IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 住友電工焼結合金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図1
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図2
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図3
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図4
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図5
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図6
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図7
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図8
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図9
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図10
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図11
  • 特許-コア、ステータ、及び回転電機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】コア、ステータ、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20231010BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/02 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020559773
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040974
(87)【国際公開番号】W WO2020116038
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2018228584
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 友之
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-035599(JP,A)
【文献】特開2008-125278(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221512(WO,A1)
【文献】特開2017-229191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
前記コアは環状であり、前記コアを周方向に分割した複数のコア片を備え、
前記コア片は、
圧粉磁心で形成されており、
ヨーク部と、
前記ヨーク部と一体に成形され、前記ヨーク部から軸方向に突出するティース部と、を有し、
前記ヨーク部は、
隣接する一方のコア片のヨーク部に連結される一方の側面に設けられる複数の凸部と、
隣接する他方のコア片のヨーク部に連結される他方の側面に設けられ、前記凸部に対応する複数の凹部と、を含み、
前記凸部間の間隔が、前記ヨーク部の外周と内周との間の直線距離で定められる前記ヨーク部の側面の長さの80%以下である、
コア。
【請求項2】
前記ヨーク部を前記ティース部が突出する側から平面視したとき、前記ティース部と隣接する他方のコア片のティース部との互いに対向する側面間の中間線を基準線とし、前記凹部から前記ティース部の根元までの距離が、前記基準線から前記ティース部の根元までの距離に対して20%以上である請求項1に記載のコア。
【請求項3】
前記凸部の大きさが1mm以上10mm以下である請求項1又は請求項2に記載のコア。
【請求項4】
前記ヨーク部を前記ティース部が突出する側から平面視したときの前記凸部と前記凹部における最小曲率半径が1.0mm以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコア。
【請求項5】
隣り合う前記凸部は、前記凸部間の中心線に対して対称形状である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコア。
【請求項6】
前記ヨーク部の厚みが1.0mm以上10mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコア。
【請求項7】
記圧粉磁心は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子が、純鉄及び鉄基合金の少なくとも一方からなる鉄基粒子であり、
前記鉄基合金は、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Fe-Cr-Al系合金及びFe-Cr-Si系合金からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコア。
【請求項8】
前記絶縁被覆がリン酸塩被覆を含む請求項7に記載のコア。
【請求項9】
前記圧粉磁心の相対密度が90%以上である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコア。
【請求項10】
複数の前記コア片の前記ヨーク部の外周面に嵌合される環状部材を備え、
前記環状部材は、その内径方向の収縮力により複数の前記コア片に対して固定されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコア。
【請求項11】
隣接する前記コア片の前記ヨーク部の側面同士が接着されている、又は、
隣接する前記コア片の前記ヨーク部の前記ティース部が突出する側とは反対側に配置される板状部材を備え、前記ヨーク部の前記反対側の面が前記板状部材に接着されている請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のコア。
【請求項12】
複数の前記コア片の前記ティース部のうち、最も高い前記ティース部の端面の位置と最も低い前記ティース部の端面の位置との差が0.15mm以下である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のコア。
【請求項13】
複数の前記コア片が環状に組み合わされた状態において、前記ヨーク部の外周面の真円度が0.1mm以下である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のコア。
