IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーリタ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7362763変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置
<>
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図1
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図2
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図3
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図4
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図5
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図6
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図7
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図8
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図9
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図10
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図11
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図12a
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図12b
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図13
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図14
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図15
  • 特許-変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】変化するデューティサイクルを有する周期的なパターンを印刷するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231010BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G03F7/20 505
G02B5/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021557235
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2020052954
(87)【国際公開番号】W WO2020194267
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】62/824,508
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/923,744
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513004951
【氏名又は名称】ユーリタ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EULITHA AG
【住所又は居所原語表記】Studacherstrasse 7b, CH-5416 Kirchdorf AG, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランシス クルーブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アムライン
(72)【発明者】
【氏名】マキシム レブグレ
(72)【発明者】
【氏名】ハルン ソラク
(72)【発明者】
【氏名】リー ワン
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537718(JP,A)
【文献】特開2015-041649(JP,A)
【文献】特表2016-517034(JP,A)
【文献】特開2011-181979(JP,A)
【文献】特開昭63-184004(JP,A)
【文献】特開平09-152309(JP,A)
【文献】特開平07-113906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20 -7/24
9/00 -9/02
H01L 21/027
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく方法であって、該方法は、
a)前記所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)前記基板および前記第1のマスクを、前記第1のマスクが前記基板と平行でかつ前記基板から第1の距離を置くように変位タルボリソグラフィシステムに配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴が、前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、前記第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから第2の距離を置いて、前記第1のマスクの、前記基板から前記第1の距離を置いた側とは反対側に配置するステップと、
e)前記第2のマスクに入射する光が、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、かつ前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して直交する面において予め定められた入射角の分布を有し、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第1の高分解能回折格子を照明するように、前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させながら、前記ビームで前記第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、前記第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、前記フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップと、
を含み、
前記第1の可変透過型回折格子における前記デューティサイクルの前記空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、前記第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計され、
前記第2の距離および前記予め定められた入射角の分布は、露光時間内に前記フォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、前記第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、前記第1の可変透過型回折格子の前記周期に関連して選択されている、
方法。
【請求項2】
基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく方法であって、該方法は、
a)前記所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)前記第1のマスクを、前記基板と平行にかつ前記基板から第1の距離を置いて配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)前記第1の可変透過型回折格子の線形的特徴が、前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、前記第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから第2の距離を置いて、前記第1のマスクの、前記基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するステップと、
e)前記第2のマスクに入射する光が、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第1の高分解能回折格子を照明するように、前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させかつ前記第2のマスクを変位させながら、前記ビームで前記第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、前記第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、前記フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップと、
を含み、
前記第2のマスクの変位は、露光時間内に前記フォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、前記第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴の周期および方向に関連して設定され、
前記第1の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの前記空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、前記第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計されている、
方法。
【請求項3】
前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの前記空間的変化は、1次元であり、前記表面レリーフ型回折格子の前記線形的特徴の方向に関して平行、直交、および中間角度のうちの1つである方向にある、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの前記空間的変化は、1次元であり、線形または非線形であり、単調または非単調である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの前記空間的変化は、前記表面レリーフ型回折格子の前記線形的特徴に対してそれぞれ平行および直交する方向の変化成分を有する2次元である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの前記空間的変化は、前記所期の表面レリーフ型回折格子の前記線形的特徴に対してそれぞれ平行および直交する方向の変化成分を有する2次元であり、線形、非線形、単調、および非単調な変化のいずれかである、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
前記第1の可変透過型回折格子の周期は、一定であるか、または前記第1の可変透過型回折格子の領域にわたって変化する、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記第1の可変透過型回折格子の周期は、前記第1の可変透過型回折格子の領域にわたって一定であり、前記第1の高分解能回折格子の周期よりも実質的に大きい、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記第2のマスクは、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して直交する方向に、露光時間中一定の変位速度で前記可変透過型回折格子の1周期分または複数周期分の距離だけ変位される、請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記第2のマスクは、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して直交する方向に、一定の変位速度を使用して前記可変透過型回折格子の1周期分または複数周期分の距離だけ変位され、次いで、反対方向に、同じまたは異なる変位速度を使用して前記可変透過型回折格子の1周期分または複数周期分の距離だけ変位される、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記第2のマスクは、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して直交する方向に、前記第2のマスクの増分露光量の変位距離に対する依存性が生成され実質的にガウスプロファイルを有する可変の変位速度を使用して変位される、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記フォトレジスト層に、第2の周期およびデューティサイクルの第2の空間的変化を有する周期的な線形的特徴の少なくとも第2の所期の表面レリーフ型回折格子を付加的に同時に形成するためのものであり、
前記第1のマスクは、前記第2の所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の少なくとも第2の高分解能回折格子を付加的に支持し、
前記第2のマスクは、第2の周期およびデューティサイクルの第2の設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴を交互に配置された少なくとも第2の可変透過型回折格子を付加的に支持し、
前記第2のマスクを、前記第1のマスクに関して配置するステップは、付加的に、少なくとも前記第2の可変透過型回折格子の前記線形的特徴が前記第2の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して直交するように配置させ、
