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▶ ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】閉塞デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021170737
(22)【出願日】2021-10-19
(62)【分割の表示】P 2019120197の分割
【原出願日】2013-01-11
(65)【公開番号】P2022002781
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】61/586,633
(32)【優先日】2012-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/738,733
(32)【優先日】2013-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ビー.ダンカン
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/115076(WO,A2)
【文献】特表2008-515467(JP,A)
【文献】特開2006-320598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能な閉塞デバイスであって、前記埋め込み可能な閉塞デバイスは:
形状記憶ワイヤで形成されたコイルであって、前記コイルは全体外径を有し、前記コイルは、引き延ばされた長さを有する伸長形態と収縮された長さを有する収縮形態との間で動作可能であり、前記収縮した長さは前記引き延ばされた長さよりも小さい、形状記憶ワイヤと;
前記コイルに巻き付けられた柔軟な重合体物質であって、前記コイルは前記柔軟な重合体物質によって実質的に覆われており、前記柔軟な重合体物質の一部は前記コイルと直接接触しておらず、前記柔軟な重合体物質は、前記コイルが前記収縮形態にあるときに閉塞を形成するように動作可能な不規則な形状を形成する、柔軟な重合体物質と、
を含む、埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項2】
前記コイルは実質的にらせん状コイルである、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項3】
前記柔軟な重合体物質はePTFEを含む、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項4】
前記柔軟な重合体物質は、前記コイルに前記形状記憶ワイヤの全長にわたって取り付けられている、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項5】
前記柔軟な重合体物質は、前記コイルの長さに沿った複数の離散的な取り付けポイントで前記コイルに取り付けられている、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項6】
前記柔軟な重合体物質が接着剤によって前記コイルに取り付けられている、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【請求項7】
前記柔軟な重合体物質は、前記柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を形成するように切り込みが入れられている、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2012年1月13日に出願された米国特許仮出願第61/586633号の優先権を主張する。この先願の開示内容は本出願の開示内容の一部と見なされる(そして参照によってそれに組み込まれる)。
【0002】
本発明は概ね医療デバイスに関し、詳しくは体の管腔、空洞、血管、又は器官の閉塞のためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの臨床状況で患者の体のある領域における流体の流れ(例えば、血流)の減少又は完全な停止が必要になる。いくつかの注目される例としては動脈瘤、動静脈奇形、外傷性動静脈瘻、及び腫瘍塞栓の治療があげられる。これらの症状やその他の症状では、体の管腔、空洞、血管、又は器官の少なくとも一部で流体の流れを阻止することが必要になる。
【0004】
閉塞器、栓、及び塞栓コイルは、管腔、空洞、血管、又は器官における流体の流れを阻止するために患者に埋め込むことができるデバイスの例としてあげられる。場合によっては、埋め込まれたデバイスだけで所望の閉塞が十分に達成できる。場合によっては、埋め込まれたデバイスが血栓生成を誘発し、デバイスと血栓の組合せによって所望の閉塞が実現される。例えば、脳又は四肢の動脈瘤の部位で血管内に、又は動脈瘤内に血管閉塞デバイスを配置展開することができる。展開中にデバイスの形態が、血管の弱くなった部分を通る血流を減らすための有効サイズ及び形状に変化する。閉塞デバイス上で血栓が形成されて動脈瘤の箇所における血流をさらに遮断して、動脈瘤が膨らんだり破裂したりすることを防ぐこともできる。典型的な頭蓋内治療手順は、動脈瘤の中に1本以上のコイルを入れて空所を充填し、血栓を形成させ、動脈瘤内の圧力を下げることである。しばしば、これは、コイルが血管の管腔内に突出することを防ぐためのステント又は“ステントリーバー”を用いて行われる。
【0005】
塞栓コイルは血管閉塞デバイスの一種である。塞栓コイルは形状記憶合金などの生体適合性ワイヤから作ることができる。形状記憶材料を用いることは、デバイスが経カテーテルのための小断面形態に配置されること、及び患者の血管内の目標場所に配置されたときにデバイスが有効なサイズと形状に膨張することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3174851号明細書
【文献】米国特許第3351463号明細書
【文献】米国特許第3753700号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、体の管腔、空洞、血管、又は器官の閉塞のために埋め込むことができる医療デバイスを提供する。本発明は、そのような閉塞デバイスを製造する方法及びその閉塞デバイスを用いて患者を治療する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されている標題事項の個別の実施形態は以下の利点の一つ以上を実現するように実施され得る。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な閉塞デバイスは、閉塞デバイスの断面サイズを増大させて血栓誘発性を高める膜状物質を含むことによって機能的に強化される。いくつかの実施形態では、閉塞デバイス上の膜状物質は、断面サイズを増大させて血栓誘発性を高める多数の細長いフリンジ(fringe)材料として形成される。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスは流体の流れが閉塞デバイスを通過するのを実質的に阻止する表裏反転形態に構成された膜状カップ部分を含むことで機能的に強化される。
【0009】
体組織における管腔、空洞、血管、又は器官を完全に又は部分的に閉塞するためのデバイスが開示される。ここで提供されるデバイスは、例えば、動脈瘤、動静脈奇形、外傷性動静脈瘻、内部漏れ、傷、様々な癌、及び他の様々な症状を治療するために用いることができる。開示されるデバイスは、例えば、閉塞器、コイル、及び栓を含む。いくつかの実施形態では、ここで提供される閉塞デバイスは少なくとも1本のワイヤ及び膜状物質を含む。いくつかの実施形態では、膜状物質はワイヤのまわりに(例えば、巻きつけることにより)配置され、その長さの少なくとも一部に沿って切り込みが入れられてワイヤから外へ延びるフリンジを形成する。切り込みはワイヤに沿って延びるフィラメント又は細片を有する外側フリンジを効果的に生成する。いくつかの実施形態では、例えばエラストマー膜状物質を含むものでは、本発明が提供する閉塞デバイスはフリンジを形成するための切り込みがされない。いくつかの実施形態では、ここで提供される閉塞デバイスは膜状物質で形成されるカップを含む。いくつかの実施形態では、このカップは、管腔を通る流体の流れを閉塞又は制限するのを助けるために、デバイスを通る流体の流れを実質的に阻止するように構成されている。
【0010】
ある一般的な様態で、埋め込み可能な閉塞デバイスは少なくとも1本の形状記憶性質を有するワイヤと柔軟な重合体シートを含む;シートはワイヤのまわりに配置され、シートはシートの長さの少なくとも一部に沿って外側フリンジを含む。
【0011】
様々な実施例で、外側フリンジはシートの切り込み部分を含むことができ;フリンジの少なくとも一部はシートと一体的ではない;フリンジはワイヤのほぼ全長に沿って延びている;シートはワイヤの一つ以上の箇所でワイヤに取り付けられる;シートはePTFEを含む;埋め込み可能な閉塞デバイスはさらに内皮化促進剤、抗炎症剤、又は治癒物質を含むことができる;そして埋め込み可能な閉塞デバイスは一つ以上の放射線不透過マーカーをさらに含むことができる。
【0012】
第2の一般的な様態で、埋め込み可能な閉塞デバイスは少なくとも1本の形状記憶性質を有するワイヤと柔軟な重合体チューブを含む;チューブは、ワイヤのまわりに配置され、チューブの長さの少なくとも一部に沿って外側フリンジを含む。
【0013】
様々な実施例では、ワイヤの少なくとも一部はチューブの管腔の内側にある;チューブはワイヤの少なくとも一部に巻き付けられた重合体細片を含む;外側フリンジがチューブの切り込まれた部分を含む;少なくとも一部のフリンジはチューブと一体的でない;フリンジはワイヤのほぼ全長にわたって延びている;フリンジはワイヤの長さを超えて延びる長さを含むことができる;チューブはワイヤの一つ以上の箇所でワイヤに取り付けられる;チューブはePTFEを含む;埋め込み可能な閉塞デバイスはさらに内皮化促進剤、抗炎症剤、又は治癒物質を含むことができ;そして埋め込み可能な閉塞デバイスは一つ以上の放射線不透過マーカーをさらに含むことができる。
【0014】
第3の一般的様態で、埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法は、少なくとも1本の形状記憶ワイヤを用意する段階;その形状記憶ワイヤをある全体外径とコイル長さとを有するコイルに成形する段階;コイルの全体外径よりも小さな内径を有する柔軟な重合体チューブを用意する段階;コイルを引き延ばす段階であって、引き延ばされたコイルはコイル長さよりも大きな引き延ばされたコイル長さを有し、引き延ばされたコイルはコイルの全体外径よりも小さな引き延ばされたコイル直径を有するコイルを引き延ばす段階;柔軟な重合体チューブを引き延ばされたコイルの上に取り付ける段階;引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを可能にする段階であって、ここで収縮した長さは引き延ばされたコイル長さよりも短く、それによって柔軟な重合体チューブに閉塞のために有利な不規則形状を形成させる、引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを可能にする段階;を含む。
【0015】
様々な実施例では、コイルは実質的にらせん状コイルであり;柔軟な重合体物質はePTFEを含み;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法は、引き延ばされたらせん状コイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、柔軟な重合体物質を引き延ばされたコイルに取り付ける段階をさらに含み;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、引き延ばされたコイルに柔軟な重合体物質をワイヤの全長にわたって取り付ける段階を含み;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、引き延ばされたコイルに沿った複数の離散的な取り付けポイントで柔軟な重合体物質を引き延ばされたコイルに取り付ける段階を含み;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、接着剤を用いて柔軟な重合体物質を引き延ばされたコイルに取り付ける段階を含み;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、柔軟な重合体物質に切り込みを入れて柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階を含むことができる。
【0016】
第4の一般的様態で、体組織の管腔を通る流体の流れを制限するデバイスは、少なくとも1本の近位端と遠位端とを有するワイヤと柔軟な重合体のカップとを含み、柔軟な重合体のカップはワイヤの近位端に固定された開放端を含み、柔軟な重合体のカップは管腔内への展開中に展開前の状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されていて、表裏反転状態の柔軟な重合体のカップは管腔を通る流体の流れを制限するように構成されている。
【0017】
様々な実施例では、柔軟な重合体カップは重合体材料のシートから形成することができ;柔軟な重合体カップは重合体材料のチューブから形成することができ;柔軟な重合体カップはePTFEを含み;体組織の管腔を通る流体の流れを制限するデバイスはさらに、一つ以上の放射線不透過マーカーを含むことができ;体組織の管腔を通る流体の流れを制限するデバイスはさらに、柔軟な重合体物質を含むことができ;この柔軟な重合体物質はワイヤのまわりに配置され、柔軟な重合体物質は柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿って外側フリンジを含むことができる。
【0018】
