとも3つの相補シグナル:(i)共受容体(CD4またはCD8)の支援によるTCR-CD3/Ag-MHC相互作用;(ii)CD80またはCD86などの共刺激性分子のCD28、CD40/CD40Lへの結合;および(iii)サイトカインなどのアクセサリ分子を必要とする。
【0004】
T細胞への共刺激または2つの異なるシグナルの提供は、抗原提示細胞(APC)による静止Tリンパ球のリンパ球活性化の、広く受け入れられたモデルである(Lafferty and Cunningham,1975)。このモデルは、さらに、自己と非自己との区別および免疫寛容性を提供する(Bretscher and Cohn,1970;Bretscher,1999;Jenkins and Schwartz,1987)。一次シグナル、または抗原特異的シグナルは、主要組織適合複合体(MHC)との関連において提示される外来抗原ペプチドの認識に従ってT細胞受容体(TCR)を介して変換される。二次または共刺激シグナルが、抗原提示細胞(APC)上に発現した共刺激性分子によってT細胞に届けられ、T細胞に、クローン増殖、サイトカイン分泌、およびエフェクター機能を促進するように仕向ける(Lenschow et al.,1996)。共刺激の不在下において、T細胞は、抗原刺激に対して抵抗性となり得、有効な免疫応答を開始せず、さらに、結果として、外来抗原に対して疲弊または寛容性を生じ得る。
【0005】
(免疫チェックポイントタンパク質:PD-L1およびOX40)
免疫チェックポイントは、通常、付随的な組織損傷を最小限に抑えるため、自己寛容性を維持し、末梢組織における生理学的応答の持続期間および振幅を調節するために、免疫系、具体的にはT細胞媒介性免疫を張り巡らせるリガンド-受容体相互作用によって開始される、阻害性および刺激性経路のグループを意味する(Pardoll,2012)。腫瘍細胞は、免疫抵抗性の主要メカニズムとして、ある特定のチェックポイント経路を選出する。例えば、プログラム細胞死タンパク質1リガンドのPD-L1は、一般的に、ヒト癌の腫瘍細胞表面において上方制御される。PD-L1と、腫瘍浸透リンパ球(TIL)、特にT細胞、において発現される、その受容体であるPD-1との相互作用は、局所的T細胞媒介性応答を阻害することにより、免疫監視から逃れる(Liang et al.,2006;Sznol and Chen,2013)。したがって、癌細胞での免疫抑制性シグナルの阻害、またはT細胞の直接的アゴニスト刺激は、強い持続性の抗腫瘍免疫応答を生じるおよび/または誘起する。最近の臨床研究は、抗体を介した、または可溶性リガンドまたは受容体によって調節される、免疫チェックポイントタンパク質の遮断が、治療的抗腫瘍免疫の達成に対する最も有望なアプローチであることを強く示唆した(Topalian et al.,2014)。現在、抗PD-1および抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4)抗体が、黒色腫などの疾患を治療するために、FDAによって承認されている。
【0006】
別の共刺激性分子は、OX40受容体(CD134)であり、これは、TNFRスーパーファミリーのメンバであり、膜結合性で、主に、活性化されたCD4+T細胞において発現される(Paterson et al.,1987)。OX40受容体(本明細書の以下において、「OX40」)によるシグナル伝達は、エフェクターT細胞に対して共刺激性であり、T細胞の増殖を引き起こす(Watts,2005;Weinberg et al.,1994)。OX40の研究は、その主な役割が、一次免疫応答において蓄積するエフェクターT細胞の数を決定すること、およびその結果、続いて増殖し生き残る記憶T細胞の数を支配することであることを示唆している(Croft,2003)。いくつかのインビトロ研究は、OX40が、共刺激シグナルを提供し、結果として、増強されたT細胞増殖およびサイトカイン産生を生じることを示していた。
【0007】
(二重特異性/二官能性抗体)
エフェクター免疫細胞に腫瘍細胞を効率的に再標的化させるために二重特異性抗体を使用するアイデアは、1980年代に現れた(Karpovsky et al.,1984;Perez et al.,1985;Staerz et al.,1985)。二重特異性抗体は、一般的に、Fc断片、IgG様分子、および小さい組換え二重特異性形式(それらの大部分は、単鎖可変断片(scFv)に由来する)の有無に基づいて、異なる薬物動力学特性を有する2つの主要な群に分類される。抗体断片は、それらのコンパクトなサイズにより、通常、IgG様分子よりも効率的に腫瘍に浸透するが、この利点は、それらの全体的腫瘍取り込みおよび滞留時間を制限する短い血清半減期(数時間)によって緩和される(Goldenberg et al.,2007)。対照的に、新生児Fc受容体に結合するFc断片の存在は、IgG様形式に対して長い血清半減期(>10日)を提供し、これは、腫瘍取り込みおよび滞留に有利に働くが、腫瘍浸透を制限する。
【0008】
最近の研究は、癌細胞を破壊するために患者自身の免疫系を利用する癌治療の類である免疫療法の治療有効性を強調している。腫瘍内において、まとめて「チェックポイント阻害因子」として知られるネガティブ調節分子のファミリーの存在は、抗腫瘍免疫を抑制するT細胞の機能を阻害することができる。CTLA-4およびPD-1などのチェックポイント阻害因子は、T細胞増殖およびサイトカイン産生を減少させる。アンタゴニストモノクローナル抗体(mAb)によるCTLA-4およびPD-1の標的化された遮断は、抗腫瘍免疫を高めるために、T細胞上に「ブレーキ」を放出する。最適な「キラー」CD8+T細胞応答を生じさせるには、T細胞受容体活性化と共刺激も必要とし、それらは、OX40(CD134)および4-1BB(CD137)を含む、腫瘍壊死因子受容体のファミリーメンバのライゲーションによって提供することができる。OX40は、様々な腫瘍に対する高められた抗腫瘍免疫を生じるT細胞分化およびサイトカイン機能を増加させる賦活性(アゴニスト)抗OX40mAbによる治療として、特に関心が高い。単剤として使用される場合、これらの薬物は、転移性疾患を患う患者において、強力な臨床および免疫性応答を引き起こすことができる(Linch et al.,2015)。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、前立腺癌、肺癌、NSCLC、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、RCC、または卵巣癌などの癌を患う患者の治療を目的とする免疫調節する二重特異性抗体を調査するために設定された。
【0010】
本開示は、OX40(CD134)に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、配列番号6、配列番号8、配列番号10のアミノ酸128246、および配列番号13のアミノ酸124241からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号5のアミノ酸1~108、配列番号7のアミノ酸1~108、配列番号10のアミノ酸1~112、および配列番号13のアミノ酸1~108からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む抗体またはその抗原結合性部分を提供する。
【0011】
一実施形態において、当該抗体またはその抗原結合性部分は、配列番号10、11、12、および13からなる群より選択される単鎖可変断片(scFv)配列である。
【0012】
一実施形態において、当該抗体またはその抗原結合性部分は、二重特異性抗体である。
【0013】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、免疫チェックポイントタンパク質結合部位を含む。
【0014】
一実施形態において、当該免疫チェックポイントタンパク質結合部位は、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)結合部位、PD-1結合部位、上皮増殖因子受容体(EGFR)結合部位、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)結合部位、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)結合部位、またはリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)結合部位を含む。
【0015】
本開示は、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号1のアミノ酸1~111および配列番号3のアミノ酸1~110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む抗体またはその抗原結合性部分も提供する。
【0016】