前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップは、前記第2のマスクに入射する光が、少なくとも前記第2の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において付加的に十分にコリメートされ、それによって、前記第2の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第2の高分解能回折格子を照明し、
変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させかつ前記第2のマスクを変位させながら、前記ビームで前記第2のマスクを露光時間の間照明するステップは、前記フォトレジストを前記第2の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて付加的に露光し、
前記第2のマスクの変位は、前記露光時間内に前記フォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、前記第2の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、少なくとも前記第2の可変透過型回折格子の前記線形的特徴の周期および方向に関連して付加的に設定され、
前記第2の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの前記空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、前記第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ前記第2の所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計されている、
請求項2記載の方法。
【請求項13】
前記第1のマスクは、線形的特徴の第1および第2の高分解能回折格子を支持し、前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴の方向は、前記第2の高分解能回折格子の前記線形的特徴の方向に関して傾斜した角度にあり、
前記第2のマスクは、第1および第2の周期が同じである線形的特徴の第1および第2の可変透過型回折格子を支持し、前記第1の可変透過型回折格子の線形的特徴の方向は、前記第2の可変透過型回折格子の線形的特徴に関して同じ傾斜した角度にあり、
前記第2のマスクの変位は、それぞれ前記第1および第2の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して垂直な方向を角度的に二等分する方向に配置されている、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
基板にわたるフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく装置であって、
a)前記所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクと、
b)前記第1のマスクを、前記基板と平行にかつ前記基板から第1の距離を置いて配置するための手段と、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクと、
d)前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴が、前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、前記第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから第2の距離を置いて、前記第1のマスクの、前記基板から前記第1の距離を置いた側とは反対側に配置するための手段と、
e)前記第2のマスクに入射する光が、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、かつ前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴の方向に対して直交する面において予め定められた入射角の分布を有し、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第1の高分解能回折格子を照明するように、前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するための手段と、
f)変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させながら、前記ビームで前記第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、前記第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、前記フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するための手段と、
を含む、装置。
【請求項15】
基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく装置であって、
a)前記所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクと、
b)前記第1のマスクを、前記基板と平行にかつ前記基板から第1の距離を置いて配置するための手段と、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクと、
d)前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴が、前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、前記第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから予め定められた第2の距離を置いて、前記第1のマスクの、前記基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するための手段と、
e)前記第2のマスクに入射するビームが、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第1の高分解能回折格子を照明するように、前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するための手段と、
f)前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するために前記第2のマスクを前記単色光のビームによって照射する露光時間内に前記フォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、前記第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、前記第2のマスクを照明しながら、前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴の周期および方向に関して前記第2のマスクを変位させるための手段と、
g)変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させるための手段と、
を含む、装置。
【請求項16】
基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく方法であって、該方法は、
a)前記所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)前記第1のマスクを、前記基板と平行にかつ前記基板から第1の距離を置いて配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)回折ビームが前記第1の可変透過型回折格子によって透過されるように前記第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
e)前記第2のマスクと前記第1のマスクの間に、前記回折ビームの0次または1次のビームのみが前記第1のマスク内の前記第1の高分解能回折格子を照明し、前記0次または1次のビームが前記第1の可変透過型回折格子の前記線形的特徴に対して直交する前記第1のマスク上の前記第1の高分解能回折格子の前記線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされるような光学的配置構成を提供するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って前記第1の距離を変化させながら、前記単色光のビームで前記第1の可変透過型回折格子を露光時間の間照明し、これにより、前記第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、前記フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップと、
を含み、
前記第1の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの前記空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、前記第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ記所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計されている、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロおよびナノ構造体の製造に使用されるフォトリソグラフィの分野に関連し、特に、ニアアイディスプレイの製造に使用されるフォトリソグラフィの分野に関連する。
【0002】
回折光学素子(DOE)およびホログラフィック光学素子(HOE)は、拡張現実(AR)および仮想現実(VR)ディスプレイアプリケーション用に広く開発されている。DOEおよびHOEの小型で軽量な特性は、必要な機能を備えたポータブルで目立たないヘッドマウントデバイスを実現するための明確な利点を提供する。製造コスト低減の可能性がある理由から最も注目を集めている構造体は、表面レリーフ型回折格子であり、必要な構造体周期は250~500nmの範囲である。典型的には、これらの構造体は、最初に、画像生成マイクロディスプレイからの光をAR眼鏡の透明な基板材料に結合し、次に、観察者の目の前の眼鏡の領域に光を再分配し、最後に、眼鏡からの光出力を結合するために使用され、それによって、仮想画像が、装着者の現実世界の視界に重なって見えるようになる。これらの回折格子は、一般に、基板の2つの表面間の複数の内部反射によって光が進むように光を導くため、導波路回折格子とも称される。理想的には、回折格子の設計により、フルカラー画像を広い視野で見ることができ、快適な遠距離に焦点を合わせることができる。
【0003】
米国特許第6,580,529号明細書には、仮想画像ディスプレイの射出瞳を拡大するための方法が開示されており、この方法では、3つのホログラフィックに記録された回折格子が平面状の透明な基板上に配置されている。図1を参照すれば、ディスプレイ光源からの光は、基板の一方の面に配置された第1のホログラフィック光学素子(HOE)H1に入射する。H1は、ディスプレイ光を基板に結合し、次いで、ここでは、光は基板表面間の内部全反射によって捕捉され、H1は光を第2のHOE,H2の方に向ける。H2は、光分布の範囲をx方向に拡大し、光を第3のHOE,H3の方に向け直す。次いで、H3は、光分布の幅をy方向に拡大し、基板からの光を観察者の目の方に切り離す。H2およびH3によるx方向およびy方向への光分布の拡大により、観察者は、ディスプレイ光源の仮想像を大きな視野で見ることができる。H2およびH3によって実行される拡大は、回折格子と、基板の反対側表面との間で照明光が多重反射し、光の一部が、当該の回折格子に入射するたびにそれぞれH3および観察者の方に回折されることで発生することが記載されている。さらに、H3の領域にわたって出力結合される光が均一強度を有するためには、H2およびH3の回折効率がそれらの領域にわたって一定なのではなく、それぞれxおよびy方向に非線形に増加すべきであることが開示されている。
【0004】
Eisenらによる文献「Planar configuration for image projection」,Appl.Opt.,vol.45,no.17(2006)、およびGurwichらによる文献「Design and experiments of planar optical light guides for virtual image displays」,Proc. SPIE vol.5182, Wave-Optical Systems Engineering II (2003)には、上述した射出瞳拡大方式に使用されている回折格子H1,H2,H3の設計および製造の手順が開示されている。特に、必要とされる回折格子周期は、H1およびH3については450nm、H2については318nmであることが開示されている。回折効率を高めるためには、H2の溝形状が対称であり、一方、回折格子H1およびH3については、溝が特定の傾斜角を有するべきであることが開示されている。均一な画像の明るさを確保するために、回折格子H2およびH3に沿って必要な回折効率の非線形的変化が、照明波長、回折格子周期、基板厚さなどのシステムパラメータの特定のセットに対して計算され、これらの効率変化を得るために厳密結合波理論が、回折格子に沿って必要な溝深さの変化を決定するために使用される。回折格子H1およびH3において必要とされる溝傾斜角を得るため、ならびに回折格子にわたって必要とされる溝深さの変化を得るためのホログラフィック記録手順が開示されている。後者の手順には、溝深さの露光量への依存性を特徴付けること、および露光中の不透明なマスクの徐々の変位により、露光領域全体にわたる露光量の変化を実現することが含まれている。
【0005】
米国特許出願第11/991,492号明細書には、上記で説明したのと同じ目的のために仮想結像デバイスに組み込まれた回折格子に沿って回折効率の非線形的変化を得るための代替的方法が開示されている。これは、回折効率の所期の変化が、その長さに沿った表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの変化によって代わりに得られてもよいことを開示しており、ここで、デューティサイクルは、回折格子周期に対する回折格子のリッジ幅の比として定義されている。これは、回折効率のデューティサイクル(特定の照明波長、回折格子周期など)への依存性が、マクスウェルの方程式に基づいて数値的に計算されることを開示しており、したがって、これにより、回折格子に沿った回折効率の所期の非線形的変化を得るためのデューティサイクル変化を決定することができる。これは、455nmの必要な周期と所期のデューティサイクル変化とを備えた表面レリーフ型回折格子が、エッチングプロセスによって追従される電子ビームリソグラフィを使用して透明基板上に製造されてもよいことを教示している。これはまた、表面レリーフ型回折格子に沿った回折効率の変化は、回折格子の長さに沿って回折格子プロファイルのデューティサイクルと深さの両方の変化によって代替的に得られてもよいことを開示している。
