(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12C 5/02 20060101AFI20231010BHJP
C12C 12/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C12/02
(21)【出願番号】P 2021198988
(22)【出願日】2021-12-08
(62)【分割の表示】P 2017109693の分割
【原出願日】2017-06-02
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2016112189
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】廣政 あい子
(72)【発明者】
【氏名】望月 マユラ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 要徳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 巧
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-227070(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦麦芽を原料の少なくとも一部とする低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する
、ビールテイスト発酵アルコール飲料由来の分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチド量の比率が2.5%より大きく、前記ペプチド画分が、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来し、かつ、前記ペプチド画分に含まれるペプチドが、大麦麦芽に由来するペプチド
としてトリプシン阻害タンパク質、αアミラーゼ阻害蛋白質および脂質転移タンパク質を含む、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項2】
麦芽使用比率が50%以上である、請求項1に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料。
【請求項3】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド画分を配合する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法であって、前記ペプチド画分が、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来し、かつ、前記ペプチド画分に含まれるペプチドが、大麦麦芽に由来するペプチド
としてトリプシン阻害タンパク質、αアミラーゼ阻害蛋白質および脂質転移タンパク質を含む、製造方法。
【請求項4】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド画分に含まれるペプチドが飲料中の全タンパク量に対して2.5%以上の比率となるよう配合される、請求項3に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
前記ペプチドを含む原料から該ペプチドを調製する工程をさらに含んでなる、請求項3または4に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
限外濾過法および硫安沈殿法により前記ペプチドを調製する、請求項5に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
前記ペプチドを含む原料が、大麦麦芽あるいはその加工品である、請求項5または6に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
前記ペプチドを含む原料が、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である、請求項5~7のいずれか一項に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
【請求項9】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド画分を有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤であって、前記ペプチド画分が、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来し、かつ、前記ペプチド画分に含まれるペプチドが、大麦麦芽に由来するペプチド
としてトリプシン阻害タンパク質、αアミラーゼ阻害蛋白質および脂質転移タンパク質を含む、風味改善剤。
【請求項10】
分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)のペプチド画分を添加する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法であって、前記ペプチド画分が、大麦麦芽を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来し、かつ、前記ペプチド画分に含まれるペプチドが、大麦麦芽に由来するペプチド
としてトリプシン阻害タンパク質、αアミラーゼ阻害蛋白質および脂質転移タンパク質を含む、風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする低糖質ビール
テイスト発酵アルコール飲料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト発酵アルコール飲料にコクや味の厚みを付与する技術としては、カルボ
キシメチルリジンを含むペプチドをコク付与物質として用いる技術(特許文献1)が知ら
れている。しかし、ビールテイスト発酵アルコール飲料、特に低糖質ビールの香味、特に
柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や味の持続性や余韻の付与などについては依然と
して改善の余地があった。また同様に、柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や味の持
続性などの観点から、低糖質のビールの香味の改良を試みた例は発明者らが知る限り報告
されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールは、発泡酒や新ジャンルと比べて柔らかでスムーズなテクスチャーを有し、ボデ
ィ感が強いなどの好ましい味の特徴がある。本発明者らは、この違いに基づき、低糖質ビ
ールにおいてビールの特徴をさらに強化する技術開発が実現すれば、これまでにない香味
特徴のある低糖質ビールの製造を実現できると考えた。
【0005】
本発明は、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーがあり、味の持続性が認めら
れる、新しい香味を有する低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料とその製造方法を提
供することを目的とする。本発明はまた、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風
味改善剤と風味改善方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料において、特定分子量のペプ
チドがビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーの付与や味の持続性に寄与すること
を見出した。本発明者らはまた、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料において、特
定分子量のペプチドの比率を特定範囲内にすることで、よりビールらしい柔らかくスムー
ズなテクスチャーや味の持続性が実現できることを見出した。本発明者らはさらに、低糖
質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善に寄与するペプチドを具体的に特定した
。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0007】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする低糖質ビールテイ
スト発酵アルコール飲料であって、全タンパク量に対する分子量10~20kDa(HP
LCゲル濾過法)のペプチド量の比率(以下、単に「ペプチド比率」ということがある)
が2.5%より大きい、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料。
[2]麦芽使用比率が50%以上である、上記[1]に記載のビールテイスト発酵アルコ
ール飲料。
[3]分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチド
を配合する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[4]前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする
ビールテイスト発酵アルコール飲料に由来する、上記[3]に記載のビールテイスト発酵
アルコール飲料の製造方法。
[5]分子量10~20kDaのペプチド(HPLCゲル濾過法)が飲料中の全タンパク
量に対して2.5%以上の比率となるよう配合される、上記[3]または[4]に記載の
ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[6]前記ペプチドを含む原料から該ペプチドを調製する工程をさらに含んでなる、上記
[3]~[5]のいずれかに記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[7]限外濾過法および硫安沈殿法により前記ペプチドを調製する、上記[6]に記載の
ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[8]前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類あるいはその加工品
である、上記[6]または[7]に記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法
。
[9]前記ペプチドを含む原料が、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも
一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である、上記[6]~[8]のいずれかに
記載のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法。
[10]分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチ
ドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤
。
[11]前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とす
るビールテイスト発酵アルコール飲料に由来するものである、上記[10]に記載のビー
ルテイスト発酵アルコール飲料の風味改善剤。
[12]分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチ
ドを添加する工程を含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方
法。
[13]前記ペプチドが、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とす
るビールテイスト発酵アルコール飲料に由来するものである、上記[12]に記載のビー
ルテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法。
【0008】
本発明によれば、分子量10~20kDaのペプチドを配合するか、該ペプチドの比率
を所定値の範囲内にすることによって、ビールらしい柔らかくスムーズなテクスチャーが
あり、味の持続性が認められる低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料を提供すること
ができる。特に、麦芽使用比率50%以上のビールでは、ビールらしい柔らかくスムーズ
なテクスチャーと味の持続性が増強され、新しい香味特徴の低糖質ビールを提供できるこ
とになり、消費者の多様な嗜好ニーズに応えることが出来る点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】参考例1でビール系麦芽アルコール飲料に添加したペプチド量を示した図である。
【
図2】参考例1の官能評価結果を示した図である。添加した画分ごとに官能評価スコアを示した。無添加のコントロールの官能評価スコアを2.5とした。
【
図3】重合度5~10のα-グルカン濃度と栄養表示基準に基づく糖質濃度との相関関係を示した図である。
【
図4】実施例1において実施したHPLCゲル濾過法の保持時間と既知物質の分子量から作成した検量線を示した図である。
【
図5】実施例1の官能評価結果(味のスムーズさ)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5~10のα-グルカン濃度(mg/mL)とし、横軸を10~20kDaペプチド比率(%)として各サンプルをプロットした。菱形模様はサンプル番号1~4(試醸品)、縦縞模様はサンプル番号5および6(添加品)である。バブルサイズは「味のスムーズさ」のスコアを表す。
【
図6】実施例1の官能評価結果(味の持続性)を示したバブルグラフである。縦軸を重合度5~10のα-グルカン濃度(mg/mL)とし、横軸を10~20kDaペプチド比率(%)として各サンプルをプロットした。菱形模様はサンプル番号1~4(試醸品)、縦縞模様はサンプル番号5および6(添加品)である。バブルサイズは「味の持続性」のスコアを表す。
【
図7】参考例1で製造された飲料の試験区2についての2D-PAGE電気泳動の結果を示した図である。図左側は分子量マーカー(kDa)である。矢印で示されたバンドは表10のタンパク質同定結果と対応している。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明において「ビールテイスト」とは通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母
等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを意
味する。
【0011】
本発明において「ビールテイスト発酵アルコール飲料」は、炭素源、窒素源および水な
どを原料として酵母により発酵させた飲料を意味し、ビール、発泡酒および原料として麦
芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リ
キュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。
【0012】
本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料は麦由来の原料として少なくとも麦芽を使
用するものとすることができ、その場合、麦芽使用比率は、例えば、50%以上とするこ
とができ、好ましくは60%以上である。ここで、「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除
く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。
【0013】
本発明において「低糖質」のビールテイスト発酵アルコール飲料とは、糖質の量(糖質
濃度)が通常の製法で作られた同等の比較対象の飲料に対して40%以上削減されたもの
(すなわち、糖質オフ表示がなされた飲料)、あるいは糖質の量が0.5g/100mL
未満(すなわち、糖質ゼロ表示がなされた飲料)であるものを意味する。このうち前者(
糖質オフ表示がなされた飲料)の糖質濃度は、2.1g/100mL以下とすることがで
き、好ましくは0.5~2.1g/100mLの範囲である。ここで、糖質の量の測定は
公知の方法に従って行うことができ、当該試料の質量から、水分、タンパク質、脂質、灰
分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年12月16日 消
費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って測定することができる。
【0014】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では、全タンパク量に対する分子量
10~20kDaのペプチド量の比率(ペプチド比率)(好ましくは、ビールテイスト発
酵アルコール飲料の原料に由来する分子量10~20kDaのペプチド比率)が特定値以
上であることを特徴とする。ここで、ペプチド比率の算出に当たっては、飲料中のタンパ
ク濃度(mg/mL)を全タンパク量とし、飲料中の分子量10~20kDaのペプチド
濃度(mg/mL)を分子量10~20kDaのペプチド量とすることができる。また、
本明細書において「ペプチド比率」の算出の元になるペプチド量は10~20kDaの分
子量を有する1種または2種以上のペプチドの含有量を合計して算出されるものである。
また本明細書においてペプチドの「分子量」はHPLCゲル濾過法により測定されるもの
であり、測定の具体例は後記実施例1に示される通りである。ペプチドおよびタンパクの
定量はローリー法(Lowry法)により実施することができる。
【0015】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は、低糖質であるにも関わらず、新
しい香味を有すること、すなわち、味のスムーズさと味の持続性が増強されたことを特徴
とする。低糖質のビールテイスト発酵アルコール飲料(特に、低糖質のビールおよび発泡
酒)は後味が弱く、飲み応えがないという特徴があり、それゆえにオフフレーバーが目立
つという課題があった。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では味のスム
ーズさと味の持続性が付与されることにより、低糖質のビールテイスト発酵アルコール飲
料の香味上の課題を解決することができる。ここで、「味のスムーズさ」とは、舌で味を
感じる時の口当たりの柔らかさの度合いを意味する。また、「味の持続性」とは、溜飲後
に持続する味の余韻の度合いを意味する。
【0016】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では、全タンパク量に対する分子量
10~20kDaのペプチド量の比率を2.5%より大きい比率にすることができ、好ま
しくは3.7%以上である。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた
、全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率を2.5%より大き
くし、かつ、重合度5~10のα-グルカン濃度を4.0mg/mL以下にすることがで
きる。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、全タンパク量に対す
る分子量10~20kDaのペプチド量の比率を2.5%より大きくし、かつ、重合度5
~10のα-グルカン濃度を1.8~4.0mg/mLにすることができ、あるいは、全
タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率を2.5%より大きくし
、かつ、重合度5~10のα-グルカン濃度を1.8mg/mL以下にすることができる
。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料では好ましくは、全タンパク量に対
する分子量10~20kDaのペプチド量の比率を3.7%以上にし、かつ、重合度5~
10のα-グルカン濃度を4.0mg/mL以下にすることができる。本発明の低糖質ビ
ールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、全タンパク量に対する分子量10~20kD
