(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】環境保護されたフォトニック集積回路
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20231010BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/12 371
G02B6/122 311
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206566
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2022-05-17
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520052259
【氏名又は名称】エフェクト フォトニクス ベーハー
【氏名又は名称原語表記】EFFECT Photonics B.V.
【住所又は居所原語表記】Kastanjelaan 400 5616 LZ Eindhoven Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】ホエクストラ スジャーク ハンス
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0223672(US,A1)
【文献】特表2017-514167(JP,A)
【文献】特開2010-266541(JP,A)
【文献】特開2001-127378(JP,A)
【文献】米国特許第06052397(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0050167(KR,A)
【文献】特開2000-321452(JP,A)
【文献】特開平05-043611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0251948(US,A1)
【文献】特表2003-513328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0204506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0013640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境保護されたフォトニック集積回路であって、
- 少なくとも部分的にInPベースの光導波路(4)を含む第1の表面(3)を有するリン化インジウム(InP)ベースの基板(2)と、
- 少なくとも前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)および前記InPベースの光導波路(4)を覆うように配置された誘電体保護層(5)であって、
・環境汚染物質から前記フォトニック集積回路(1)を保護し、
・光放射の伝播方向を横切る少なくとも一方向において、前記誘電体保護層(5)に前記光放射を閉じ込めることを可能にし、
・前記InPベースの光導波路(4)と前記誘電体保護層(5)との間で前記光放射の交換を可能にする、
ように構成された誘電体保護層(5)と、を備え、
前記InPベースの光導波路(4)および前記誘電体保護層(5)は、前記フォトニック集積回路(1)に多層光導波路アセンブリ(6)を提供
し、
前記InPベースの光導波路(4)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)を横切る方向の寸法を有し、前記寸法は、前記光導波路(4)の第1の部分(4a)に第1の値を有し、前記光導波路(4)の第2の部分(4b)に第2の値を有し、前記第2の値は前記第1の値よりも小さく、前記光導波路(4)は、前記光導波路(4)の前記第1の部分(4a)と前記光導波路(4)の前記第2の部分(4b)とを相互接続するように構成および配置されたテーパ部分(7)を備え、それにより、前記光放射の光モードフィールドを、前記テーパ部分(7)を前記第1の部分(4a)から前記第2の部分(4b)に通過するときに、前記光導波路(4)に存在する第1の部分と、前記誘電体保護層(5)に存在する第2の部分とに分割することを可能にし、
前記InPベースの光導波路(4)は非平面光導波路であり、前記誘電体保護層(5)は、前記多層光導波路アセンブリ(6)に、前記誘電体保護層(5)における前記光放射の前記光モードフィールドの前記第2の部分を、いずれも前記光放射の伝播方向を横切る2つの直交する方向に閉じ込めることを可能にするように構成された非平面誘電体光導波路(8)を提供する共形コーティングである、
環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項2】
前記誘電体保護層(5)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)から離れる方向に突出するとともに前記誘電体保護層(5)の少なくとも一部を横切って延在し、それにより、前記多層光導波路アセンブリ(6)に、前記誘電体保護層(5)における前記光放射の前記光モード
フィールドの前記第2の部分を、いずれも前記光放射の伝播方向を横切る2つの直交する方向に閉じ込めることを可能にするように構成された非平面誘電体光導波路(8)を提供するように配置された細長い構造(10)を含む、
請求項1に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項3】
前記非平面誘電体光導波路(8)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向くように配置された第2の表面(11)を含み、前記第2の表面(11)は、前記非平面誘電体光導波路(8)からの前記光放射の前記光モード
フィールドの前記第2の部分を少なくとも部分的に前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向く方向に結合するように構成および配置された凹部(12)を備えている、請求項
1または請求項
2に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項4】
前記フォトニック集積回路(1)の少なくとも一部において、前記多層光導波路アセンブリ(6)の前記InPベースの非平面光導波路(4)および前記非平面誘電体光導波路(8)は、前記InPベースの非平面光導波路(4)に存在する前記光放射の前記光モード
フィールドの前記第1の部分と、前記非平面誘電体光導波路(8)に存在する前記光放射の前記光モード
フィールドの前記第2の部分とを前記フォトニック集積回路(1)を横切る異なる横方向に案内することを可能にするように、互いに対して配置されている、請求項