本開示は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む二重特異性抗体も提供し、この場合、当該ポリペプチド鎖は、OX40結合部位およびPD-L1結合部位を含む。当該OX40結合部位は、配列番号6、配列番号8、配列番号10のアミノ酸128246、および配列番号13のアミノ酸124241からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号5のアミノ酸1~108、配列番号7のアミノ酸1~108、配列番号10のアミノ酸1~112、および配列番号13のアミノ酸1~108からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。当該PD-L1結合部位は、配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、配列番号1のアミノ酸1~111および配列番号3のアミノ酸1~110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインとを含む。
【0017】
一実施形態において、当該ポリペプチド鎖は、さらに、Fcドメイン、Fab断片、およびscFvを含む。当該Fab断片は、FcドメインのN末端に接続されており、ならびに当該Fab断片は、PD-L1結合部位を含む。当該scFvは、当該FcドメインのC末端に接続されており、ならびに当該scFvは、OX40結合部位を含む。
【0018】
一実施形態において、当該ペプチド鎖は、さらに、FcドメインとscFvとの間にリンカーを含む。
【0019】
一実施形態において、当該scFvは、配列番号18のアミノ酸455~707、配列番号19のアミノ酸455~708、配列番号20のアミノ酸455~701、配列番号21のアミノ酸455~706、配列番号22のアミノ酸455~706、配列番号23のアミノ酸455~706、配列番号24のアミノ酸455~706、配列番号25のアミノ酸455~706、配列番号26のアミノ酸455~706、配列番号27のアミノ酸455~706、配列番号28のアミノ酸455~706、および配列番号29のアミノ酸455~706からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、一対のポリペプチド鎖を含む。
【0021】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY抗体である。
【0022】
一実施形態において、当該二重特異性抗体は、IgG抗体である。
【0023】
一実施形態において、当該IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。
【0024】
本開示は、治療薬と、PD-L1および/またはOX40に結合する抗体または抗原結合性部分とを含む抗体-薬物コンジュゲートであって、当該治療薬は、リンカーによって、当該抗体または当該抗原結合性部分に共有結合的にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲートも提供する。
【0025】
一実施形態において、当該抗体または抗原結合性部分は、上記において言及した抗体または抗原結合性部分から選択される。
【0026】
本開示は、上記において言及した抗体、その抗原結合性部分、または二重特異性抗体と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。
【0027】
本開示は、上記において言及した抗体、その抗原結合性部分、または二重特異性抗体の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、癌を治療する方法も提供する。
【0028】
一実施形態において、当該癌は、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、リンパ腫、乳癌、頭頚部癌、腎細胞腫(RCC)、および卵巣癌からなる群より選択される。
【0029】
本開示は、上記において言及した抗体、その抗原結合性断片、または二重特異性抗体、をコードする核酸分子も提供する。
【0030】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、一例であり、請求項に係る本発明のさらなる説明を提供することが意図されることは理解されるべきである。
【0031】
本発明は、以下の添付の図面に対する言及と共に、実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、T細胞媒介性免疫を調節する免疫チェックポイントを示す図である。当該チェックポイントに対してアゴニスト的またはアンタゴニスト的である抗体(例えば、抗ICOS、抗CD28、抗OX40、および抗CD27、または抗PD-1、抗CTLA4、抗LAG3、抗BTLAなど)は、用途に応じて二官能性融合タンパク質を構築するために使用することができた。
図2A図2Aは、PD-L1発現HEK293細胞に対する直接的ELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図2B図2Bは、PD-L1発現HEK293細胞に対する直接的ELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図3A図3Aは、OX40発現HEK293細胞を用いた細胞ベースELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図3B図3Bは、OX40発現HEK293細胞を用いた細胞ベースELISAによるファージクローンのスクリーニングを示す図である。
図4図4は、完全性および純度を明らかにするための、非還元試薬を用いたSDS-PAGEによる、PD-L1に対して特異的な精製した抗体リードを示す図である。
図5図5は、完全性および純度を明らかにするための、非還元試薬または還元試薬を用いたSDS-PAGEによる、OX40に対して特異的な精製した抗体リードを示す図である。
図6図6は、精製した抗免疫チェックポイントタンパク質およびPD-L1に対する抗PD-L1抗体リードの、直接的リガンド結合活性の実施例を示す図である。最初に、リガンドで予めコーティングされたウェルを、示されるような様々な濃度の抗体リードと共にインキュベートした。次いで、結合したタンパク質を、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG Fab特異的抗体で検出し、OD450の読み取り値をプロットした。
図7図7は、精製した抗免疫チェックポイントタンパク質およびOX40に対する抗OX40抗体リードの、直接的リガンド結合活性の実施例を示す図である。最初に、リガンドで予めコーティングされたウェルを、示されるような様々な濃度の抗体リードと共にインキュベートした。次いで、結合したタンパク質を、HRP標識ヤギ抗ヒトIgG Fab特異的抗体で検出し、OD450の読み取り値をプロットした。
図8図8は、PD-L1発現293細胞を使用したフロー解析を示す図である。最初に、PD-L1発現HEK293細胞を、精製した抗体リードと共にインキュベートし、結合した当該抗体を、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)を用いて検出し、その後、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析を行った。
図9図9は、OX40発現293細胞を使用したフロー解析を示す図である。最初に、OX40発現HEK293細胞を、精製した抗OX40抗体リードと共にインキュベートし、結合した当該抗体を、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)を用いて検出し、続いて、FACS分析を行った。NS:染色せず
図10図10は、精製した抗PD-L1抗体によるPD-1/PD-L1相互作用の遮断を示す図である。PD-1/PD-L1相互作用の阻害活性を評価するために、示された精製した抗体をビオチン化PD-L1-Fcおよび組換えヒトPD-1/His(hPD-1/His)と共に適用した。結合している組換えPD-L1-FcおよびhPD-1/Hisをストレプトアビジン-Alexa-488によって検出し、ELISAによって分析した。
図11A図11Aは、抗体処理の3日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、1μg/mLまたは10μg/mLの抗PD-L1抗体リードが、T細胞増殖を刺激し、IL-2および/またはIFN-γ産生を誘起することを示す図である。
図11B図11Bは、抗体処理の5日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、1μg/mLまたは10μg/mLの抗PD-L1抗体リードが、T細胞増殖を刺激し、IL-2および/またはIFN-γ産生を誘起することを示す図である。
図12A図12Aは、抗OX40抗体リードおよび基準抗体が用量応答的にCD3+T細胞活性化を高める能力を示す図である。
図12B図12Bは、プレートに結合させた抗CD3によるヒトT細胞の3日間の刺激の後の細胞培養培地中に存在するヒトIL-2およびIFN-γの濃度、ならびに抗OX40抗体リードのいくつかの濃度を示す図である。
図13A図13Aは、プレートに結合させた抗CD3によるヒトT細胞の3日間の刺激の後の細胞培養培地中に存在するヒトIL-2の濃度、ならびにOX40特異的抗体リードのいくつかの濃度を示す図である。
図13B図13Bは、プレート結合抗CD3によるヒトT細胞の3日間の刺激の後の細胞培養培地中に存在するIFN-γの濃度、ならびにOX40特異的抗体リードのいくつかの濃度を示す図である。
図14図14は、OX40特異的scFvドメインと融合した抗体重鎖Fcの構造を示す図である。