【請求項14】
前記ティース部の端面の平面度が0.2mm以下である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のコア。
【請求項15】
アキシャルギャップ型回転電機のステータであって、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のコアと、
前記コアを構成する前記コア片の前記各ティース部に配置されるコイルと、を備える、
ステータ。
【請求項16】
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが請求項15に記載のステータである、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア、ステータ、及び回転電機に関する。
本出願は、2018年12月5日付の日本国出願の特願2018-228584号に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロータとステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機を開示している。この種の回転電機に用いられるステータは、円環状のヨーク部と、ヨーク部から軸方向に突出する複数のティース部とを有するコアと、各ティースに配置されるコイルとを備える。特許文献1には、コアを周方向に分割して複数のコア片とし、コア片をヨーク部とティース部とが一体成形された圧粉磁心で形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-229191号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
前記コアは環状であり、前記コアを周方向に分割した複数のコア片を備え、
前記コア片は、
ヨーク部と、
前記ヨーク部と一体に成形され、前記ヨーク部から軸方向に突出するティース部と、を有し、
前記ヨーク部は、
隣接する一方のコア片のヨーク部に連結される一方の側面に設けられる複数の凸部と、
隣接する他方のコア片のヨーク部に連結される他方の側面に設けられ、前記凸部に対応する複数の凹部と、を含み、
前記凸部間の間隔が、前記ヨーク部の外周と内周との間の直線距離で定められる前記ヨーク部の側面の長さの80%以下である。
【0005】
本開示のステータは、
アキシャルギャップ型回転電機のステータであって、
本開示のコアと、
前記コアを構成する前記コア片の前記各ティース部に配置されるコイルと、を備える。
【0006】
本開示の回転電機は、
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが本開示のステータである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るコアの概略斜視図である。
図2】実施形態に係るコアの概略上面図である。
図3図2のIII-III線に沿うコアの概略断面図である。
図4】コア片の概略斜視図である。
図5】コア片の概略上面図である。
図6】コア片を成形する金型の一例を示す概略断面図である。
図7】ダイの概略上面図である。
図8】ダイの要部拡大上面図である。
図9】板状部材を備えるコアの概略側面図である。
図10】環状部材を備えるコアの概略上面図である。
図11】実施形態に係るステータの概略斜視図である。
図12】実施形態に係る回転電機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
アキシャルギャップ型回転電機の生産性を高めるため、コアの組立性を向上することが望まれる。
【0009】
複数のコア片でコアを構成する場合、複数のコア片を環状に組み合わせ、隣接するコア片のヨーク部の側面同士を突き合わせて連結する必要がある。特許文献1のように、各コア片のヨーク部の側面が径方向に沿って直線状に形成されていると、隣接するコア片のヨーク部同士を位置決めすることが難しい。例えば、複数のコア片を環状に組み合わせたときに隣接するコア片が径方向にずれることがある。
【0010】
本開示は、組立性に優れるコアを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記コアを備えるステータを提供することを目的の一つとする。更に、本開示は、上記ステータを備える回転電機を提供することを目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示のコアは組立性に優れる。本開示のステータはコアの組立性に優れる。本開示の回転電機は生産性が高い。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本発明者らは、コア片のヨーク部の一方の側面に凸部を設けると共に他方の側面に凸部に対応する凹部を設けることで、凸部と凹部との嵌め合いにより、隣接するコア片のヨーク部同士を位置決めすることを考えた。その過程で、本発明者らが鋭意検討したところ、ヨーク部の側面に凸部を設ける場合、圧粉磁心からなるコア片を金型で成形する際、ヨーク部の周面を成形するダイにおいて、ヨーク部の側面を成形する部分に作用する応力が大きくなることが分かった。ダイに過大な応力が作用すると、ダイが破損する虞がある。したがって、ダイへの負荷を極力軽減できるように、ヨーク部の側面に設ける凸部を設計することが重要である。本発明者らは、鋭意検討の結果、ヨーク部の側面に複数の凸部を設け、且つ、凸部間の間隔をヨーク部側面の長さの80%以下とすることによって、後述するように、ダイに作用する応力を低減できることを見出した。
【0013】
本開示は、以上の知見に基づいてなされたものである。最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施形態に係るコアは、
アキシャルギャップ型回転電機に用いられるコアであって、
前記コアは環状であり、前記コアを周方向に分割した複数のコア片を備え、
前記コア片は、
ヨーク部と、
前記ヨーク部と一体に成形され、前記ヨーク部から軸方向に突出するティース部と、を有し、
前記ヨーク部は、
隣接する一方のコア片のヨーク部に連結される一方の側面に設けられる複数の凸部と、
隣接する他方のコア片のヨーク部に連結される他方の側面に設けられ、前記凸部に対応する複数の凹部と、を含み、
前記凸部間の間隔が、前記ヨーク部の外周と内周との間の直線距離で定められる前記ヨーク部の側面の長さの80%以下である。
【0015】