aのペプチド量の比率を3.7%以上にし、かつ、重合度5~10のα-グルカン濃度を
1.8~4.0mg/mLにすることができ、あるいは、全タンパク量に対する分子量1
0~20kDaのペプチド量の比率を3.7%以上にし、かつ、重合度5~10のα-グ
ルカン濃度を1.8mg/mL以下にすることができる。全タンパク量に対する分子量1
0~20kDaのペプチド量の比率は味の調和の観点から上限を設けることができ、例え
ば、8.0%を上限とすることができる。
【0017】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料ではまた、α-グルカンの濃度を所
定値にすることができ、例えば、重合度5~10のα-グルカンの濃度を4.0mg/m
L以下に設定することができる。本明細書において、「α-グルカン濃度」は重合度5~
10の1種または2種以上のα-グルカンの含有量を合計して算出されるものである。ま
た本明細書において「α-グルカン」とは複数のグルコース分子がα-1,4-グルコシ
ド結合により結合して構成された直鎖状または分岐状のグルカン(例えば、α-1,4-
グルコシド結合およびα-1,6-グルコシド結合で構成された分岐状のグルカン)を意
味する。さらに、本明細書においてα-グルカンの「重合度」はグルカンを構成するグル
コース残基の個数を意味し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず
、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。α-グルカンの重合度と含有量の測
定は、例えば、コロナCAD検出器を用いたHPLC分析により実施することができ、測
定の具体例は後記実施例1に示される通りである。なお、本明細書および図面において重
合度は単に「G」と表記されることがある。
【0018】
なお、重合度5~10のα-グルカン濃度と栄養表示基準に基づく糖質濃度には相関関
係が見られる。実施例1.Dに示されるとおり、例えば、重合度5~10のα-グルカン
濃度4.0mg/mL以下の場合、栄養表示基準1.4g/100mL以下に相当すると
考えられる。
【0019】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10~20kDaのペプチ
ド比率と、場合によっては重合度5~10のα-グルカン濃度が所定値の範囲内に調整さ
れる限り、通常の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造する
ことができる。例えば、麦芽、ホップ、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦
汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、発酵液を醸成させて、発酵麦芽飲料を製造
することができる。得られた低糖質ビールテイストの発酵アルコール飲料は、低温にて貯
蔵した後、濾過工程により酵母を除去することができる。なお、ビールテイスト発酵アル
コール飲料のうちオールモルトビールは、麦芽、ホップ、水から製造できることはいうま
でもない。
【0020】
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料
と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮
沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。また、麦汁は、
糖化工程中に市販の酵素製剤を添加して作製することもできる。例えば、タンパク分解の
ためにプロテアーゼ製剤を、糖質分解のためにα-アミラーゼ製剤、β-アミラーゼ製剤
、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等を、繊維素分解のためにβ-グルカナーゼ
製剤、繊維素分解酵素製剤(例えば、ヘミセルラーゼ製剤)等をそれぞれ用いることがで
き、あるいはこれらの混合製剤を用いることもできる。
【0021】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では、麦芽以外に、未発芽の
麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したもの
を含む));米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)
等の酒税法で定める副原料;タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起
泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用す
ることができる。本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は、醸造用水以外の
使用原料を少なくとも麦芽およびホップとすることができ、場合によっては更に糖類、米
、とうもろこし、でんぷん等を使用原料とすることができる。
【0022】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の分子量
10~20kDaのペプチド比率を所定値の範囲内に調整するためには、例えば、原料で
ある麦芽および/または未発芽の麦類の仕込み・糖化工程におけるタンパク分解を抑制す
ることや、原料である麦芽の製麦工程におけるタンパク分解度を抑制することなどにより
、調整することができる。なお、タンパク分解としては、麦芽や未発芽の麦類に内在する
プロテアーゼ、あるいは外から添加するプロテアーゼ製剤によるものが挙げられる。分解
の抑制は、プロテアーゼ製剤の添加量を減じる、タンパク分解の作用温度における処理時
間を減じる、作用pHを至適条件から変更するなどにより行うことができる。
【0023】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製法において製造飲料中の栄養表
示基準による糖質濃度やα-グルカンの濃度を所定値の範囲内に調整するためには、例え
ば、原料である麦芽および/または未発芽の麦類等の仕込みや糖化工程における糖質分解
を促進すること、原料である麦芽の製麦工程における糖質分解を促進すること、それによ
り麦芽および/または未発芽の麦類等に由来する糖質が酵母に資化できる糖(資化性糖)
まで充分に分解すること、あるいは糖質が酵母に資化できる糖まで充分分解された液糖を
用いることなどにより、調整することができ、さらには発酵・貯蔵工程において、これら
の資化性糖が酵母に十分に資化され、本発明の所定の糖質濃度以下に低下するまで酵母発
酵を行うことなどにより、調整することもできる。なお、糖質分解としては、麦芽や未発
芽の麦類に内在するαアミラーゼやβアミラーゼ等、あるいは外から添加するαアミラー
ゼ製剤、βアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤、プルラナーゼ製剤等によるものが挙
げられる。分解の促進は、αアミラーゼ製剤、βアミラーゼ製剤、グルコアミラーゼ製剤
、プルラナーゼ製剤等の添加量を増加させること、糖質分解の作用温度における処理時間
を延長すること、作用pHを至適条件に合わせることなどにより行うことができる。
【0024】
本発明においてはまた、分子量10~20kDaのペプチドを含む原料から、該ペプチ
ドを含む画分を調製し、該画分をビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによ
って、分子量10~20kDaのペプチド比率が所定値の範囲内に調整されたビールテイ
スト発酵アルコール飲料を製造することができる。典型的には、実施例1の記載に従って
、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分子量10~20kDaのペプチドが含まれる
画分を調製し、該画分を低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に添加することによっ
て、分子量10~20kDaのペプチド比率が所定値の範囲内に調整された低糖質ビール
テイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
【0025】
すなわち、本発明によれば、分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチド
(好ましくは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテ
イスト発酵アルコール飲料に由来する分子量10~20kDaの1種または2種以上のペ
プチド)を配合してなる低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料が提供され、該飲料は
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の一部である。該ペプチドが配合され
てなる飲料は、低糖質であるにも関わらずビールテイスト発酵アルコール飲料としての風
味が改善あるいは向上されており、具体的には、味のスムーズさと味の持続性が増強され
た飲料である。
【0026】
本発明の飲料への該ペプチドの配合量は、全タンパク量に対する分子量10~20kD
aのペプチド量の比率が2.5%より大きくなるよう配合することができ、好ましくは3
.7%以上である。本発明の飲料への該ペプチドの配合量はまた、全タンパク量に対する
分子量10~20kDaのペプチド量の比率が2.5%より大きくなるように配合するこ
とができ、この場合、重合度5~10のα-グルカン濃度は4.0mg/mL以下にする
ことができる。本発明の飲料への該ペプチドの配合量はまた、全タンパク量に対する分子
量10~20kDaのペプチド量の比率が2.5%より大きくなるように配合することが
でき、この場合、重合度5~10のα-グルカン濃度は1.8~4.0mg/mL、ある
いは、1.8mg/ml以下にすることができる。本発明の飲料への該ペプチドの配合量
は好ましくは、全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率が3.