図15図15は、抗免疫チェックポイント抗体-ヒトOX40融合タンパク質のPAGE-ゲル分析の例を示す図である。精製した融合タンパク質である抗PD-L1-OX40 scFv融合タンパク質が、分子量約220kDa(非還元)を有することが示されており、両方の抗体融合物において、重鎖融合物は、約85kDaを有し、軽鎖は約25kDa(還元)である。
図16A図16Aは、二重特異性抗体が、単一、混合、または抗PD-L1-OX40 scFv二重特異性抗体処理の3日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、IL-2およびIFN-γ産生に対するT細胞活性化を相乗作用的に刺激することを示す図である。
図16B図16Bは、二重特異性抗体が、単一、混合、または抗PD-L1-OX40 scFv二重特異性抗体処理の5日後の混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいて、IL-2およびIFN-γ産生に対するT細胞活性化を相乗作用的に刺激することを示す図である。
図17A図17Aは、OX40 scFvにおける異なるリンカーを有する二重特異性抗体の抗PD-L1-OX40 Abの凝集および純度測定を示す図である。
図17B図17Bは、OX40 scFvにおける異なるリンカーを有する二重特異性抗体の抗PD-L1-OX40 Ab-V1の凝集および純度測定を示す図である。
図17C図17Cは、OX40 scFvにおける異なるリンカーを有する二重特異性抗体の抗PD-L1-OX40 Ab-V2の凝集および純度測定を示す図である。
図17D図17Dは、OX40 scFvにおける異なるリンカーを有する二重特異性抗体の抗抗PD-L1-OX40 Ab-V3の凝集および純度測定を示す図である。
図17E図17Eは、OX40 scFvにおける異なるリンカーを有する二重特異性抗体の抗PD-L1-OX40 Ab-V4の凝集および純度測定を示す図である。
図18図18は、抗PD-L1-OX40 Ab-V~V12(配列番号30~38)のOX40クローンB17scFvにおける配列バリアントを示す図である。
図19図19は、抗免疫チェックポイント抗体-ヒトOX40融合タンパク質のPAGE-ゲル分析の例を示す図である。精製した融合タンパク質である抗PD-L1-OX40 Ab-V5融合タンパク質が、分子量約220kDa(非還元)を有することが示されており、両方の抗体融合物において、重鎖融合物は、約80kDaを有し、軽鎖は約30kDa(還元)である。
図20図20は、二重特異性抗体バリアントの結合活性評価のためのELISA法を説明するフローチャートを示す図である。
図21図21は、二重特異性抗体バリアントのヒトPD-L1結合活性およびそのEC50を示す図である。
図22図22は、二重特異性抗体バリアントのヒトOX40結合活性およびそのEC50を示す図である。
図23図23は、二重特異性抗体バリアントである抗PD-L1-OX40 Ab-V5のエクスビボ血清安定性を示す図である。
図24A図24Aは、単一、混合、または抗PD-L1-OX40 Ab-V5二重特異性抗体処理によってT細胞を調節した3日後のIL-2産生を示す図である。
図24B図24Bは、単一、混合、または抗PD-L1-OX40 Ab-V5二重特異性抗体処理によってT細胞を調節した5日後のIFN-γ産生を示す図である。
図25図25は、Fox Chase SCID(登録商標)BeigeマウスにおけるPC-3腫瘍の増殖に対する抗PD-L1-OX40 Ab-V5二重特異性抗体処理およびモノクローナル抗体処理の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(詳細な説明)
参照は、以下において、本発明の本実施形態に対して詳細になされ、その例は、添付の図面に示される。同じまたは同様の部分を参照するために、図面および説明において、可能な限り、同じ参照番号が使用される。
【0034】
本発明は、抗免疫チェックポイントタンパク質抗体のFcドメインのC末端に融合された単離された機能性アゴニストOX40 scFvを用いた二官能性タンパク質の発現、精製、および特徴付けについて説明する。これらのタンパク質は、T細胞関与免疫を調節するために阻害性または刺激性シグナルを伝達するその対応するチェックポイント標的と相互作用する。本発明におけるFc融合タンパク質の成分は、全てヒト起源であり、したがって、非免疫原性であることが期待され、ならびにヒトの治療に使用することができる。
【0035】
二重特異性抗体(BsAb)などの二重特異性分子は、単一の治療薬によって、同じ分子標的または異なる標的上の複数のエピトープを同時に標的化する手段を提供する。癌治療として、それらは、2種のmAbの混合物とは対照的に、新規のまたはより強力な活性を付与し、商品コストを下げ、新規の治療計画の開発を促進する、可能性を有する(Chames and Baty,2009;Hollander,2009;Thakur and Lum,2010)。最近、ヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)およびCD3を標的とする三官能性二重特異性抗体であるカツマキソマブが、上皮癌の腹膜癌症を患う患者において明確な臨床的有益性を示し(Heiss et al.,2010)、CD19およびCD3に対する二重特異性を有する二重特性T細胞誘導(bispecific T-cell engaging:BiTE)抗体も、CD19を発現する血液悪性腫瘍を患う患者において、臨床的活性を高めることを実証した(Bargou et al.,2008)。癌治療としての二重特異性分子の開発に対する強い関心にもかかわらず、安定で活性な二重特異性分子の製造における技術的課題は、過去において、ほとんどの二重特異性形式の臨床評価を妨げてきた。IgG様二重特異性抗体を含む多くの遺伝子改変抗体形式は、安定性または溶解性を妥協してきた(Bargou et al.,2008;Demarest and Glaser,2008;Lu et al.,2005)。その上、二重特異性分子の製造物品質およびインビボ安定性を増加させるために、ペグ化、ヒト血清アルブミンとのコンジュゲート化、およびFc遺伝子改変を含む、いくつかの戦略が取られてきた(Muller et al.,2007;Ridgway et al.,1996)。上記において説明される一般的な形式の二重特異性単鎖抗体は、4つのVドメインをコードするヌクレオチド配列、2つのリンカー、および1つのスペーサーを、単一のプロモータの制御下において、好適な宿主発現生物に組み込むことができるという利点を有する。このことは、作製の際の実験者による制御の度合いと同様に、これらの構築物を設計する際のフレキシビリティーを増加させる。さらに、IgGのFcは、結合能力を除く全ての抗体の機能を含むため、新規の治療法を設計するための非常に魅力的な別の足場である。Fc遺伝子改変は、当該二重特異性抗体の有効性を向上させるために重要である。したがって、本発明では、免疫療法における免疫細胞または標的細胞上の2つの非依存性標的に対して、IgGベースの立体配座を使用している。
【0036】
免疫チェックポイントタンパク質の標的化は、抗腫瘍免疫を活性化するための、将来有望なアプローチである。抗チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3など)は、現在、臨床的に評価されている(図1)。免疫チェックポイントタンパク質の遮断剤による予備的データは、持続性の臨床反応を生じさせる可能性を有する抗腫瘍免疫を増加させることができることが分かっている。しかしながら、多くの悪性腫瘍におけるこれらの薬剤の顕著な臨床有効性にもかかわらず、それらが、多くの患者にとって十分に有効ではないことが明らかになった。多数の追加の免疫調節経路ならび、腫瘍内微小環境において骨髄細胞または間質細胞によって発現または分泌される阻害因子は、免疫チェックポイント遮断との相乗作用のための潜在的標的である。したがって、抗癌療法または二重特異性抗体療法を組み合わせることは、癌を患う患者に対して完全な寛解および回復を達成するために不可欠であった。
【0037】
本発明は、異なる免疫チェックポイントタンパク質特異的scFvタンパク質と融合した抗免疫チェックポイントタンパク質抗体Fcの構築、発現、およびキャラクタリゼーションについて説明する。例えば、融合の相手方が、免疫系増強剤(例えば、抗EGFR、抗HER2、または抗CTLA-4抗体など)である場合、融合構築物においてC末端に位置されたOX40 scFvは、OX40活性化アプローチを超える融合タンパク質の力の拡張を可能にする。
【0038】
(OmniMabライブラリからの抗体生成)
