(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】エレベータ装置、および、エレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20231010BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B66B5/02 M
B66B1/34 A
(21)【出願番号】P 2022130359
(22)【出願日】2022-08-18
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真仁田 智
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142673(JP,A)
【文献】特開2019-108203(JP,A)
【文献】特開2014-122079(JP,A)
【文献】特開2001-240335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電等の商用電源遮断時にエレベータ主回路の直流部に接続された蓄電池からモータに電力を供給可能な主回路構成と、前記モータで発生する回生エネルギーを消費する回生抵抗回路と、停電運転開始前に乗りカゴとカウンターウェイトの荷重を比較し、前記乗りカゴの方が重ければ下方向、前記カウンターウェイトの方が重ければ上方向に運転方向を決定して停電運転を行うエレベータ制御装置と、を備えるエレベータ装置において、
停電運転時に、前記蓄電池から前記モータへ力行エネルギーを供給する一方向性の第1の回路と、
前記モータから発生する回生エネルギーを前記蓄電池に回収する一方向性の第2の回路と、
停電運転開始後に、予め設定した下限速度まで前記乗りカゴを加速させ、前記下限速度で運転した状態で前記蓄電池の充電電流を検出した場合に回生モードと判定し、回生モードと判定したとき、前記下限速度から再加速させ、前記蓄電池の充電電流が最大ピークに達した時点で回生電力最大点とみなし、再加速を終了して、そのときの運転速度を維持する速度指令生成手段と、を備えるエレベータ装置。
【請求項2】
前記速度指令生成手段は、前記乗りカゴの再加速中に、運転速度が予め設定した上限速度に達した時点で再加速を終了して、前記運転速度を前記上限速度で維持する、請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記第2の回路に配置され、前記蓄電池への充電電流の大きさを調整可能な蓄電池充電用コンバータと、
前記乗りカゴの再加速中に、前記蓄電池の充電電流が予め設定した上限電流値に達した時点で、前記蓄電池充電用コンバータを制御して、上限電流値で維持するように前記充電電流を調整するコンバータ操作手段と、さらに備え、
前記速度指令生成手段は、前記乗りカゴの再加速中に、前記蓄電池の充電電流が予め設定した上限電流値に達した時点で、前記乗りカゴの再加速を終了して、その時の運転速度を維持し、
前記エレベータ制御装置は、前記蓄電池に回収できない回生エネルギーを回生抵抗によって熱消費させる、請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記速度指令生成手段は、停電運転開始後に、予め設定した下限速度まで前記乗りカゴを加速させ、前記下限速度で運転した状態で前記蓄電池の充電電流を検出しなかった場合に力行モードと判定し、力行モードと判定したとき、前記乗りカゴの再加速を実施せずに、前記運転速度を前記下限速度で維持する、請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
停電等の商用電源遮断時にエレベータ主回路の直流部に接続された蓄電池からモータに電力を供給可能な主回路構成と、前記モータで発生する回生エネルギーを消費する回生抵抗回路と、停電運転開始前に乗りカゴとカウンターウェイトの荷重を比較し、前記乗りカゴの方が重ければ下方向、前記カウンターウェイトの方が重ければ上方向に運転方向を決定して停電運転を行うエレベータ制御装置と、停電運転時に、前記蓄電池から前記モータへ力行エネルギーを供給する一方向性の第1の回路と、前記モータから発生する回生エネルギーを前記蓄電池に回収する一方向性の第2の回路と、前記第2の回路に配置され、前記蓄電池の充電電流を測定する充電電流測定手段と、速度指令生成手段と、を備えるエレベータ装置におけるエレベータ制御方法であって、
前記速度指令生成手段が、停電運転開始後に、予め設定した下限速度まで前記乗りカゴを加速させ、前記下限速度で運転した状態で前記蓄電池の充電電流を検出した場合に回生モードと判定し、回生モードと判定したとき、前記下限速度から再加速させ、前記蓄電池の充電電流が最大ピークに達した時点で回生電力最大点とみなし、再加速を終了して、そのときの運転速度を維持する速度指令生成ステップを含むエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置、および、エレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの停電運転において、蓄電池の電力消費や負荷を軽減するため、停電運転開始前に乗りカゴとカウンターウェイトの荷重を比較し、乗りカゴの方が重ければ下方向、カウンターウェイトの方が重ければ上方向に、というように荷重条件によって運転方向を決定し、基本的に回生方向への停電運転を行う。