1~3のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項5】
前記非平面誘電体光導波路(8)の前記第2の表面(11)は、少なくとも部分的に金属接触パッド(13)を備えている、請求項
3、または請求項
3に従属する限りにおいて請求項
4に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項6】
前記誘電体保護層(5)は、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリキシリレン、ベンゾシクロブテン、ポリシロキサン、およびシリコンのうちの1つを含むポリマーベースの層である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項7】
前記誘電体保護層(5)が少なくとも2つの異なる屈折率を備えている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項8】
前記誘電体保護層(5)が、有機添加剤および無機添加剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項9】
前記誘電体保護層(5)は、前記InPベースの基板(2)の前記第1の表面(3)とは反対側を向くように配置された第3の表面(14)を含み、前記
誘電体保護層(5)は、前記第3の表面(14)に突起(16)の規則的なパターン(17)を提供するように配置されたくぼみ(15)を備えている、請求項1~
8のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項10】
前記フォトニック集積回路(1)は、非気密パッケージおよび気密パッケージ(19)のうちの1つを備えている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の環境保護されたフォトニック集積回路を含む光電子システム(18)であって、
前記光電子システムは、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、限定的にではなく電気通信用途またはセンサ用途に使用され得る、環境保護されたフォトニック集積回路に関する。本発明はさらに、例えば、限定的にではなく電気通信用途またはセンサ用途に使用され得る、上記フォトニック集積回路を備えた光電子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光通信用途の分野に限定されないフォトニック集積回路(Photonic integrated circuits:PIC)は、好ましくは可能な限り小さい実装面積を有する単一のダイに統合される光学的および電気的機能の数が増加しているため、ますます複雑になっている。光通信用途用のPIC向けの最も用途の広い技術プラットフォームは、リン化インジウムベース(indium phosphide-based:InP)の半導体材料を含むウェーハを使用する。InPベースの技術により、例えば光生成および/または光吸収光学デバイスなどの能動コンポーネントと、例えば光ガイドおよび/または光スイッチング光学デバイスなどの受動コンポーネントの両方を単一のダイの1つのPICにモノリシックに統合できる。
【0003】
従来、PICおよびそれらを含む光電子システム(例えば、光送受信機モジュールなど)の環境保護は、気密パッケージによって提供されていた。上記の複雑さの増大の結果として、組み立て、特に気密パッケージのコストは、PICおよびそれらが使用される光電子システムの総コストのかなりの部分を占めている。
【0004】
組み立てと包装のコストを削減できる気密パッケージの代替手段は、PICに少なくとも1つの誘電体保護層を適用して、ほこり粒子や湿気などの環境汚染物質からPICを保護することにより提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境汚染物質に対する保護を提供することに加えて、少なくとも1つの誘電体保護層を構成して、PICに追加の光学機能を提供することができることが、本発明の見識である。したがって、本発明の目的は、例えば、限定的にではなく電気通信用途またはセンサ用途に使用することができる、環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)を提供することである。PICは、環境汚染物質からPICを保護するだけでなく、追加の光学機能も提供する、少なくとも1つの誘電体保護層を備えている。
【0006】
また、本発明の目的は、例えば、限定的にではなく電気通信用途またはセンサ用途に使用することができる、本発明によるPICを含む光電子システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、請求項に明示的に記載されているだけでなく、必要に応じて独立請求項の特徴と組み合わせることができる。さらに、すべての特徴を他の技術的に同等の特徴に置き換えることができる。
【0008】
上記の目的の少なくとも1つは、環境保護されたフォトニック集積回路であって、
- 少なくとも部分的にInPベースの光導波路を含む第1の表面を有するリン化インジウム(InP)ベースの基板と、
- 少なくともInPベースの基板の第1の表面およびInPベースの光導波路を覆うように配置された誘電体保護層であって、
・環境汚染物質からフォトニック集積回路を保護し、
・光放射の伝播方向を横切る少なくとも一方向において、誘電体保護層に光放射を閉じ込めることを可能にし、
・InPベースの光導波路と誘電体保護層との間で光放射の交換を可能にする、
ように構成された誘電体保護層と、を備え、
InPベースの光導波路および誘電体保護層は、フォトニック集積回路に多層光導波路アセンブリを提供する、
環境保護されたフォトニック集積回路、によって実現される。
【0009】
このように、誘電体保護層は、例えばほこり粒子や湿気などの環境汚染物質に対するPICの環境保護と、例えば、監視および検査の目的の少なくとも1つに使用され得る、多層光導波路アセンブリの誘電体保護層によって運ばれる光放射としての追加の光機能との両方を提供する。さらに、誘電体保護層は、例えば、PICと光ファイバとの間に低損失の光結合を提供するために、誘電体保護層内の光放射のモード拡張を可能にすることができる。さらに、誘電体保護層により、光ファイバとチップの結合を確立するための従来の解決策に従って必要とされる特殊な光ファイバまたはレンズ付き光ファイバの代わりに、標準の光ファイバを使用できるようになるので、本発明による標準的な光ファイバとPICとの間の光結合を確立することに伴う複雑さ、したがってコストは、上記従来の解決策に伴う複雑さおよびコストよりも低くすることができる。
