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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】腎機能測定のための組成物及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/20 20060101AFI20231010BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20231010BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231010BHJP
   C07D 241/28 20060101ALI20231010BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
A61B5/20
A61B10/00 U
A61B10/00 E
A61K49/00
C07D241/28 CSP
A61P13/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022155098
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2020504300の分割
【原出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2023009041
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】62/577,962
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517175301
【氏名又は名称】メディビーコン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デブレチェニー、マルティン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ラジャゴパラン、ラガヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ドーショー、リチャード・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン、ウィリアム・エル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース、トーマス・イー
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502706(JP,A)
【文献】特表2009-534396(JP,A)
【文献】特表2012-512258(JP,A)
【文献】特表2011-521899(JP,A)
【文献】特表平07-501000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303865(US,A1)
【文献】RAJAGOPALAN, Raghavan et al.,Hydrophilic Pyrazine Dyes as Exogenous Fluorescent Tracer Agents for Real-Time Point-of-Care Measurement of Glomerular Filtration Rate,Journal of Medicinal Chemistry,2011年06月13日,Vol. 54,pp. 5048-5058
【文献】ELLERY, Stacey J. et al.,Transcutaneous measurement of glomerular filtration rate in small rodents: through the skin for the win?,Nephrology,2015年03月,Vol.20, No.3,pp.117-123,<PMID: 25388805>, <DOI: 10.1111/nep.12363>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/20
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎糸球体濾過率(GFR)の測定を必要とする患者のリアルタイムGFRを測定するためのシステムであって、
コンピュータ装置と、
前記患者の皮膚に動作可能に接続され、かつ前記コンピュータ装置に動作可能に接続された1以上のセンサヘッドと、
前記患者に投与され、電磁放射線に暴露されたときにスペクトルエネルギーを放出するように構成された少なくとも1つのトレーサ剤であって、前記スペクトルエネルギーは前記1以上のセンサヘッドによって検出可能である、該少なくとも1つのトレーサ剤と、を含み、
前記コンピュータ装置は、測定時間ウィンドウにわたって前記トレーサ剤から放射された光の減少を、前記患者のGFRと相関させ、かつ前記測定時間ウィンドウにわたって腎クリアランスに関連する減衰パラメータを算出することによって、前記患者のGFRを測定し、
前記減衰パラメータは、前記患者の身体サイズについて正規化された前記GFRに直接相関する減衰速度定数であり、前記減衰速度定数は、指数関数を時間の関数として前記スペクトルエネルギーにフィッティングさせるか、または、線形関数を時間の関数として前記スペクトルエネルギーの対数にフィッティングさせることによって求められ、前記フィッティングは、血管空間と血管外身体空間との間での前記トレーサ剤の平衡後に開始されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記トレーサ剤は、下記の化学式Iの化合物であることを特徴とするシステム。
【化1】
式中、
及びXは、互いに独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、及び-CONH(PS)からなる群から選択され、
及びYは、互いに独立して、NR、及び
【化2】
からなる群から選択され、
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択され、
及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)H、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、
AAは、ペプチド結合またはアミド結合によって互いに結合された1以上の天然または非天然のアミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、AAの各々は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、
PSは、グリコシド結合によって互いに結合された1以上の単糖単位を含む硫化多糖鎖または非硫化多糖鎖であり、
aは、1~10の範囲の数であり、
cは、1~100の範囲の数であり、
m及びnは、互いに独立して、1~3の範囲の数である。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記トレーサ剤は、
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩であることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記身体サイズの評価基準は、体表面積であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、
前記身体サイズの評価基準は、前記トレーサ剤の分布容積であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記トレーサ剤の単回注射後に、前記減衰速度定数の複数回の測定が実施され、これにより、GFRモニタリングがリアルタイムで行われることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、
前記減衰速度定数を算出するために使用される前記測定時間ウィンドウは、前記1以上のセンサヘッドで測定された蛍光データに基づいて算出された品質評価基準にしたがって決定されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、
前記フィッティングを適用する前に、前記トレーサ剤の注入前に測定されたベースライン信号が蛍光データから差し引かれることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、
前記フィッティングを適用する前に、フィルタリングが蛍光データに適用されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項に記載のシステムであって、
前記品質評価基準は、信号及び/またはモデルフィッティング品質の評価基準、信号対ノイズ比、フィッティングの二乗平均平方根誤差、データとフィッティングとの間の相関係数、単一指数フィッティング及び二重指数フィッティングにより求められた減衰速度定数の差、同一患者の2つの異なる身体部位で求められた減衰速度定数の差、フィッティングされた減衰速度定数の推定誤差、複数の時間セグメントにわたってフィッティングさせた場合の減衰速度定数の変動係数、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、
前記指数関数または前記線形関数は、オフセット項を含むことを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムであって、
前記オフセット項が第1のフィッティングに加えられ、前記第1のフィッティングから推定された前記減衰速度定数が予め定められた閾値を超えた場合に第2のフィッティングが実行され、これにより、前記オフセット項の変更を可能にすることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、
信号の品質評価基準が、GFRを報告するか否かを決定するために使用されることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、
前記コンピュータ装置は、さらに
前記測定時間ウィンドウにわたって測定された前記スペクトルエネルギーに関連する品質評価基準を決定し、
前記品質評価基準を使用して、前記減衰パラメータが十分に正確であるかどうかを評価し、前記減衰パラメータが十分に正確でないと評価された場合には、前記品質評価基準が十分に正確であると評価されるまで、前記測定時間ウィンドウの時間長さを延長するように構成された、システム。
【請求項15】
請求項8に記載のシステムであって、
ベースラインの安定性を評価し、予め定められた閾値と比較し、前記ベースラインが十分に安定するまでGFR測定を行わないことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、患者の腎機能を評価するための、方法及びピラジン誘導体を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
急性腎不全(ARF)は、一般的な医療外科病院の入院患者における一般的疾患である。ARFを発症した患者の約半数は、ARFによって直接的に、または基礎疾患に関連する合併症によって死亡し、生存者は死亡率の著しい増加及び長期入院に直面する。腎不全はしばしば無症候性であり、一般的に、血液中の腎機能マーカーの注意深い追跡を必要とするので、早期診断が重要であると一般的に考えられている。患者の腎機能の動的モニタリングは、様々な臨床的、生理学的、及び病理学的状態によってもたらされる急性腎不全のリスクを最小限に抑えるために望ましい。重症患者の大部分は、死亡に至る可能性のある多臓器不全(MOF)のリスクに直面する傾向があるので、このような動的モニタリングは、重症患者の場合に特に重要な傾向がある。MOFは、肺、肝臓、及び腎臓の連続的不全であり、急性肺損傷(ALI)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、代謝亢進、低血圧、持続性の炎症性病巣、及び敗血症候群のうちの1以上によって誘発される。MOFに至る低血圧及びショックの一般的な組織学的特徴には、一般的に、組織の壊死、血管の鬱血、間質性または細胞性浮腫、出血、及び微小血栓が含まれる。これらの変化は一般的に、頻度の高い順に、肺、肝臓、腎臓、腸、副腎、脳、膵臓に対して影響を与える。外傷の初期段階から臨床的MOFへの移行は、一般的に、特定の程度の肝不全及び腎不全、並びに、死亡リスクの約30%~約50%の変化に対応する。
【0003】
従来、患者の腎機能は、患者の尿量及び血漿クレアチニン濃度の粗測定値を用いて決定されてきた。これらの値は、年齢、水分補給状態、腎灌流、筋肉量、食事摂取、及び他の様々な臨床的及び身体測定的変数の影響を受けるため、しばしば誤解を招く。加えて、試料採取から数時間後に得られた単一の値は、血圧、心拍出量、水分補給状態、及び他の特定の臨床イベント(例えば、出血、菌血、人工呼吸器の設定など)などの他の生理学的イベントと相関させることが困難である。
【0004】
慢性腎臓病(CKD)は、腎機能を経時的に徐々に失うことを特徴とする疾患である。CKDには、腎臓に障害を与え、患者の血流から老廃物を適切に除去する能力を低下させる疾患が含まれる。CKDの合併症には、高血圧、貧血(赤血球数減少)、骨脆弱性、栄養不良、神経損傷、心疾患のリスク増加などが含まれる。全米腎臓財団によると、CKDの全症例の約2/3が、糖尿病または高血圧に起因する。家族歴に加えて、腎臓病の他のリスク因子には、年齢、民族性、高血圧、糖尿病が含まれる。腎糸球体濾過率(GFR)は、腎機能のレベルを決定し、患者のCKDのステージ(病期)を評価するための最良の評価基準である。
【0005】
GFRは、CKDの病期を決定する腎機能レベルを求めるための重要な評価項目である。表1及び図28に示すようにGFRが低いほど、CKDの重症度はより高くなる。GFRは、血中クレアチニン濃度を測定する血液検査と他の因子との組み合わせに基づいて推定することができる。より正確な、すなわちより有用な方法は、内因性物質を患者に注射した後、所定の期間にわたって尿量を注意深くモニタリングすることを必要とする。これには、多くの場合、単独で腎障害を引き起こす恐れがある造影剤(CA)が使用される。放射性同位体またはヨウ素化芳香環は、GFR測定に使用されるCAの2つの一般的なカテゴリーである。
【0006】
【表1】
【0007】
造影剤誘発腎症(CIN)は、放射性同位体またはヨウ素化CAの使用に関連する重篤な合併症である。CINは、CAによって引き起こされる腎血管収縮または尿細管障害に起因すると考えられている。CINの定義は研究毎に異なるが、患者の症状に基づく最も一般的な定義としては、急性腎不全の他の原因が存在しない場合において、CAへの暴露から2~5日後に血清クレアチニンがベースラインから少なくとも25%増加することが挙げられる。CINは、これらの合併症の入院患者の最大20%で致死的となり得る。CKDが重度であるほど、CINのリスクが高くなる。したがって、正確なGFRデータを最も必要とする患者は、そのデータを取得するときに、時折死に至る合併症を発症するリスクが最も高い。
【0008】
従来の腎モニタリング方法に関して、患者の糸球体濾過率(GFR)の近似値は、(その名前が示すように)一般的に、約24時間の採尿、さらに数時間の分析、及び細心のベッドサイド収集技術を必要とする24時間採尿方法を用いて取得することができる。残念なことに、この従来の方法の望ましくない遅いタイミング及び著しく長い期間は、患者を効果的に治療する及び/または腎臓を救う可能性を低下させる恐れがある。このタイプの方法さらなる欠点として、繰り返しデータは、最初に取得されたデータと同様に取得に手間がかかる傾向がある。
【0009】
また、時折、患者の血清クレアチニンの変化を、患者の尿電解質及び浸透圧などの測定値、並びに「腎不全指数」及び/または「ナトリウムの分画排泄率」などの算出値に基づいて調節する必要がある。このような血清クレアチニンの調節は、不都合なことに、血清及び/または尿の追加試料の同時収集、並びに、多少遅れてさらなる計算を必要とする傾向がある。しばしば、薬物の投与は、腎機能に合わせて調節されるので、投与の基礎となる測定値及び計算値と同様に、不正確であり、時間がかかり、かつ、再評価が困難である。最後に、重症患者集団における臨床的意思決定は、正確さと同じくらいにタイミングが重要であることが多い。
【0010】
親水性のアニオン性物質は、一般に、腎臓によって排出可能であることが知られている。腎クリアランスは、一般的に、糸球体濾過及び尿細管分泌の2つの経路を介して行われる。尿細管分泌は能動輸送プロセスとして特徴付けることができ、したがって、この経路を介して除去される物質は、一般的に、サイズ、電荷及び親油性に関して特異的な特性を示す。
【0011】
腎臓を通過する物質の大部分は、糸球体(腎臓のマルピーギ小体中の小さな絡み合った毛細血管群)で濾過される。糸球体濾過を介して腎臓から排出することができる外因性物質(以下「GFR物質」と称する)の例を図1に示す。GFR物質の例としては、クレアチニン(1)、o-ヨードヒップラン(2)、及び99mTc-DTPA(3)が挙げられる。尿細管分泌によって腎クリアランスすることができる外因性物質の例としては、99mTc-MAG3(4)及び当技術分野で既知の他の物質が挙げられる。99mTc‐MAG3(4)は、ガンマシンチグラフィまたは腎血流測定による腎機能評価にも広く使用されている。図1に示した物質の1つの欠点として、o-ヨードヒップラン(2)、99mTc-DTPA(3)、及び99mTc-MAG3(4)は、それらの物質の検出を可能にするために、放射性同位体を含む。たとえ、放射性類似体(例えば、o-ヨードヒップラン(2)の類似体)、または他の非放射性物質を腎機能モニタリングに使用するとしても、そのようなモニタリングは、一般的に、これらの物質を励起するために、望ましくない紫外線放射の使用を必要とするであろう。
【0012】
腎モニタリングに使用するためのピラジン誘導体は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される特許文献1~10に開示されているものを含め、当該技術分野で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第8、155、000号明細書
【文献】米国特許第8、664、392号明細書
【文献】米国特許第8、697、033号明細書
【文献】米国特許第8、722、685号明細書
【文献】米国特許第8、778、309号明細書
【文献】米国特許第9、005、581号明細書
【文献】米国特許第9、114、160号明細書
【文献】米国特許第9、283、288号明細書
【文献】米国特許第9、376、399号明細書
【文献】米国特許第9、480、687号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、本明細書に開示されるのは、下記の化学式Iで表される化合物である。
【0015】
【化1】
【0016】
式中、
及びXは、互いに独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、及び-CONH(PS)からなる群から選択され、
及びYは、互いに独立して、NR、及び
【0017】
【化2】
【0018】
からなる群から選択され、
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択され、
及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)aH、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、
AAは、ペプチド結合またはアミド結合によって互いに結合された1以上の天然または非天然のアミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、AAの各々は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、
PSは、グリコシド結合によって互いに結合された1以上の単糖単位を含む硫化多糖鎖または非硫化多糖鎖であり、
aは、1~10の範囲の数であり、
cは、1~100の範囲の数であり、
m及びnは、互いに独立して、1~3の範囲の数である。
【0019】
別の態様では、本明細書に開示されているのは、腎糸球体濾過率(GFR)の測定を必要とする患者のGFRを測定するためのシステムである。このシステムは、コンピュータ装置と、コンピュータ装置に通信可能に接続された表示装置と、外部電源からのシステムの電気的絶縁を維持するべく、コンピュータ装置に動作可能に接続された電源と、コンピュータ装置に動作可能に接続された1以上のセンサヘッドと、電磁放射線に暴露されたときにスペクトルエネルギーを放出するように構成された少なくとも1つのトレーサ剤と、を含む。コンピュータ装置は、センサヘッドを動作及び制御し、センサヘッドから受信した1以上の測定値を記録し、測定値に基づき患者のGFRを算出するように構成される。1以上のセンサヘッドは、少なくとも1つの電磁放射線源を含み、かつ、電磁放射線を生成して放射し、トレーサ剤から放出されたスペクトルエネルギーを検出して測定し、トレーサエージェントから放出されたスペクトルエネルギーの測定値をコンピュータ装置に送信するように構成される。トレーサ剤は、患者に投与され、電磁放射線に暴露されたときに、センサヘッドによって検出可能なスペクトルエネルギーを放出するように構成される。
【0020】
さらに別の態様では、本明細書に開示されているのは、患者の身体サイズ(身体の大きさ)について正規化された腎糸球体濾過率(GFR)を経皮的に測定するためのシステムである。このコンピュータ装置と、コンピュータ装置に通信可能に接続された表示装置と、外部電源からのシステムの電気的絶縁を維持するべく、コンピュータ装置に動作可能に接続された電源と、コンピュータ装置に動作可能に接続された1以上のセンサヘッドと、電磁放射線に暴露されたときにスペクトルエネルギーを放出するように構成された少なくとも1つのトレーサ剤と、を含む。1以上のセンサヘッドは、少なくとも1つの電磁放射線源を含み、かつ、電磁放射線を生成して放射し、トレーサ剤から放出されたスペクトルエネルギーを検出して測定し、トレーサエージェントから放出されたスペクトルエネルギーの測定値をコンピュータ装置に送信するように構成される。トレーサ剤は、患者に投与され、電磁放射線に暴露されたときに、センサヘッドによって検出可能なスペクトルエネルギーを放出するように構成される。コンピュータ装置は、センサヘッドを動作及び制御し、センサヘッドから受信した1以上の測定値を記録し、測定時間ウィンドウにわたって測定されたスペクトルエネルギーから減衰パラメータを決定し、測定時間ウィンドウにわたって測定されたスペクトルエネルギーに関連する品質評価基準を決定し、品質評価基準を使用して、減衰パラメータが十分に正確であるかどうかを評価し、減衰パラメータが十分に正確でないと評価された場合には、品質評価基準が十分に正確であると評価されるまで、測定時間ウィンドウの時間長さを延長し、減衰パラメータを、患者の身体サイズについて補正されたGFR測定値、または、トレーサ剤の分布容積について正規化されたGFRの測定値に変換し、その結果を表示装置に報告するように構成される。
【0021】
さらに別の態様では、本明細書に開示されているのは、糸球体濾過率(GFR)の測定を必要とする患者のGFRを測定する方法である。この方法は、下記の化学式Iで表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与するステップと、患者の体内の化学式Iの化合物の濃度を測定時間ウィンドウにわたって測定するステップと、患者のGFRを決定するステップと、を含む。
【化1】
式中、
及びXは、互いに独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、及び-CONH(PS)からなる群から選択され、
及びYは、互いに独立して、NR、及び
【化2】
からなる群から選択され、
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択され、