本開示のコアは、隣接するコア片の位置合わせが容易であり、組立性に優れる。その理由は、コア片のヨーク部の一方の側面に複数の凸部と、他方の側面に凸部に対応する複数の凹部とを有することで、凸部と凹部との嵌め合いにより、隣接するコア片のヨーク部同士を位置決めすることができるからである。そのため、本開示のコアによれば、複数のコア片を環状に組み合わせたとき、隣接するコア片が径方向にずれることを抑制できる。
【0016】
コア片が圧粉磁心である場合、圧粉磁心からなるコア片は、複数の軟磁性粒子の集合体である軟磁性粉末を圧縮成形することによって得られる。コア片を金型で成形する際、ヨーク部側面の凸部間の間隔がヨーク部側面の長さの80%以下であることで、ヨーク部の側面を成形するダイの側面に作用する応力を低減できる。よって、ダイへの負荷を軽減する効果も期待でき、ダイの破損を抑制できる。凸部間の間隔の意義及びダイに作用する応力を低減できる理由については後述する。
【0017】
(2)上記コアの一形態として、
前記ヨーク部を前記ティース部が突出する側から平面視したとき、前記ティース部と隣接する他方のコア片のティース部との互いに対向する側面間の中間線を基準線とし、前記凹部から前記ティース部の根元までの距離が、前記基準線から前記ティース部の根元までの距離に対して20%以上であることが挙げられる。
【0018】
上記形態は、基準線からティース部の根元までの距離に対する凹部からティース部の根元までの距離が20%以上であることで、コア片において、ヨーク部のティースが突出する側の面における凹部とティース部の根元間の間隔をある程度確保する。これにより、コア片が圧粉磁心である場合、コア片を金型で成形する際、ヨーク部のティースが突出する側の面を成形するパンチの厚さが減少することによるパンチの強度低下を抑制できる。
【0019】
(3)上記コアの一形態として、
前記凸部の大きさが1mm以上10mm以下であることが挙げられる。
【0020】
上記形態は、凸部の大きさが1mm以上であることで、隣接するコア片のヨーク部同士の位置決めが容易である。コア片が圧粉磁心である場合、凸部の大きさが10mm以下であることで、成形し易い。凸部の大きさの意義については後述する。
【0021】
(4)上記コアの一形態として、
前記ヨーク部を前記ティース部が突出する側から平面視したときの前記凸部と前記凹部における最小曲率半径が1.0mm以上であることが挙げられる。
【0022】
上記形態は、コア片が圧粉磁心である場合、ダイの破損を抑制できる。その理由は、凸部及び凹部の最小曲率半径が1.0mm以上であることで、コア片を金型で成形する際、ヨーク部側面を成形するダイへの応力集中を緩和できるからである。
【0023】
(5)上記コアの一形態として、
隣り合う前記凸部は、前記凸部間の中心線に対して対称形状であることが挙げられる。
【0024】
上記形態は、コア片が圧粉磁心である場合、ダイの破損をより効果的に抑制できる。その理由は、隣り合う凸部が対称形状であることにより、コア片を金型で成形する際、ダイに作用する応力を効果的に低減できるからである。
【0025】
(6)上記コアの一形態として、
前記ヨーク部の厚みが1.0mm以上10mm以下であることが挙げられる。
【0026】
上記コアにおいて、複数のコア片が環状に組み合わされた状態でヨーク部の外周面に環状部材を嵌合させて固定することにより、複数のコア片を締結する場合がある。ヨーク部の厚みが1.0mm以上であれば、環状部材を固定し易く、締結力を確保し易い。ヨーク部が厚過ぎると、ダイへの負荷が増大するため、ヨーク部の厚みは10mm以下とする。
【0027】
(7)上記コアの一形態として、
前記コア片は圧粉磁心で形成されており、
前記圧粉磁心は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成され、
前記軟磁性粒子が、純鉄及び鉄基合金の少なくとも一方からなる鉄基粒子であり、
前記鉄基合金は、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Fe-Cr-Al系合金及びFe-Cr-Si系合金からなる群より選択される少なくとも一種であることが挙げられる。
【0028】
純鉄又は上記鉄基合金は比較的軟質である。そのため、圧粉磁心を構成する軟磁性粒子が純鉄又は上記鉄基合金からなる鉄基粒子であることで、圧粉磁心の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。よって、上記形態は、高密度で寸法精度の高い圧粉磁心が得られる。圧粉磁心を高密度化することで、コア片の機械的強度や磁気的特性を改善できる。また、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有することで、軟磁性粒子間の電気的絶縁性を高めることができる。そのため、渦電流損に起因するコア片の鉄損を低減できる。
【0029】
(8)上記(7)に記載のコアの一形態として、
前記絶縁被覆がリン酸塩被覆を含むことが挙げられる。
【0030】
リン酸塩被覆は鉄基粒子との密着性が高く、変形性にも優れている。そのため、絶縁被膜がリン酸塩被覆を含むことで、圧粉磁心の成形時に鉄基粒子の変形に追従し易い。よって、上記形態は、絶縁被覆が損傷し難く、コア片の鉄損を低減できる。
【0031】
(9)上記(7)又は(8)に記載のコアの一形態として、
前記圧粉磁心の相対密度が90%以上であることが挙げられる。
【0032】
圧粉磁心の相対密度が90%以上であることで、圧粉磁心の密度が高い。上記形態は、圧粉磁心の高密度化により、コア片の機械的強度や磁気的特性を改善できる。
【0033】
(10)上記コアの一形態として、
複数の前記コア片の前記ヨーク部の外周面に嵌合される環状部材を備え、
前記環状部材は、その内径方向の収縮力により複数の前記コア片に対して固定されていることが挙げられる。
【0034】
上記コアにおいて、ヨーク部の外周面に嵌合される環状部材を備えることで、環状に組み合わされた複数のコア片を一体化することができる。また、環状部材の内径方向の収縮力によりヨーク部の外周が締め付けられ、複数のコア片を強固に締結することができる。
【0035】
(11)上記コアの一形態として、
隣接する前記コア片の前記ヨーク部の側面同士が接着されている、又は、
隣接する前記コア片の前記ヨーク部の前記ティース部が突出する側とは反対側に配置される板状部材を備え、前記ヨーク部の前記反対側の面が前記板状部材に接着されていることが挙げられる。
【0036】
隣接するコア片のヨーク部の側面同士が接着されている、又は、ヨーク部のティース部が突出する側とは反対側の面が板状部材に接着されていることで、複数のコア片が環状に組み合わされた状態で一体化できる。
【0037】
(12)上記コアの一形態として、
複数の前記コア片の前記ティース部のうち、最も高い前記ティース部の端面の位置と最も低い前記ティース部の端面の位置との差が0.15mm以下であることが挙げられる。
【0038】
