(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20231010BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B66B3/00 U
B66B11/02 Z
(21)【出願番号】P 2022203256
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昇平
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-44000(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003369(WO,A1)
【文献】特開2023-57247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤に設けられた第1の通信端末と、昇降路内を昇降動作する乗りかごまたはカウンタウェイトに設けられた第2の通信端末との間で無線通信を行うエレベータシステムにおいて、
前記昇降路内の前記乗りかご側に設けられた第1のアンテナと、
前記昇降路内の前記カウンタウェイト側に前記第1のアンテナと同程度の位置に設けられた第2のアンテナと、
前記第2の通信端末に設けられた第3のアンテナと、
前記乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、
前記かご位置検出手段によって検出された前記乗りかごの位置に応じて、前記第1の通信端末が前記第3のアンテナとの間で電波を送受信するアンテナを前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナに切替えるアンテナ切替手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、前記昇降路内の最上部に設置され、
前記第3のアンテナは、前記乗りかごまたは前記カウンタウェイトの上部に設置され、
前記アンテナ切替手段は、
前記乗りかごの位置が前記カウンタウェイトよりも高い場合に前記第2のアンテナに切り替え、前記カウンタウェイトよりも低い場合に前記第1のアンテナに切り替える
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、前記昇降路内の最下部に設置され、
前記第3のアンテナは、前記乗りかごまたは前記カウンタウェイトの下部に設置され、
前記アンテナ切替手段は、
前記乗りかごの位置が前記カウンタウェイトよりも高い場合に前記第1のアンテナに切り替え、前記カウンタウェイトよりも場合に前記第2のアンテナに切り替える
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記かご位置検出手段は、巻上機に設置されるパルスジェネレータを含む
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記かご位置検出手段は、
前記乗りかごの通過を第1の位置で検知する第1の検知手段と、前記乗りかごの通過を第2の位置で検知する第2の検知手段とを含み、
前記乗りかごと前記カウンタウェイトとが同じ高さになる位置を基準位置とした場合に、前記第1の位置は前記基準位置よりも高く、前記第2の位置は前記基準位置よりも低く設定され、
前記アンテナ切替手段は、
前記第1の検知手段によって前記乗りかごが前記第1の位置を通過したことが検知された場合に前記第2のアンテナに切り替え、前記第2の検知手段によって前記乗りかごが前記第2の位置を通過したことが検知された場合に前記第1のアンテナに切り替える
請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記かご位置検出手段は、
前記乗りかごの通過を第1の位置で検知する第1の検知手段と、前記乗りかごの通過を第2の位置で検知する第2の検知手段とを含み、
前記乗りかごと前記カウンタウェイトとが同じ高さになる位置を基準位置とした場合に、前記第1の位置は前記基準位置よりも高く、前記第2の位置は前記基準位置よりも低く設定され、
前記アンテナ切替手段は、
前記第1の検知手段によって前記乗りかごが前記第1の位置を通過したことが検知された場合に前記第1のアンテナに切り替え、前記第2の検知手段によって前記乗りかごが前記第2の位置を通過したことが検知された場合に前記第2のアンテナに切り替える
請求項3記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記かご位置検出手段は、
前記乗りかごと前記カウンタウェイトとが同じ高さになる位置を基準位置とした場合に、前記乗りかごが前記基準位置を上方向または下方向に通過したことを検知する検知手段を含み、
前記アンテナ切替手段は、
前記検知手段によって前記乗りかごが前記基準位置を上方向に通過したことが検知された場合に前記第2のアンテナに切り替え、前記乗りかごが前記基準位置を下方向に通過したことが検知された場合に前記第1のアンテナに切り替える