及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)aH、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、
AAは、ペプチド結合またはアミド結合によって互いに結合された1以上の天然または非天然のアミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、AAの各々は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、
PSは、グリコシド結合によって互いに結合された1以上の単糖単位を含む硫化多糖鎖または非硫化多糖鎖であり、
aは、1~10の範囲の数であり、
cは、1~100の範囲の数であり、
m及びnは、互いに独立して、1~3の範囲の数である。
【0022】
さらに別の態様では、本明細書に開示されているのは、患者の腎機能を評価する方法である。この方法は、蛍光化合物またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与するステップと、患者を電磁放射線に曝露させて、蛍光化合物からスペクトルエネルギーを放射させるステップと、蛍光化合物から放出されたスペクトルエネルギーを検出するステップと、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて患者の腎機能を評価するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】腎機能モニタリングのためのいくつかの公知の造影剤を示す図である。
図2】患者のGFRをモニタリングするためのシステムの図である。
図3A】120mL/分のGFR値を有する、第1の患者における2コンパートメント薬物動態モデルを示すMB-102のクリアランスのグラフである。
図3B】81mL/分のGFR値を有する、第2の患者における2コンパートメント薬物動態モデルを示すMB-102のクリアランスのグラフである。
図3C】28mL/分のGFR値を有する、第3の患者における2コンパートメント薬物動態モデルを示すMB-102のクリアランスのグラフである。
図3D】25mL/分のGFR値を有する、第4の患者における2コンパートメント薬物動態モデルを示すMB-102のクリアランスのグラフである。
図4】MB-102を用いて測定したGFRをOmnipaque(登録商標)と比較したグラフである。
図5】12時間後のヒト患者の尿からのMB-102の回収率の棒グラフである。
図6】ヒト患者におけるMB-102の血漿濃度半減期の棒グラフである。
図7】117mL/分/1.73mのGFRを有する患者におけるMB-102の血漿濃度と経皮蛍光強度との間の経時的な相関を示すグラフである。
図8】61mL/分/1.73mのGFRを有する患者におけるMB-102の血漿濃度と経皮蛍光強度との間の経時的な相関を示すグラフである。
図9】23mL/分/1.73mのGFRを有する患者におけるMB-102の血漿濃度と経皮蛍光強度との間の経時的な相関を示すグラフである。
図10】経皮的に予測されたGFRと、MB-102を用いて測定され、対象の体表面積に正規化された(外れ値除外方法1;ハイブリッドオフセット方法)血漿測定GFRとの相関関係を示すグラフである。
図11】経皮的に予測されたGFRと、MB-102を用いて測定され、対象の体内のトレーサ剤の分布容積(外れ値除外方法1;ハイブリッドオフセット方法)について正規化された血漿測定GFRとの相関関係を示すグラフである。
図12】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、イオヘキソール、非正規化(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図13】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、イオヘキソール、BSAによる正規化(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図14】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、イオヘキソール、Vによる正規化(方法1)(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図15】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、MB-102、非正規化(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図16】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、MB-102、BSAによる正規化(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図17】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、MB-102、Vによる正規化(方法1)(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図18】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率、すなわち、MB-102、Vによる正規化(方法2)(外れ値除外なし;固定オフセットフィッティング方法)によるGFR、に相関させたグラフである。
図19】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:可変オフセット方法(外れ値除外なし;Vによって正規化(方法2)した、MB-102によるGFR測定値)。
図20】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:ハイブリッドオフセット方法(外れ値除外なし;Vによって正規化(方法2)した、MB-102によるGFR測定値)。
図21】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:外れ値除外方法1(ハイブリッドオフセット方法;BSAについて正規化した、MB-102によるGFR測定値)。
図22】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:外れ値除外方法1(ハイブリッドオフセット方法;Vについて正規化した、MB-102によるGFR測定値)。
図23】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:外れ値除外方法2(ハイブリッドオフセット方法;BSAについて正規化した、MB-102によるGFR測定値)。
図24】血漿測定GFRを経皮蛍光クリアランス率に相関させたグラフである:外れ値除外方法2(ハイブリッドオフセット方法;Vによって正規化(方法2)した、MB-102によるGFR測定値)。
図25】RDTCのフィッティングに使用されるオフセット方法を決定するためのRDTC遷移の最適化を要約するグラフである。
図26】蛍光減衰速度定数の外れ値誤差閾値の最適化を要約するグラフである。
図27】血漿測定GFRの外れ値誤差閾値の最適化を要約するグラフである。
図28】GFRによる慢性腎臓病の5つのステージのグラフである。
図29A】eGFR対、対象の体表面積について正規化した血漿PK測定GFR(nGFR)のグラフである。診断精度を示す誤差グリッドがCKDステージの番号でグラフ上に重なっている。緑色の側部のみのグリッド内にある測定値は、eGFRによって正しく診断されている。緑色の側部と黄色の側部との両方のグリッド内にある測定値は、1つのCKDステージにより、eGFRによって誤診されている。黄色の側部と赤の側部との両方のグリッド内にある測定値は、2つのCKDステージにより、eGFRによって誤診されている。
図29B】経皮測定GFR(tGFR)対、対象の体表面積について正規化した血漿PK測定GFR(nGFR)のグラフである。診断精度を示す誤差グリッドがCKDステージの番号でグラフ上に重なっている。緑色の側部のみのグリッド内にある測定値は、tGFRによって正しく診断されている。緑色の側部と黄色の側部との両方のグリッド内にある測定値は、1つのCKDステージにより、tGFRによって誤診されている。黄色の側部と赤の側部との両方のグリッド内にある測定値は、2つのCKDステージにより、tGFRによって誤診されている。
図29C】経皮測定GFR(tGFR)対、対象の体内のトレーサ剤の分布容積について正規化した血漿PK測定GFR(nGFR)のグラフである。診断精度を示す誤差グリッドがCKDステージの番号でグラフ上に重なっている。緑色の側部のみのグリッド内にある測定値は、tGFRによって正しく診断されている。緑色の側部と黄色の側部との両方のグリッド内にある測定値は、1つのCKDステージにより、tGFRによって誤診されている。黄色の側部と赤の側部との両方のグリッド内にある測定値は、2つのCKDステージにより、tGFRによって誤診されている。
図30】リアルタイムに2つの身体部位で自動的に測定された経皮測定GFRのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書における「ピラジン」、「ピラジン誘導体」、「ピラジン分子」、「ピラジン化合物」、または「ピラジン類似体」に対するすべての言及は、すべての化学式Iの化合物に適用される。加えて、さらに、ピラジンに対する各言及は、特に明記しない限り、そのすべての薬学的に許容可能な塩を含む。塩形態は、荷電していても荷電していなくてもよく、また、プロトン化して適切なカチオンを形成していてもよいし脱プロトン化して適切なアニオンを形成していてもよい。本明細書に開示されたすべての態様及び実施形態は化学式Iの化合物に適用可能であり、特定の例は単に説明のためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0025】
一態様では、本明細書に開示されるのは、下記の化学式Iで表される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0026】
【化1】
【0027】
式中、
及びXは、互いに独立して、-CO、-CONR、-CO(AA)、及び-CONH(PS)からなる群から選択され、
及びYは、互いに独立して、NR、及び
【0028】
【化2】
【0029】
からなる群から選択され、
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択され、
及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)aH、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、
AAは、ペプチド結合またはアミド結合によって互いに結合された1以上の天然または非天然のアミノ酸を含むポリペプチド鎖であり、AAの各々は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、
PSは、グリコシド結合によって互いに結合された1以上の単糖単位を含む硫化多糖鎖または非硫化多糖鎖であり、
aは、0~10の範囲の数であり、
cは、1~100の範囲の数であり、
m及びnは、互いに独立して、1~3の範囲の数である。
【0030】
別の実施形態では、aは、1~10の範囲の数である。さらに別の実施形態では、aは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0031】
いくつかの態様では、X及びXの少なくとも一方が、-CO(PS)または-CO(AA)である。さらに別の態様では、X及びXの両方が、-CO(AA)である。
【0032】
(AA)は、ペプチドまたはアミド結合によって互いに結合された1以上の天然または非天然のアミノ酸を含むペプチド鎖である。ペプチド鎖(AA)は、単一のアミノ酸、ホモポリペプチド鎖、またはヘテロポリペプチド鎖であり得、任意の適切な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、天然または非天然のアミノ酸は、α-アミノ酸である。さらに別の態様では、α-アミノ酸は、D-α-アミノ酸またはL-α-アミノ酸である。ポリペプチド鎖は、2以上のアミノ酸を含み、すべての態様において、各アミノ酸は、互いに独立して、これに限定しないが、側鎖構造及び立体化学構造から選択される。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖は、1~100個のアミノ酸、1~90個のアミノ酸、1~80個のアミノ酸、1~70個のアミノ酸、1~60個のアミノ酸、1~50個のアミノ酸、1~40個のアミノ酸、1~30個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、または1~10個のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖は、1~100個のα-アミノ酸、1~90個のα-アミノ酸、1~80個のα-アミノ酸、1~70個のα-アミノ酸、1~60個のα-アミノ酸、1~50個のα-アミノ酸、1~40個のα-アミノ酸、1~30個のα-アミノ酸、1~20個のα-アミノ酸、または1~10個のα-アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D-アラニン、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-システイン、D-グルタミン酸、D-グルタミン、グリシン、D-ヒスチジン、D-ホモセリン、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-リジン、D-メチオニン、D-フェニルアラニン、D-プロリン、D-セリン、D-トレオニン、D-トリプトファン、D-チロシン、及びD-バリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖(AA)のα-アミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ホモセリン、リジン、及びセリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖(AA)のα-アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモセリン、及びセリンからなる基から選択される。いくつかの実施形態では、ポリペプチド鎖(AA)は、単一のアミノ酸(例えば、D-アスパラギン酸またはD-セリン)を指す。
【0033】
いくつかの実施形態では、(AA)は、21の必須アミノ酸からなる群から選択される単一のアミノ酸である。別の態様では、(AA)は、D-アルギニン、D-アスパラギン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸、D-グルタミン、D-ヒスチジン、D-ホモセリン、D-リジン、及びD-セリンからなる群から選択される。好ましくは、(AA)は、D-アスパラギン酸、グリシン、D-セリン、またはD-チロシンである。最も好ましくは、(AA)は、D-セリンである。
【0034】
いくつかの実施形態では、(AA)は、β-アミノ酸である。β-アミノ酸の例としては、これに限定しないが、β-フェニルアラニン、β-アラニン、3-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)プロピオン酸、3-アミノブタン酸、シス-2-アミノ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸、トランス-2-アミノ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸、3-アミノイソ酪酸、3-アミノ-2-フェニルプロピオン酸、3-アミノ-4-(4-ビフェニルイル)酪酸、シス-3-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸、トランス-3-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸、3-アミノ-シクロペンタンカルボン酸、3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニル酪酸、2-(アミノメチル)フェニル酢酸、3-アミノ-2-メチルプロピオン酸、3-アミノ-4-(2-ナフチル)酪酸、3-アミノ-5-フェニルペンタン酸、3-アミノ-2-フェニルプロピオン酸、4-ブロモ-β-Phe-OH、4-クロロ-β-ホモPhe-OH、4-クロロ-β-Phe-OH、2-シアノ-β-ホモPhe-OH、2-シアノ-β-ホモPhe-OH、4-シアノ-β-ホモPhe-OH、3-シアノ-β-Phe-OH、4-シアノ-β-Phe-OH、3、4-ジメトキシ-β-Phe-OH、γ、γ-ジフェニル-β-ホモala-OH、4-フルオロ-β-Phe-OH、β-Gln-OH、β-ホモala-OH、β-ホモarg-OH、β-ホモgln-OH、β-ホモglu-OH、β-ホモhyp-OH、β-ホモleu-OH、β-ホモlys-OH、β-ホモmet-OH、β2-ホモフェニルアラニン、β-ホモphe-OH、β3-ホモpro-OH、β-ホモser-OH、β-ホモthr-OH、β-ホモtrp-OH、β-ホモtrp-OMe、β-ホモtyr-OH、β-Leu-OH、β-Leu-OH、β-Lys(Z)-OH、3-メトキシ-β-Phe-OH、3-メトキシ-β-Phe-OH、4-メトキシ-β-Phe-OH、4-メチル-β-ホモphe-OH、2-メチル-β-Phe-OH、3-メチル-β-Phe-OH、4-メチル-β-Phe-OH、β-Phe-OH、4-(4-ピリジル)-β-ホモala-OH、2-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、4-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、2-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、4-(トリフルオロメチル)-β-Phe-OH、β-Tyr-OH、3-(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチル、β-Ala-OH、3-(アミノ)-5-ヘキセン酸、3-(アミノ)-2-メチルプロピオン酸、3-(アミノ)-2-メチルプロピオン酸、3-(アミノ)-4-(2-ナフチル)酪酸、3、4-ジフルオロ-β-ホモphe-OH、γ、γ-ジフェニル-β-ホモala-OH、4-フルオロ-β-ホモphe-OH、β-Gln-OH、β-ホモala-OH、β-ホモarg-OH、β-ホモgln-OH、β-ホモglu-OH、β-ホモhyp-OH、β-ホモile-OH、β-ホモleu-OH、β-ホモlys-OH、β-ホモmet-OH、β-ホモphe-OH、β3-ホモプロリン、β-ホモthr-OH、β-ホモtrp-OH、β-ホモtyr-OH、β-Leu-OH、2-メチル-β-ホモphe-OH、3-メチル-β-ホモphe-OH、β-Phe-OH、4-(3-ピリジル)-β-ホモala-OH、3-(トリフルオロメチル)-β-ホモphe-OH、β-グルタミン酸、β-ホモアラニン、β-ホモグルタミン、β-ホモグルタミン、β-ホモヒドロキシプロリン、β-ホモイソロイシン、β-ホモロイシン、β-ホモメチオニン、β-ホモフェニルアラニン、β-ホモプロリン、β-ホモセリン、β-ホモトレオニン、β-ホモトリプトファン、β-ホモチロシン、β-ロイシン、β-フェニルアラニン、ピロリジン-3-カルボン酸、及びβ-Dab-OHが挙げられる。
【0035】
(PS)は、グリコシド結合によって互いに結合された1以上の単糖単位を含む硫酸化多糖鎖または非硫酸化多糖鎖である。多糖鎖(PS)は、任意の適切な長さを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、多糖鎖は、1~100個の単糖単位、1~90個の単糖単位、1~80個の単糖単位、1~70個の単糖単位、1~60個の単糖単位、1~50個の単糖単位、1~40個の単糖単位、1~30個の単糖単位、1~20個の単糖単位、または1~10個の単糖単位も含み得る。いくつかの実施形態では、多糖鎖(PS)は、ペントース単糖単位またはヘキソース単糖単位からなるホモ多糖鎖である。別の実施形態では、多糖鎖(PS)は、ペントース単糖単位及びヘキソース単糖単位の一方または両方からなるヘテロ多糖鎖である。いくつかの実施形態では、多糖鎖の単糖単位(PS)は、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、及びリボースからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、多糖鎖(PS)は、単一の単糖単位(例えば、グルコースまたはフルクトース)を指す。さらに別の態様では、多糖鎖は、その糖上の1または複数のヒドロキシ基がアミン基で置換されたアミノ糖である。カルボニル基との結合は、アミンまたはヒドロキシ基を介して行うことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、化学式Iのピラジン誘導体において、Y及びYの少なくとも一方は、
【0037】
【化2】
【0038】
である。
は、単結合、-CR-、-O-、-NR-、-NCOR-、-S-、-SO-、及び-SO-からなる群から選択され、
及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)aH、-CH(CHOH)CH、-CH(CHOH)COH、-(CHCOH)COH、-(CHCHO)H、-(CHCHO)CH、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHSOH、-(CHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHNHSOH、-(CHNHSO 、-(CHPO、-(CHPO 、-(CHPO2-、-(CHPO 3-、-(CHPO、-(CHPO、及び-(CHPO 2-からなる群から選択され、a、c、m及びnは、上述した通りである。
【0039】
さらに別の態様では、Y及びYの少なくとも一方、並びに、R及びRは上述した通りである。さらに別の態様では、Y及びYの両方、並びに、R及びRは上述した通りである。あるいは、R及びRは、互いに独立して、H、-CH(CHOH)CH、-(CHSOH、-(CHNHSOH、及び-(CH)aPOからなる群から選択される。さらに別の態様では、R及びRは両方とも水素である。
【0040】
ピラジン化合物のいずれの態様においても、1または複数の原子は、代替的に、同一元素の同位体標識原子で置換してもよい。例えば、水素原子は、重水素またはトリチウムで同位体標識することができ、炭素原子は、13Cまたは14Cで同位体標識することができ、窒素原子は、14Nまたは15Nで同位体標識することができる。同位体標識は、安定同位体であってもよいし、不安定同位体(すなわち、放射性)であってもよい。ピラジン分子は、1以上の同位体標識を含み得る。同位体標識は、部分的であってもよいし、全体的であってもよい。例えば、ピラジン分子を50%重水素で標識することによって、質量分析または他の技術によって容易にモニタリングすることができる特徴をピラジン分子に付与することができる。別の例として、ピラジン分子をトリチウムで標識することによって、当技術分野で既知の技術を用いてインビボ及びエクスビボの両方でモニタリングすることができる放射性シグネチャをピラジン分子に付与することができる。
【0041】
薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で既知である。本明細書中のいずれの態様においても、ピラジンは、薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。非限定的な例として、薬学的に許容可能な塩としては、参照によりその教示内容の全体が本明細書に援用されるBergeらによる「J.Pharm.Sci.、66(1)、1(1977)」に記載されたものが挙げられる。薬学的に許容可能な塩は、カチオン性であってもよいし、アニオン性であってもよい。いくつかの実施形態において、薬学的に許容可能な塩の対イオンは、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エステル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオダイド、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アミノサリチル酸、アンヒドロメチレンクエン酸塩、アレコリン、アスパラギン酸、重硫酸塩、臭化ブチル、カンホレート、ジグルコン酸塩、二臭化水素酸塩、二コハク酸塩、グリセロリン酸塩、ジェミ硫酸塩(jemisulfate)、ジュドロフッ化物(judrofluoride)、ジュドロヨウ化物(judroiodide)、メチレンビス(サリチル酸塩)、ナパジシル酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルエチルバルビツール酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、ベネタミン、クレミゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、トロメタミン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛ナトリウム、バリウム、及びビスマスからなる群から選択される。塩を形成することができるピラジン誘導体中の官能基は、任意選択で、当技術分野で既知の方法を用いて形成することができる。非限定的な例として、塩酸アミン塩は、ピラジンに塩酸を添加することによって形成することができる。リン酸塩は、ピラジンにリン酸緩衝液を添加することによって形成することができる。スルホン酸、カルボン酸、またはホスホン酸などの存在する酸性官能基は、適切な塩基及び形成された塩で脱プロトン化することができる。あるいは、アミン基を適切な酸でプロトン化してアミン塩を形成してもよい。塩の形態は、単一に荷電されていてもよく、二重に荷電されていてもよく、または三重に荷電されていてもよく、2以上の対イオンが存在する場合、各対イオンは、他の対イオンの各々と同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0042】
さらに別の態様では、本明細書に開示されるのは、腎糸球体濾過率(GFR)の測定を必要とする患者のGFRを測定する方法である。この方法は、ピラジン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与するステップと、所定の期間にわたって患者の経皮蛍光を測定するステップと、患者のGFRを決定(測定)するステップとを含む。GFRの単一の測定値を決定するために用いられる時間は、本明細書では「測定時間ウィンドウ(Measurement Time Window)」と称する。多くの場合、GFRをリアルタイムで経時的に評価することは、臨床的に有用である。したがって、本開示のいくつかの態様では、GFRの複数の連続的な評価が提供される。いくつかの態様では、複数の連続的なGFR推定値が、トレーサ剤の単回投与後に提供される。単回の注射後にGFR測定が提供されるまでの全時間長さは、本明細書では「単回注射報告時間(Single Injection Reporting Period)」と称することとする。いくつかの態様では、測定時間ウィンドウ間に時間的な重複が存在する。このような場合、GFRが報告される時間間隔(報告時間)は、必ずしも測定時間ウィンドウと同じとは限らない。例えば、一実施形態では、互いに隣接する測定時間ウィンドウは互いに50%重複しており、報告時間は測定時間ウィンドウの半分である。いくつかの態様では、測定時間ウィンドウは、時間長さを変更することができる。好ましい実施形態では、時間的に互いに隣接する測定時間ウィンドウが互いに異なる時間長さを有する場合、重複期間は、2つの測定時間ウィンドウのうちの短い方の測定時間ウィンドウの時間長さの50%となるように選択される。いくつかの態様では、患者のGFRは、本明細書の他の箇所に開示されたシステムを使用して測定される。
【0043】
さらに別の態様では、測定時間ウィンドウは、信号品質に関連する評価基準(以降、「品質評価基準(Quality Metric)」と称する)にしたがって自動的に調節される。品質評価基準は、蛍光信号対ノイズ比(SNR)、信号対バックグラウンド比(SBR)、適合度評価基準(good-of-fit metrics)、相関係数、またはそれらの任意の組み合わせの推定値に基づくことができる。一態様では、測定時間ウィンドウにわたって、直線が蛍光強度対時間の対数にフィッティングされる(すなわち、単一指数が蛍光強度対時間にフィッティングされる)。フィッティングさせた直線とデータとの差(「フィッティング残差」)を用いて「ノイズ」を推定する。一態様では、ノイズは、フィッティング残差の二乗平均平方根(RMS)である。別の態様では、ノイズは、フィッティング残差の中央値絶対偏差(MAD)である。「信号」は、フィッティングにより導出された単一指数関数の振幅として定義される。別の態様では、信号は、測定時間ウィンドウの開始時及び終了時のフィッティングされた蛍光間の差として選ばれる。別の態様では、注入前の蛍光信号レベルを使用して「バックグラウンド」を決定し、バックグラウンドを信号レベルに分割することによってSBRが算出される。品質評価基準としてSNRまたはSBRを使用する場合、最小閾値が定義され、品質評価基準が最小閾値を超えた場合にのみ、そのフィッティングが、GFRを測定する目的で有効であると見なされる。別の態様では、蛍光対時間へのフィッティングによって決定される時定数または速度定数の推定誤差が品質評価基準として使用される。この場合、フィッティングは、算出された品質評価基準が予め定められた閾値未満である場合にのみ有効であると見なされる。他のいくつかの態様では、フィッティングされる時定数または速度定数が信号として定義され、フィッティングにより決定された推定誤差がノイズとして定義され、このバージョンのSNRが品質評価基準として使用される。別の態様では、相関係数が品質評価基準として使用される。相関係数を算出するために、ピアソン相関係数または一致相関係数などの、当技術分野で既知の様々な方法が用いることができる。さらに別の態様では、互いに異なる品質評価基準の組み合わせが単一の品質評価基準に組み合わせられるか、または、選択された品質評価基準のすべてが合格した場合にのみフィッティング結果がGFRを測定する目的で有効であると見なされる。
【0044】
別の態様では、最小測定時間ウィンドウが定義され、品質評価基準を使用して、GFRを報告するか、または測定時間ウィンドウの時間長さを延長するかを決定する。このような一実施形態では、品質評価基準が閾値に達するまで測定時間ウィンドウの時間長さは自動的に延長され、品質評価基準が閾値に達するとGFRが報告される。別の態様では、予備的フィッティングが、時定数または速度定数、または予測GFRに使用され、また、測定時間ウィンドウを予め定められた時間長さに設定するために使用される。一実施形態では、最小測定時間は60分に設定され、このときにフィッティングが実行され、GFRの予備推定が実施される。GFRの予備推定値が75mL/分/1.73m以上の場合、結果がユーザに報告され、測定時間ウィンドウは60分に維持される。しかしながら、GFRの予備推定値が75mL/分/1.73m未満の場合、結果はユーザに報告されず、測定時間ウィンドウは120分に延長される。
【0045】
別の態様では、残りの単回注射報告時間が推定され、定期的にユーザに提供される。残りの単回注射報告時間を推定するための基礎は、品質評価基準を決定するための上述の方法のように、SNR、SBR、または推定された適合誤差であり得る。なお、測定時間ウィンドウを決定するために使用される品質評価基準と、残りの単回注射報告時間を決定するために使用される品質評価基準とは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。いくつかの態様では、品質評価基準に加えて、フィッティングされた蛍光減衰時定数または速度定数が、残りの単回注射報告時間を推定するために使用される。一実施形態では、フィッティングされた蛍光減衰時定数及びSNRが、残りの単回注射報告時間を予測するために組み合わされる。SNRは、最小値0~最大値1の範囲にスケーリングされ、そして、蛍光減衰時定数が乗算される。その後、その積は、単回注射報告時間を予測するためにスケーリングされる。スケーリング係数は、ヒト患者、動物、インビトロ実験系、シミュレーション、またはそれらの任意の組み合わせに関して以前に収集されたデータの分析によって決定された較正係数である。
【0046】
さらに別の態様では、フィッティングを行う前に、フィルタリング及び/または外れ値除外が測定時間ウィンドウ内の蛍光データに適用される。適切なフィルタリングの例としては、ボックスカー平均化、無限応答関数フィルタ、メディアンフィルタ、トリム平均フィルタが挙げられる。外れ値除外方法の例としては、上述の品質評価基準のすべてが挙げられるが、測定時間ウィンドウのサブセットに適用される。
【0047】
いくつかの態様では、品質評価基準は、測定時間ウィンドウにわたる時間の関数として、測定されたトレーサ剤の放出エネルギーから算出される。品質評価基準は、算出されたGFRを報告するか否かを決定するために使用することができる。別の態様では、品質評価基準が、測定時間ウィンドウを延長するか否かを決定するために使用される。例えば、測定時間ウィンドウは、品質評価基準が予め定められた閾値を超えるまで自動的に延長され、品質評価基準が予め定められた閾値を超えた時点でGFRが報告される。
【0048】
患者の身体サイズ(身体の大きさ)について正規化されたGFRは、測定時間ウィンドウにわたる時間の関数として、測定されたトレーサ剤の放出エネルギーを減衰パラメータにフィッティングさせることによって決定される。いくつかの態様では、この減衰パラメータは、単一指数フィッティングにより決定された速度定数(またはその逆数は、時定数と称される)である。いくつかの態様では、フィッティングされた関数のオフセットは、0に固定される。別の態様では、オフセットは、フィッティングにおける変数項である。さらに別の態様では、オフセットは固定されるか、または、減衰パラメータの予備的評価に基づいて変更可能である。測定時間ウィンドウは、トレーサ剤が体内で平衡化された後に開始され、トレーサ剤の腎クリアランスに起因して放射強度が減衰する期間にわたるように選択される。フィッティングされた速度定数に較正勾配を乗算して、患者の身体サイズについて正規化されたGFRを決定する。較正勾配は、ヒト患者、動物、インビトロ実験系、シミュレーション、またはそれらの任意の組み合わせに関して以前に収集されたデータの分析によって決定される。
【0049】
患者の身体サイズは腎機能の評価に影響を与える恐れがあるので、いくつかの態様では、身体サイズの評価基準が、測定をさらに改善するためにGFR計算結果を正規化するために使用される。いくつかの態様では、GFRを正規化するために使用される身体サイズの評価基準は体表面積(BSA)である。別の態様では、身体サイズの評価基準は、トレーサ剤の分布容積(Vd)である。
【0050】
本明細書に開示された方法及びシステムはまた、患者のGFRのリアルタイムなモニタリングを可能にする。加えて、トレーサ剤の単回投与によって、複数のGFR測定または決定を行うことができる。いくつかの態様では、単一のGFR測定値が、トレーサ剤の投与後に決定される。別の態様では、複数のGFR測定値が、トレーサ剤の投与後に決定され、リアルタイムなGFR傾向を提供する。このようないくつかの態様では、トレーサ剤の残存濃度がGFRの測定を継続するのに十分である残り時間の推定値が提供される。
【0051】
さらに別の態様では、本明細書に開示されるのは、腎糸球体濾過率(GFR)の測定を必要とする患者のGFRを測定する別の方法である。この方法は、ピラジン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を患者に投与するステップと、測定時間ウィンドウにわたって患者の経皮蛍光を測定するステップと、患者のGFRを決定(測定)するステップとを含む。いくつかの態様では、患者のGFRは、本明細書の他の箇所に開示されたシステムを使用して決定される。
【0052】
さらに別の態様では、本明細書に開示されるのは、GFRの測定を必要とする患者のGFRを測定するさらに別の方法である。この方法は、化学式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくはその薬学的に許容可能な製剤を患者に投与するステップと、測定時間ウィンドウにわたって患者の体内における化学式Iの化合物の濃度を測定するステップと、患者のGFRを決定するステップとを含む。
【0053】
いくつかの態様では、かつ、引き続き上述の方法に関連して、ピラジンの濃度を測定するステップは、患者の経皮蛍光をモニタリングするステップを含む。さらに別の態様では、ピラジンの濃度を測定するステップは、患者から血液のアリコートを採取するステップと、HPLCまたは当技術分野で既知の他の方法によってピラジンの濃度を測定するステップとを含む。例えば、ピラジンには、定量化可能な放射性同位体が組み込まれる。さらに別の態様では、ピラジンの濃度を測定するステップは、腎臓が患者の身体から化合物を除去する速度を決定するために、所定の期間にわたって患者の尿を収集するステップを含む。
【0054】
さらに別の態様では、かつ、引き続き上述の方法に関連して、患者のピラジンの濃度は、経皮蛍光によってモニタリングされる。これは、化学式Iの化合物が蛍光反応を引き起こすように構成された医療装置を患者の皮膚に接触させることと、蛍光反応を検出することとを含み得る。医療装置は、任意の適切な位置で患者の皮膚に接触させられる。適切であることが知られている特定の位置は、胸骨、胸骨下部、大胸筋、後頭三角、額、顎、上側臀部、及び下側臀部である。利便性、医療装置設計、及び/または医療上の必要性によって決定される患者の他の位置を用いてもよい。いくつかの態様では、この方法は、本明細書の他の箇所に開示されたシステムを使用する。
【0055】
上述の方法の一態様では、表示装置を使用して、1以上の特定の身体部位にセンサを取り付けるようにユーザを促す。このような一態様では、タッチスクリーンインターフェースが使用され、ユーザは、測定セットアッププロセスの次のステップに進むために、センサが取り付けられた身体部位のレンディションに触るように指示される。これは、GFR測定に不適切、または最適でない身体部位へのセンサの配置を阻止するという利点を有する。
【0056】
別の態様では、次のステップは、光源出力レベル及び検出器利得レベルを設定するステップである。このような一態様では、検出器利得レベル及び光源出力レベルの両方は、最初は低状態に設定され、その後、光源出力レベルは、目標の信号レベルが達成されるまで連続的に増加させられる。一実施形態では、光源は、蛍光GFR剤の励起源であり、目標とする蛍光信号が達成されるか、または予め定められた最大電流に達するまで、光源駆動電流は増加させられる。所望の蛍光信号レベルを達成することなく最大源電流に達した場合、検出器利得レベルは、目標の蛍光信号が達成されるか、または最大検出器利得設定に達するまで、連続的に増加させられる。
【0057】
いくつかの態様では、皮膚及びGFR剤の蛍光の測定に加えて、皮膚の拡散反射率の測定が行われる。このような態様では、拡散反射信号を用いて、最適な光源出力レベル及び検出器利得レベルを決定することができる。さらに別の態様では、拡散反射率の測定は、蛍光GFR剤の励起及び発光のための波長帯内で行われる。このような態様では、LED光源出力レベル及び検出器利得レベルの設定は、設定をガイドするための蛍光信号レベルの代わりに、拡散反射率を用いて行うことができる。このような一態様では、目標の信号レベルまたは拡散反射信号は、検出器または増幅器の飽和効果が観察される信号レベルの15%~35%の範囲である。これにより、患者の動きまたは他の生理学的変動に関連し得る信号変動のためのヘッドルームが提供される。光源出力及び/または検出器利得を最適化するための上述の手法は、互いに異なる患者間、または同一の患者における互いに異なる身体部位間の生理学的変動を補償する手段を提供するという利点を有する。一態様では、補償される主要因子は、皮膚のメラニン含有量である。補償を必要とする他の生理学的因子としては、血液量、水分量、及びセンサによって光学的に調べられる組織体積内の散乱が挙げられる。別の態様では、所望の信号目標が達成されない場合、ユーザは測定を開始することができない。このようにして、不正確な結果が報告されることが防止される。
【0058】
所望の信号レベルが首尾よく達成されると、別の態様では、ベースライン信号が記録される。このような一態様では、経時的な信号に対して勾配をフィッティングさせることなどによってベースラインの安定性が評価され、経時的な勾配が予め定められた閾値未満でない限り、ベースラインは有効であると認められない。いくつかの態様では、表示装置は、安定したベースラインが達成されるまでトレーサ剤の投与を開始しないようにユーザに指示する。このようにして、センサが適切に配置または取り付けられていない場合には、測定が阻止される。加えて、前回の測定時に注入されたトレーサ剤が望ましい程度まで身体から除去されていない場合には、ユーザが測定を始めることを阻止することができる。
【0059】
安定したベースラインが取得されると、上述の方法の別の態様では、トレーサ剤が患者の血管空間に注入される。トレーサ剤の投与は、1以上のセンサによって検出された患者の経皮蛍光の急速な増加として、自動的に検出される。この目的のために、変化率、絶対信号変化、または相対信号変化に対する予め定められた閾値を用いることができる。トレーサ剤の自動検出は、タッチスクリーンモニタなどの表示装置上でユーザに報告することができる。別の態様では、トレーサ剤が検出されると、GFR測定を開始するのに十分なトレーサ剤が存在するか否かを決定するために、別の閾値が用いられる。このような一態様では、蛍光(Fmeas)及び拡散反射率(DR)の測定値は、組み合わせ結果(本明細書では、固有蛍光またはIFと称する)に対する生理学的変動の影響を低減するように組み合わされ、その結果、例えば、測定値に対する皮膚の色の影響が補償される。次いで、IFを予め定められた閾値と比較することによって、トレーサ剤の十分性を評価する。いくつかの態様では、IFは、下記の式(1)を用いて決定される。
【0060】
【数1】
【0061】
式中、各DRの下付き文字は、フィルタ付き検出器及びフィルタが付いていない検出器の両方によって、トレーサ剤の励起波長帯(ex)及び発光波長帯(em)で収集された測定値を指す。また、各DRの上付き文字は、ヒト患者、動物、インビトロ実験系、シミュレーション、またはそれらの任意の組み合わせに関して以前に収集されたデータの分析によって決定された較正係数である。このようにして、正確なGFR評価のために十分なトレーサ剤が投与されていない場合には、測定を実施する医療専門家に対して、追加のトレーサ剤を投与する機会、または測定を中止する機会を提供することができる。
【0062】
トレーサ剤が投与されると、別の態様では、細胞外空間へのトレーサ剤の平衡化がモニタリングされる。一態様では、測定時間ウィンドウは、平衡化が十分に完了したと判断されるまで開始されない。指数関数に対するフィッティングを用いて、平衡化の進展を評価することができる。例えば、蛍光強度の経時的な変化を単一指数関数にフィッティングさせ、フィッティングされた時定数が安定した場合にのみ、平衡化が完了したと見なす。このような一態様では、第1のGFR測定が実行できるようになるまでの時間を示す実行推定値がユーザに提供される。別の態様では、十分な平衡が達成されるまで、すなわち十分な平衡が達成されない限り、ユーザは測定を開始することができない。このような一態様では、平衡時間を予め定められた閾値と比較し、平衡時間が閾値を超えた場合には、ユーザはGFR測定を開始することができない。このようにして、センサが循環系との交換が不十分な部位に位置する場合には、GFRの評価は阻止される。
【0063】
いくつかの態様では、報告時間、測定時間ウィンドウ、及び/または単回注射報告時間は、実施される特定の医学的評価に基づいて設定または変更される。例えば、慢性腎不全患者の場合には、GFRの測定は1回で十分である。しかしながら、急性腎不全またはその危険性のある患者の場合には、リアルタイムな評価またはGFR傾向は、大きな潜在的利益を提供する。いくつかの態様では、報告時間は、約15分であり得る。別の態様では、報告時間は、約30分間、約1時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、または約168時間であり得る。いくつかの態様では、報告時間は、15分間~168時間の範囲であり得る。いくつかの態様では、単回注射報告時間は、ピラジン化合物のクリアランス半減期に基づいている。クリアランス半減期は、その患者について予め決定されるか、その患者の医学的状態に基づいて推定されるか、または本明細書に記載された方法を用いて経皮的に決定され得る。いくつかの態様では、単回注射報告時間は、第1クリアランス半減期、第2クリアランス半減期、第3クリアランス半減期、第4クリアランス半減期、第5クリアランス半減期、第6クリアランス半減期、第8クリアランス半減期、または第10クリアランス半減期である。最大単回注射報告時間は、患者の血流中にピラジンがもはや検出されないような期間である。本明細書で使用するとき、「検出不能」は、ピラジンの濃度が、測定に用いられる方法によってもはや検出できないことを意味する。いくつかの態様では、装置の検出レベルが非常に長い期間(例えば、1週間以上)である場合には、「検出できない」は、濃度レベルが0.39%(すなわち、第8半減期)未満に低下したことを意味する。さらに別の態様では、報告時間は、約1時間~168時間の範囲における1時間ずつ増分したすべての範囲である。
【0064】
同様に、測定時間ウィンドウは、患者の特定の医療ニーズにしたがって設定または変更され得る。いくつかの実施形態では、測定時間ウィンドウは、約15分間であり得る。別の態様では、測定時間ウィンドウは、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約5時間、約8時間、約10時間、約12時間、約18時間、約時間、約時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、または約168時間であり得る。いくつかの実施形態では、測定時間ウィンドウは、15分間~168時間の範囲であり得る。各々の単回注射報告時間中に、1または複数の測定時間ウィンドウが存在してもよい。いくつかの態様では、単回注射報告時間は、各測定時間ウィンドウが互いに同一である複数の測定時間ウィンドウに分割される。さらに別の態様では、単回注射報告時間は複数の測定時間ウィンドウに分割され、各測定時間ウィンドウは他の測定時間ウィンドウから独立して選択され、他の測定時間ウィンドウと同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0065】
本明細書に開示された方法及びシステムは、広範囲の皮膚タイプ及び色素沈着レベルにわたってGFR測定が正確であるように、皮膚メラニン含有量を自動的に調節するという利点を有する。フィッツパトリック分類(Fitzpatrick scale)は、ヒトの皮膚色の数値分類スキームである。フィッツパトリック分類は、ヒト皮膚色素沈着の皮膚科学研究のための有用なツールとして広く認識されている。スコアの範囲は、タイプI(最小色素沈着の色白の肌)からタイプVI(濃く色素沈着している、暗褐色)まである。本明細書に開示されたシステム及び方法は、フィッツパトリック分類上の皮膚色素沈着の6つのカテゴリーのすべてのカテゴリーでの使用に適している。具体的には、本明細書に開示されたシステム及び方法は、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIV、タイプV、及びタイプVIの皮膚着色と共に使用するのに適している。
【0066】