PD-L1またはOX40に対する治療抗体の生成のために、OmniMabファージミドライブラリによる選択を実施した。当該ファージミドライブラリは、百を超える健康なドナーB細胞のコレクションからAP Biosciences Inc.(APBio Inc.)によって生成される。パンニングの第一ラウンドのためのファージを、Hyperphage(Μ13Κ07ΔρΙΙΙ、Progen,ハイデルベルク,ドイツ)によって調製した。PD-L1またはOX40特異的バインダー選択およびOmniMabライブラリからの単離に対して、PD-L1またはOX40に対する固相パンニングおよび細胞パンニングを適用した。固相パンニングは、第一ラウンド選択において組換えヒトPD-L1-FcまたはOX40-Fc(APBio Inc.)を使用して実施し、次いで、第二および第三ラウンドの濃縮に対して、PD-L1またはOX40を発現したHEK293細胞を使用した。3つのラウンド選択の後、当該特異的PD-L1またはOX40バインダーをスクリーニングし、対応する組換えタンパク質による直接的ELISAまたは細胞ベースELISAによって単離した(図2A、2B、3A、および3B)。予めコーティングしたPD-L1-Fc組換えタンパク質またはOX40発現293細胞を、レスキューされたファージを含有する上清を用いて1時間ブロットし、0.1%のTween-20を含有するPBSで3回洗浄した。結合したファージを、HRP標識抗M13抗体(Roche)によって検出し、シグナル発生のために、TMB基質を使用した。OD450の読み取り値を記録した。ポジティブバインダーを単離し、重鎖および軽鎖の配列および多様性を確認するために配列決定を行った。PD-L1またはOX40に対して特異的な重鎖および軽鎖の可変領域は、配列番号1から配列番号8で記述され:この場合、配列番号1は、PD-L1クローン6の軽鎖であり、配列番号2は、PD-L1クローン6の重鎖の可変領域であり、配列番号3は、PD-L1クローン32の軽鎖であり、配列番号4は、PD-L1クローン32の重鎖の可変領域であり、配列番号5は、OX40クローンB17の軽鎖であり、配列番号6は、OX40クローンB17の重鎖の可変領域であり、配列番号7は、OX40クローンB19の軽鎖であり、配列番号8は、OX40クローンB19の重鎖の可変領域である。図2A、2B、3A、および3Bに示されるように、いくつかのクローンを単離し、それらは、ネガティブコントロールと比較して、対応する抗原に対して特異的に認識されることが分かった。
【0039】
(IgG形式としての選択されたPD-L1またはOX40特異的バインダーのサブクローニングおよび発現/精製)
T細胞活性化における機能性を有する特異的バインダーの迅速なスクリーニングを容易にするために、ELISAによるPD-L1またはOX40に対するポジティブバインダーの重鎖および軽鎖を増幅し、消化し、IgG4定常領域(配列番号9)を保持するAPBio専用IgG発現ベクター中へサブクローニングした。配列検証後、プラスミドを調製し、抗体発現のために、293フェクチントランスフェクション試薬(Invitrogen)によってHEK293細胞中へとトランスフェクトした。4日間の培養後、無血清培地中に分泌された抗体を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。次いで、精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析した。透析したタンパク質の最終濃度を、NanoDrop2000分光光度計によって特定し、図4および5に示されるように、還元試薬を用いてまたは用いずに、SDS-PAGEによって純度および完全性を特定した。精製された様々な抗体リード、PD-L1またはOX40特異的のどちらか、の完全性は、基準抗体、PD-L1に対してはMPDL3280AまたはOX40に対してはGSK3174998、と同様に、HEK293細胞において正常である。
【0040】
一実施形態において、本開示は、OX40(CD134)に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体またはその抗原結合性部分を提供する。当該重鎖可変領域は、配列番号6、配列番号8、配列番号10のアミノ酸128246、および配列番号13のアミノ酸124241からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該重鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。当該軽鎖可変領域は、配列番号5のアミノ酸1~108、配列番号7のアミノ酸1~108、配列番号10のアミノ酸1~112、および配列番号13のアミノ酸1~108からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該軽鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。
【0041】
一実施形態において、本開示は、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合性部分であって、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体またはその抗原結合性部分を提供する。当該重鎖可変ドメインは、配列番号2および配列番号4からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該重鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。当該軽鎖可変ドメインは、配列番号1のアミノ酸1~111および配列番号3のアミノ酸1~110からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、当該軽鎖可変領域は、上記において言及したアミノ酸配列に対して少なくとも約85%、90%、または95%の配列相同性のアミノ酸配列を含む。
【0042】
(直接的ELISAによるPD-L1、OX40特異的IgGリードの結合活性の特定)
直接的コーティングされた設定において、ヒトPD-L1-FcまたはOX40-Fcに対するELISA結合キャラクタリゼーションのために、PD-L1またはOX40に対する精製された抗体リード(抗PD-L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図6および7は、それぞれ、抗PD-L1および抗OX40抗体に対するELISA結合結果を示した。PD-L1特異的抗体の場合、ほとんどのリードは、基準抗体(Ref Ab,MPDL3280A,Roche)に対して、同様のまたはより良い結合活性を示した。
【0043】
精製されたヒトPD-L1またはOX40IgG1Fcキメラ(PD-L1-FcまたはOX40-Fc、APBio)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)において透析し、1mg/mLに調節して、次いで、PBSによって1μg/mLの最終濃度へと希釈した。Nunc-Immuno Maxisorp 96ウェルプレートを、ウェルあたり0.1mLにおいて組換えPD-L1-FcまたはOX40-Fcキメラでコーティングし、非特異的結合コントロールに対しては空のウェルのままにして、4℃で一晩インキュベートした。当該PD-L1-FcまたはOX40-Fcキメラ溶液を除去し、当該プレートを0.4mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。0.4mLのブロッキング緩衝液(PBS中における5%の低脂肪ミルク粉末)を全てのウェルに加え、撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。当該ブロッキング緩衝液を除去し、プレートを0.4mLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。PBSにおいて当該PD-L1またはOX40試験抗体の段階希釈を調製し、0.1mLの希釈されたAbを各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除去し、当該プレートを、ウェルあたり0.4mLの洗浄緩衝液で3回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGであるF(ab’)特異的F(ab’)抗体(Jackson Immunoresearch #109-036-097)を、PBSで1:2000に希釈し、各ウェルに0.1mLを加えた。当該プレートを室温で1時間インキュベートし、ウェルあたり0.4mLの洗浄緩衝液で洗浄した。0.1mLのTMB試薬(Invitrogen)を加え、室温で1~5分間インキュベートした。0.05mLの1NのHClを加えることによって反応を止め、Bio-Tek Spectraにおいて、450nmで吸光度を読み取った。PD-L1に対する抗PD-L1抗体リードの計算されたEC50は、ほとんどのリードが、直接的ELISAにより、MPDL3280A(Ref Ab)と同様に、良好な結合活性を有することを示した(図6)。対照的に、ほとんどの抗OX40抗体リードは、基準抗体(Ref Ab、GSK3174998)と比較して、著しく低い結合活性を示した(図7)。
【0044】
(FACSによるPD-L1およびOX40特異的IgGリードに対する結合活性の特定)
PD-L1またはOX40を発現したHEK293細胞を用いて結合活性を特定して結合活性を比較するために、フローサイトメトリに対しても、精製された抗体リード(抗PD-L1抗体リードまたは抗OX40抗体リード)を適用した。図8および9は、安定発現されたPD-L1またはOX40のHEK293細胞を用いたFACSによって示されるように、対応する抗体リードの結合活性を示している。
【0045】