請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記かご位置検出手段は、
前記乗りかごと前記カウンタウェイトとが同じ高さになる位置を基準位置とした場合に、前記乗りかごが前記基準位置を上方向または下方向に通過したことを検知する検知手段を含み、
前記アンテナ切替手段は、
前記検知手段によって前記乗りかごが前記基準位置を上方向に通過したことが検知された場合に前記第1のアンテナに切り替え、前記乗りかごが前記基準位置を下方向に通過したことが検知された場合に前記第2のアンテナに切り替える
請求項3記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、昇降路内に設置された親機と子機との間で、エレベータの動作状態に関わるデータを無線通信するシステムが考えられている。親機と子機とは無線機能を備えた端末装置(通信端末)のことである。通常、親機はエレベータ制御装置(制御盤)に設置され、子機は乗りかごやカウンタウェイトに設置される。
【0003】
ここで、乗りかごとカウンタウェイトは、昇降路内で互いに反対方向に移動している。このため、例えば乗りかごに設置された子機から親機にデータを送る場合に、金属体であるカウンタウェイトが干渉し、安定してデータ送信できないことがある。カウンタウェイトに設置された子機から親機にデータを送る場合も同様であり、金属体である乗りかごが干渉し、安定してデータ送信できないことがある。また、親機から乗りかごに設置された子機、あるいは、カウンタウェイトに設置された子機にデータを送信する場合も同様であり、乗りかごあるいはカウンタウェイトが干渉することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-165275号公報
【文献】特開2016-037388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、昇降路内では、乗りかごやカウンタウェイトが電波障害となり、親機と子機間の無線通信に影響を与えることがある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、昇降路内で乗りかごやカウンタウェイトに影響されずに、親機と子機間で安定した無線通信を行うことができるエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、制御盤に設けられた第1の通信端末と、昇降路内を昇降動作する乗りかごまたはカウンタウェイトに設けられた第2の通信端末との間で無線通信を行う。前記エレベータシステムは、前記昇降路内の前記乗りかご側に設けられた第1のアンテナと、前記昇降路内の前記カウンタウェイト側に前記第1のアンテナと同程度の位置に設けられた第2のアンテナと、前記第2の通信端末に設けられた第3のアンテナと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、前記かご位置検出手段によって検出された前記乗りかごの位置に応じて、前記第1の通信端末が前記第3のアンテナとの間で電波を送受信するアンテナを前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナに切替えるアンテナ切替手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る子機CSの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同実施形態に係る親機CMの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、昇降路の内部の乗りかごとカウンタウェイトの位置関係につき天井から表した図である。
【
図5】
図5は、乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも低い場合を示した図である。
【
図6】
図6は、乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも高い場合を示した図である。
【
図7】
図7は、同実施形態に係る乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも低い場合を示した図である。
【
図8】
図8は、同実施形態に係る乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも高い場合を示した図である。
【
図9】
図9は、同実施形態に係るアンテナ切替装置の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、同実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置の構成の一例である。