さらに別の態様では、ピラジンは、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わされる。上記の薬学的に許容可能な賦形剤は、溶媒、pH調節剤、緩衝剤、酸化防止剤、張度調節剤、浸透圧調節剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤、粘度調節剤、界面活性剤、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0067】
薬学的に許容可能な溶媒は、水性または非水性の溶液、懸濁液、エマルジョン、またはそれらの適切な組み合わせであり得る。非水性溶媒の非限定的な例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブ油などの植物油、及び、例えばオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルである。水性担体の例は、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性または水性の溶液、乳濁液、または懸濁液である。
【0068】
非限定的な例として、薬学的に許容可能な緩衝剤としては、4~9、好ましくは5~8、より好ましくは6~8、最も好ましくは7.0~7.5の範囲のpHを有する、酢酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、リン酸二水素塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン酸塩、リン酸水素塩、乳酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、Tris-HCl、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。さらに別の態様では、pHは、6.7~7.7の範囲である。当技術分野で既知の他の緩衝液は、生成されたピラジン誘導体の特定の塩形態または特定の医療用途に基づいて選択され得る。好ましい緩衝液は、生理的pH(約7.2)のリン酸緩衝生理食塩水である。
【0069】
張度調節剤の例は、グリセロール、ソルビトール、スクロース、または、好ましくは塩化ナトリウム及び/またはマンニトールである。粘度調節剤の例としては、ベントナイト、カルシウムマグネシウムシリケートなどが挙げられる。希釈剤の例としては、エタノール、メタノールなどが挙げられる。抗菌剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、エチルパラベン、メチルパラベンなどが挙げられる。浸透圧調節剤の例としては、アミノエタノール、塩化カルシウム、コリン、デキストロース、ジエタノールアミン、乳酸リンガー溶液、メグルミン、塩化カリウム、リンガー溶液、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、TRIS、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらの例は説明のためのものであり、制限列挙または限定を意図するものではない。
【0070】
また、本明細書に開示されるのは、腎機能の評価を必要とする患者の腎機能を評価する方法であって、化学式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩若しくはその薬学的に許容可能な製剤を患者に投与するステップと、患者を電磁放射線に曝露させて、化学式Iの化合物からスペクトルエネルギーを放出させるステップと、化学式Iの化合物から放出されたスペクトルエネルギーを検出するステップと、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて患者の腎機能を評価するステップと、含む方法である。
【0071】
いくつかの態様では、化学式Iの化合物は、患者によって代謝されず、その代わりに腎排泄により完全に除去され、代謝されることはない(例えば、酸化、グルクロン酸抱合、または他の抱合は行われない)。いくつかの態様では、化学式Iの化合物の少なくとも95%は、腎排泄前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、化学式Iの化合物の少なくとも96%は、腎排泄前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、化学式Iの化合物の少なくとも97%は、腎排泄前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、化学式Iの化合物の少なくとも98%は、腎排泄前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、化学式Iの化合物の少なくとも99%は、腎排泄前に患者によって代謝されない。いくつかの態様では、化学式Iの化合物は、予め定められた期間未満で患者から完全に除去される。いくつかの態様では、患者の腎機能の評価は、患者のGFRの測定をさらに含み得る。
【0072】
ピラジンは、任意の適切な方法によって投与することができる。本方法は、患者の医療ニーズに基づくことができ、ピラジンを投与する、すなわち処置を実施する医療専門家によって選択される。投与方法の例としては、これに限定しないが、経皮投与、経口投与、非経口投与、皮下投与、経腸、または静脈投与が挙げられる。好ましくは、ピラジン化合物は、静脈内投与方法または経皮的投与方法を用いて投与される。いくつかの態様では、ピラジンは、単回ボーラス静脈内注射によって投与される。さらに別の態様では、ピラジンは、複数回のボーラス静脈内注射によって投与される。本明細書で使用するとき、経皮的(transcutaneous)及び経皮的(transdermal)の両方は、患者の皮膚を介した投与を指し、同じ意味で使用される。
【0073】
本明細書で使用するとき、「経腸投与」は、胃腸管を使用して薬剤を患者に直接または間接的に送達する任意の投与方法を指す。経腸投与の例としては、これに限定しないが、経口投与、舌下投与、口腔投与、及び直腸投与が挙げられる。本明細書で使用するとき、「非経口投与」は、注射または注入によって薬剤を患者に直接または間接的に送達する任意の投与方法を指す。非経口投与の例としては、これに限定しないが、静脈内投与、動脈内投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与、及び筋肉内投与が挙げられる。
【0074】
また、本明細書に開示されるのは、化学式Iのピラジン誘導体と、薬学的に許容可能な緩衝剤とを含む安定的な非経口組成物である。この非経口組成物は、非経口投与による患者への投与に適した張度を有する。非経口組成物の張度は、本明細書の他の箇所に記載されたような張度調節剤を用いて調節することができる。この非経口組成物は、それを必要とする患者への投与に適したpHを有し、本明細書の他の箇所に記載されたような緩衝剤または他のpH調節剤を用いて調節することができる。この非経口組成物は、それを必要とする患者への投与に適したモル浸透圧濃度を有し、該組成物のモル浸透圧濃度は、本明細書の他の箇所に記載されたような浸透圧調節剤を用いて調節することができる。この非経口組成物を密閉容器内に収容し、該組成物の微生物学的負荷を低減または排除するために最終滅菌を実施する。この非経口組成物は、分解及び他の有害な化学反応に対して安定的であり、薬学的に許容可能な保存可能期間を有する。
【0075】
本明細書で使用するとき、「安定的」は、患者への投与に適した状態が維持されていることを意味する。本開示に係る組成物は、室温に少なくとも12ヵ月維持された場合に安定的であることが見出された。また、本開示に係る組成物は、室温に12~24ヵ月維持された場合に概ね安定的である。
【0076】
本明細書で使用するとき、「無菌の」組成物は、無菌状態にされた後に微生物学的汚染に曝されていない、すなわち無菌組成物を収容している容器が損なわれていない、組成物を意味する。無菌組成物は、一般に、米国食品医薬品局の現行の適正製造規範(current Good Manufacturing Practice:cGMP)規則にしたがって、製薬会社で製造される。いくつかの態様では、無菌組成物は、加熱滅菌された容器内に収容される。容器は、医療現場での使用に適した任意の容器であり、例としては、これに限定しないが、バイアル、アンプル、バッグ、ボトル、及びシリンジが挙げられる。
【0077】
いくつかの態様では、無菌組成物は、非経口投与のための無菌の即時使用可能製剤の形態をとることができる。これにより、注入または注射の前に濃縮非経口製剤を注入希釈剤中に希釈することの不便さが回避されると共に、無菌操作中の微生物学的汚染のリスク及び任意の潜在的な計算または希釈誤差が低減する。あるいは、無菌組成物は、患者に投与する前に希釈される固体製剤であり得る。
【0078】
本明細書に開示された水性無菌医薬組成物は、それを必要とする患者への非経口投与に適している。例えば、水性無菌医薬組成物は、ボーラス注射または静脈内注入の形態で投与され得る。非経口投与のための適切な経路としては、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、及び髄腔内が挙げられる。本明細書に開示された即時使用可能な製剤は、好ましくはボーラス注射によって投与される。いくつかの態様では、組成物は、患者の表皮または真皮への経皮送達に適している。経皮的送達方法及び装置は当技術分野で既知であり、様々な方法を用いて医薬組成物が患者に送達される。
【0079】
水性無菌医薬組成物は、本明細書の他の箇所で説明されているように、1以上の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて製剤化される。水性無菌医薬組成物は、それを必要とする患者への投与に適するように製剤化される。張度、浸透圧、粘度、及び他のパラメータは、本明細書の他の箇所に記載されたような薬剤及び方法を用いて調節され得る。
【0080】
さらに別の態様では、本明細書に開示されるのは、非経口投与のための水性無菌医薬組成物である。この水性無菌医薬組成物は、化学式Iのピラジン化合物を約0.1~50mg/mL含む。また、この水性無菌医薬組成物は、本明細書の他の箇所で開示されているように、約0.01~2Mの緩衝剤を含む。また、この水性無菌医薬組成物は、約0~500mg/mLの浸透圧調節剤及び約0~500mg/mLの張度調節剤を含む。また、この水性無菌医薬組成物は、任意選択で、1以上の別の薬学的に許容可能な賦形剤を含み得る。薬学的に許容可能な賦形剤の例は、溶媒、pH調節剤、緩衝剤、酸化防止剤、張度調節剤、浸透圧調節剤、防腐剤、抗菌剤、安定化剤、粘度調節剤、界面活性剤、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。賦形剤の具体的な例は、本明細書の他の箇所に開示されている。
【0081】
水性無菌医薬組成物に使用されるピラジン化合物は、本明細書に開示された任意の化合物である。具体的な例としては、これに限定しないが、後述する実施例において調製されたすべての化合物が挙げられる。好適な一例は、実施例12に例示した分子である、(2R,2'R)-2,2'-((3,6ジアミノピラジン-2、5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)である(この分子は、MB-102、または3、6-ジアミノ-N,N-ビス(Dセリン)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドとも称される)。
【0082】
この水性無菌医薬組成物のpHは、患者への投与に適している。いくつかの態様では、pHは、4~9、好ましくは5~8、より好ましくは6~8、最も好ましくは7.0~7.5の範囲である。さらに別の態様では、pHは、6.7~7.7の範囲である。さらにより好ましくは、pHは、リン酸緩衝生理食塩水中で約7.2である。
【0083】
いくつかの態様では、ピラジンは、腎臓に少なくとも1つの医学的問題を有することが疑われるかまたは知られている患者に投与され、本明細書に開示された方法は、その患者の腎機能障害または不全のレベルを測定するために使用される。いくつかの態様では、上記の患者の推定GFR(eGFR)または以前に測定されたGFRが、110未満、90未満、60未満、30未満、または15未満である。患者のeGFRは、当技術分野で既知の標準的な医療技術を用いて測定される。いくつかの態様では、患者は、腎臓に医学的な問題を有していないか、または医学的な問題を有することを疑われていない。GFRモニタリングは、患者の一般的または定期的な健康評価の一部として、または予防的評価として実施される。
【0084】
当技術分野では知られているように、患者が血流から老廃物を除去する速度(すなわち、クリアランス半減期)は、患者の腎臓系の健康及び適切な機能性に依存する。この文脈において使用される「完全に除去される」は、血流中のピラジンのレベルが0.39%(すなわち、八半減期)未満に低下したことを意味する。クリアランス半減期は患者のGFRに依存し、疾患、年齢、または他の生理学的因子に起因して、腎臓系の機能が低下するにしたがって大幅に遅くなる。CKDに関連する既知の危険因子を有しておらず、正常なGFR及び/または正常なeGFRを有している患者では、単回注射報告時間は24時間である。いくつかの態様では、GFRまたはeGFRが110未満の患者では、単回注射報告時間は24時間である。GFRまたはeGFRが90未満の患者では、単回注射報告時間は24時間である。GFRまたはeGFRが60未満の患者では、単回注射報告時間は48時間である。GFRまたはeGFRが30未満の患者では、単回注射報告時間は48時間である。いくつかの態様では、GFRまたはeGFRが110未満の患者の単回注射報告時間は八半減期に等しい。GFRまたはeGFRが90未満の患者では、単回注射報告時間は八半減期に等しい。GFRまたはeGFRが60未満の患者では、単回注射報告時間は八半減期に等しい。GFRまたはeGFRが30未満の患者では、単回注射報告時間は八半減期に等しい。
【0085】
患者の尿中のタンパク質濃度の増加は、何らかの腎機能障害または不全を示唆し得るので、本明細書に開示された方法は、尿検査値がタンパク質濃度の増加を示す患者に適している。いくつかの態様では、患者は、標準的な医学的検査(例えば、ディップスティック検査)によって測定した場合に、高い尿中タンパク質濃度を有する。非限定的な例として、患者の尿検査値は、高いアルブミン濃度、高いクレアチニン濃度、高い血中尿素窒素濃度(すなわち、BUN検査)、またはそれらの任意の組み合わせを示し得る。
【0086】
上述の方法について引き続き説明すると、ピラジン誘導体は、これに限定しないが、可視光、紫外光、及び/または赤外光などの電磁放射線に暴露される。電磁放射線に対するピラジン誘導体の暴露は、任意の適切な時期に実施してよいが、ピラジン誘導体が患者の体内に存在する間に実施することが好ましい。電磁放射線に対するピラジン誘導体のこの暴露に起因して、ピラジンは、適切な検出装置によって検出可能なスペクトルエネルギー(例えば、可視光、及び/または赤外線)を放出する。ピラジン誘導体から放出されたスペクトルエネルギーは、ピラジン誘導体により吸収される波長範囲よりも大きい波長範囲を示す傾向がある。例として、これに限定しないが、一実施形態のピラジン誘導体が約440nmの光を吸収する場合、そのピラジン誘導体は約560nmの光を放出し得る。
【0087】
ピラジン(より具体的には、ピラジンから放出されたスペクトルエネルギー)の検出は、光学蛍光、吸光度、または光散乱技術を用いて実現することができる。いくつかの態様では、スペクトルエネルギーは蛍光である。いくつかの実施形態では、放出されたスペクトルエネルギーの検出は、放出されたスペクトルエネルギーの収集、及び収集されたスペクトルエネルギーを示す電気信号の生成として特徴付けられ得る。患者の体内に存在するピラジン誘導体から放出されたスペクトルエネルギーを検出するのに使用されるメカニズムは、選択された波長(または、波長の範囲)のみを検出するように設計してもよいし、及び/または、1以上の適切なスペクトルフィルタを含んでもよい。様々なカテーテル、内視鏡、イヤークリップ、ハンドバンド、ヘッドバンド、表面コイル、フィンガープローブなどが、ピラジン誘導体を電磁放射線に対して暴露させるのに、及び/または、ピラジン誘導体から放出されたスペクトルエネルギーを検出するのに使用され得る。ピラジンを電磁放射線に暴露させる装置、及びピラジンから放出されるスペクトルエネルギーを検出する装置は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。すなわち、1つまたは2つの装置が使用され得る。スペクトルエネルギーの検出は、1回またはそれ以上の回数で断続的に行ってもよいし、または、実質的に連続的に行ってもよい。
【0088】
患者の腎機能は、検出されたスペクトルエネルギーに基づいて決定することができる。このことは、検出されたスペクトルエネルギーを示すデータを用いて、患者の体内からのピラジン誘導体のクリアランスを示す強度/時間プロファイルを生成することによって実現される。このプロファイルは、生理学的または病理学的状態と相関し得る。例えば、患者のクリアランスプロファイル及び/またはクリアランス率を、既知のクリアランスプロファイル及び/またはクリアランス率と比較することによって、その患者の腎機能を評価し、患者の生理学的状態を診断することができる。体液中のピラジン誘導体の存在を分析する場合、腎機能を診断するために、(好ましくはリアルタイムで)濃度/時間曲線を作成して分析するとよい。あるいは、患者のクリアランスプロファイルを、同じ患者から以前に測定された1以上のクリアランスプロファイルと比較することにより、その患者の腎機能が経時的に変化したかどうかを判断することができる。いくつかの態様では、腎機能評価は、本明細書の他の箇所に開示されたシステムを使用して行われる。
【0089】
生理学的機能は、(1)正常のまたは損傷した細胞または器官が、血流からピラジン誘導体を除去する態様の差異の比較、(2)患者の器官または組織におけるピラジンの排出率または蓄積率の測定、及び/または、(3)ピラジンが存在する器官または組織のトモグラフィー画像の取得、によって評価することができる。例えば、血液プールクリアランスが、耳たぶや指に存在する毛細管表面から非侵襲的に測定されるか、または、例えば血管内カテーテルなどの適切な器具を使用して侵襲的に測定される。また、経皮蛍光は、患者の身体表面から非侵襲的にモニタリングすることもできる。患者の表皮上の多くの位置は、経皮蛍光を非侵襲的にモニタリングするのに適している。モニタリングされる部位は、脈管構造から組織への平衡が比較的迅速に生じる部位であることが好ましい。患者のモニタリングに適した部位の例としては、これに限定しないが、胸骨、胸骨下部、大胸筋、後頭三角、額、顎、上側臀部、及び下側臀部が挙げられる。関心のある細胞内でのピラジン誘導体の蓄積も、同様の方法を用いて評価することができる。
【0090】
改変された肺動脈カテーテルも、とりわけ、ピラジン誘導体から放出されたスペクトルエネルギーの所望の測定を行うために使用され得る。改変された肺動脈カテーテルの、ピラジンから放出されたスペクトルエネルギーを検出する能力は、血管内圧力、心拍出量、及び血流の他の派生的な測定値のみを測定する現行の肺動脈カテーテルと比べて顕著に向上する。従来、重症患者は、上記のパラメータのみを用いて治療されており、そのような治療は、腎機能を評価するための断続的な血液採取及び検査に依存する傾向があった。これらの従来のパラメータは、非連続的なデータを提供するため、しばしば、多くの患者集団において誤解を招く恐れがある。
【0091】
標準的な肺動脈カテーテルの改変は、その光ファイバセンサを波長特異的にすることのみを必要とする。混合静脈血酸素飽和度を測定するための光ファイバ技術が組み込まれたカテーテルは、現在存在する。一態様では、改変された肺動脈カテーテルは、標準的な肺動脈カテーテルの先端に波長特異的な光ファイバセンサが組み込まれたものである。この波長特異的な光ファイバセンサを使用することにより、本明細書に開示されたピラジン誘導体などの光学的に検出可能に設計された化学物質の腎機能特異的な排出をモニタリングすることができる。したがって、光学的に検出される化合物の消失/クリアランスにより、腎機能をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0092】
いくつかの態様では、ピラジン化合物は、少なくともステージ1のCKDと以前に診断されている患者に投与される。別の態様では、ピラジン化合物が投与される患者は、ステージ2のCKD、ステージ3のCKD、ステージ4のCKD、またはステージ5のCKDと以前に診断されている。さらに別の態様では、患者は、CKDとまだ診断されていないが、CKDに関連する1以上の危険因子を有する。さらに別の態様では、患者は、CKDの既知の危険因子を有していない。
【0093】
ピラジン化合物の投与は、実施される医学的検査及び患者の医療ニーズに基づいて、任意の適切な方法によって行われる。適切な方法は、本明細書の他の箇所に開示されている。好ましくは、ピラジンは、経皮投与または静脈内投与によって投与される。
【0094】
また、本明細書に開示されるのは、それを必要とする患者のGFRを測定するか、または腎機能を評価するためのシステムである。本システムは、コンピュータ装置と、コンピュータ装置に通信可能に接続された表示装置と、外部電源からのシステムの電気的絶縁を維持するべく、コンピュータ装置に動作可能に接続された電源と、コンピュータ装置に動作可能に接続された1以上のセンサヘッドと、電磁放射線に暴露されたときに発光するように構成された少なくとも1つのトレーサ剤と、を含む。コンピュータ装置は、センサヘッドを動作及び制御し、センサヘッドから送信された1以上の光測定値を記録し、光測定値に基づいて患者のGFRを計算するように構成される。
【0095】
本明細書で使用するとき、用語「接続」は、構成要素間の直接的な、機械的、電気的、及び/または通信接続に限定されず、複数の構成要素間の間接的な、機械的、電気的、及び/または通信接続を含んでもよいことに留意されたい。表示装置及び1以上のセンサヘッドは、有線ネットワーク接続(例えば、イーサネットまたは光ファイバ)、無線周波数(RF)などの無線通信手段(例えば、FMラジオ及び/またはデジタルオーディオ放送)、米国電気電子学会(IEEE(登録商標))の802.11規格(例えば、802.11(g)または802.11(n))、マイクロ波アクセスのための世界的相互運用性(WIMAX(登録商標))規格、BLUETOOTH(登録商標)などの短距離無線通信チャネル、携帯電話技術(例えば、移動通信のための世界標準規格(GSM))、衛星通信リンク、及び/または、他の適切な通信手段を用いてコンピュータ装置と通信され得る。IEEE(登録商標)は、米国ニューヨーク州ニューヨークのインスティチュート・オブ・エレクトリック・アンド・エレクトロニクス・エンジニアズ(Institute of Electrical and Electronics Engineers、 Inc.)の登録商標である。WIMAX(登録商標)は、米国オレゴン州ビーバートンのワイマックス・フォーラム(WiMax Forum)の登録商標である。BLUETOOTH(登録商標)は、米国ワシントン州カークランドのブルートゥースSIG(Bluetooth SIG、Inc.)の登録商標である。
【0096】
いくつかの態様では、1以上のセンサヘッドは、少なくとも1つの電磁放射線源を含み、電磁放射線を生成して患者の皮膚に送達させ、トレーサ剤から放射された電磁放射線を検出及び測定し、トレーサ剤から放射された電磁放射線の測定値をコンピュータ装置に送信する。2以上のセンサヘッドを有するシステムでは、各センサヘッドは互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、また、各センサヘッドから放射される電磁放射は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。いくつかの態様では、センサヘッドは、患者の皮膚に取り付けられるように構成される。例として、これに限定しないが、2つのセンサヘッドを有するシステムでは、一方のセンサヘッドで第1の波長の電磁放射線を放射及びモニタリングし、他方のセンサヘッドで第1の波長とは異なる第2の波長の電磁放射線を放射及びモニタリングすることができる。これにより、データを比較することが可能となり、その結果、GFR測定及び評価を実施する医療専門家が利用可能な情報の正確性を高めることができる。さらに別の非限定的な例では、2つのセンサヘッドを有するシステムにおいて、2つのセンサヘッドを使用して、最終相動態から局所的平衡動態を分離することができる。これにより、医療専門家は、平衡化が完了する時点を求めることが可能となり、その結果、センサの局所的な動きによるアーチファクトを低減させることができる。
