(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】交互接線流の使い捨て濾過ユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20231010BHJP
B01D 61/20 20060101ALI20231010BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20231010BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F04B43/02 C
B01D61/20
B01D63/02
B01D65/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022036127
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2018544023の分割
【原出願日】2016-08-26
【審査請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2015-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504232044
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】REPLIGEN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワード,トラビス・アール
(72)【発明者】
【氏名】パール,スティーブン・アール
(72)【発明者】
【氏名】マローン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】アーランドソン,ティム
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06544424(US,B1)
【文献】実開昭57-152477(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
B01D 61/20
B01D 63/02
B01D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨ての交互接線流ハウジングおよびダイアフラム・ポンプ・ユニットであって、
滅菌可能で無毒の硬質プラスチック製中空管と、
前記中空管の一端へ固定される第1のポンプ半球体であって、前記第1のポンプ半球体は、第1の円周フランジを含み、かつ前記第1のポンプ半球体の開口は、前記第1のポンプ半球体と前記中空管との間に流体が流れることを可能にする、第1のポンプ半球体と、
前記第1の円周フランジと結合するように構成される第2の円周フランジを備える第2のポンプ半球体と、
前記第1および第2の円周フランジ間に配置されるように構成される可撓性ダイアフラムと、
クランプリングであって、前記第1の円周フランジと前記第2の円周フランジとの間において前記可撓性ダイアフラムを密封するように、前記第1の円周フランジおよび前記第2の円周フランジの周りに円周方向にかつ連続的に延びるように前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を覆って配置されるように構成されるクランプリングとを備え、
前記クランプリングは、前記第1のポンプ半球体または前記第2のポンプ半球体のうちの一方の曲がった、または斜めの外面に対応するように形作られた内面を有し、
前記クランプリングの内面の一部は、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの他方上のねじ切りに係合するようにねじ切りされている、使い捨ての交互接線流ハウジングおよびダイアフラム・ポンプ・ユニット。
【請求項2】
前記クランプリングは、前記中空管の長手方向軸に沿った方向に前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を覆って配置されるように構成される、請求項1に記載の使い捨ての交互接線流ユニット。
【請求項3】
円筒形の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリングであって、
第1のポンプ半球体を覆って取り外し可能に配置されるとともに前記第1のポンプ半球体と係合されるように構成された第1の連続した内面を備える第1の円筒部分と、
前記第1のポンプ半球体および第2のポンプ半球体をともに固定するように前記第2のポンプ半球体を覆って取り外し可能に配置されるとともに前記第2のポンプ半球体と係合されるように構成された第2の連続した内面を備える第2の円筒部分と、を備え、
前記第2の内面は、前記第2のポンプ半球体上の外径ねじ切りに係合するようにねじ切りされている、使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項4】
円筒形の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリングであって、
第1のポンプ半球体を覆って取り外し可能に配置されるとともに前記第1のポンプ半球体と係合されるように構成された第1の連続した内面を備える第1の円筒部分と、
前記第1のポンプ半球体および第2のポンプ半球体をともに固定するように前記第2のポンプ半球体を覆って取り外し可能に配置されるとともに前記第2のポンプ半球体と係合されるように構成された第2の連続した内面を備える第2の円筒部分と、を備え、
前記第1の内面はねじ切りされている、使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項5】
前記第1の内面は、前記第1のポンプ半球体の曲がった、または斜めの外面を収容するように構成される、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項6】
前記第1の内面は第1の内径を有し、前記第2の内面は、前記第1の内径よりも大きい第2の内径を有する、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項7】
前記第1の部分は、前記第1のポンプ半球体の第1の円周フランジに隣接して配置されるように構成される、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項8】
前記第1の内面の角度は、前記第1の円周フランジの曲がりを収容する、請求項
7に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項9】
前記第1の部分および前記第2の部分は、前記第1のポンプ半球体の第1の円周フランジと前記第2のポンプ半球体の第2の円周フランジとに結合するように構成され、前記第1の円周フランジと前記第2の円周フランジとの間にダイアフラムが配置されている、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項10】
前記使い捨ての交互接線流ポンプクランプリングは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリカーボネートおよびポリスルホンプラスチックのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項11】
前記第1の内面は、高圧状態の間に前記第1のポンプ半球体を補強するように構成される、請求項
3または4に記載の使い捨ての交互接線流ポンプクランプリング。
【請求項12】
第1のポンプ半球体および第2のポンプ半球体を備える使い捨ての交互接線流ハウジングをともにクランプする方法であって、
前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体の周りに円周方向にかつ連続的に延びるように前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を覆ってクランプリングを配置するステップと、
前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体をともにクランプするように、前記クランプリングの内面を前記第1のポンプ半球体の外面および前記第2のポンプ半球体の外面と係合させるステップとを含
み、
前記クランプリングの内面を、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方の曲がった、または斜めの面と係合させるステップをさらに含み、前記クランプリングの前記内面は、前記第1のポンプ半球体または前記第2のポンプ半球体の前記一方の前記曲がった、または斜めの面に対応するように形作られており、