【
図12】
図12は、同実施形態の変形例において、乗りかごが上方向に第1位置を通過した後、下方向に第1位置P1、第2位置P2の順番で通過する例を示す図である。
【
図13】
図13は、同実施形態の変形例において、乗りかごが下方向に第2位置を通過した後、上方向に第2位置、第1位置の順番で通過する例を示す図である。
【
図14】
図14は、同実施形態の変形例において、昇降路内に第3検知器を設ける形態を示す図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも低い場合を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る乗りかごの位置が乗りかごの位置がカウンタウェイトよりも高い場合を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。X軸、Y軸はそれぞれ昇降路2の幅方向と高さ方向を示す。Z軸は昇降路2の奥行方向を示す。
図1の例では、エレベータ全体の制御を行うエレベータの制御盤10と巻上機17が上部機械室1に設けられている。なお、機械室を持たないマシンルームタイプのエレベータでは、制御盤10と巻上機17が昇降路2内の上部に配置される。
【0011】
制御盤10には、エレベータ全体の制御を行うための制御装置11と、無線機能を備えた通信端末(以下、親機と称す)CMとが含まれる。親機CMには、アンテナMA1とアンテナMA2がアンテナ切替装置9を介して切り替え可能に接続される。アンテナMA1は昇降路2内の最上部の乗りかご12側に設置され、アンテナMA2は昇降路2内の最上部のカウンタウェイト13側に設置される。親機CMはアンテナMA1又はアンテナMA2を介して無線通信を行う。
アンテナ切替装置9は、親機CMによって無線通信に用いられるアンテナを、アンテナMA1又はアンテナMA2に切り替える。なお、アンテナMA1とアンテナMA2の両方を使用して通信を行うと、特定小電力(20mW)を超過するため、どちらか一方を親機CMに接続して通信する必要がある。
【0012】
図1に示すように、昇降路2内には、乗りかご12及びカウンタウェイト13が設けられており、それぞれガイドレール14a~14dに昇降動作可能に支持されている。ガイドレール14a、14bは乗りかご12用のガイドレールであり、ガイドレール14c、14dはカウンタウェイト13用のガイドレールである。乗りかご12は、ガイドシュー15a、15bを介してガイドレール14a、14bに摺動可能に取り付けられている。カウンタウェイト13は、ガイドシュー15c、15dを介してガイドレール14c、14dに摺動可能に設けられている。
【0013】
乗りかご12には、乗りかご12の揺れを検出(計測)するための加速度センサS1と、子機CS1とが乗りかご12の上部に設けられている。なお、子機CS1とは、親機CMと無線通信を行う機能を備えた通信端末のことである。加速度センサS1と子機CS1とは有線にて接続されており、無線通信機能を備えたセンサ装置(センサ端末とも呼ぶ)として用いられる。子機CS1には、無線通信のためのアンテナSA1が接続される。アンテナSA1は、乗りかご12の上部に設置される。子機CS1は、アンテナSA1を介して親機CMと無線通信を行う。子機CS1と加速度センサS1とは同一筐体に格納されていてもよい。
【0014】
同様に、カウンタウェイト13には、カウンタウェイト13の揺れを検出(計測)するための加速度センサS2と、子機CS2とがカウンタウェイト13の上部に設けられている。なお、子機CS2とは、親機CMと無線通信を行う機能を備えた通信端末のことである。加速度センサS2と子機CS2とは有線にて接続されており、無線通信機能を備えたセンサ装置として用いられる。子機CS2には、無線通信のためのアンテナSA2が接続される。アンテナSA2は、カウンタウェイト13の上部に設置される。子機CS2は、アンテナSA2を介して親機CMと無線通信を行う。子機CS2と加速度センサS2とは同一筐体に格納されていてもよい。
【0015】
メインロープ16の一端に乗りかご12が連結され、メインロープ16の他端にカウンタウェイト13が連結されている。メインロープ16は、巻上機17の回転軸に取り付けられたメインシーブ18aに巻回されている。18bはそらせシーブである。
【0016】
巻上機17は、メインシーブ18aを回転させるためのモータ19を含んでいる。制御盤10からの駆動指示により巻上機17のモータ19が駆動されると、メインシーブ18aが所定方向に回転し、メインロープ16を介して乗りかご12がカウンタウェイト13と共につるべ式に昇降動作する。
【0017】
メインシーブ18aにはパルスジェネレータ20(位置検出器)が設置されている。パルスジェネレータ20は、巻上機17のモータ19の回転に同期して、回転方向に対応したパルス信号を制御盤10に出力する。制御盤10は、パルスジェネレータ20から出力されるパルス信号をカウントすることで、乗りかご12の移動量及び昇降路2内における乗りかご12の位置を検出する。