【0097】
いくつかの態様では、トレーサ剤は、静脈内投与または経皮投与によって患者に投与され、患者の腎臓における糸球体濾過のみによって除去され、かつ、電磁放射線に暴露されたときにセンサヘッドによって検出可能な光を放射するように構成される。いくつかの態様では、トレーサ剤は、本明細書の他の箇所に開示されているような化学式Iのピラジン化合物である。好ましくは、トレーサ剤は、後述する実施例の1つにおいて調製された化合物である。最も好ましくは、トレーサ剤は、(2R、2´R)-2、2´-((3、6-ジアミノピラジン-2、5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)(MB-102、または3、6-ジアミノ-N2、N5-ビス(D-セリン)-ピラジン-2、5-ジカルボキサミドとも称される)である。いくつかの態様では、トレーサ剤は、それを必要とする患者への投与に適した製剤中のピラジン誘導体である。このような製剤は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0098】
患者のGFRを測定するかまたは腎機能を評価するためのシステムは、それを必要とする患者に対して本明細書に開示された方法を実施するように構成され得る。システム内のコンピュータ装置は、それと共に暗示されたすべての能力を有する任意の標準的なコンピュータであってよく、具体的には、これに限定しないが、永久メモリ、複雑な数学的計算が可能なプロセッサ、コンピュータとインタラクトするためのユーザインターフェース、及びコンピュータ装置に通信可能に接続された表示装置を含む。このため、コンピュータ装置の永久メモリは、患者のGFRを測定するため、または患者の腎機能を評価するためにシステムの機能を実行するのに必要な任意の情報、プログラム、及びデータを格納することができる。そのような情報、プログラム、及びデータは、1以上のセンサヘッドによって収集された経皮蛍光値を既知の値と比較するために使用され得る基準値及び/または対照値であり得る。いくつかの態様では、コンピュータ装置は、後日得られた結果と比較するために、患者の以前の評価またはGFR測定による結果を保存することができる。これにより、医療専門家が患者の腎臓の健康状態を経時的にモニタリングすることが可能になる。いくつかの態様では、コンピュータ装置は、ラップトップコンピュータである。
【0099】
様々な態様では、コンピュータ装置は、プロセッサ及び/またはメモリデバイスを含む。様々な別の態様では、プロセッサは、システムバスを介して、ユーザインターフェース、表示装置、及びメモリ装置のうちの1または複数に接続される。一態様では、プロセッサは、表示装置を介してユーザに指示することによって、及び/または、ユーザインターフェースを介してユーザ入力を受信することによって、ユーザと通信する。「プロセッサ」という用語は、一般に、システム及びマイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理回路(PLC)、及び本明細書に記載された機能を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサを使用するシステムを含む、任意のプログラム可能なシステムを指す。上記の例は単なる例であり、したがって、用語「プロセッサ」の定義及び/または意味をいかなる形でも制限することを意図しない。
【0100】
様々な態様では、メモリデバイスは、実行可能命令及び/または他のデータなどの情報を格納及び検索することを可能にする1以上のデバイスを含む。さらに、メモリデバイスは、これに限定しないが、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ソリッドステートディスク、及び/またはハードディスクのような、1以上のコンピュータ可読媒体を含む。様々な態様では、メモリデバイスは、これに限定しないが、アプリケーションソースコード、アプリケーションオブジェクトコード、構成データ、追加の入力イベント、アプリケーション状態、アサーションステートメント、検証結果、及び/または任意の他のタイプのデータを格納する。
【0101】
ユーザインターフェースは、GFRを測定するため、または患者の腎機能を評価するために、例えばシステムオペレータなどのユーザから少なくとも1つの入力を受信するように構成される。一態様では、ユーザインターフェースは、ユーザが関連情報を入力することを可能にするキーボードを含む。様々な別の態様では、ユーザインターフェースは、これに限定しないが、ポインティングデバイス、マウス、スタイラス、タッチパネル(例えば、タッチパッド、タッチスクリーン)、ジャイロスコープ、加速度計、位置検出器、及び/または音声入力インターフェース(例えば、マイクロフォンなど)を含む。
【0102】
表示装置は、入力イベント及び/または検証結果などの情報をユーザに対して表示するように構成される。表示装置はまた、少なくとも1つの表示装置に接続されたディスプレイアダプタを含み得る。一態様では、表示装置は、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び/または「電子インク」ディスプレイなどの視覚表示装置であり得る。様々な別の態様では、表示装置は、音声出力装置(例えば、オーディオアダプタ及び/またはスピーカ)、及び/またはプリンタを含む。いくつかの態様では、表示装置は、タッチスクリーンを含む。
【0103】
様々な態様では、コンピュータ装置は、一般的に、プロセッサを含む。プロセッサは、1以上の実行可能命令を用いてオペレーションを符号化し、実行可能命令をメモリ装置に供給することによってプログラムされ得る。一態様では、プロセッサは、腎減衰の時定数を予め定められた期間にわたって算出するようにプログラムされる。一態様では、患者の経皮蛍光データが予め定められた期間にわたって収集され、時間(X軸)対蛍光(Y軸)のグラフが作成される。減衰率は曲線状でも直線状でもよく、減衰率の時定数が算出される。一態様では、減衰率は、片対数(y)プロットに対して線形である。時定数を既知の値と比較することによって、患者のGFRが決定される。いくつかの態様では、減衰率は、標準的な一次動力学に対応する。さらに別の態様では、減衰率は、マルチコンパートメント薬物動態モデルを示し得る。図3A図3Dは、標準的な薬物動態ソフトウェアにより腎減衰の時定数を決定することができる2コンパートメント薬物動態を示す図である。
【0104】
GFR測定は、線形回帰、外れ値除外、相関係数(R2)の計算、及び較正の標準誤差を用いて行われ、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【0105】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ本発明を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに記載内容に組み入れられたあらゆる方法の実施を含む)することを可能にしている。本明細書に開示された任意の態様または実施形態は、当業者により理解される任意の他の態様または実施形態と組み合わせて使用することができる。他の実施形態は、各請求項の文言と異なっていない構成要素を含む場合、またはそれらが各請求項の文言とは実質的には異ならない均等な構成要素を含む場合、それらの請求項の特定する技術範囲内にあるものとする。
【0106】
実施例1
【0107】
3,6-ジアミノ-N,N,N,N-テトラキス(2-メトキシエチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドの調製
【0108】
【化3】
【0109】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(200mg、1.01mmol)、ビス-2-(メトキシエチル)アミン(372μL、335.5mg、2.52mmol)、HOBt-H2O(459mg、3.00mmol)及びEDC-HCl(575mg、3.00mmol)の混合物を、室温で1時間、DMF(20mL)中で共に撹拌した。混合物を濃縮乾固し、残渣を酢酸エチル及び水で分配した。層を分離し、酢酸エチル溶液を飽和NaHCO及びブラインで洗浄した。溶液を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。ラジアルフラッシュクロマトグラフィー(SiO、10/1CHCl-メタノール)による精製により、228.7mg(収率53%)の実施例1をオレンジ色の泡状物として得た。:H NMR(300MHz、CDCl)、δ4.92(s、4H)、3.76(見かけ上のt、J=5.4Hz、4H)、3.70(見かけ上のt、J=5.6Hz、4H)、3.64(見かけ上のt、J=5.4Hz、4H)、3.565(見かけ上のt、J=5.4Hz)、3.67(s、6H)、3.28(s、6H)。13CNMR(75MHz、CDCl3)167.6(s)、145.6(s)、131.0(s)、72.0(t)、70.8(t)、59.2(q)、49.7(t)、47.1(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで3.14分、(M+H)=429。UV/vis(PBS中100μM)λabs=394nm。蛍光(100μm)λex=394nmλem=550nm。
【0110】
実施例2
【0111】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0112】
【化4】
【0113】
ステップ1. 3,6-ジアミノ-N,N-ビス((2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドの合成
【0114】
【化5】
【0115】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(350mg、1.77mmol)、ラセミ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メタンアミン(933μL、944mg、7.20mmol)、HOBt-HO(812mg、5.3mmol)及びEDC-HCl(1.02g、5.32mmol)の混合物を、室温で16時間、DMF(20mL)中で共に撹拌した。混合物を濃縮乾固し、残渣を酢酸エチル及び水で分配した。層を分離し、酢酸エチル溶液を飽和NaHCO及びブラインで洗浄した。溶液を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、665mg(収率88%)のビス-アミドジアステレオマ対を黄色の固体として得た。:NMR(300MHz,CDCl)δ8.38(t、J=5.8Hz、2H)、6.55(s、4H)、4.21(クインテット、J=5.8Hz、2H)、3.98(dd、J=8.4Hz、6.3Hz、2H)、3.65(dd、J=8.4Hz、J=5.8Hz、2H)、3.39(見かけ上のカルテット-ジアステレオ異性混合物、J=5.9Hz、4H)、1.35(s、6H)、1.26(s、6H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ165.7(s)、146.8(s)、126.8(s)、109.2(s)、74.8(d)、67.2(t)、42.2、41.1(t-ジアステレオ異性体対)、27.6(q)、26.1(q)。
【0116】
ステップ2. ステップ1で得られた生成物をTHF(100mL)に溶解し、1.0N HCl(2mL)で処理した。加水分解が完了した後、混合物をKCO(1g)で処理し、1時間撹拌し、メタノールを用いてC18のプラグを通して濾過した。濾過液を濃縮乾固し、残渣をメタノール(50mL)で粉砕した。固体を濾過し、廃棄し、残渣をエーテル(50mL)で処理した。沈殿物を濾過によって収集し、高真空下で乾燥させた。この物質を放射状フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、橙色の固体として221mg(収率36%)の実施例2を得た。:NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.00(bm、6H)、5.39(bs、2H)、4.88(bs、2H)、3.63-3.71(複合体m、2H)、3.40(dd、J=11.1、5.10Hz、2H)、3.28(dd、J=11.1、6.66Hz、2H)2.92(dd、J=12.6、3.3Hz、2H)、2.65(dd、J=12.6、8.4Hz、2H)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで4.13分、(M+H)=345。UV/vis(HO中100mM)λabs=432nm。蛍光λex=432nm、λem=558nm。
【0117】
実施例3
【0118】
(2S,2'S)-2,2'-((3,6ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)
【0119】
【化6】
【0120】
ステップ1. ジメチル2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))(2S,2'S)-ビス(3-(ベンジルオキシ)プロパン酸)の合成
【0121】
【化7】
【0122】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(300mg、1.24mmol)、L-Ser(OBn)-OMe‐HCl塩(647mg、2.64mmol)、HOBt-HO(570mg、3.72mmol)、及びEDC-HCl(690mg、3.60mmol)の混合物をDMF(25mL)中で、TEA(2mL)で処理した。得られた混合物を16時間撹拌し、濃縮した。実施例1のように後処理を行うと、370mg(収率51%)のビスアミドが明るい黄色の粉末として得られた。:NMR(300MHz、CDCl):δ8.47(d、J=8.74Hz、2H)、7.25-7.37(m、10H)、5.98(bs、4H)、4.85(dt、J=8.7、3.3Hz、2H)、4.56(ABq、J=12.6、Hz、Δv=11.9Hz、4H)、3.99(dのABqの1/2、J=8.7、3.3Hz、2H)、3.76-3.80(不明瞭なABqの1/2、2H)、3.78(s、6H)。13CNMR(75MHz、CDCl)δ170.5(s)、165.1(s),146.8(s)、138.7(s)、128.6(d)、128.1(d)、127.8(d)、126.9(s)、73.5(t)、69.8(t)、53.0(q)、52.9(q)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで4.93分、(M+H)=581。
【0123】
ステップ2. (2S,2'S)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)-ビス(アザンジイル))ビス(3-(ベンジルオキシ)プロパン酸)の合成
【0124】
【化8】
【0125】
THF(10mL)中のステップ1で得られた生成物(370mg、0.64mmol)を1.0N水酸化ナトリウム(2.5mL)で処理した。室温で30分間撹拌した後、反応はTLCにより完了したと判断した。1.0N HClの添加によりpHを約2に調整し、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した(3回)。層を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、353mg(収率100%)の二酸を橙色(オレンジ色)の泡状物として得た。:LCMS(10分以上、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、30mmカラムでの保持時間=4.41分、(M+H)=553。
【0126】
ステップ3. メタノール(20mL)中のステップ2からの生成物(353mg、0.64mmol)に、5%パラジウム/C(300mg)及びギ酸アンモニウム(600mg)を添加した。得られた反応物を還流下で2時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、セライトのプラグを通して濾過し、濃縮した。残渣をメタノール-エーテルから再結晶して、191mg(収率80%)の実施例3を黄色の泡状物として得た。:NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.48(d、J=6.9Hz、2H)、3.60(見かけ上のカルテット、J=5.1Hz、2H)、3.60(見かけ上のABqのダブレット;3.71を中心とするダウンフィールドグループ、J=9.9、5.1Hz、2H;アップフィールドグループ3.48、J=20.99、6.3Hz、2H)。13CNMR(75MHz、CDCl)δ172.9(s)、164.9(s)、147.0(s)、127.0(s)、62.9(d)、55.7(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで1.45分、(M+H)=373。UV/vis(PBS中100μM)λabs=434nm。蛍光λex=449nm、λem=559nm。
【0127】
実施例4
【0128】
3,6-ビス(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-N,N,N,N-テトラキス(2-メトキシエチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドビス(TFA)塩
【0129】
【化9】
【0130】
ステップ1. 3,6-ジブロモピラジン-2,5-ジカルボン酸の合成
【0131】
【化10】
【0132】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(499mg、2.52mmol)を48%臭化水素酸(10mL)に溶解し、氷塩溶液中で0℃に冷却した。この攪拌混合物に、温度が5℃未満に保たれるように、亜硝酸ナトリウム(695mg、10.1mmol)の水(10mL)溶液を滴下した。得られた混合物を5~15℃で3時間撹拌し、その間に赤色の混合物は黄色の溶液となった。黄色の溶液を水(100mL)中の臭化第二銅(2.23g、10.1mmol)の溶液に注ぎ、得られた混合物を室温で撹拌した。さらに3時間後、水性混合物を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた抽出物を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮して、440mg(収率54%)の3,6-ジブロモピラジン-2,5-ジカルボン酸を淡黄色の固体として得た。:13C NMR(75MHz、CDCl)δ164.3(s)、148.8(s)、134.9(s)。HPLC(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで2.95分。
【0133】
ステップ2. 3-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-6-ブロモ-N,N,N,N-テトラキス(2-メトキシエチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドの合成
【0134】
【化11】
【0135】
ステップ1で得られた生成物(440mg、1.36mmol)をDMF(25mL)に溶解し、HOBt-HO(624mg、4.08mmol)及びEDC-HCl(786mg,4.10mmol)で処理し、室温で30分間撹拌した。ビス(2-メトキシエチル)アミン(620mL、559mg、4.20mmol)を加え、得られた混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮した。残渣を水及び酢酸エチルで分配した。酢酸エチル層を分離し、水層を再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を0.5N HCl、飽和重炭酸ナトリウム、及びブラインで洗浄した。有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮して、3-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-6-ブロモ-N,N,N,N-テトラキス(2-メトキシエチル)2,5-ジカルボキサミド(収率26%)を褐色の油状物として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで3.85分、(M+H)+=608。
【0136】
ステップ3. ステップ2で得られた生成物(116mg、0.19mmol)に、ビス(2-メトキシエチル)アミン(3.0mL、2.71g、20.3mmol)及び「スパチュラチップ」1杯のPd(PPhを加えた。得られた混合物を140℃で2時間加熱した。反応物を冷却し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、10/1 CHCl-メタノール)で精製した。得られた物質を中圧逆相クロマトグラフィー(C18、0.1%TFA中で10-50%の手動でのグラジエントアセトニトリル)で再度精製して、橙色-茶色のフィルムとして12mg(収率10%)の実施例4を得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで3.85分、(M+H)=661.UV/vis(PBS中100μM)λabs=434nm。蛍光λex=449nm、λem=559nm。
【0137】
実施例5
【0138】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス(2-アミノエチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドビス(TFA)塩
【0139】
【化12】
【0140】
ステップ1. 3,6-ジアミノ-N,N-ビス[2-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノエチル]ピラジン-2,5-ジカルボキサミドの合成
【0141】
【化13】
【0142】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸ナトリウム(500mg、2.07mmol)、tert-ブチル2-アミノエチルカルバメート(673mg、4.20mmol)、HOBt-HO(836mg、5.46mmol)及びEDC-HCl(1.05g、5.48mmol)の混合物をDMF(25mL)中で16時間撹拌し、濃縮した。実施例1のように後処理を行うと、770mg(収率76%)のビスアミドが橙色の泡状物として得られた。:NMR(300MHz、DMSO-d)主要配座異性体、δ8.44(t、J=5.7Hz、2H)、6.90(t、J=5.7Hz、2H)、6.48(bs、4H)、2.93-3.16(複合体m、8H)、1.37(s、9H)、1.36(s、9H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)、配座異性体δ165.1(s)、155.5(bs)、155.4(bs)、146.0(s)、126.2(s)、77.7(bs)、77.5(bs)、45.2(bt)、44.5(bt)、28.2(q)。
【0143】