ヨーク部のティース部が突出する側と反対側の面を平面上に載置した状態で、最も高いティース部の端面の位置と最も低いティース部の端面の位置との差が0.15mm以下であることで、ティース部の各端面の高さのばらつきが小さい。上記コアを用いて回転電機を構成した場合、ティース部の各端面はロータの磁石に対向するように配置される。ティース部の各端面の高さのばらつきが小さいことで、回転電機において、ティース部の各端面とロータとの間隔のばらつきを小さくできる。これにより、コギングを低減できるなど、回転電機の特性の低下を抑制できる。
【0039】
(13)上記コアの一形態として、
複数の前記コア片が環状に組み合わされた状態において、前記ヨーク部の外周面の真円度が0.1mm以下であることが挙げられる。
【0040】
ヨーク部の外周面の真円度が0.1mm以下であることで、コアの寸法精度が高い。
【0041】
(14)上記コアの一形態として、
前記ティース部の端面の平面度が0.2mm以下であることが挙げられる。
【0042】
ティース部の端面の平面度が0.2mm以下であることで、回転電機において、ティース部の端面をロータに近接して対面させることが可能である。これにより、回転電機の特性の低下を抑制できる。
【0043】
(15)本開示の実施形態に係るステータは、
アキシャルギャップ型回転電機のステータであって、
上記(1)から(14)のいずれか1つに記載のコアと、
前記コアを構成する前記コア片の前記各ティース部に配置されるコイルと、を備える。
【0044】
本開示のステータはコアの組立性に優れる。これは、上記コアは、隣接するコア片の位置合わせが容易であり、組立性に優れるからである。
【0045】
(16)本開示の実施形態に係る回転電機は、
ロータとステータとを備え、前記ロータと前記ステータとが軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機であって、
前記ステータが上記(15)に記載のステータである。
【0046】
本開示の回転電機は生産性が高い。これは、上記ステータを備えることで、コアの組立性に優れるからである。
【0047】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係るコア、ステータ、及び回転電機の具体例を説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0048】
<コア>
図1図10を参照して、実施形態に係るコア1及びコア1を構成するコア片10について説明する。コア1は、アキシャルギャップ型回転電機に用いられる。より具体的には、コア1は、ステータのコアに利用できる。コア1は、図1図2に示すように、環状であり、コア1を周方向に分割した複数のコア片10を備える。つまり、コア1は、複数のコア片10が環状に組み合わされて構成される。この例ではコア片10の個数が6個である。コア片10は、ヨーク部11と、ヨーク部11から軸方向に突出するティース部12とを有する(図4図5も参照)。以下の説明では、コア1及びコア片10について説明するときは、ティース部12が突出する側を上、その反対側を下とする。
【0049】
本例では、図1図2に示すように、コア1が円環状である。具体的には、コア1において、ヨーク部11が円環板状であり、複数のティース部12が周方向に等間隔に設けられている。この例ではティース部12の個数が12個である。この例では、コア1が6等分され、6個のコア片10、具体的にはコア片10a~10fを備える。各コア片10a~10fの形状は同一形状である。コア1は、6個のコア片10a~10fを円環状に組み合わせ、隣接するコア片10のヨーク部11の側面20、30(図4図5参照)同士を突き合わせて連結することにより、構成されている。コア1の分割数、換言すればコア片10の個数は適宜選択できる。また、コア1におけるティース部12の個数も適宜設定することが可能である。
【0050】
(コア片)
コア片10は、図4図5に示すように、ヨーク部11とティース部12とを有する。コア片10は、圧粉磁心で形成されている。ヨーク部11とティース部12とは一体に成形されている。
【0051】
(ヨーク部)
ヨーク部11は、コア片10を構成する扇板状の部分である。ヨーク部11は、扇形状の平面を有し、一方の平面からティース部12が突出している。即ち、一方の平面とは、上面のことである。ヨーク部11は、円弧状の内周面及び外周面と、側面20、30とを有する。内周面と外周面とは同心の円弧状に形成されている。
【0052】
(ティース部)
ティース部12は、ヨーク部11と一体に成形され、ヨーク部11の一方の平面、即ち上面から軸方向に突出する部分である。軸方向とは、コア1の周方向及び径方向に直交する方向を指し、具体的には、ヨーク部11の上面に対して垂直方向のことである。ティース部12は、柱状体が挙げられ、柱状体としては、例えば、角柱体、円柱体、楕円柱体などが挙げられる。角柱体には、三角柱体や台形柱体などが挙げられる。この例では、ティース部12が三角柱体であり、ティース部12の端面41の形状が三角形状、より具体的には二等辺三角形状である。ティース部12は台形柱体であってもよく、端面41の形状が台形状などであってもよい。なお、「三角形状」及び「台形状」とは、幾何学的に厳密な意味での三角形及び台形でなくてもよく、角部に丸みを有するものなども含めて、実質的に三角形及び台形とみなされる範囲を含む。
【0053】
コア片10におけるティース部12の個数は、1個でもよいし、複数でもよい。この例では、2個のティース部12(12a、12b)を有する。ヨーク部11の側面20側に位置するティース部12を12a、側面30側に位置するティース部12を12bとする。
【0054】
コア1の特徴の1つは、図4図5に示すように、コア片10のヨーク部11の一方の側面20に複数の凸部21、22と、他方の側面30に凸部21、22に対応する複数の凹部31、32とが設けられている点にある。コア1のもう1つの特徴は、凸部21、22間の間隔がヨーク部11の側面20の長さの80%以下である点にある。
【0055】
〈凸部・凹部〉
ヨーク部11は、一方の側面20に設けられる複数の凸部21、22と、他方の側面30に設けられる複数の凹部31、32とを含む。側面20の凸部21、22と側面30の凹部31、32とは互いに対応した形状に形成されている。凸部21、22間には凹部23が存在し、凹部31、32間には凸部33が存在する。この例では、凸部21、22と凹部31、32とがそれぞれ同じ円弧状であり、大きさも同じである。ここで、図5に示すように、コア片10aにおけるヨーク部11の一方の側面20は、隣接する一方のコア片10bにおけるヨーク部11の他方の側面30に連結される。コア片10aにおけるヨーク部11の他方の側面30は、隣接する他方のコア片10fにおけるヨーク部11の一方の側面20に連結される。したがって、コア片10aにおけるヨーク部11の側面20に設けられた凸部21、22と、隣接するコア片10bにおけるヨーク部11の側面30に設けられた凹部31、32とが互いに嵌り合う。コア片10aにおけるヨーク部11の側面30に設けられた凹部31、32と、隣接するコア片10fにおけるヨーク部11の側面20に設けられた凸部21、22とが互いに嵌り合う。凸部21、22と凹部31、32との嵌め合いにより、コア片10aと隣接するコア片10b、10fのヨーク部11同士を位置決めすることができる。そのため、複数のコア片10を環状に組み合わせたとき、隣接するコア片10が径方向にずれることを抑制できる。