前記クランプリングの内面上の内径ねじ切りを、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの他方上の外径ねじ切りと係合させるステップをさらに含む、方法。
【請求項13】
第1のポンプ半球体および第2のポンプ半球体を備える使い捨ての交互接線流ハウジングをともにクランプする方法であって、
前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体の周りに円周方向にかつ連続的に延びるように前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を覆ってクランプリングを配置するステップと、
前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体をともにクランプするように、前記クランプリングの内面を前記第1のポンプ半球体の外面および前記第2のポンプ半球体の外面と係合させるステップとを含み、
前記クランプリングの内面上の内径ねじ切りを、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの他方上の外径ねじ切りと係合させるステップをさらに含む、方法。
【請求項14】
前記第1のポンプ半球体は第1の円周フランジを有し、前記第2のポンプ半球体は第2の円周フランジを有し、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体をともにクランプするステップは、前記第1の円周フランジと前記第2の円周フランジとの間に可撓性ダイアフラムの周辺部分をクランプするステップをさらに含む、請求項
12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を覆って前記クランプリングを配置するステップは、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの一方を、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの他方の方向に取り囲むように、前記第1のポンプ半球体および前記第2のポンプ半球体のうちの前記一方を覆って前記クランプリングを配置するステップを含む、請求項1
2または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ハウジングおよび、例えば濾過システムにおいて使用するためのダイアフラムポンプ、ならびに無菌環境を保持しながらフィルタを湿らせ/洗い流すためのアタッチメントを含む、交互接線流の使い捨て濾過ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
濾過は、典型的には、流体溶液、混合流体または懸濁流体を分離し、清澄化し、改変しかつ/または濃縮するために実行される。バイオテクノロジー、製薬、および医療産業において、濾過は、薬物、診断および化学物質ならびに他の多くの製品の製造、加工および分析を成功させる上で極めて重要である。例として、濾過は、流体を滅菌し、かつ複合懸濁液を清澄化して濾過された「透明な」分画および濾過されない分画にするために用いることができる。同様に、懸濁液中の構成要素は、懸濁媒を除去または「濾過して除く」ことによって濃縮され得る。さらに、フィルタ材料、濾過孔径および/または他のフィルタ変数を適切に選択することにより、他の多くの特殊化されたフィルタ用途が開発されていて、これには、微生物の培養物、血液、ならびに溶液、混合液または懸濁液であり得る他の流体を含む、様々なソースからの構成要素の選択的分離が含まれ得る。
【0003】
生物製剤の製造プロセスは、多大なプロセス強化を通じて進歩してきた。今日、組換えタンパク質、ウイルス様粒子(VLP)、遺伝子治療粒子およびワクチンを産生するための真核細胞および微生物細胞の培養は、共に、1ml当たり細胞数100e6以上を達成できる細胞増殖技術を取り入れている。これは、代謝老廃物を除去し、かつ栄養分を追加して培養物を回復させる細胞保持デバイスを用いて達成される。細胞を保持する最も一般的な手段の1つは、交互接線流(ATF)を用いる中空糸濾過を用いてバイオリアクタ培養物を灌流させることである。商業的および開発規模の双方のプロセスは、ダイアフラムポンプを制御して中空糸フィルタを介するATFを実行するデバイス(例えば、米国特許第6,544,424号明細書参照)を使用し、この場合、ポンプおよびフィルタは、ステンレス鋼に入れられ、無菌状態を保つために使用前に高温加圧滅菌される。経済性およびフレキシブルさを理由に、多くの生産施設は、使い捨て製品の使用に努めているが、ステンレス鋼のATFを使い捨ての滅菌済みデバイスに替えることには大きな課題がある。
【0004】
ATFデバイスを用いる大量生産は、かなりの力に耐えかつシリコーンダイアフラムの完全性を維持できるポンプ・チャンバ・ハウジングを必要とする。プラスチック製使い捨てポンプの半球内には、ダイアフラムを密封する手段が必要である。また、効率的な灌流を達成するためには、デバイスをガンマ線またはエチレンオキシドで滅菌した後に、ドライフィルタを液体で洗い流して膜の繊維を湿らせなければならず、よって、デバイスは、使用前に湿潤手順を見込むように設計されなければならない。濾過デバイスを用いる現行の慣例は、デバイスが膜を通して液体溶液を期待された流体流動速度で灌流していて、生産障害を引き起こす漏れが繊維またはデバイス内に存在しないことを保証するために、完全性試験を実行することを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、増強された細胞培養産生に適する使い捨てATFデバイスの構築および使用に対するこれらの障壁を克服する、使い捨てATFデバイスおよび使用方法を記述する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本開示は、高密度細胞培養プロセスをサポートすることに適する使い捨てATFデバイスを提供する。また、本開示は、使い捨てATFデバイスを用いて無菌環境で高い濾過性能を得る方法も提供する。本開示は、具体的にはトップフランジおよびボトムフランジを有する半球ATFポンプチャンバのトップおよびボトムハーフと協調して機能するように特別に設計される内径ねじ切りの付いた、(例えば、オートクレーブ、蒸気、ガンマ線、エチレンオキシドを用いて)滅菌可能なプラスチック・クランプ・リングであって、一方のフランジがクランプリングと結合するようにねじ切りされ、かつフランジの一方または双方が、特別に設計される内側のポンプダイアフラムと共にダイアフラムの密封を補助する追加機能を有し得るプラスチック・クランプ・リング、を使用すれば、市販の濾過システムにおけるような使い捨てATFユニットを用いる場合に内在する多大な圧力および広範な圧力変動に耐え得る滅菌可能で堅牢な使い捨てATF濾過ハウジングおよびポンプユニットを簡単に製造することができる、という発見を、少なくとも部分的に基礎とする。
【0007】
本開示はまた、フラッシュ溶液をバイオリアクタへ導入することのない、バイオリアクタからの培地の交互接線流のためのデバイスを調製するために無菌状態を保持しながら、密閉フィルタ上へ滅菌された液体フラッシュを供給できるポートおよび流体バッグの構成をも部分的に基礎とする。ダイアフラムポンプからのATFデバイスの交互接線流を使用する能力は、無菌環境を保持しながら灌流プロセスにおける最適性能に合わせてフィルタを調整するための新規機構を提供する。フィルタのフラッシングおよび湿しを達成するために無血清増殖培地を使用する方法について記述する。ATFデバイスのこの構成も、濾過デバイスの完全性試験を見込むものであり、よって、バイオリアクタを有するデバイスの作動中の流動速度性能が保証される。
【0008】
機能的で堅牢な、金属製でない使い捨てのATFハウジングおよびポンプユニットの開発は、これらのユニットの典型的な商業的使用に関わる多大な力に起因して困難であった。ATFポンプ内部の圧力は、大きく変化して、50psi以上まで上昇する可能性があり、従来的には、結果として生じるこの力に耐え得る金属製の(例えば、使い捨てでない)コンポーネントを必要とする。使い捨てのATFポンプの開発にあたっては、試行された材料およびプラスチックの多くが失敗に終わった。非金属材料の使用は、多くの用途において接着および強度を増大させるために使用されることも可能な多くの接着剤がポンプ内の細胞にとって有毒であり、よって、この新しいポンプには使用できないという事実によって複雑化する。
【0009】