7%以上になるように配合することができ、この場合、重合度5~10のα-グルカン濃
度は4.0mg/mL以下にすることができる。本発明の飲料への該ペプチドの配合量は
また、全タンパク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率が3.7%以上
になるように配合することができ、この場合、重合度5~10のα-グルカン濃度は1.
8~4.0mg/mL、あるいは、1.8mg/ml以下にすることができる。全タンパ
ク量に対する分子量10~20kDaのペプチド量の比率は味の調和の観点から上限を設
けることができ、例えば、8.0%を上限とすることができる。
【0027】
分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチド(特に、麦芽および/または
未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来す
る分子量10~20kDaの1種または2種以上のペプチド)の例としては、α-アミラ
ーゼ/トリプシンインヒビター、トリプシンインヒビター、α-アミラーゼ・インヒビタ
ー(BDAI-1)、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer prot
ein 1)あるいはアベニン・ライクa1が挙げられ、好ましくは、これらのタンパク質お
よびペプチドは大麦由来、一部は小麦由来のものである。α-アミラーゼ/トリプシンイ
ンヒビター、トリプシンインヒビター、α-アミラーゼ・インヒビター(BDAI-1)
、非特異的脂質転移タンパク1あるいはアベニン・ライクa1をビールテイスト発酵アル
コール飲料に配合するときは、これらのペプチドあるいはタンパク質は麦芽および/また
は未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料から調
製したもの以外のペプチドあるいはタンパク質であってもよい。
【0028】
ビールテイスト発酵アルコール飲料に配合される分子量10~20kDaの1種または
2種以上のペプチドは、該ペプチドを含む原料から調製することができる。分子量10~
20kDaの1種または2種以上のペプチドを含む原料としては、麦芽および/または未
発芽の麦類並びにその加工品、穀物タンパク分解物(例えば、大豆タンパク分解物、コー
ンタンパク分解物)が挙げられる。麦芽および/または未発芽の麦類の加工品としては、
麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とする麦汁、未発芽麦類のエキ
ス、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵
アルコール飲料が挙げられ、好ましくは、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少な
くとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料、より好ましくは麦芽を麦由来の原
料の一部または全部とするビールテイスト発酵アルコール飲料である。原料からの分子量
10~20kDaの1種または2種以上のペプチドの調製手段としては、限外濾過法およ
び硫安沈殿法の組み合わせや、ゲル濾過分画および固相抽出カラムの組み合わせが挙げら
れ、工業的生産の観点からは限外濾過法および硫安沈殿法の組み合わせが好ましい。なお
、限外濾過法および硫安沈殿法の組み合わせにより分子量10~20kDaの1種または
2種以上のペプチドを調製するときには、限外濾過法を実施し、次いで、硫安沈殿法を実
施することができる。
【0029】
低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に配合される分子量10~20kDaの1種
または2種以上のペプチドは、好ましくは麦芽および/または未発芽の麦類を原料の少な
くとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料(より好ましくは麦由来の原料とし
て少なくとも麦芽を使用するビールテイスト発酵アルコール飲料、特に好ましくはオール
モルトビール)から調製することができる。例えば、ビールテイスト発酵アルコール飲料
を製造し、ゲル濾過分画や固相抽出カラムを用いて該飲料から分子量10~20kDaの
ペプチドが含まれる画分を調製することができる。分子量10~20kDaのペプチドは
必ずしも単離・精製されている必要はなく、ビールテイスト発酵アルコール飲料から分画
処理されて得られたペプチド画分を低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料へ配合する
ことができる。
【0030】
低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料への分子量10~20kDaのペプチドは、
発酵前の発酵前液、発酵中の発酵液、あるいは発酵後の発酵液への添加により行うことが
できる。例えば、ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造し、該飲料から分子量10~
20kDaのペプチドが含まれる画分を調製し、該画分を発酵後の低糖質ビールテイスト
発酵アルコール飲料に添加することによって、分子量10~20kDaのペプチドが配合
された低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。
【0031】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料は分子量10~20kDaのペプチ
ド比率または濃度が所定値の範囲内で配合されること以外は、通常の低糖質ビールテイス
ト発酵アルコール飲料の製造手順に従って製造することができる。例えば、麦芽、ホップ
、副原料、醸造用水等の醸造原料から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵
を行い、発酵麦芽飲料を醸成させることができる。得られた低糖質ビールテイストの発酵
アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することができる。
【0032】
上記製造手順において麦汁の作製は常法に従って行うことができる。例えば、醸造原料
と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮
沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより麦汁を調製することができる。
【0033】
本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造では麦芽以外の原料を使用で
き、具体的には、本発明の低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料に関する記載に従っ
て麦芽以外の原料を使用できる。
【0034】
本発明の別の面によれば、分子量10~20kDa(HPLCゲル濾過法)の1種また
は2種以上のペプチドを有効成分として含んでなる、低糖質ビールテイスト発酵アルコー
ル飲料の風味改善剤が提供される。本発明のさらに別の面によれば、分子量10~20k
Da(HPLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドを添加する工程を含んでな
る、低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善方法が提供される。本明細書に
おいて「低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の風味改善」とは、味のスムーズさと
味の持続性が増強されることを意味するものとする。また、分子量10~20kDa(H
PLCゲル濾過法)の1種または2種以上のペプチドは、好ましくは麦芽および/または
未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とするビールテイスト発酵アルコール飲料に由来す
るものである。本発明の風味改善剤と風味改善方法は本発明の低糖質ビールテイスト発酵
アルコール飲料および該飲料の製造方法についての記載に従って実施することができる。
【実施例】
【0035】
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。なお、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す
。
【0036】
参考例1:ビールテイスト発酵アルコール飲料に好ましい香味を付与するペプチド画分の
特定
(1)ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
大麦麦芽、ホップ、酵素製剤を用いて、インフュージョン法にてビールテイスト発酵ア
ルコール飲料を製造した。
【0037】
試験区1は、50℃の湯300mLに大麦麦芽100gを入れ、酵素製剤を添加して6
0分保持後、65℃に昇温して60分保持し、さらに78℃に昇温して5分保持後、濾過
して麦汁を得た。試験区2は、50℃工程を行わず、酵素製剤を添加しない以外は同様に
麦汁を得た。続いて、ホップを0.8g/L投入して100℃で90分煮沸したのち、濾
過して発酵前液を得た。
【0038】
その後、常法に従ってビール酵母により発酵を行い、発酵液の香味確認を行った。8名
のパネルにより、「味の柔らかさ」、すなわち雑味が抑制され、ビールらしく柔らかくス
ムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいがあることを指標に、最低は1点、最
高は5点として五段階で官能評価を行い、平均点を算出した。結果は表1に示される通り
であった。
【0039】
【0040】
表1の通り、試験区1よりも試験区2の方が官能評価のスコア(味の柔らかさ)が良好
であり、香味の印象も好ましかった
【0041】
(2)ゲル濾過分画
上記(1)で得られた発酵液を0.45μmフィルターで濾過し、濾過済み発酵液を計
量して凍結乾燥した。乾燥物を100mM NaCl溶液で溶解して5倍濃縮液を調製し
、分画用サンプルとした。サンプルは、以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
【0042】
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社
製)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29cv(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その
後0.35cvから5mLずつ分画(フラクション1~51)
【0043】
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、表2のようにフラクションをプ
レ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
【0044】
【0045】
(3)ペプチド画分の精製
上記(2)で得られた各画分は、固相抽出カラム(画分A1、A2、Bは、Bond
Elute C18 EWP、画分C、D、E、F、GはBond Elute C18
を使用、Agilent technologies社製)にて吸着処理を行い、脱塩水で洗浄した後、50%
エタノール水溶液にて溶出して、濃縮乾固を行い、これを脱塩水にて復水し、濃縮液とし
た。これをペプチド画分とした。
【0046】
(4)ローリー法によるタンパク定量
上記(3)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販のキッ
ト(DCプロテインアッセイ、Bio-Rad社製)を用いたLowry法で行った。ま
ず、上記分画液を50μL採って遠心乾固し、超純水10μLを加えて再溶解して分析サ
ンプルとした。そこにA液を50μL加えて撹拌し、続いてB液を400μL加えて攪拌
した。室温で15分発色反応を行った後、96ウェルプレートに350μL移して750
nmの吸光度を測定した。得られた吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を
算出した。なお、検量線はBSA(ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
【0047】
(5)官能評価
これらの分画・精製サンプルを、大麦と大麦麦芽を使用した市販の麦芽使用比率49%
未満のビール系アルコール飲料に、その飲料に含まれる各画分量の50%上乗せとなるよ
う添加し(
図1参照)、5名のパネルにより官能評価を行った。
【0048】
官能評価の指標は、「旨み、甘味、厚み、ボディ、およびオフフレーバーとしての渋み
・味の不調和」の総合評価として、1~5点の五段階スコアで評価した。無添加のコント
ロールをスコア2.5とした。官能評価スコアの平均値は