【0018】
乗りかご12には、かご制御装置21とドア制御装置22とが設けられている。かご制御装置21及びドア制御装置22は、制御盤10(制御装置11)に接続されている。
かご制御装置21は、制御盤10からの指示にしたがって、乗りかご12内の照明機器の駆動制御や空調制御を行う。また、かご制御装置21は、かご内に設けられた操作パネル4に関する情報、具体的には、乗客によって押下された行先階ボタンやドア開閉ボタン等に関する情報を制御盤10やドア制御装置22に出力する。
【0019】
ドア制御装置22は、制御盤10やかご制御装置21からの指示にしたがって乗りかご12のドアの開閉制御を行う。ドア制御装置22は、乗りかご12のドアを開閉するためのモータ23と接続し、このモータ23を駆動することでドアの開閉制御を行う。
【0020】
乗りかご12が着床する各階の乗場5には、乗場呼びボタン6と乗場制御装置30とが設けられている。乗場呼びボタン6は、乗客が乗りかご12に乗車する乗場の位置(階床)と行先方向(上方向/下方向)を登録するためのボタンである。乗場制御装置30は、制御盤10(制御装置11)に接続され、乗場呼びボタン6によって登録された情報を制御盤10に出力する。
【0021】
次に、
図2の機能ブロック図を参照して、子機CSの機能構成の一例について説明する。なお、乗りかご12に設置された子機CS1と、カウンタウェイト13に設置された子機CS2とは同様の機能部を有している。ここでは、カウンタウェイト13に設置された子機CS2を代表例にとって説明し、子機CS1の説明は省略するものとする。以降の説明においても、基本的に子機CS2を代表例にとって説明し、子機CS1に関する説明は省略するものとする。
【0022】
子機CS2は、加速度センサS2に接続される。子機CS2は、加速度センサS2によって検出されたカウンタウェイト13の揺れの強さを示す加速度データ(計測データ)を入力すると共に、所定のタイミングで親機CMに無線により送信する機能を備えている。
【0023】
図2に示すように、子機CS2は、バッテリ100、電力供給制御部101、入力部103、記憶部104、通信制御部106、アンテナSA2を備える。
バッテリ100は、充電式あるいは交換可能であり、子機CS2および加速度センサS2の電源として用いられる。電力供給制御部101は、バッテリ100の電力を子機CS2内の通信制御部106を含む各機能部に供給すると共に加速度センサS2に供給する。
【0024】
入力部103は、予めカウンタウェイト13の揺れを検出するための時間間隔を定めた検出周期Tで、加速度センサS2からの加速度データの入力を受け付ける。記憶部104は、入力部103を通じて入力された加速度データを時系列順に保存する。
【0025】
通信制御部106は、子機CS2と、親機CMとの間の通信制御を行う。通信制御部106は、加速度データやバッテリ不足のときに送信されるバッテリ交換要求等を、アンテナSA2を介して親機CMに送信する。
【0026】
また、通信制御部106は、所定のタイミングで子機CS2および加速度センサS2の動作状態を制御盤10に確認させるための死活監視を行う。詳しくは、通信制御部106は、予め設定された監視周期Wで死活監視信号を要求するためのトリガ信号をエレベータの制御盤10に設けられた親機CMに送信し、そのトリガ信号の応答で親機CMから送られてくる死活監視信号を受信する。前記監視周期Wは、例えば10分に設定される。死活監視信号を受信できた場合に、通信制御部106は、親機CMに対して、ACK(Acknowledge)信号を返す。
【0027】
図3は親機CMの機能構成を示すブロック図である。
親機CMは、子機CS1、CS2と無線接続される。また、親機CMは、有線にて制御装置11と接続される。親機CMは、
図3に示すように、通信制御部201、返信制御部202、出力部203等を備える。なお、親機CMは、制御装置11から電力供給を受けているため、バッテリ不要としてもよい。
【0028】
通信制御部201は、子機CS1、CS2によって送信された各種信号を受信する。具体的には、通信制御部201は、子機CS1、CS2から送信される加速度データやバッテリ交換要求等を受信し、これらの信号に付随していた識別コードと共に返信制御部202及び出力部203に出力する。返信制御部202は、信号を正常に受信したことを通知するためのACK信号(肯定応答)を、通信制御部201を介して子機CS1、CS2に送信する。
【0029】
ここで、通信制御部201による信号の送受信は、アンテナMA1またはアンテナMA2を介して行われる。送受信に用いられるアンテナは、制御装置11からの信号に基づいて、アンテナ切替装置9によって切り替えられる。
出力部203は、通信制御部201を介して各種信号と識別コードとともに受け付けると、制御装置11に出力する。制御装置11には、エレベータの運転制御に関わる各種機能が備えられている。以下では説明を簡単にするため、エレベータの制御盤10が各種機能を実行するものとして説明する。