ステップ2. 塩化メチレン(100mL)中のステップ1で得られた生成物(770mg、1.60mmol)にTFA(25mL)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣をメタノール(15mL)に溶解した。エーテル(200mL)を加え、橙色の固体沈殿物を濾過により単離し、高真空下で乾燥させ、橙色の粉末として627mg(収率77%)の実施例5を得た。:NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.70(t、J=6Hz、2H)、7.86(bs、6H)、6.50(bs、4H)、3.46-3.58(m、4H)、3.26-3.40(m、4H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)δ166.4(s)、146.8(s)、127.0(s)、39.4(t)、37.4(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで3.62分、(M+H)=283。UV/vis(PBS中100μM)λabs=435nm。蛍光(100nM)λex=449nm、λem=562nm。
【0144】
実施例6
【0145】
3,6-ジアミノ-N、N-ビス(D-アスパラギン酸)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0146】
【化14】
【0147】
ステップ1. 3,6-ジアミノ-N,N-ビス(ベンジルD-O-ベンジル-アスパルテート)-ピラジン-2,5-ジカルボキサミドの合成
【0148】
【化15】
【0149】
3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸ナトリウム(600mg、2.48mmol)、Asp(OBn)-OMe-p-TosH塩(2.43g、5.00mmol)、HOBt-HO(919mg、6.00mmol)、及びEDC-HCl(1.14g、5.95mmol)の混合物をDMF(50mL)中で、TEA(4mL)で処理した。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を濃縮し、残渣を水及び酢酸エチルで分配した。酢酸エチル層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム、水及びブラインで連続的に洗浄した。酢酸エチル溶液を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、50/1 CHCl-メタノール~10/1 CHCl-メタノール)により精製して、ビスアミド1.15g(収率58%)を黄色の泡状物として得た。:NMR(500MHz、CDCl)δ8.61(d、J=8.4Hz、2H)、7.29-7.39(m、20H)、5.85(bs、4H)、5.22(ABq、J=10.0Hz、Δv=17.3Hz、4H)、5.10(ABq、J=12.2Hz、Δv=34.3Hz、4H)、5.06-5.09(obs m、2H)、3.11(dのABq、J=17.0、55.14Hz、Δv=77.9Hz、4H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ170.7(s)、170.7(s)、165.4(s)、147.0(s)、135.7(s)、135.6(s)、129.0(d)、128.9(d)、128.8(d)、128.75(d)、128.7(d)、126.9(s)、68.0(t)、67.3(t)、49.1(d)、37.0(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で50-95%の、勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで5.97分、(M+H)=789。
【0150】
ステップ2. ステップ1で得られた生成物(510mg、0.65mmol)にTHF(20mL)及び水(10mL)を添加した。撹拌混合物に、10%パラジウム/C(500mg)及びギ酸アンモニウム(1g)を添加した。得られた混合物を60℃で2時間加熱し、室温まで冷却した。混合物をセライトで濾過し、濃縮した。得られた物質を中圧逆相クロマトグラフィー(C18、0.18%TFA中で10-70%の手動での勾配アセトニトリル)により再度精製して、137.8mg(収率54%)の実施例6を橙色の固体として得た。:NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.62(d、J=8.4Hz、2H)、6.67(bs、4H)、4.725(dt、J=8.4、5.4Hz、2H)、2.74-2.88(複合体m、4H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)δ172.6(s)、165.2(s)、147.0(s)、126.6(s)、60.8(t)、49.1(d)。LCMS(10分以上、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで4.01分、(M+H)=429。UV/vis(PBS中で100μM)λabs=433nm。蛍光(100nM)λex=449nm、λem=558nm。
【0151】
実施例7
【0152】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス(14-オキソ-2,5,8,11-テトラオキサ-15-アザヘプタデカン-17-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0153】
【化16】
【0154】
DMF(5mL)中の実施例5(77.4mg、0.15mmol)の溶液に、TEA(151mg,1.49mmol)及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2,5,8,11-テトラオキサテトラデカン(113mg、0.34mmol)を加え、反応物を室温で16時間撹拌した。反応物を濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(LiChroprep(登録商標)RP-18 Lobar(B)25x310mm-EMD chemicals 40-63μm、~70g、90/10~80/20 0.1%TFA-ACN)により精製して、37.4mg(収率35%)の実施例7を橙色のフィルムとして得た。:H NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.47(t、J=5.7Hz、2H)、7.96(t、J=5.4Hz、2H)、3.20-3.60(複合体m、36H)、3.47(s、3H)、3.46(s、3H)、2.30(t、J=6.3Hz、4H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)δ170.2(s)、165.1(s)、146.0(s)、126.2(s)、71.2(t)、69.7(t)、69.6(t)、69.5(t)、69.4(t)、66.7(t)、58.0(q)、38.2(t)、36.2(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで4.01分、(M+H)=719、(M+Na)=741。UV/vis(PBS中で100μM)。λabs=437nm。蛍光(100nM)λex=437nm、λem=559nm。
【0155】
実施例8
【0156】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス(26-オキソ-2,5,8,11,14,17,20,23-オクタオキサ-27-アザノナコサン-29-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0157】
【化17】
【0158】
DMF(5mL)中の実施例5(50.3mg、0.10mmol)の溶液に、TEA(109mg、1.08mmol)及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2,5,8,11,14,17,20,23-オクタオキサヘキサコサン-26-オエート(128mg、0.25mmol)を加え、反応物を室温で16時間撹拌した。反応物を濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(LiChroprep(登録商標)RP-18 Lobar(B)25×310mm-EMD chemicals 40-63μm、~70g、90/10~80/20 0.1%TFA-ACN)により精製して、87.9mg(収率82%)の実施例8を橙色のフィルムとして得た。:H NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.46(t、J=5.7Hz、2H)、7.96(t、J=5.4Hz、2H)、3.16-3.73(複合体m、74H)、2.28-2.32(m、2H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)-多重立体配座-δ170.1(s)、169.9(s)169.8(s)、165.1(s)、146.0(s)、126.2(s)、71.2(t)、69.7(t)、69.6(t)、69.5(t)、66.7(t)、58.0(q)、38.2(t)、36.2(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで5.90分、(M+H)=1071、(M+2H)2+=536。UV/vis(PBS中で100μM)λabs=438nm。蛍光(100nM)λex=438nm、λem=560nm。
【0159】
実施例9
【0160】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス(38-オキソ-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカオキソ-39-アザヘンテトカルスルン41-イル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0161】
【化18】
【0162】
DMF(5mL)中の実施例5(53.1mg、0.10mmol)の溶液に、TEA(114mg、1.13mmol)及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32,35-ドデカ-オキサオクタトリアコンタン-38-オアート(144mg、0.21mmol)のDMF(2.0mL)溶液に加え、得られた混合物をその後16時間撹拌した。反応物を濃縮し、残渣を中圧逆相クロマトグラフィー(LiChroprep(登録商標)RP-18 Lobar(B)25×310mm-EMD chemicals 40-63μmm、~70g、90/10~80/20 0.1%TFA-ACN)により精製して、87.5mg(収率61%)の実施例9を橙色のフィルムとして得た。:NMR(300MHz、DMSO-d)δ8.48(t、J=5.7Hz、2H)、7.96(t、J=5.4Hz、2H)、7.80-7.86(m、2H)、5.94(bm、2H)、3.30-3.60(複合体m、106H)、2.26-2.33(m、4H)。13C NMR(75MHz、DMSO-d)δ170.2(s)、165.1(s)、146.0(s)、126.2(s)、71.2(t)、69.7(t)、69.6(t)、69.5(t)、66.7(t)、58.0(q)、38.2(t)、36.2(t)である。LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで5.90分、(M+2H)2+=712。UV/vis(PBS中で100μM)λabs=449nm。蛍光(100nM)λex=449nm、λem=559nm。
【0163】
実施例10
【0164】
ビス(2-(PEG-5000)エチル)6-(2-(3,6-ジアミノ-5-(2-アミノエチルカルバモイル)ピラジン-2-カルボキサミド)エチルアミノ)-6-オキソヘキサン-1,5-ジイルジカルバメート
【0165】
【化19】
【0166】
DMF(30mL)中の実施例5(25mg、0.049mmol)の溶液をTEA(1mL)及びm-PEG2-NHS(1g、0.1mmol)で処理し、得られた混合物を室温で48時間撹拌した。混合物を濃縮し、残渣をゲル濾過クロマトグラフィー(G-25樹脂、水)により部分的に精製した。生成物を濃縮し、中圧逆相クロマトグラフィー(C18、0.18%TFA中で10-70%の手動勾配アセトニトリル)によりさらに精製して、137.8mg(収率54%)の実施例10を黄褐色固体として得た。:Maldi MS m/z=11393。
【0167】
実施例11
【0168】
(R)-2-(6-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-5-シアノ-3-モルホリノピラジン-2-カルボキサミド)コハク酸
【0169】
【化20】
【0170】
ステップ1. 2-アミノ-5-ブロモ-3,6-ジクロロピラジンの合成
【0171】
【化21】
【0172】
メタノール(500mL)中の2-アミノ-6-クロロピラジン(25g、193.1mmol)の溶液をNBS(34.3g、193.1mmol)で1時間かけて少しずつ処理した。その後、得られた混合物を16時間攪拌した。この時点でのTLC分析は少量の出発物質が残っていることを示していた。別の1.4gのNBSを加え、反応物を50℃まで、2時間加熱した。次いで、混合物を38℃に冷却し、NCS(25.8g、193.1mmol)で処理した。その後、反応混合物を50℃まで、16時間加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、水(500mL)で処理した。沈殿物を濾過によって集め、真空デシケータ中で乾燥させ、2-アミノ-5-ブロモ-3,6-ジクロロピラジン45.4g(収率97%)を白色固体として得た。:13C NMR(75MHz、CDCl)δ149.9(s)、145.6(s)、129.6(s)、121.5(s)。LCMS(0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=30mmカラムで4.51分、(M+H)=244、(M+H+ACN)=285。
【0173】
ステップ2. 5-アミノ-3,6-ジクロロピラジン-2-カルボニトリルの合成
【0174】
【化22】
【0175】
CuCN(8.62g、96.3mmol)及びNaCN(4.72g、96.3mmol)の混合物を高真空下で90℃まで加熱した。得られた混合物を3回のアルゴン/真空のサイクルに付し、アルゴンの最終正圧下に置いた。混合物を室温に冷却し、DMF(150mL)を添加した。不均一混合物を130℃で2.5時間加熱した。得られたジシアノ銅(I)酸ナトリウムの均一混合物に、DMF(150mL)に溶解したステップ1の生成物(15.6g、64.2mmol)の溶液を1時間かけて滴下した。温度を150℃まで徐々に上げ、得られた混合物をこの温度で10時間攪拌した。次いで、反応物を室温まで冷却し、水(1L)に注いだ。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた抽出物を濾過して綿状の暗色固体を除去し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、再度濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、10/1~3/1ヘキサン-酢酸エチル)により精製して、6.70g(収率55%)のニトリル生成物を黄褐色固体として得た。:13C NMR(75MHz、CDCl)δ153.9(s)、149.1(s)、131.7(s)、115.4(s)、111.0(s)。GCMS注入口:温度=280℃、1.0mL/分のヘリウム流速、温度プログラム:100℃(2分保持)、300℃まで勾配、@10℃/分(2分保持)、主要ピーク保持時間=16.556分、m/z(EI)=188,190。
【0176】
ステップ3. 5-アミノ-3-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-6-クロロピラジン-2-カルボニトリルの合成
【0177】
【化23】
【0178】
ACN(20mL)中のステップ2で得られた生成物(1.00g、5.29mmol)にビス(2-メトキシエチル)アミン(3.0mL、2.71g、20.3mmol)を加え、反応混合物を70℃まで16時間加熱した。反応物を冷却し、濃縮した。残渣を酢酸エチル及び水で分配した。有機層を分離し、水層を再び酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO,10/1~1/1ヘキサン-酢酸エチル)により精製して、所望の付加物950mg(収率63%)を黄色固体として得た。:NMR(300MHz、CDCl)δ7.47(bs、2H)、3.77(t、J=5.7Hz、4H)、3.52(t、J=5.4Hz、4H)、3.25(s、6H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ154.7(s)、152.0(s)、120.9(s)、119.5(s)、95.8(s)、71.0(t)、59.1(q)、50.0(t)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で50-95%の勾配アセトニル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで4.91分、(M+H)=286、(M+Na)=308、(M+Na+ACN)=349。
【0179】
ステップ4. 3-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-5-ブロモ-6-クロロピラジン-2-カルボニトリルの合成
【0180】
【化24】
【0181】
0℃(氷-塩浴)の48%臭化水素酸(20mL)中のステップ3で得られた生成物(1.39g、4.88mmol)に、亜硝酸ナトリウム(673mg、9.75mmol)の水溶液(10mL)を30分かけて滴下した。得られた混合物を0-5℃で1時間撹拌し、CuBr(1.64g、7.34mmol)の撹拌水溶液(10mL)に注いだ。得られた混合物をその後室温で16時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、50/1CHCl-メタノール)による精製により、1.00g(収率58%)の臭化物を橙褐色の固体として得た。:NMR(300MHz、CDCl)δ3.99(t、J=5.4Hz、4H)、3.64(t、J=5.4Hz、4H)、3.35(s、6H)。13C NMR(75MHz、CDCl)δ152.8(s)、140.8(s)、133.4(s)、117.2(s)、108.3(s)、70.4(t)、59.1(t)、50.5(q)。LCMS(10分間、0.1%TFA中で50-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで4.55分、(M+H)=349、351。
【0182】
ステップ5. 3-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-6-クロロ-5-(フラン-2-イル)ピラジン-2-カルボニトリルの合成
【0183】
【化25】
【0184】
ステップ4からの生成物(1.0g、2.87mmol)、2-フランボロン酸(643mg、5.75mmol)、CsCO(3.31g、10.2mmol)、TFP(35mol%、236mg、1.02mmol)Pddba-CHCl(5mol%、10mol%パラジウム、150mg)の混合物を3回の真空/アルゴンサイクルにかけ、アルゴンの陽圧下に置いた。無水ジオキサン(50mL)を加え、その後反応混合物を75℃まで16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、ミディアム・フリット(medium frit)で濾過した。フラッシュクロマトグラフィー(SiO、50/1CHCl-メタノール)による残渣の濃縮及び精製により、757mgのフラン付加物(収率78%)を黄褐色の粉末として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで6.41分、(M+H)=337。
【0185】
ステップ6. 6-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-3-クロロ-5-シアノピラジン-2-カルボン酸の合成
【0186】
【化26】
【0187】
ACN(11mL)、CCl(7mL)及び水(11mL)をよく攪拌した混合物に、過ヨウ素酸ナトリウム(1.07g、5.00mmol)及びRuO・HO(13.3mg、0.10mmol)を順次加えた。得られた混合物を室温で30分間激しく撹拌し、重炭酸ナトリウム(2.10g、25.0mmol)、続いて水(5mL)で処理した。さらに15分間激しく撹拌した後、ACN(1mL)に溶解したステップ5の生成物(276mg、0.82mmol)の溶液を添加した。緑色の混合物を室温で5.5時間撹拌した。混合物を分液漏斗に移し、酢酸エチルで抽出した。水層をpH~3.5に調整し、酢酸エチルで再度抽出した(2回)。合わせた抽出物を20%亜硫酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄し、乾燥させた(NaSO)。濾過し、濃縮して、140mg(収率54%)のカルボン酸を淡黄色の固体として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で5-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで5.05分、(M+H)=315。
【0188】
ステップ7. (R)-ジベンジル2-(6-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-3-クロロ-5-シアノピラジン-2-カルボキサミド)コハク酸の合成
【0189】
【化27】
【0190】
無水DMF(25mL)中のステップ1からの生成物(140mg、0.45mmol)、EDC-HCl(128mg、0.67mmol)、及びHOBt-HO(102mg、0.67mmol)の混合物を、30分間室温で共に撹拌した。この撹拌混合物に、(R)-ジベンジル2-アミノコハク酸塩p-TsOH塩(213mg、0.44mmol)、続いてTEA(1mL)を添加した。得られた混合物をその後16時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチル及び飽和重炭酸ナトリウム溶液で分配した。酢酸エチル層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム及びブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮して240mgのピラジンアミド(収率88%)を橙色の泡状物として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで8.76分、(M+H)=610、(M+Na)=632。
【0191】
ステップ8. (R)-ジベンジル2-(6-(ビス(2-メトキシエチル)アミノ)-5-シアノ-3-モルホリノピラジン-2-カルボキサミド)コハク酸塩
【0192】
【化28】
【0193】
ステップ7からの生成物(240mg、0.39mmol)にモルホリン(5mL)を添加した。反応混合物を70℃まで2時間加熱した。混合物を冷却し、濃縮した。残渣を酢酸エチル及び水で分配した。酢酸エチル層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム及びブラインで洗浄した。酢酸エチル層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO、3:1~1:1ヘキサン-酢酸エチル)で精製して、199mg(収率75%)のモルホリン付加物を橙色の泡状物として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mMカラムで8.76分、(M+H)=661、(M+Na)=683。
【0194】
ステップ9. 実施例11の合成
【0195】
【化29】
【0196】