第5の一般的な様態で、体組織における管腔を閉塞する方法は、近位端及び遠位端を有する少なくとも1本のワイヤと柔軟な重合体カップとを含む閉塞デバイスを用意する段階であって、柔軟な重合体カップはワイヤの近位端に固定された開放端を含み、柔軟な重合体のカップは管腔内への配置展開中に展開前の状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されていて、表裏反転状態における柔軟な重合体カップは管腔を通る流体の流れを制限するように構成されている、閉塞デバイスを用意する段階;送達管腔を含む送達シースを用意する段階;送達管腔内に閉塞デバイスを展開前状態で構成する段階;展開前状態の閉塞デバイスを含む送達管腔を管腔内の標的部位に送達する段階;及び管腔内の標的部位で閉塞デバイスを展開する段階;を含み、展開する段階は閉塞デバイスを送達管腔から放出する段階と柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階を含む。
【0019】
様々な実施例では、柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階は、少なくとも部分的に流体によって柔軟な重合体カップに及ぼされる圧力によって引き起こされ;柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階は、少なくとも部分的に、あるデバイスによって柔軟な重合体カップに及ぼされる圧力によって引き起こされる。
【0020】
第6の一般的様態で、埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法は、少なくとも1本の形状記憶ワイヤを用意する段階;形状記憶ワイヤを全体外径と開放された近位端と遠位端とを有するカップ・フレームに成形する段階;及び柔軟な重合体カップをカップ・フレームの近位端に固定する段階を含み、柔軟な重合体カップは開放端と閉鎖端とを含み、開放端がカップ・フレームに固定され、柔軟な重合体カップは体の管腔内への埋め込み中に展開前の状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されていて、表裏反転状態の柔軟な重合体カップは管腔を閉塞するように構成されている。
【0021】
様々な実施例では、埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、形状記憶ワイヤをある全体外径とあるコイル長さとを有するコイルに成形する段階;コイルを引き延ばす段階、ここで引き延ばされたコイルはコイル長さよりも大きな引き延ばされたコイル長さを有し、引き延ばされたコイルはコイルの全体外径より小さい引き延ばされたコイル直径を有する;柔軟な重合体チューブを引き延ばされたコイルに取り付ける段階、ここで柔軟な重合体チューブはコイルの全体外径よりも小さな内径を有する;及び引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階;を含み、ここで収縮した長さは引き延ばされたコイル長さよりも短く、それにより柔軟な重合体チューブに閉塞に有効な不規則な形を作らせる;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、引き延ばされたコイルが巻き戻るのを許容する前に、柔軟な重合体チューブに切り込みを入れて柔軟な重合体チューブの長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階を含むことができる;埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、形状記憶ワイヤをコイルに成形する段階、ここでコイルは全体外径を有する;コイルを引き延ばし、それによりコイルの長さを引き延ばされた長さに増大させ、コイルの全体外径を減少させる段階;柔軟な重合体物質を引き延ばされたコイルに巻き付ける段階、ここで引き延ばされたコイルは実質的に柔軟な重合体物質で覆われ、柔軟な重合体物質の一部は引き延ばされたコイルと直接接触しないようになる;及び引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階、ここで収縮した長さは引き延ばされた長さよりも短くなり、柔軟な重合体物質に閉塞に有利な不規則形状をとらせる;を含むことができる;そして埋め込み可能な閉塞デバイスを製造する方法はさらに、引き延ばされたコイルが巻き戻るのを許容する段階の前に、柔軟な重合体物質に切り込みを入れて柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階を含むことができる。
【0022】
その他の様態、特徴、及び利点は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】緩和形態と小断面形態における例示的閉塞デバイスの細長部材を示す。
図2】小断面形態における例示的閉塞デバイスを示す。
図3】小断面形態と緩和形態における例示的閉塞デバイスを示す。
図4】小断面形態と緩和形態における例示的閉塞デバイスを示す。
図5】小断面形態と緩和形態における例示的閉塞デバイスを示す。
図6A】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図6B】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図6C】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図6D】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図6E】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図6F】閉塞デバイスで用いられるワイヤ・コイルの形態の例を示す。
図7】小断面形態と緩和形態における例示的カップ型閉塞デバイスの細長フレームを示す。
図8】引き延ばした形態と緩和形態における例示的カップ型閉塞デバイスを示す。
図9】引き延ばした形態と緩和形態における例示的カップ型閉塞デバイスを示す。
図10A】体の血管における例示的カップ型閉塞デバイスの例示的展開プロセスを示す。
図10B】体の血管における例示的カップ型閉塞デバイスの例示的展開プロセスを示す。
図10C】体の血管における例示的カップ型閉塞デバイスの例示的展開プロセスを示す。
図10D】体の血管における例示的カップ型閉塞デバイスの例示的展開プロセスを示す。
図11】コイル閉塞デバイスを製造するための例示的工程を示す流れ図である。
図12】カップ・フレーム閉塞デバイスを製造するための例示的工程を示す流れ図である。
図13】患者の体に閉塞デバイスを埋め込む方法の例を示す流れ図である。
【0024】
様々な図面における同じ参照符号は同じような要素を表している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
体の管腔、器官、血管、及び空洞を閉塞するために用いられる医療デバイス、並びにその医療デバイスを製造する方法及びそのデバイスを用いて患者を治療する方法が本明細書で開示される。一般に、閉塞デバイスは1本以上の細長部材(以下、“ワイヤ”(単数又は複数))を柔軟な膜状物質との組み合わせで含む。閉塞デバイスはワイヤと柔軟な膜状物質を様々な構成形態で用いる。閉塞デバイスのワイヤは閉塞デバイスの形を定め、閉塞デバイスが体の所望の場所から移動するのを防ぐか又は妨げる。閉塞デバイスの柔軟な膜状物質は、例えば、血栓誘発性や内皮化促進性を高めるために用いられる。
【0026】
図1を参照すると、例示的閉塞デバイスのワイヤ10が緩和形態10aと小断面の送達形態10bで示されている。一般に、ワイヤ10は例示的閉塞デバイス実施形態の一つの構成要素であり、デバイスはさらに柔軟な膜状物質を含む(例えば、図3を見よ)。
【0027】
いくつかの実施形態では、ここで提供される閉塞デバイスは1本以上のこのようなワイヤを含む。閉塞デバイスのワイヤは、例えば、疲労に対する良好な耐性と弾性を示す。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスはカテーテルを通して又は胸腔鏡によって送達するための小断面形態に構成でき、体の管腔、空洞、血管、又は器官内の所望の標的部位に配置された後に有効なサイズと形態に自己拡張することを可能にする弾性及び/又は形状記憶性質を有する1本以上のワイヤから作られる。
【0028】
ワイヤは様々な材料を含むことができる。ほんの二三の一般的な例をあげただけでも、ワイヤはエラストマー、金属、ばね線材、形状記憶合金線材、又はそれらの組合せや部分組合せであってよい。実際、適当に生体適合性で、可撓性及び弾力性を有するどんな種類の線材も一般にここに提供される閉塞デバイスに使用できる。ワイヤは、例えば、ニチノール(NiTi)、L605鋼、ステンレス鋼、重合体材料、又はそれらの材料の組合せと部分組合せも含めて、その他のどんな適当な生体適合性材料であってもよい。いくつかの実施形態では、生体吸収性の材料を、例えば、生体吸収性重合体を含めて、使用できる。いくつかのそのような実施形態では、ワイヤは最終的に溶解して血栓又は細胞物質がそこに残される。いくつかの実施形態では、ワイヤは生物的反応を刺激するためのコーティングが全体に又は部分的に施される。
【0029】
適当なワイヤ材料としては、様々な金属形状記憶材料と超弾性材料が含まれることは明らかであろう。形状記憶とは、ある物質が塑性変形の後にある臨界温度より高い温度でそれを加熱することによって最初に記憶した形に戻ることができる能力を指す。超弾性とは、ある物質が応力の下で恒久的な変形にならずに非常に大きく変形できる能力を指す。例えば、いくつかの実施形態に含まれる形状記憶材料はかなり大きな量の曲げとたわみに耐えることができ、しかも変形しないで元の形に戻ることができる。閉塞デバイスで用いられるいくつかの金属形状記憶材料は米国特許第3174851号、第3351463号、及び第3753700号に記載されており、これらの特許は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。適当な形状記憶材料としては、高い弾力性を生ずるように物理的、化学的、その他の仕方で処理されたステンレス鋼、コバルト・クロム合金などの金属合金(例えば、ELGILOYTM)、プラチナ/タングステン合金、及びNiTi合金などがあげられる。
【0030】
ニチノール(NiTi)は超弾性があるので、本発明が提供する閉塞デバイスのいくつかの実施形態のワイヤとして適当である。NiTiワイヤは、送達シースから体の管腔、空洞、血管、又は器官に展開されたときに所望の形状に自己拡張するように、前記所望の形状に熱固定されることができる。
【0031】
ワイヤは様々な仕方で処理して、X線による可視化を高めるために放射線不透過性を大きくすることができる。いくつかの実施形態では、ワイヤは少なくとも部分的にはコアに放射線不透過性が高い物質などの異なる材料を含む異種金属2層型(drawn-filled type)のNiTiワイヤである。いくつかの実施形態では、ワイヤは、ワイヤの少なくとも一部で放射線不透過性のクラッディング(被覆)又はプレーティングを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ワイヤの直径すなわち太さは約0.1mmから1.50mmまでであるが、別の実施形態では、もっと細いか又はもっと太い直径のワイヤが用いられる。いくつかの実施形態では、ワイヤの直径は約0.25mmである。適当などんなサイズ又は直径のワイヤも使用できるということは明らかであろう。
【0033】
いくつかの実施形態では、デバイスの1本以上のワイヤの各々は同じ直径を有する。いくつかの実施形態では、デバイスの1本以上のワイヤの各々は異なる直径を有する。いくつかの実施形態では、デバイスの1本以上のワイヤはワイヤの長さに沿って一定した直径を有する。いくつかの実施形態では、1本以上のワイヤの一つ以上の部分はテーパーがついた直径を有するか、そうでなければ直径が一定していない。いくつかの実施形態では、ワイヤは、ワイヤの直径がワイヤの長さに沿って変化するように心なし研削法を用いて形成される。ワイヤは丸い断面形を有することも、矩形や他の多角形など丸くない断面形を有することもできる。ワイヤがとり得る他の断面形の例としては正方形、卵形、長方形、三角形、D字形、台形、又は編み線、又は撚り線構造で作られる不規則形状などがある。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスの1本以上のワイヤが平角ワイヤである。いくつかの実施形態では、様々なタイプのワイヤの組合せが閉塞デバイスで用いられる。いくつかの実施形態ではデバイスの1本以上のワイヤが各々同じ断面形を有するが、いくつかの実施形態では、少なくとも1本のワイヤが1本以上の他のワイヤと異なる断面形を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、ここで提供される閉塞デバイスの1本以上のワイヤは一つ以上の固定要素(すなわち、アンカー、逆刺、突起、及び/又は貫入部材)を含む。いくつかの実施形態では、このような固定要素が、閉塞デバイスを体の管腔、空洞、血管、又は器官内の標的部位に展開させた後の閉塞デバイスのその場での(in situ)移動を抑えるか又は妨げるという利点がある。
【0035】