【0030】
制御盤10は、例えばエレベータに設置された図示していない地震感知器によって高ガルの地震が検知された場合に、その高ガルの検知信号を保持(ラッチ)し、外部からの解除操作があるまで、エレベータの運転を停止しておく機能を備える。また、制御盤10は、地震発生時に加速度センサS1、S2で検出された加速度データを子機CS1、CS2から取得し、その加速度データを解析用として図示せぬ監視センタに送るなどの処理を行う。
【0031】
親機CMと子機CS1、CS2との間の無線通信は、昇降路2内において行われる。
図4は、昇降路2の内部の乗りかご12とカウンタウェイト13の位置関係につき天井から表した図である。X軸、Z軸はそれぞれ昇降路の幅方向と奥行き方向を示す。Y軸は昇降路の高さ方向を示す。
図4に示すように、昇降路2の内部は乗りかご12及びカウンタウェイト13に占める割合が大きいため、無線電波が通れる空間(
図4における斜線の領域)が狭い。このため、昇降路2内に親機CMのアンテナが一つしか設置されていない場合、鉄が材質である乗りかご12又はカウンタウェイト13の位置によっては、子機CS1、CS2からの電波が乗りかご12又はカウンタウェイト13で反射し、親機CMのアンテナに届かないことがある。
【0032】
図5及び
図6の例を参照して、親機CMのアンテナが一つである場合について説明する。
図5及び
図6は、昇降路2内の乗りかご12側に親機CMのアンテナMAが一つ設置され、乗りかご12及びカウンタウェイト13に子機CS1、CS2のアンテナがそれぞれ一つずつ設置されている。
【0033】
図5に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い場合、子機CS1、CS2からの電波は両方とも親機CMのアンテナMAに届きやすい。
一方、
図6に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合、カウンタウェイト13の子機CS2からの電波は、乗りかご12に反射(干渉)してしまう。同様にして、親機CMから子機CS2への電波も、乗りかご12に反射してしまう。このため、親機CMとカウンタウェイト13の子機CS2とは、安定してデータを送受信できない。
【0034】
親機CMのアンテナMAがカウンタウェイト13側に設置される場合も同様である。すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合、子機CS1、CS2からの電波は両方とも親機CMのアンテナに届く。一方、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い場合、乗りかご12の子機CS1からの電波は、カウンタウェイト13に反射してしまう。親機CMから子機CS1への電波も同様である。このため、親機CMと乗りかご12の子機CS1とは、安定してデータを送受信できない。
【0035】
そこで、本実施形態では、
図7及び
図8に示すように昇降路2内の最上部の乗りかご12側にアンテナMA1、カウンタウェイト13側のアンテナMA1と同程度の高さ位置にアンテナMA2を備える。さらに、乗りかご12の位置によってアンテナMA1、MA2を切り替えるアンテナ切替装置9を備える。
【0036】
例えば、
図7に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い場合、アンテナ切替装置9は、乗りかご12側に設置されたアンテナMA1に切り替える。一方、
図8に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合、アンテナ切替装置9は、カウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA2に切り替える。これにより、乗りかご12又はカウンタウェイト13に干渉されることなく、親機CMと子機CS1、CS2との間で無線通信を行うことができる。
【0037】
図9は、アンテナ切替装置9の構成の一例を示す。
アンテナ切替装置9は、リレー91と、スイッチ回路92とを備える。スイッチ回路92は、リレー91によりc接点でON/OFF動作するスイッチSW1とスイッチSW2を有する。スイッチSW1がOFF(開状態)、スイッチSW2がON(閉状態)のとき、親機CMにアンテナMA1が接続される。スイッチSW1がON、スイッチSW2がOFFのとき、親機CMにアンテナMA2が接続される。
【0038】
リレー91は、制御装置11から出力される切替え信号により動作する。制御装置11は、巻上機17に設置されたパルスジェネレータ20の信号に基づいて乗りかご12の位置を検出し、その乗りかご12の位置に基づいて切替え信号を出力する。
【0039】