【0010】
本発明による環境保護されたPICの例示的な実施形態では、InPベースの光導波路および誘電体保護層は、互いに直接接触することができる。しかしながら、当業者は、誘電体保護層が、InPベースの基板およびInPベースの光導波路の少なくとも第1の表面を覆うように配置された非半導体層のスタックにも適用できることを理解するであろう。非半導体層のスタックは、金属層と、例えば窒化ケイ素ベースの層またはポリマーベースの層などの誘電体層とを含むことができる。非半導体層のスタックが金属層を含む場合、当業者は、誘電体保護層に、金属層への電気的接続の形成を可能にするために少なくとも1つの開口部を設けることができることを理解するであろう。
【0011】
誘電体保護層は、ポリマーベースの層および非ポリマーベースの層、例えば、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などの、例えば、シリコン含有層であり得る。
【0012】
誘電体保護層は、0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さを有し得る。このように、誘電体保護層の厚さは、環境汚染物質の拡散を制限し、それによってPICの環境保護を可能にするのに十分でなければならない。
【0013】
本発明による環境保護されたPICの別の例示的な実施形態では、PICはモノリシックPICである。
【0014】
本発明による環境保護されたPICのさらなる例示的な実施形態では、多層光導波路アセンブリは、それぞれが、PICの結合面以外の位置に補助光導波路と結合構造の少なくとも1つを提供する複数の誘電体層を含み得る。誘電体層は、好ましくは、異なる屈折率を有する。
【0015】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、InPベースの光導波路は、InPベースの基板の第1の表面を横切る方向の寸法を有し、寸法は、導波路の第1の部分に第1の値を有し、導波路の第2の部分に第2の値を有し、第2の値は第1の値よりも小さく、導波路は、導波路の第1の部分と導波路の第2の部分とを相互接続するように構成および配置されたテーパ部分を備え、それにより、光放射の光モードフィールドを、テーパ部分を第1の部分から第2の部分に通過するときに、導波路に存在する第1の部分と、誘電体保護層に存在する第2の部分とに分割することを可能にする。InPベースの光導波路の寸法は、一般に導波路の高さと呼ばれる。InPベースの導波路のテーパ部分は、導波路の第1の部分の第1の高さが導波路の第2の部分の第2の高さに変更される遷移領域を提供し、第1の高さは第2の高さよりも大きい。光放射が導波路の第1の部分から第2の部分に移動するとき、光放射のモードフィールドは、少なくとも部分的に、InPベースの光導波路から押し出され得る。光モードフィールドの第1の部分は、InPベースの光導波路に残り、光モードフィールドの第2の部分は、ポリマーベースの保護層によって提供される多層光導波路アセンブリの導波路に存在する。本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の例示的な実施形態では、ポリマーベースの保護層に存在する光放射の光モードフィールドの第2の部分は、光放射の光モードフィールドの少なくとも0.5%である。このように、ポリマーベースの保護層によって提供される多層光導波路アセンブリの光導波路内の光放射は、例えば監視および検査目的などの上記の追加の光機能の少なくとも1つに対して十分である。
【0016】
誘電体保護層が十分な厚さ、すなわち0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さを有する場合、光ファイバとチップの結合を確立するための上記のモード拡張を達成することができる。当業者は、テーパ部分が、PICの横方向での光学モード分割を可能にするように構成することもできることを理解するであろう。
【0017】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、InPベースの光導波路は、非平面光導波路である。非平面光導波路の例は、リッジ導波路、リブ導波路、埋め込みチャネル導波路、ストリップロード導波路、および拡散導波路である。
【0018】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、多層光導波路アセンブリに、誘電体保護層における光放射の光モードの第2の部分を、いずれも光放射の伝播方向を横切る2つの直交する方向に閉じ込めることを可能にするように構成された非平面誘電体光導波路を提供する共形コーティングである。誘電体保護層を共形コーティングとして適用することにより、誘電体保護層は、InPベースの非平面光導波路の輪郭に従い、それによって非平面誘電体光導波路を提供する。当業者は、平面光導波路とは反対に、非平面光導波路が、いずれも光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向に光放射の閉じ込めを提供することを理解するであろう。さらに、非平面光導波路は、横電気(TE)モードと横磁気(TM)モードに加えてハイブリッドモードをサポートするが、平面光導波路はTEモードとTMモードのみをサポートする。
【0019】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、多層光導波路アセンブリに平面誘電体光導波路を提供する平坦化コーティングである。InPベースの非平面光導波路を覆うと、平坦化コーティングとして適用される誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された平面を有する層を提供する。上記に基づいて、多層光導波路アセンブリの平面誘電体光導波路は、光放射の伝搬方向を横切る直交する一方向にのみ光放射の閉じ込めを提供することは明らかである。本発明によるPICにおいて、光放射が平面誘電体光導波路に閉じ込められる方向は、InPベースの基板の第1の表面を横切る方向であることが理解されよう。
【0020】
屈折率が低下した誘電体保護層に適切な領域を提供することにより、光放射の伝搬方向を横切る他の方向、すなわち、InPベースの基板の第1の表面に平行に向けられる横方向の平面誘電体保護層への光閉じ込めを達成できることに留意されたい。
【0021】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面から離れる方向に突出するとともに誘電体保護層の少なくとも一部を横切って延在し、それにより、多層光導波路アセンブリに、誘電体保護層における光放射の光モードの第2の部分を、いずれも光放射の伝播方向を横切る2つの直交する方向に閉じ込めることを可能にするように構成された非平面誘電体光導波路を提供するように配置された細長い構造を含む。細長い構造は、例えば、リソグラフィーステップと、それに続くウェット現像ステップ、ウェットエッチングステップ、およびドライエッチングステップのうちの1つとを含むプロセスシーケンスによって、誘電体保護層内に形成することができる。細長い構造は、誘電体保護層に、リブ導波路と呼ばれ得る非平面光導波路を提供する。