図1を参照すると、ワイヤ10は緩和形態10aと小断面送達形態10bで示されている。緩和形態10aは、ワイヤ10が外部からの力を受けないときに落ち着く自然な形態である。小断面送達形態10bは、ワイヤ10が特定の外力、例えば大きさが等しく向きが反対の引き延ばす力5と5’、を受けたときにワイヤ10がとる形である。小断面送達形態10bは略直線状であるが、いくつかの実施形態では、この形態は多少の波形を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、熱固定プロセスを用いてワイヤ10に緩和形態10aを持たせる。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10は熱固定によって緩和形態に対応するらせんコイル形態にされたNiTiワイヤである。いくつかの実施例では、ワイヤ10は適当な心棒に巻かれてから加熱されて、実質的に心棒の幾何形状によって定められるコイル形態に熱固定される。以下で図6A-6Fを参照してさらに詳しく説明するようにワイヤ10はその緩和形態10aでは略らせん状に示されているが、きわめて多様なコイル形態が考えられる。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は塑性変形してコイル状の緩和形態10aになる。いくつかの実施形態では、ワイヤ10はコイル状の緩和形態10aに鋳造される。要するに、ワイヤをコイル形態にするのにどんな適当な方法を用いてもよい。
【0037】
送達形態10bは、緩和形態10aに大きさが等しく向きが反対の引き延ばす力5と5’を加えることによって得られる。ワイヤ10は送達形態10bにあるときは実質的に直線形状に形成される。送達形態10bは、ワイヤ10を送達カテーテル又はシースを用いて体の管腔、空洞、血管、又は器官における所望の標的部位に送達するのに適している。一般に、ここで提供される閉塞デバイスの送達形態は小さな直径の送達カテーテル又はシースを利用できる小断面形態である。図1に示されているように、ほぼ直線状の小断面送達形態10bは径方向輪郭がコイル状の緩和形態10aよりもずっと小さい。
【0038】
図2を参照すると、例示的閉塞デバイス20が膜状物質22で覆われたワイヤ10(見えない)を含む。例示的閉塞デバイス20は小断面形態で示されている。すなわち、例示的閉塞デバイス20は、例示的閉塞デバイス20を送達カテーテル又はシースによって送達するときに用いられる小断面送達形態にある(引き延ばす力5と5’によって)。送達カテーテル又はシースから出ると、例示的閉塞デバイスは図1のコイル状の緩和形態10aと同様の緩和形態(又は、閉塞デバイスのタイプによっては別の形態)になろうとする。
【0039】
ここで提供される閉塞デバイスで用いられる柔軟な膜状物質は、体液及び塞栓が膜状物質を通過するのを実質的に(又は、いくつかの実施形態では、完全に)阻止するようなサイズの孔を有する。いくつかの実施形態では、膜状物質は微孔性構造を有し、それが耐久性のある閉塞と体の管腔、空洞、血管、又は器官に閉塞デバイスを固定するための補助アンカー強度を与える組織の内方成長のための足場になる。いくつかの実施形態では、膜状物質は、膜状シート物質を通る流体の通過阻止が直接的であり血栓生成プロセスに依存しないように構成される。いくつかの実施形態では、最終的な閉塞効果が膜状物質による流体通過の阻止と血液自身の自然な血栓プロセスの組合せで達成されるように、膜状物質は連鎖的な血栓生成を開始する。
【0040】
一般に、柔軟な膜状物質は適当などんな生体適合性物質を含んでもよい。適当な物質としては、多孔質又は非多孔質の合成重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリグリコール酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアラミド、ポリフルオロカーボン、例えば、フッ化エチレン・プロピレン(FEP)、パーフッ化アルコキシ(PFA),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE),及びそれらの混合物、ブレンド、及び共重合体、などがあるがそれだけに限定されない。ePTFE材料は米国特許第3953566号、及び第4187390号に記載されており、これらの特許は参照によって全体が本明細書に組み込まれる。適当なePTFE重合体シート材料は米国特許第5814405号に教示されている。いくつかの実施形態では、膜状物質は生体吸収性物質、例えば生体吸収性重合体である。いくつかの実施形態では、膜状物質は共重合体である。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスの膜状物質の第1の部分は第1の物質から形成され、デバイスの膜状シート物質の第2の部分は第2の物質から形成される。例えば、デバイスのワイヤを覆う膜状物質の部分は第1の物質から形成され、膜状シート物質の残りの部分は第2の物質から形成される。いくつかの実施形態では、三つ以上のタイプの膜状物質が単一の閉塞デバイスで用いられる。
【0041】
ここで提供される閉塞デバイスでは適当などんなタイプの構造の膜状物質を用いることもできる。いくつかの実施形態では、膜状物質は編まれた構造を有する。いくつかの実施形態では、膜状物質は織られた構造を有する。いくつかの実施形態では、膜状物質はメッシュ構造を有する。いくつかの実施形態では、膜状物質はフィルム構造を有する。いくつかの実施形態では、構造タイプの組合せが単一の閉塞デバイスに用いられる。いくつかの実施形態では、異なるタイプの膜状物質及び/又は構造タイプの多重層が単一の閉塞デバイスに含まれる。いくつかの実施形態では、膜状物質は膜状物質の表面に付着した膜状物質の毛又はフィラメントを含む。いくつかのこのような実施形態では、毛又はフィラメントは膜状物質の血栓誘発性を高める。
【0042】
いくつかの実施形態では、膜状物質はシート又は細片の形に作られる。いくつかの実施形態では、膜状物質はその後、チューブの形に巻かれたり、編まれたり、又は織られたりする。いくつかの実施形態では、膜状物質はフィラメント又は糸の形に作られ、その後、シート、細片、又はチューブの形に巻かれたり、編まれたり、又は織られたりする。いくつかの実施形態では、膜状物質はシート、細片、又はチューブの形に押し出される。
【0043】
膜状物質のいくつかの実施形態は、紡糸プロセスによって作られる。紡がれた膜状物質のいくつかの実施形態はシートの形に作られる。紡がれた膜状物質のいくつかの実施形態は、例えば心棒上に物質を紡ぐことによって、チューブの形に作られる。様々な紡糸プロセスを用いることができる。数例をあげると、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、押出紡糸、直接紡糸、ゲル紡糸、及び電気紡糸などである。いくつかの実施形態では、紡糸プロセスが、マイクロ又はナノ・フィラメントを含む膜状物質を提供する。
【0044】
いくつかの実施形態では、ここで提供される閉塞デバイスで用いられる膜状物質は一つ以上の化学的又は物理的プロセスによって膜状物質のいくつかの性質を強化するように改質される。例えば、いくつかの実施形態では、親水性コーティングが膜状シート物質に施されて膜状物質の濡れ特性が高められ、エコー半透明性が改善される。いくつかの実施形態では、膜状物質は、内皮細胞付着、内皮細胞移動、内皮細胞増殖、及び血栓症への耐性又は促進の一つ以上を促進する化学成分によって改質される。いくつかの実施形態では、膜状物質は共有結合で付着する一つ以上の薬剤物質(例えば、ヘパリン、抗生物質、など)によって改質されるか又は一つ以上の薬剤物質が含浸される。薬剤物質はその場所で放出されて、傷の治癒を促進し、組織の炎症を減らし、感染を減らし又は防ぎ、他の様々な治療薬による治療の成績を高める。いくつかの実施形態では、薬剤物質は、コルチコステロイド、ヒト成長因子、抗有糸分裂薬、抗血栓剤、幹細胞物質、又はデキサメラソン・リン酸ナトリウム、などである。コーティングや治療薬の塗布は膜状物質が閉塞デバイスのワイヤに固定又は配置される前、又は後で施される。さらに膜状物質の片側がコーティングされても、両側がコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、ある種のコーティング及び/又は治療薬は閉塞デバイスのある部分に位置する膜状物質に施され、別のコーティング及び/又は治療薬塗布は閉塞デバイスの他の部分に位置する膜状物質に施される。いくつかの実施形態では、複数のコーティング及び/又は治療薬の組合せが膜状物質に施される。いくつかの実施形態では、デバイスのいくつかの部分はコーティングされない及び/又は治療薬塗布されないで残される。
【0045】
いくつかの実施形態では、ここでの閉塞デバイスに用いられる膜状物質はエラストマー・フィルム物質である。すなわち、いくつかの実施形態では、膜状シート物質は、閉塞デバイスの形態変化、例えば小断面形態と緩和形態との間の形態変化、の間のワイヤの動きに適応するように延びたり戻ったりすることができる。膜状物質のこのような弾力性は、いくつかの実施形態では、付随的な応力緩和処置(例えば、膜状物質への切り込み)なしでも閉塞デバイスの形態変化を容易にするという利点がある。
【0046】
さらに図2を参照すると、膜状物質22は例示的閉塞デバイス20のワイヤ10にかぶせられる。いくつかの実施形態では、膜状物質22は、膜状物質22がワイヤ・スリーブ部分とフリンジ26部分を生成するようにワイヤ10にかぶせられる。例えば、いくつかの実施形態では、膜状物質22は細長い細片で、それがワイヤ10のまわりで折り重ねられてワイヤ・スリーブ24を形成し、細片の長さ方向自由端が互いに固定されてフリンジ26を形成する。いくつかの実施形態では、膜状物質22の自由端はフッ化エチレン・プロピレン(FEP)コーティング又はフィルムによって互いに固定される。いくつかの実施形態では、膜状物質22の自由端は、縫合、溶接/接着、様々な生体適合性接着剤によって、又は他の適当な方法又は方法の組合せによって互いに固定される。膜状物質22の細片をワイヤ10に重ねることによって、ワイヤ10を膜状物質22で完全に又は部分的に覆うことができる。いくつかの実施形態では、ワイヤ10の一部を露出させることができる、すなわちワイヤ10の一部を膜状物質22で覆わなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10の端は露出している。
【0047】
いくつかの実施形態では、膜状物質22はワイヤ10にそれを巻き付けることによってワイヤ10に取り付けられる。いくつかの実施形態では、巻かれた膜状物質22の直径はワイヤ10の直径よりも大きく、したがってフリンジ26を形成できる。フリンジ26は余った膜状物質(ワイヤを覆った後に残る物質)を平たくして、平たくした層を互いに固定することにより形成できる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ワイヤ10とフリンジ26はほぼ同じ長さである(長さはワイヤ10の軸線に沿って測る)。いくつかの実施形態では、フリンジ26はワイヤ10の端を超えて延びており、フリンジ26はワイヤ10よりも長い。いくつかの実施形態では、フリンジ26はワイヤ10の一端だけでワイヤ10を超えて延びる。いくつかの実施形態では、フリンジ26はワイヤ10の両端でワイヤ10を超えて延びる。
【0049】
いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状物質22の端縁に沿って配置されない。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状物質22の一つ以上の細片のほぼ中央に位置している。いくつかのこのような実施形態では、二つ以上のフリンジ26部分が、ワイヤ10をフリンジ部分の間にはさんで生成される。いくつかの実施形態では、二つ以上のフリンジ26部分がほぼ同じ長さの個別フリンジ28を有するが、いくつかの実施形態では、二つ以上のフリンジ26部分が異なる長さの個別フリンジ28を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状物質22の二つ以上の細片の中心から外れて(又は、その間に)位置している(ただし、端縁にではない)。いくつかのこのような実施形態では、横方向長さが等しくない二つ以上のフリンジ26部分が形成される。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状細片の層の上に又は層の間に位置し、ワイヤ10は実質的に直線でないパターンを有する。いくつかのこのような実施形態では、変動する不等な長さの二つ以上のフリンジ26部分が形成される。
【0051】
いくつかの実施形態では、ワイヤ10は、ワイヤ10に膜状物質22を取付けるのを助ける接着剤コーティングであって、ワイヤ10を膜状物質22に固定する接着剤コーティングを有する。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10上の接着剤は、粉体塗装法によって塗布されたFEPである。いくつかの実施形態では、他の生体適合性接着剤がFEPに加えて、又はFEPの代わりにワイヤ10に用いられる。ワイヤ10上の接着剤は、ワイヤ10全体を覆っても、ワイヤ10上のいくつかの離散的な箇所にあってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、膜状物質22は接着性を有する。いくつかの実施形態では、FEPコーティング又はFEPフィルム層が膜状物質22の全部又は一部にかぶせられる。いくつかの実施形態では、接着剤は熱で活性化される。いくつかの実施形態では、他の様々な生体適合性の接着剤が膜状物質22の内部又は表面に取り込まれる。接着剤は膜状物質22をワイヤ10に取り付けること、並びに膜状物質22の接着層が互いに接着すること、を助ける。
【0053】
接着剤に加えて又は接着剤の代わりに、ワイヤ10を膜状物質22に固定するための他のどんな適当な方法を用いてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10は縫合によって膜状物質22に固定される。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は、ワイヤ10と膜状物質22との間にグリップを生み出すために、粗い感触にされた表面又は粗い感触にされた表面部分を有する。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は、ワイヤ10と膜状物質22を互いに固定するために、膜状物質22に貫入する逆刺又は突起を有する。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は、ワイヤ10とスリーブ24との間のいくつかの箇所で締まりばめを生み出すために、断面輪郭が大きくなっている部分を有する。いくつかの実施形態では、ワイヤ10の全長とスリーブ24との間のはめあいは締まりばめになっている。いくつかの実施形態では、ワイヤ10の全長とスリーブ24との間のはめあいはライントゥーラインフィット(line-to-line fit)である。
