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特許7362624タンクの水垢防護手段を備えた水フィルタカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】タンクの水垢防護手段を備えた水フィルタカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/027 20060101AFI20231010BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20231010BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20231010BHJP
   C02F 5/04 20230101ALI20231010BHJP
   C02F 5/06 20230101ALI20231010BHJP
【FI】
B01D35/02 F
C02F1/42 A
C02F5/00 610C
C02F5/00 620B
C02F5/04
C02F5/06
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020542851
(86)(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019052685
(87)【国際公開番号】W WO2019154767
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】102018103003.7
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508298385
【氏名又は名称】アクイス ヴァッサー-ルフト-ジステーメ ゲーエムベーハー, リンダウ,ツヴァイクニーダーラッスング レブシュタイン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイテル ベルンド
(72)【発明者】
【氏名】ウエバー ミハエル
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-046624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0294724(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0053618(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02898782(EP,A1)
【文献】特表2014-512941(JP,A)
【文献】特開2006-263718(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3382126(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
C02F 1/00、1/42
C02F 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンク(10)への挿入のためのハウジング(2)及びフィルタ側タンク接続要素(3)と、
前記水タンク(10)から取水される水(8)を処理するためのフィルタ部(4)と、
を備える水フィルタカートリッジ(1)であって、
前記水フィルタカートリッジ(1)は、前記水タンク(10)における水垢析出物を阻止する手段(5)を有する貯蔵チャンバ(6)を備え、前記貯蔵チャンバ(6)は、前記貯蔵チャンバ(6)が前記水垢析出物を阻止する前記手段(5)のための少なくとも1つの通路を有し、それにより水垢析出物を阻止する前記手段(5)が前記水タンク(10)内の濾過されていない水と接触し、水垢析出物を阻止する前記手段(5)と接触した後の水は、前記フィルタ部(4)の流れ案内路に流入する前に、前記ハウジング(2)の外側の前記水タンク(10)の内部を経由するように、前記フィルタ部(4)、及び前記フィルタ部(4)を通過して処理される水(8.1)のための前記フィルタ部(4)の流れ案内路とは分けられて設計されること、及び
前記水垢析出物を阻止する前記手段(5)は水垢防止剤を含むこと、
を特徴とする、水フィルタカートリッジ。
【請求項2】
前記貯蔵チャンバ(6)は、前記水フィルタカートリッジ(1)の前記ハウジング(2)の内部及び/又は表面に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項3】