THF(10mL)中のジベンジルエステル(115mg、0.17mmol)に1.0N水酸化ナトリウム(4mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。 1.0N HClでpHを~2に調整し、溶液を濃縮した。中圧逆相クロマトグラフィー(LiChroprep RP-18 Lobar(B)25×310mm-EMD chemicals 40-63(μm、~70g、90/10~50/500.1%TFA-ACN)による残渣の精製)により32mg(収率27%)の実施例11を橙色の固体として得た。:LCMS(10分間、0.1%TFA中で15-95%の勾配アセトニトリル)、単一ピーク保持時間=250mmカラムで4.47分、(M+H)=481。UV/vis(PBS中で100μM)λabs=438nm。 蛍光(100nM)λex=449nm、λem=570nm。
【0197】
実施例12
【0198】
(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)(「D-セリン異性体」または「MB-102」)
【0199】
【化30】
【0200】
ステップ1. ジベンジル2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))(2R,2'R)-ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)の形成
【0201】
クライゼンアダプタ及び添加漏斗を備えた丸底フラスコ(500mL)に、D-セリンベンジルエステル塩酸塩(24.33g、105.0mmol)を入れ、カニューレを用いて無水DMF(300mL)を添加した。溶液を氷浴中で冷却し、N雰囲気下で15分間撹拌した。DIPEA(19.16mL、110.0mmol)を、添加漏斗を用いて30分かけて少しずつ添加し、さらに30分後、冷却浴を除去し、二酸(9.91g、50.0mmol)を一度に添加した。赤レンガ色の懸濁液を30分間攪拌し、HOBt-H2O(17.61g、115.0mmol)を一度に添加した。15分後、反応フラスコを氷浴中で冷却し、EDC-HCl(22.05g、115.0mmol)を15分かけて添加した。その結果得られた懸濁液を室温まで徐々に温め、N下で一晩(約17時間)撹拌した。
【0202】
暗色の溶液を高真空(浴温度60°C)下でシロップ状の残渣に濃縮し、酢酸エチルとMilli-Q水(各400mL)とに分配した。それらの層を分離し、水層を酢酸エチル(3回、200mL)で抽出した。混ぜ合わせた酢酸エチル抽出物を、0.50M KHSO、飽和NaHCO、水、及びブライン(各250mL)で連続的に洗浄した。減圧下で溶媒を除去すると、23.7gのオレンジ色の固体が得られた。粗生成物を、CHCl:MeOH勾配を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで精製し、ビスアミド(19.6g、71%)をオレンジ色の固体として得た:Rf0.45[CHCl:MeOH(9:1、v/v)]。H NMR(DMSO-d)δ8.56(d、J=8.0Hz、2H、DOと交換可能)、7.40-7.33(m、10H)、6.76(s、4H、DOと交換可能)、5.37(t、J=5.5Hz、2H)、5.20(m、4H)、4.66-4.63(dt、J=8.0、4.0Hz、2H)、3.97-3.93(m、2H)、3.81-3.77(m、2H)。13C NMR(DMSO-d)δ170.1、164.9、146.4、135.8、128.4、128.0、127.6、125.9、66.2、61.1、54.4。RP-LC/MS(ESI)m/z 553.3(M+H)(tR=4.44分、5~95% B/6分)。C2628の元素分析:C,56.52;H,5.11:N,15.21。実測値:C,56.39:H、5.11;N,14.99。
【0203】
ステップ2. (2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸)の形成
【0204】
ビスアミド(7.74g、14.0mmol)を、10%パラジウム/C(0.774g)の存在下で、エタノール:水(560mL;3:1、v/v)中で水素化した。反応混合物をアルゴンによってパージし、室温で5.5時間、水素雰囲気下で(スローバブリング法を用いて)撹拌した。反応混合物を再びアルゴンによってパージし、セライトを通した濾過によって触媒を除去した。セライトベッドをエタノール:水(400mL;1:1、v/v)で洗浄し、混ぜ合わせた濾過液を真空中で濃縮した。生成物を高真空下で乾燥させた。残渣をCHCNで粉砕し、D-セリン異性体(4.89g、94%)をオレンジ色の粉末として得た。H NMR(DMSO-d)δ8.46(d、J=8.3Hz、2H、DOと交換可能)、6.78(br s、4H、DOと交換可能)、4.48-4.45(dt、J=8.1、3.9Hz、2H)、3.88(dd、J=11.1、3.9Hz、2H)、3.74(dd、J=11.1、3.7Hz、2H)。13C NMR(DMSO-d)δ171.6、164.7、146.4、125.9、61.2、54.3。RP-LC/MS(ESI)m/z 373.2(M+H)(tR=2.86分、5~95% B/6分)。C1216の元素分析:C,38.71;H,4.33:N,22.57。実測値:C,38.44:H、4.51;N,22.33。
【0205】
実施例13
【0206】
(2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸(「D-アラニン異性体」)
【0207】
【化31】
【0208】
ステップ1. 2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))(2R,2'R)-ジプロピオン酸ジエチルの形成
【0209】
不活性雰囲気下で、火炎乾燥させた、磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ(100mL)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(1.0g)、D-アラニンエチルエステル塩酸塩(1.86g)、EDC-HCl(2.7g)、HOBt-HO(2.65g)、及びEt3N(2.0mL)を入れ、DMF(無水、80mL)中に溶解した。50℃の減圧下で揮発性物質を除去すると、暗色の半固体が生成された。冷却後、アセトニトリル(~100mL)を加え、溶液を約1時間静置した。遠心分離によって赤色沈殿物を単離し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。総重量1.30gのジエステル(3.06mmol、単離収率60.6%)。この物質(1.3g)を、さらに精製することなく次のステップに進めた。
【0210】
ステップ2. (2R,2'R)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸の形成
【0211】
THF/水中のステップ1からのジエステル(1.0g)及びLiOH(4当量)を合わせ、室温で数時間撹拌した。HPLCは完全な加水分解を示した。TFAを添加してpHを酸性にし、反応混合物を室温で一晩静置した。調製された逆相HPLCで反応混合物を精製することによって、二酸を得た。プログラム:99:1 A:Bを5分間、次いで5:95 A:Bを27分間@50mL/分。Lambda UV264nm及び蛍光;λ=440nm、λ=565nm。所望の生成物を含む分画を合わせ、凍結乾燥(-85°C、15mtorr)させ、オレンジ色の固体(0.821g、2.41mmol、単離収率95.6%)を得た。M/z341.13。プロトン及び炭素NMRは提案構造と一致した。
【0212】
実施例14
【0213】
3,3'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸(「β-アラニン異性体」)
【0214】
【化32】
【0215】
ステップ1. ジベンジル3,3'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオネートの形成
【0216】
不活性雰囲気下で、火炎乾燥させた、磁気撹拌棒を備えた丸底フラスコ(100mL)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(0.3g)、ベンジル3-アミノプロパノエートp-トルエンスルホネート(1.08g)、EDC-HCl(0.590g)、HOBt-HO(0.582g)、及びEt3N(1.50g)を入れ、DMF(無水、40mL)中に溶解した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、真空中で約10mLまで濃縮した。残りのDMFをトルエン共沸混合物で除去した。反応混合物を、酢酸エチル(3×125mL)と飽和NaHCO(3×100mL)とで分配した。有機層を合わせ、クエン酸(10%水性、100mL)、及びブライン(100mL)で分配した。有機層を除去し、乾燥させ(無水NaSO)、真空中で濃縮し、結晶固体0.58gを得た。TLC(ガラス上のシリカ、1:1 酢酸エチル:ヘキサン)Rf=0.22。生成物を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで精製し、生成物0.49gを得た。質量スペクトル(ES+)521.36(100%)、522.42(30%)、523.34(約6%)。NMR、H(DMSO-d)、400MHz:2.55(4H、m)、3.41(4H、m)5.01(4H、s)、6.44(4H、s)、7.21(10H、m)、8.41(2H、m);13C(DMSO-d):34.18、35.33、66.19、126.74、128.52、128.92、136.56、146.75、165.63、171.90。
【0217】
ステップ2. 3,3'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸の形成
【0218】
ステップ1のジベンジルエステル(0.92g)をエタノール(無水、75mL)と合わせ、入口及び出口バルブと、圧力計(0-約689.48kPa)と、テフロン(登録商標)コーティングの磁気撹拌子とを備えたフィッシャー-ポーター圧力ボトル(Fischer-Porter pressure bottle)(約170g)に移した。水(25mL)及び10%パラジウム/炭素(0.2g、Degussa/Aldrich wet)を加え、反応容器を密封した。3回の真空/アルゴンサイクルの後、約68.95kPaのレクチャーボトルから、激しく撹拌した溶液に水素を導入した。3.5時間後、反応物をセライトパッドで濾過し、得られたセライト/触媒床を約500mLの1:1のエタノール:HOですすいで溶液を得、これを真空中で濃縮した。0.424gの固体が単離された(単離収率70.5%)。HPLC/MSから、9.3分で単一のピークのみが観察された。質量スペクトル(ES+)341.32(100%)、342.37(30%)、344.29(18%)、270.30(62%)。NMR、H(DMSO-d)、400MHz:2.54(2H、m)、3.42(2H、m)、6.52(2H、s)、7.21(4H、m)、8.38(2H、m)、11.9(2H、bs);13C(DMSO-d):34.20、35.33、126.77、146.75、165.55、173.57。
【0219】
実施例15
【0220】
2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))二酢酸(「グリシン異性体」)
【0221】
【化33】
【0222】
ステップ1. ジエチル2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジアセテートの形成
【0223】
磁気撹拌子を備えた丸底フラスコ(300mL)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(5.0g)、エチルグリシナート塩酸塩(5.04g)、EDC-HCl(8.1g)、HOBt-HO(8.0g)、及びDIPEA(5.9g)を入れ、DMF(無水、200mL)中に溶解した。乾燥アルゴン雰囲気を、反応中維持した。ピラジンをグリシネートと合わせ、DMFを不活性雰囲気下で撹拌しながら加えた。これに塩基及びHOBtを加えた。約15分後、EDCを45分かけて少しずつ加え、反応物をアルゴン下で、室温で一晩撹拌した。粘性の半固体が得られるまで、反応混合物を真空中で濃縮した。半固体をトルエン(約30mL)で処理し、揮発性物質を真空中で除去した。冷却後、固体が形成された。粗生成物を酢酸エチル500mLに溶解し、二層が形成されるまで混合した。溶液をブライン及び飽和NaHCOで洗浄し、水層を除去した。水層を洗浄し(150mLの酢酸エチルで2回)、有機層を合わせた。有機層を水和NaHSO及び飽和ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して固体を得た。単離収量:5.46g。HPLC分析96.9%。M/z 369.2。H NMR及び13C NMRは提案構造と一致した。この生成物を、さらに精製することなく次のステップに進めた。
【0224】
ステップ2. 2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))二酢酸の形成
【0225】
ステップ1からの粗生成物(700mg)を、40mLのTHF及び10mLの水(DI)に溶解した。LiOH(4.2当量)を加え、混合物を不活性雰囲気下で、室温で一晩撹拌した。HPLC分析は、所望の二酸(M/z=313.3)への完全な変換を示した。反応混合物を遠心分離し(3000rpmで3分間)、上清をHPLCで調べ、廃棄した。残りの固体を、NaOH(6.25N、2当量)で処理することによってジナトリウム塩に変換し、得られた溶液を濾過した(0.22ミクロン)。溶液を凍結乾燥させ、HPLCによって純度>95%の固体を得た。2当量よりもわずかに多いTFAを添加した後、逆相分取カラムを用いることによって、ジナトリウム塩を二酸に変換した。プロトン及び炭素NMRは提案構造と一致した。
【0226】
実施例16
【0227】
(2S,2'S)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸(「L-アラニン異性体」)
【0228】
【化34】
【0229】
ステップ1. 2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))(2S,2'S)-ジプロピオン酸ジエチルの形成
【0230】
不活性雰囲気下で、火炎乾燥させた丸底フラスコ(100ML)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(1.0g)、L-アラニネート塩酸エチル(1.86g)、EDC-HCL(2.70g)、HOBT-HO(2.65g)を入れ、DMF(無水、80ML)中に溶解した。トリエチルアミンを加えた(1.5g)。室温で16時間後、真空中で反応揮発性物質を除去した。半固体を単離した。水を加え(70ML)、混合物を約1時間静置した。この間に沈殿が形成されたので、混合物を遠心分離し、固体を単離し、これを一晩風乾させた。この物質を酢酸エチルに溶解し、水、クエン酸、及び飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。有機層を乾燥させ(無水硫酸ナトリウム)、真空中で濃縮して、固体生成物(1.38g)を得た。HPLC純度>95%純度。粗生成物を、さらに精製することなく次のステップで使用した。
【0231】
ステップ2. (2S,2'S)-2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ジプロピオン酸の形成
【0232】
ステップ1からの粗生成物(1.0g)をTHF(30mL)に溶解し、水(10mL)に溶解したLiOH-HO(4当量)を室温で加えた。1時間後、揮発性物質を真空中で除去した。生成物を分取逆相HPLCで精製し、凍結乾燥させて、純度>95%の所望の二酸生成物である固体を得た。プロトン及び炭素NMRは提案構造と一致した。
【0233】
実施例17
【0234】
2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(2-メチルプロパン酸)(「ジメチルグリシン異性体」)
【0235】
ステップ1. 2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(2-メチルプロパン酸)ジエチルの形成
【0236】
不活性雰囲気下で、火炎乾燥させた丸底フラスコ(100mL)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(1.0g)、エチルジェム-ジメチル3-アミノプロパン塩酸塩(1.86g)、EDC-HCl(2.7g)、HOBt-HO(無水、80mL)を入れ、DMF(無水、80ML)中に溶解した。トリエチルアミン(1.50g)の添加によって反応を開始させ、室温で72時間維持した。揮発性物質を真空中で除去した。暗色の粘性液を分離した。冷却後、アセトニトリル(約100mL)に溶解し、約1時間静置した。生成した沈殿を遠心分離によって分離し、乾燥させて1.30gのジエチルエステル(61%)を得たところ、逆相HPLCによる純度は>95%であった。この粗生成物を次のステップで直接使用した。
【0237】
ステップ2. 2,2'-((3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(2-メチルプロパン酸)の形成
【0238】
ステップ1からの粗生成物(1.0g)をTHF:水(40mL:5mL)に溶解した。これに、水中でLiOHを加えた(0.5mLのDI水で2.5当量)。別の2当量のLiOHを反応混合物に加え、反応を室温で一晩進めさせた。完了後、反応混合物を、約4のpHに達するまでTFAで酸性化した。生成物を分取RPHPLCによって単離した。M/z 369.13。プロトン及び炭素NMRは提案構造と一致した。
【0239】
実施例18
【0240】
3,6-ジアミノ-N,N-ビス((1R,2S,3R,4R)-1,2,3,4,5-ペンタヒドロキシペンチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミド
【0241】
【化35】
【0242】
磁気撹拌子を備えた丸底フラスコ(100mL)に、3,6-ジアミノピラジン-2,5-ジカルボン酸(0.535g、2.70mmol)、(1R,2S,3R,4R)-1-アミノペンタン-1,2,3,4,5-ペンタオール(0.978g、5.4mmol、2.0当量)、及びDMF(40mL)を入れた。これに、トリエチルアミン(0.546g、0.76mL、5.40mmol、2.0当量)、及びPyBop(登録商標)(3.1g、5.94mmol、2.2当量)を加えた。一時間後、HPLC分析によって反応を完了し、温度を40℃未満に保ちながら真空中で濃縮した。混合物を水(10mL)中に溶解し、Sephadex G-10カラムに通し、蛍光生成物を含む分画を収集し、凍結乾燥させて濁った固体を得た。標的生成物である3,6-ジアミノ-N,N-ビス((1R,2S,3R,4R)-1,2,3,4,5-ペンタヒドロキシペンチル)ピラジン-2,5-ジカルボキサミドを、分取C-18逆相HPLCによって得た:160mg、HRMS(理論上)M+Na=547.1970;HRMS(観察された)M+Na=547.1969。
【0243】
実施例19
【0244】
腎機能を評価するためのプロトコル
【0245】
生体内腎臓モニタリングアセンブリ10の一実施例が図2に示されており、光源12及びデータ処理システム14を含んでいる。光源12は、一般に、患者の身体の少なくとも一部を光に曝露させるための適切な装置を備えているか、または該装置に相互接続されている。光源12と相互接続されるか、または光源12の一部となり得る適切な装置の例としては、これに限定しないが、例えば、カテーテル、内視鏡、光ファイバ、イヤークリップ、ハンドバンド、ヘッドバンド、前頭センサ、表面コイル、及びフィンガープローブなどが挙げられる。実際に、光源の可視光、及び/または近赤外光を放射することができる多数の装置のうちの任意のものが、腎臓モニタリングアセンブリ10で使用され得る。一態様では、光源はLEDであり、LEDのうち1つはトレーサ剤の最大吸光度近くで光を放射するが、第2のLEDはトレーサ剤の最大蛍光発光近くで光を放射する。例えば、一つのLEDは450nmで光を放射するが、第2のLEDは560nmで光を放射する。
【0246】
さらに図2を参照すると、腎臓モニタリングアセンブリのデータ処理システム14は、スペクトルエネルギーを検出することができ、かつ、スペクトルエネルギーを示すデータを処理することができる任意の適切なシステムであり得る。例えば、データ処理システム14は、1以上のレンズ(例えば、スペクトルエネルギーを導くため、及び/またはスペクトルエネルギーの焦点を合わせるため)、1以上のフィルタ(例えば、スペクトルエネルギーの望ましくない波長を除去するため)、フォトダイオードまたは光電子増倍管(例えば、スペクトルエネルギーを収集して、検出されたスペクトルエネルギーを示す電気信号に変換するため)、増幅器(例えば、フォトダイオードまたは光電子増倍管からの電気信号を増幅するため)、及び処理ユニット(例えば、フォトダイオードまたは光電子増倍管からの電気信号を処理するため)を含み得る。データ処理システム14は、収集されたスペクトルデータを操作し、患者20からの本開示のピラジン誘導体の腎クリアランスを示す強度/時間プロファイル、及び/または、濃度/時間曲線を生成するように構成されていることが好ましい。実際に、データ処理システム14は、正常細胞及び障害細胞が血流からピラジン誘導体を除去する方法の差異を比較することによって適切な腎機能データを生成し、患者20の器官または組織におけるピラジン誘導体の速度または蓄積を測定し、ピラジン誘導体を有する器官または組織の断層画像(tomographic image)を提供するように構成され得る。
【0247】
非限定的な例として、本システムは、一態様において、2つのシリコン光電子増倍管を含む。第1の光電子増倍管はロングパスフィルタを含むが、第2の光電子増倍管にはフィルタは付いていない。この構成により、励起波長及び発光波長における蛍光発光及び拡散反射率の両方を測定することができる。そのような一実施形態では、蛍光及び拡散反射率の測定値は、組織の光学特性のばらつきを補償する固有の蛍光測定値に組み合わされる。測定値を組み合わせるための例示的な公式を、下記の方程式(1)に示す。
【0248】
腎機能を測定するために、一態様では、有効量のピラジン誘導体が、それを必要とする患者に投与にされる(例えば、薬学的に許容される組成物の形態で)。患者20の身体の少なくとも一部は、矢印16で示されるように、光源12からの可視光及び/または近赤外光に曝露される。例えば、光源12からの光は、患者20の耳に取り付けられた光ファイバを介して導かれ得る。患者は、患者20にピラジン誘導体を投与する前または後に、光源12からの光に曝露され得る。場合によっては、患者20へピラジン誘導体を投与する前に、患者20の身体から放射された光(光源12からの光への曝露に起因する)の背景またはベースラインの測定値を生成することは有益であり得る。患者20の体内のピラジン誘導体が光源12からの光に曝露されると、ピラジン誘導体は光(矢印18で示される)を発し、この光はデータ処理システム14によって検出/収集される。まず、患者20へのピラジン誘導体の投与によって、一般に、初期スペクトル信号が、患者20におけるピラジン誘導体の初期含有量を示す。スペクトル信号は、その後ピラジン誘導体が患者20から除去されると、時間の関数として減衰する傾向がある。時間の関数としてのスペクトル信号におけるこの減衰は、患者の腎機能を示す。さらに、トレーサ剤が患者の血管空間に注入されると、最初の動態によって、患者の細胞外空間全体へのトレーサ剤の平衡化が反映される。いくつかの態様では、この平衡化は2時間未満で完了する。
【0249】
例えば、健康/正常な腎機能を示す第1の患者において、スペクトル信号は、時間Tでベースラインに減衰して戻り得る。しかしながら、不十分な腎機能を示す、第2の患者を示すスペクトル信号は、T+4時間でベースラインに減衰して戻り得る。腎機能障害または不全の度合いは、信号が減衰してベースラインに戻るのに必要な時間の長さに影響を及ぼす。腎機能障害の程度が大きいほど、より長い期間を必要とする。したがって、患者20は、所望の腎機能データを提供するのに適切な任意の時間、光源12からの光に曝露され得る。同様に、データ処理システム14は、所望の腎機能データを提供するのに適切な任意の時間、スペクトルエネルギーを収集/検出することができる。