【0054】
ワイヤ10と膜状物質22との間では、他の様々な関係が考えられる。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10と膜状物質22のワイヤ・スリーブ24との間の寸法はめあいがワイヤ10の全長にわたってすきまばめである。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状物質22に固定されない。いくつかの実施形態では、ワイヤ10の端は、膜状物質22を挟んでつかむように、二つに折られて圧着される。あるいはまた、膜状物質22がワイヤ10の端を超えて延びることもできる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ワイヤ10は、ワイヤ10を膜状物質22に通して織ることによって膜状物質22に固定される。いくつかのこのような実施形態では、膜状シート物質22の一つ以上の層が含まれ得る。
【0056】
ここに提供される閉塞デバイスのいくつかの実施形態では、一つ以上の放射線不透過マーカーが含まれる。放射線不透過マーカーは閉塞デバイスのX線可視化を助けるものであり、それは埋め込み手順で役立つ。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカーは膜状物質に一つ以上の箇所で固定される。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカーは膜状物質と一体化された部分である。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカーは1本以上のワイヤで一つ以上の箇所に固定される。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカーは1本以上のワイヤと一体化された部分である。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカーは膜状物質と1本以上のワイヤの両方で一つ以上の箇所に配置される。いくつかの実施形態では、膜状物質は展開の前にコントラスト液で濡らして展開手順の間に放射線不透過性を高める。
【0057】
いくつかの実施形態では、フリンジ26部分は最初は閉塞デバイス上の他のところ(例えば、スリーブ24)で膜状物質と一体化されていない物質である。いくつかのこのような実施形態では、フリンジ26は、例えば、閉塞デバイスを製造するプロセスのある段階で他の膜状物質に固定することができる。フリンジ26は、接着剤、縫合、溶接、ボンド、など、どんな適当な方法を用いて膜状物質に固定してもよい。いくつかの実施形態では、フリンジ26は(閉塞デバイスの他のところの膜状物質に比べて)異なる物質であってよい。いくつかの実施形態では、フリンジ26の物質は、個別フリンジ28に特に適した望ましい性質と特徴が得られるように選ぶことができ、他方デバイスの他のところの膜状物質はその場所に特に適した望ましい性質と特徴が得られるように選ぶことができる。いくつかの実施形態では、個別フリンジ28はデバイスの他のところで用いられる膜状物質よりも剛くなるように作られる(一例としてあげると)。いくつかの実施形態では、非一体的な膜状物質は、閉塞デバイスの他のところで用いられるものと同じタイプの物質である。
【0058】
さらに図2を参照すると、個別フリンジ28は膜状物質22のフリンジ26部分に切り込みを入れるか又は切断することによって(ワイヤ・スリーブ24から突出する横方向切断線で表されるように)作ることができる。フリンジ26の切れ目によって、膜状物質の多数の個別フリンジが生成される。いくつかの実施形態では、フリンジ26の切れ目はワイヤ10に対してほぼ径方向にすなわち直角方向に入れられる。いくつかの実施形態では、フリンジ26の切れ目はワイヤ10に対して非直角方向に入れられる。いくつかの実施形態では、(ワイヤ10に対して)直角切れ目と非直角切れ目の組合せが用いられる。したがって、いくつかの実施形態では、個別フリンジ28は略矩形になる。いくつかの実施形態では、個別フリンジ28は三角形に又は台形のように形成される。いくつかの実施形態では、個別フリンジ28は不規則な形になる。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスの個別フリンジ28は様々なそのような形と不規則形状である。
【0059】
図3を参照すると、例示的閉塞デバイス20が、(引き延ばす力5と5’が存在するか又は存在しないかに応じて)小断面送達形態20aと緩和形態20bで示されている。多数の個別フリンジ28がはっきりと見られる。個別フリンジ28はまた、膜状細片、紐、リボン、フィンガー、フィラメント、突起、剛毛、自由端、すり切れた部分、及び毛などと見なすことができる。いくつかの実施形態では、個別フリンジ28は閉塞デバイスのために様々な機能を果たす。例えば、閉塞デバイス20が体の管腔、空洞、血管、又は器官に埋め込まれたとき、個別フリンジ28は、流体の流れに対する障害物、空洞充填材、組織の内方成長の足場、及び血栓誘発要素などになる。さらに、いくつかの実施形態では、個別フリンジ28は、ワイヤが小断面送達形態から緩和形態に移行したときに有益な応力緩和機能を果たす。すなわち、個別フリンジ28は、ワイヤが形を変えたときに、もしそれがなければ膜状シート22がワイヤ10に及ぼす外力を減らすような働きをすることができる。閉塞デバイス20が体の管腔、空洞、血管、又は器官に埋め込まれたとき、閉塞デバイス20はほぼ緩和形態の形をとる。
【0060】
ここで提供される閉塞デバイスの個別フリンジは適当などんな長さも有し得る。いくつかの実施形態では、フリンジの長さは約2.50mmから12.70mmまでであるが、別の実施形態では、長さがもっと短いフリンジ又はもっと長いフリンジも用いられる。例えば、紡いだ膜状物質を用いる実施形態はナノ領域のフリンジ、毛、又はフィラメントを含むこともできる。本発明の範囲内で適当などんな長さのフリンジも考えられるということは言うまでもない。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイス全体でほぼ一定の長さを有する。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの異なる箇所で変化する長さを有する。例えば、いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの真中の近くで閉塞デバイスの両端におけるよりも長い。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの真中の近くで閉塞デバイスの両端におけるよりも短い。いくつかの実施形態では、フリンジの長さはほぼあるパターンにしたがって(例えば、正弦波、その他のパターンで)変化する。いくつかの実施形態では、フリンジの長さはランダムに変化する。
【0061】
ここで提供される閉塞デバイスの個別フリンジは様々な幅又は直径を有するように形成できる。いくつかの実施形態では、前記フリンジの幅又は直径は、約0.50mmから2.50mmまでであるが、別の実施形態では、幅又は直径がもっと広い又はもっと狭いフリンジが用いられる。本発明の範囲内で適当などんな幅又は直径のフリンジも考えられるということは言うまでもない。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの全体にわたって実質的に一定の幅又は直径を有する。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの異なる箇所で変化する幅又は直径を有する。例えば、いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの真中の近くで閉塞デバイスの両端におけるよりも広い。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスの真中の近くで閉塞デバイスの両端におけるよりも狭い。いくつかの実施形態では、フリンジの幅又は直径はワイヤの長さに沿ってほぼあるパターンにしたがって変化する。いくつかの実施形態では、フリンジの幅又は直径はランダムに変化する。
【0062】
図4を参照すると、例示的閉塞デバイス40が送達形態40aと緩和形態40bで示されている。例示的閉塞デバイス40は膜状チューブ42と1本以上のワイヤ10を含む。ワイヤ10の自然な、緩和(又は形状記憶)形態はコイル状形態である(例えば、図6A-6Fを見よ)。したがって、閉塞デバイス40が送達形態40aにあるためには、引き延ばす力5と5’などの外力(単数又は複数)が必要である。引き延ばす力5と5’の除去又は実質的な減少は、閉塞デバイス40がコイル状の緩和形態40bになることを許容する。形態40bは、ほぼ閉塞デバイス40が体の管腔、空洞、血管、又は器官に埋め込まれたときにとる形態である。
【0063】
閉塞デバイス40の製造の材料と方法は上述した閉塞デバイス20の製造の材料と方法とほぼ同様である。例えば、膜状チューブ42は、膜状物質とチューブについて上で述べたどんな材料、材料処理、及び製造方法を用いて製造してもよい。さらに、ワイヤ10は上で述べたどんな材料、材料処理、及び製造方法を用いて製造してもよい。さらに、膜状チューブ42とワイヤ10は、膜状シートをワイヤに固定するための上述のどんな材料と方法を用いて互いに固定してもよい。
【0064】
しかし、図4に示された閉塞デバイス40と上で説明した閉塞デバイス20との間には違いがある。例えば、いくつかの実施形態では、膜状チューブ42とワイヤ10との間の直径サイズの差は、閉塞デバイス20におけるスリーブ24とワイヤ10の直径サイズの差よりも大きい。いくつかの実施形態では、膜状チューブ42とワイヤ10との間のサイズの差は、閉塞デバイス40が送達形態40aにあるときにワイヤ10が膜状チューブ42の内部でらせんの形をとることを可能にする。いくつかの実施形態では、閉塞デバイス40が送達形態40aにあるときにワイヤ10は膜状チューブ42の内部でらせん以外の非直線形状をとる。いくつかの実施形態では、ワイヤ10は膜状チューブ42の内部で実質的に直線的である。
【0065】
さらに、いくつかの実施形態では、例示的閉塞デバイス40は閉塞デバイス20のようにフリンジを含まない。閉塞デバイス40がその緩和形態40bにあるとき、膜状チューブ42は束ねられ又は集められてかたまる。束ねられてかたまった形の膜状チューブ42は、閉塞デバイスにとって望ましい閉塞性能やその他の性質を持つ。
【0066】
図5を参照すると、別の閉塞デバイス50がその送達形態50aと緩和形態50bで示されている。例示的閉塞デバイス50は膜状チューブ52と1本以上のワイヤ10を含む。ワイヤ10の緩和(又は形状記憶)形態はコイル状形態である(例えば、図6A-6Fを見よ)。したがって、閉塞デバイス50が送達形態50aにあるためには、引き延ばす力5と5’などの外力(単数又は複数)が必要である。引き延ばす力5と5’の除去又は実質的な減少は、閉塞デバイス50がコイル状の緩和形態50bになることを許容する。形態50bは、ほぼ閉塞デバイス50が体の管腔、空洞、血管、又は器官に埋め込まれたときにとる形態である。
【0067】
例示的閉塞デバイス50は上述の例示的閉塞デバイス40の特徴を含む。さらに、閉塞デバイス50は個別フリンジ58を含む。一般に、個別フリンジ58は、フリンジ28について上で説明したように作ることができ、その特徴を含むことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、個別フリンジ58は膜状チューブ52に多数の横方向の切れ目を入れることによって形成できる(フリンジの切断線は送達形態50aに示された実質的に径方向の線で表されている)。いくつかの実施形態では、個別の切れ目は膜状チューブ52の周のまわり全体には入れられない。すなわち、個別の切れ目は膜状チューブ52の一部を完全に切断して多数のチューブを生成するようには入れられない。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ10に隣接する膜状チューブ52の部分は切断されない。
【0069】
閉塞デバイス50がその緩和形態50aをとることを許容されると、個別フリンジ58はコイル状のワイヤ10から突出して、フリンジ58がない同様の閉塞デバイスに比べて大きな輪郭を生み出すことができる。より大きな輪郭は閉塞デバイスのいくつかの応用で有利になる。
【0070】
図6A-6Fは例示的ワイヤ・コイルの形状の実施形態を示す。示されているコイル形状はほぼその緩和形態にある。しかし、いくつかの例ではコイルは、コイルの形態の可視化を容易にするために拡大又は引き延ばされている。示された例示的コイルの形状は、ここで提供される閉塞デバイスの様々な実施形態のためのワイヤの望ましい形と性質を得るように、形と性質がどんな組合せでも混合されて適合されることができる。
【0071】
図6Aは、図1の緩和形態10aと同様の略らせん状コイル60を示す。略らせん状コイル60はワイヤ61から作られる。略らせん状コイル60は両端62と62’を有する。両端62と62’はワイヤ61を二つに折り返して作られる。これは両端62と62’を、ワイヤを折り返さなかった場合の両端62と62’よりもずんぐりした形にするという効果がある。このようなずんぐりした端はいくつかの閉塞デバイス実施形態では望ましい。いくつかの実施形態では、ワイヤの端を他の方法で、例えばワイヤの端に丸い先端を付加することによって丸くすることができる。
【0072】
図6Bは三角形コイル63を示す。いくつかの実施形態では、三角形コイル63のようなコイル(及びここに記載される他のコイル)は、作られるコイルの全体的形状を定める心棒にワイヤ61を巻くことによって形成される。例えば、三角形コイル63はワイヤ61を適当な心棒に三角形パターンで巻くことによって形成される。いくつかの実施形態では、超弾性形状記憶合金ワイヤを用いることができ、ワイヤを心棒に巻き付ける結果として得られたパターンに熱固定することができる。