ある態様において、本開示が提供する使い捨てのATFハウジングおよびダイアフラム・ポンプ・ユニットは、滅菌可能で無毒の硬質プラスチック製中空管と、中空管の一端へ固定される第1のポンプ半球体であって、前記第1のポンプ半球体は第1の円周フランジを含み、かつ第1のポンプ半球体の開口は、第1のポンプ半球体と中空管との間に流体が流れることを可能にする、第1のポンプ半球体と、第1の円周フランジと結合するように構成される第2の円周フランジを備える第2のポンプ半球体であって、第1の円周フランジまたは第2の円周フランジの何れかが外径ねじ切りを備える、第2のポンプ半球体と、第1および第2の円周フランジ間に配置されるように構成される可撓性ダイアフラムと、内径ねじ切りを備える内面を有するクランプリングであって、ねじ切りされた円周フランジなしでポンプ半球体を覆って配置されかつねじ切りされた円周フランジへ固定されるように構成されるクランプリングと、を含む。
【0010】
様々な実施形態において、クランプリングは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリエチレン、ポリカーボネートおよびポリスルホンプラスチックのうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。実施形態によっては、クランプリングは、雌ねじを有する下側部分と、第1のポンプ半球体の曲がった、または斜めの外面を収容するように構成される内面を有する上側部分とを含むことができる。
【0011】
実施形態によっては、使い捨てATFユニットは、ATFとして動作されることが可能な密閉システムを実現しかつフィルタ膜を湿らせるために、空気リザーバ、透過フラッシュバッグおよび流体供給バッグのうちの何れか1つまたはそれ以上を滅菌連結部を介して取り付けるために使用される1つまたは複数のポートをさらに含むことができる。概して、ATFユニットは、45psi以上まで、例えば10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60psiまで加圧されることが可能である。
【0012】
所定の実施形態において、第1および第2のフランジは、可撓性ダイアフラム上の突起
と結合するように構成される溝を有する。概して、クランプリングは、第1および第2の
フランジ間で可撓性ダイアフラムを圧縮するように構成され、かつ圧縮レベルは、設計上
桁違いに安全な圧力を包含するに足るダイアフラムの圧縮に相関するトルク仕様を適用す
ることによって、変更されることが可能である。例えば、トルク仕様は、約10~100
lbft(13.6~136Nm)以上であってもよく、例えば、約10~100lbf
t(13.6~136Nm)、20~80lbft(27.2~108.8Nm)、また
は30~70lbft(40.8~95.2Nm)、であってもよく、例えば、10、2
0、30、40、50、60、70、80、90または100lbft(13.6、27
.2、40.8、54.4、68、81.6、95.2、108.8、122.4または
136Nm)であってもよい。
【0013】
別の態様において、本開示は、完全に湿らせた使い捨て濾過デバイスを調製する方法を提供する。本方法は、無菌連結部を用いて、本明細書に記述しているような使い捨ての交互接線流(ATF)ユニットの上部ポートへ保持および透過流体バッグを連結することと、培地または他の流体含有バッグをポンプ入口ポートへ取り付けることと、使い捨てATFユニットを作動して、使い捨てATFユニットの中空管内部のフィルタ膜に渡って培地または他の流体の流動を実現することを含む。これらの方法は、さらに、使い捨てATFユニットを作動して使い捨てATFユニットの中空管内のチャンバを透過する流体流動を実現した後に、使い捨てATFユニットからポンプ入口ポートを通して保持流体を排出することも含んでもよい。
【0014】
別の態様において、本開示は、使い捨て濾過デバイスの完全性試験を実行する方法を含む。これらの方法は、使い捨て濾過デバイスを洗い流すために使用された培地を、濾過デバイス内部のダイアフラムを持ち上げるために空気圧源が開放されている状態の湿潤流体バッグ内へ排出することと、空気圧源バルブを閉じてダイアフラムに加わる圧力を放つことと、湿潤流体バッグと濾過デバイス上のポートとの間に位置決めされるバルブ、および濾過デバイスの保持液ポートへ連結されるバルブを閉じることと、空気圧源を用いてフィルタの片側を加圧することと、フィルタと空気圧源との間のバルブを閉じることと、経時的な圧減衰を測定することと、圧減衰の測定値を空気流と相関することを含む。
【0015】
これらの方法において、培地は、重力によって、またはデバイスから培地を圧送することによって排出されることが可能である。所定の実施形態において、空気圧源は、空気を約1~5psiの圧力で、例えば、1、2、3、4または5psiの圧力で供給する。
【0016】
別の態様において、本開示は、使い捨て濾過デバイスの完全性試験を実行する方法を提供する。これらの方法は、使い捨て濾過デバイスを洗い流すために使用された培地を、濾過デバイス内部のダイアフラムを持ち上げるために空気圧源が開放されている状態の湿潤流体バッグ内へ排出することと、空気圧源バルブを閉じてダイアフラムに加わる圧力を放つことと、湿潤流体バッグと濾過デバイス上のポートとの間に位置決めされるバルブと、濾過デバイスの保持液ポートへ連結されるバルブとを閉じることと、空気圧源を用いてフィルタの片側を加圧することと、デバイス内部の圧力を経時的に測定することと、空気圧源とデバイスとの間の流れを、流量計を用いて測定することと、圧力の測定値を空気流の
測定値と相関することを含む。
【0017】
別の態様において、本開示は、使い捨て濾過デバイスを用いる方法を提供する。これらの方法は、本開示の任意の態様による使い捨てATFユニットを調達することと、無菌連結部を用いて流体バッグをATFユニットの上部ポートへ連結することによりATFユニットを流体回路内へ配置することと、ATFユニットが、使い捨てATFユニットの中空管内のフィルタ膜を通って濾過される培地または他の流体の流動、および濾過が完了した時点のATFユニットの処分を実現できるように、流体容器をポンプ入口ポートへ取り付けることを含む。
【0018】
本明細書で使用する「密封される」、「密封する」およびこれらに類する用語は、2つのチャンバまたは他のシステムコンポーネントの接合または接合部が、50psiまでの圧力において接合または接合部から流体を漏れさせないという事実を指す。
【0019】
「フラッシング」は、中空糸フィルタを覆う、かつこれを介する溶液の使用を指す。
「湿し」とは、糸膜の孔がその時点で液体を含み(湿った状態)、かつ低圧および高い流体流動速度において低い通気を示すような方法による中空糸フィルタのフラッシングを指す。
【0020】
別段の規定のない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の一般的な当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載しているものに類似する、またはこれらと同等の方法および材料を用いることができるが、以下、適切な方法および材料について記述する。本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許および他の引例は、全て、参照によりその全体が開示に含まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法および実施例は、単なる例示であって、限定を意図するものではない。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第1の実施形態を示す等角図である。
【
図1B】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第1の実施形態を示す正面図である。
【
図1C】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第1の実施形態を示す断面図である。
【
図2A】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第2の実施形態を示す等角図である。
【
図2B】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第2の実施形態を示す正面図である。
【
図2C】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第2の実施形態を示す断面図である。
【
図3A】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第3の実施形態を示す等角図である。
【