【0003】
特に、高昇降行程で急行ゾーンを有するようなエレベータでは、停電運転時間が長くなることにより、途中で蓄電池容量切れを起こし、乗客の閉じ込めが発生する可能性が高くなってしまう。そのため、停電運転時にモータが発生する回生エネルギーを有効利用することが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-49449号公報
【文献】特開2001-240320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、停電運転時にモータが発生する回生エネルギーは、主回路直流部電圧が既定電圧以上となった場合の回生抵抗への通電により発生する熱として消費されていたため、有効利用されていなかった。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、停電運転時に発生する回生エネルギーを有効利用することができるエレベータ装置、および、エレベータ制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレベータ装置は、停電等の商用電源遮断時にエレベータ主回路の直流部に接続された蓄電池からモータに電力を供給可能な主回路構成と、前記モータで発生する回生エネルギーを消費する回生抵抗回路と、停電運転開始前に乗りカゴとカウンターウェイトの荷重を比較し、前記乗りカゴの方が重ければ下方向、前記カウンターウェイトの方が重ければ上方向に運転方向を決定して停電運転を行うエレベータ制御装置と、を備えるエレベータ装置において、停電運転時に、前記蓄電池から前記モータへ力行エネルギーを供給する一方向性の第1の回路と、前記モータから発生する回生エネルギーを前記蓄電池に回収する一方向性の第2の回路と、停電運転開始後に、予め設定した下限速度まで前記乗りカゴを加速させ、前記下限速度で運転した状態で前記蓄電池の充電電流を検出した場合に回生モードと判定し、回生モードと判定したとき、前記下限速度から再加速させ、前記蓄電池の充電電流が最大ピークに達した時点で回生電力最大点とみなし、再加速を終了して、そのときの運転速度を維持する速度指令生成手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態(回生電力を最大化する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態(速度超過を防止する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態(蓄電池の充電過電流を防止する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態(力行となる停電運転)における制御シーケンスを示した図である。
【
図8】
図8は、従来技術における停電運転に関係するシステム構成を示した図である。
【
図9】
図9は、従来技術の停電運転における制御シーケンスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を用いて、本発明のエレベータ装置、および、エレベータ制御方法の実施形態(第1の実施形態~第4の実施形態)について説明する。実施形態の理解を容易にするために、まず、従来技術についてあらためて説明する。
【0010】
(従来技術)
図8は、従来技術における停電運転に関係するシステム構成を示した図である。
図9は、従来技術の停電運転における制御シーケンスを示した図である。
図9では、各波形は乗りカゴ30とカウンターウェイト31の荷重アンバランスが大きい場合を想定した代表波形を示す。
【0011】
停電等により商用電源10が遮断すると、エレベータ制御盤50は停電を検知する。そして、乗りカゴ30を停電運転定格速度で移動させるために(
図9(a))モータ17が制動によって発電機として動作して回生エネルギーを発生させるとき、エレベータ制御盤50は、Q7ゲート信号を出力することで回生抵抗用スイッチング素子15をオンし(
図9(d))、回生抵抗14により回生エネルギーを熱消費させる(
図9(b)の符号E)。このように、従来技術では、回生エネルギーを用いて蓄電池20を充電する機構がなく、停電運転時に発生する回生エネルギーを有効利用できていなかった。
【0012】
そこで、以下では、停電運転時に発生する回生エネルギーを有効利用することができる技術について説明する。なお、第2の実施形態以降では、それまでの実施形態と同様の事項についての説明を適宜省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、最大の回生電力が得られる速度を維持しながら、その得られた回生エネルギーを蓄電池に充電することにより、回生エネルギーの有効利用を実現できる停電運転の制御方法について説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態(回生電力を最大化する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。なお、