PD-L1結合活性を調べるために抗PD-L1抗体リードで染色したPD-L1安定発現293細胞のFACS分析のために、安定発現細胞を、1μg/mLの精製した抗PD-L1抗体リード、基準抗体(Ref Ab MPDL3280A)と共に、またはネガティブコントロールとしてのアイソタイプ抗体と共に、氷上で1時間インキュベートした。当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、次いで、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Invitrogen Inc.)と共に、氷上でさらに1時間インキュベートした。染色後、当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、1×PBS/2%FBSに再懸濁させ、その後、FACS Calibur(BD Biosciences,Inc.)およびFlowJo(TreeStar,LLC)によって分析した。同じシナリオにおいて、図9において安定発現したOX40のHEK293細胞に対する抗OX40抗体リードの結合活性も、同じ戦略で実行し、上記において説明したように分析した。図8に示されるように、ほとんどの抗PD-L1抗体リードは、基準抗体と同様に、良好な結合活性を有する。このことは、OmniMabライブラリから選択されたファージクローンが、実際に、当該細胞におけるネガティブPD-L1を認識することを示した。
【0046】
この現象は、図9に示されるように、抗OX40抗体リードに対しても観察される。OX40結合活性を調べるために、精製された抗OX40抗体リードで染色したOX40安定発現293細胞クローン2D5のFACS分析のために、安定発現細胞を、コントロール抗体として2μg/mLの抗OX40基準Ab(OX40 ref.)または抗CD137基準Ab(CD137 ref.)と共に、氷上で1時間インキュベートした。当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、次いで、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Invitrogen Inc.)と共に、氷上でさらに1時間インキュベートした。染色後、当該細胞を1×PBSで3回洗浄し、1×PBS/2%FBSに再懸濁させ、その後、FACS Calibur(BD Biosciences、Inc.)およびFlowJo(TreeStar、LLC)によって分析した。
【0047】
(リガンド競合結合(ELISAアッセイ))
抗体リードは、PD-1へのPD-L1の結合を遮断する能力について本発明の抗PD-L1抗体リードを評価するために使用される結合選択性および親和性アッセイを示した。
【0048】
組換えヒトPD-1/His(hPD-1/His)へのヒトPD-L1-Fcキメラ(PD-L1-Fc)の結合を遮断する能力について、ELISAによって抗体を試験した。精製された組換えhPD-1/His(APBio)を、PBS中における1mg/mlへと透析し、次いで、ビオチン(Abcam)とコンジュゲートさせた。Nunc Maxisorp 96ウェルプレートを、ウェルあたりPBS中における250ngのhPD-1/Hisで一晩かけてコーティングした。当該hPD-1/His溶液を除去し、当該プレートを0.4mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。0.4mLブロッキング緩衝液(PBS中における5%の低脂肪ミルク粉末)を全てのウェルに加え、撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。ブロッキングステップの際、当該抗体ストックを、2倍の段階希釈によって、PBS中における200nMから0nMの範囲で希釈した。精製した組換えビオチン化PD-L1-Fcキメラを、PBS中における4μg/mLに希釈した。PD-1/Hisでコーティングしたプレートを、0.2mLの洗浄緩衝液(PBS中における0.1%のTween-20)で3回洗浄した。60μLの抗体希釈物(抗PD-L1抗体リードまたはRef Ab MPDL3280A)を60μLのビオチン化PD-L1-Fcキメラと一緒に加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを、前に説明したように洗浄した。ストレプトアビジン-HRPを、PBS中において1:2000に希釈し、結果として得られる溶液の100μLを、洗浄したプレートのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを、前に説明したように洗浄し、100μLのTMB基質溶液を各ウェルに加え、10分間インキュベートした。50μLの1NのHClによって反応を止め、Bio-Tek読み取り機を使用して450nmの吸光度を読み取り、図10に示した。部分抗体リードは、競合ELISAによって、PD-PD-L1の間の相互作用を阻害することが示された。ほとんどの抗体リードは、基準抗体(Ref Ab MPDL3280A)と比較した場合、同様のブロッキング活性を示した。
【0049】
(抗PD-L1抗体に対するPD-1:PD-L1リガンド相互作用の阻害によるT細胞活性化の刺激増強)
当該PD-1シグナル伝達経路は、中程度のTCR/CD28共刺激シグナルを阻害し、その場合、最初に、T細胞増殖を減少することなく、サイトカイン産生が減少する。当該TCR/CD28共刺激シグナルが弱まると、当該PD-1経路が支配的となり、サイトカイン産生の著しい減少は、増殖の減少を伴う。したがって、本発明のヒト抗体のPD-L1との相互作用の阻害を介した当該PD-1の阻害がT細胞活性化を高めることを検証するために、混合リンパ球反応(MLR)を実施する。
【0050】
ヒト全血液由来の単球を、RosetteSep(商標)Human Monocyte Enrichment Cocktail(Cat.No.15068)によって濃縮し、10%のFBS、100ng/mL(1000U/mL)のGM-CSF、100ng/mL(500U/mL)を伴う分化培地RPMI 1640において6日間培養した。分化を検証するために、単球由来の当該分化樹状細胞(DC)を、DC-SIGN-PE、FITC Abとコンジュゲートした抗CD14、PE Abとコンジュゲートした抗CD83、またはFITC Abとコンジュゲートした抗CD80によって点検し、MLRにおいてAPCとして使用した。
【0051】
ヒト全血由来の同種異系CD4+T細胞を、RosetteSep(商標)Human CD4+ T Cell Enrichment Cocktail(Cat.NO. 15062)によって単離した。純度が95%超であることを確実にするために、CD4+T細胞の純度を抗CD4コンジュゲート化APC Abによって確認し、T細胞増殖アッセイのために、1uMのCFSE(CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット、Life technologies、Cat.NO. C34554)によって標識した。当該抗体リードが、PD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断することによってT細胞活性化を回復できるかどうかを見るため、3日間および5日間において、示されるような異なる抗体リードを伴う未成熟DCと共に共培養するために、標識したCD4+T細胞を使用した。3日間および5日間のインキュベート後、ELISAによるIL-2およびIFN-γ定量化など、サイトカインのために上清を収集した。未成熟樹状細胞と同種異系T細胞とによる培養物への抗PD-L1抗体リード(クローン6、32、28、51、64、27、および37)の添加は、結果として、アイソタイプIgG(イソ#1、#2)で処理された培養物と比較して、T細胞増殖およびサイトカイン産生における増加を生じることが予想され、図11Aおよび11Bに示した。当該IL-2およびIFN-γ産生は、特に抗PD-L1抗体クローン6の場合、抗体処理の3日(図11A)または5日(図11B)後において、アイソタイプの抗体処理と比較して、MLRにおいて著しく増加する。サイトカインの増分は、抗体処理の5日後においても、依然として明らかであり、基準抗体(ref)であるMPDL3280Aと同様である。このことは、当該抗PD-L1抗体クローン6が、二重特異性抗体複合物のための潜在的リードの1つであることを示した。
【0052】
(抗OX40抗体のアゴニスト活性アッセイ)
T細胞増殖およびサイトカイン産生のOX40共刺激を活性化するために、精製された抗体リードを、サイトカイン産生、増殖を高めるそれらの能力、およびヒトCD3+T細胞における増殖を誘起する能力について、機能的にスクリーニングした。当該抗CD3抗体(OKT3、BioLegend Cat.No.317304)および抗OX40抗体リード(クローンB6、B70、B120、A4、B17、B19、およびB30)、基準抗体(GSK3174998)またはアイソタイプの抗体(アイソ#1、#2)を、Maxisorp 96ウェルプレートにコーティングした。その一方で、ナイーブヒトCD3+T細胞を、製造元の説明に従って市販のRosetteSep(商標)Human T Cell Enrichment Cocktail(STEMCELL Cat.No.15061)を使用して、健康な成人のボランティア由来のヒト血液から単離した。次いで、当該単離されたCD3+T細胞を、CFSE(CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット、Life technologies、Cat.NO. C34554)によって標識し、細胞増殖およびサイトカイン産生を特定するために、RPMI1640培地、10%のウシ胎仔血清、および2.5mMのL-グルタミンの入った、抗体で予めコーティングしたウェルに、1×10細胞/mLにおいて播種した。3日間の培養後、フローサイトメトリによる増幅アッセイのために当該細胞を収集し、次いで、定量ELISAによってIL-2およびIFN-γ産生について培地を分析した。