【0006】
米国特許出願第14/447,419号には、溝の線幅、深さ、または傾斜角のうちの1つが回折格子全体にわたって一方向に徐々に変化し、線幅、深さ、傾斜角のうちの別の1つが回折格子全体にわたって別の方向に徐々に変化する、透明基板の表面の一連の溝で構成された表面レリーフ型回折格子を備えた様々な光学部品が記載されている。当該の回折格子は、特に、所期の画像の光を光エンジンから目に搬送する光導波路ベースのディスプレイシステムの光の入出力結合のためのものであり、すなわち、ARおよびVRアプリケーションのためのものである。これは、回折格子の周期が典型的には250~500nmの範囲にあることを述べており、さらに、溝の線幅、深さ、または傾斜角が回折格子全体にわたって所期のやり方で、特定の方向に徐々に変化するような表面レリーフ型回折格子を製造するための様々な技術を教示している。例えば、最初に、従来のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を使用して、均一な表面レリーフ型回折格子を溶融シリカ基板上の表面に形成する。次いで、回折格子全体にわたって所期の結果を生じさせるために、エッチング液の容器内へ基板をゆっくりと下ろし、回折格子の異なる部分をエッチング液に浸す時間を変えるようにすることで、回折格子全体にわたって溝の深さや線幅の変化が徐々に生じる。別の例では、最初に、従来のフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を使用して、溶融シリカ基板の表面上のクロム層に均一な回折格子を形成し、クロム線の上面に未露光の残留フォトレジストが残るようにする。次いで、基板を制御された速度でエッチング液の容器内に下ろし、フォトレジスト下方のクロム線をエッチングして、回折格子に沿ってクロム線幅の必要な変化が生じるようにする。これに続いて、残留フォトレジストが除去され、クロム線間の溶融シリカ基板が、イオンビームの方向に関して適切な角度で傾斜した状態で均一に反応性イオンエッチングされる。これにより、回折格子全体にわたって線幅が変化し、所期の傾斜角を有する溝を備えた表面レリーフ型回折格子を形成することができる。別の例では、最初に、従来の技術を使用して、溶融シリカ基板上のクロム層に均一な回折格子を生成する。次いで、回折格子がエッチングイオンに局所的にさらされる時間が回折格子全体にわたって変化するように、回折格子上でアパーチャを可変速度で変位させながら回折格子をイオンビームでエッチングし、これにより、回折格子全体にわたる所期の溝深さの徐々の変化が生じる。別の例では、アパーチャが一定の速度で回折格子上を変位する際に、基板の傾斜角を付加的に変化させ、それによって、溝の傾斜角の変化が回折格子全体にわたって所期のように生じる。
【0007】
従来技術では、ARおよびVR仮想現実ディスプレイにおいて、均一な画像輝度を可能にするためにそれらの領域全体にわたって必要とされる回折効率の所期の空間的変化を有するサブミクロン周期を有する表面レリーフ型回折格子を実現するための複数の技術が開示されているが、これらの技術のいずれも、低コストの大量生産に十分に適したものではない。特に、電子ビームリソグラフィは、回折格子全体にわたって溝の線幅またはデューティサイクルの変化を形成するには緩慢すぎて費用がかかる。ホログラフィック露光システムは、環境の安定性や振動に対して非常に敏感であるため、高い信頼性が要求される高スループットの生産には実用的でない。さらに、基板を徐々にエッチング液に下ろして液を除去するのは面倒であり、再現性も良くない。マイクロエレクトロニクス分野で処理およびメモリチップの製造に一般的に使用されている光学式ステッパーやスキャナーのフォトリソグラフィ装置は、AR/VRアプリケーションに要する分解能能力を備えているが、それらの露光フィールドのサイズは仮想画像ディスプレイの寸法(通常40~50mm)には小さすぎる。ナノインプリントは、この技術に固有の欠陥の問題があるため、大量生産には向いていない。
【0008】
それゆえ、本発明の第1の課題は、基板上に直接または間接的に塗布されたフォトレジスト層に、回折格子のデューティサイクルが所期の1次元的変化に従ってパターン全体にわたって単一方向に変化し、デューティサイクルが直交方向でパターン全体にわたって一定である、特にサブミクロン周期の表面レリーフ型回折格子のパターンを印刷するためのフォトリソグラフィ方法および装置を提供することである。
【0009】
本発明の第2の課題は、基板上に直接または間接的に塗布されたフォトレジスト層に、回折格子のデューティサイクルが所期の2次元的変化に従って2つの直交方向でパターン全体にわたって変化する、特にサブミクロン周期の表面レリーフ型回折格子を印刷するためのフォトリソグラフィ方法および装置を提供することである。
【0010】
本発明の第3の課題は、基板上に直接塗布されたフォトレジスト層に、またはフォトレジストと基板との間に1つ以上の他の材料の1つ以上の中間層を介在させて間接的に塗布されたフォトレジスト層に、回折格子のデューティサイクルが所期の1次元または2次元的変化に従ってパターン全体にわたって変化する、特にサブミクロン周期の表面レリーフ型回折格子のパターンを印刷するためのフォトリソグラフィ方法および装置を提供することであり、それによって、フォトレジスト層に印刷された表面レリーフ型回折格子は、下方の基板の材料または中間層の1つの材料に表面レリーフ型回折格子を形成するためにさらに処理することができるようになり、これによって、このように形成された表面レリーフ型回折格子の一次回折効率は、仮想現実または拡張現実結像系で照明されたときに、基板全体にわたってそれぞれ所期の1次元または2次元的変化を有するようになる。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの所期の空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子(surface-relief grating)を形成するための変位タルボリソグラフィ(displacement Talbot lithography)に基づく方法が提供され、この方法は、以下を含む、すなわち、
a)所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)基板および第1のマスクを、第1のマスクが基板と平行でかつ基板から第1の距離を置くように変位タルボリソグラフィシステムに配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)第1の可変透過型回折格子の線形的特徴が、第1の高分解能回折格子の線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから第2の距離を置いて、第1のマスクの、基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するステップと、
e)第2のマスクに入射する光が、前記第1の可変透過型回折格子の線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、かつ第1の可変透過型回折格子の線形的特徴に対して直交する面において予め定められた入射角の分布を有し、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが前記第1の高分解能回折格子を照明するように、第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って第1の距離を変化させながら、前記ビームで第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールド(light-field)が、フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップとを含み、
ここで、第1の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計され、
ここで、前記第2の距離および前記予め定められた入射角の分布は、露光時間内に第1の高分解能回折格子およびフォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、第1の可変透過型回折格子の周期に関連して選択されている。
【0012】
最も好適には、第1の線形的な可変透過型回折格子における線形的特徴の周期は、回折格子の領域にわたって一定であるが、代替的に変化する場合もある。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの所期の空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく方法が提供され、この方法は以下を含む、すなわち、
a)所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)前記第1のマスクを、基板と平行にかつ基板から第1の距離を置いて配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)第1の可変透過型回折格子の線形的特徴が、第1の高分解能回折格子の線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、第1のマスクと平行でかつ前記第1のマスクから第2の距離を置いて、第1のマスクの、基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するステップと、
e)第2のマスクに入射する光が、第1の可変透過型回折格子の線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが第1の高分解能回折格子を照明するように、第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って第1の距離を変化させかつ第2のマスクを変位させながら、前記ビームで第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップとを含み、
ここで、第2のマスクの変位は、露光時間内に第1の高分解能回折格子およびフォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、第1の可変透過型回折格子の線形的特徴の周期および方向に関連して設定され、
ここで、第1の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、第2のマスクがない状態で、第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計されている。
【0014】
最も好適には、第1の線形的な可変透過型回折格子における線形的特徴の周期は、回折格子の領域にわたって一定であるが、代替的に変化する場合もある。
【0015】
表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの所期の空間的変化が1次元である場合、すなわち、回折格子全体にわたって単一方向に変化し、直交する方向には一定である場合には、可変透過型(もしくはハーフトーン型)回折格子において設計されたデューティサイクルの空間的変化もそれに応じて1次元となる。表面レリーフ型回折格子全体にわたるデューティサイクルの所期の1次元的変化が、回折格子の線形的特徴に対して直交する方向である場合、可変透過型回折格子における線形的特徴のデューティサイクルの1次元的変化の方向は、それに応じてこのパターンの線形的特徴に対して平行となる。代替的に、表面レリーフ型回折格子全体にわたるデューティサイクルの所期の1次元的変化が、回折格子の線形的特徴に対して平行な方向である場合、可変透過型回折格子の線形的特徴のデューティサイクルの1次元的変化の方向は、それに応じてこのパターンの線形的特徴に対して直交する。他方では、表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの所期の1次元的変化の方向が、回折格子の線形的特徴に対して平行でも直交でもなく、中間の角度である場合には、可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの1次元的変化の方向は、そのパターンの線形的特徴に対して対応する中間の角度である。
【0016】
交互に配置された不透明および透明な線形的特徴を支持する第2のマスクの機能は、位置に依存した(つまり空間的に可変の)露光量を前記第1のマスクに供給することである。これは、不透明および透明な線形的特徴の幅の比率を局所的に変化させることによって達成される。この比率は、所期の局所的な平均透過率を提供するために選択される。これは、一定の周期と変化するデューティサイクルとを有する線形的特徴のセットによって達成することができる。しかしながら、一定の周期は、この可変透過型マスクに必要な特徴ではない。例えば、一定の幅を有する透明な線形的特徴と、可変の幅を有する不透明な線形的特徴とを支持するマスク(すなわち周期(局所的な周期=透明な特徴の幅+隣接する不透明な特徴の幅)を変化させることによる)を用いて同等の結果を得ることができる。同様に、透明な特徴と不透明な特徴とがそれぞれ可変の幅と一定の幅とを有するマスクを使用することもできる(これも回折格子にわたり周期が変化することを意味している)。代替的に、両方の幅は、局所的に所期の平均透過率を提供しながら位置の関数として変化することもできる。しかしながら、本発明の第1および第2の態様(ならびに以下の第3および第4の態様)で使用される可変透過型回折格子の(局所的な)周期は、有利なことに変化するのではなく、回折格子領域にわたって一定である。なぜなら、それが、可変透過型回折格子の設計を簡素化し、フォトレジストに印刷された表面レリーフ型回折格子においてデューティサイクル変化のより高い分解能が得られることを可能にするからである。また、周期を一定にすることで、第1の態様における照明ビームの予め決められた角度帯域幅か第2の態様における可変透過型マスクの変位を使用した可変透過型マスクの局所的な周期(および二値性)によって導入される、マスクを照明する露光量の成分のより良好な抑制を容易にかつ可能にすることができる。周期を変化させる場合には、それが回折格子の任意の要素領域にわたって、例えば、可変透過型回折格子の線形的特徴に対して直交する方向の回折格子の寸法よりもはるかに小さい(10%未満)領域にわたって、ほぼ周期的にまたは準周期的(例えば、10%未満で変化する周期)になるように、緩慢にまたは徐々に変化させることが好ましい。周期の変化率が過度に大きいと、微細格子型パターンを照明する強度分布内に望ましくない不均一性成分が導入されてしまう。