【0073】
図6Cは二重コイル65を示す。二重コイル65はワイヤ61と64を含み、それらが同じ軸線で、同じ方向で、同じピッチを用いて巻かれる。図示された実施形態では、ワイヤ61と64は2本の撚り線のように互いに合体して働く。二重コイル65は並んだワイヤ61と64を有するが、いくつかの実施形態では、ワイヤを寄り合わせるか又はその他の仕方で互いに絡ませることができる。いくつかの実施形態では、ワイヤ61と64は一致せず、異なるピッチを有し、又は異なる軸線のまわりにある。いくつかの実施形態では、このような多重撚り線構造により、単一ワイヤに比べて、弾性的に変形する能力が高められ、同時に、緩和形態になろうとするバイアスがより強いコイルが得られる。いくつかの実施形態では、3本以上のワイヤがコイル実施形態で用いられる。
【0074】
図6Dは2本以上のワイヤで作られる別のコイル66を示す。コイル66はワイヤ61と64を含む。この実施形態では、一方のワイヤは右手まわりのらせんによって巻かれる一方で、のワイヤは左手まわりのらせんによって巻かれる。どちらも同じ軸線で巻かれている。いくつかの実施形態では、ワイヤを異なる軸線で巻くことができる。いくつかの実施形態では、ワイヤ61及び/又は64は、図示のように隣り合って並んだワイヤなど、多数の撚り線を含む。
【0075】
図6Eは、ランダム化されたコイル67を示す。この実施形態では、ワイヤ61の巻き線が様々なコイル直径、軸線、ピッチなどで巻かれている。このランダム化された形態はある種の実施例で高い閉鎖性能を与える。
【0076】
図6Fは、円錐状コイル68を示す。この実施形態では、ワイヤ61は各巻き毎に増加する外径で、しかし同じ軸線で巻かれる。この円錐状コイル68形態はある種の実施例で閉塞デバイスの中央領域で高い閉鎖性能を与える。
【0077】
図7を参照すると、例示的カップ型閉塞デバイス実施形態のワイヤ・フレーム70が、(やはり、引き延ばし力5と5’が存在するか又は存在しないかによって)緩和形態70aと送達形態70bで示されている。一般に、ワイヤ・フレーム70は、膜状物質も含む例示的閉塞デバイス実施形態の一つの構成要素である(例えば、図8と9を見よ)。
【0078】
図示された実施形態では、ワイヤ・フレーム70は二つの部分を含む。第1の部分はカップ・フレーム72である。第2の部分はコイル部分74である(緩和形態74aと小断面形態74bで示される)。いくつかの実施形態では、ワイヤ・フレーム70は単一ワイヤ71から作られる。いくつかの実施形態では、ワイヤ・フレーム70は2本以上のワイヤから作られる。2本以上のワイヤが用いられる場合、それらは結合されることも結合されないこともある。いくつかの実施形態では、ワイヤ・フレームは二つ以上の部分を含む。ワイヤ71は上で述べたようなワイヤの性質と特徴を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、ワイヤ・フレーム70はカップ・フレーム72部分を含むが、コイル部分74は含まれない。いくつかのこのような実施形態では、閉塞デバイス実施形態は膜状カップ部分を含み、閉塞器のその他の膜状部分を含まない(すなわち、図8の部分74と図9の部分96は含まれない)。
【0080】
カップ・フレーム72は概ねワイヤ・フレームの開かれた円筒のように形成される。いくつかの実施形態では、カップ・フレーム72は、ワイヤ71を円柱心棒のまわりで波状に又は蛇行状(例えば、略正弦波パターン、J字型、V字型、及び卵形線など)に曲げて形成できる。開放した管腔がワイヤ・フレームの円筒の内側で生成され、ワイヤ・フレームの円筒の端が開放している。
【0081】
カップ・フレーム72は、(以下で図10A-10Dを参照してさらに説明されるように)送達カテーテル又はシースに入れるための小断面形態に容易に圧縮できるように形成される。
【0082】
ワイヤ・フレーム70のコイル部分74は、概略的に上で説明したワイヤ10,10,10及び61のような性質と特徴を含む。いくつかの実施形態では、コイル部分74はカップ・フレーム72を形成するためにも用いられるワイヤ71から作られる。
【0083】
図8を参照すると、例示的カップ型閉塞デバイス80はワイヤ71と膜状チューブ82を含む。例示的カップ型閉塞デバイス80は(やはり、引き延ばす力5と5’が存在するか又は存在しないかによって)小断面形態80aと緩和形態80bで示されている。
【0084】
例示的カップ型閉塞デバイス80のワイヤ71は、例えば、図7を参照して説明したワイヤ・フレーム70として構成できる。すなわち、いくつかの実施形態では、ワイヤ71はカップ・フレーム部分72とコイル部分74を有する。膜状チューブ82はワイヤ71に、上で説明した様々な方法(例えば、接着剤、縫合、摩擦、織り込み、及び締まりばめなど)のいずれかによって連続的に又は断続的に固定することができる。
【0085】
膜状チューブ82は、上で膜状物質に関して説明したような材料、処理、及び製造方法のいずれかを用いて作ることができる。例えば、いくつかの実施形態では、膜状チューブ82は押し出された重合体フィルム・チューブである。いくつかの実施形態では、膜状チューブ82はらせん状に巻かれた膜状物質の細片である。いくつかの実施形態では、膜状チューブ82は織られたか又は編まれた構造になっている。
【0086】
膜状チューブ82は遠位端83と近位端84を含む。近位端84は膜状チューブ82の閉鎖端である。いくつかの実施形態では、遠位端83は膜状チューブ82の開放端である。いくつかの実施形態では、遠位端83は膜状チューブ82の閉鎖端である。
【0087】
膜状カップ部分85は近位端84に位置している。いくつかの実施形態では、膜状カップ部分85は単に膜状チューブ82を近位端84に集めて締めることで形成できる。クリップ装置、財布の紐式縫合糸、又は同様の方法を用いて膜状チューブ82を締めて閉じることでカップ部分85を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、膜状カップ部分85を縫って又は密着させて円錐状、半球状、円筒状、又は他の同様な3次元カップ様形状を生成することができる。
【0088】
図10Dを参照してさらに詳しく説明するように、例示的カップ型閉塞デバイス80が体の管腔、空洞、血管、又は器官の所望の標的部位に埋め込まれたとき(例えば、内部漏れを治療するため)、膜状カップ部分85はカップ・フレーム72内で表裏反転される。その形態で、カップ部分85は血管又は空洞を通る流体の通過を閉塞又は減らすように位置決めされる。
【0089】
図9を参照すると、例示的カップ型閉塞デバイス90はワイヤ71と膜状チューブ92を含む。膜状チューブ92は遠位端93と近位端94を含む。例示的カップ型閉塞デバイス90は(やはり、引き延ばす力5と5’が存在するか又は存在しないかによって)小断面形態90aと緩和形態90bで示されている。
【0090】
例示的カップ型閉塞デバイス90は上で説明した例示的カップ型閉塞デバイス80の性質と特徴を含む。さらに、例示的カップ型閉塞デバイス90は個別フリンジ98を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、個別フリンジ98は膜状チューブ92に遠位部分96で多数の横方向に切れ目を入れることによって形成できる。フリンジ切断線は小断面形態90aに示された実質的に径方向の線で表される。図5を参照して上で説明した実施形態と同様に、個別の切れ目は膜状チューブ92の周のまわり全体には入れられない。すなわち、個別の切れ目は膜状チューブ92の一部を完全に切断して多数のチューブを生成するようには入れられない。例えば、いくつかの実施形態では、ワイヤ71に隣接する膜状チューブ92の部分は切断されない。いくつかの実施形態では、膜状チューブ92の(i)ワイヤ・カップ・フレームを覆う部分(ii)膜状カップ部分95を形成する部分も、フリンジを生成するために切断されない。
【0092】
閉塞デバイス90が緩和形態90aをとることを許容されると、個別フリンジ98は遠位部分96から突出して、フリンジ98のない同様な閉塞デバイスに比べてより大きな輪郭を生み出す。より大きな輪郭は、より高い閉塞性能及び/又は血栓誘発性能を有することに適合したある種の実施例で有利であり得る。
【0093】
図10A-10Dは、例示的展開システム100を用いて、例示的カップ型閉塞デバイス90を血管110内で展開する例示的方法を示す一連の図である。血管110には流体(例えば、血液)があって矢印120によって示される方向にそれを通って流れている、すなわち矢印120は遠位方向を指している。したがって、矢印120の反対の方向は近位方向である。例示的カップ型閉塞デバイス90は上で図9を参照して説明した閉塞デバイスである。しかし、ここで提供される方法を用いて(又はその方法を少し変型したものを用いて)他のタイプの閉塞デバイスも展開できる。例示的展開システム100は一般に送達シース(sheath)(又はカテーテル)102とプッシャー(pusher)カテーテル104を含む。
【0094】
図10Aでは、例示的カップ型閉塞デバイス90を収容する例示的展開システム100が血管110内の埋め込み部位に近づくところが示されている。展開システム100は送達カテーテル又はシース102を含む。いくつかの実施形態では、送達シース102は閉塞デバイスを小断面送達形態に拘束し、経皮的に閉塞デバイスを体の空洞又は血管内の標的展開部位まで送達するために用いられるチューブである。チューブ状送達シース102は円形断面を有するか、あるいは他の断面形状、例えば卵形やその他の適当な断面形状を有する。送達シース102の近位端は、臨床オペレーターが操作できる展開アクチュエータ(例えば、手持ち型アクチュエータ又は非手持ち型アクチュエータ)に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、展開アクチュエータは一つ以上の制御手段を備え、それによって臨床オペレーターが送達シース102の一つ以上の様相を制御することができる。いくつかの実施形態では、送達シース102は操縦可能な送達シースである。いくつかの実施形態では、送達シース102の少なくとも遠位端部分は操縦可能である。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤが患者体内にまず設置され、送達シース102がそのガイドワイヤ上に設置される。送達シース102は1本の管腔又は複数の(例えば、2本以上の)管腔を有することができる。いくつかの実施形態では、患者の体内に送達システム102を設置するとき送達シース102をX線で可視化して助けるために、放射線不透過マーカーが送達シース102の一部に(例えば、先端に)含められる。
【0095】
送達シース102は例示的カップ型閉塞デバイス90を収容している。展開プロセスのこの段階で、カップ型閉塞デバイス90は送達シース102の管腔内に嵌るように小断面送達形態にある。小断面送達形態を実現するために、コイル部分74は軸方向に引っ張られてコイルを引き延ばしてその径方向輪郭を小さくし、カップ・フレーム72は径方向に圧縮されて径方向輪郭を小さくする。閉塞デバイス90が送達シース102内に配置されると、送達シース102は閉塞デバイス90に対して拘束力を及ぼして閉塞デバイス90を小断面送達形態に保持する。
【0096】
例示的展開システム100はまたプッシャー・カテーテル104を含む。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104は柔軟な重合体管状構成要素である。プッシャー・カテーテル104は送達シース102の管腔内に配置される。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104の遠位端は閉塞デバイス90に解放可能に結合されている。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104の近位端は展開アクチュエータに結合され、展開アクチュエータには一つ以上の制御手段が設けられ、それによって臨床オペレーターはプッシャー・カテーテル104の一つ以上の様相を制御することができる。他の展開システム実施形態では、閉塞デバイスを拘束し遠隔的に展開するための(プッシャー・カテーテル以外の)他のタイプのデバイスを用いることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104は閉塞デバイス90のコネクタ要素に解放可能に結合される。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104は閉塞デバイス90の膜状シート又はワイヤ部分に解放可能に結合される。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104はループ状縫合糸、クリップ、クランプ、又はプッシャー・カテーテル104を閉塞デバイスに解放可能に結合する同様の構造を含む。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸や同様の構造は放射線不透過性である。
【0098】
いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテル104は、ループ状縫合糸106が通っている二つ以上の管腔を含む。すなわち、ループ状縫合糸106の一つの部分はプッシャー・カテーテル104の第1の管腔を通り、ループ状縫合糸106の第2の部分はプッシャー・カテーテル104の第2の管腔を通ることができる。いくつかの実施形態 では、ループ状縫合糸106はプッシャー・カテーテル104のただ一つ以上の管腔を通ることができる。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸106は縫合材料の撚り線であり、それを用いてプッシャー・カテーテル104と閉塞デバイス90をつなぐことでそれらを解放可能に結合する。例えば、図10Aのプッシャー・カテーテル90は、閉塞デバイス90の膜状シートに取り付けられた縫合糸106を示している。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸106は、1本の縫合材料であって、ループ状縫合糸106の両端が、展開システム100に結合された展開アクチュエータに又はその近くにあるように展開システム100の近位端に配置されている。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸106は展開システム100の近位端からプッシャー・カテーテル104の第1の管腔を通り、プッシャー・カテーテル104の遠位端で第1の管腔から出て医療デバイスに結合し、再びプッシャー・カテーテル104の遠位端に第2の管腔を通って入り、第2の管腔を通って展開システム100の近位端に戻るというルートで通される。臨床オペレーターはループ状縫合糸106の端を強く引いてプッシャー・カテーテル104を閉塞デバイス90にぴったりと寄り添わせることができる。プッシャー・カテーテル104が閉塞デバイス90にぴったりと寄り添うと、プッシャー・カテーテル104の動きが閉塞デバイス90の対応する動きを誘発するようになる。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸106の一端又は両端が展開アクチュエータに結合され、前記展開アクチュエータは一つ以上の制御手段を備え、前記制御手段は臨床オペレーターが閉塞デバイス90の一つ以上の様相を制御することを可能にする。
【0099】
図10Bでは、送達シース102が部分的に引き戻され(近位方向に移動させられ)る一方で、プッシャー・カテーテル104はほぼ静止した状態に維持される。送達シース102とプッシャー・カテーテル104との間のこの相対運動は閉塞デバイス90の遠位部分96を送達シース102の管腔から出現させる。送達シース102がこの遠位部分96に及ぼす拘束力が実質的になくなるため、遠位部分96は解放されて自己拡張して緩和形態になろうとする。遠位部分96のワイヤがその自然な緩和コイル状態になろうとするにつれて、今度は、遠位部分96は軸方向に収縮し、径方向に広がることができる。その緩和状態で遠位部分96は径方向に拡がって血管110の管腔を完全に又は部分的に満たす。
【0100】
展開方法のいくつかの実施例では、プッシャー・カテーテル104が遠位方向に押される一方で、送達シース102は実質的に静止した状態で維持される。送達シース102とプッシャー・カテーテル104との間の相対運動は閉塞デバイス90の遠位部分96を送達シース102の管腔から出現させる。これは上述の送達シースの引き戻しという方法と同様である。展開方法のいくつかの実施例では、二つの方法の組合せが用いられる。
【0101】
図10Cでは、送達シース102がさらに近位方向に引き戻される一方で、プッシャー・カテーテル104は実質的に静止状態に維持されている。送達シース102とプッシャー・カテーテル104との間のこの相対運動は閉塞デバイス90全体を送達シース102の管腔から出現させる。閉塞デバイス90に対する送達シースの拘束力が除かれるので、カップ・フレーム72は解放され自己拡張してその緩和形態になろうとする。さらに、カップ・フレーム72のワイヤがその自然な緩和形態をとろうとすると、カップ・フレーム72は径方向に拡がることができる。その緩和状態で、カップ・フレーム72は径方向に拡がって血管110の内壁に完全に又は部分的に隣接するようになる。閉塞デバイス90の膜状カップ部分95もこの段階で送達シース102から出現する。
【0102】
展開プロセスのこの段階で、臨床オペレーターはまわりの体組織に対する閉塞デバイス90の位置の望ましさを確認することができる。場合によっては、臨床医は、閉塞デバイス90の位置を可視化するために、磁気共鳴画像法(MRI)又はX線蛍光画像法を用いる。一般に、臨床医はまわりの体組織に対する閉塞デバイス90の位置、場所、向き、固定強度、及び封止性能の一つ以上に関心がある。いくつかの実施形態では、放射線不透過マーカー又はジャケットを閉塞デバイス90の例えばワイヤ及び/又は膜状物質に含めることができる。放射線不透過性のループ状縫合糸106を含むいくつかの実施形態では、閉塞デバイス90の固定の妥当性が、ループ状縫合糸106にたるみを生じさせて、X線透視法を用いてそのたるみがある時間維持されることを可視化することによって、確認され得る。
【0103】
いくつかの実施例では、閉塞デバイス90がループ状縫合糸106から解放された後にとりそうな位置をシミュレートするために、臨床オペレーターはループ状縫合糸106を閉塞デバイス90に対する保持から完全に解放するのではないが少しゆるめることができる。すなわち、臨床医はループ状縫合糸106に少したるみを誘発させて前記縫合糸106が閉塞デバイス90ときつく係合しないようにすることができる。ループ状縫合糸106をゆるめると、ループ状縫合糸106が係合の結果として閉塞デバイス90に及ぼす位置的な影響を減らすことになるかもしれない。ループ状縫合糸106をゆるめることで、臨床医はまわりの組織に対する閉塞デバイス90の位置決め及び固定強度を評価することができる。臨床医が閉塞デバイス90の位置決め及び固定強度に満足できない場合、プッシャー・カテーテル104とループ状縫合糸106を操作することによって閉塞デバイス90の位置を決め直す能力を回復するために、ループ状縫合糸106を再び締めることができる。
【0104】
臨床オペレーターはプッシャー・カテーテル104を様々な目的のために用いて閉塞デバイス90を操作することができる。プッシャー・カテーテル104の操作は閉塞デバイス90を展開部位において体の組織に再位置決め及び/又は設置することに役立つ。いくつかの実施形態では、固定デバイス(例えば、返し、突起、など)が閉塞デバイス90に含められる。これらの実施形態では、プッシャー・カテーテル104の操作が固定デバイスをまわりの組織に埋め込むのに役立つ。
【0105】
臨床オペレーターが閉塞デバイス90の位置又は固定強度に満足できない場合、臨床オペレーターは閉塞デバイス90を取り出して送達シース102内に再収容することができる。そのために、臨床医は、例えば、送達シース102を遠位方向に前進させる一方で、閉塞デバイス90にループ状縫合糸106によって固定されたプッシャー・カテーテル104の軸方向位置を実質的に維持する。閉塞デバイス90を送達シース内に再び捕捉した後、臨床オペレーターは閉塞デバイス90を展開するための上述のプロセス・段階を繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、閉塞デバイス90の再捕捉を助けるために普通のわな(snare)を用いることもできる。
【0106】
臨床オペレーターが閉塞デバイス90の位置決めに満足したとき、臨床オペレーターは閉塞デバイス90を展開システム100から解放することができる。例えば、臨床オペレーターはループ状縫合糸106を閉塞デバイス90との係合から離脱させることができる。ループ状縫合糸106を閉塞デバイス90との係合から離脱させるために、臨床オペレーターは、プッシャー・カテーテル104から適当な長さのループ状縫合糸106を引き出すために、ループ状縫合糸106の一端を解放して、ループ状縫合糸106の他端を引くことができる。適当な長さのループ状縫合糸106をプッシャー・カテーテル104から引き出した後、ループ状縫合糸106は閉塞デバイス90との係合が解除される。この段階で、閉塞デバイス90は展開システム100との結合から完全に外れる。いくつかの実施形態では、ループ状縫合糸106,又はプッシャー・カテーテル104を閉塞デバイス90に結合するのに用いられる他のデバイスは、展開時点でプッシャー・カテーテル104から取り外され、パッキングのために、表裏反転した膜状カップ部分95内に流体とともに流れ込むことが許容される。
【0107】
図10Dでは、閉塞デバイス90は血管110内に展開された形態で示されている。送達システム100は埋め込み部位から撤去されている。膜状カップ部分95は表裏反転したカップの配向に移行している。すなわち、膜状カップ部分95は遠位方向にカップ・フレーム72によって画定される管腔内まで移動している(表裏反転した膜状カップ部分95がはっきりと可視化できるように、カップ・フレーム72はこの図には示されていない)。この配向で膜状カップ部分95は血管110を通って流れようとする流体を閉塞するのによい位置にある。
【0108】
膜状カップ部分95の表裏反転したカップの配向への移行は様々な仕方で行われる。いくつかの実施形態では、膜状カップ部分95は血管110における流体圧力の結果として表裏反転する。例えば、血管110内の流れは矢印120の方向にあるので、膜状カップ部分95は流体が及ぼす圧力によって自然に表裏反転する。これは吹き流しの機能に類推される。軸方向の流体の流れが表裏反転したカップに流れ続けるので、それがカップをその流体容量までふくらますに十分な径方向圧力を生ずる。いくつかの実施例では、膜状カップ部分95は臨床オペレーターの行動の結果として表裏反転する。例えば、臨床オペレーターは、膜状カップ部分95を軽く押して表裏反転した配向にするためにプッシャー・カテーテル104を用いることがある。いくつかの実施例では、これらの因子の組合せが膜状カップ部分95をカップ・フレーム72内で表裏反転させる。
【0109】
表裏反転した膜状カップ部分95は様々な体積容量を有する。いくつかの実施形態では、表裏反転した膜状カップ部分95はカップ・フレーム72によって画定される内部スペース全体を満たさない。いくつかの実施形態では、表裏反転した膜状カップ部分95はカップ・フレーム72によって画定される内部スペースの体積以上の流体容量を有する。いくつかのこのような実施形態では、表裏反転した膜状カップ部分95は、膜状カップ部分95からカップ・フレーム72への実質的な径方向の力の追加を妨げるように設計される。いくつかのこのような実施形態では、流体が表裏反転した膜状カップ部分95を満たして生じる表裏反転した膜状カップ部分95の径方向膨張がそれをカップ・フレーム72の内面に押し付け、いくつかの実施形態では、血管管腔の壁にも押し付け、それによってデバイスの移動を防ぐのを支援する。いくつかの実施形態では、膜状カップ部分95は、体の管腔、空洞、血管、又は器官の破裂の危険を軽減するように、限られた大きさの径方向の力しか生じないように設計される。
【0110】
上述したように、カップ型閉塞デバイスのいくつかの実施形態はカップ・フレーム72部分を含むが、コイル部分は含まれない。いくつかの実施形態では、閉塞デバイス実施形態は膜状カップ部分を含むが、それ以外の膜状閉塞部分を含まない(例えば、図8の部分74や図9の部分96が含まれない)。いくつかのこのような実施形態で、遠位端(表裏反転したとき)がカップ・フレーム72の遠位端を超えて延びる長い表裏反転した膜状カップ部分95は、血管壁と表裏反転した膜状カップ部分95との接触表面を増大させて閉塞デバイスの移動に対する抵抗性を高めることは明らかである。したがって、膜状カップ部分95は、カップ・フレーム72の遠位端を5,10,15,20,25,30,35,40mm以上超えて延びるようなサイズに設計されてよい。さらに、膜状カップ部分95は、いっぱいにふくらんだとき、その直径がカップ・フレーム72の内径よりわずかに大きくなるように体積サイズが設計されてよい。したがって、膜状カップ部分95は、閉塞デバイスの長さの全体又は少なくとも一部分で血管壁の表面と接触するために、カップ・フレーム72の巻きの間のスペースを通って膨れ出すことができる。
【0111】
閉塞デバイス90のワイヤは、血管110内で展開された後に閉塞デバイス90の移動を防ぐためにカップ・フレーム72を血管110の壁と係合させる一つ以上の固定要素(例えば、アンカー、逆刺、突起、及び/又は貫入部材)を含むことができる。同様に、表裏反転した膜状カップ部分95の表面が血管の壁と接触する実施形態では、膜状シート物質がカップ表面と血管壁との間の摩擦を増大させる手段を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、表面に粗い肌理を付与するコーティングが膜状シートに施される。重合体物質の顆粒を含むコーティングが当業者には公知であり、それを用いて膜状シートにざらざらした表面を付与して摩擦を高め、ここで提供される閉塞デバイスの移動を防ぐことができる。例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれる“多孔質材料”という標題の2010年9月10日出願の共同で所有される出願中の米国特許出願公開第2012/0064278号に記載されたポリフルオロカーボン顆粒と共に熱処理された重合体は膜状カップ部分95に用いるのに適している。
【0112】
上で説明したように閉塞デバイスの生体内設置を助けるために、放射線不透過物質を組み込んで体の管腔、空洞、血管又は器官におけるデバイスの位置の検出を可能にすることができる。いくつかの放射線不透過物質が当業者には周知であり、それをデバイスの表面に取り込む、又は他の仕方でデバイスと一体化させることができる。例をあげると、そのような物質としては金、プラチナ、プラチナタングステン、パラジウム、プラチナイリジウム、ロジウム、タンタル、又はそれらの合金や複合物がある。放射線不透過物質は、デバイス全体に、又は離散的な領域に、そして任意の数のパターンで組み込んでX線による検出を可能にすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくともワイヤの遠位端が放射線不透過物質を含む。
【0113】
体の管腔、空洞、血管又は器官に展開されると、ここで提供される閉塞デバイスは流体の流れを妨げて体の管腔、空洞、血管又は器官を閉塞する。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスはまた、血栓形成及び内皮化の一つ以上を促進する。
【0114】
図11は、上で図1-6Fを参照して説明したようなコイル閉塞デバイスのような閉塞デバイスを製造する例示的方法200を示す。上で閉塞デバイスに関して説明した物質と製造方法が方法200に適用できる。方法200の記述は、その工程段階に関する簡潔な記述を含み、それは読者が方法200の段階を上の関連標題事項と関連づけるのに役立つ。