【0022】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、非平面誘電体光導波路は、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された第2の表面を含み、第2の表面は、非平面誘電体光導波路からの光放射の光モードの第2の部分を少なくとも部分的にInPベースの基板の第1の表面とは反対側を向く方向に結合するように構成および配置された凹部を備えている。このようにして、例えば、監視および検査の目的の少なくとも1つに使用することができる、いわゆる垂直または横方向の電源タップを提供することができる。
【0023】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、上記フォトニック集積回路の少なくとも一部において、多層光導波路アセンブリのInPベースの非平面光導波路および非平面誘電体光導波路は、InPベースの非平面光導波路に存在する光放射の光モードの第1の部分と、非平面誘電体光導波路に存在する光放射の光モードの第2の部分とを上記フォトニック集積回路を横切る異なる横方向に案内することを可能にするように、互いに対して配置されている。このようにして、いわゆる水平または横方向の電源タップを提供することができ、これにより、例えば、監視および試験の少なくとも1つを行うことができる、PICの異なる部分に光放射を導くことができる。
【0024】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、非平面誘電体光導波路の第2の表面は、少なくとも部分的に金属接触パッドを備えている。金属接触パッドをヒーターとして構成することにより、非平面誘電体光導波路に存在する光放射の光モードの第2の部分の熱光学的操作が、誘電体材料の熱光学係数によって達成され得る。当業者は、誘電体層の熱光学係数を使用して、光学機能の低速スイッチング、変調、および減衰のうちの少なくとも1つを可能にすることができることを理解するであろう。さらに、このようにして、可変の面内電力タップを確立することができる。金属接触パッドは、環境汚染物質から金属接触パッドを保護するために、さらなる誘電体保護層で覆うことができる。金属接触パッドとの電気的接続を確立するために、さらなる誘電体保護層に、金属接触パッドへのアクセスを可能にする少なくとも1つの開口部を設けることができる。
【0025】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリキシリレン、ベンゾシクロブテン、ポリシロキサン、およびシリコンのうちの1つを含むポリマーベースの層である。前述のタイプのポリマーベースの保護層のいずれかは、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、および蒸着のうちの1つによって、複数のPICを含む完全なウェーハに適用することができる。あるいは、ポリマーベースの保護層は、ディップコーティング、スクリーン印刷、ディスペンシング、および蒸着のうちの1つによって、ウェーハ全体をダイシングすることによって得られる単一のPICに適用することができる。当業者は、ポリマーベースの保護層が、その適用に続いて液相として適用される場合、ポリマーベースの保護層は、真空中、または、酸素(O2)、アルゴン(Ar)、および窒素(N2)の少なくとも1つを含む特定の雰囲気内で熱処理および/または紫外線(UV)処理にさらすことにより、硬化または架橋されることを理解するであろう。硬化の結果、例えばほこり粒子や湿気などの環境汚染物質からPICを保護するのに適している強化または硬化したポリマーベースの保護層が得られる。
【0026】
当業者は、ポリマーベースの保護層のハロゲン化を適用して、ポリマーベースの保護層の透明度のウィンドウを通信波長、すなわち1300nmから1600nmの範囲の波長に合わせることができることを理解するであろう。
【0027】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、少なくとも2つの異なる屈折率を備えている。誘電体保護層がポリマーベースの層である場合、少なくとも2つの異なる屈折率は、例えば、ポリマーベースの保護層の適切な領域をUV放射に選択的に曝露することによって提供することができる。UV放射の必要な波長は、ポリマーベースの保護層の特定の組成物の少なくとも1つおよび必要な屈折率に依存する。このようにして、そうでなければ平面ポリマーベースの保護層に非平面ポリマーベースの光導波路を確立することが可能であり、それにより、いずれも導波路に存在する光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向への光閉じ込めを可能にする。
【0028】
あるいは、ポリマーベースの保護層を異なるポリマーベースの層のスタックとして適用することによって、少なくとも2つの異なる屈折率を提供することができ、各ポリマーベースの層は、異なる屈折率を有する。このようにして、非平面ポリマーベースの光導波路は、リブ導波路の代わりにリッジ導波路として構成することができる。
【0029】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層が、有機添加剤および無機添加剤のうちの少なくとも1つを含む。例えば充填剤、ゲッターまたは安定剤であり得る上記添加剤の少なくとも1つを含むことによって、誘電体保護層の環境保護、機械的安定性、化学的安定性、および光学的機能性の少なくとも1つを高めることができる。特に、誘電体保護層によって提供される環境保護は、化学反応を阻害するその能力を強化することによって、または湿気に対するその疎水性を強化することによって、さらに改善され得る。誘電体保護層がポリマーベースの層である場合、その疎水性は、原子層堆積または分子蒸着によってハロゲン化ポリマーまたはポリ(p-キシリレン)の薄層を適用することによって強化することができる。
【0030】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、誘電体保護層は、InPベースの基板の第1の表面とは反対側を向くように配置された第3の表面を含み、誘電体保護層は、第3の表面に突起の規則的なパターンを提供するように配置されたくぼみを備えている。このようにして、誘電体保護層の疎水性は、ハロゲン化ポリマーまたはポリ(p-キシリレン)の薄層を適用する上記の方法とは異なる方法で増強することができる。