【0053】
T細胞活性においてアンタゴニスト活性を有する抗OX40抗体リードのスクリーニングを、図12Aに示した。全ての抗OX40抗体リードは、基準抗体と同様の用量応答において当該CD3+T細胞活性化を高める能力を示した。より高い用量の抗体処理は、明確により高いT細胞活性化活性を示した。その一方で、IL-2およびIFN-γなど、サイトカイン産生(図12B)も、とりわけ、抗OX40抗体リードクローンB17の場合、同様のT細胞活性化反応が明らかとなった。サイトカインは、抗OX40抗体リードB17による3日間の処理後、非常に誘起される。増進は、基準抗体処理よりもはるかに高く、このことは、クローンB17が、二重特異性抗体構築のための候補の1つであることを意味した。
【0054】
図13Aおよび図13Bに示されたデータのように、抗OX40抗体リードであるクローンB17およびB19の両方は、抗OX40抗体リード(B17またはB19)による3日間の処理の後のアッセイにおいて、より良好なアゴニスト活性を示した。IL-2産生またはIFN-γ産生のいずれかは、抗体処理において明確な増進を示し、用量依存性相関関係を示した。より高い用量での抗体処理において、より高いサイトカイン産生が記録された。
【0055】
OX40抗体リードB17およびB19のアゴニスト活性を評価するために、アゴニスト活性アッセイと同様に、EC50も特定し、比較のためにサイトカイン産生を記録した。
【0056】
(抗PD-L1-OX40 scFv抗体の構築、発現、および精製)
二重特異性が、scFv形式と融合されたIgGベースとして設計されるため、抗免疫チェックポイント抗体の構造に、OX40 scFvをFc末端において融合させた。抗体は、阻害性抗免疫チェックポイント抗体(例えば、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4、抗LAG3など)、または刺激性抗体(例えば、抗CD28、抗CD137、抗CD27、抗ICOSなど)であり得る。図14に表されるように、二重特異性抗体を生成するために、リンカーが、抗体FcとOX40 scFvとの間に位置される。
【0057】
いくつかの実施形態において、当該抗PD-L1抗体リードクローン6が、IgG形式であるように割り当てられ、その一方で、当該抗OX40抗体リードは、抗PD-L1抗体リードクローン6におけるFc領域のC末端において融合させるために、scFv形式として転換されるであろう。抗体からscFv形式への転換は、結果として、結合活性または特異性の減少を生じることができ、したがって、いくつかの抗OX40抗体リードを、scFv転換に使用した。二官能性抗PD-L1抗体Fcの構築物を、完全長OX40 scFv(クローンA4としての配列番号10、クローンB17としての配列番号11、クローンB19としての配列番号12、またはクローンB120としての配列番号13)と融合させた。正確な折り畳みを確実にし、立体障害を最小にするために、短いフレキシブルなペプチドリンカー(GGGGS)(配列番号14)を、例えば、Fc領域の抗PD-L1抗体重鎖C末端と、OX40 scFvのN末端モジュールとの間に位置した。抗PD-L1-OX40 scFv抗体のコード配列を、配列番号16(抗PD-L1-クローン6重鎖-OX40クローンB17scFv)および配列番号17(抗PD-L1-クローン6重鎖-OX40クローンB19scFv)に示した。構築された抗体Fc融合タンパク質を、シグナルペプチド(配列番号15)によってリードし、哺乳動物細胞によって発現させ、ならびにトランスフェクトされた細胞培養上清から一段階タンパク質Gクロマトグラフィによって精製した。図15に示されるように、一段階精製プロセスにおいて90%を超える純度を得ることができ、それは、精製された融合タンパク質が正しい分子量(Mw=220kD)を有することを示す。
【0058】
(MLRにおける抗PD-L1-OX40 scFv二重特異性抗体リードに対するT細胞活性化の刺激の増強)
PD-1とPD-L1との間の相互作用およびOX40シグナル伝達のアゴニスト活性化の阻害によってT細胞活性化を高めることにおける二重特異性抗体の相乗的協力を特定するために、二重特異性抗体リードの抗PD-L1-OX40 scFvを、上記において説明したようにMLRに適用した。次いで、抗体処理の3日後または5日後に、IL-2およびIFN-γ産生を記録した。T細胞活性化増進における相乗効果を比較するために、単一、併用、または二重特異性抗体を等しい量または等しいモルにおいて適用し、アイソタイプIgGをネガティブコントロールとして使用した。図16Aおよび16Bに示されたデータのように、当該抗PD-L1抗体リード単独は、基準抗体MPDL3280Aと同様に、処理の3日後に著しいIL-2誘導を示したが、対照的に、当該抗OX40抗体リードは、抗体処理の3日後または5日後のいずれかにおいて、サイトカイン産生の明確な上方調節を増加することができない。このことは、基準抗体GSK3174998と一致している。しかしながら、当該抗OX40抗体と抗PD-L1抗体との併用は、抗体処理の3日後および5日後におけるサイトカイン産生の著しい上方調節を示した。当該相乗効果は、二重特異性抗体リード処理においても観察され、サイトカイン産生の増分は、併用処理と同様である。このことは、抗PD-L1-OX40 scFv二重特異性抗体リードも、当該scFv転換において結合活性の損失なしに、抗体併用処理と同様に機能することを示した。
【0059】
(二重特異性抗体の凝集および純度の特定)
精製された抗PD-L1-クローン6-OX40クローンB17scFvAbは、単一カラムタンパク質Aクロマトグラフィ精製の後のSEC-HPLC分析によって、低い純度(74.07%)であることが明らかとなり、したがって、純度を向上させるため、および本発明の二重特異性抗体の凝集を低減するために、いくつかの抗体バリアントを作製した。二重特異性抗体抗PD-L1-OX40 Ab(配列番号16)において、OX40B17scFvにおけるリンカーの代わりに、上記において説明したリンカーを使用し、CHO細胞において抗PD-L1-OX40 Ab-V1からV4(配列番号18から配列番号21)として作製した。これらのバリアントを精製し、XBridge Protein BEH SEC-HPLCカラム(Waters、Cat.No.186007640)によって分析した。当該データを下記の表1にまとめ、二重特異性抗体バリアントの1つである抗PD-L1-OX40 Ab-V4は、抗体純度を著しく向上させることが明らかとなった。純度は、74.07%から92.27%に高められる。したがって、当該抗PD-L1-OX40 Ab-V4を、当該抗体純度を向上させるために、さらなる遺伝子改変に使用した。
【0060】
【表1】
【0061】
二重特異性抗体のサイズ分布のキャラクタリゼーションのために、試料をWaters Alliance 2695 Separations Moduleを使用してXBridge Protein BEH SEC-HPLCカラム(Waters、Cat.No.186007640)にロードした。Water 2996 PDA Detectorを使用して、280nmにおいてタンパク質ピークを検出した。移動相は、0.4mL/分の流量の、200mMのNaCl(AMRESCO、Cat.No.0241)を含む均一濃度の25mMのリン酸ナトリウム(Sigma、Cat.No.04272およびCat.No.04269)、pH6.8であった。図17Aから17Eに示されるように、ピークエリアの一部分によってピークのパーセンテージを特定した。
【0062】
抗PD-L1-OX40 Ab-V4は、著しい純度向上が明らかとなった(図17E)。純度を向上させるために、再び、当該二重特異性抗体をさらに、OX40B17scFv断片において遺伝子改変した。いくつかの二重特異性抗体バリアント、抗PD-L1-OX40 Ab-V5からV12(配列番号22から配列番号29)を作製するために、図18に示したOX40B17scFvにおけるいくつかの残基を異なるアミノ酸で置換し、重鎖バリアントを抗PD-L1クローン6軽鎖と対合させ、発現させ、上記において言及したように精製した。二重特異性抗体バリアントの純度を下記の表2にまとめ、当該抗PD-L1-OX40 scFv-V5は、これらの抗体バリアントの中で最も純度が高いことが明らかとなった。純度は、最高で96.46%まで高まった。これは、遺伝子改変二重特異性抗体において優れた純度を示し、将来におけるこれらの二重特異性抗体の良好な開発能力も明らかとなった。図19に示されるように、抗PD-L1-OX40 Ab-V5の完全性についてもSDS-PAGEによって分析し、還元条件下および非還元条件下において良好な完全性を示した。
【0063】
【表2】
【0064】