前記水垢析出物を阻止する前記手段(5)のための前記貯蔵チャンバ(6)は、前記水フィルタカートリッジ(1)の前記ハウジング(2)の蓋(2.1)の中に組み込まれる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項4】
前記貯蔵チャンバ(6)の壁は、少なくとも部分的に有孔壁又はふるいとして形成されている
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項5】
水垢析出物を阻止する更なる手段(5)を備え、前記水垢析出物を阻止する更なる手段(5)は水垢防止剤を含む
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項6】
前記水垢防止剤は、硬度安定剤を含む
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項7】
前記水垢防止剤は、難溶性ポリリン酸塩を含む
ことを特徴とする、請求項6に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項8】
前記難溶性ポリリン酸塩はカルシウム系の難溶性ポリリン酸塩である
ことを特徴とする、請求項7に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項9】
前記水垢防止剤は、ナトリウム系の易溶性ポリリン酸塩を含む
ことを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項10】
前記水垢防止剤は、ポリリン酸塩のための安定剤を含む
ことを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項11】
前記水垢防止剤は、前記安定剤として、塩基性陰イオン交換物質を含む
ことを特徴とする、請求項10に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項12】
前記塩基性陰イオン交換物質は、対イオンとしてポリリン酸イオンを含む塩基性陰イオン交換物質である
ことを特徴とする、請求項11に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項13】
前記水垢防止剤は、前記安定剤として弱塩基性陰イオン交換物質を含む
ことを特徴とする、請求項10に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項14】
前記弱塩基性陰イオン交換物質は、対イオンとしてポリリン酸イオンを含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項15】
前記水タンク(10)の吸込口として形成された相補的なタンク側接続要素に接続するためのフィルタ側接続要素を備えて形成される
ことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項16】
前記水タンク(10)は、家庭用機器(11)のための水タンク(10)である
ことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項17】
前記ハウジング(2)は、前記貯蔵チャンバ(6)を水タンク(10)に貯留された水に接触させることを可能にする接触開口部を有する、請求項2に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項18】
前記水フィルタカートリッジ(1)のハウジング(2)の蓋(2.1)の中に、及び/又は前記蓋(2.1)の外側に、容器を備え、前記容器は、前記水タンク(10)における水垢析出物を阻止する手段(5)を有する前記貯蔵チャンバ(6)と、前記水垢析出物を阻止する手段(5)と前記水タンク(10)の水との間に少なくとも1つの接触点及び/又は接触開口部とを有する、請求項1に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項19】
前記水垢析出物を阻止する前記手段(5)のための前記貯蔵チャンバ(6)は、前記水フィルタカートリッジ(1)に設けられたリングに装着されており、前記リングは、イオン交換剤又は硬度安定剤を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項20】
前記手段(5)は、イオン交換剤又は硬度安定剤を有するリングである、請求項1に記載の水フィルタカートリッジ。
【請求項21】