図2に、官能評価コメントは表
3に示される通りであった。
【0049】
【0050】
ペプチド分画物は、プレ画分からDにかけて、試験区2の官能評価スコア(
図2)が高
く、分画前の発酵液の官能評価結果と一致した。また、試験区2の画分A1およびA2に
おいて、スコアが高く、柔らかさ、雑味低下との官能評価コメントだった(表3)。試験
区2のプレ画分では、スコアは同等に高いが、柔らかいが味自体は少ないとの官能評価コ
メントだった。画分B~Dは、スコアは同等に高いが、官能評価コメントでは厚み、ボデ
ィ、旨味の寄与がより強いと評価された。すなわち、プレ画分、A1、A2、B、C、D
で、試験区2の評価は高いが、それぞれ味質が異なっており、画分A1、A2は、ビール
らしい柔らかさ、雑味低下等の効果があることがわかった。
【0051】
ペプチド分画物は、実施例1に記載の、Superdex 75 10/300カラム
にて分析を行い、分子量を推定したところ、画分A1のペプチドが分子量約10~20k
Daに分布し、SDS-PAGE電気泳動上でも、画分A1~A2において、同様の分子
量約10~20kDaのペプチドが分布していることが確認された(データ示さず)。ま
た、香味上優れていた試験区2では、そのペプチド量が多くなっていることが確認された
(
図1)。
【0052】
以上の結果より、分画・精製した分子量約10~20kDaのペプチド画分A1および
A2は、雑味が抑制され調和のとれたビールらしい味わいをビール系飲料に付与できるこ
とが明らかとなった。
【0053】
実施例1:低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造および該飲料へのペプチド添
加と官能評価
A:低糖質ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造
ビールテイスト発酵アルコール飲料においては、主原料として、大麦麦芽を使用し、副
原料として、とうもろこしおよび液糖のいずれかまたは両方を使用した。糖化に際しては
酵素製剤を用い、糖化の温度、時間を調整し、濾過することで、異なる組成の麦汁を得た
。すなわち、糖化の温度帯は60℃、62℃、64℃、65℃など、60℃~65℃の中
で選択した。糖化の時間は、それぞれの温度工程において、5分~120分の間で調整し
た。また、原料の熱処理温度は70℃~120℃の間で選択した。具体的には以下のよう
にして麦汁を得た。
【0054】
(ア)サンプル番号1および2の糖化条件
64℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽33.6質量部、酵素製剤を投入して10
0分保持後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
【0055】
(イ)サンプル番号3の糖化条件
60℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽33.3質量部、グルコアミラーゼを主体
とする酵素製剤を投入して20分保持後、65℃に昇温して100分保持したものを醪A
とした。同時に、50℃の湯100に対してとうもろこし11.3質量部および資化性糖
を主体とする液糖8.3質量部を投入して、50℃で20分、65℃で15分の順に保持
し、その後煮沸したものを醪Bとした。糖化の終了した醪Aと煮沸の終了した醪Bを直ち
に混合させたのち、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して麦汁を得た。
【0056】
(ウ)サンプル番号4の糖化条件
65℃の湯100質量部に対して、大麦麦芽16.7質量部、グルコアミラーゼを主体
とする酵素製剤を投入して120分保持後、78℃に昇温して5分保持した後、濾過して
麦汁を得た。
【0057】
上記の麦汁調製工程(ア)~(ウ)に続いて、得られたそれぞれの麦汁にホップおよび
一部の麦汁(サンプル番号4)では資化性糖を主体とした液糖を投入して100℃で90
分間煮沸した後、麦汁静置を行ない、トリューブを分離した後、冷却して発酵前液を得た
。一部の発酵前液(サンプル番号1および2)ではグルコアミラーゼを主体とする酵素製
剤を添加した。その後、発酵前液に下面発酵酵母を添加し、常法に従って主発酵および後
発酵を行なった。続いて、後発酵後の発酵液を、より低温で保持することにより貯蔵を行
ない、濾過して、清澄なビールテイスト発酵アルコール飲料(試醸品)(サンプル番号1
~4)を得た。
【0058】
B:ビールテイスト発酵アルコール飲料のα-グルカン量の定量
(ア)HPLC分析用のサンプル調製
サンプル番号1~4は、固相抽出カラムを用いて分離し、分画用サンプルを得た。具体
的には、製品液を固相抽出カラム(Bond Elute C18、Agilent technologi
es社製)にて吸着処理を行って素通り画分を回収し、回収液をさらにBond Elut
e C18 EWP(Agilent technologies社製)に吸着させ、素通り画分を回収した。
回収した素通り画分は、さらにイオン交換樹脂Sep Pak QMAおよびSep P
akCM(いずれもWaters社)で順に処理した。得られた液を遠心濃縮させ、乾燥物を復
水して分画用サンプルとした。
【0059】
(イ)HPLCによる糖分析
MCI-gel CK02ASカラム(20×250mm)およびコロナCAD検出器
により、サンプルに含まれるα-グルカンの鎖長分布状況を評価した。具体的には、以下
の条件のようにして重合度(鎖長)を分析した。G5~G10マルトオリゴ糖を標準品と
した検量線で組成を分析した。G5はマルトペンタオース(Maltopentaose)、G6はマ
ルトヘキサオース(Maltohexaose)、G7はマルトヘプタオース(Maltoheptaose)、G
8はマルトオクタオース(Maltooctaose)、G9はマルトノナオース(Maltononaose)、
G10はマルトデカオース(Maltodecaose)である。マルトペンタオース(Maltopentaos
e)、マルトヘキサオース(Maltohexaose)およびマルトヘプタオース(Maltoheptaose)
については東京化成社より標準品を購入し、マルトオクタオース(Maltooctaose)、マル
トノナオース(Maltononaose)およびマルトデカオース(Maltodecaose)についてはElic
ityl SA社より標準品を購入し、質量分析器条件を設定した。
【0060】
<HPLC分析条件>
カラム:MCI-gel CK02ASカラム(20×250mm、三菱化学社製)