【0031】
突起の規則的なパターンの適用は、誘電体保護層の第3の表面に少なくとも50°の接触角を提供することができる。当業者は、接触角が、液気界面が固体表面と出会う、従来は液体を通して測定される角度であることを理解するであろう。接触角は、ヤング方程式を介して液体による固体表面の濡れ性を定量化する。所与の温度と圧力における固体、液体、蒸気の所与のシステムは、独特の平衡接触角を有する。しかしながら、実際には、前進または最大接触角から後退または最小接触角に及ぶ接触角ヒステリシスの動的現象がしばしば観察される。平衡接触角の値は、前進接触角と後退接触角の値の間の範囲であり、それらから計算され得る。平衡接触角は、液体、固体、および蒸気の分子相互作用の相対的な強さを反映している。
【0032】
さらに、当業者は、接触角が静的液滴法を含む様々な方法によって測定できることを理解するであろう。後者の測定方法を使用して、接触角は、固体基板上の純粋な液体のプロファイルをキャプチャするために、光学サブシステムを使用する接触角ゴニオメータによって測定される。液固界面と液気界面の間に形成される角度が接触角である。例えば、少なくとも50°の接触角を持つポリマーベースの表面は疎水性であると見なされるが、親水性のポリマーベースの表面は50°未満の接触角を有する。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンフィルムの場合、当業者は、接触角を決定するためのASTM D2578-17標準試験方法に精通しているであろう。この試験方法はISO8296と同等である。
【0033】
本発明による環境保護されたフォトニック集積回路の実施形態では、フォトニック集積回路は、非気密パッケージおよび気密パッケージのうちの1つを備えている。PICを非気密パッケージに含めることにより、環境保護とその結果としてのPICの寿命を向上させることができる。当業者は、PICを気密パッケージに含めることによって、環境保護、したがってPICの寿命をさらに改善することができることを理解するであろう。
【0034】
本発明の別の態様によれば、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路を含む光電子システムが提供される。光電子システムは、例えば、限定的にではなく電気通信用途にのみ使用することができる。その場合、光電子システムは、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つであり得る。上記に基づいて、本発明による環境保護されたPICの適用のために、光電子システムのコストを削減できることが明らかであろう。
【0035】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)およびそのようなPICを含む光電子システムの例示的かつ非限定的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【0036】
当業者は、PICおよび光電子システムの説明された実施形態は、本質的に例示的なものにすぎず、いかなる方法でも保護の範囲を制限すると解釈されるべきではないことを理解するであろう。当業者は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、PICおよび光電子システムの代替および同等の実施形態を考案し、実施することができることを理解するであろう。
【0037】
添付の図面シートの図を参照されたい。これらの図は本質的に概略図であるため、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。さらに、等しい参照番号は、等しいまたは類似の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】InPベースの非平面光導波路が平面ポリマーベースの保護層で覆われている、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)の第1の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図1B】
図1Aに示される環境保護されたPICの第1の例示的な非限定的な実施形態のIB-IBに沿った概略断面を示す。
【
図2A】テーパ部分を含むInPベースの非平面光導波路が共形ポリマーベースの保護層で覆われている、本発明による環境保護されたPICの第2の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図2B】
図2Aに示される環境保護されたPICの第2の例示的な非限定的な実施形態のIIB-IIBに沿った概略断面を示す。
【
図3A】テーパ部分を含むInPベースの非平面光導波路が、細長い構造を備えたポリマーベースの保護層で覆われ、それによってポリマーベースのリブ導波路を確立する、本発明による環境保護されたPICの第3の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図3B】
図3Aに示される環境保護されたPICの第3の例示的な非限定的な実施形態のIIIB-IIIBに沿った概略断面を示す。
【
図4A】テーパ部分を含むInPベースの非平面光導波路が、凹部を備えた細長い構造を備えたポリマーベースの保護層で覆われている、本発明による環境保護されたPICの第4の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図4B】
図4Aに示される環境保護されたPICの第4の例示的な非限定的な実施形態のIVB-IVBに沿った概略断面を示す。
【
図5A】テーパ部分を含むInPベースの非平面光導波路が、PICを横切って異なる横方向に光放射を向けるように配置された細長い構造を備えたポリマーベースの保護層によって覆われている、本発明による環境保護されたPICの第5の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図5B】テーパ部分を含むInPベースの非平面光導波路が、金属接触パッドを備えた細長い構造を備えたポリマーベースの保護層によって覆われている、本発明による環境保護されたPICの第6の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。
【