家庭用機器(11)の水タンク(10)への挿入のためのハウジング(2)及びフィルタ側タンク接続要素(3)と、
前記水タンク(10)から取水される水(8)を処理するためのフィルタ部(4)と、
を備える水フィルタカートリッジ(1)の使用であって、
前記水フィルタカートリッジ(1)は、前記水タンク(10)における水垢析出物を阻止する手段(5)を有する貯蔵チャンバ(6)を備え、前記貯蔵チャンバ(6)は、前記貯蔵チャンバ(6)が前記水垢析出物を阻止する前記手段(5)のための少なくとも1つの通路を有し、それにより水垢析出物を阻止する前記手段(5)が前記水タンク(10)内の濾過されていない水と接触し、水垢析出物を阻止する前記手段(5)と接触した後の水は、前記フィルタ部(4)の流れ案内路に流入する前に、前記ハウジング(2)の外側の前記水タンク(10)の内部を経由するように、前記フィルタ部(4)、及び前記フィルタ部(4)を通過して処理される水(8.1)のための前記フィルタ部(4)の流れ案内路とは分けられて設計され、前記水フィルタカートリッジ(1)は、家庭用機器(11)のための前記水タンク(10)における水垢析出物を減少させるために使用され、
水垢析出物を阻止する前記手段(5)は水垢防止剤を含む
ことを特徴とする、水フィルタカートリッジの使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1及び12に記載の、水タンクにおける析出物を阻止する手段を備えた水フィルタカートリッジに関し、また、その使用方法にも関する。
【0002】
パイプラインや機器など、水移送装置及び/又は水処理装置において、水垢析出物からの防護のため、例えば、業界では水フィルタが普及しており、特に、水タンクを介して水が供給される温飲料製造機については、機械のうち温水を移送する部分を防護するためのフィルタカートリッジが普及している。
【0003】
しかしながら、この場合の未解決の問題は、水タンク自体に水垢が蓄積することである。そして、時間の経過と共に、硬水の場合には水タンク内に石灰が析出し、水タンクの内面に石灰のスケールを形成する。
【0004】
このような石灰のスケールは見苦しく、特に外観によって一部が演出されている機器において望ましくない。その例としては、一般に透明又は半透明な材料で作られた目に見えるデザイン要素として水タンクが形成されている、コーヒーマシンやティーマシンなどの現代的な温飲料機などにおいてである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、そのような温飲料製造機の全体的外観に可能な限り悪影響を及ぼすことなく、それらの目に見える水移送部分及び/又は水貯蔵部分の表面も含め、析出物を防止することである。
【0006】
本目的は、請求項1及び12に記載の特徴によって達成される。従属請求項では、有利かつ得策な発展形が記述されている。
【0007】
したがって、本発明は、水フィルタカートリッジであって、水タンクへの、より具体的には家庭用機器の水タンクへの、挿入のためのハウジング及びフィルタ側タンク接続要素と、水タンクから取水される水を処理するためのフィルタ部と、を備える水フィルタカートリッジに関する。これは、以下の事実によって特徴付けられる。水フィルタカートリッジは、水タンクにおける析出物を阻止する手段を有する貯蔵チャンバを備え、貯蔵チャンバは、フィルタ部を通って流れる水と、析出物を阻止する上記手段と、の間に接触がないように、フィルタ部、及びフィルタ部を通過して処理される水のためのフィルタ部の流れ案内路とは分けられて設計され、また、貯蔵チャンバは、上記手段のための少なくとも1つの通路を有し、それにより析出物を阻止する上記手段が水タンク内の濾過されていない水に接触する。
【0008】
したがって、水は水タンクに貯留されたままで、水タンクに貯留された水中において、水垢析出物を阻止するように作用することが可能であり、その結果、貯留された水と接触する領域は、水垢析出物がない状態に保たれ、且つ/又は、水垢析出物から解放され得る。
【0009】
それゆえ、透明な材料で製造された水タンクの場合は特に、水の補充を繰り返しながら長期にわたって使用された後であっても、外側から見ることのできる内壁を含む、水タンクの元来クリーンである全体的外観が保たれる。
【0010】
更なる利点によって、水垢析出物を阻止するこの手段は、水を取り出す前の、実際の水処理も支援し得る。このことは、フィルタ部の上流における、タンクに貯留された水の処理によって実行される。
【0011】