移動相:MQ水
流速:1.0mL/分
カラム温度:85℃
検出器:コロナCAD検出器
【0061】
上記(イ)で設定した分析条件のもとでサンプル番号1~4の分析を行った結果は表4
に示される通りである。
【0062】
C:栄養表示基準に基づく糖質濃度の分析
栄養表示基準に基づく糖質濃度の測定は公知の五訂日本食品標準成分表分析マニュアル
に記載の方法に従って行った。すなわち、当該試料の質量から、水分(減圧加熱・乾燥助
剤添加法)、タンパク質(自動分析装置による方法)、脂質(ソックスレー抽出法(3)
)、灰分(マッフル炉による燃焼法)および食物繊維量(プロスキー酵素重量法)を除い
て算出する方法にて測定した。サンプル番号1~4について測定した結果は表4に示され
る通りであった。
【0063】
【0064】
表4において、重合度5~10のα-グルカン濃度と、栄養表示基準に基づく糖質濃度
との相関関係を
図3に示した。近似直線における相関係数は、R2=0.6282である
。従って、例えば、重合度5~10のα-グルカン濃度が4.0mg/mL以下の場合、
栄養表示基準に基づく糖質濃度は1.4g/100mL以下に相当すると考えられる。
【0065】
D:タンパク定量
(ア)ゲル濾過分画用のサンプル調製
サンプル番号1~4(試醸品)を計量した後、凍結乾燥した。乾燥物を50mMリン酸
ナトリウム緩衝液(pH7.0、150mM NaCl含む)で溶解して2.5倍濃縮液
を調製し、分画用サンプルとした。
【0066】
(イ)HPLCゲル濾過法
HPLCゲル濾過法の条件は以下の通りであった。
<HPLCゲル濾過法分析条件>
カラム:Superdex 75 10/300(GEヘルスケア社製)
サンプル注入量:100μL
溶離液組成:50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、20%(v/v)アセトニトリ
ル、150mM NaCl
流速:0.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分画プログラム:
【0067】
【0068】
(ウ)分画範囲の設定
上記(イ)のHPLCゲル濾過法条件記載のカラム、溶離液、流速、検出波長において
、分子量既知のペプチドを0.1~5mg/mLで適宜超純水に溶解したものを50μL
注入してHPLC分析を行い、保持時間を確認した(表6)。その保持時間、分子量から
検量線(
図4)を作成し、分子量範囲と分画範囲を決定した。
【0069】
【0070】
(エ)分画液のLowry法によるタンパク定量
タンパク定量は、参考例1に記載のLowry法により行った。なお、得られた吸光度
とBSA濃度から検量線を作成し、分画液のペプチド量(BSA換算)を計算し、分画液
量、濃縮倍率から、当該画分の製品相当ペプチド濃度(mg/mL)を算出した。
【0071】
(オ)10~20kDaペプチドの定量
10~20kDaペプチド濃度は、上記HPLCゲル濾過法における、検量線から決定
した分子量10~20kDaの範囲である画分3に含まれるタンパク濃度を、製品相当ペ
プチド濃度(mg/mL)に換算して求めた。また、10~20kDaペプチド量が全タ
ンパク量の中に占める比率、すなわち10~20kDaのペプチド比率は、以下の算出式
にて求めた。
【数1】
【0072】
E:官能評価
サンプル番号1~4(試醸品)に関して、7名の訓練されたパネラーによって官能評価
を実施した。評価項目の指標は、「味のスムーズさ」および「味の持続性」の2項目とし
、それぞれ、1(弱い)~9(強い)点の9段階スコアで評価した。各サンプルの官能評
価結果は表7に示される通りであった。また、この結果を
図5および
図6に示した。
【0073】
【0074】
表7並びに
図5および
図6に示される通り、10~20kDaのペプチド比率を2.5
%より高くした試験醸造品において、「味のスムーズさ」と「味の持続性」が向上するこ
とが確認された。
【0075】
なお、上記結果は、実施例1に記載した方法で分析した時の結果、すなわち、コロナC
AD検出器(コロナ荷電化粒子検出器)を用いて得られた分析値である。本検出器は、物
質の化学構造に依存せず、同一の分析条件下で、一貫した物質重量依存の応答性が得られ
る特徴がある(Thermofisher scientific社による)。
【0076】
実施例2:ペプチドのビールテイスト発酵アルコール飲料への添加と官能評価
A:ペプチド画分の調製
(ア)ゲル濾過分画
市販品(オールモルトビール)をガス抜きしたうえで凍結乾燥した。凍結乾燥物を10
0mMNaCl溶液に溶解して5倍濃縮液を調製し、分画用サンプルとしたサンプルは、
以下の条件にてゲル濾過分画を行った。
【0077】
<ゲル濾過分画条件>
カラム:Hiload Superdex 30pg 26/600(GEヘルスケア社
)
サンプル注入量:5mL
溶離液組成:100mM NaCl
流速:2.5mL/分(流速一定)
検出波長:215nm
分取:0.29CV(カラム・ボリューム)から19.1mL(フラクション0)、その
後0.35CVから5mLずつ画分(フラクション1~51)
【0078】
分画物の官能評価により、香味の特徴の違いによって、前記表2のようにフラクション
をプレ画分、A1、A2、B、C、D、E、F、Gの9つのグループに分けた。
【0079】
なお、ゲル濾過分画に付した市販品のペプチド比率および濃度並びにα-グルカン濃度
(実施例1に従って測定)は表8に示される通りであった。
【表8】
【0080】
(イ)ペプチド画分の精製
上記(ア)で得られた画分のうち、A1画分(フラクション番号:F1~12)につい
て固相抽出カラム(Bond Elute C18 EWP)にて吸着処理を行い、脱塩
水で洗浄した後、50%エタノール水溶液にて抽出して、濃縮乾固させて脱塩水で復水し
、濃縮液とした。これをペプチド画分とした。
【0081】
(ウ)Lowry法によるタンパク定量
上記(イ)のゲル濾過分画によって得られたペプチド画分のタンパク定量は市販キット
(DCプロテインアッセイ、Bio-Rad社)を用いたLowry法で行った。まず、
上記ペプチド画分溶液を対製品で10倍希釈および40倍希釈となるように濃度調整し、
サンプル5μLに対し、A液25μLを加えて撹拌し、続けてB液200μLを加えて撹
拌した。室温で15分間発色反応を行った後、750nmの吸光度を測定した。得られた
吸光度と予め作成した検量線に基づき、ペプチド量を算出した。なお、検量線はBSA(
ウシ血清アルブミン)を用いて作成した。
【0082】
B:試飲サンプルの調製