図1において、各構成同士を接続する線(矢印を含む。)は主な接続関係を示したもので、線のない部分で各構成同士が接続されている場合もある(
図3、
図5も同様)。
【0015】
また、
図2は、第1の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
図2では、各波形は荷重アンバランスが大きい場合を想定した代表波形を示す。また、
図2において、(a)は乗りカゴ30の速度、(b)はモータ17の電力、(c)は蓄電池20の充電電流検出値、(d)は停電時主回路接点21の状態(オン/オフ)を示す。
【0016】
エレベータ装置100は、
図1に示す各構成を備える。エレベータ装置100において、停電等により商用電源10が遮断すると、エレベータ制御盤50(エレベータ制御装置)は停電を検知し、停電運転信号60を出力する。停電運転信号60によって停電時主回路接点21が閉じ、蓄電池20とモータ主回路が接続される。これにより、モータ17が電力を必要とするとき(力行モード)は、蓄電池20→停電時主回路接点21→蓄電池放電用ダイオード12→インバータ16→モータ17、という経路でモータ17に電力を供給する。なお、蓄電池20からモータ17へ力行エネルギーを供給する一方向性の回路を、第1の回路とも称する。
【0017】
また、制動によりモータ17が発電機として動作して回生エネルギーが発生するとき(回生モード)は、モータ17→インバータ16→蓄電池充電用ダイオード22→蓄電池充電電流センサ23(充電電流測定手段)→停電時主回路接点21→蓄電池20、という経路で電力を回収する。なお、モータ17から発生する回生エネルギーを蓄電池20に回収する一方向性の回路を、第2の回路とも称する。
【0018】
上記のように力行モード時と回生モード時の電流経路を異ならせることで、回生電流のみ流れる経路を得られるため、蓄電池充電電流センサ23においてスイッチングノイズ等の影響を受けにくくなり、後ほど説明する回生・力行モード判定(
図2のS14)を精度良く実施できる。
【0019】
停電検出後、エレベータ制御盤50は、乗りカゴ30とカウンターウェイト31の荷重を比較し、乗りカゴ30の方が重ければ下方向、カウンターウェイト31の方が重ければ上方向に、停電運転方向を決定し、吊り合い制御を開始する(S11)。ここまでは従来技術の制御方式と同様である。以下、本実施形態の制御方式である。
【0020】
停電時速度指令生成部51(速度指令生成手段)は、予め下限速度記憶部52に記憶された下限速度設定値62まで加速するように、停電運転速度指令値63を出力する。エレベータ制御盤50は運転を開始し(S12)、停電運転速度指令値63と速度フィードバック信号70を比較し、上記のように決定した停電運転方向に、下限速度設定値62の速度で運転するようにインバータ16を制御する(S13)。下限速度設定値62は、例えば比較的低い速度とする。
【0021】
このとき、蓄電池充電電流センサ23から得られる蓄電池充電電流検出値61がゼロでなければ、蓄電池20に充電電流が流れ込んでいると判定できるため、停電時速度指令生成部51は回生モードと判定する(S14)。なお、蓄電池充電電流検出値61がゼロの場合については、第4の実施形態で後述する。
【0022】
回生モードと判定した場合、停電時速度指令生成部51は、停電運転速度指令値63を再び緩やかに増加させ、徐々に乗りカゴ30を再加速させる(S15)。停電時速度指令生成部51は、再加速中は蓄電池充電電流検出値61の値を常に監視し、この値が最大ピークに達した時、すなわち、加速するにつれて蓄電池充電電流検出値61が増加方向から減少方向に転じた時(S16)、ここを回生電力最大点とみなし、再加速を終了し、その速度を維持する(S17)。
【0023】
減速開始(S18)以降は従来通り、エレベータ制御盤50が生成する停電運転時の減速パターンに沿って運転し、着床後に停電運転終了(S19)となる。
【0024】
このように、第1の実施形態における制御方法によれば、停電運転時に発生する回生エネルギーを最大限取り出すことができ、回生エネルギー(
図2(b)の符号E)を蓄電池20に回収することで有効利用し、停電時のバックアップ時間向上が期待できる。また、途中で蓄電池容量切れを起こし、階間や中間階での乗客の閉じ込めが発生する可能性を低減できる。
【0025】
また、上記の制御に伴い、停電時の運転速度が上昇するため、乗りカゴ30とカウンターウェイト31の荷重差(荷重アンバランス)の大きさに依存するものの、従来に比べて救出時間の短縮を実現できる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、速度超過となる危険性を防止のため、予め上限速度を設けた場合の保護制御方法に関する。