1つの好ましい実施形態では、貯蔵チャンバは、水フィルタカートリッジのハウジングの内部及び/又は表面に配置されてもよい。例えば、ハウジング内部のチャンバの形態で設けられる。したがって、例えば、析出物を阻止する上記手段のための貯蔵チャンバは、水フィルタカートリッジのハウジングの蓋の中に組み込まれてもよい。その結果、水フィルタカートリッジは、既存の実施形態に対して、その外観に実質的に何ら変化をもたらすことなく形成することができる。
【0012】
ただし、貯蔵チャンバの形態において貯蔵部を目立つよう設計することも可能であろう。こうすれば、そのような貯蔵部を備えない水フィルタカートリッジと混同する事例を防止することができる。さらに、水フィルタカートリッジの構造上の要件とはほとんど無関係に、体積及び形状を構成することが可能だからである。
【0013】
貯蔵部又は貯蔵チャンバを水タンクに貯留された水に触れさせることを可能にする接触開口部に基づいて、水タンクにおける析出物を阻止する手段に水がアクセスすることが可能であり、それにより、その水の処理を引き起こすことが可能である。
【0014】
そのような接触開口部は、例えば、ハウジングにおける孔、メッシュ、織布、ふるい、格子、又はそれに類するものであり得る。
【0015】
好ましい1つのバージョンによれば、析出物を阻止する上記手段は、水垢析出物を阻止する手段であってもよい。それにより、例えば、水垢析出物に対してのみ極めて意図的に作用させることが可能になる。
【0016】
さらに好ましいバージョンでは、水垢析出物を阻止する更なる手段を備えてもよい。例えば、結晶種の形成を予め阻害し、可能な限り完全に防止するような種類の手段、及び/又は、溶媒中の石灰分を水中に保持しておく手段を備えてもよい。
【0017】
例えば、水タンクにおける水垢析出物を阻止する手段は、1つのバージョンにおいて、メッシュ、織布、ふるい、格子、又はそれに類するものによって貯蔵部内に最初保持されてもよい。これにより、水とこの抗水垢手段との間の接触面積を比較的大きくすること、及び/又は、例えば、この手段が無制限には流出できないようにすることを確実にすることが、可能になる。
【0018】
特に好ましい1つのバージョンによれば、この目的のために、例えば、貯蔵チャンバの壁が、少なくとも部分的に有孔壁又はふるいとして形成されることが可能である。
【0019】
さらに、開口部は、水と、水垢の析出を阻止する手段との流れ抵抗、及び/又は拡散抵抗を最小限にするために、好ましくは、メッシュ、織布、ふるい、格子、又はそれに類するものの場合におけるよりも大きい実効断面積にて、水フィルタカートリッジのハウジング、及び/又は貯蔵部のハウジングに形成されることが可能である。その結果、水垢の析出を阻止する手段は、水タンク内における貯蔵部の外に貯留された水を含めて、その効果を拡張することが可能である。これは、例えば濃度勾配によるものである。
【0020】
水タンクに貯留された水は、一般的に、消費のため取水されて新鮮な水に置き換えられるまで比較的長い時間その中に貯蔵されるため、比較的ゆっくり進行する水処理の効果で十分である。
【0021】
その一方で、水垢析出物の形成は、水と対象となる表面との間の相応な接触時間も必要とするため、比較的長い貯蔵時間が水垢析出物の形成を確かに促進することになるが、それでも、水垢析出物を阻止する手段が、貯蔵時間が長くなるにつれて、水中においてその効果を強めることができ、それゆえ水垢析出物をより一層効果的に阻止できることも事実である。
【0022】
1つのバージョンによれば、したがって、貯蔵チャンバは、フィルタカートリッジのハウジングの内部に配置されてもよい。
【0023】
1つの好ましい実施形態によれば、水タンクにおける析出物を阻止する、特に水垢析出物を阻止する上記手段の少なくとも1つは、弱酸性陽イオン交換体を含んでもよい。これにより、水タンク中の水の硬度に作用することが可能になる。
【0024】
さらに好ましい実施形態によれば、水タンクにおける析出物を阻止する、特に水垢析出物を阻止する上記手段の少なくとも1つは、硬度安定剤を含んでもよい。これにより、種の形成に対して、ひいては析出プロセスに対して、阻害作用を及ぼすことが可能になる。
【0025】
有利には、水タンクにおける水垢析出物を阻止する手段の少なくとも1つは、難溶性ポリリン酸塩を含んでもよい。より具体的には、カルシウム系の難溶性ポリリン酸塩である。これにより、反応時間を遅らせることができ、それゆえ、貯留された水におけるポリリン酸塩の過剰な投入又は濃縮を防止することができる。
【0026】