【0115】
方法200は工程210から始まり、少なくとも1本の形状記憶ワイヤがそこで用意される。上で説明したように、ワイヤは、金属や重合体材料など、どんな生体適合性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ワイヤは超弾性合金材料である。
【0116】
工程220で、ワイヤをコイル形状に形成できる。いくつかの実施形態では、ワイヤはコイル形状を形成するために心棒に巻かれる。いくつかの実施形態では、コイル形状に巻かれたワイヤはコイル形状を記憶するように熱固定される。いくつかの実施形態では、ワイヤはコイル形状へ塑性変形される。様々なコイル形状を用いることができる。図6A-6Fはいくつかの代表的な例を示す。
【0117】
工程230で、コイルが引き延ばされる。いくつかの実施形態では、コイルはコイルを引っ張ることによって引き延ばされる。すなわち、コイルは、引き離すことによって、すなわちコイルの両端を反対方向に変位させることによって引き延ばすことができる。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルは実質的に直線形である。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルはワイヤのコイル形状を暗示する波形の形状を有する。引き延ばされたコイルは、引き延ばす前のコイルよりも大きな長さを有する。引き延ばされたコイルは、引き延ばす前のコイルの全体直径よりも小さな直径を有する。
【0118】
工程240で、膜状物質が引き延ばされたコイルに固定される。いくつかの実施形態では、膜状物質は物質の細片である。いくつかの実施形態では、膜状物質は引き延ばされたコイルに巻かれたか又はコイルのまわりで折り曲げられた細片である。いくつかの実施形態では、膜状物質は引き延ばされたコイルを囲むチューブである。いくつかの実施形態では、このチューブは膜状細片を巻き付けることによって作られる。いくつかの実施形態では、このチューブは編まれたもの、織られたもの、又は押し出されたものである。いくつかの実施形態では、いくつか例をあげると、膜状物質は引き延ばされたコイルに、接着剤で、摩擦によって、締まりばめで、又は引き延ばされたコイルを膜状物質に織り込むことによって固定される。いくつかの実施形態では、膜状物質は引き延ばされたコイルに、フリンジ部分、すなわち引き延ばされたコイルと直接接触していない膜状物質の部分、が生ずるように固定される。
【0119】
工程250で、閉塞デバイスに膜状物質のフリンジが任意選択的に形成されるか又は追加されることが可能である。いくつかの実施形態では、フリンジは膜状物質に切り込みを入れることによって形成される。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスに固定された膜状物質の追加部分である。
【0120】
工程260で、固定された膜状物質を有する引き延ばされたコイルは収縮したコイル形状に巻き戻ることが許容され得る。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルは、工程220の結果としてのコイル形状に収縮するように付勢される。いくつかの実施形態では、この工程は、引き延ばされたコイルに固定された膜状物質の再配置も引き起こす、すなわち、膜状物質は束ねられるか又は束に圧縮される。
【0121】
図12は、上で図8と9を参照して説明したカップ型閉塞デバイスなどの閉塞デバイスを製造する例示的方法300を示す。上で閉塞デバイスに関して述べた物質と製造方法が方法300にも適用できる。方法300の記述は、その工程段階に関する簡潔な記述を含み、それは読者が方法300の段階を上の関連標題事項と関連づけるのに役立つことができる。
【0122】
方法300は工程310から始まり、少なくとも1本の形状記憶ワイヤがそこで用意される。上で説明したように、ワイヤは、金属や重合体材料など、どんな生体適合性材料も含むことができる。いくつかの実施形態では、ワイヤは超弾性合金材料である。
【0123】
工程320で、1本以上のワイヤがコイル形状に形成される。いくつかの実施形態では、カップ・フレームはワイヤ・フレームの開放した円筒である。いくつかの実施形態では、カップ・フレームはワイヤを円筒状心棒のまわりに波形に又は蛇行の形で(例えば、略正弦波形、U字形、V字形、卵形、などで)曲げることによって形成できる。いくつかの実施形態では、ワイヤ・フレーム円筒の内部に開放した管腔が生成され、ワイヤ・フレーム円筒の端は開放している。いくつかの実施形態では、カップ・フレームは送達カテーテル又はシースに収容するための小断面形態に容易に圧縮できるように形成される。
【0124】
工程330で、1本以上のワイヤをコイルに任意選択的に形成できる。上で図7を参照して説明したように、いくつかの実施形態では、コイルを形成するために用いるワイヤはカップ・フレームが作られたものと同じワイヤである。いくつかの実施形態では、コイルを形成するために用いるワイヤはカップ・フレームが作られたものと別のワイヤである。様々なタイプのコイルを形成できる(例えば、図6A-6Fを見よ)。
【0125】
工程340で、作っている閉塞デバイスがオプションとしてのコイルを含んでいる場合、コイルを形成するために用いた1本以上のワイヤを引き延ばすことができる。場合によっては、コイルはコイルを引っ張ることで引き延ばされる。すなわち、コイルは、引き離すことによって又はコイルの両端を反対方向に変位させることによって引き延ばすことができる。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルは実質的に直線形である。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルはワイヤのコイル形状を暗示する波形の形状を有する。引き延ばされたコイルは、引き延ばす前のコイルよりも大きな長さを有する。引き延ばされたコイルは、引き延ばす前のコイルの全体直径よりも小さな直径を有する。
【0126】
工程350で、膜状物質が形状記憶ワイヤに固定される。いくつかの実施形態では、膜状物質はカップ・フレームとオプションとしての引き延ばされたコイルとを囲むチューブである。いくつかの実施形態では、チューブは押出フィルム物質である。いくつかの実施形態では、チューブは膜状細片を巻いて作られる。いくつかの実施形態では、チューブは編んだもの又は織ったものである。いくつかの実施形態では、膜状物質は物質の細片である。いくつかの実施形態では、膜状物質はカップ・フレームとオプションとしての引き延ばされたコイルに巻かれたか又はコイルのまわりで折り曲げられた細片である。いくつかの実施形態では、膜状物質は、数例をあげると、接着剤によって、摩擦によって、締まりばめによって、又は引き延ばされたコイルを膜状物質に織り込むことによってワイヤに固定される。
【0127】
膜状物質は、膜状物質のカップ形状部分がカップ・フレームに固定されるようにワイヤに取り付けられる。いくつかの実施形態では、膜状カップ形状部分はカップ・フレームの近位端に位置してそれに固定される。いくつかの実施形態では、膜状カップ形状部分は単に近位端で膜状チューブを集めて締めることによって形成される(例えば、図8を見よ)。クリップ装置、財布の紐式縫合糸、又は同様の方法を用いて膜状チューブを締めて閉じてカップ形状部分を生成することができる。いくつかの実施形態では、膜状カップ形状部分は、円錐形、半球形、円筒状、又はその他の同様な3次元カップ様形状を生成するために、縫われるか又はしっかりと結合される。
【0128】
工程360で、任意選択的に、膜状物質のフリンジを閉塞デバイスに形成できる。いくつかの実施形態では、任意選択的に、フリンジをオプションの引き延ばされたコイルに固定された膜状物質から(又はそれに加えて)形成できる。いくつかの実施形態では、フリンジは膜状物質に切り込みを入れて形成される。いくつかの実施形態では、フリンジは閉塞デバイスに固定された膜状物質の追加の部分である。
【0129】
工程370で、固定された膜状物質を有するオプションとしての引き延ばされたコイルは、収縮したコイル形状に巻き戻ることを許容され得る。いくつかの実施形態では、引き延ばされたコイルは工程330の結果としてのコイル状の形に収縮するように付勢される。いくつかの実施形態では、この工程は、引き延ばされたコイルに固定された膜状物質の再配置も引き起こす、すなわち膜状物質は束ねられるか又は束に圧縮される。
【0130】
図13は閉塞デバイスを体の管腔、空洞、血管又は器官内の標的部位に埋め込む例示的方法400を示す。方法400は閉塞デバイスを埋め込むためのカテーテル法又は経皮法である。
【0131】
方法400は工程410で始まり、そこでは形状記憶材料のワイヤと膜状物質を含む閉塞デバイスが用意される。例えば、閉塞デバイスはここで記載した閉塞デバイスの実施形態のいずれであってもよい。
【0132】
工程420で、展開システムが用意される。方法400のいくつかの実施形態では、展開システムは図10A-10Dを参照して説明した展開システム100のようなものである。方法400のいくつかの実施形態では、経皮的なデバイス送達のための他のタイプの展開システムが用いられる。
【0133】
工程430で、展開システムにおいて閉塞デバイスが展開前状態に構成される。いくつかの閉塞デバイス実施形態では、展開前状態は閉塞デバイスの形状記憶ワイヤを変形することで達成される小断面状態である。例えば、コイルを有する閉塞デバイスはコイルを引っ張ることによって(すなわち、コイルの両端を反対方向に変位させてその位置に保つことによって)展開前の小断面状態に構成できる。カップを有する閉塞デバイス実施形態はカップ・フレーム部分を径方向に圧縮することによって展開前の小断面状態に構成できる。展開前の小断面状態に構成された閉塞デバイスは展開システムの構成要素内に配置することができる。例えば、閉塞デバイスを送達カテーテル又はシースの管腔内に配置することができる。
【0134】
工程440で、閉塞デバイスは展開システムを用いて標的部位に送達される。標的部位は、体の管腔、空洞、血管又は器官におけるある特定箇所である。いくつかの実施形態では、送達システムは患者の血管を通って標的部位に達するように用いられる。いくつかの実施形態では、送達システムは臨床オペレーターが操作できる制御デバイスを用いることによって操縦可能である。いくつかの実施形態では、展開システム及び/又は閉塞デバイスの位置を可視化するシステムが用いられる(例えば、X線透視システム)。
【0135】
工程450で、閉塞デバイスは体の管腔、空洞、血管又は器官内の標的部位で展開される。いくつかの実施形態では、プッシャー・カテーテルを用いて送達カテーテルの管腔から閉塞デバイスを押し出す。いくつかの実施形態では、閉塞デバイスは送達カテーテルから展開された結果としてそのサイズと形状が再構成される。いくつかの実施形態では、再構成された閉塞デバイスは体の管腔、空洞、血管又は器官内で閉塞デバイスの場所で流体の流れを減らす又はなくすように位置決めされる。
【0136】
ここで提供された閉塞デバイスのいくつかの実施形態、及びその製造と使用の方法を以下の実施例によってさらに説明する。
実施例1
フリンジ付き閉塞デバイスの製造
【0137】
体組織を通る流体の流れを阻止するフリンジ付き閉塞デバイスを以下のように作成した。
【0138】
NiTiワイヤが、らせん状コイル形状を記憶して展開したときにその形状をとるように熱処理された。ワイヤは引っ張って直線状に延ばされた。ポリフルオロカーボン(ePTFE)シートがワイヤのまわりに2層で巻かれ、加熱されて(320℃オーブンで3分間)ワイヤに接合された。
【0139】
重合体シートの固定されない自由な端縁がワイヤの長さ方向で開いたままに残された。この自由な端縁にランダムに切れ目を入れてデバイスの長さ方向に外側フリンジを形成した。
実施例2
フリンジ付き閉塞デバイスの製造
【0140】
体組織を通る血液の流れを阻止するフリンジ付き閉塞デバイスを以下のように作成した。
【0141】
NiTiワイヤが、らせん状コイル形状を記憶して展開したときにその形状をとるように熱処理された。ワイヤは引っ張って直線状に延ばされた。ポリフルオロカーボン(ePTFE)シートがワイヤのまわりに1層で巻かれ、熱処理されてワイヤに熱的に接合された(320℃オーブンで3分間)。チューブにランダムに切れ目を入れてデバイスの長さ方向に外側フリンジを形成した。
【0142】
ワイヤは部分的に展開前の形状(ルーズ・コイル)をとることができるようにした。切れ目の数と場所はコイルからチューブに及ぼされる張力を緩和するのに十分であり、それは送達カテーテル内に入れるために引っ張られることができた。
実施例3
フリンジ付き閉塞デバイスによる閉塞
【0143】
実施例2に記載されたように製造されたフリンジ付き閉塞デバイスによる管腔(血管管腔モデル)の閉塞が下記の条件の下で試験された。
【表1】
【0144】
展開後圧力1.4psiでデバイスの移動なしに管腔のほぼ完全な閉塞が実証された。デバイスは試験の後で無傷で無事に撤収された。
実施例4
流体捕捉カップを有する閉塞デバイスの製造
【0145】
流体捕捉カップを有する閉塞デバイスを以下のように作成した。
【0146】
らせん状コイル形状を記憶して展開したときにその形状をとるように、ニチノール・ワイヤが熱処理された。らせん状コイル状態で展開されている間、ポリフルオロカーボン・カップの開放端が熱的接合によってコイル状ワイヤの完全な少なくともひと巻きに固定された。
実施例5
流体捕捉カップを有する閉塞デバイスの製造
【0147】
流体捕捉カップを有する閉塞デバイスを以下のように作成した。
【0148】
らせん状コイル形状を記憶して展開したときにその形状をとるように、ニチノール・ワイヤを熱処理した。ワイヤが長手方向に延ばされた状態で、円錐状の閉鎖端を有しFEP顆粒がコーティングされたePTFEのシートがワイヤのまわりに巻きつけられて、それに熱で固定された(320℃オーブンで3分間)。円錐状の閉鎖端の先端は固い栓であり、前記栓を穿刺してループ状縫合糸を挿入するための貫通孔を形成した。