【0250】
さらに、患者におけるGFR測定値は、トレーサ剤の単回投与に基づく単一の測定値に限定されない。トレーサ剤の投与からトレーサ剤が患者において検出不能になるまでの時間は、複数のより小さなセグメントに細分され得、患者のGFRは、より小さなセグメントごとに計算される。いくつかの態様では、時間セグメントは重複し得る。非限定的な例として、トレーサ剤が検出不能になる前の全期間が24時間である場合、その期間は6時間の4つの等しいセグメントに分割され得る;それぞれの新しい時間セグメントは、前のセグメントの終わりから始まる。さらに別の態様では、時間セグメントは重複してもよい。例えば、個々の時間セグメントの長さは4時間であってもよいが、新しい時間セグメントは2時間ごとに開始することができる。これにより、測定を通して重複するセグメントが生成される。この非限定的な例をより完全に説明するために、トレーサ剤が時間=0で投与され、時間=24時間で検出不能になった場合には、以下の時間セグメントが生成され得る:0~4時間、2~6時間、4~8時間、6~10時間、8~14時間、12~16時間、14~18時間、16~20時間、18~22時間、及び20~24時間。患者のGFRは、各時間セグメントで個々に計算され得る。このデータは、患者の腎臓の健康状態をより十分に評価するために使用される。時間セグメントは、GFR測定を可能にする任意の長さであり得、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、または12時間であり得る。さらに、時間セグメントは測定中、同一である必要はない。各時間セグメントの長さは、いかなる他の時間セグメントにも関係なく個々に選択される。
【0251】
薬物動態の試験結果
【0252】
臨床試験において、60人のヒト患者に、(実施例12で)調製したMB-102((2R,2'R)-2,2'-((3,6ジアミノピラジン-2,5-ジカルボニル)ビス(アザンジイル))ビス(3-ヒドロキシプロパン酸))を静脈内投与した。本明細書に開示した方法及び技術に加えて、血液及び尿を収集した。基準の薬物動態データを収集し、本明細書に開示した方法及び技術を、GFR測定のために使用される既知の造影剤であるOmnipaque(登録商標)(イオヘキソール)と比較した。
【0253】
図3A図3Dは、MB-102を用いて試験を行った60人のヒト患者から収集したデータを示す。血漿薬物動態データを収集し、当技術分野で公知の方法を用いて分析し、本明細書に開示した方法及び技術を用いて測定したデータと比較した。
【0254】
図3A図3Dは、MB-102を除去するための2つのコンパートメント薬物動態モデルを示す。このモデルは、GFR値に関わらず患者について一貫している。図3Aは、測定GFR(mGFR)が120mL/分である、正常な腎機能を有する患者についてのグラフである。図3Bは、mGFRが81mL/分の患者についてのグラフである。図3Cは、mGFRが28mL/分の患者についてのグラフである。図3Dは、mGFRが25mL/分の患者についてのグラフである。2コンパートメントモデルにおける第1のコンパートメントは血管から組織への平衡であるが、第2のコンパートメントは腎排泄のみを示す。平衡に達する時間は平均して約1時間であり、対象によって異なる。
【0255】
図4に示すのは、従来の方法を用いてOmnipaque(登録商標)を使用して測定されたGFRを、約20~約140の範囲のeGFRを有する患者について、本明細書に開示した方法を用いたMB-102と比較した比較データである。データは、0.97の相関係数を示している。これは、本明細書で使用される患者GFRを測定するための方法が、既知の方法と比較して同様の結果をもたらすことを示す。
【0256】
MB‐102についての1つの臨床試験の一部として、回収量及び2次代謝の程度を測定するために、患者から12時間の間尿を採取した。図5に示すように、eGFRが60以上の患者については、MB-102の99%超が12時間後に代謝されることなく回収された。mGFR値が60未満の患者では、MB-102は低い割合で回収されたが、同様に未代謝であった。正常、ステージ1、及びステージ2の腎機能を有する患者では、12時間の採取は、MB-102の99%を超える回収率について十分であった。薬物動態データ及び血漿中半減期の測定の観点から、より重篤な腎機能障害を有する患者については、完全な回収率が得られないことは容易に理解できる。
【0257】
図6には、正常腎機能、ステージ1の腎機能障害、ステージ2の腎機能障害、ステージ3の腎機能障害、またはステージ4の腎機能障害のいずれかである患者についてのMB-102の血漿濃度半減期を示す。このデータに基づくと、上記の尿回収試験では、患者の血流からMB-102をすべて除去するためには24時間以上を要することが明らかである。正常腎機能群の平均血漿半減期は2時間であり、したがって、12時間の収集時間は、約6半減期であり、注射量の大部分を排泄するのに十分な時間である。ステージ2及びステージ3の群の平均血漿中半減期は2.5時間であり、約5半減期の排泄時間が得られ、これは注射量の大部分を回収するためにも十分である。しかしながら、ステージ3についての半減期は4時間、ステージ4についての半減期は8時間であるので、臨床試験の12時間の枠内ですべての注射量を回収することはできない。
【0258】
臨床試験において、血漿薬物動態は、時間(トレーサ剤注射の2時間後に開始し、12時間の試験期間の終了まで継続)の関数として、患者の胸骨で測定された経皮蛍光薬物動態と相関していた。血漿濃度と蛍光強度との間の高い相関は、広範囲のGFR値にわたる患者について観察された。図7、8及び9には、23mL/分/1.73m(ステージ3bの腎機能障害)~117mL/分/1.73m(正常腎機能)のGFR値を有する3人の個々の患者を示す。このように、広範囲のGFRにわたる患者では、血漿薬物動態は、MB-102についての経皮蛍光と相関している。
【0259】
経皮GFR測定(完全なデータセットへのフィッティング)
【0260】
以下のように、LabView、Matlab、WinNonlin、及びMicrosoft Excelバージョン2010を用いて動態解析を行った。経皮蛍光データを、2時間(注入時間と比較して、トレーサ剤が細胞外空間にわたって平衡化していることを確認する)から入手可能なデータの終わり(通常、約12時間)までの間で単一指数関数にフィッティングさせた。各対象について、2つのフィッティングを実施した:(1)オフセットを0に固定した(2)オフセットを変化させた。フィッティングから決定された指数関数的時定数は、腎減衰時定数(RDTC)(腎クリアランスに関連する減衰パラメータ)と呼ばれる。
【0261】
Microsoft Excelバージョン2010において、線形回帰、外れ値除外、並びに、相関係数(R)及び較正の標準誤差(SEC)の計算を実施した。RDTCの逆数を、4つの異なるGFR測定法を用いてGFRと相関させた。
【0262】
非正規化-イオヘキソール及びMB-102の血漿PK分析から決定したGFR
【0263】
BSA正規化-身長及び体重を用いて、Mostellerの方法(N Engl J Med,1987;317(17))にしたがって、各対象の体表面積(BSA)を推定した。血漿PK分析によって決定されたGFRを、1.73m(「基準」サイズの患者についてのBSA)に対する算出BSAの比で割った。
【0264】
正規化(方法1)-血漿PK分析によって決定されたGFRを、「基準」サイズの患者についての分布容積である14,760mLに対する分布容積(V)(同様に、PK分析から決定された)の比で割った。基準サイズの患者についてのVは、グループ1のすべての患者にわたる平均nGFRが、V正規化方法及びBSA正規化方法で等しくなるようにすることによって決定された。本明細書で使用される「nGFR」は、GFRが身体サイズについて正規化される一般的な方法(BSA及びVの両方を含む)を指す。
【0265】
正規化(方法2)-オフセットが0に固定された単一の指数関数を、2~12時間(トレーサ剤注射の時間と比較して)の間、MB-102血漿中濃度対時間にフィッティングさせた。フィッティング時定数の逆数に14,760mL(「基準」サイズの患者についてのV;上記参照)を乗算し、分布容積で正規化されたGFRを得た。
【0266】
血漿由来のGFR対経皮腎クリアランス率のプロットについての相関係数(R)及び較正の標準誤差(SEC)は、表2及び図12~18に要約されている。Rabitoによる過去の結果(J Nucl Med,1993;34(2):199-207)と一致して、BSAによるGFRの正規化によってRは増加し、SECは減少し、MB-102の腎クリアランス率は、身体サイズに依存しない腎効率の尺度を提供するという仮定が確認される。さらに、これらの結果は、トレーサ剤の分布容積(V)も、GFRを標準の身体サイズについて正規化するために有効であることを示している。表2に示すように、BSA及び第2のVである身体サイズについての正規化方法は、外れ値除外方法が適用されず、RDTCフィッティングについてのオフセットが0に固定された場合に等しく有効であった。
【0267】
【表2】
【0268】
RDTCフィッティングオフセット方法
【0269】
経皮蛍光動態を、2つの異なるオフセット方法:(1)オフセットを0に固定した、及び(2)オフセットを変化させた、によってフィッティングさせた。図18及び19は、それぞれ、固定及び可変オフセット方法について得られた相関プロットを示す。オフセットが0に固定された場合(図18)、データは相関プロットの低GFR領域においてより密にクラスタリングされたが、オフセットが可変である場合(図19)、データクラスタリングは高GFR領域においてより密であることに留意されたい。
【0270】
この観察は、ベースライン蛍光における不安定性を示す。腎クリアランスについての速度定数が高い健常な対象では、蛍光剤は、12時間のデータ収集期間の終了前に除去された。これらの対象では、蛍光の最終平坦域レベル(the final plateau level)は、最初の注射前ベースライン蛍光と必ずしも完全には一致しないことが観察された。これらの健常な対象についてのフィッティングでオフセットを変化させることによって、フィッティングはこのベースライン不確実性を補償することができ、それにより、抽出されたクリアランス率定数の信頼性が改善された。しかしながら、腎機能が低下している多くの対象では、測定値が収集された12時間以内に、薬剤は完全には除去されなかった。これらの対象では、フィッティングに可変オフセットを含めると、フィッティングされたクリアランス率定数における不確実性が増加することが分かった。オフセットを0に固定することによって、速度定数の信頼性が改善された。
【0271】
これらの観察に基づいて、ハイブリッドオフセット方法を開発した。ハイブリッド方法では、速度定数が高い(すなわち、健常な腎機能である)ことをオフセットの固定されたフィッティングが示す場合、オフセットは変化することができ、そうでない(すなわち、腎機能障害である)場合には、オフセットは固定される。図25に示すように、Rを最大化し、SECを最小化するために最適な遷移点を選択した。X軸上に示す遷移点は、クリアランス率定数の逆数である時定数(時間単位)として表されている。図に示すように、最適時定数は、3.5時間~4.5時間の範囲にあった。ハイブリッドオフセット方法(遷移点:3.5時間)を採用した相関プロットを図20に示す。表3に提供した固定、可変、及びハイブリッドのオフセット方法の比較は、ハイブリッドオフセット方法が、他の方法と比較して、Rの実質的な増加、及びSECの減少をもたらすことを示す。
【0272】
【表3】
【0273】
データ除外
【0274】
一部の臨床対象は、試験の全12時間にわたってセンサが皮膚に完全に取り付けられたままではなかった。注射後のセンサの再装着によって、信号レベルは、しばしば著しくシフトした。これは、(1)皮膚の自家蛍光の不均一性、(2)皮膚の間質液分画の不均一性、または(3)皮膚の内外への光の結合効率の変化、に起因する可能性がある。将来的にこれを処理するために、センサを、より小さな設置面積を有し、かつ、患者により密着するように再設計した。臨床データを使用するために、いくつかのデータ除外を適用した。
【0275】
60人の臨床対象のうちの5人を、蛍光動態分析から完全に除外した:(1)センサが繰り返し過熱した(その後の全対象において、青色LEDの最大許容電力レベルが60%低下した)ので、対象1を除外した、(2)センサが皮膚から完全に外れ、最初の信号レベルを再装着によって復元できなかったので、対象8、37、及び49を除外した、(3)データの大部分が前処理ステップで排除されたので、対象46を除外した(推定原因は、トレーサ剤注射後のLED電力及び検出器利得の意図しない変化である)。
【0276】
対象データをさらに除外するために、以下を含む、様々な基準を試験した:(1)IFとフィッティングとの間の相関係数;(2)フィッティングについてのIFの二乗平均平方根誤差(RMSE);(3)単一指数フィッティング及び二重指数フィッティングから決定されたRDTCの差;(4)フィッティング指数項の振幅をRMSEで除して計算された信号対ノイズ比;(5)全12時間のデータセット内の、複数のより短い時間セグメント(例えば、1~2時間)にわたってフィッティングさせた場合の速度定数の変動係数(CV);(6)IFにフィッティングされた速度定数の推定誤差;及び(7)血漿データから決定されたGFRの推定誤差。これらの基準のいずれにも、相関係数またはSECに関する事前情報は含まれていない。
【0277】
一態様では、上記のデータ除外方法(6)を用いて、IFにフィッティングさせた速度定数の推定誤差を速度定数(相対誤差として表される)で除し、図26に示す結果を得た。速度定数の相対誤差が1.4~1.8%より大きい被験者を除外することによって、R及びSECに有意な改善が認められた。カットオフ基準として1.75%を選択すると、55人の対象のうち10人が除外された。得られた相関プロットを図21及び22に示す。
【0278】
この方法を、血漿由来GFR測定値における誤差が相関プロットにおけるデータ分散にも寄与しているかどうかを試験するための除外基準としてさらに適用した。図27は、この基準の最適化を示す。GFRの受容性に対するカットオフとして5%を選択することによって、R及びSECの僅かな改善が観察された。しかしながら、これは追加の10人の対象の除外を必要とし、残りの対象を35人まで減らした。この結果得られた相関プロットを図23及び24に示す。異なるデータ除外基準を適用した数値要約を表4に示す。
【0279】
【表4】
【0280】
上記の方法から決定された較正の勾配は、身体サイズについての補正GFR(本明細書では「tGFR」と呼ばれる)の経皮測定値を生成するために適用され得る。図10は、予測GFRと、BSA正規化した血漿GFR値との相関を示している。較正の正確さは、血漿PK分析から導出された身体サイズについての補正GFRの「至適基準(gold standard)」の決定に対してtGFRをプロットすることによって表すことができる。図10は、血漿測定されたGFR値を患者の体表面積(BSA)について正規化したときに得られた相関を示している(相関係数(R)=0.89)。分布体積(V)を使用し、BSAの代わりに身体サイズについて補正すると、相関が0.96に大幅に改善された(図11)。
【0281】
臨床診療で最も一般的に使用されているGFRを推定する方法であるeGFRと比較すると、これらのtGFRの結果は、精度を実質的に改善する可能性を示す。高い精度は、臨床的決定の指針となるのに重要である。図28及び表1は、慢性腎疾患(CKD)の5つのステージを示す。CKDの誤診は、臨床治療の過程に影響を与え得る。図29A-29Cに示すように、至適基準と比較したGFR測定値のCKD誤診を視覚化するために、誤差グリッドプロットを構築した。境界がすべて緑色であるボックス内にある測定値は、CKDステージによって正しく分類されている。黄色及び緑色の境界内に含まれている測定値は、1つのCKDステージだけ誤診されている。赤及び黄色の境界内に含まれている測定値は、2つのCKDステージだけ誤診されている。図29Aは、上記の分析において使用したものと同一の対象群のeGFR誤差グリッドを示す。このケースでは、60人の対象中2人は2つのCKDステージだけ誤診され、16人の対象は1つのステージだけ誤診され、41人の対象が正しく診断された。表5は、全測定値に占めるCKD診断誤差の割合の概要を示す。図29B及び29Cは、経皮GFR(tGFR)測定値についての誤差グリッドプロットを示す。重要なことに、tGFR誤差グリッドは、2つのCKDステージの誤診を含まない。さらに、V正規化方法によるtGFRは、eGFRと比較すると、1ステージ誤診において大きな減少を示す(表5参照)。
【0282】
【表5】
【0283】
経皮GFR測定(ウィンドウフィッティング)
【0284】
上記の例では、利用可能なすべてのデータセット(すなわち、トレーサ剤の投与及び平衡化後、10時間の蛍光減衰)を用いてGFRを決定した。これは、腎機能が安定している患者については適当であり得るが、急性腎障害に罹患している患者、またはそのリスクのある患者については、GFRの傾向をより迅速かつリアルタイムに繰り返し評価する必要がある。腎機能が安定している患者についても、GFR測定のために12時間待つことは不都合であり得る。表6及び表7は、上述したように、同一群の対象について測定時間ウィンドウ及び単回注射報告時間を変化させた結果を示す。
【0285】
この例では、測定時間ウィンドウ(表6及び7の第1列)は重複していないため、ウィンドウ数(表6及び7の第2列)に測定時間ウィンドウを乗算すると、GFR推定が行われた、平衡化後の総時間数が算出される。最良の結果は、測定時間ウィンドウが十分長く、蛍光強度が実質的に減衰したときに得られた。同一の割合の蛍光強度減衰を達成するために必要とされる時間は、腎臓の健康状態によって異なる。したがって、オフセットは、腎臓が健常である対象における最も広い測定時間ウィンドウを除いて0に固定された。較正の標準誤差は、すべての対象(表6及び7の第5列)について、並びに、nGFRが75mL/分未満、またはそれ以上である対象のサブセットについて要約されている。
【0286】
参照比較としてBSAによって正規化されたGFR(表6)を用いると、nGFRが75以上である対象について、少なくとも約1.5時間の測定時間ウィンドウを使用して15mL/分未満のnGFR較正精度を達成した。nGFRが75未満の対象については、少なくとも約3時間の測定時間ウィンドウを使用して10mL/分未満のnGFR較正精度を達成した。参照比較としてV正規化GFR(表7)を用いると、同等のnGFR較正精度が、それぞれ0.5時間及び2時間の測定時間ウィンドウによって達成された。表6及び7に示すように、上記の較正精度目標は、少なくとも2つの重複しない測定時間ウィンドウにわたって維持された。しかしながら、SECの顕著な増加は、典型的に、予測を3または4の測定時間ウィンドウに拡張したときに観察された。最初の2つのGFR測定について使用されたものから測定ウィンドウ時間を増加(例えば、2倍または3倍)することによって、少なくとも第3のGFR測定は同等の精度をもたらした。これらの結果は、自動的に調整される測定時間ウィンドウを提供することの有用性を示しているが、これは、異なる患者間でSNRが異なることの原因であるだけでなく、トレーサ剤が腎臓によって徐々に除去されるにつれてSNRが経時的に減少することの原因でもある。
【0287】
【表6】
【0288】
【表7】
【0289】
リアルタイムの経皮GFR測定
【0290】
本明細書に開示された本方法は、患者におけるリアルタイム経皮GFR測定を可能にする。対象へのトレーサ剤の血管内注射後、2時間の待機期間を経て、トレーサ剤は血管外空間に平衡化した。2時間のマークデータをさらに1時間蓄積した後、RDTCに最初のフィッティングを行った。最初のフィッティングは、オフセット項を0に固定して行った。RDTCが3.5時間未満である場合には、フィッティングを繰り返し、傾きを変化させ、3.5時間以上である場合には、最初のRDTC(固定オフセットあり)を維持した。その後、RDTCの推定誤差をRDTCで除した。得られた相対誤差が1.7%未満である場合には、RDTCの逆数に、図23に示す傾きを乗算することによって、RDTCをBSAで正規化したGFRに変換した。得られた相対誤差が1.7%以上である場合には、GFRは報告されなかった。最初のRDTCフィッティングの後、フィッティング手順を約3秒間隔で繰り返し、その後のフィッティングには、最初のフィッティング内のすべてのデータと、その後に蓄積されたすべてのデータとが組み込まれた(約1/2の時間間隔で)。同一の手順を、2つのセンサ:1つを胸骨の胸骨柄上に配置し、もう1つを大胸筋上に配置した、によって収集したデータに適用した。測定中にリアルタイムで生成された結果を図30に示す。試験の全過程にわたって、2つのセンサによって得られたtGFRと、各センサによって得られたtGFRの変動との一致は、2mL/分/1.73m以内であった。
【0291】
MB-102の安定性試験
【0292】
MB‐102のサンプルを調製し、25℃、相対湿度60%で24か月間保存した。各サンプルのHPLC評価を様々な時点で行い、サンプルの安定性を評価した。その結果を表8に示す。
【0293】
【表8】
【0294】
本開示またはその様々な変形例、実施形態または態様の要素を紹介するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、[この(the)]、及び「の(said)」は、1以上の要素の存在を意味することが意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加的な要素が存在し得ることを意味する。
【0295】
例示的なコンピュータシステム環境に関連して説明したが、本発明の実施形態は、様々な他の汎用または特殊用途のコンピュータシステム環境または構成で動作可能である。コンピュータシステム環境は、本発明のいずれかの態様の使用または機能の範囲に関するいかなる限定を示唆することを意図するものではない。
【0296】
本発明の実施形態は、1以上のコンピュータまたは他の装置によって実行される、プログラムモジュールなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で説明することができる。コンピュータ実行可能命令は、1以上のコンピュータ実行可能コンポーネントまたはモジュールに構成することができる。一般に、プログラムモジュールには、これに限定しないが、特定のタスクを実行するか、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、及びデータ構造が含まれる。本発明の態様は、このようなコンポーネントまたはモジュールの任意の数及び構成で実施することができる。例えば、本発明の態様は、添付図面に図示され本明細書に記載された、特定のコンピュータ実行可能命令、または特定のコンポーネントまたはモジュールに限定されない。本発明の他の実施形態は、添付図面に図示され本明細書に記載されたものよりも多くまたは少ない機能性を有する、別のコンピュータ実行可能命令またはコンポーネントを含むことができる。本発明の態様は、通信ネットワークを介して接続されたリモート処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境においても実施することができる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含むローカルコンピュータ記憶媒体とリモートコンピュータ記憶媒体との両方に配置することができる。
【0297】
上記に鑑みて、本開示のいくつかの利点が達成され、また、他の有利な結果が得られることが分かるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、上記の方法及びシステムに様々な変更を加えることができるので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、限定する意味ではなく、例示として解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図30