【0056】
本例では、凸部21、22及び凹部31、32の個数がそれぞれ2個である。凸部21、22及び凹部31、32の個数は、適宜変更可能であり、3個以上であってもよい。また、凸部21、22及び凹部31、32の形状は、適宜変更可能であり、例えば矩形状や三角形状などであってもよい。本例の場合、各凸部21、22の形状が同一形状であるが、各凸部21、22の形状は異なっていてもよい。
【0057】
〈凸部間の間隔〉
凸部21、22間の間隔はヨーク部11の側面20の長さの80%以下である。凸部21、22間の間隔とは、次のように定義される。本例の場合、図5に示すように、コア片10aのティース部12aと隣接する一方のコア片10bのティース部12bとの間の中間点を通る中間線Lをとる。具体的には、コア片10aのティース部12aとコア片10bのティース部12bの互いに対向する側面間の中間点を通る線を中間線Lとする。中間線Lは環状のコア1の径方向に沿った直線である。次に、中間線Lに平行で、凸部21、22の頂点を通る直線Lを引く。また、中間線Lに平行で、隣り合う凸部21、22間に位置する凹部23の頂点を通る直線Lを引く。隣り合う凸部21、22の互いに対向する辺のうち、直線Lと直線Lとの間の中心線Laと交差する2点をそれぞれ点a、bとする。この2点ab間の距離を凸部21、22間の間隔とする。この例では、中間線Lと中心線Laとが一致する。ヨーク部11の側面20の長さは、ヨーク部11の外周と内周との間の直線距離とする。換言すれば、ヨーク部11の側面20の長さとは、ヨーク部11の外周と内周との間の半径方向の長さである。以下、ヨーク部11の側面20の長さのことを、単に「ヨーク部側面長さ」という場合がある。
【0058】
図5中、ab間の距離で表される凸部21、22間の間隔がヨーク部側面長さの80%以下である場合、後述するように、コア片10を金型5(図6参照)で成形する際、ヨーク部11の側面20を成形するダイ50の側面52(図7図8参照)に作用する応力を低減できる。この理由については、図8を参照して後述する。
【0059】
ヨーク部側面長さに対する凸部21、22間の間隔の比率は、更に70%以下、50%以下であることが挙げられる。凸部21、22間の間隔は、例えば40mm以下、更に30mm以下であることが挙げられる。凸部21、22間の間隔が小さ過ぎると、成形が困難になるため、凸部21、22間の間隔の下限は例えば1.0mm程度である。
【0060】
〈隣り合う凸部が対称形状〉
本例では、隣り合う凸部21、22が、凸部21、22間の中心線に対して対称形状である。ここで、凸部21、22間の中心線は、図5に示すように、中心線Laに直交し、線分abの中点を通る直線Lcとする。凸部21、22が対称形状である場合、ダイ50の側面52(図7図8参照)に作用する応力を効果的に低減できる。
【0061】
<凹部からティース部の根元までの距離>
本例では、凹部31、32からティース部12(12b)の根元までの距離が、図5中、Lで表される基準線からティース部12(12b)の根元までの距離に対して20%以上である。基準線は、ヨーク部11をティース部12が突出する側である上側から平面視したとき、隣接するコア片10のティース部12間の中間線とする。本例の場合、図5に示すように、コア片10aのティース部12bと隣接する他方のコア片10fのティース部12aとの間の中間点を通る中間線Lを基準線とする。具体的には、コア片10aのティース部12bとコア片10fのティース部12aとの互いに対向する側面間の中間点を通る線を中間線Lとする。中間線Lは環状のコア1の径方向に沿った直線である。次に、中間線Lに直交し、凹部31、32の各頂点を通る直線Lを引く。各直線L上の凹部31、32の頂点をl、各直線Lとティース部12bの周縁との交点をmとする。この2点lm間の距離を凹部31、32からティース部12bの根元までの距離とする。また、各直線Lと中間線Lとの交点をnとする。2点nm間の距離を基準線からティース部12bの根元までの距離とする。ここで、直線Lを引くとき、凹部31、32の頂点は、凹部31、32のうち、中間線Lから最も離れた点とする。換言すれば、凹部31、32の頂点は、凹部31、32のうち、ティース部12bの根元に最も近い点とする。
【0062】
上述した中間線Lを基準線とし、基準線からティース部12(12b)の根元までの距離に対する凹部31、32からティース部12(12b)の根元までの距離の比率が20%以上である。図5中、基準線からティース部12bの根元までの距離は、nm間の距離で表される。また、凹部31、32からティース部12bの根元までの距離は、lm間の距離で表される。上記距離の比率(%)は、[(lm間の距離/nm間の距離)×100]として求めることができる。上記距離の比率が20%以上であることで、コア片10において、ヨーク部11のティース部12が突出する側の面、即ち上面における凹部31、32とティース部12(12b)の根元間の間隔をある程度確保できる。この場合、コア片10を金型5(図6参照)で成形する際、ヨーク部11の上面を成形する第1下パンチ71の厚さが減少することによる第1下パンチ71の強度低下を抑制できる。
【0063】
基準線からティース部12(12b)の根元までの距離に対する凹部31、32からティース部12(12b)の根元までの距離の比率は、更に30%以上であることが挙げられる。凹部31、32からティース部12(12b)の根元までの距離の比率の上限は特に設けないが、例えば90%である。また、凹部31、32からティース部12(12b)の根元までの距離は、例えば1mm以上9mm以下、更に2mm以上8mm以下であることが挙げられる。
【0064】
〈凸部の大きさ〉
本例では、凸部21、22の大きさが1mm以上10mm以下である。凸部21、22の大きさとは、次のように定義される。本例の場合、図5に示すように、凸部21、22の頂点を通る直線Lと、隣り合う凸部21、22間に位置する凹部23の頂点を通る直線Lとの間の距離を凸部21、22の大きさとする。
【0065】
凸部21、22の大きさが1mm以上である場合、隣接するコア片10のヨーク部11同士の位置決めが容易である。凸部21、22の大きさが10mm以下であることで、成形し易い。凸部21、22の大きさは、更に2mm以上8mm以下であることが挙げられる。