図6A】ポリマーベースの保護層の領域が選択的にUV放射に曝されて、より低い屈折率の領域を作成し、それによってポリマーベースのリブ導波路を提供する、本発明による環境保護されたPICの第7の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図6B】2つのポリマーベースの層のスタックが提供され、それぞれのポリマーベースの層が、異なる屈折率を有し、最上部のポリマーベースの層が部分的に除去されており、それによってポリマーベースのリッジ導波路を提供している、本発明による環境保護されたPICの第8の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図6C】
図6Aおよび
図6Bに示されているPICの実施形態をもたらした技術を組み合わせることによって得られるポリマーベースのリッジ導波路を含む、本発明による環境保護されたPICの第9の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図7A】InPベースの基板とは反対側を向くように配置されたポリマーベースの保護層の表面には、規則的なパターンの突起を提供するように配置されたくぼみが設けられている、本発明による環境保護されたPICの第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
【
図7B】
図7Aに示される環境保護されたPICの第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。
【
図8】PICが気密パッケージを備えている、環境保護されたPICの第11の例示的な非限定的な実施形態の概略断面を示す。
【
図9】本発明による環境保護されたPICを含む電気通信用途のための光電子システムの第1の例示的な非限定的な実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による環境保護されたPIC1の提示された例示的で非限定的な実施形態は、1つのポリマーベースの保護層を含むが、当業者は、本発明の範囲内に入る、複数のポリマーベースの保護層を含む実施形態、および、例えば、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素層などのケイ素含有層など、1つまたは複数の非ポリマーベースの保護層を含む実施形態を、過度の負担なしに想定することができるであろうことに留意されたい。
【0040】
図1Aは、本発明による環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)1の第1の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。PIC1は、例えば1300nmから1600nmの範囲の波長を有する光放射を案内するように構成されたInPベースの非平面光導波路4を備えた第1の表面3を有するInPベースの基板2を備えている。PIC1はまた、InPベースの基板2の第1の表面3およびInPベースの非平面光導波路4を覆うポリマーベースの保護層5を含む。ポリマーベースの保護層5は、0.5μmから100μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間の厚さtを有し得る。そのような厚さは、例えば、ほこり粒子および湿気などの環境汚染物質の拡散を制限するのに十分であり得、それにより、PIC1の非気密パッケージを可能にする。
【0041】
図1Aに示されるポリマーベースの保護層5は、多層光導波路アセンブリ6に平面ポリマーベースの光導波路9を提供する、いわゆる平坦化コーティングである。上記の範囲の厚さtを有する平面ポリマーベースの光導波路9は、光放射の伝播方向を横切る直交する一方向にのみ光放射の閉じ込めを提供する。
図1Aに示されるPIC1において、光放射が平面ポリマーベースの光導波路9に閉じ込められる方向は、InPベースの基板2の第1の表面3を横切る方向であることが理解されよう。
【0042】
図1Bは、
図1Aに示されているPIC1の第1の例示的な非限定的な実施形態のIB-IBに沿った概略断面を示している。InPベースの非平面光導波路4およびポリマーベースの保護層5は、PIC1に多層光導波路アセンブリ6を提供する。多層光導波路アセンブリ6のポリマーベースの保護層5は、例えば、InPベースの非平面光導波路4に存在する光放射の光モードフィールドの一部を運ぶことができる。InPベースの非平面光導波路に存在する放射の光モードフィールドは、
図1Bに示す楕円形で概略的に示されている。ポリマーベースの保護層5への光放射の光学モードフィールドの拡大は、4つの太い矢印によって概略的に示されている。光放射の光モードフィールドをポリマーベースの保護層5に拡張することにより、PIC1と標準光ファイバ(図示せず)との間の低損失光結合を可能にすることができる。
【0043】
図2Aは、本発明による環境保護されたPIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。InPベースの非平面光導波路4は、InPベースの基板2の第1の表面3を横切る方向の寸法を有する。この寸法は、一般に、導波路4の高さと呼ばれる。導波路4は、導波路4の第1の部分4aに第1の高さを有し、導波路4の第2の部分4bに第2の高さを有する。
図2Aに示されるPIC1の例示的な非限定的な実施形態では、第1の部分4aおよび第2の部分4bは一定の高さを有する。当業者は、第1の部分4aおよび第2の部分4bが、PICの機能に必要な任意の適切な高さプロファイルを有することができる、すなわち、高さが単調または段階的に変化できることを理解するであろう。
図2Aに示すPIC1では、第1の高さが第2の高さよりも大きくなっている。導波路4は、光放射の光モードフィールドが、第1の部分4aから第2の部分4bに通過するときに、InPベースの非平面光導波路4からポリマーベースの保護層5内に部分的に押し出されるように、第1の部分4aおよび第2の部分4bを相互接続するテーパ部分7を備えている。このようにして、InPベースの非平面光導波路4に存在する光放射の光モードフィールドは、導波路4に残る第1の部分と、ポリマーベースの保護層5によって提供される多層光導波路アセンブリ6の導波路に押し込まれる光モードフィールドの第2の部分とに分割される。
【0044】
図2Bは、
図2Aに示されているPIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態のIIB-IIBに沿った概略断面を示している。InPベースの非平面光導波路4に残る光モードフィールドの第1の部分は、
図2Bに小さい楕円形として概略的に示されており、一方、ポリマーベースの保護層5に存在する光モードフィールドの第2の部分は、より大きな楕円形として概略的に示されている。ポリマーベースの保護層5に存在する光放射の光モードフィールドの第2の部分は、光放射の光モードフィールドの少なくとも0.5%である。このように、ポリマーベースの保護層5内の光放射は、例えば、監視および検査目的などの上記の追加の光学機能のうちの少なくとも1つに対して十分である。