代替的又は付加的に、水タンクにおける析出物を阻止する、特に水垢析出物を阻止する上記手段の少なくとも1つは、好ましくは対イオンとしてポリリン酸イオンを含む、塩基性、より具体的には弱塩基性の、陰イオン交換物質を含んでもよい。強塩基性陰イオン交換物質に勝るこれの利点は、その容量が大きいということである。これの意味するところは、比較すると、この物質にはより多くの充填が可能ということである。あるいは、同じ充填に対して、必要な陰イオン交換物質が、ひいては必要な貯蔵体積が、それだけより少なくて済むということである。この結果として、収容が容易になる。換言すれば、必要なスペースが少なくて済む。
【0027】
具体的には、塩基性及び/又は弱塩基性の陰イオン交換物質は、ポリリン酸塩の安定剤として備えられてもよい。これにより、水タンクにおける水垢析出物を阻止する手段の保存可能期間を著しく改善することができる。それは、ポリリン酸塩の表面に、例えば、フィルムパック中に分散されて製品上に白い跡を残す、白華及び遊離水を発生させることなく、本手段を水フィルタカートリッジ内に陽イオン交換体と共に安定して貯蔵することができる程である。
【0028】
更なる実施形態によれば、水タンクにおける析出物を阻止する、特に水垢析出物を阻止する上記手段の少なくとも1つは、ナトリウム系の易溶性ポリリン酸塩を含んでもよい。
【0029】
要約すると以下のことが言える。従来のフィルタカートリッジは水タンクの水垢形成に対して効果的でないが、その理由は、貯留された水が、フィルタカートリッジの内部に入るまで、すなわちその中に配置された濾床を通って流れるまで、処理されないからである。貯留された水は、使用される直前になって初めて、つまり調製することになる温飲料を提供する目的のため、水タンクからフィルタを通って機械の中へと吸引引水されるのである。
【0030】
この目的のため、家庭用機器の水タンク内に設置するための水フィルタカートリッジには、少なくとも部分的に第1の軟化及び/又は脱炭素化細粒が充填され、水は、好ましくは吸引手段を介して、フィルタカートリッジ及びこの細粒を通るように水タンクから引水される。
【0031】
ただし、水フィルタカートリッジ上流の水タンクに貯留された原水は、この処理による影響を受けないままである。
【0032】
提案するのは、したがって、このような水フィルタカートリッジに、水タンクの内部における水垢の析出を防止するための硬度安定剤及び/又は水硬度低減剤を、水フィルタカートリッジ上流の水タンクに貯留された水が接触可能になるように、追加的に備え付けることである。
【0033】
この目的のため、例えば、蓋の中に、且つ/又はその外側に、フィルタカートリッジは追加の容器を備えてもよい。この追加の容器は、析出物に対する、特に水垢析出物に対する防護剤を収容し、また、析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する手段と、タンクの水との間に少なくとも1つの接触点及び/又は接触開口部を有するものである。
【0034】
また、水フィルタカートリッジ上に、イオン交換剤又は硬度安定剤を備えた追加のリング又はそれに類するものを設けてもよい。それは例えば、難溶性ポリリン酸塩が充填されたものである。
【0035】
好みに応じて、水フィルタカートリッジの蓋の中に安定剤を収容するために、チャンバが形成される。この方法により、安定剤を収容するための追加的なスペースに対する必要性は存在しない。
【0036】
析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する手段として、本発明により使用されるのは、ポリリン酸塩の形態をした少量の対イオンを有する塩基性陰イオン交換体である。
【0037】
ポリリン酸塩は、典型的には、硬度安定化の目的で原水中に計量投入される。この目的のため、1つの可能性としては、易溶性ポリリン酸塩を用いた液体計量、又は難溶性ポリリン酸塩との接触を介した溶解度制御計量が考えられる。
【0038】
易溶性ポリリン酸塩の場合、主として含まれるものは、ポリリン酸塩のナトリウム塩であり得るが、対応して、難溶性ポリリン酸塩の場合、含まれる塩は主としてポリリン酸塩のカルシウム塩又はマグネシウム塩であり得る。
【0039】
水タンクへの計量投入に関してこれまで問題だったことは、難溶性の塩が、水垢形成からの防護のためのポリリン酸塩を十分に供給しないことである。その上、弱酸性イオン交換体は、気密フィルムパック内で相対大気湿度80%を超える周囲湿度レベルを発生させるため、難溶性ポリリン酸塩をタンクフィルタと共に貯蔵することはできない。しかしながら、難溶性ポリリン酸塩は、50%を超える相対大気含水率では安定して貯蔵できない。難溶性ポリリン酸塩と湿潤イオン交換体とを同梱した結果は、したがって、ポリリン酸塩表面上の白華及び遊離水であり、それらはフィルムパック内で分散されて製品上に白い跡を残す。