図3B】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第3の実施形態を示す正面図である。
【
図3C】本明細書に記載する使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットの第3の実施形態を示す断面図である。
【
図4A】ダイアフラムポンプの詳細図であって、液体側の半球(上部)、空気側の半球(下部)、ダイアフラム(半球間に密封される)、および両半球を合わせて保持しかつダイアフラムに渡る圧縮を強いるために使用されるロックリング、およびより大きい直径を有するポンプのシーリングを補助するために追加されるシーリング機能を示す。
【
図4B】ダイアフラムポンプの詳細図であって、液体側の半球(上部)、空気側の半球(下部)、ダイアフラム(半球間に密封される)、および両半球を合わせて保持しかつダイアフラムに渡る圧縮を強いるために使用されるロックリング、およびより大きい直径を有するポンプのシーリングを補助するために追加されるシーリング機能を示す。
【
図4C】ダイアフラムポンプの詳細図であって、液体側の半球(上部)、空気側の半球(下部)、ダイアフラム(半球間に密封される)、および両半球を合わせて保持しかつダイアフラムに渡る圧縮を強いるために使用されるロックリング、およびより大きい直径を有するポンプのシーリングを補助するために追加されるシーリング機能を示す。
【
図4D】ダイアフラムポンプの詳細図であって、液体側の半球(上部)、空気側の半球(下部)、ダイアフラム(半球間に密封される)、および両半球を合わせて保持しかつダイアフラムに渡る圧縮を強いるために使用されるロックリング、およびより大きい直径を有するポンプのシーリングを補助するために追加されるシーリング機能を示す。
【
図4E】ダイアフラムポンプの詳細図であって、液体側の半球(上部)、空気側の半球(下部)、ダイアフラム(半球間に密封される)、および両半球を合わせて保持しかつダイアフラムに渡る圧縮を強いるために使用されるロックリング、およびより大きい直径を有するポンプのシーリングを補助するために追加されるシーリング機能を示す。
【
図5A】本明細書に記載するような雄ねじ付きフランジを有するATFダイアフラム・ポンプ・アセンブリと共に用いるように特別に設計された雌ねじ付きプラスチック・クランプ・リングを示す等角図である。
【
図5B】本明細書に記載するような雄ねじ付きフランジを有するATFダイアフラム・ポンプ・アセンブリと共に用いるように特別に設計された雌ねじ付きプラスチック・クランプ・リングを示す断面図である。
【
図5C】本明細書に記載するような雄ねじ付きフランジを有するATFダイアフラム・ポンプ・アセンブリと共に用いるように特別に設計された雌ねじ付きプラスチック・クランプ・リングを示す上面図である。
【
図6A】コントローラおよびバイオリアクタへ連結される使い捨てATFポンプハウジングのシステムレベルを表す。
【
図6B】コントローラおよびバイオリアクタ、および細胞培養産生に先行してフィルタを洗い流しかつ調整するために使用される流体バッグおよびポートへ連結される使い捨てATFポンプハウジングのシステムレベルを表す。
【
図7】本明細書に記載する実施例において記述される試験に使用されるポンプ半球試験装置を表す。
【
図8】本開示によるATFポンプハウジングを用いて実行された細胞培養の結果を示すグラフである。
【
図9】本開示によるATFポンプハウジングを用いて実行された細胞培養の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
様々な図面における類似の参照符号は、類似エレメントを示す。
詳細な説明
本開示は、一般的な方法(例えば、ガンマ線およびエチレンオキシド)により滅菌可能であって、使い捨てであるように、かつ/または1回または使用を限定されて設計される新しい使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットについて記述する。本ユニットは、2つの半球形半分を含む球形ATFポンプアセンブリへ直に連結されるプラスチックハウジングを含む。特定の構造を所与として、この新規ユニットは、使用中に生じる過酷さおよび多大な圧力に驚くほど耐えることができる。一方の半球は、雄ねじ付きフランジを
有し、かつクランプまたはロックリングは、一方の半球を同心円状に取り囲んで反対側の半球上にねじ込み、例えばシリコーンまたは他のエラストマー製の内側のポンプダイアフラムを挟んで締め付け/密封する。この実施形態において、クランプリングは、雌ねじ付きである。クランプまたはロックリングは、両半球を通して上下から繋ぐ2つのユニットから成る可能性もある。
【0024】
これらの新規ユニットは、滅菌可能、堅牢、しかも使い捨てであって、現時点で金属製のハウジングおよびポンプユニットを用いるATF濾過システムの代わりに使用することができる。使い捨てであるというその性質にも関わらず、この新規使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットは、このようなATFシステムの商業的使用に固有の多大な圧力の循環に耐えることができる。使い捨てATFの設計には、無菌状態を保持しながらフィルタを洗い流しかつ湿らせることを可能にする流体経路構成が含まれる。この構成は、濾過デバイスの適正なパフォーマンスを保証する、ATFデバイスのフィルタ完全性試験も見込んでいる。
【0025】
近年の新規材料および製造方法の進歩により、使い捨て機器の構造および使用は、ますます受け入れられてきている。このような使い捨てシステムは、最小限の取り扱いでセットアップすることができ、ユーザによる洗浄または滅菌を必要としない。これらは、無菌で、かつ最小限の準備および組み立てで直ぐに使用できる形で供給される。その結果、ユーザによる作業および取り扱いの低減ならびに長いオートクレーブサイクルの排除に起因して、省コストになる。さらに、使用が終わると、システムは、分解または清掃することなく即廃棄することができる。これらのシステムは、オペレータによる汚染および組立の危険性を減らす。これらは、操作/無菌化のための長い検証手順を必要としない。これらのユニットは、ステンレス鋼またはガラスユニットに比べて軽量かつ輸送が容易であり、より安価で、保管スペースも少なくなる。また、これは、厄介で問題の多いオートクレーブもなくする。機器を無菌化する別のオプションは、定置蒸気滅菌(SIP)を行うことであり、この製品により、大型の蒸気発生器および配管が不要となる。新規システムもまた、部品の洗浄および部品洗浄検証の必要性をなくすことから、廃液量が減る。これらのシステムの利便性により、製造現場における実装時間が大幅に短縮される。
【0026】
しかしながら、ATFプロセスには、圧力勾配をもたらす多大な圧力循環、および糸膜表面に対して軸方向および半径方向双方の流れが内在し、全てのATF濾過およびポンピングシステムにかなりの内力がかかる。「圧力サイクル」の間、ポンプ内の圧力は、保持液リザーバ内の圧力より大きく、25psi以上に上昇することがある。液体は、ダイアフラムポンプから「前方へ」軸方向に、即ちフィルタエレメントを介して保持液リザーバに向かって流れる。また、液体の一部は、フィルタ膜を通って濾過液区画へと押し込まれる。したがって、密閉された濾過液区画では、透過出口(ポンプ)における制約に起因して、循環中、濾過液の流入が濾過液区画をかなりのレベルまで加圧することがある。
【0027】
これらの周期的圧力は、同じく滅菌可能でありかつ使い捨て材料で製造される堅牢で商業的に有用なATF濾過システムの作製を困難にする。これらの材料を単純、容易でロバストな、費用効果的かつ製造しやすい方法で構築し、組み立てかつ接着することは困難であり、本明細書に記述しているように使用され得る材料の選択は、高圧、抽出物/溶出物のプロファイル、必要な医療グレード認定、透明性、コスト、滅菌適性および可用性に起因して制限される。半球アセンブリ内の力は、形状寸法および大きい表面積によって拡大される。その結果、ポンプ(空気側/液体側)の密閉、および濾過モジュールの透過および外部環境への供給は、設計上の難題である。この設計で克服された別の課題は、さまざまな供給業者が供給する多様なサイズのフィルタカートリッジを包囲して密封するアセンブリの作製であった。
【0028】
使い捨てATFハウジングおよびポンプ
図1A~C、
図2A~Cおよび
図3A~Cは、各々、本明細書に記述している使い捨てATFハウジングおよびポンプユニット100、200、および300の3つの異なる実施形態の等角図、正面図および断面図を示す。
【0029】