【0027】
図3は、第2の実施形態(速度超過を防止する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。
図4は、第2の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
図4では、各波形は荷重アンバランスが大きい場合を想定した代表波形を示す。
【0028】
基本的なシステム構成及び制御方法は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と異なる部分を中心に以下説明する。
図3では、
図1に対して、上限速度記憶部53が追加されている。
【0029】
停電運転において、停電時速度指令生成部51は、回生モードと判定した場合、停電運転速度指令値63を再び緩やかに増加させ、徐々に乗りカゴ30を再加速させる(S15)。ここまでは、第1の実施形態と同様である。
【0030】
第1の実施形態では、この後、蓄電池充電電流検出値61が最大ピークになるまで再加速を続けるが、最大の回生電力を得られるときの速度がかなり高速になる場合、再加速中に速度超過となる危険性がある。
【0031】
これを回避するため、第2の実施形態では、予め上限速度記憶部53に記憶された上限速度設定値64に速度が達した場合は、再加速を終了し、以降この時の速度を維持する(S20)。上限速度設定値64は、例えば、停電時でも安全に運転できる範囲で最高の速度とする。
【0032】
減速時(S18)以降は第1の実施形態と同様、エレベータ制御盤50が生成する停電運転時の減速パターンに沿って運転し、着床後に停電運転終了(S19)となる。
【0033】
このように、第2の実施形態によれば、本来の回生電力最大点の速度よりも小さい速度での運転となるが、速度超過を回避し、安全に停電運転を継続できる。また、第1の実施形態と同様に、停電運転時に発生する回生エネルギー(
図4(b)の符号E)を蓄電池20に回収することで有効利用でき、停電時のバックアップ時間向上等が期待できる。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態と比較して、蓄電池20への充電電流が過大になることを防止するため、予め充電上限電流値を設けた場合の保護制御方法に関する。
【0035】
図5は、第3の実施形態(蓄電池の充電過電流を防止する停電運転)におけるシステム構成を示した図である。
図6は、第3の実施形態における制御シーケンスを示した図である。
図6では、各波形は荷重アンバランスが大きい場合を想定した代表波形を示す。なお、
図6において、(e)は蓄電池充電用コンバータ24の状態(オン/オフ、スイッチング)、(f)は回生抵抗用スイッチング素子15の状態(オン/オフ、スイッチング)を示す。
【0036】
基本的なシステム構成及び制御方法は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と異なる部分を中心に以下説明する。
図5では、
図1に対して、上限速度記憶部53、充電電流比較部54、充電上限電流記憶部55、蓄電池充電用コンバータ操作部56、蓄電池充電用コンバータ24が追加されている。
【0037】
停電運転において、停電時速度指令生成部51は、回生モードと判定した場合、停電運転速度指令値63を再び緩やかに増加させ、徐々に乗りカゴ30を再加速させる(S15)。ここまでは、第1の実施形態と同様である。
【0038】
第1の実施形態では、この後、蓄電池充電電流検出値61が最大ピークになるまで再加速を続けるが、再加速中に蓄電池20の充電電流が過大となる危険性がある。
【0039】
第3の実施形態では、これを回避するため、予め充電上限電流記憶部55に記憶された充電上限電流設定値65と、蓄電池充電電流検出値61の大きさを充電電流比較部54にて比較し、その結果により蓄電池20への充電電流を制御する。充電上限電流設定値65は、例えば、適用する蓄電池20の推奨充電電流、または、蓄電池20が充電過電流とならない範囲で最大の電流値とする。
【0040】
充電上限電流設定値65>蓄電池充電電流検出値61の場合、充電電流が上限に達していないため、充電電流比較部54は、連続的にオンレベルの比較出力信号66を蓄電池充電用コンバータ操作部56に対し出力する。
【0041】
充電上限電流設定値65≦蓄電池充電電流検出値61の場合、充電電流が上限に達したため、充電電流比較部54は、充電上限電流設定値65の電流を維持するように、断続的(PWM)な比較出力信号66を蓄電池充電用コンバータ操作部56に対し出力し、充電電流のフィードバック制御を行う。
【0042】
蓄電池充電用コンバータ操作部56はAND回路であり、停電運転信号60と比較出力信号66が両者ともオンレベルの時、蓄電池充電用コンバータゲート信号67を出力し、蓄電池充電用コンバータ24内のスイッチング素子をオンする(
図6(e))。蓄電池充電用コンバータ24はスイッチング素子と平滑回路で構成される。また、蓄電池充電電流検出値61が充電上限電流設定値65に達した時点で再加速を終了し、以降この時の速度を維持する(S30)。