【0017】
表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの所期の1次元的変化は、線形、すなわち、回折格子全体にわたって一定の勾配で増加もしくは減少するものであってもよいし、非線形、単調、または非単調なものであってもよく、いずれの場合も、可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの1次元的変化は、それに応じて第2のマスクがない状態でビームによって照明されたときに第1のマスクが露光されるエネルギー密度に対する、表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの予め定められた依存性にも基づいて設計される。
【0018】
表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの所期の空間的変化が2次元である場合、すなわち、回折格子全体にわたって直交する方向に変化する場合、可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの空間的変化は、それに応じて2次元である。デューティサイクルの1次元的変化については、表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの所期の2次元的変化は、線形、非線形、単調もしくは非単調、あるいはこれらの任意の組み合わせである各方向の変化成分を有し得る。
【0019】
好適には、可変透過型回折格子の寸法は、第1の周期的パターンの寸法よりも大きく、それによって、高分解能回折格子型パターンの完全な領域は、第1の高分解能回折格子型パターンの縁部付近に露光エネルギー変化の望ましくない成分が導入されることを回避するために、可変透過型回折格子によって透過された有意な相対強度を有するすべての回折次数によって照明される。
【0020】
基板にわたるフォトレジスト層は、基板上に直接か、1つもしくは複数の材料の少なくとも1つの中間層を用いて間接的に設けられる。好適には、金属などの別の材料の中間層がフォトレジストと基板との間にあり、この中間層は、デューティサイクルの空間的変化がフォトレジストにおける表面レリーフ型回折格子から金属層に転写されるように引き続きエッチングされてもよく、次いで、下方の基板は、デューティサイクルの空間的変化が基板材料に転写されるように、パターン化された金属層のハードマスク構造体によってエッチングされる。
【0021】
好適には、本発明の第2の態様による方法は、複数の所期の周期を有しかつ少なくとも1つの解析格子において少なくとも1つの所期のデューティサイクルの空間的変化を有する複数の表面レリーフ型回折格子を、基板にわたるフォトレジスト層に付加的に印刷するためのものであり、個々の回折格子は、同時にまたは連続的に印刷される。前者の場合、第1のマスクは、少なくとも第2の表面レリーフ型回折格子の所期の周期の2倍の第2の周期を有する線形的特徴の少なくとも第2の高分解能回折格子を付加的に支持し、第2のマスクは、基板上の不透明な層における開口部を含みかつ少なくとも第2の高分解能回折格子の周期よりも実質的に大きい周期を有しかつ一定であるかまたは少なくとも第2の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの所期の空間的変化に対応する設計された空間的変化を有するデューティサイクルを有する線形的特徴の少なくとも第2の可変透過型回折格子を付加的に支持し、単色光のビームは、少なくとも第2の可変透過型回折格子を付加的に照明するために生成され、それによって、該ビームは、少なくとも第2の可変透過型回折格子の線形的特徴の方向に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、このビームは、露光時間の間、第2のマスクによって透過されたビームが第1のマスク内の少なくとも第2の高分解能回折格子を付加的に照明するように、少なくとも第2の可変透過型回折格子を付加的に照明し、一方、第1のマスクと、フォトレジストが塗布された基板との離間距離は、変位タルボリソグラフィに従って変化し、第2のマスクは、第1および少なくとも第2の可変透過型回折格子の照明中に、第1および少なくとも第2の可変透過型回折格子の両方の線形的特徴の方向に関して斜めに変位し、それにより、第1および少なくとも第2の可変透過型回折格子の周期に対応する第1および少なくとも第2の可変透過型回折格子によって透過されるビーム内の強度変調成分が、第1および少なくとも第2の高分解能回折格子が露光時間内で露光されるエネルギー密度分布から実質的に除去される。
【0022】
本発明の第1および第2の態様による方法は、好適には変位タルボリソグラフィとの組み合わせで使用されるが、それらは、代替的に、関連する、または同等のリソグラフィ方法、特に、国際特許出願EP第2005/010986号およびSolakらの文献「Achromatic spatial frequency multiplication: A method for production of nanometer-scale periodic features」, J. Vac. Sci. Technol. B23(6), 2005や国際特許出願IB第2012/052778号に記載されているようなアクロマチックタルボリソグラフィとの組み合わせで使用されてもよい。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、基板にわたるフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく装置が提供され、この装置は以下を含む、すなわち、
a)所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクと、
b)前記第1のマスクを、基板と平行にかつ基板から第1の距離を置いて配置するための手段と、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクと、
d)第1の可変透過型回折格子の線形的特徴が、第1の高分解能回折格子の線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、第1のマスクと平行でかつ第1のマスクから第2の距離を置いて、第1のマスクの、基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するための手段と、
e)第2のマスクに入射する光が、第1の可変透過型回折格子の線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、かつ第1の可変透過型回折格子の線形的特徴の方向に対して直交する面において予め定められた入射角の分布を有し、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが第1の高分解能回折格子を照明するように、第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成する手段と、
f)変位タルボリソグラフィに従って第1の距離を変化させながら、前記ビームで第2のマスクを露光時間の間照明し、これにより、第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するための手段とを含む。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく装置が提供され、この装置は以下を含む、すなわち、
a)所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクと
b)前記第1のマスクを、基板と平行にかつ基板から第1の距離を置いて配置するための手段と、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクと、
d)第1の可変透過型回折格子の線形的特徴が、第1の高分解能回折格子の線形的特徴に対して直交するように、前記第2のマスクを、第1のマスクと平行でかつ第1のマスクから予め定められた第2の距離を置いて、第1のマスクの、基板から第1の距離を置いた側とは反対側に配置するための手段と、
e)第2のマスクに入射するビームが、第1の可変透過型回折格子の線形的特徴に対して平行な入射面において十分にコリメートされ、それによって、前記第1の可変透過型回折格子によって透過された回折ビームが第1の高分解能回折格子を照明するように、第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するための手段と、
f)前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための露光時間内にフォトレジストを露光するエネルギー密度分布において、第1の可変透過型回折格子の周期による変調成分が実質的に存在しないように、第2のマスクを照明しながら、第1の可変透過型回折格子の線形的特徴の周期および方向に関連して第2のマスクを変位させるための手段と、
g)変位タルボリソグラフィに従って第1の距離を変化させるための手段とを含む。
【0025】
好適には、基板は、ガラスであり、好適には高屈折率を有するガラスであり、中間層はアルミニウムやクロムなどの金属の層であってもよく、この中間層は、表面レリーフ型回折格子の印刷に続いて、デューティサイクルの所期の空間的変化が金属層に転写されるようにエッチングされ、エッチングされた金属層は、引き続き、別のエッチングプロセスでデューティサイクルの空間的変化を下方の基板に転写するためのハードマスクとして使用される。
【0026】
代替的に、基板は、シリコンなどの不透明な材料かまたは透明な材料であってもよく、この基板には、フォトレジストに印刷されたデューティサイクルの空間的変化が引き続きエッチングおよび/または他のプロセスステップを使用して転写され、次いで、その結果として不透明または透明な材料の表面に形成されたデューティサイクルの空間的変化は、ナノインプリンティングプロセス、特にARまたはVRディスプレイを製造するためのプロセスにおいて、スタンプとして、またはスタンプの形成のために使用される。
【0027】
本発明の第5の態様によれば、基板上のフォトレジスト層に、デューティサイクルの空間的変化を有する周期的な線形的特徴の所期の表面レリーフ型回折格子を形成するための変位タルボリソグラフィに基づく方法が提供され、この方法は以下を含む、すなわち、
a)所期の表面レリーフ型回折格子の周期の2倍の周期を有する線形的特徴の第1の高分解能回折格子を支持する第1のマスクを提供するステップと、
b)前記第1のマスクを、基板と平行にかつ基板から第1の距離を置いて配置するステップと、
c)周期およびデューティサイクルの設計された空間的変化を有する不透明および透明な線形的特徴が交互に配置された第1の可変透過型回折格子を支持する第2のマスクを提供するステップと、
d)回折ビームが第1の可変透過型回折格子によって透過されるように第2のマスクを照明するための単色光のビームを生成するステップと、
e)前記第2のマスクと前記第1のマスクの間に、前記回折ビームの0次または1次のビームのみが第1のマスク内の第1の高分解能回折格子を照明し、前記0次または1次のビームが前記第1の高分解能回折格子の線形的特徴に対して直交する前記第2のマスク上の入射面において十分にコリメートされるような光学的配置構成を提供するステップと、
f)変位タルボリソグラフィに従って第1の距離を変化させながら、前記照明ビームで第1の可変透過型回折格子を露光時間の間照明し、これにより、第1の高分解能回折格子によって透過されたライトフィールドが、フォトレジストを前記所期の表面レリーフ型回折格子を形成するためのエネルギー密度分布に応じて露光するステップとを含み、
ここで、前記第1の可変透過型回折格子におけるデューティサイクルの空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用して形成された表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの、前記第2のマスクがない状態で、第1のマスクを照明するビームのエネルギー密度に対する予め定められた依存性に基づき、かつ所期の表面レリーフ型回折格子のデューティサイクルの空間的変化に従って設計されている。
【0028】
好適には、第1の線形的な可変透過型回折格子における線形的特徴の局所的な周期は、回折格子の領域にわたって一定であるが、代替的に変化する場合もある。
【0029】
好適には、光学的配置構成は、それぞれ0次または1次の回折次数のみが第1のマスク内の高分解能回折格子を照明するように、前記第2のマスクと前記第1のマスクとの間の十分に大きな距離を含む。代替的に、光学的配置構成は、可変透過型回折格子によって透過された0次または1次の回折次数をそれぞれ第1のマスク内の高分解能回折格子に結像させる4f結像系および空間フィルタと、他の回折次数を遮断する空間フィルタとを含む。
【0030】
以下では本発明のこれらの態様および他の態様を、例のみとして添付図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】従来技術の小型仮想画像ディスプレイにおける回折格子の配置構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態を概略的に示す図である。
図3】第1の実施形態に使用された可変透過型回折格子の設計を概略的に示す図である。
図4】露光量に対する線幅の依存性をプロットした特性データのセットを示す図である。
図5】第1の実施形態において印刷された表面レリーフ型回折格子に望まれるデューティサイクルの例示的な線形的変化を示す図である。
図6図5にプロットされたデューティサイクルの変化を生じさせるために微細格子型マスク全体にわたって必要とされる露光量の変化を示す図である。
図7図6にプロットされた露光量の変化を生じさせるために必要とされる可変透過型マスク全体にわたるデューティサイクルの変化を示す図である。
図8】可変透過型マスク全体にわたるマスクの線に対して平行な方向におけるデューティサイクルの非線形的変化を概略的に示す図である。