【0040】
本適用例における計量投入のプロセスは、過剰投入することなく3ヶ月を超える間持続しなければならないため、液体ポリリン酸塩を使用することは同様に困難である。接触面積及び拡散を小さくすることによって供給をある程度調整することは可能であるが、貯蔵(漏出-枯渇)の問題、及び長時間の接触による過剰投入の問題も、解決することはほとんど不可能である。
【0041】
そこで、製造のために、当初液体のポリリン酸塩を、好ましくは弱塩基性陰イオン交換体にイオン結合させる。その理由は、弱塩基性陰イオン交換体は、自らと比較して塩基性の強い対応する物質よりも、相当高い充填容量を有するからである。したがって、比較すると、強塩基性陰イオン交換体を用いた場合よりも、はるかに少ない量の陰イオン交換体で、同じ充填容量が提供できる。これに対応して、この目的のために求められるスペースの要求及び/又は必要な容積の削減にもなる。
【0042】
このように処理された交換体は、乾式及び湿式の両方の形態にてほぼ無限に貯蔵可能である。さらに、水と接触しているポリリン酸塩の供給は、水成分とのイオン交換平衡反応によって、上限にて制限される。ただし、原水との平衡点を下回ると、供給速度は早く、したがって、十分なポリリン酸塩を長期にわたって供給することが可能である。
【0043】
例えば、1つの適用例における水タンク中への供給の式は、以下の通りである:
: 弱塩基性陰イオン交換体
[HPO : 鎖長N及びNの負電荷を有するポリリン酸塩
HCO : 炭酸水素塩
【0044】
【化1】
【0045】
ここで、ポリリン酸塩は、CaCO3結晶の形成を阻止する種阻害剤として作用する。
【0046】
水フィルタカートリッジは、水タンクの吸込口として形成された相補的なタンク側接続要素に接続するためのフィルタ側接続要素を備えて有利に形成され得る。
【0047】
これにより、タンクの基部への水フィルタカートリッジの接続が可能になる。これは、例えば吸引モードでの動作のためである。
[実施例]
本発明を、添付の図面及びそれらを参照する記載によって、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】縦断面における水フィルタカートリッジを、同様に縦断面にて示された水タンク内に挿入される状態で、例として概略的に示す。
図2】水垢析出物を阻止する手段のための貯蔵部を有する、図1の水フィルタカートリッジの代替実施形態の詳細を正面図にて、例として概略的に示す。
図3図2に記載の実施形態の断面図を、例として概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[構成]
図1は、水タンク10の中に挿入されるところの水フィルタカートリッジ1を示し、水タンク10のハウジングには10.1という番号が付されている。このため、フィルタ側タンク接続要素3は、タンク側フィルタ接続要素10.2に連結される。プラグ接続によることが好ましい。
【0050】
水フィルタカートリッジ1は、ハウジング2と、水タンクに貯留された水8がフィルタカートリッジ1の中に入って再び外に出るための、流入開口部1.3及び流出開口部1.4と、を備える。この水8は、例えば下流に接続されている温飲料機11における使用に必要な処理のために、フィルタ部4を経由して案内される。この種のフィルタ部は、流入チャンバ1.1及び/又は流出チャンバ1.2の中に形成され得る。矢印8.1は、挿入準備完了状態のフィルタカートリッジ1が濾過操作において稼働中に、水タンク10から取水されるときの水の流れ方向を表す。
【0051】
本発明によれば、フィルタ部4に加えて、そしてフィルタ部4とは分けられて形成されたものとして、水フィルタカートリッジ1は、水タンクにおける析出物を阻止する少なくとも1つの手段5のために、より具体的には水タンクにおける水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段のために、貯蔵チャンバ6の形態をした貯蔵部を備え、そこには、貯蔵チャンバ6の形態をした貯蔵部を、水タンク10に貯留された水8に触れさせる接触開口部7が設けられている。
【0052】
貯蔵チャンバ6は、水フィルタカートリッジ1のハウジング2内に配置され得る。図示されたケースでは、これはハウジング2の蓋2.1の内部において実現されている。
【0053】
水タンクにおける析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5は、酸性陽イオン交換体、より具体的には弱酸性陽イオン交換体、及び/又は硬度安定剤及び/又は難溶性ポリリン酸塩、より具体的にはカルシウム系のものを含み得る。