【0045】
図2Aおよび
図2Bは、PIC1の第2の例示的な非限定的な実施形態によれば、ポリマーベースの保護層5は、多層光導波路アセンブリ6に、光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向で、ポリマーベースの保護層5内の光放射の光学モードの第2の部分の閉じ込めを可能にするように構成される非平面ポリマーベースの光導波路8を提供する共形コーティングであることを示している。
【0046】
図3Aは、本発明による環境保護されたPIC1の第3の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。テーパ部分7を含むInPベースの非平面光導波路4は、平坦化コーティングとして適用されるポリマーベースの保護層5によって覆われている。ポリマーベースの保護層5は、InPベースの基板2の第1の表面3から離れる方向に突出するとともにポリマーベースの保護層5を横切って延在し、それにより、多層光導波路アセンブリ6に、ポリマーベースの光リブ導波路とも呼ばれることができる非平面ポリマーベースの光導波路8を提供する細長い構造10を備えている。非平面ポリマーベースの光導波路8を提供することにより、ポリマーベースの保護層5における光放射の光モードの第2の部分は、光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向に限定される。細長い構造10は、例えば、リソグラフィーステップと、それに続くウェット現像ステップ、ウェットエッチングステップ、およびドライエッチングステップのうちの1つとを含むプロセスシーケンスによって、ポリマーベースの保護層5内に形成することができる。
【0047】
図3Bは、
図3Aに示されている環境保護されたPICの第3の例示的な非限定的な実施形態のIIIB-IIIBに沿った概略断面を示している。InPベースの非平面光導波路4に残る光モードフィールドの第1の部分は、小さい楕円形として概略的に示されており、一方、ポリマーベースの保護層5に存在する光モードフィールドの第2の部分は、より大きな楕円形として概略的に示されている。
【0048】
図4Aは、非平面ポリマーベースの光導波路8は、InPベースの基板2の第1の表面3とは反対側を向くように配置された第2の表面11を含む、本発明による環境保護されたPIC1の第4の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。第2の表面11は、非平面ポリマーベースの光導波路8からの光放射の光モードの第2の部分を少なくとも部分的にInPベースの基板2の第1の表面3とは反対側を向く方向に結合するように構成および配置された凹部12を備えている。このようにして、例えば、監視および検査の目的の少なくとも1つに使用することができる、いわゆる垂直または横方向の電源タップを提供することができる。
【0049】
図4Bは、
図4Aに示されるPIC1の第4の例示的な非限定的な実施形態のIVB-IVBに沿った概略断面を示す。凹部12は、細長い構造10の高さよりも大きく、ポリマーベースの保護層5内に下向きに延在する。凹部12は、光放射の光学モードの第2の部分が、非平面ポリマーベースの光導波路8から、InPベースの基板2の第1の表面3とは反対側を向く方向に結合されることを可能にする傾斜した側壁を有する。
【0050】
図5Aは、多層光導波路アセンブリのInPベースの非平面光導波路4および非平面ポリマーベースの光導波路8が、InPベースの非平面光導波路4に存在する光放射の光モードの第1の部分と、非平面ポリマーベースの光導波路8に存在する光放射の光モードの第2の部分とを、PIC1を横切る異なる横方向に誘導することを可能にするために互いに対して配置されている、本発明による環境保護されたPIC1の第5の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。このようにして、いわゆる水平または横方向の電源タップを提供することができ、これにより、例えば、監視および検査の少なくとも1つを行うことができる、PIC1の異なる部分に光放射を案内することができる。
【0051】
図5Bは、非平面ポリマーベースの光導波路8の第2の表面11は、金属接触パッド13を備えている、本発明による環境保護されたPIC1の第6の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略等角図を示す。金属接触パッド13をヒーターとして構成することにより、非平面ポリマーベースの光導波路8に存在する光放射の光学モードの第2の部分の熱光学操作は、ポリマーベースの材料の熱光学係数によって達成することができる。当業者は、ポリマーベースの層の熱光学係数を使用して、光学機能の低速スイッチング、変調、および減衰のうちの少なくとも1つを可能にすることができることを理解するであろう。さらに、このようにして、可変の面内電源タップを確立することができる。
【0052】
図6Aは、ポリマーベースの保護層5が、n
1>n
2である2つの異なる屈折率n
1、n
2を備えている、本発明による環境保護されたPIC1の第7の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。屈折率n
2は、ポリマーベースの保護層5の第3の表面14をUV放射に選択的に曝露することによって確立される。UV放射の必要な波長は、ポリマーベースの保護層5の特定の組成物の少なくとも1つおよび必要な屈折率に依存する。上で論じたように、このようにして、そうでなければ平面ポリマーベースの保護層5内に非平面ポリマーベースの光導波路8を確立することができ、これにより、いずれも導波路に存在する光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向への光学的閉じ込めが可能になる。
【0053】
図6Bは、n
3>n
1である2つの異なる屈折率n
1、n
3が、2つの異なるポリマーベースの保護層のスタックを適用することによって提供される、本発明による環境保護されたPIC1の第8の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。InPベースの基板2の第1の表面3と接触している第1の層は屈折率n
1を有し、第1の層を覆っている第2の層は屈折率n
3を有する。第2のポリマーベースの層を部分的に除去することにより、細長い構造10が提供される。このようにして、第1のポリマーベースの層と第2のポリマーベースの層とが異なる屈折率を有するため、リブ導波路の代わりにリッジ導波路と呼ぶことができる非平面ポリマーベースの光導波路8が提供され、第2のポリマーベースの層の屈折率は、第1のポリマーベースの層の屈折率よりも高い、すなわち、n
3>n