図9】可変透過型マスク全体にわたるマスクの線に対して直交および平行する方向におけるデューティサイクルの変化を概略的に示す図である。
図10】可変透過型マスク全体にわたるマスクの線に対して直交する方向におけるデューティサイクルの変化を概略的に示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態を概略的に示す図である。
図12a】本発明の第3の実施形態で使用される微細格子型マスクを概略的に示す図である。
図12b】本発明の第3の実施形態で使用される可変透過型マスクを概略的に示す図である。
図13】可変透過型マスクにおける2つの可変透過型回折格子の周期によって生じる露光量変調成分を実質的に除去するために、可変透過型マスクの変位の最適な方向および大きさを決定するための方法論を概略的に示す図である。
図14】可変透過型マスクにおける3つの可変透過型回折格子の周期によって生じる露光量変調成分を実質的に除去するために、可変透過型マスクの変位の最適な方向および大きさを決定するための方法論を概略的に示す図である。
図15】可変透過型マスクからの0次回折次数だけが微細格子型マスクを照明する本発明の第3の実施形態を概略的に示す図である。
図16】本発明の第4の実施形態を示す概略図であり、ここでは、可変透過型マスクからの0次回折次数だけが微細格子型マスクを照明するように、第1次およびそれ以上の次数が4f結像系によって空間的にフィルタリングされる。
【0032】
本発明の第1の例示的な実施形態を概略的に示す図2を参照すると、ArFエキシマレーザー1は、193nmの波長で、約3mm×6mm(z×y)のFWHM寸法を有するパルス光のコリメートされたビームを放出する。ビームの強度プロファイルは、垂直短軸方向にはほぼガウス型で、水平長軸方向にはほぼトップハット型である。そのような特性を持つレーザーは、例えば、米国サンタクララのCoherent社から入手することができる。ビームは、コリメートされた光の細長いビーム3のFWHM寸法が約7mm×2mm(z×y)となるように、垂直方向にビームを拡大するための第1の円柱レンズ対と、水平方向にビームを圧縮するための第2の円柱レンズ対とを含むビーム変換器2に入射する。変換器の出力ビーム3は、回転ステージ(図示せず)に取り付けられた回折型拡散器4に入射する。回転ステージは、細長いビームの照明軸からオフセットされた中央の直交軸周りに拡散器4を回転させる。拡散器4は、光軸に関して約2.5°の半円錐角を有する狭い角度範囲にわたって実質的に均一な分布が生じるように光を回折し、さらに回転によって均一化の度合いを向上させる。そのような回折型均一拡散器は,イスラエルのネスシオナにあるHoloOr Ltd社や独国のイエナにあるJenoptik GmbH社から入手できる。拡散器によって散乱された光は、強度が均一で直径が約200mmのビームを生成するために、約2.4mの焦点距離を有するレンズ5によってコリメートされる。図面では、レンズ5は単一の両凸素子であることが示されているが、これは概略的な表現に過ぎず、レンズは別の形状を有し得ることおよび/または2つ以上の単一レンズ素子から構成され得ることを理解すべきである。レンズ5の機能は、可変透過型マスク7がない場合に、微細格子型マスク9の均一な照明を生成するのに必要とされる直径を有する、十分にコリメートされた光ビームを生成することであり、その設計は、レンズ系の標準的な光学設計に熟練した当業者によって容易に決定することができる。レンズ5からのコリメートされたビームは、次いで、法線入射で可変透過型マスク7を照明するようにミラー6によって反射される。マスク7は、マスク7によって透過されるビームの通過を可能にする中央開口部を有するマスクチャック(図示せず)に取り付けられる。可変透過型マスク7の拡大図を概略的に示す図3を参照すると、可変透過型回折格子8は、約50mm×50mmの寸法を有し、透明な溶融シリカ基板の表面に、100μmの周期を有するクロム線15と空間とを周期的に交互に配置したものからなる。この回折格子8は、標準的な電子ビームまたはレーザービームマスク描画技術を使用して形成されている。可変透過型回折格子8の線の周期は、その領域にわたって一定であるが、クロム線15の幅と、回折格子の周期との比、すなわちデューティサイクルは、線に対して平行な方向に約0.2~0.8の値間で非線的なやり方ではあるがほぼ連続的に変化し、直交する方向では一定である。したがって、実質的に平行なクロム線15の線幅は、線15の50mm-50mmの長さに沿って20μmから~80μmに変化する。マスク7は、格子線15がy軸に対して平行になるように配向されている。その上さらに、デューティサイクルの変化率は一定ではないが、線15に沿って変化する。デューティサイクルのほぼ連続した、あるいは滑らかな変化は、好適には、格子線15を、それぞれのその2つの平行な縁部がx軸に対して平行で、その2つの傾斜した側部がy方向に必要とされる線幅の局所的な変化率を生成するために適切な角度だけ傾斜した一連の台形として定義することによって実現されてもよい。各台形の平行な2つの縁部間の選択された分離が小さいほど、一連の台形は線幅の滑らかで連続的な変化に近づく。
【0033】
空間的に変化するデューティサイクルを有し、不透明な線と空間とを交互に配置した周期的なパターンからなる同様の可変透過型マスクは、別の目的、特に、大面積の偏光器を製造するための高分解能格子型パターンをシームレスにつなぎ合わせることを可能にするために、別のDTL関連の露光スキームや他の光学的配置構成との組み合わせで提案されている。この提案されたスキームの詳細は、「Methods and systems for printing large periodic patterns by overlapping exposure fields」と題された未公開の米国仮特許出願第62/659,731号明細書に記載されており、この詳細はその全体が参照により本願に含まれる。
【0034】
可変透過型マスク7内の格子パターン8は、可変透過型マスク7の下方の約50mmの距離に位置する微細格子型マスク9に向かって伝搬する0次以上の回折次数を生成するために、透過された光をxz平面内で回折させる。回折次数は、微細格子型マスク9に向かって伝搬する際にxz平面内で空間的に分離するため、可変透過型回折格子8のx方向の幅は、微細格子10の対応する幅よりも十分に大きく設計することが有利であり、これにより、その左右端部を含めた微細格子型パターン10の全体が、可変透過型マスク7によって透過された有意な相対強度のすべての回折次数(好適には、0.5%を超える回折効率を有するすべての回折次数)によって照明される。微細格子型マスク9は、50mm×50mmの寸法と、600nmの均一周期とを有するπ位相シフト型回折格子10を支持する。この位相シフト型回折格子10は、標準的な技術を使用して製造されたもので、まず電子ビームリソグラフィを使用してクロムマスク内に振幅格子を作製し、次いで、溶融シリカ基材をクロム線間の必要とされる深さまでRIEエッチングし、最後に、エッチングによってクロム線を除去したものである。マスク9は、微細格子型パターン10の線がx軸に対して平行になり、かつ可変透過型マスク7の格子線15に対して直交するように配向されている。可変透過型マスク7の回折格子8とは異なり、微細格子型マスク9の回折格子10のデューティサイクルは均一で、約0.5である。微細格子型パターン10によって透過されたライトフィールドは、DTL露光システム(図示せず)のz方向変位ステージに取り付けられた真空チャック12上に位置するフォトレジストが塗布されたガラスウェハ11に入射する。
【0035】
可変透過型マスク7の格子線15の配向は、可変透過型マスク7によって回折された次数のxz平面における角度発散がフォトレジスト層11に印刷される格子パターンの分解能を低下させないように、微細格子型マスクの格子線に対して直交するように配置されている。変位タルボリソグラフィに関する従来技術(例えば、米国特許出願第12/831,337号明細書参照)で教示されているように、マスク内の線形型回折格子の各点を照明するビームは、格子線の方向に対して直交する平面内で十分にコリメートされている必要があり、そうでなければ、印刷された格子の線が不鮮明になり、分解能が失われる。しかしながら、照明ビーム内の光が、格子線に対して平行な平面内で入射角の幅を有している場合には印刷パターンの分解能は低下しない。したがって、可変透過型マスク7における特徴の直線性と、微細格子型マスク9における対応する回折格子10の線に関するそれらの直交性とが本発明の重要な特徴である。
【0036】
可変透過型マスク7における回折格子8にわたるデューティサイクルの空間的変化f(x,y)は、微細格子型マスク9を照明するビームにおいて、必要とされる強度の空間的変化I(x,y)を生じさせるように設計される。回折格子8全体にわたる透過率の空間的変化T(x,y)は、透過率がパターンの1周期にわたる平均値として定義される場合、ほぼ以下の式、
T(x,y)=1-f(x,y)
によって与えられる。
【0037】
そのため、デューティサイクルが1である場合、すなわちクロム線15の幅が回折格子の周期に等しい場合には、可変透過型マスク7の局所的透過率は0となり、逆に、デューティサイクルが=0の場合、すなわちクロム線15の幅が0である場合には、可変透過型マスク7の局所的な透過率は1となる。可変透過型マスク7における特定の(x,y)座標からのすべての回折次数の光が、微細格子型マスク9内の実質的に同じ座標を照明するようにシステムパラメータを設定することにより、可変透過型回折格子のy方向の1周期にわたって平均化された微細格子型マスク9における強度の空間的変化は、以下の式、
I(x,y)=I{1-f(x,y)}
によって与えられる。ここで、Iは、可変透過型マスク7を照明するビーム強度である。
【0038】
微細格子型マスク9を照明する回折次数の空間的分離は、微細格子10のx方向の寸法よりもはるかに小さくなるように設定されていることが有利である。第1に、それは、微細格子型マスク9を照明するビームにおける空間的強度変化のより高い分解能を可能にし(すなわち、強度変化はより高い空間周波数成分を有することができる)、第2に、微細格子型パターン10の縁部が、有意な相対強度を有する可変透過型マスク7からのすべての回折次数によっても照明されるために、微細格子10に対する可変透過型回折格子8のx方向で必要とされる追加幅を減少させるからである。この追加幅を最小化することは、格子線の異なる周期および/または配向を有する他の回折格子が微細格子型マスクおよび可変透過型マスク7,9に含まれる場合、各マスク内の異なる格子間のより小さな間隔を可能にするので重要である。
【0039】
微細格子型パターンを照明する回折次数の空間的分離、±Δsは、以下の式、
Δs≒2Lλ/(l-α)Λ
によって与えられる。ここで、Lは、可変透過型マスク7と微細格子型マスク9との間の間隔であり、λは、照明波長であり、αは、可変透過型回折格子8の最大のデューティサイクルであり、Λは、回折格子の周期である。
【0040】
これをL=50mm、λ=193nm、α=0.8、Λ=100μmで評価すると、Δs=±1mmとなり、これは、微細格子型パターン10のx方向の寸法に比べて小さくなる。
【0041】
理想的にコリメートされたビームを用いて可変透過型マスク7を照明すると、マスク7によって透過された回折ビームは、微細格子型マスク9の平面において干渉し、可変透過型回折格子8の周期(または部分周期)を有するx方向の強い強度変調成分を生じ、これは所期の印刷パターンでは受け入れられない場合もある。この望ましくない不均一性を除去するために、可変透過型マスク7の各点を照明する光の角度分布が、ほぼガウスプロファイルを有しかつ最小の角度帯域幅を有するように設定される。そうすることで、可変透過型回折格子8の隣接する線によって微細格子型マスク9に投影される空間強度分布は、積算される強度分布がx方向に良好な均一性を有するほどに十分に重なる。この理由から,xz平面において可変透過型マスク7を照明するガウス角度分布の半値全幅(FWHM)値φが、以下の式、
φ≧1.5Λ/L
で与えられるように設定されている。ここで、Λは、可変透過型回折格子8の周期、Lは、可変透過型マスク7と微細格子型マスク9との間の間隔である。
【0042】
したがって、本実施形態で選択されたパラメータ、すなわちΛ=100μm、およびL=50mmで評価すると、φ≧3mRとなる。より高い均一性は、より大きな角度帯域幅を使用して、かつ/または可変透過型回折格子8の分数タルボ像が微細格子型マスク上に形成されるように可変透過型マスクと微細格子型マスク7,9との間の間隔を調整することによって達成されてもよい(分数タルボ像の空間強度分布は、可変透過型回折格子の周期の何分の一、例えば、1/2、1/3、または1/4である周期を有する)。
【0043】
この角度分布は、z方向にほぼガウスプロファイルである、拡散器4を照明する強度分布と、コリメートレンズ5の焦点距離とによって形成される。その結果として生じる、可変透過型マスク7を照明するガウス角度分布のFWHMは、以下の式、
φ=w/F
から計算される。ここで,wは,拡散器4を照明する細長いビームのz方向のFWHM長さであり、Fは、コリメートレンズ5の焦点距離である。
【0044】
φを本実施形態で使用したパラメータ値、すなわちw=7mm、およびF=2.4mを用いて評価すると、φ=3mRとなり、微細格子型マスク9に入射するライトフィールドから可変透過型回折格子8の周期性に対応する強度変調成分を除去するという上記要求を満たすのに十分である。
【0045】
上述したように、微細格子型マスク9の各点を照明するビームのyz平面における角度発散は、DTL印刷パターンの格子線の良好な分解能を保証するために重要である。本実施形態の照明システムによって生じるyz平面での角度発散は、以下の式、
φ=w/F
によって与えられる。ここで、wは、拡散器を照明する細長いビームのy方向のFWHM幅であり、Fは、コリメートレンズ5の焦点距離である。
【0046】
φを本実施形態で使用したパラメータ値、すなわちw=2mm、およびF=2.4mを用いて評価すると、φ≒0.8mRとなり、これは、微細格子型マスク9と、フォトレジストが塗布されたウェハ11との間に約50μmの間隔を設けて変位タルボリソグラフィを使用して周期300nm(微細格子型マスク9の回折格子10の半周期)の十分な分解能の格子線を印刷するのに十分な小ささである。
【0047】