概して、新規ATFハウジングおよびポンプユニットのハウジング、ダイアフラムポンプ、内部ダイアフラム、バルブ、フィルタおよび他の構成要素は、所定の要件を満たす材料で構成することができる。具体的には、材料は、典型的な流体濾過システムの作動中に発生する圧力に耐えなければならず、細胞または微生物を傷つける、または殺し得る毒素がなく、所望される形状に容易に成形され、軽量かつ比較的安価でなければならず、かつエチレンオキシド(EO)またはガンマ線であり得なければならない。例えば、有用な材料には、ポリカーボネート(PC)(例えばSabicのHPSグレード)、ポリスルホン(PS)、BPAフリープラスチックのコポリエステル(例えばEastman Chemical社のTRITAN(登録商標))、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ガラス充填ポリマー、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)および複合体(例えば、ガラス/PC、ガラス/PSおよびガラス/ナイロン)が含まれる。これらの材料の望ましい特徴としては、さらに、本明細書に記述する様々な製造技術への適合性、梱包および保管に対する順応性、輸送適性、生体適合性およびその内部で処理される内容物の損傷または汚染に対する防護が含まれる。
【0030】
図1A~
図1Cは、使い捨てクランプリング110を含みかつ
図1Cに示すATF濾過システム(後にさらに詳述する)において使用されることが可能である、使い捨てATFハウジングおよびポンプユニット100の一実施形態を示す。この実施形態には、(
図6Aに示すような)フィルタハウジング5の上端部および下端部における透過ポート102が、
図6Aに示すフィルタハウジング5の入口端42および空気入口ポート23に加えて包含されている。クランプリングは、本明細書に記述しているような硬質、被削性または成形可能なプラスチック、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレン(PE)、PP、PC、PS、ナイロン、ガラス充填ポリマーまたは複合材で製造することができる。
【0031】
図2A~
図2Cは、同じく使い捨てクランプリング110を含む使い捨てATFハウジングおよびポンプユニット200の第2の実施形態を示し、かつ
図3A~
図3Cは、同じくクランプリング110を含むフィルタアセンブリ300の第3の実施形態を示す。図示されているように、本開示による使い捨てクランプリング110は、様々なフィルタアセンブリ配置で使用することができる。図示されているサイズは、特定の例を説明するためのものであって、限定を意図するものではない。
【0032】
図4A~
図4Eは、
図1C、
図2C、および図
3Cに示す使い捨てATFハウジングおよびポンプユニット100、200、300の底部のATFポンプ部分を示したものであり、それらは可撓性内部ポンプダイアフラム6のダイアフラム外側フランジ47を液体受入れチャンバ7と漏れ防止連結部を備える空気側チャンバ8との間に固定するために使用される使い捨てクランプリング110を有するダイアフラムポンプ4を含んでいる。ATFポンプの上側半球および下側半球は各々、フランジ26および27を含み、これらのフランジは各々、2つの半球が組み立てられると、間にATFポンプダイアフラム6を挟む。ATFポンプ下半分のフランジ27は、使い捨てクランプリングに係合しかつダイアフラムを介して双方のフランジを圧縮するために使用される外径ねじ切りを備える。
図4Eは、より大きい径のポンプ形状のダイアフラムを密封する補助として追加される特徴の詳細を示す。
【0033】
図5Aも参照すると、使い捨てクランプリング110は、周辺フランジ26、27の外
周上ならびにフランジ26の上部分を取り囲むことにより、2つのポンプ半室の周辺フランジ26および27間に内部ダイアフラム6を封入して密閉する円筒形クランプである。上述したように、少なくとも(この実施形態では)下側のフランジ27の半径方向外側の接触面49は、ねじ切りされ、即ち、周辺フランジ27の半径方向周囲は、半径方向接触面49で使い捨てクランプリング110の下側の内面112上のねじ山に接触しかつこれと結合するねじ山を有する。実施形態によっては、他方のフランジ26(これらの実施形態では、上部フランジ)は、雄ねじを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。他の実施形態は、ボトムリングがトップリングに内的または外的に嵌まって両フランジを圧縮する2ピース式ロックリング構成を示す。
【0034】
周辺フランジ26および27は、使い捨てクランプリングと協働して、各々ダイアフラムの外側フランジ47をフランジ26および27の上面と下面との間に固定する。実施形態によっては、ダイアフラムポンプの周辺フランジ26、27は、対向する2つの周辺フランジ26および27が、使い捨てクランプリング110上へのねじ込みによって互いに押し付けられると、圧縮されて2つの周辺フランジ26および27間でダイアフラムの外側フランジ47を締め付けるように、内部ダイアフラムの外側フランジ47の対応する厚さより幾分少ない距離で互いに離間している。この設計では、半球の空気側および液体側の双方を密封するには、ダイアフラムに渡る10~30%の圧縮で足りる。
【0035】
異なるサイズのATFシステムに対しては、異なるレベルの圧縮が必要であって、ATFサイズが大きいほど、そのダイアフラムを包含しかつ強固な密封を作り出すために必要な圧縮は、大きくなる。あるいは、高圧でのダイアフラムのシーリングおよび包含を増強しかつ/または減結合するために、付加的な特徴を追加することもできる(
図4E)。これらの特徴の例がエネルギーダイレクタ突起28であり、これは、一方または双方の内側フランジに加工されてダイアフラムに付加的な圧縮および/またはシーリングを提供する追加的な突起および/または溝である。
図4C~
図4Dに具体的に示されているように、フランジ26、27は、内部ダイアフラム6の対応するOリング44部分または突起を受け入れるように設計される溝を含むことができる。周辺フランジ26、27は、一旦接触すると、各々の周縁がそれらの対向面の接触面に沿って互いに密封されることが可能である。このプロセスにおいて、内部ダイアフラム6は、2つの周辺フランジ26および27の間にしっかりと密封される。
【0036】
本新規方法は、対応しかつ隣接するポンプ・フランジ・セグメント間の圧縮距離を制御することにより、内部ダイアフラムの外側フランジ47に対する圧縮の大きさを設定することを見込んでいる。あるいは、設計に何倍もの安全性で圧力を包含するために、ダイアフラムの十分な圧縮に相関するトルク仕様が測定されることも可能である。各ATFシステムを密封するために要するトルク仕様は、様々である。ATFシステムが大きいほど、ロックリングに対する、ダイアフラムを圧縮するために必要なトルクは大きくなる。例えば、ATF2システム100シリーズは、単に10~20lbft(13.6~27.2Nm)を要するのに対して、ATF10 300シリーズは、80+lbft(108.8+Nm)を必要とする。サイズがこれらの2例の間であるATFシステムでは、20-90lbft(27.2~122.4Nm)が必要である。
【0037】
図5A~
図5Cも参照すると、使い捨てクランプリング110は、上側部分120と、下側部分122とを有する。上側部分120は、下側部分122よりも小さい内径を有する。下側部分122の内側の(例えば、半径方向で中心線に最も近い)表面は、本明細書において下側の内面112と称し、これは、ねじ切りされ、かつATFポンプ駆動チャンバ8の周辺フランジ27の半径方向外周面と係合する。上側部分120の内面は、上側の内面114であり、下側の内面112に比べて半径方向で中心線に近い。
【0038】
上側の内面114は、液体受入れチャンバ7の外面と係合する。図示されているように
、液体受入れチャンバ7は、半球体であり、よって、平面ではなく曲がりを有する。液体受入れチャンバ7の外面を収容しかつこれと密封式に係合するために、上側の内面114は、水平に対して角度αで傾斜している。角度αは0~5゜、例えば1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0または4.5゜であってもよいが、異なるサイズのATFダイアフラムポンプ4の様々な大きさの半球の曲がりに対応するために必要に応じて調整される。この合わせ面は、高圧状態の間に上側の半球を補強する。上側半球と下側半球は、組み立ての間は接触せず、互いに押し付けられるが、ダイアフラムの圧縮によって分離される。
【0039】
使い捨てATFポンプと共用するためのシステムおよびプロセス
概して、新規使い捨てATFポンプは、例えば、