【0066】
〈凸部及び凹部の最小曲率半径〉
本例では、ヨーク部11をティース部12が突出する側である上側から平面視したときの凸部21、22と凹部31、32における最小曲率半径が1.0mm以上である。凸部21、22及び凹部31、32の形状を曲率半径の小さい角部を有する形状とした場合、これに応じて、ヨーク部11の側面20、30を成形するダイ50の側面52(図7参照)に角部を形成することになる。曲率半径の小さい角部には、応力が集中し易い。凸部21、22及び凹部31、32の最小曲率半径が1.0mm以上である場合、コア片10を金型5(図6参照)で成形する際にダイ50への応力集中を緩和できる。
【0067】
凸部21、22及び凹部31、32の最小曲率半径は、更に2.0mm以上であることが挙げられる。凸部21、22及び凹部31、32の最小曲率半径の上限は特に設けないが、例えば20mmである。
【0068】
〈ヨーク部の厚み〉
ヨーク部11の厚みは、例えば1.0mm以上10mm以下、更に2mm以上8mm以下である。ヨーク部11の厚みとは、コア1の軸方向に沿ったヨーク部11の寸法のことをいう。図3中、ヨーク部11の厚みをTyで示す。後述するように、複数のコア片10が環状に組み合わされたコア1の状態で、ヨーク部11の外周面に環状部材90(図10参照)を嵌合させて固定する場合がある。ヨーク部11の厚みが1.0mm以上であれば、環状部材90を固定し易い。ヨーク部11が厚過ぎると、コア片10を金型5(図6参照)で成形する際にダイ50への負荷が増大する。そのため、ヨーク部11の厚みは10mm以下とすることが挙げられる。
【0069】
〈ヨーク部の真円度〉
複数のコア片10が環状に組み合わされたコア1の状態において、ヨーク部11の外周面の真円度は0.1mm以下であることが好ましい。ヨーク部11の外周面の真円度が0.1mm以下であることで、コア1の寸法精度が高い。そのため、ヨーク部11の外周面に環状部材90(図10参照)を嵌合させて固定する場合、ヨーク部11の外周面に対して環状部材を固定し易い。また、コア1において、ヨーク部11の外周面の真円度が0.1mm以下であれば、コア1を構成する各コア片10のヨーク部11の外周面が周方向に揃っている。つまり、各コア片10の径方向の位置ずれが小さく、各コア片10のティース部12の位置が周方向に揃っている。後述するように、コア1を用いて回転電機300(図12参照)を構成した場合、ティース部12の各端面41はロータ200の磁石220に対向するように配置される。各コア片10の径方向の位置ずれが小さいことで、回転電機300において、各々のティース部12の端面41とロータ200の磁石220との対向面積が均一になる。これにより、コギングを低減できるなど、回転電機300の特性の低下を抑制できる。ヨーク部11の外周面の真円度を測定するときは、隣接するコア片10のヨーク部11の側面20、30(図4図5参照)同士の連結箇所に形成される凹を含まないように、ポイント測定で評価することが挙げられる。
【0070】
〈ティース部の各端面の高さ〉
コア1において、複数のコア片10のティース部12のうち、最も高いティース部12の端面41の位置と最も低いティース部12の端面41の位置との差は0.15mm以下であることが好ましい。ティース部12の端面41の位置とは、図3に示すように、ヨーク部11のティース部12が突出する側とは反対側の面、即ち下面を平面上に載置した状態で、その面から端面41までの軸方向の高さ位置のことをいう。図3中、ティース部12の端面41の高さ位置をHtで示す。最も高いティース部12の端面41の位置と最も低いティース部12の端面41の位置との差が0.15mm以下であることで、ティース部12の各端面41の高さのばらつきが小さい。後述するように、コア1を用いて回転電機300(図12参照)を構成した場合、ティース部12の各端面41はロータ200の磁石220に対向するように配置される。ティース部12の各端面41の高さのばらつきが小さいことで、回転電機300において、ティース部12の各端面41とロータ200との間隔のばらつきを小さくできる。これにより、コギングを低減できるなど、回転電機300の特性の低下を抑制できる。
【0071】
〈ティース部の端面の平面度〉
ティース部12の端面41の平面度は0.2mm以下であることが好ましい。この場合、回転電機300(図12参照)において、ティース部12の端面41をロータ200に近接して対面させることが可能である。これにより、回転電機300の特性の低下を抑制できる。
【0072】
本例では、隣接するコア片10のヨーク部11の側面同士が接着されていることで、環状に組み合わされた複数のコア片10が一体化されている。例えば、図9に例示するように、隣接するコア片10のヨーク部11のティース部12が突出する側とは反対側、即ち下側に配置される板状部材80を備える場合、ヨーク部11の反対側の面である下面が板状部材80に接着されていてもよい。この場合、複数のコア片10が環状に組み合わされた状態で板状部材80に固定され、一体化される。
【0073】
コア1は、図10に例示するように、環状に組み合わされた複数のコア片10のヨーク部11の外周面に嵌合される環状部材90を備えることができる。環状部材90は、その内径方向の収縮力により、コア1を構成する複数のコア片10に対して固定されている。この例では、ヨーク部11の外周面に環状部材90が焼き嵌めされている。環状部材90は、焼き嵌め前の常温時の内径がコア1のヨーク部11の外径よりも小さく、焼き嵌め時の加熱により内径がコア1のヨーク部11の外径よりも大きくなる材料と寸法に形成されている。図2中、ヨーク部11の外径をDoで示す。なお、図2中、Diはヨーク部11の内径を示す。環状部材90と環状に組み合わされた複数のコア片10との焼き嵌めの手順は次の通りである。環状部材90を所定の温度に加熱して膨張させることで、その内径をコア1のヨーク部11の外径よりも大きくする。コア1のヨーク部11の外周面に、加熱して内径を広げた環状部材90を嵌め合わせる。環状部材90を冷却して収縮させることで、環状部材90でコア1の外周を締め付ける。
【0074】
環状部材90を備える場合、複数のコア片10を一体化することができる。また、環状部材90の内径方向の収縮力によりヨーク部11の外周が締め付けられ、複数のコア片10を強固に締結することができる。上述した板状部材80と環状部材90のいずれか一方を用いてもよいし、両方を用いてもよい。
【0075】
〈圧粉磁心〉