表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの特定の所期の空間的変化を形成するために、微細格子型マスク9にわたって必要とされる露光量の空間的変化は、フォトレジストの特性、特定の用途に必要なフォトレジスト層の厚さ、フォトレジスト下方の他の材料の基板および/または中間層、ならびにフォトレジスト現像プロセスに依存する。フォトレジスト応答の特性解析は、システム内で可変透過型マスクを用いることなく(つまり標準的なDTL露光に従って)、広範囲の露光量を使用して関係する微細格子のDTL露光を複数回実行し、次いで、層現像後フォトレジスト内に結果として形成される表面レリーフ型回折格子の線幅を測定することによって経験的に決定されるのが最良である。この測定は、好適には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行われる。市販の標準的なネガティブトーンフォトレジスト層に、600nm周期の位相格子から300nm周期の回折格子を印刷して得られた典型的な特性解析結果のセットが図4に示されている。この図は、異なる露光量に対する各線幅測定から算出されたデューティサイクルをプロットしたものであり、任意の値のデューティサイクルの必要な露光量を容易に決定することを可能にするためのベストフィット曲線も含まれている。このベストフィット曲線は、以下の式、
DC=2.63E-0.62
で表される。
ここで,DCはデューティサイクル,Eは任意の単位での露光量である。
【0048】
図から見て取れるように、使用される露光量の範囲は、印刷パターンのデューティサイクルを約0.2から0.7までの広い範囲にわたって変化させることができる。上記のベストフィット曲線の式は、単一の項だけを含んでいるが、他のフォトレジストや他のフォトレジストプロセスを用いる場合、ベストフィット曲線は、2以上の項によって記述されてもよい。
【0049】
例えば、50mmの長さで、300nmの周期の表面レリーフ型回折格子を、図5に示されるデューティサイクルの線形的変化で印刷する場合、微細格子型マスク内の600nmの周期の回折格子全体にわたって必要とされる露光量の変化は、ベストフィット曲線の式から簡単に計算することができる。その結果は、図6に示されている。最終的に、微細格子型マスクにおいて、露光量変化E(x,y)を生じさせるために可変透過型マスク内で必要とされるデューティサイクル変化f(x,y)は、以下の式、
f(x,y)=1-E(x,y)/E
を使用して計算される。ここで、Eは、デューティサイクルが所期の範囲の間で変化するように選択される定数である。
【0050】
好適には、Eは、最大および最小の露光量の値の和になるように設定され、それによって、0.5からのデューティサイクルの変化のずれが最小化される。
【0051】
このように選択されたEを用いた可変透過型マスクのy方向に必要とされるデューティサイクルの空間的変化が図7に示されている。x=25mmで発生する、マスクにおけるデューティサイクルの最大変化率は、約0.03/mmであるため、可変透過型回折格子の100μmの周期の各線の2つの側部間に必要とされる最大傾斜角は、約3mRとなる。
【0052】
この第1の実施形態では、そのデューティサイクルが、回折格子全体にわたって格子線に直交する方向に一定の線形的変化を伴って変化するフォトレジストに表面レリーフ型回折格子を製造する本発明の適用について説明したが、この(および以降の)実施形態の他の変化形態では、表面レリーフ型回折格子における所期のデューティサイクルの変化は、例えば、線に対して直交する同じ方向で、ただし非単調な変化であってもよく、この場合、可変透過型マスク全体にわたって必要とされるデューティサイクルの変化は、図8に例示されているようなものであってもよい。代替的に、表面レリーフ型回折格子において望まれるデューティサイクル変化は、格子線に対して平行な方向であってもよく、その場合、可変透過型マスクにおけるデューティサイクルの変化は、図9に概略的に示されるようなものになる。さらに代替的に、表面レリーフ型回折格子に望まれるデューティサイクル変化は、2次元的変化であってもよく、その場合、可変透過型マスクにおいて設計されるデューティサイクル変化は、各(x,y)座標において必要とされるデューティサイクルが色分けされている、図10に概略的に示されているようなものになり得る。
【0053】
さらに、この第1の実施形態では、50mm×50mmの寸法を有する単一の大きな表面レリーフ型回折格子がフォトレジストの塗布されたウェハ上に印刷されることを説明したが、代替的に他の実施形態では、同じ大きな露光ビームと、それぞれがそれらの領域全体にわたって適切に配置されている複数の各可変透過型パターンおよび微細格子型パターンを有する適切に設計された可変透過型マスクおよび微細格子型マスクとを用いて、サイズが同じもしくは異なる複数の回折格子を単一の露光で印刷することができる。実際には、第1の実施形態の均一化方法、すなわち回転型回折拡散器を用いる場合、パターンは、各マスクの中心に位置決めされない方が好適である。なぜなら、不完全に製造された回折拡散器は、引き続きコリメートレンズ5によって微細格子型マスクの中心における小さな高輝度スポットに集束される光の未回折の「0次」成分を生成可能であるからである。他の実施形態では、この不完全性を克服するために、例えば、従来のフォトリソグラフィ装置上でのビーム拡大および均一化のために一般的に使用されているような屈折ビームホモジナイザのような、ビーム均一化の代替的な手段を使用することができる。
【0054】
関連する実施形態では、第1の実施形態によるフォトレジストが塗布されたウェハ11上へのより小さな格子パターンの露光に続いて、ウェハ11をチャック12上でz軸周りに所定の角度だけ回転させ、次いで、その線が、第1の露光で印刷された線に対して平行ではない第2の回折格子を印刷するために、同じもしくは異なる可変透過型マスクおよび微細格子型マスク7,9を使用して第2の露光が実行される。しかしながら、この実施形態では、照明ビームの非対称な角度分布からの利点を得るために、第2の可変透過型マスクおよび微細格子型マスクの線は、再びそれぞれy軸およびx軸に対して平行に配向することが重要である。連続的に印刷されたパターンにおいて同じもしくは異なる線配向の連続露光が使用される実施形態のより精巧なバージョンでは、連続的に印刷されたパターン間の高い位置精度を得るために、例えば、微細格子型パターンの横に含まれるアライメントマークを視認するためのアライメント顕微鏡からなるアライメントシステムが付加的に使用されてもよい。この場合、ウェハ(または微細格子型マスク)は、標準的なマスクアライナーフォトリソグラフィ装置に使用されているものと同様のx,y,θ位置決めシステムに取り付けられるべきである。
【0055】
本発明の第2の例示的な実施形態を概略的に示す図11を参照すれば、ArFエキシマレーザー21は、第1の実施形態と同じ特性のパルス光のビームを放出する。このビームは、垂直方向にビームを圧縮するための第1の円柱レンズ対と、水平方向にビームを圧縮するための第2の円柱レンズ対とを含むビーム変換器22に入射され、それによって、コリメートされた光のほぼ矩形のビーム23のFWHM寸法は約2mm×2mm(z×y)となる。変換器の出力ビーム23は、電動ステージ(図示せず)に取り付けられた拡散器24に入射する。電動ステージは、照明ビームの光軸からオフセットされた中央の直交軸周りに拡散器24を回転させる。拡散器24は、光軸に関する半円錐角が約2.5°の狭い角度範囲にわたって光を均一に散乱させる。拡散器24によって散乱された光は、強度が均一で直径が約200mmのビームを生成するために、焦点距離が約2.4mのレンズ25によってコリメートされる。次いで、レンズ25からのコリメートされたビームは、ミラー26によって反射され,それにより、可変透過型マスク27におけるパターンが法線入射で照明される。マスク27は、マスクチャック29に取り付けられ、マスクチャック29は、マスク27によって伝搬された光の通過を可能にするための中央開口部を備える。マスクチャック29は、マスク27をx方向にミクロン単位の精度の可変速度でかつ1mm以上の移動範囲で並進させることができる微細位置決めアクチュエータを有する並進ステージ30に取り付けられている。可変透過型マスク28は、第1の実施形態で使用したものと同じパターン27、すなわち、約50mm×50mmの寸法、100μmの周期、および格子線に対して平行な方向に変化するデューティサイクルを有する回折格子を支持する。可変透過型回折格子27は、第1の実施形態で使用したものと同じ微細格子型マスク31に向かって伝搬する0次以上の回折次数を生成するために、透過光をxz平面内で回折し、微細格子型マスク31もまた可変透過型マスク28の下方の約25mmの距離に配置されている。回折次数は、微細格子型マスク31に向かって伝搬する際にxz平面内で空間的に分離するため、x方向の可変透過型回折格子27の幅は、微細格子型パターン32の対応する幅よりも十分に大きく設計する方が有利とされ、それにより、その左右の縁部を含む微細格子型パターン32全体が、可変透過型マスク28からのすべての回折次数によって照明される。微細格子型マスク31は、第1の実施形態で使用したものと同じ、すなわち50mm×50mmの寸法、600nmの均一な周期、約0.5の均一なデューティサイクルを有し、その線はx軸と平行に配向されているπ位相シフト型回折格子を支持する。微細格子型パターン32によって透過されたライトフィールドは,DTL露光システム(図示せず)のz方向の変位ステージに取り付けられた真空チャック34上に位置するフォトレジストが塗布されたガラスウエハ33に入射する。
【0056】
第1の実施形態とは異なり、可変透過型マスク28を照明するビームは、拡散器24を照明するビーム23のサイズと形状のため、xz平面とyz平面の両方で良好にコリメートされる(<1mR)。その結果、可変透過型マスク28によって透過された回折ビームは、微細格子型マスク31の平面において干渉し、可変透過型回折格子27の周期(または部分周期)を有するx方向の強い強度変調成分を生じ、これは所期の印刷パターンでは受け入れられない場合もある。
【0057】
この望ましくない不均一性の成分を除去するために、可変透過型マスク28は、DTL露光中にx方向に変位される。これは、可変透過型回折格子27の正確に1周期分、または代替的に整数周期分、露光中に一定の変位速度で、露光の終端において最大変位に到達するようにマスク28をx方向に変位させることによって達成できる。また、代替的に、可変透過型マスク28を、1つの周期分または整数個の周期分の走査距離によってy方向に複数回、前後に変位もしくは走査することによって、かつ最後の走査の終端で露光が終了するように各走査において一定の速度を使用することで達成してもよい。しかしながら、そのような一定の速度変位または走査方式は、可変透過型マスク28が、可変透過型回折格子27の1つまたは整数個の周期分の正確な距離にわたって変位することが必要であり、そうでなければ、微細格子型パターン32を照明する強度分布の許容できないy方向の変調が生じる可能性がある。
【0058】
したがって、可変速度変位または走査方式を使用することが有利であり、特に、可変透過型回折格子27の周期に対して十分に大きい半値全幅(FWHM)距離を有するガウスプロファイルまたはそれに近いガウスプロファイルを有する可変透過型マスク28のy位置に対する増分露光量の依存性を生成することは有利である。規則的な間隔で重なり合うガウス強度プロファイルのセットに対して、ガウスプロファイルのFWHM幅が、重なり合うプロファイル間の離間距離よりも1.5倍大きい場合、積算強度が約1%に均一であることを数学的に容易に示すことが可能である。したがって、これに基づき、好適には、可変透過型回折格子27のy位置に対する露光量の依存性を記述するガウスプロファイルのFWHM距離Sは、以下の式、
S≧1.5Λ
によって与えられることが好ましい。ここで、Λは、可変透過型回折格子の周期である。
【0059】
そのため、Λ=100μmであれば、Sは、好適には≧150μmである。より大きな値であれば、より良好な均一性が得られるが、表面レリーフ型回折格子内で得られるデューティサイクル変化の最大勾配は、それに応じて低減する。
【0060】
さらに、ガウスプロファイルの切り詰めが、微細格子型マスク31を照明するy方向の時間積分される露光量に許容できない不均一性を導入しないようにするために、ガウスプロファイルの全幅、すなわち最大変位距離Tは、ガウスプロファイルのFWHM距離の少なくとも2倍、すなわち、T≧2Sに対応することが好ましく、さらに少なくとも2.5Sに対応することが最も好ましい。最大変位が大きいほど、露光量のより良好な均一性が生じるが、表面レリーフ型回折格子内で得られるデューティサイクル変化の最大勾配も低減する。
【0061】
(バイナリ)可変透過型回折格子27の周期性によって導入される露光量変調成分を抑制するために上記で推奨されたSおよびTの最小値は、可変透過型マスク28と微細格子型マスク31との間の任意に配置された間隔値に適している。しかしながら、2つのマスク28,31間の間隔が、可変透過型格子27の分数タルボ像(その周期は可変透過型格子の周期の特定の割合である)となるように設定される場合、望ましくない露光量変調を抑制するために代替的に使用されてよいSおよびTの最小値は、上記の推奨値に特定の割合を乗算したものである。
【0062】
露光中に可変透過型マスク28をx方向に変位させることは必須ではない。それとは代替的に、(異なる構成の並進ステージ30を使用して)x軸に関して角度θに変位させてもよい。この場合、露光量分布のFWHMガウス幅と、変位の総距離とに対応するx方向の変位成分が、上述のように計算されたSおよびTの要件を考慮することが重要である。
【0063】
可変透過型マスク28の位置に伴う増分露光量の上述のガウス変化を実現するために、マスク28は、電動の並進ステージ30によって変化する変位速度を用いてx方向に変位される。ガウス露光プロファイルを達成するために、速度は、上述のように計算されたFWHMおよび最大変位パラメータを有する逆ガウス曲線に従って変化し、変位にかかる総時間が、微細格子型マスク31において露光量の所期の空間的変化を生じさせるのに必要とされる露光時間に対応するようにプログラミングされる。
【0064】
この実施形態の変化形態では、可変透過型マスク28は、微細格子型マスク31において露光量の同じ所期の空間的変化を生じさせるために、同じ逆ガウスプロファイルの速度変化を用いるが、単一走査の場合の速度よりも整数倍速い平均速度を用いて(可変透過型マスク28の照明強度は同じと仮定して)、整数回前後に変位させてもよい。別の変化形態では、可変透過型マスク28は、一様な速度で変位し、マスクを照明する光の強度は、可変透過型マスク28の位置に伴う増分露光量のガウス変化を提供するように変調される。他の変化形態では、変位速度および光強度は、前記増分露光量の変化を提供するように変調することができる。
【0065】
DTL露光中に、微細格子型マスク31と、フォトレジストが塗布されたウェハ33との異なる間隔で微細格子型マスク31を照明する強度分布の不完全な時間積分によって生じる可能性のある不均一性を回避するために、可変透過型マスク28の変位走査にかかる時間は、マスク-ウェハ間隔のDTL走査にかかる時間よりもはるかに長い方が有利であり、また逆の場合も有利である。