サンプル番号2(試醸品)に上記Aで得られたペプチド画分を添加し、サンプル番号5
および6(添加品)を調製した。具体的には、10~20kDaのペプチド量が0.24
mg/mLおよび0.29mg/mL、ペプチド比率が5.2%および5.7%となるよ
うにペプチド画分を添加した。試飲サンプルと、ペプチド比率および濃度並びにα-グル
カン濃度の対応関係は表9に示される通りであった。
【0083】
C:官能評価
無添加のサンプル番号2(試醸品)と、前記Bで得られたサンプル番号5および6(添
加品)について、7名の訓練されたパネラーによって官能評価を実施した。評価項目の指
標は、「味のスムーズさ」、「味の持続性」の2項目とし、評価は実施例1.Eに記載の
方法に準じて実施した。各サンプルの官能評価結果は表9に示される通りであった。また
、各サンプルの官能評価結果は、先述の実施例1.Eの結果と合わせて、
図5および
図6
に図示した。
【0084】
【0085】
表9並びに
図5および
図6に示される通り、10~20kDaのペプチド比率を高める
と、「味のスムーズさ」と「味の持続性」が向上することが確認された。
【0086】
実施例3:タンパク画分の分子種同定
本実施例では2D-PAGEおよび四重極-飛行時間型質量分析装置により、ビールら
しく柔らかいスムーズなテクスチャーがあり、調和のとれた味わいに寄与するタンパク質
の同定を試みた。
【0087】
参考例1で得られたゲル濾過分画と固相抽出精製によるペプチド画分A1、A2の等量
混合液200μLをTCAアセトン沈殿によってタンパク質を精製し、2D-PAGEに
よる電気泳動後、銀染色を行った。香味に違いの見られた試験区1と試験区2のサンプル
の間では、分子量40kDa付近の太いバンドの量には違いがあまりなく、10~20k
Daに分布するバンドにおいて量的な差があることがわかった(データ示さず)。
【0088】
次に、試験区2の2D-PAGEゲルから、
図7で示す矢印のバンドを切り出し、トリ
プシン(ProteaseMAX(商標) Surfactant, Trypsin Enhancer、プロメガ社製)を用いてタ
ンパク質を消化した。得られたトリプシン消化ペプチド溶液を四重極-飛行時間型質量分
析装置(SCIEX社製)を用いてMS/MSスペクトルを取得し、SWISS-PROTに登
録されているデータベースを用いてタンパク質の同定を行った。
【0089】
四重極-飛行時間型質量分析装置によるタンパク質同定の結果は表10に示される通り
であった。
【表10】
【0090】
ゲル濾過画分(画分A1~A2)中のタンパク質としては、α-アミラーゼ/トリプシ
ンインヒビターCMa、α-アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMb、α-アミラーゼ/ト
リプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビターCMe、α-アミラーゼ・インヒビター
(BDAI-1)、非特異的脂質転移タンパク1(non-specific lipid-transfer protein 1)
およびアベニン・ライクa1が同定された。なお、同定されたタンパク質はオオムギ(Ho
rdeum
vulgare)由来、および一部、小麦(Triticum
aestivum)由来のタンパク質として
同定された。α-アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMa、α-アミラーゼ/トリプシ
ンインヒビターCMb、α-アミラーゼ/トリプシンインヒビターCMd、トリプシンインヒビ
ターCMeは、プロテアーゼ阻害タンパク質として知られており、α-アミラーゼ・インヒ
ビター(BDAI-1)はαアミラーゼ阻害蛋白質として知られる。また、non-specific lipid
-transfer protein 1は、脂質転移タンパク質として知られている。
【0091】
実施例4:限外濾過および硫安沈殿により調製されたペプチドのビールテイスト発酵アル
コール飲料への添加と官能評価
本実施例では大規模生産に適したペプチドの調製方法と官能評価に及ぼす影響について
検討した。
【0092】
A:ペプチド画分の調製
(A-1)限外濾過による分画
市販品(オールモルトビール)をガス抜きしたうえで、限外濾過膜(分画分子量;60
00、AIP-1013D、旭化成社製)によりペプチドの濃縮および分画を行った。具
体的には、オールモルトビールを約4倍濃縮して濃縮液を回収し、凍結乾燥した。次いで
、乾燥物を市販品の6倍濃度となるように超純水で復水した後、分画分子量6000~8
000の透析膜Spectra/Por1(Spectrum Laboratorie
s社製、以下同様)により透析した。
【0093】
(A-2)硫安沈殿によるペプチドの分離
上記(A-1)で得られた溶液について40%飽和硫安沈殿を行うことにより、0~4
0%飽和硫安沈殿物を得た。沈殿物を超純水に溶解し、透析膜Spectra/Por1
により透析し塩を十分に除去した。次いで、凍結乾燥を行い超純水に溶解してペプチドの
濃縮液を得た。濃縮液について、10~20kDaのペプチドが主成分となっていること
をSDS-PAGE電気泳動の染色画像により確認した(データ示さず)。
【0094】
B:試飲サンプルの調製
サンプル番号2(試醸品)に実施例2.Aに記載された方法を用いて市販のオールモル
トビールから精製した10~20kDaペプチド画分を添加し、サンプル番号7(添加品
3)を調製した。また、サンプル番号2(試醸品)に上記Aで得られた10~20kDa
ペプチド画分を添加し、サンプル番号8(添加品4)を調製した。具体的には、添加品3
および4の10~20kDaペプチド比率が5.5%となるように各ペプチド画分を添加
した。試飲サンプルと、ペプチドの量および比率並びにα-グルカンの量の対応関係は表
11に記載した。
【0095】
C:官能評価
サンプル番号2および上記Bで得られたサンプル番号7および8(添加品)について、
4名の訓練されたパネラーによって実施例1.Eの記載に従って官能評価を実施した。各
サンプルの官能評価結果は表11に示される通りであった。
【0096】
【0097】
表11に示される通り、10~20kDaペプチドを添加していない飲料(サンプル番
号2)と比べ、限外濾過と硫安沈殿を組み合わせて得られた10~20kDaペプチドを
添加した飲料(サンプル番号8)では、ゲル濾過分画と固相抽出により得られた10~2
0kDaペプチドを添加した飲料(サンプル番号7)と同様に、「味のスムーズさ」およ
び「味の持続性」が向上することが確認された。