図6Aに示されかつ後にさらに詳述するように、保持液チャンバおよび濾過液チャンバを使用する密閉式濾過システムと共に使用されることが可能である。このようなATF濾過システムおよびATFポンプは、Shevitzの米国特許第6,544,424号明細書に記述されている。
【0040】
新規使い捨てATFポンプ内に保持液チャンバおよび濾過液チャンバを作成する便利な方法は、中空糸フィルタカートリッジを用いるというものである。このようなフィルタは、カートリッジの長さ沿いに並行して延びかつカートリッジの各端部に(好ましくは、ポッティング剤を用いて)埋め込まれる複数の中空糸(HF)を含むカートリッジとして製造され、HF端部における内腔は、開いたままで保持され、よって各内腔を介してカートリッジの一端から他端まで、即ちカートリッジ入口端からカートリッジ出口端まで連続する通路が形成される。中空糸は、カートリッジの外壁(即ち、カートリッジ壁)および中空糸端部におけるポッティング層によって封入される。その結果、カートリッジ壁およびHFの外壁によって境界をつけられたチャンバが存在する。このチャンバは、濾過液チャンバとして用いることができる。HFのイントラルミナール(内部)空間は、本システムの各々において、集合的に、保持液チャンバの一部を構成するものとされる。
【0041】
保持液チャンバは、カートリッジの各端部に嵌合するアダプタによって、HFの内部空間を超えて拡張される。各アダプタは、カートリッジの一端と共に、保持液チャンバの一部である空間を画定する。ファイバを介する流体の流れの方向に依存して、この空間は、(1)ファイバを出る流体を収集する、または(2)外部ソースから到達する流体がHFの開端とインタフェースできるようにし、かつカートリッジの他端へ向かうその経路を継続するために、これらのHF間で分散できるようにする働きをする。各アダプタは、2つの端部を有し、一方の端は、カートリッジへ取り付けられ、もう一方の端は、容器またはポンプへ連結可能な開口を有する。通常、
図6A~
図6Bに示されているように、容器は、アダプタへ、流体の流れを可能にするラインによって連結されるが、所望されれば、容器をアダプタへ直に連結することができ、または、容器の内容物の一部または全体がアダプタ内に包含され得る場合は、アダプタが容器の一部を形成してもよい。通常、アダプタは、使い捨てATFポンプへ直に連結されるが、所望されれば、
アダプタは、流体の流れを許容するラインを介してポンプへ連結されてもよい。
【0042】
連結ラインがアダプタへ追加されると、保持液チャンバは、この連結ライン内部の空間も包含するように拡張される。連結ラインの一方の端がアダプタへ連結され、かつそのもう一方の端が容器(例えば、増殖培地内に懸濁された細胞を含むもの)へ連結される場合、容器の内部は、保持液チャンバのさらなる拡張部であると考えることもできるが、本明細書における説明および論考を目的として、容器および保持液チャンバを別個の実体と称する。
【0043】
中空糸フィルタのルーメンの壁は透過性であり、便宜的には、完全透過性または選択透過性の何れかであるバリアを提供する。選択透過性中空糸壁の選択性範囲は、例えば、孔
径範囲が約10~500kDaおよび0.2~100ミクロンである場合、一般に浸透膜として分類される、かつ限外濾過、精密濾過からマクロ濾過およびマイクロキャリア濾過に至る膜孔径全域に及ぶ。約0.2ミクロンの孔径は、細胞を保持し、かつ代謝産物および他の分子または分子複合体が細孔を通過できるようにするために一般的に使用される。一方で、10kDa~500kDaの範囲の限外濾過孔径は、細胞だけでなく、これらの孔径より大きい、例えば細胞によって産生される分子および分子複合体を保持するために好ましい。マクロ濾過膜は、7~100μmの範囲であって、マイクロキャリアまたはこれより大きい細胞を保持するために使用される。これらの選択透過性中空糸は、濾過される流体物質に適合する液体で湿されなければならない。例えば、細胞培養において、膜は、細胞培養増殖に適合する水ベースの溶液で湿されなければならない。多くの膜は、まず細孔を湿しかつ作動中に濾過プロセスの実行に必要な流動速度を達成するために、アルコール含有溶液を必要とする。
図6Bは、ATFデバイスに流体を加えるために使用できるポートおよび流体バッグを示す。次には、ATFデバイスの交互ポンピング作用を用いて、無菌環境内で無血清培地によるフラッシングを実行することができる。次には、ポートからフラッシュ流体を排出することができ、デバイスは、無菌環境を保持しながら、細胞培養プロセスにおいてすぐに作動することができる。
【0044】
例えば、新規使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットで使用するためのフィルタカートリッジの外壁は、非透過性であることが多く、一般に、濾過液を排出しかつ/または交換することができるポートを有する。しかしながら、密閉式濾過システムの幾つかの実施形態の目的に沿って、フィルタカートリッジは、非選択性(完全透過性)であり得るが好ましくは半透性である(バリア内の孔径より大きい溶存物質(例えば、分子および分子複合体)はバリアを通過させず、孔径より大きい粒子状物質はバリアを通過させない)バリアを構成する外壁を含んでもよい。10kDa~500kDaの範囲の孔径は、孔径より大きい分子および分子複合体のみを保持する場合に好ましい。しかしながら、孔径は、各々、バリアがかなり限定的であって、小さい塩類およびその成分のみに膜を通過させる、または500kDaより大きい分子または粒子に膜を通過させるに足る小さいもの、または大きいものにされることが可能である。このような膜選択性は、孔径のみに限らず、電荷、疎水性、膜構成、膜表面、細孔の極性、他を含む他の膜特性にも及ぶ。
【0045】
典型的な密閉式フィルタ調製プロセスでは、概して、以下のステップ、即ち、
(1)流体を保持液チャンバから流体コネクタを介して容器(貯蔵容器等)へ排出し、よって、前記排出の間、前記流体の一部は、半透過性バリアを介して濾過液チャンバ内へ方向づけられ、次に、選択バリアを介してリアクタチャンバへ方向づけられるステップであって、前記排出は、保持液チャンバへ連結されるダイアフラムポンプにより流体コネクタから遠位の位置に加えられる力に起因するステップと、
(2)容器からの流体の少なくとも一部は、保持液チャンバへ流れて戻り、かつ保持液チャンバからの流体の少なくとも一部は、濾過液チャンバへ流れ込むように(かつ、好ましくは、濾過液チャンバからの流体の一部は、リアクタチャンバへ流れ込むように)、ダイアフラムポンプにより加えられる力の方向を反転させるステップと、
(3)ステップ(1)およびステップ(2)を少なくとも1回反復するステップであって、保持液チャンバから排出される流体は、最適には、無血清培養培地等の膜細孔を湿すことができる溶液であり、かつ保持液チャンバ、濾過液チャンバ、リアクタチャンバおよびダイアフラムポンプは、同じ密閉式濾過システムの一部であるステップ(好ましくは、密閉式濾過システムは、本明細書において先の一般的態様または第2の態様に記述されている)とが含まれる。
【0046】
プロセスに関する先の、および後の記述において、流体がバリアの一部分を一方向に横切るという事実は、バリアの別の部分における流体の逆方向への流れを排除するものではなく、実際にはこれに関連することが多い。この作用により、膜細孔は、完全に湿され、
かつフィルタの指定された流動速度が達成される。膜がATF作用により湿されると、流体をポンプポートから捨てることができ、デバイスは、バイオリアクタに取り付けられれば、いつでもATFを実行することができる。
【0047】
濾過液リザーバを備えるシステムに適用可能な密閉式濾過システムのプロセスの一変形例において、本プロセスは、以下のステップ、即ち、
(1)流体を保持液チャンバから流体コネクタを介して容器へ排出し、よって、前記排出の間、前記流体の一部は、選択透過性バリアを介して保持液チャンバから濾過液チャンバ内へ方向づけられ、濾過液チャンバ内へ方向づけられた前記流体の一部は、濾過液チャンバ壁内の開口を介して濾過液リザーバへ方向づけられ、かつ濾過液チャンバ内へ方向づけられた前記流体の一部は、選択バリアを介してリアクタチャンバ内へ方向づけられるステップであって、前記排出は、保持液チャンバへ連結されるダイアフラムポンプにより流体コネクタから遠位の位置に加えられる力に起因するステップと、
(2)容器からの流体の少なくとも一部は、保持液チャンバへ流れて戻り、保持液チャンバからの流体の少なくとも一部は、濾過液チャンバへ流れ込み、濾過液チャンバからの流体の少なくとも一部は、濾過液リザーバへ流れ込むように、ダイアフラムポンプにより加えられる力の方向を反転させるステップと、