【0066】
この第2の実施形態の他の変化形態では、表面レリーフ型回折格子におけるデューティサイクルの所期の空間的変化は、1次元であってもよいが、代わりに表面レリーフ型回折格子の線に対して平行な方向か、または表面レリーフ型回折格子の線に関して任意の角度の方向であってもよい。代替的に、表面レリーフ型回折格子における所期のデューティサイクルの変化は、単調であってもよいし、あるいは2次元、すなわちx方向とy方向の両方にデューティサイクル変化の成分を有するものであってもよい。これらの変化形態では、可変透過型マスク28は、第1の実施形態について説明され、図8図10に示されている同等の変化形態と同様に適切に設計されるべきである。
【0067】
第1および第2の実施形態の両方、ならびにそれらの変化形態において、可変透過型マスク28全体にわたって空間的に変化するデューティサイクルの変化率または勾配が大きすぎないことが重要であり、そうでなければ、yz平面における許容できないほど大きな非コリメート成分が、微細格子型マスク9、31を照明するビーム内に導入される(図2および図11参照)。これは、y方向のデューティサイクルの変化によって生じるy軸に関する可変透過型マスクの線形的特徴の縁部のわずかな傾斜が原因で発生する。特に、可変透過型マスクによって局所的に導入された非コリメート成分δφは、以下の式、
δφ={λ/2(1-α)}・|δα/δy|
に従って推定されてもよい。ここで、λは、照明波長であり、αおよびδα/δyは、それぞれ局所的なデューティサイクルおよびデューティサイクルの局所的なy方向の変化率である。
【0068】
デューティサイクル変化が図7に示されている、第1および第2の実施形態で使用された可変透過型マスク7,28の領域にわたって導入されたδφの最大値を評価すると、δφ=3μRとなり、これは、可変透過型マスクを照明するyz平面におけるビームの約0.8mRの発散に関連して無視できる。
【0069】
第3の実施形態では、異なる周期、格子線の異なる方向、およびデューティサイクルの異なる所期の空間的変化を有する2つの表面レリーフ型回折格子をフォトレジストが塗布されたウェハ上に印刷する目的のために、可変透過型マスクおよび微細格子型マスクの異なるデザインが使用されることを除いて、第2の実施形態と基本的に同じ露光システムが使用される。図12aを参照すると、微細格子型マスクは、それぞれΛ1a=500nmおよびΛ1b=700nmの周期、ならびにx軸に関してω1a=55°およびω1b=約40°の線配向を有する、「a」および「b」とラベル付けされた2つの矩形の微細格子型パターンを代わりに支持している。図12bを参照すると、可変透過型マスクは、微細格子型マスク内の2つの格子の座標と同じ(x,y)座標にそれらの中心がある、2つの対応する矩形型回折格子を支持している。可変透過型マスクの格子サイズは、第1の実施形態で説明した理由のために、必要とされる追加幅だけ、微細格子型マスク内の格子よりもわずかに大きいことが好ましい(微細格子の縁部が可変透過型マスクからの有意な強度のすべての回折次数によっても照明されることを保証するため)。2つの可変透過型回折格子は、同じ一定の周期(すなわち、Λ2b=Λ2a)を有し、それらの線は、微細格子型マスク内の対応する格子の線に対して直交するように配向されているので、ω2a=35°、およびω2b=50°となる。図に示すように、異なる周期を有する2つの表面レリーフ型回折格子が、それぞれのパターンの格子線配向に対して直交する方向に変化する2つのパターン内のデューティサイクルを用いて印刷されるようにするために、各回折格子内のデューティサイクルは、それぞれの可変透過型回折格子の線に対して平行な方向に変化するように設計されている。
【0070】
デューティサイクルのそれぞれ所期の変化を有する2つの表面レリーフ型回折格子は、第1に、並進ステージ30が付加的に、可変透過型マスクを任意の方向に変位させることができるy方向ステージを備えていること、および第2に、可変透過型マスクの前または後のビームパスに、「a」パターンのみ、または「b」パターンのみを独立して露光することができるように、移動可能な開口部が提供されていることを除いて、連続露光および第2の実施形態で使用されたのと同じ方法を使用しかつ第2の実施形態の実質的に同じ装置を使用して別個に印刷されてもよい。次いで、2つの所期の表面レリーフ型回折格子の露光は、露光中「a」パターンのみが照明されるように開口部を配置し、露光中に可変透過型マスクを「a」の可変透過型回折格子の線に対して直交する方向に第2の実施形態で教示されるような方法で変位させることによって続行される。次いで、この露光に続いて、開口部は、「b」の回折格子のみが露光できるように再構成される。次いで、第2の露光が、可変透過型回折格子を「b」の可変透過型回折格子の線に対して直交する方向に変位させることで続行される。次いで、露光されたフォトレジストが塗布されたウェハが現像される。2つの回折格子に対してそのように独立した露光を使用することにより、可変透過型マスクを照明する露光量を、マスクで異ならせ、2つの露光に対して異ならせるものにすることができる。しかしながら、2回の露光を使用する必要性があることは、工業プロセス的には望まれない可能性がある。
【0071】
より有利な露光方式は、単一の露光で「a」と「b」の表面レリーフ型回折格子を同時に印刷することである。これは、図11に示した第2の実施形態の照明システムに直接挿入された図12aおよび図12bの2つのマスクを使用することで達成されてもよい。この実施形態で説明したように、そこでは可変透過型マスクを可変透過型回折格子の線に対して直交する方向に変位させる必要がなく、したがって、可変透過型マスクを2つの可変透過型回折格子の線に対して直交する方向を理想的に二等分する方向に変位させることで、「a」および「b」パターンを同時に露光することにより所期の結果が得られてもよい(なぜなら2つの可変透過型回折格子の周期は同じだからである)。これは、可変透過型マスクを、並進ステージ30を用いてx方向(2つの可変透過型回折格子の線の角度ω2a=35°およびω2b=50°をほぼ二等分する方向)に変位させることによって達成されてよい。回折格子の周期性(および二値性)によって導入される強度変調成分を除去するためには、第2の実施形態で説明したように、位置による露光量の実質的なガウス変化が得られるように変位を実行すべきである。ガウスプロファイルのFWHM距離および総距離の大きさは、各可変透過型回折格子の線に対して直交する方向の変位成分が、両方の可変透過型回折格子について、第2の実施形態で説明したSおよびTに関する要件を満たすように選択されるべきである。また、可変透過型マスクの変位方向が、2つの可変透過型回折格子の線に対して垂直な方向を二等分する場合(2つの回折格子が同じ周期を有している場合)、ガウスプロファイルのFWHM距離および総距離の大きさは最小化される。
【0072】
この第3の実施形態では、可変透過型回折格子の周期は同じである必要はないが、ガウス変位のFWHM距離と総変位距離とが両方の回折格子に対するSおよびTに関する要件を同時に満たすために、格子線の配向、および上記のSおよびTに関する要件に従って選択されてもよく、それによって、可変透過型マスクの変位が最小化され、その結果、表面レリーフ型回折格子で得られるデューティサイクル変化の空間分解能が最大化される。
【0073】
異なる線配向および異なる(または同じ)所期のデューティサイクルの変化を有する2つの表面レリーフ型回折格子を印刷するためのこの方法論は、他の実施形態では、異なる線配向および異なる(または同じ)所期のデューティサイクルの変化を有する3つ以上の表面レリーフ型回折格子を印刷するために拡張されてもよい。
【0074】
マスク上には、基板上に回折格子を印刷するためにDTLまたは同等の露光において使用する必要がある1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の回折格子が存在する場合がある。これらの回折格子は、連続露光で別個に露光することができる。しかしながら、露光システム内でそれらを同時に露光することが有利な場合もある。後者の場合、本発明の教示に従って、マスク上に複数のハーフトーン回折格子を準備することができる。各可変透過型(またはハーフトーン)回折格子は、印刷に使用される特定の表面レリーフ型回折格子のための所期のデューティサイクルに従って設計され、これは、その回折格子全体にわたって一定のデューティサイクルであってもよいし、可変のデューティサイクルであってもよい。マスク上の異なるハーフトーン回折格子の相対的な透過率は、それらが同じ入射露光量で露光されたときに、各回折格子が所期のデューティサイクルで印刷されるように調整される必要がある。
【0075】
ハーフトーンマスク上の線の存在に起因する露光フィールド内の望ましくない強度変化を回避するために、ハーフトーンマスクは、前述したように、ハーフトーンマスク上の線の配向に対して垂直な方向に変位させることができる。HTマスク上に1つの回折格子のみが存在する場合には、線の配向に対して垂直な方向に移動させることができる。例えば、図7を参照すると、HTマスクが周期pを有する回折格子Gのみを有する場合、同図に概略的に示されているように、距離sだけ移動させることができる。この距離sは、前述したように、周期pに関連して決定される。例えば、距離を、p1に定数kを乗じた値よりも大きくすることを要求することができる。すなわち、3。
≧kp [1]
【0076】
前述したように、移動距離を最小限に抑えることは興味深いことである。
【0077】
しかしながら、(図12aに概略的に示されているように)各回折格子において、格子線の異なる配向を有する2つ以上の回折格子が存在する場合、すべてのHT格子線の方向に対する垂直移動は同時にはできない。そのような場合には、すべての回折格子が、ハーフトーン回折格子の線によって引き起こされる望ましくない強度変化なしで印刷されるように、移動の方向および距離を選択することが必要な場合もある。また、前述した理由から、そのような移動の大きさを最小化することも興味深い場合がある。最小限必要な距離を求めるために、まず個々のHT回折格子に対する移動の必要性が、以下の式、
≧kp [2]
によって考慮される。
【0078】
移動距離をS、その角度をθとすると、i番目の回折格子の方向に沿った移動成分は、以下の式、
=Scos(θ-θ) [3]
に従って記述することができる。
【0079】
距離Sと角度θの値の範囲は、関係式2および3を一緒に満たすことで求めることができる。この問題は、コンピュータの支援によって解決することができる。以下では、例として2つのケースを示す。
【0080】
ケース1では,マスク上にθ=30°およびθ=100°の角度の2つのHT回折格子が存在している。両方の回折格子は、同じ周期、すなわちp=p=50μmである。この例では、乗算定数kの値は6としている。図13の青い曲線から上の領域は,Sおよびθの値の範囲を示しており、対応する走査は回折格子G1に対する均一性の要件を満たしている。同様に,赤い曲線から上のパラメータ空間は,回折格子G2に対する均一性の要件を満たしている。両方の回折格子に対する要件を満たすsおよびθの許容値を見つけるために、個々の回折格子について上述した2つの領域の重なりを取ることができる。この領域は,図13に灰色で示されている。このプロットを調べることにより、最小必要移動距離は366μmであり、その角度はθ=65°であることがわかる。
【0081】
ケース2では、マスク上に角度θ=30°、θ=100°、θ=150°の3つのHT回折格子が存在している。これらの3つの回折格子はすべて同じ周期、すなわちp=p=p=50μmである。この例でも、乗算定数kの値は6としている。図14の青い曲線上の領域は,Sおよびθの値の範囲を示しており、対応する走査は回折格子G1に対する均一性の要件を満たしている。赤い曲線上のパラメータ空間は、回折格子G2に対する均一性の要件を満たしている。最後に,マゼンタ色の曲線上のパラメータ空間は,回折格子G3に対する均一性の要件を満たしている。3つのすべての回折格子に対する要求を満たすsおよびθの許容値を見つけるために、個々の回折格子について上述した3つの領域の重なりを取ることができる。この領域は、図14にグレー色で示されている。このプロットの検査により、最小必要移動距離は523μmであり、その角度はθ=155°であることがわかる。
【0082】
本発明の第3の例示的な実施形態は、図15に概略的に示されている。第2の実施形態と同様に、ArFエキシマレーザー51は、約2mm×2mm(z×y)のFWHM寸法を有するコリメートされた光のほぼ矩形ビームを生成するために、ビーム変換器52によって寸法が修正されたパルス光のビームを放出する。このビームを拡散器53に入射させると、約2.5°の半円錐角度を有する狭い範囲にわたって光が均一に散乱する。この拡散器は、角度範囲にわたって強度の均一性をさらに向上させるために拡散器を回転させる電動ステージ(図示せず)に取り付けられている。散乱光は、約200mmの直径を有する実質的に均一な強度のビームを生成するために、約2.4mの焦点距離のレンズ55によってコリメートされ、このビームの光線は、どの点においても、約0.8mRのFWHM角度分布を有する。このビームは、溶融シリカ基板上のクロム層に形成された可変透過型回折格子57を支持するマスク56を照明する。図3に示した第2の実施形態で使用した可変透過型マスクと同様に、回折格子57は、約50mm×50mmの面積を有し、一定の周期で交互に配置されたクロム線15と空間とを含み、格子線に対して平行な方向で回折格子57全体にわたって変化するデューティサイクルを備えている。マスク56は、可変透過型回折格子57の線が図15のy軸に対して平行になるように配向されている。回折格子57の照明は、複数の回折次数、すなわち、角度の偏向なしでマスクを通過する0次ビームと±arcsin(λ/Λ)の角度で回折する±1次ビーム(ここで、λは照明波長、Λは回折格子57の周期である)、ならびにさらに大きな角度で回折する高次ビームを生じさせる。0次ビームは、チャック(図示せず)によって支持されたマスク60内の微細格子61を法線入射で照明するようにミラー58によって反射される。0次ビームの上方および下方の端部は実線で示し、+1次、-1次ビームの上方および下方の端部はそれぞれ破線64a,64b,65a,65bで示している。微細格子61によって透過されたライトフィールドは、DTL露光システム(図示せず)のz方向変位ステージに取り付けられた真空チャック上に位置するフォトレジストが塗布されたガラスウェハ66を照明する。
【0083】