その一方で、遺伝子改変二重特異性抗体バリアントも、図20に示されるように直接的ELISAによるヒトPD-L1およびOX40の結合活性評価のために適用した。示される全ての二重特異性抗体バリアントは、ヒトPD-L1に対する同じ結合活性を示し(図21)、この結合活性は、抗PD-L16抗体と同様である。この現象は、ヒトOX40結合アッセイにおいても観察された(図22)。抗PD-L1-OX40 Ab-V10のみが、ヒトOX40に対して、他のバリアントと比較して弱い結合活性を示した。それは、OX40 scFvの遺伝子改変が、OX40結合活性に影響を及ぼさないことを示した。当該結合活性は、PD-L1またはOX40のいずれかに対して保持される。抗PD-L1-OX40 Ab-V5は、優れた抗体純度ならびにPD-L1およびOX40に対する結合活性が明らかとなったため、血清安定性に対して、当該抗PD-L1-OX40 Ab-V5を選択した。
【0065】
(エクスビボ血清安定性)
当該安定性は、ヒト血清(BioreclamationIVT、Cat.No.HMSRM)ならびに関連前臨床種:赤毛ザル(BioreclamationIVT、Cat.No.RHSSRM)およびCD1マウス(BioreclamationIVT、Cat.No.MSESRM)由来の血清において評価した。15μg/mLの最終濃度となるように、試料を異なる種の血清に加え、37℃の水浴においてインキュベートした。0日間、1日間、2日間、3日間、7日間、10日間、および14日間のインキュベート時間の後で、血清試料を収集し、分析まで-80℃において冷凍して貯蔵した。
【0066】
(定量サンドイッチELISA)
PBS中における1μg/mLのOX40-Fcの100μLでELISAプレート(NUNC、Cat.No.442404)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。0.1%のTween-20(Sigma、Cat.No.P2287-500mL)を含むPBSとして洗浄緩衝液を調製し、洗浄緩衝液中における1%のBSA(UniRegion、Cat.No.UR-BSA001-100G)として、ブロッキング緩衝液を調製した。ブロッキング緩衝液における3×段階希釈による10倍希釈によって血清試料を調製し、ブロッキング緩衝液における3×段階希釈によって標準物を10nMにおいて調製した。ビオチン化PD-L1-Fcを、標準的プロトコルを使用してBiotin Fastコンジュゲート化キット(abcam,Cat.No.ab201796)によって標識し、ブロッキング緩衝液における30nMにおいて調製した。ストレプトアビジン-HRP(abcam、Cat.No.ab7403)を、ブロッキング緩衝液における1μg/mLにて調製した。プレートを洗浄緩衝液で3回洗浄した後に、全ての試料を100μLにおいて各ウェルに加え、周囲温度において1時間インキュベートした。100μLのTMB溶液(Invitrogen、Cat.No.00-2023)による2分間のTMB現像を、100μLの1NのHCl溶液(Merck、Cat.No.1.00317.1000)によって止めた。450nm吸収を、ELISA読み取り機(Biotek、Powerwave XS)によって読み取った。
【0067】
その優れた純度およびPD-L1およびOX40に対する結合活性により、エクスビボ血清安定性のために抗PD-L1-OX40 Ab-V5を選択した。精製された二重特異性抗体を、異なる種(例えば、ヒト、マウス、またはサルなど)に由来する血清と混合した。数日間の培養後、当該試料を取り出し、抗体量を特定するためにサンドイッチELISAによって分析した。図23に示されるように、当該抗PD-L1-OX40 Ab-V5は、37℃での14日間の培養後において、依然として、良好な血清安定性を示した。抗体の濃度は、依然として、ヒト、マウス、またはサルのいずれかにおいて、70%超である。そのことは、当該抗体が良好な血清安定性も有することを示した。
【0068】
T細胞反応性を調節する当該抗PD-L1-OX40 Ab-V5の能力を測定するために、精製されたT細胞が、数日間かけてGM-CSFおよびIL-4において単球を培養することによって調製した同種異系樹状細胞と共に培養されるであろう。市販のELISAキットを使用して、それぞれ、IL-2およびIFN-γを測定するために、3日目および5日目での上清の収集を可能にするように、平行プレートを準備した。図24Aおよび24Bに示されるデータのように、IL-2およびIFN-γ産生は、抗体処理の3日後および5日後に、二重特異性抗体処理(V5)ならびに併用処理において非常に上方調節される。さらに、増進は、単独での当該抗PD-L1Abまたは抗OX40 Ab処理よりも、明らかに優れている。このことは、遺伝子改変二重特異性抗体V5が、依然として、機能性損失なしに、併用処理と同様にアゴニスト活性を有すること、ならびに、将来において、様々な固形腫瘍または癌のための治療抗体として開発され得ることを意味した。
【0069】
(二重特異性抗体の抗腫瘍活性(インビボモデル))
二重特異性抗体における当該PD-L1およびOX40の齧歯動物交差反応性の欠如は、当該抗体の抗ヒト腫瘍有効性の評価に対する標準的なマウス同系またはヒト異種移植腫瘍モデルの使用を妨げた。したがって、ベージュ(Bg)変異欠如マウスのTおよびBリンパ球および機能性NK細胞を有するSCID-Bgマウス(CB.17/Icr.Cg PkrdcscidLystbg/CrI)を使用して、新規のhuPBL-SCID-Bg異種腫瘍マウスモデルを作製した。当該二重特異性抗体の抗ヒト腫瘍有効性を、下記において説明するようにこのモデルを使用して評価した。
【0070】
PC-3ヒト前立腺をアメリカンタイプカルチャーコレクションから得て、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、ペニシリン/ストレプトマイシン、および10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS、Gibco Cat.NO. 10437)を含むRPMI-1640(Invitrogen)において培養した。細胞を、T-150ファルコンフラスコにおいて培養密度に増殖させた。続いて、細胞を、トリプシン処理し(トリプシン 0.25%-EDTA;Invitrogen)、インキュベートにとって十分な細胞数に増殖をスケールアップした。製造元のプロトコル(STEMCELL Technologies Inc.)に従って、Lymphoprep(商標)を使用して、末梢血液リンパ球(PBMC)をヘパリン処理した血液から単離した。各マウスが、PBS中における0.1mLの単一ボーラス注入において0.75×10のPBMCおよび3×10腫瘍細胞の注入を受けるように、カウントした細胞懸濁液を組み合わせた。当該マウスにおける腫瘍細胞の増殖を促進するために、別の0.1mLのマトリゲルを、当該組み合わせた細胞懸濁液と混合し、すぐに調製マウスに注入した。
【0071】
各マウスに対して、0.2mL量の当該組み合わせた細胞懸濁液を、当該動物の右脇腹の皮下に注入した。14日のインキュベーション後、固形腫瘍が形成され、約250mmから300mmに達し、当該二重特異性抗体(3mg/kgの抗PD-L1-OX40 Ab-V5)、PD-L1基準抗体(Ref Ab、MPDL3280A)、またはコントロール抗体(アイソタイプ)を、腹腔内注射(i.p.)によって3週間にわたり毎週2回与えた。毎週2回、Pressierキャリパによる腫瘍測定ならびに実験期間における試験試料投与を行い、ならびに体重も記録した。以下の計算:長さ×幅×0.44=体積(mm)を用いて腫瘍体積を計算し、図25にプロットした。腫瘍体積が2000mmに達するか、実験の終了前に体重が20%減少したマウスを研究から除去した。インキュベーションの7日後に腫瘍を測定したところ、同様の結果が観察され、腫瘍体積に従って動物を無作為化した。動物研究のため、各グループは、6匹のマウスを含んでいた。図25に示されたデータのように、当該二重特異性抗体は、PC-3異種移植マウスモデルにおいて、著しい抗腫瘍有効性を示した。PD-L1基準抗体と同様に、腫瘍サイズは、腫瘍インキュベーションの18日後に減少に転じ、100mm未満に減少し続けた。当該PC-3異種移植マウスモデルは、二重特異性抗体の抗腫瘍について事前実証され、将来における治療薬リードである可能性が明らかとなる。
【0072】
一括して、これらの結果は、二重特異性抗体が、PD-1/PD-L1シグナル伝達におけるその免疫チェックポイント遮断性およびOX40シグナル伝達のためのアゴニスト活性を維持することを示した。適切な動物モデル(例えば、ヒト化NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtmIwjI/SzJ(NSG)モデルにおけるPC-3腫瘍など)を使用してこれらのタンパク質の生物学的活性をさらに調査するために、研究を進める。
【0073】
本発明におけるFc領域は、任意の免疫グロブリンのアイソタイプ、サブクラス、アロタイプ、遺伝子改変変異体(例えば、ノブおよびホール(knob and hole)Fc断片など)に由来し得る。
【実施例
【0074】
(実施例)
下記の実施例は、ヒトPD-L1およびOX40を標的とする治療目的にとって好適なモノクローナル抗体の作製について説明している。複合体、ヒト抗ヒトPD-L1および抗OX40抗体は、それぞれ、抗PD-L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17から作製した。ヒトV領域配列のセグメントは、無関係のヒト抗体(生殖系列および非生殖系列)配列データベースを供給源とした。
【0075】
実施例1 PD-L1およびOX40に結合するIgG抗体の作製