(3)ステップ(1)およびステップ(2)を少なくとも1回反復するステップであって、保持液チャンバから排出される流体は、懸濁液および溶液より成るグループから選択され、かつ保持液チャンバ、濾過液チャンバ、リアクタチャンバおよびダイアフラムポンプは、同じ濾過液リザーバシステムの一部であるステップ(好ましくは、濾過液リザーバシステムは、本明細書において先に記述されている)とを含む。
【0048】
図6Aは、流体コネクタ3を介して、処理されるべき流体材料または保持液9を含むプロセスまたは細胞培養容器2へ連結される密閉式流体濾過システム1を示す。流体濾過システム1は、少なくとも2つのチャンバ、即ち、濾過されていない材料をファイバルーメンの内側に閉じ込める保持液チャンバ45と、フィルタハウジング5内の濾過液チャンバ10とを含む。
【0049】
流体濾過システム1は、新規使い捨てATFハウジングおよびポンプユニットである。概して、これらのユニットは、フィルタハウジング5によって囲まれ、フィルタハウジング5の形状、サイズまたは配向は、システムを囲むために必要に応じて変更されてもよい。フィルタハウジング5は、ポリカーボネートまたはポリスルホン等の固体ポリマー、可撓性または弾性材料、ガラス充填ポリマー、または本明細書に記述しているような強度、無毒性、および滅菌適性の要件を満たす他の任意の材料または複合材料を含む、様々な材料から構成されてもよい。流体濾過システムは、流体コネクタ3を介してプロセスまたは細胞培養容器2へ連結される。
【0050】
プロセス容器2は、流体の処理に適する如何なる容器であってもよい。例えば、これは、バイオリアクタ、循環系(例えば、ヒトまたは動物である患者または被験者の)または液体を含有し得る、タンク、バッグ、フラスコおよびこれらに類似するものを非排他的に含む他の任意の容器であってもよい。プロセス容器2は、合成ポリマー、ステンレス鋼等の不活性金属、ガラス、他を含む任意の適切な材料または材料の組合せで構成されてもよく、剛性、可撓性または弾性材料またはこれらの組合せを排除しないものとし、また、このような材料は、それがプロセス容器となる限り、形状、サイズまたは構成を限定されるべきではない。プロセス容器2は、接近性に関して限定されず、即ち、容器の内容物を追加または除去できるように改変されてもよい。例えば、ラインまたはチューブ36および39は、プロセス容器2の内容物の追加または除去を、例えばこのような追加または除去を制御するためのポンプ14を用いて実行するために使用されることが可能である。このようなプロセス容器は、あらゆるサイズおよび構成で市販されていて、当業者には周知で
ある。
【0051】
流体コネクタ3は、流体をプロセス容器2から流体交換ポート35を介して、保持液チャンバ45の入口端にも対応するフィルタエレメント11の入口端42へ方向づける働きをする。入口端42は、保持液チャンバ45への入口として機能する一方で、保持液のリザーバとしても機能してもよく、その形状および位置合わせは、必要に応じて変更されてもよく、その容積は、ダイアフラムポンプの押しのけ容積に略等しいか、それより少なくてもよく、入口端42(リザーバ)とポンプとの間を円滑にし、かつさらに、より高いレベルの保持液濃縮および最終濃縮物の回収を促進する。
【0052】
流体の流れは、フィルタチャネル17を介してさらに方向づけられるが、フィルタエレメント11が中空糸フィルタに対応する場合、フィルタチャネル17は、中空糸フィルタのルーメン内部に対応する。フィルタチャネルは、集合的に、流体濾過システム1の保持液チャンバ45に対応する。一方向において、流体の流れは、フィルタエレメント11の出口端43へ進みかつここから出る。フィルタエレメント11および保持液チャンバ45の双方の出口端43は、ダイアフラムポンプ4の液体受入れチャンバ7へ直に連結する。あるいは、フィルタの出口端43は、ダイアフラムポンプ4へ導管(ここでは不図示)を介して連結されてもよい。
【0053】
本明細書に記述しているようなATFダイアフラムポンプ4は、フィルタエレメント11を介してプロセス容器2との間にポンプへ戻る流れを生成する。先に述べたように、ATFダイアフラムポンプ4は、好ましくは、内部ダイアフラム6によって駆動チャンバ8(第1の内部チャンバ)と液体受入れチャンバ7(第2の内部チャンバ)に分離されるポンプハウジングを備える。ポンプハウジングは、第1のポンプ・ハウジング・コンポーネント25および第2のポンプ・ハウジング・コンポーネント24の2つのハウジングコンポーネントで作られる。これらのコンポーネントは、各々周辺フランジ26および27を備える。駆動チャンバ8内の圧力は、液体受入れチャンバ7内の流体内容物の汚染を引き起こすことなく、ダイアフラムポンプ4内のダイアフラムを駆動する。
【0054】
例えば、ポンプは、空気駆動ポンプであってもよい。圧縮空気は、コントローラ54により、ライン(チューブ)21を介して、好ましくは滅菌フィルタ22および空気入口ポート23を介して、駆動チャンバ8へ方向づけられる。駆動チャンバ8内の空気圧がプロセス容器2よりも増加すると、可撓性内部ダイアフラム6が液体受入れチャンバ7内へ駆動され、そのチャンバ内の液体がフィルタエレメント11を介して容器2へ駆動される。プロセス容器2からダイアフラムポンプ4への逆流は、駆動チャンバ8内の圧力を容器2よりも下げることによって発生される。このサイクルが、繰り返される。このようなポンプにより発生される交互の流れは、米国特許第6,544,424号明細書に記述されている。
【0055】
フィルタエレメント11は、カートリッジの長さに沿ってカートリッジ入口端からカートリッジ出口端まで平行に延びる複数の中空糸(HF)を備えるカートリッジとして作られる。中空糸のセグメントは、中空糸カートリッジの製造業者には一般的な方法によって、カートリッジの両端で外的にポッティングされ、中空糸は、有孔壁19によって囲まれ、有孔壁19は、次に、Oリングまたは他の手段を介して外部ハウジングに密封される。ポッティング化合物の例は、エポキシおよびポリウレタンである。その結果、穿孔されたカートリッジ壁19のポッティングされた両端と、HFのフィルタチャネル17とによって境界をつけられたチャンバが存在する。このチャンバは、本発明のための濾過液チャンバの一セグメントである。しかしながら、説明を目的として、イントラルミナール空間は、集合的に、本システムの各々において保持液チャンバを構成するものとされる。あるいは、糸膜は、外側のフィルタハウジング5に直にポッティングされることが可能である。
【0056】
システム1からの収穫は、収穫ポート12へ連結されるライン13を介して収集され、収穫ポート12は、流体がポンプ14を介してシステム1から出られるように、フィルタハウジング5およびそのラインからの流体の流れを可能にする。
【0057】
図示されている中空糸フィルタのルーメン(中空糸)の壁に対応するフィルタチャネル17は、選択透過性であり、便宜的には、システムの説明において参照される選択透過性の壁を提供する。フィルタカートリッジの外壁(カートリッジ壁)19は、収穫ポート12への流体の流れを可能にするために穿孔される。
【0058】
実施例
次の実施例において、本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するものではない。
【0059】
流体濾過システム1のダイアフラムポンプ6内の圧力に耐えることができる使い捨てクランプを製造するためには、様々な試験および実験手順が必要であった。
【0060】
実施例1-ポンプ半球体の圧力試験
ポンプ半球体の試験装置55の設計を
図7に示す。設計は、シリコーン・ポンプ・ダイアフラムを圧縮した状態で保持するために用いる方法に関して、ステンレス鋼製の標準ポンプとは異なっていた。フランジを様々な取付け方法で互いに固定できるように、ポンプの両半分にシリコーンダイアフラムより外側のフラットフランジを追加し、かつ過剰圧縮を防止するために、一方のポンプ半分に小型の「シェルフ」機能を包含した。また、アセンブリには、Instron(登録商標)マシンによる故障試験(異なる取付け方法の強度分析用)を可能にするために大きい鋼製アイフックおよび鋼製タイダウンフックを取り付けられるようにする穴があった。
【0061】
ポンプ半球体を、本明細書に記述しているような溶剤溶接、UV硬化接着、およびねじ、クランプまたは円形リングクランプを用いる機械的締結等の異なる取付け方法で組み立てた後、ダイアフラムシールが漏れるまで空気側半球体を加圧した。ダイアフラムを適正に圧縮して良好な接着力を得るためには、OPUSパッキング・スタンド・リニア・アクチュエータからの力を局在化する必要があった。ポンプの上下半分に対して、これは、大口径のアクリルチューブを用いて実現した。外縁に局在化された力を提供するために、複数のバイスクランプを用いて2つのポンプを接着した。さらに、一方のユニットには、ポンプの外側部分に等間隔で配置した8個の1/4インチ-20ポリカーボネートねじをそのUV接着の間に使用し、別のユニットには、UV接着に加えてこれらのねじ16個を使用した。これらのユニットを、破損点まで段階的に、数分毎に5PSI増加して加圧した。