【0043】
この状態で運転中に、さらにモータ17から発生する回生電力が大きくなった場合、既に充電上限電流に達している蓄電池20では回生エネルギーを吸収しきれないため、主回路直流部電圧が上昇し過電圧となる可能性がある。
【0044】
これを回避するため、従来方式と同様、直流部電圧検出値72が既定値を超えた場合、エレベータ制御盤50は回生抵抗スイッチング素子ゲート信号73を出力することで回生抵抗用スイッチング素子15をオンし(
図6(f))、回生抵抗14により回生エネルギーを熱消費させ、主回路直流部電圧の上昇を抑制する。
【0045】
減速時(S18)以降は第1の実施形態と同様、エレベータ制御盤50が生成する停電運転時の減速パターンに沿って運転し、着床後に停電運転終了(S19)となる。
【0046】
このように、第3の実施形態によれば、蓄電池20の充電による回生エネルギーの回収(
図6(b)の符号E2)と、回生抵抗による回生エネルギーの熱消費(
図6(b)の符号E1)を併用するため、一部、回生エネルギーのロスはあるが、主回路直流部の過電圧を回避し、安全に停電運転を継続できる。また、第1の実施形態と同様に、停電運転時に発生する回生エネルギーを蓄電池20に回収することで有効利用でき、停電時のバックアップ時間向上等が期待できる。
【0047】
なお、本実施形態は第2の実施形態と組み合わせることもできる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態と比較して、力行モードと判定した場合の制御方法に関する。
【0049】
図7は、第4の実施形態(力行となる停電運転)における制御シーケンスを示した図である。
図7では、各波形は荷重アンバランスが小さい場合を想定した代表波形を示す。
【0050】
基本的なシステム構成及び制御方法は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と異なる部分を中心に以下説明する。
【0051】
エレベータ運転開始後(S12)、下限速度設定値62の速度で運転する(S13)。このとき、蓄電池充電電流センサ23から得られる蓄電池充電電流検出値61がゼロであれば、蓄電池20に充電電流が流れ込んでいないため、停電時速度指令生成部51は、力行モードと判定する(S14)。
【0052】
力行モードと判定した場合、第1の実施形態のような再加速は実施せず、停電時速度指令生成部51は、そのまま下限速度を維持する(S40)。
【0053】
減速時(S18)以降は従来通り、エレベータ制御盤50が生成する停電運転時の減速パターンに沿って運転し、着床後に停電運転終了(S19)となる。
【0054】
このようにして、第4の実施形態によれば、必要最小限の速度で運転し、力行モードで余計な蓄電池電力を使用せずに停電運転を継続できる。
【0055】
なお、本実施形態は第2の実施形態や第3の実施形態と組み合わせることもできる。
【0056】
また、本実施形態のエレベータ装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0058】
例えば、第3の実施形態では、蓄電池20への充電電流の大きさに基づいて各種制御を実施したが、蓄電池20への充電電流の大きさだけでなく、例えば、さらに、蓄電池20のSOC(State of Charge)の大きさを各種制御に用いてもよい。具体的には、例えば、蓄電池20のSOCが満充電にある程度近いとき(例えば満充電の90%のとき)、蓄電池充電用コンバータ24をオフにして、それ以上、蓄電池20への充電を行わないようにしてもよい。
【0059】
また、上述の各実施形態において、乗りカゴ30がなるべく中間階に止まらないような運転制御を併用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…商用電源、11…コンバータ、12…蓄電池放電用ダイオード、13…平滑コンデンサ、14…回生抵抗、15…回生抵抗用スイッチング素子、16…インバータ、17…モータ、20…蓄電池、21…停電時主回路接点、22…蓄電池充電用ダイオード、23…蓄電池充電電流センサ、24…蓄電池充電用コンバータ、30…乗りカゴ、50…エレベータ制御盤、51…停電時速度指令生成部、52…下限速度記憶部、53…上限速度記憶部、54…充電電流比較部、55…充電上限電流記憶部、56…蓄電池充電用コンバータ操作部、100…エレベータ装置
【要約】
【課題】停電運転時に発生する回生エネルギーを有効利用する。
【解決手段】実施形態のエレベータ装置は、停電運転時に、蓄電池からモータへ力行エネルギーを供給する一方向性の第1の回路と、モータから発生する回生エネルギーを蓄電池に回収する一方向性の第2の回路と、停電運転開始後に、予め設定した下限速度まで乗りカゴを加速させ、下限速度で運転した状態で蓄電池の充電電流を検出した場合に回生モードと判定し、回生モードと判定したとき、下限速度から再加速させ、蓄電池の充電電流が最大ピークに達した時点で回生電力最大点とみなし、再加速を終了して、そのときの運転速度を維持する速度指令生成手段と、を備える。
【選択図】
図1