1である。第2のポリマーベースの層の部分は、リソグラフィーステップと、それに続くウェット現像ステップ、ウェットエッチングステップ、およびドライエッチングステップのうちの1つとを含む上記のプロセスシーケンスによって除去することができる。
【0054】
図6Cは、
図6Aおよび
図6Bに示されている非平面ポリマーベースの光導波路を確立するために使用された技術を組み合わせることによって得られる非平面ポリマーベースの導波路を含む、本発明による環境保護されたPIC1の第9の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。
図6Cに示されるPIC1は、2つの異なるポリマーベースの保護層のスタックを含み、その第1の層は、InPベースの基板2の第1の表面3と接触している。第1の層は屈折率n
1を有する。第2の層は第1の層を覆い、n
3>n
1である屈折率n
3を有する。第2の層は、ポリマーベースの保護層5の第3の表面14をUV放射に選択的に曝露することによって、屈折率n
2(ここで、n
3>n
1>n
2)を備えている。上記のように、UV放射の必要な波長は、第2のポリマーベースの保護層の特定の組成物の少なくとも1つおよび必要な屈折率に依存する。結果として、ポリマーベースの保護層のそうでなければ平面スタック内の非平面ポリマーベースの光導波路8が確立され、これにより、導波路に存在する光放射の伝搬方向を横切る2つの直交する方向への光閉じ込めが可能になる。
【0055】
図7Aは、ポリマーベースの保護層5の第3の表面14が、InPベースの基板2の第1の表面3から離れる方向に延びる突起16の規則的なパターン17を提供するように配置されたくぼみ15を備えている、本発明による環境保護されたPIC1の第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略断面を示す。突起16の規則的なパターン17の結果として、ポリマーベースの保護層5の第3の表面14は、改善された疎水性を有する。
図7Aに示されるように、第3の表面14の接触角βは90°よりも大きい。当業者は、例えば、少なくとも50°の接触角を有するポリマーベースの表面が疎水性であると見なされる一方、接触角が50°未満のポリマーベースの表面は親水性であると見なされることを理解するであろう。
【0056】
図7Bは、
図7Aに示されるPIC1の第10の例示的な非限定的な実施形態の一部の概略上面図を示す。非平面ポリマーベースの光導波路8の細長い構造10に沿って配置された突起16の規則的なパターン17をはっきりと見ることができる。示されていないが、当業者は、PIC1の特定の機能および性能要件の少なくとも1つに応じて、非平面ポリマーベースの光導波路8の第2の表面11にも、規則的なパターンの突起を設けることができることを理解するであろう。
【0057】
図8は、PIC1が気密パッケージ19を備えている、環境保護されたPICの第11の例示的な非限定的な実施形態の概略断面図を示している。上記のように、気密パッケージ19は、環境保護を改善し、したがって、PIC1の寿命を改善することができる。当業者は、PICが非気密パッケージ(図示せず)を提供することもできることを理解するであろう。後者の場合、環境保護とその結果としてのPICの寿命も改善できるが、程度は低くなる。
【0058】
図9は、本発明による環境保護されたPIC1を含む電気通信用途のための光電子システム18の第1の例示的な非限定的な実施形態の概略図を示す。光電子システム18は、例えば、送信機、受信機、送受信機、コヒーレント送信機、コヒーレント受信機、およびコヒーレント送受信機のうちの1つであり得る。
【0059】
本発明は、InPベースの光導波路4を少なくとも部分的に備えた第1の表面3を有するInPベースの基板2と、InPベースの基板2およびInPベースの光導波路4の少なくとも第1の表面3を覆うように配置された誘電体保護層5とを備えた、環境保護されたPIC1に関連するものとして要約することができる。誘電体保護層5は、上記PIC1を環境汚染物質から保護し、光放射の伝播方向を横切る少なくとも1つの方向で誘電体保護層5に光放射を閉じ込めることを可能にし、InPベースの光導波路4と誘電体保護層5との間の光放射の交換を可能にするように構成されている。
【0060】
本発明はまた、上記PIC1を含む光電子システム18に関する。
【0061】
当業者には、本発明の範囲が、前述の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、そのいくつかの修正および修正が可能であることが明らかであろう。特に、本発明の様々な態様の特定の特徴の組み合わせを行うことができる。本発明の一態様は、本発明の別の態様に関連して説明された特徴を追加することによってさらに有利に強化され得る。本発明は、図および説明において詳細に例示および説明されてきたが、そのような例示および説明は、例示的または例示的なものにすぎず、限定的ではないと見なされるべきである。
【0062】
本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の変形は、図、説明、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求の範囲の発明を実施する当業者によって理解および実施することができる。請求項において、「備える(comprising)」という語は、他のステップまたは要素を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の措置が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの措置の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。請求項中の参照番号は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0063】
1 環境保護されたフォトニック集積回路(PIC)
2 リン化インジウムベース(InPベース)の基板
3 InPベースの基板の第1の表面
4 InPベースの光導波路
4a InPベースの光導波路の第1の部分
4b InPベースの光導波路の第2の部分
5 誘電体保護層
6 多層光導波路アセンブリ
7 InPベースの光導波路のテーパ部分
8 非平面誘電体光導波路
9 平面誘電体光導波路
10 細長い構造
11 非平面誘電体光導波路の第2の表面
12 凹部
13 金属接触パッド
14 誘電体保護層の第3の表面
β 誘電体保護層の第3の表面の接触角
t 誘電体保護層の厚さ
n1 第1の屈折率
n2 第2の屈折率、n1>n2
n3 第3の屈折率、n3>n1>n2
15 くぼみ
16 突起
17 突起の規則的なパターン
18 電気通信用途の光電子システム
19 気密パッケージ