しかしながら、「0次」の可変透過型マスク56における回折格子57の周期は、第2の実施形態の可変透過型マスクにおける周期よりもはるかに小さく、0次の回折ビームのみが微細ピッチの回折格子61を照明するように、照明波長に関連して、また、可変透過型マスク56とミラー58との間、ならびにミラー58と微細ピッチの格子型マスク60との間の離間距離に関連して選択される。特に、可変透過型回折格子の周期を2μmに選択し、0次ビームが可変透過型マスク56から微細格子型マスク61まで進む総距離を700mmに設定することによって、可変透過型マスク57で回折される、193nmの波長の±1次ビームの角度が約±5.5°となり、その結果として、微細格子型マスクの平面における0次に関する±1次の横方向のオフセットは60mm超となり、さらに微細ピッチの回折格子61のx方向の寸法50mmよりも大きくなり、これにより、0次のみが微細ピッチの回折格子61を照明することが保証される。DTL露光のための合理的に小型化された照明システムを可能にしながら、従来のマスク描画技術を使用して可変透過型マスク内の必要とされるデューティサイクルの空間的変化の作製を容易にするために、可変透過型マスク56内の回折格子57の周期は、1~5μmの範囲であることが推奨される。
【0084】
可変透過型回折格子57にわたるデューティサイクルの空間的変化は、変位タルボリソグラフィを使用した露光が、(先の実施形態で説明したように、DTLフォトレジスト露光プロセスの特性解析によって決定された)所期の線幅の空間的変化を有する回折格子をフォトレジストの塗布された基板上に印刷するために、微細格子型マスク60を照明する0次ビームにおいて必要とされる強度の空間的変化を生じさせるように設計される。交互に配置されたクロム線と透明空間とからなる回折格子、すなわちデューティサイクルfを有する振幅の回折格子の0次の回折効率η0は、以下の式、
η=(1-f)
によって与えられる。
【0085】
そのため、例えば、デューティサイクルが0.4である場合、すなわちクロム線の幅が回折格子の周期の0.4倍である場合、可変透過型マスクによって透過される0次ビームの強度は0.36(すなわち36%)となる。
【0086】
したがって、均一な強度のビームIで照明されたマスク56において、デューティサイクルの空間的変化f(z,y)によって透過される0次ビームの強度の空間的変化I(z,y)は、以下の式、
I(z,y)=I{1-f(z,y)}
によって与えられる。
【0087】
マスクを照明するビームは十分にコリメートされており、当該用途のためにマスク56全体にわたって変化させるデューティサイクルが要求される変化率、または勾配は、デューティサイクル変化の勾配からの回折効果によって0次ビームに無視できる角度の発散光が導入されるように緩慢なので、可変透過型マスクによって透過されるビームI(z,y)の強度変化は、微細ピッチの格子型マスク60を照明する強度分布I(x,y)に正確に伝達され、すなわち、実質的に1:1でマッピングされる。
【0088】
したがって、I(z,y)に関する上記の式は、デューティサイクルの所期の空間的変化がフォトレジストに得ることができるように、微細格子型マスクに入射するビームにおいて特定の強度変化I(x,y)を生じさせるために可変透過型マスク56にわたって必要とされるデューティサイクル変化f(z,y)を計算するために直接使用することができる。
【0089】
先の実施形態(可変透過型マスクからの実質的にすべての回折次数が微細格子型マスクを照明する)では、可変透過型回折格子の線の配向が微細ピッチの回折格子の線の方向に対して直交していることが重要であるのに対し、本実施形態では、1次以上の回折次数が微細ピッチの回折格子を照明しないようにされているため、それらの他の次数の光の角度分布が微細格子型マスクを照明することができず、フォトレジストに印刷された微細ピッチの回折格子の分解能が低下することがないので一般的には重要ではない。この理由から、図15に示した可変透過型回折格子の線の配向は、代替的にz方向または任意の他の方向であってもよい。
【0090】
可変透過型マスク56を照明するビームは、微細ピッチの格子型マスクを照明する強度分布が可変透過型マスク56によって透過される強度分布と実質的に同じになるように、十分にコリメートされていることが好ましいが、このことは絶対的に必要というわけではない。例えば、別の実施形態において、可変透過型マスクを照明するビームが何らかの重大な球面収差を有する場合、可変透過型マスクから微細ピッチのマスクへの0次ビームの範囲にわたる光線の投影がマッピングされ、可変透過型マスク56の設計において補償されるべきである。この補償は、好適には、球面収差によって伝搬ビームに導入される強度の変調も考慮に入れるべきである。
【0091】
本実施形態の変化形態では、可変透過型マスクは、代わりにコリメートレンズ55の前に配置され、可変透過型マスクの座標系から微細ピッチの格子型マスクの平面への0次ビームの光線のマッピングを補償するように設計され、好適には、可変透過型マスクから0次が伝搬される際にビームに導入される任意の強度変調についても補償される。
【0092】
同じく「0次」の可変透過型マスクを使用する第4の実施形態は、図16に概略的に示されている。第3の実施形態で採用したのと同じ照明源およびビーム整形光学系(図示せず)から得られる発散ビームは、コリメートされた光のビームを生成するレンズ70に入射する。このビームは、パターンの周期が20μmと非常に大きいことを除けば、第3の実施形態で使用されたものと同様のクロム線および透明空間の周期的なパターンを支持する可変透過型マスク71を照明する。可変透過型マスク71によって回折された0次、1次、および高次のビームは、いわゆる4f結像系の第1レンズ73aに入射し、このレンズ73aは自身の後方焦点面にあるスポットの配列にビームを収束させる。0次の上限および下限の光線は図中の実線で表され、それに対して、+1次および-1次の上限および下限はそれぞれ破線75a,75b,ならびに76a,76bで表されている。レンズの後方焦点面には、4f系レンズ73a,73bの光軸を中心とした不透明なスクリーン内の開口部の形態の空間フィルタがある。この開口部のサイズは、0次ビームの光のみが開口部を通過し、他のすべての回折次数は遮断されるように、可変透過型回折格子72の周期と、レンズ73aの焦点距離とに関連して選択される。0次ビームは、4f系の第2のレンズ73bによって再度コリメートされ、そこからミラーによって反射されて、それにより、マスク80内の微細ピッチの回折格子81を法線入射で照明する。2つのレンズ73a,73bの焦点距離は同じであり、そのため、可変透過型マスク71によって透過された0次ビームの強度分布は、微細ピッチの回折格子81に倍率1で結像される。微細ピッチの回折格子81の透過光は、DTL露光装置(図示せず)に取り付けられたチャック83上のフォトレジストが塗布された基板を照明する。
【0093】
したがって、本実施形態の可変透過型マスクからの0次ビームの1:1結像と、4f結像レンズ73a,73bおよび空間フィルタ74によって生じる他の回折次数の遮断は、第3の実施形態で生じる多大な距離にわたる0次ビームの投影および他の回折次数の横方向の分離と同等である。したがって、本実施形態で使用する可変透過型マスクは、第3の実施形態と同じやり方で設計される。
【0094】
4f結像系の2つのレンズ73a,73bは、(一重系として)概略的に示されているだけであり、可変透過型回折格子72によって透過される0次ビームの強度の空間的変化が、微細格子型パターン81に必要とされる精度で結像されるように、標準的な光学設計原理を使用して設計されるべきであることを理解すべきである。図16に示した4f結像系の2つのレンズ73a,73bは、同じ焦点距離を有し、0次ビームの1:1の結像を微細格子型マスク上で生成するが、本実施形態の他の変化形態では、微細格子型マスク上に0次回折の拡大(または縮小)画像を生成するために、4f結像系のレンズの焦点距離の比を異なるものにすることができる。そのような場合、可変透過型マスク内のデューティサイクル変化の座標系は、結像によってそれぞれ生じた拡大または縮小を補償するために、適切に縮小または拡大されるべきである。
【0095】
図15および図16の可変透過型マスクは、ダークフィールドマスク、すなわちクロムが格子パターン57を取り囲むマスクであるが、これは必須ではなく、これらの実施形態の他の変化形態では、代わりにライトフィールドマスク、すなわち格子パターンを囲むクロムがないマスクであってもよい。
【0096】
上述の第3および第4の実施形態で使用された可変透過型マスクは、フォトレジストに印刷された回折格子におけるデューティサイクルの所期のy方向の変化を生じさせる目的のために、マスク全体にわたってy方向に変化するデューティサイクルを有するが、これらの実施形態の他の変化形態では、フォトレジストにおいて望まれるデューティサイクルの変化は、別の方向であってもよいし、あるいは回折格子全体にわたって2次元的変化であってもよく、その場合、可変透過型マスク全体にわたるデューティサイクルの空間的変化は、適切に設計されるべきであることを理解すべきである。
【0097】
上記の実施形態で説明した0次の可変透過型マスクは、振幅型マスクであり、すなわち、これらの回折格子は、透明および不透明材料の線が交互に配置された形態であるが、他の関連する実施形態では、代替的に、位相シフトマスク、部分透過クロム、または減衰位相シフトマスクであってもよく、その場合、使用される特定の材料の厚さおよび線幅は、透過される0次ビームにおいて必要とされる強度の空間的変化を得るために適切に設計されている。
【0098】
上記の実施形態で説明した0次の可変透過型マスクは、変化するデューティサイクルと一定の周期とを有する線形型回折格子を支持しているが、後者は必須の特徴ではなく(ただし、設計は簡素化される)、(局所的)周期は代替的にパターン全体にわたって変化し得る。ただし、この変化の範囲は、第3の実施形態の場合では、微細格子型マスクの平面において0次から1次の横方向の分離を可能にすること、第4の実施形態の場合では、0次の透過と空間フィルタによる1次以上の遮断とを可能にすることが重要である。これらの代替的実施形態では、微細格子型マスクにおける強度の特定の変化を得るためのデューティサイクルの空間的変化は、これらの実施形態について説明したのと同じやり方で設計することができる。
【0099】
第3および第4の実施形態で説明した可変透過型回折格子は、0次回折次数における必要とされる強度の空間的変化を生じさせるために、変化するデューティサイクルを有する線および空間で構成された線形型回折格子を使用しているが、関連する他の実施形態では、0次における強度変化は、代替的に、2次元アレイに配置された特徴のサイズの変化、例えば、正方形または六角形の格子に配置された特徴によって生じさせてもよい。同様に、格子が完全に周期的であることは必須ではないが、周期、あるいは最近接距離は、少なくとも一方向に変化し得る。そのような周期的または非周期的な格子上の特徴の2次元アレイについては、特徴のデューティサイクルの空間的変化(特徴領域の面積を格子内の局所的セルの面積で割った値として定義される)は、線形型回折格子の場合と同様に設計されるべきである。第3および第4の実施形態については、2次元アレイの周期は、1次以上の回折次数のみが、微細格子型マスクの平面で0次から空間的に分離されるか、または4f結像系では空間フィルタによって遮断されるように、光学系との関係で設定されるべきである。
【0100】
他の実施形態では、0次ではなく可変透過型マスクからの1次回折次数が、微細格子型マスクの照明に代替的に使用される。そのような実施形態では、微細格子型マスクが法線入射で照明されるように、マスクから回折された2つの1次のうちの1つを反射するようにミラー58が位置決めおよび配向されていること、および必要な強度分布が1次ビーム内で生成されるように、可変透過型マスク内のデューティサイクルの変化が、(当業者に十分公知の線形型回折格子の回折効率式を使用して)適切に設計されていることを除いて、図15に示されているのと同様のシステムが使用される。第3の実施形態と同様に、可変透過型マスクの回折格子の周期および可変透過型マスクから微細格子型マスクまでの1次の光路の距離は、微細格子型マスクの平面において1次が0次および隣接する2次から横方向に分離されるように設定すべきである。そのような別の実施形態では、1次だけが開口部を通過し、他のすべての次数は遮断され得るように空間フィルタ74が再配置され、レンズ73bによって再度コリメートされた1次の光が法線入射で微細格子型マスクを照明するために反射されるようにミラー78の傾斜が調整されていることを除いて、図16に示されるものと同様のシステムが使用されてもよい。可変透過型マスク内のデューティサイクル変化は、微細格子型マスクを照明する1次ビーム内に必要とされる強度変化を生成するために適切に設計されている。
【0101】
「0次」または「1次」の実施形態の他の変化形態では、4f結像系と空間フィルタとの組み合わせと同じ機能を有する光学系が、可変透過型回折格子の間でそれぞれ0次および1次の回折次数だけを通過可能にするように代替的に構成されてもよく、これにより、0次または1次が微細周期の回折格子を単独で照明する。
【0102】
上記のすべての実施形態では、ArFエキシマレーザー光源を用いた露光システムを説明したが、他の実施形態では、別の波長、特に深紫外または近紫外波長の光または放射線のビームを生成する代替的照明源、最も好適にはレーザー光源を使用してもよい。そのような別の波長では、その波長に敏感な適切なフォトレジストが使用されるべきである。また、ビーム生成光学系の光学素子も、その波長用に選択および構成する必要がある。上記の実施形態用の図面にはミラーが示されているが、これは任意選択的であり、より小型なシステムを生成するためにビームを単に折り曲げるためのものである。他の実施形態では、ミラーは使用されなくてもよいし、あるいは代替的に複数のミラーが使用されてもよい。
【0103】
上記の実施形態では、デューティサイクルの所期の変化を有する表面レリーフ型回折格子が、基板の一方の表面上のフォトレジストに印刷されることのみを説明したが、他の実施形態では、デューティサイクルの同じまたは別の所期の変化を有する表面レリーフ型回折格子が、第1の表面上に表面レリーフ型構造部を形成した後に、別の露光を使用して、引き続き、基板の他の側のフォトレジストの別の層に印刷され得る。このために、標準的な位置合わせシステム、例えば、適切な顕微鏡の対が露光システムに含まれ、適切な位置合わせマークがマスクパターンの設計に含まれていると有利であり、これによって、基板の2つの表面に印刷されたパターン間で正確な位置および回転の位置合わせを実現することが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13
図14
図15
図16