実施例6
流体捕捉カップを有する閉塞デバイス内への流体の流れ
【0149】
実施例5に記載されたデバイスのコイルの中心を通る流体の軸方向流れの捕捉が流体力学のモデルで試験された。
【0150】
125mmHgで、8mmの管腔スペース(チューブ)を通る流体の流れはカップをコイルの中心に完全に表裏反転させた。表裏反転したカップ内に捕捉された血液はカップを径方向にふくらましてカップの外側表面をコイルの内側表面に押し付けた。
【0151】
本明細書は特定の実施例に関わる多くの細部を含むが、それらはここに記載されたデバイス、方法、及びシステムの範囲を制限するものではなく、個々の実施形態に特有な特徴を記載しているものと解釈されるべきである。本明細書で個別の実施形態の文脈で記載されたいくつかの特徴は、一つの実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、一つの実施形態の文脈で記載された様々な特徴は、多くの実施形態で別々に、又は任意の適当な組合せで実施することもできる。さらに、様々な特徴が上ではある組合せで働くと記載され、最初はそのように主張されたとしても、主張された組合せのうちの一つ以上の特徴を、場合によってはその組合せから切り離すこともでき、主張された組合せが部分組合せ又は部分組合せのある変型に向けられることもある。
【0152】
これまでの説明で本発明の様々な特徴と利点が、デバイス及び/又は方法の様々な選択肢及び構造と機能の細部も含めて記述された。本明細書は例示的することを意図したもので、すべてを尽くすことは意図していない。特に構造、材料、要素、成分、形状、サイズ、及び部品の配置に関して、本発明の原理の範囲内で、かつ添付された特許請求の範囲が表現された用語の広い一般的に意味で示されたすべての範囲内で、様々な変更を加えることが可能であることは当業者には明らかであろう。これらの様々な変更が添付された特許請求の範囲の制限と範囲から逸脱しない限りにおいて、それらの変更は本発明に包含される。
以下に、前述した実施形態に対応する本発明の様態を記す。
[様態1]
埋め込み可能な閉塞デバイスを作る方法であって:
少なくとも1本の形状記憶ワイヤを用意する段階;
前記形状記憶ワイヤをある全体外径とあるコイル長さとを有するコイルに成形する段階;
前記コイルの前記全体外径よりも小さい内径を有する柔軟な重合体チューブを用意する段階;
前記コイルを引き延ばす段階であって、引き延ばされた前記コイルは前記コイル長さより大きな引き延ばされたコイル長さを有し、引き延ばされた前記コイルは前記コイルの前記全体外径より小さい引き延ばされたコイル直径を有する、前記コイルを引き延ばす段階;
前記柔軟な重合体チューブを前記引き延ばされたコイルに取り付ける段階;及び
前記引き延ばされたコイルが前記引き延ばされたコイル長さより小さい収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階であって、それにより前記柔軟な重合体チューブに閉塞に有利な不規則形態を形成させる、前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階;を含む方法。
[様態2]
前記コイルは実質的にらせん状コイルである、様態1に記載の方法。
[様態3]
前記柔軟な重合体チューブがePTFEを含む、様態1に記載の方法。
[様態4]
前記引き延ばされたコイルが前記収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体チューブを前記引き延ばされたコイルに取り付ける段階をさらに含む、様態1に記載の方法。
[様態5]
前記柔軟な重合体チューブが前記引き延ばされたコイルに前記ワイヤの全長で取り付けられる、様態4に記載の方法。
[様態6]
前記柔軟な重合体チューブが前記引き延ばされたコイルに前記引き延ばされたコイルの長さに沿った多数の離散的な取り付けポイントで取り付けられる、様態4に記載の方法。
[様態7]
前記柔軟な重合体チューブが、前記柔軟な重合体チューブの内径と前記コイルの前記全体外径との間の締まりばめによって、前記引き延ばされたコイルに取り付けられる、様態4に記載の方法。
[様態8]
前記柔軟な重合体チューブが接着剤によって前記引き延ばされたコイルに取り付けられる、様態4に記載の方法。
[様態9]
前記引き延ばされたコイルが前記収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体チューブに切り込みを入れて前記柔軟な重合体チューブの長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階をさらに含む、様態1に記載の方法。
[様態10]
埋め込み可能な閉塞デバイスを作る方法であって:
少なくとも1本の形状記憶ワイヤを用意する段階;
前記形状記憶ワイヤをある全体外径を有するコイルに成形する段階;
前記コイルを引き延ばす段階であって、それにより前記コイルの長さを引き延ばされた長さに増大させて、前記コイルの前記全体外径を減少させる、前記コイルを引き延ばす段階;
柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに巻きつける段階であって、ここで前記引き延ばされたコイルは前記柔軟な重合体物質によって実質的に覆われ、前記柔軟な重合体物質の一部は前記引き延ばされたコイルと直接に接触していない、柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに巻きつける段階;及び
前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階であって、前記収縮した長さは前記引き延ばされた長さよりも短く、それにより前記柔軟な重合体物質に閉塞に有利な不規則形状をとらせる、前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階;を含む方法。
[様態11]
前記コイルは実質的にらせん状コイルである、様態10に記載の方法。
[様態12]
前記柔軟な重合体物質はePTFEを含む、様態10に記載の方法。
[様態13]
前記引き延ばされたコイルが前記収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに取り付ける段階をさらに含む、様態10に記載の方法。
[様態14]
前記柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに前記ワイヤの全長で取り付ける段階をさらに含む、様態10に記載の方法。
[様態15]
前記柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに前記引き延ばされたコイルの長さに沿った多数の離散的な取り付けポイントで取り付ける段階をさらに含む、様態10に記載の方法。
[様態16]
接着剤を用いて前記柔軟な重合体物質を前記引き延ばされたコイルに取り付ける段階をさらに含む、様態10に記載の方法。
[様態17]
前記引き延ばされたコイルが前記収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体物質に切り込みを入れて前記柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階をさらに含む、様態10に記載の方法。
[様態18]
体組織における管腔を通る流体の流れを制限するデバイスであって:
近位端と遠位端とを有する少なくとも1本のワイヤ;及び
柔軟な重合体カップ;を具備し、前記柔軟な重合体カップは前記ワイヤの近位端に固定された開放端を含み、前記柔軟な重合体カップは前記管腔内への展開中に展開前状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されており、前記表裏反転状態における前記柔軟な重合体カップは前記管腔を通る流体の流れを制限するように構成されている、デバイス。
[様態19]
前記柔軟な重合体カップは重合体物質のシートから形成される、様態18に記載のデバイス。
[様態20]
前記柔軟な重合体カップは重合体物質のチューブから形成される、様態18に記載のデバイス。
[様態21]
前記柔軟な重合体カップはePTFEを含む、様態18に記載のデバイス。
[様態22]
一つ以上の放射線不透明マーカーをさらに具備する、様態18に記載のデバイス。
[様態23]
柔軟な重合体物質をさらに具備し、前記柔軟な重合体物質は前記ワイヤのまわりに配置され、前記柔軟な重合体物質は前記柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿って外側フリンジを含む、様態18に記載のデバイス。
[様態24]
体組織における管腔を閉塞する方法であって:
近位端及び遠位端を有する少なくとも1本のワイヤと柔軟な重合体カップとを具備する閉塞デバイスを用意する段階であって、前記柔軟な重合体カップは前記ワイヤの近位端に固定された開放端を含み、前記柔軟な重合体カップは前記管腔内への展開中に展開前状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されており、前記表裏反転状態における前記柔軟な重合体カップは前記管腔を通る流体の流れを制限するように構成されている、閉塞デバイスを用意する段階;
送達管腔を具備する送達シースを用意する段階;
前記送達管腔内に前記閉塞デバイスを前記展開前状態で構成する段階;
前記閉塞デバイスを展開前状態で含む送達管腔を前記管腔内の標的部位まで送達する段階;及び
前記管腔内の標的部位で前記閉塞デバイスを展開する段階;を含んでおり、
前記展開する段階は:
前記閉塞デバイスを前記送達管腔から排出する段階;及び
前記柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階;を含む方法。
[様態25]
前記柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階は、少なくとも部分的に、流体によって前記柔軟な重合体カップに及ぼされる圧力によって引き起こされる、様態24に記載の方法。
[様態26]
前記柔軟な重合体カップを展開前状態から表裏反転状態に形態変化させる段階は、少なくとも部分的に、あるデバイスによって前記柔軟な重合体カップに及ぼされる圧力によって引き起こされる、様態25に記載の方法。
[様態27]
埋め込み可能な閉塞デバイスを作る方法であって:
少なくとも1本の形状記憶ワイヤを用意する段階;
前記形状記憶ワイヤをある全体外径を有し開放した近位端と遠位端とを有するカップ・フレームに成形する段階;
柔軟な重合体カップを前記カップ・フレームの前記近位端に固定する段階;
を含み、前記柔軟な重合体カップは開放端と閉鎖端とを含み、前記開放端は前記カップ・フレームに固定され、前記柔軟な重合体カップは体の管腔内への埋め込み中に展開前状態から表裏反転状態に形態変化するように構成されており、前記表裏反転状態の前記柔軟な重合体カップは前記管腔を閉塞するように構成されている、方法。
[様態28]
前記形状記憶ワイヤをある全体外径とあるコイル長さとを有するコイルに成形する段階;
前記コイルを引き延ばす段階であって、引き延ばされた前記コイルは前記コイル長さより大きい引き延ばされたコイル長さを有し、前記引き延ばされたコイルは前記全体外径より小さい引き延ばされたコイル直径を有する、前記コイルを引き延ばす段階;
前記引き延ばされたコイルに柔軟な重合体チューブを取り付ける段階であって、前記柔軟な重合体チューブは前記コイルの前記全体外径よりも小さい内径を有する、前記引き延ばされたコイルに柔軟な重合体チューブを取り付ける段階;及び
前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階であって、前記収縮した長さは前記引き延ばされたコイル長さより短く、それにより前記柔軟な重合体チューブに閉塞に有利な不規則形状を形成させる、前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階;をさらに含む、様態27に記載の方法。
[様態29]
前記引き延ばされたコイルが巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体チューブに切り込みを入れて前記柔軟な重合体チューブの長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階をさらに含む、様態28に記載の方法。
[様態30]
前記形状記憶ワイヤをある全体外径を有するコイルに成形する段階;
前記コイルを引き延ばし、それにより前記コイルの長さを引き延ばされた長さに増大させ、前記コイルの前記全体外径を減少させる段階;
前記引き延ばされたコイルに柔軟な重合体物質を巻きつける段階であって、引き延ばされた前記コイルは前記柔軟な重合体物質によって実質的に覆われ、前記柔軟な重合体物質の一部は前記引き延ばされたコイルと直接接触していない、前記引き延ばされたコイルに柔軟な重合体物質を巻きつける段階;及び
前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階であって、前記収縮した長さは前記引き延ばされた長さより短く、それによって前記柔軟な重合体物質に閉塞に有利な不規則形状を形成させる、前記引き延ばされたコイルが収縮した長さに巻き戻ることを許容する段階;をさらに含む、様態27に記載の方法。
[様態31]
前記引き延ばされたコイルが巻き戻ることを許容する段階の前に、前記柔軟な重合体物質に切り込みを入れて前記柔軟な重合体物質の長さの少なくとも一部に沿ってフリンジ部分を生成する段階をさらに含む、様態30に記載の方法。
【符号の説明】
【0153】
71 ワイヤ
72 カップ・フレーム
90 カップ型閉塞デバイス
90a 小断面形態
90b 緩和形態
92 膜状チューブ
93 遠位端
94 近位端
95 膜状カップ部分
96 遠位部分
98 個別フリンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13