コア片10は圧粉磁心で形成されている。圧粉磁心は、軟磁性粉末を圧縮成形したものである。軟磁性粉末は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する複数の被覆軟磁性粒子の集合体である。つまり、圧粉磁心は、複数の被覆軟磁性粒子の集合体で構成されている。軟磁性粒子は、純鉄及び鉄基合金の少なくとも一方からなる鉄基粒子であることが好ましい。純鉄とは、純度99質量%以上のものをいう。鉄基合金は、Fe(鉄)-Si(シリコン)系合金、Fe(鉄)-Al(アルミニウム)系合金、Fe(鉄)-Cr(クロム)-Al(アルミニウム)系合金及びFe(鉄)-Cr(クロム)-Si(シリコン)系合金からなる群より選択される少なくとも一種であることが挙げられる。圧粉磁心を構成する軟磁性粒子は、純鉄からなる粒子のみであってもよいし、鉄基合金からなる粒子のみであってもよいし、純鉄からなる粒子と鉄基合金からなる粒子との混合粒子であってもよい。絶縁被覆としては、例えばリン酸塩被覆、シリカ被覆などが挙げられる。
【0076】
純鉄又は上記鉄基合金は比較的軟質である。そのため、軟磁性粒子が純鉄又は上記鉄基合金からなる鉄基粒子であることで、圧粉磁心の成形時に軟磁性粒子が変形し易い。よって、高密度で寸法精度の高い圧粉磁心が得られる。圧粉磁心を高密度化することで、コア片10の機械的強度や磁気的特性を改善できる。また、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有することで、軟磁性粒子間の電気的絶縁性を高めることができる。そのため、渦電流損に起因するコア片10の鉄損を低減できる。
【0077】
また、絶縁被覆がリン酸塩被覆を含むことが好ましい。リン酸塩被覆は鉄基粒子との密着性が高く、変形性にも優れている。そのため、絶縁被膜がリン酸塩被覆を含むことで、圧粉磁心の成形時に鉄基粒子の変形に追従し易い。よって、絶縁被覆が損傷し難く、コア片10の鉄損を低減できる。
【0078】
圧粉磁心の相対密度は90%以上であることが好ましい。圧粉磁心の高密度化により、コア片10の機械的強度や磁気的特性を改善できる。より好ましい相対密度は93%以上である。相対密度とは、圧粉磁心の真密度に対する実際の密度の比率(%)のことをいう。真密度とは、内部に空隙が含まれていないとしたときの理論密度のことである。圧粉磁心の真密度は、使用した軟磁性粉末の真密度から求めることもできる。圧粉磁心の相対密度は、[(圧粉磁心の成形密度/圧粉磁心の真密度)×100]として求める。圧粉磁心の成形密度は、圧粉磁心を油中に浸漬して圧粉磁心に油を含浸させ、[含油密度×(含油前の圧粉磁心の質量/含油後の圧粉磁心の質量)]として求めることができる。含油密度は、含油後の圧粉磁心の質量を体積で除した値である。圧粉磁心の体積は、代表的には液体置換法によって測定することができる。
【0079】
圧粉磁心からなるコア片10は、例えば図6に例示するような金型5で成形することができる。金型5は、型孔51を有するダイ50と、ダイ50の型孔51に嵌合される上パンチ60及び下パンチ70とを備える。ダイ50はヨーク部11の周面を成形する。上パンチ60はヨーク部11の下面であるティース部12が突出する側とは反対側の面を成形する。下パンチ70は第1下パンチ71と第2下パンチ72とを有する。第1下パンチ71は、ヨーク部11の上面であるティース部12が突出する側の面を成形すると共に、ティース部12の周面を成形する。第1下パンチ71には、第2下パンチ72が挿通される貫通孔が軸方向に沿って形成されている。第2下パンチ72は、第1下パンチ71に挿通され、ティース部12の端面41を成形する。
【0080】
金型5を用いてコア片10を成形するときは、ダイ50の型孔51に下パンチ70を嵌合させた状態で、軟磁性粉末を型孔51内に充填する。そして、上パンチ60と下パンチ70とで軟磁性粉末を圧縮して、コア片10を成形する。
【0081】
軟磁性粉末の平均粒子径は、例えば20μm以上300μm以下、更に40μm以上250μm以下とすることが挙げられる。軟磁性粉末の平均粒子径を上記範囲内とすることで、取り扱い易く、圧縮成形し易い。軟磁性粉末の平均粒子径は、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定し、積算質量が全粒子の質量の50%となる粒径を意味する。
【0082】
軟磁性粉末を圧縮する際の成形圧を高くすることで、コア片10を高密度化できる。成形圧は、例えば700MPa以上、更に2000MPa以上とすることが挙げられる。
【0083】
ダイ50の型孔51は、図7に示すように、ヨーク部11(図5参照)の周面に対応した形状に形成されている。型孔51の一方の側面52は、ヨーク部11の側面20を成形する部分である。側面52には、ヨーク部11の側面20の形状に対応するように、凸部21、22及び凹部23を成形する凹部521、522及び凸部523が形成されている(図8も参照)。型孔51の他方の側面53は、ヨーク部11の側面30を成形する部分である。側面53には、ヨーク部11の側面30の形状に対応するように、凹部31、32及び凸部33を成形する凸部531、532及び凹部533が形成されている。
【0084】
コア片10の成形時、原料粉末が圧縮されることにより、型孔51が押し広げられる方向にダイ50に応力が作用する。ダイ50の側面52では、図8に示すように、ヨーク部11の凸部21、22間に挟まれるダイ50の凸部523に両側から応力が作用することになる。図8中、凸部523に作用する応力を白抜き矢印で示す。本例の場合、図3を参照して説明したように、隣り合う凸部21、22間の間隔がヨーク部側面長さの80%以下であり、例えば40mm以下と近いため、凸部523に作用する応力が打ち消し合って低減される。したがって、ダイ50の側面52に作用する応力を低減でき、ダイ50の破損を抑制できる。また、本例では、隣り合う凸部21、22が対称形状であることから、凸部523の両側から作用する応力の大きさが実質的に等しくなる。よって、凸部523に作用する応力が相殺されることになり、ダイ50の破損をより効果的に抑制できる。
【0085】
一方、ダイ50の側面53では、成形時、凹部533は、原料粉末から押し広げられるように押圧される。凹部533の両側はダイ50の外周縁までの距離が大きい凸部531、532に挟まれているため、応力による金型の損傷を受け難い。
【0086】
<ステータ>
図11を参照して、実施形態に係るステータ100について説明する。ステータ100は、アキシャルギャップ型回転電機に用いられる。ステータ100は、コア1と、コア1を構成するコア片10の各ティース部12に配置されるコイル110とを備える。コイル110は、巻線を螺旋状に巻回した筒状のコイルである。この例では、コイル110は、巻線にエナメル平角線を用いた三角筒状のエッジワイズ巻きコイルである。
【0087】
<回転電機>
図12を参照して、実施形態に係る回転電機300について説明する。回転電機300は、モータであってもよいし、発電機であってもよい。回転電機300は、ロータ200と、ステータ100とを備える。回転電機300は、ロータ200とステータ100とが回転軸方向に対向して配置されたアキシャルギャップ型の回転電機である。
【0088】