【0062】
ポンプ半球体の圧力試験では、当初予期していたものより遙かに大きい力を扱っていることが明らかになった。例えば、45PSIで動作するATF10システムは、最大13,500lbfに耐えなければならない。UV硬化接着剤で接着され、16個のポリカーボネートファスナとボルト止めされた半球体は、45PSIで極端に激しく破損した。これは、空中に3フィート(91.4cm)飛び、実際のところ、頭のつぶれたポリカーボネートねじの代わりに用いたステンレス鋼ボルトが曲がった。破壊圧力の結果は、下表1の通りである。
【0063】
【0064】
このように、上下半球形ポンプチャンバを互いに固定するためのこれら全ての異なる取付け方法のうちで、漏れ防止シールを55PSIまで保持することに成功したものは、本明細書に記述しているクランプ・リング・システムのみであった。クランプリングは、最大量の圧力に耐えたが、さらに多くのトルクを加えてより大きい圧力抵抗を提供することもできたはずであり、よって、最大限のてこ入れを得るための明確なレンチ設計を開発した。
【0065】
実施例2-無血清培地をフラッシュ溶液として用いる使い捨てATFデバイスの作製および膜湿しを達成するためのATFデバイスの作動
図6Bを参照して、以下、ATF技術を用いて中空糸膜を迅速かつ効率的に洗い流すように設計される手順について述べる。このフラッシングは、内毒素を湿らせ、調整し、低下させることにより、かつ膜から全ての有機化合物(TOC)を除去することにより、ユーザに利益をもたらす。ATFの使用は、必要な容積が少なくなり、密閉式滅菌システム内で、細胞培養増殖に適合しない溶液を用いることなく容易に実行できるという理由で、他の方法より効果的である。様々なサイズの使い捨てATFデバイスのATFランレートを記載する。
【0066】
手順
1.「T」チュービングセットをフィード401、保持液402および上部透過ポート403へ連結する。上部透過ポートは、例えば
図1に示されているような上部ポート102であってもよい。
【0067】
2.湿潤剤を入れたリザーバをポート401からの「T」に取り付ける。
3.容器をポート402からの「T」に取り付ける。
【0068】
4.ポート402で「T」からの収集バッグを取り付ける。
5.ポート402からのバッグが湿潤剤に出合うまで、ポート401からのATFをポ
ンプで充填する。
【0069】
6.表1に示すレートでATF運転を開始する。
【0070】
【0071】
7.1平方メートル当たり毎時5.7リットル(LMH)でポート403から収穫しかつポート401から供給することにより1時間フラッシュする。
【0072】
8.保持流体は、それがバイオリアクタ培地と同じであればデバイスに残されてもよく、そうでなければ、ポート401から排出されて細胞培養産生操作の前にバイオリアクタからの培地で再充填されてもよい。
【0073】
実施例3-フィルタ完全性試験用に調整されたATF使い捨てデバイスの使用
同じく
図6Bを参照すると、フィルタ完全性試験は、中空糸膜が無傷であって、膜細孔が完全に湿っていることを保証するための一手段である。ATFモードでフラッシングした後、湿潤流体(培地)を湿潤流体バッグへ、重力によって、またはポンプP2を反転させて空気源を1~2psiまで開放し、ダイアフラムを持ち上げかつ他のバルブを全て開放することによって、戻す。バッグは、排出を可能にするように位置合わせされなければならない。
【0074】
排水後、空気源バルブを閉じて、ダイアフラムに加わる圧力を解放する。次に、湿潤剤バッグとポート401との間に位置決めされるバルブと、保持液ポート402へ連結されたラインに沿ったバルブを閉じて、ポンプP1からチュービングを取り外す。空気圧源を用いて、フィルタの供給側をゆっくりと加圧する。フィルタと空気圧源との間のバルブを閉じて、経時的に圧減衰を計時する。これを、空気流と相関する。減衰試験の間、ポート403を介して収集バッグへ連結されたバルブは開いている。場合により、このラインに流量計が追加される可能性もあり、この場合、圧力源は開放されたままであって、空気流の完全性が測定される。
【0075】
この後、無菌状態を保持するために、チュービング溶接機またはバルブ/クランプまたは他の手段を用いて、フラッシュ/完全性バッグのセットアップを外す。
【0076】
実施例4-ダイアフラム寿命試験のためのC410コントローラによるSU-ATFの作動
0.2μmスペクトルPESフィルタを有する使い捨てATF6をRepligen C410コントローラへ連結した。A2B連結部を40℃水槽へ連結し、毎分17.2リットル(LPM)のATFレートで500,000回の圧力サイクルおよび500,000回の排出サイクルを実行した。透過液を、灌流プロセスで使用されることになるという理由で、作動を可能な限りバイオリアクタ状態と同様に保つように、5.7LMHで引き抜いた。これにより、1日当たり約10,000回の圧力サイクルおよび10,000回
の排出サイクルが生じる。ダイアフラムの押しのけ容積を監視しながら、ATFを50日間実行した。50日間の作動全体を通じて、押しのけ容積は一定を保ち、予測通り一定の流量が保持された。
【0077】
実施例5-SU-ATF2を含むCHO灌流バイオリアクタにおけるモノクローナル抗体の産生
本開示のATFフィルタを用いて培養した細胞について行った試験の結果を
図8および9に示す。モノクローナル抗体産生CHO細胞灌流プロセスにおいて、ガンマ線を照射した無菌suATF2フィルタ(表面積0.13m
2の0.2μmポリエーテルスルホンマイクロフィルタ)を試験した。ガンマ滅菌プロセスの後、滅菌GE Readymate(登録商標)コネクタを用いて、suATF2フィルタを5.0Lベンチ・スケール・バイオリアクタ(作業容量1.5L)へ連結した。C24Uv2.5 ATFコントローラを用いて、suATF2フィルタを作動させた。接種の前に、suATF2フィルタを、バイオリアクタに含まれる1.5LのCD optiCHO(登録商標)増殖培地(Thermo Fisher)により0.9LPMのATFレートで1時間、バイオリアクタ内を再循環する12.4LPM(フラックス5.7LMH)の透過レートでフラッシュした。フィルタを培地で洗い流し、フィルタを湿らせて内毒素レベルを0.25EU/mL未満に下げた。
【0078】
このプロセスの後、ATFポンプを一時的に停止し、フラッシュされた培地をバイオリアクタおよびsuATF2フィルタから無菌式に廃棄した。A2B(ATFからバイオリアクタへの)連結部をクランプし、4mM Gluta MAX(登録商標)(Thermo Fisher)および100ng/mL LONG(登録商標)R3IGF-I(Repligen)が補給された1.5Lの新鮮なCD optiCHO(登録商標)増殖培地(Thermo Fisher)をバイオリアクタへ添加した。培地を37℃に温めた後、CHO DP-12クローン#1934 LR3適応細胞(ATCC由来、組換えヒト抗-IL-8を発現する)を5.5E5細胞/mLの播種密度で接種した。
【0079】
実行を通じて、バイオリアクタを37℃に保持した。pHは、0.1N NaOHおよびCO2を用いて4日目まで7.2±0.4の不感帯において制御し、次に、6.8±0.1の不感帯で制御した。DOは、L-スパージャまたはミクロンスパージャの何れかにより、純酸素を用いて40%に保持した。給気およびCO2除去のために、L-スパージャを用いて空気を連続的に散布した。発泡を制御しかつグルコースレベルを1g/Lより上に保持するために、必要に応じて消泡剤Cおよびグルコースフィードを添加した。バイオリアクタを4日目までバッチモードで作動させ、4日目に、1日当たり1容積容器またはVVD(1.5L/日の灌流速度)で灌流を開始した。灌流速度は、手動で、5日目に2VVD(3L/日)へ、かつ6日目に2.5VVD(3.75L/日)へと、灌流の実行終了まで段階的に増加させた。以下に示すATF2灌流バイオリアクタデータは、0日目から10日目までのものである(バイオリアクタプロセスは、未だ進行中である)。
【0080】
経時的な生存細胞濃度および生存パーセントの結果を
図8に示す(各々、中実および白の四角形で示す)。経時的な収穫ラインのタンパク質濃度プロファイルおよび合計タンパク質濃度を
図9に示す。
【0081】
他の実施形態
本発明を、その詳細な説明に関連して記述したが、上述の説明は、例示のためのものであって、発明の範囲を限定する意図はなく、発明の範囲が添付の特許請求の範囲によって定義されることは、理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲に含まれる。