本発明によって提供されるある特定の抗体を、ヒトPD-L1またはOX40に結合するFabから独自に作製した。当該Fabは、対応するFc融合タンパク質(PD-L1-FcまたはOX40-Fc)および対応するヒトタンパク質(PD-L1またはOX40)を発現する細胞における交互パンニング(alternating panning)に従って、ファージディスプレイライブラリであるOmniMabファージミドライブラリから選択した。直接的ELISAまたは細胞ベースのELISAスクリーニング後、当該ポジティブクローンを、重鎖および軽鎖に対して配列決定した。これらのFabは、PD-L1に対して「OM-PD-L1-6」および「OM-PDL1-32」など、OX40に対して「OM-OX40-A4」、「OM-OX40-B17」、および「OM-OX40-B19」など、として指定されたものを含む。本出願において開示されるPD-L1抗体PD-L1-クローン3、PD-L1-クローン6、およびPD-L1-クローン32を、「OM-PD-L1-6」および「OM-PDL1-32」から作製した。その一方で、本出願において開示されるOX40抗体OX40-A4、OX40-B17、およびOX40-B19は、HEK293細胞またはCHO-S細胞において「OM-OX40-A4」、「OM-OX40-B17」、および「OM-OX40-B19」から作製した。ならびに、PD-L1およびOX40を同時に標的化する二重特異性抗体を、抗PD-L1 6-OX40 scFvB17抗体および抗PD-L1 6-OX40 scFvB19抗体として設計した。所定のFabの軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、当該軽鎖可変領域および重鎖可変領域の当該アミノ酸配列と同一である。
【0076】
実施例2 抗PD-L1-OX40 scFvのその対応する標的へのインビトロ結合
抗PD-L1-OX40二重特異性抗体を、図14に示されるように構築し、HEK293細胞またはCHO-S細胞において発現させた。二重特異性抗体を含む培地を、タンパク質Gクロマトグラフィによって、培養上清から親和性により精製した。精製された抗体を濃縮し、その後、PBS緩衝液において透析し、図15に示されるようにSDS-PAGEによって分析した。PD-L1またはOX40への精製された融合タンパク質の直接結合をELISAにおいて試験するために、100ng/ウェルの組換えPD-L1またはOX40で、96ウェルELISAプレートをコーティングした。様々な濃度の精製された抗PD-L1-OX40 scFvを各ウェルに加え、1時間インキュベートした。洗浄後、抗FabHRPコンジュゲート(Jackson Immunochemicals)の1:5000希釈を各ウェルに加え、さらに1時間インキュベートした。最終洗浄後、TMB基質(Invitrogen Inc.)を加え、450nmにおけるOD吸光度を測定した。当該データを、GraphPad Prism 5を使用してS字形曲線近似によって解析し、EC50を計算した。
【0077】
実施例3 FACS分析による抗PD-L1-OX40 scFvの抗原結合特異性
抗PD-L1-OX40 scFv抗体結合特異性を試験するために、安定PD-L1発現293細胞であるIFN-γ刺激A549またはWiDrを、氷上で1時間かけて1μg/mLの抗PD-L1-OX40 scFv抗体で染色し、その後、1×PBSで3回洗浄した。結合した抗体融合タンパク質を、Alexa-488標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)で検出し、その後、FACS分析を行った。当該試験のネガティブコントロールとして、アイソタイプ抗体を使用した。結果は、抗PD-L1-OX40 scFvが、抗PD-L1単独と比較して、その抗原結合特性を維持していることを示した。抗PD-L1-OX40 scFv抗体の結合特異性も、安定OX40発現293細胞を使用して試験した。
【0078】
実施例4 二官能性タンパク質のインビトロ免疫調節効果
T細胞反応性を調節する当該抗PD-L1-OX40 scFv抗体の能力を測定するため、精製したT細胞を、数日かけてGM-CSFおよびIL-4において単球を培養することによって調製した同種異系樹状細胞と共に培養する。市販のELISAキットを使用してそれぞれIL-2およびIFN-γを測定するために3日目および5日目での上清の収集を可能にするために、平行プレートを準備した。Genentech/Rocheのヒト化抗PD-L1であるMPDL3280Aを、自前で作製し、ポジティブコントロールとして使用した。図16Aおよび16Bに示される当該データのように、当該IL-2およびIFN-γ産生は、抗体処理の3日または5日後に、二重特異性抗体処理ならびに併用処理において非常に上方調節される。とりわけ、抗PD-L1抗体クローン6および抗OX40抗体クローンB17(抗PD-L1-OX40 scFvB17Ab)によって複合化された当該二重特異性抗体、または組み合わせ物(抗PD-L1クローン6Ab+抗OX40クローンB17Ab)は、PD-L1およびOX40基準抗体の組み合わせ物(PD-L1 RefAb+OX40 RefAb)よりも高いT細胞活性化の増進を示した。このことは、当該抗OX40B17抗体が、基準OX40抗体GSK3174998と比較してより良好なアゴニスト活性を結果として生じる特殊なエピトープ結合性を有し得ることを示していた。
【0079】
実施例5 インビボでの二重特異性抗体によって誘起されるヒト白血球増殖
マウスPD-L1またはOX40とのPD-L1またはOX40抗体における検出可能な交差反応の欠如ならびにヒト免疫細胞の存在に対する要件は、当該二重特異性抗体のインビボ機能性評価のためのモデルの開発を必要とした。重症複合免疫不全(SCID)変異およびIL-2受容体共通ガンマ鎖(一般的に、NSGと呼ばれる)における欠損を有するNOD遺伝的背景のマウスは、多くのヒト末梢血白血球(huPBL)の移植を支援することができ、少なくとも30日間、移植を維持することができる(King et al.,2008)。huPBL-NSGモデルとしても知られるこのマウスモデルを、ヒト免疫細胞に対する当該抗体のインビボ全身性投与の機能効果を評価するために使用した。
【0080】
詳細には、新たに単離した600万のヒトPBMCを、静脈内注入によってhuPBL-NSGマウスへと養子移入した。PBMC注入の9日間後、当該動物に、腹腔内注入によって、単回1mg/kg用量の単一抗体、二重特異性抗体、またはIgG4アイソタイプコントロール抗体を投与した。PBMC移植の24日から28日後に、フローサイトメトリによって評価したヒトおよびマウスCD45に対する抗体でPBMCを染色した。リンパ球ゲートを特定するために、前方および側方散乱プロファイルを使用した。移植されたマウスの末梢血におけるヒトCD45+細胞の割合の増加によって証明されるように、二重特異性抗体は、ヒト白血球の増殖を高めることができた。各群に対して、n≧6匹のマウス。
【0081】
実施例6 抗PD-L1-OX40 scFv抗体によるhuPBL-NSGにおけるPC-3またはA498腫瘍細胞増殖の阻害
huPBL-NSGマウスにおいて異種移植モデルを確立するために、PD-L1ポジティブヒト前立腺癌細胞株PC-3(ATCC#CRL-1435)または腎癌細胞A498(ATCC(登録商標)HTB-44(商標))を使用することができる。腫瘍形成のために、3×10PC-3細胞(またはA498細胞)/マウスが、上記において説明したhuPBL-NSGマウスに、皮下において注入されるであろう。腫瘍成長に対する阻害効果を評価するために、腫瘍細胞移植の14日後に、0.1~3mg/kgの異なる濃度の抗PD-L1-OX40 scFv抗体、基準抗体、またはアイソタイプの抗体が、毎週2回、4週間にわたってマウスに静脈内投与されるであろう。腫瘍成長は、FoxChaseSCID(登録商標)Beigeマウスモデルにおいて説明したように、最長5週間にわたって毎週2回測定されるであろう。
【0082】
実施例7 マウスおよびサルにおける抗PD-L1-OX40 scFvの薬物動態評価
10~40mg/kgの二官能性タンパク質抗PD-L1-OX40 scFvが、皮下注入または静脈内注入によってマウスまたはサルに投与されるであろう。注入後、最長15日間まで、異なる時点において、血清試料が採取されるであろう。当該血清試料中のFc融合タンパク質の濃度が、サンドイッチELISAアッセイを使用して特定されるであろう。
【0083】
本発明について、そのある特定の実施形態を参照しながらかなり詳細に説明してきたが、他の実施形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるものではない。
【0084】
本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく本発明の構造に様々な改変および変更を為すことができることは、当業者に明らかであろう。先述の観点から、本発明の改変および変更が以下の特許請求の範囲の範囲内である限り、本発明は、それらを網羅することが意図される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図18
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図20
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図24A
図24B
図25
【配列表】
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