ステータ100及びロータ200は、円筒状のケース310に収納されている。ケース310の両端にはそれぞれ円板状のプレート320が取り付けられている。両プレート320の中心には、貫通孔が形成されており、回転軸330がケース310内を貫通している。
【0089】
(ロータ)
ロータ200は、平板状の複数の磁石220と、これら磁石220を支持する円環状の保持板210とを備える。磁石220の平面形状は、ティース部12の端面41にほぼ対応した形状である。ティース部12の端面41の形状が三角形状の場合、磁石220の平面形状は、例えば三角形状や台形状であることが挙げられる。保持板210は、回転軸330に固定され、回転軸330と一緒に回転する。各磁石220は、保持板210に埋め込まれている。磁石220は、回転軸330の周方向に等間隔に配置されている。また、磁石220は、回転軸330の軸方向に着磁されている。周方向に隣り合う磁石220の磁化方向は互いに逆になっている。
【0090】
(ステータ)
ステータ100は、ティース部12の端面41がロータ200の磁石220に対向するように配置される。ステータ100は、コア1のヨーク部11の外周面をケース310の内周面に嵌合させることにより、ケース310に固定されている。また、ヨーク部11の内周面には、回転軸330を回転自在に支持する円環状のベアリング340が取り付けられている。
【0091】
{実施形態の効果}
上述した実施形態のコア1、ステータ100、及び回転電機300は、次の効果を奏する。
【0092】
コア1を構成するコア片10において、ヨーク部11の一方の側面20に複数の凸部21、22と、他方の側面30に凸部21、22に対応する複数の凹部31、32とを有する。そのため、複数のコア片10を環状に組み合わせたとき、凸部21、22と凹部31、32との嵌め合いにより、隣接するコア片10のヨーク部11同士を位置決めすることができる。よって、隣接するコア片10が径方向にずれることを抑制できる。したがって、コア1は、隣接するコア片10の位置合わせが容易であり、組立性に優れる。
【0093】
ステータ100は、上記コア1を備えることで、組立性に優れる。回転電機300は、組立性に優れるステータ100を備えることで、生産性が高い。
【0094】
[試算例1]
実施形態で説明したコア片10を金型5で成形したときのダイ50に作用する応力分布をCAE(Computer Aided Engineering)により解析した。
【0095】
応力解析には、シーメンス社製「NX Nastran」を使用した。解析条件は次のように設定した。成形圧は980MPaとした。ダイ50の物性値は、ヤング率:206000MPa、ポアソン比:0.3とした。
【0096】
設計するコア片10の寸法は次のように設定した。
ヨーク部11の厚み(図3中Ty):5mm
ヨーク部11の側面20の長さ:40mm
凸部21、22の大きさ:3mm
凹部31、32からティース部12の根元までの距離の比率:70%
凸部21、22及び凹部31、32の最小曲率半径:3.0mm
【0097】
CAEによる応力解析の結果から、ダイ50の側面52における凸部523に発生する最大応力を求めた。試験例1では、凸部21、22間の間隔を変えて、ヨーク部側面長さに対する凸部間の間隔の比率を変更し、それぞれの場合での最大応力を求めた。その結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から、凸部間の間隔が小さくなるほど、成形時のダイの凸部における最大応力を低減できることが分かる。特に、凸部間の間隔がヨーク部側面長さの80%以下である場合、凸部に発生する最大応力を1500MPa以下に低減できることが分かる。
【0100】
[試作例1]
実施形態で説明したコア片10と同じ構成のものを作製し、その評価を行った。
【0101】
コア片10の寸法は次のように設計した。
ヨーク部11の厚み(図3中Ty):5mm
ヨーク部11の外径(図2中Do):120mm
ヨーク部11の内径(図2中Di):40mm
ティース部12の端面41の高さ(図3中Ht):18mm
ヨーク部11の側面20の長さ:40mm
凸部21、22間の間隔の比率:57%
凸部21、22の大きさ:3mm
凹部31、32からティース部12の根元までの距離の比率:70%
凸部21、22及び凹部31、32の最小曲率半径:3.0mm
【0102】
原料の軟磁性粉末には、純鉄粉の表面にリン酸塩被覆を有する被覆軟磁性粒子の粉末を使用した。軟磁性粉末の平均粒子径は50μmである。成形圧は980MPaとした。得られた圧粉磁心からなるコア片10の相対密度は92%であった。
【0103】
同じ条件で6個のコア片10を作製し、コア片10を円環状に組み合わせてコア1を作製した。1つのコア片10には2つのティース部12を有する。ティース部12の合計数は12である。得られたコア1について、以下の評価を行った。
【0104】
〈ヨーク部の真円度〉
ヨーク部の外周面の真円度を、市販の3D形状測定機を用いて測定した。具体的には、真円度の測定は、キーエンス社製「VR-3200」を用いてポイント測定により行った。その結果、ヨーク部の外周面の真円度は0.1mm以下であった。
【0105】
〈ティース部の端面の平面度〉
ティース部の端面の平面度を、市販の3D形状測定機、具体的にはキーエンス社製「VR-3200」を用いてそれぞれ測定した。その結果、12個のティース部の各端面の平面度は、いずれも0.1mm以下であった。
【0106】
〈ティース部の端面の高さ〉
ヨーク部の下面を平面上に載置した状態で、合計12個のティース部の各端面の高さ位置を市販の3D形状測定機、具体的にはキーエンス社製「VR-3200」を用いて測定した。そして、最も高いティース部の端面の位置と最も低いティース部の端面の位置との差を求めたところ、その差は0.15mmであった。
【符号の説明】
【0107】
1 コア
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f コア片
11 ヨーク部
12、12a、12b ティース部
20、30 側面
21、22 凸部
23 凹部
31、32 凹部
33 凸部
41 端面
5 金型
50 ダイ
51 型孔
52、53 側面
521、522 凹部
523 凸部
531、532 凸部
533 凹部
60 上パンチ
70 下パンチ
71 第1下パンチ 72 第2下パンチ
80 板状部材
90 環状部材
100 ステータ
110 コイル
200 ロータ
210 保持板 220 磁石
300 回転電機
310 ケース 320 プレート
330 回転軸 340 ベアリング
、L 中間線
、L、Lc 直線 La 中心線
a、b 点 l 頂点 m、n 交点
Ty 厚み Ht 高さ位置
Do 外径 Di 内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12