【0054】
水タンクにおける析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5はまた、ナトリウム系の易溶性ポリリン酸塩も含み得る。
【0055】
さらに、水タンクにおける析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5は、塩基性陰イオン交換物質を含んでよく、それは対イオンとしてポリリン酸イオンを含むことが好ましい。容量を高めるために、弱塩基性陰イオン交換物質が用いられ、より具体的には、対イオンとしてポリリン酸イオンを含む弱塩基性陰イオン交換物質が用いられる。
【0056】
そして、この弱塩基性陰イオン交換物質は、ポリリン酸塩の安定剤として提供され得る。
【0057】
矢印8.1は、水タンクにおける析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5への、水タンク10に貯留された水8の流入を表す。それは、接触開口部7を通って貯蔵部に入り、手段5に流れつく。任意ではあるが、手段5を追加的に包囲するために、不織布9又はそれに類するものも存在する。
【0058】
矢印5.1は、水タンク10に貯留されて、水タンクにおける析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5によって既に処理された、水8を表す。水タンク内の他の場所に貯留されていて少なくとも1つの手段5にまだ接触していない水と比べて、少なくとも1つの手段5付近の水8における少なくとも1つの手段5からの処理物質の濃度が高いため、濃度の平衡化が誘発される。それにより、貯留時間の経過と共に水タンクに貯留された残りの水もまた処理を施されることとなる。よって、本発明によれば、そのような水と接触する表面における析出物、特に水垢析出物が回避される結果となる。
【0059】
図2は、フィルタ側タンク接続要素3と、析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5のための、貯蔵チャンバ6の形態をした貯蔵部と、を有する、図1の水フィルタカートリッジ1の代替実施形態を表すものを正面図にて、例として概略的に示す。この場合、析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5のための貯蔵部6は、ハウジング2の内部及び/又は表面に配置され得る。好ましくは粒状である手段5を視覚化するために、小さな円が図示されている。細粒5は、例えば図1に記載のバージョンにおける蓋2.1に対応する、カバー手段2.1によって貯蔵部6に保持されてもよい。
【0060】
ここでも同様に、接触開口部7は、手段5への水のアクセスを可能にし得る。接触開口部7が矩形で表されているのは単に一例であり、このような視覚化において識別しやすくするためである。この開口部は、極めて容易に他の輪郭及び/又は断面も有し得る。本実施形態は、析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5のための貯蔵部6が、水の入口及び/又は水の出口の比較的近くに配置されているため、例えば、高さの低い水タンクにおいて有利になり得る。特に、水フィルタカートリッジの稼働位置に対して低く配置されることに基づいて、水垢防止剤が、水フィルタカートリッジを取り囲む水と接触する時間を最大限にすることが実現可能である。
【0061】
図3は、析出物を阻止する、より具体的には水垢析出物を阻止する少なくとも1つの手段5のための貯蔵部6が、ハウジング2における反対側に配置されているバージョンの、図2に示されたバージョンの水フィルタカートリッジ1の断面図を示す。水が少なくとも1つの手段5にアクセスするための接触開口部は、図を簡略化するために図示しないが、存在し得る。それ以外の参照符合は、図1に関連して述べた水フィルタカートリッジ1の構成要素に対応する。
[参照符合一覧]
1 水フィルタカートリッジ
1.1 流入チャンバ
1.2 流出チャンバ
1.3 流入開口部
1.4 流出開口部
2 ハウジング
2.1 蓋
3 フィルタ側タンク接続要素
4 フィルタ部
5 水垢析出物を阻止する手段
5.1 水垢析出物を阻止する手段により処理された水
6 貯蔵部
7 接触開口部
8 水
8.1 矢印
9 不織布又はそれに類するもの
10 水タンク
10.1 ハウジング
10.2 タンク側フィルタ接続要素
11 家庭用機器、特に温飲料機
図1
図2
図3