具体的には、制御装置11は、乗りかご12の位置が乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さになる位置よりも高い位置にある(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い)場合、親機CMと接続されるアンテナをカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替える切替え信号を出力する。アンテナ切替装置9は、制御装置11の切替え信号により、リレー91を介してスイッチSW1をON、スイッチSW2をOFFとする。これにより、親機CMがアンテナSA1、SA2との間で電波を送受信するアンテナがアンテナMA2に切り替わる。
【0040】
一方、制御装置11は、乗りかご12の位置が乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さになる位置よりも低い位置にある(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い)場合、親機CMと接続されるアンテナを乗りかご12側のアンテナMA1に切り替える切替え信号を出力する。アンテナ切替装置9は、アンテナ切替装置9は、制御装置11の切替え信号により、リレー91を介してスイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONとする。これにより、親機CMがアンテナSA1、SA2との間で電波を送受信するアンテナがアンテナMA1に切り替わる。
【0041】
なお、「乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さになる位置」とは、例えば昇降路2内における乗りかご12の上面とカウンタウェイト13の上面とが同じ高さになる位置のことである。乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さになったとき、その乗りかご12の高さ方向の中心位置を基準位置とする。
【0042】
乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置にある場合は、乗りかご12及びカウンタウェイト13が親機CMと子機CS1、CS2との無線通信に干渉しないため、アンテナMA1、MA2のどちらに切り替えられてもよい。
【0043】
このように第1実施形態によれば、乗りかご12の位置に応じて、親機CMがアンテナSA1、SA2との間で電波を送受信するアンテナがアンテナMA1又はアンテナMA2に切り替えられる。具体的には、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合にカウンタウェイト13側に設けられたアンテナMA2に切り替えられ、カウンタウェイト13よりも低い場合に乗りかご12側に設けられたアンテナMA1に切り替えられる。これにより、昇降路2内において、乗りかご12やカウンタウェイト13に影響されずに、親機CMと子機CS1、CS2間で電波を送受信でき、安定した無線通信を行うことができる。
【0044】
なお、子機CS1又はCS2から親機CMに対してデータを送信するタイミングと、アンテナ切替装置9がアンテナを切り替えるタイミングとが同時であった場合、親機CMが子機CS1又はCS2からのデータを受信できない場合がある。そのため、子機CS1又はCS2から親機CMにデータを送信したときに、一定時間内に親機CMからACK信号が返って来ない場合には、当該データを再送することが好ましい。
【0045】
また、例えば災害時においては、省電力でエレベータを動かすため、パルスジェネレータ20の信号を含め、運転に必要な信号が制限される。このような場合、パルスジェネレータ20の信号から乗りかご12の位置を検出できないため、代替的な方法として、親機CMと子機CS1、CS2との間のデータ伝送の劣化度(誤りが検出された割合)に着目して、親機CMに接続するアンテナ(MA1又はMA2)を切り替えるようにしてもよい。
【0046】
例えば、親機CMと子機CS1、CS2との間のデータ伝送度の劣化度が規定値より高い場合(誤りが多い場合)には、現在、親機CMに接続されているアンテナ(MA1又はMA2)では、乗りかご12やカウンタウェイト13が障害となって、安定した通信を行えていないと判断できるので、他方のアンテナに切り替える。これにより、パルスジェネレータ20の信号を受信できない状況(つまり、かご位置を検出できない状況)にあっても、親機CMに接続するアンテナを適切に切り替えて、安定した通信を行える。
【0047】
(第1実施形態の変形例)
図10は、第1実施形態の変形例を示す図である。
昇降路2内の乗りかご12の走行経路側に乗りかご12の通過を第1位置P1で検知する第1検知器81と、乗りかご12の通過を第2位置P2で検知する第2検知器82とが設置される。第1位置P1は、基準位置よりも高い位置である。第2位置P2は、基準位置よりも低い位置である。第1位置P1と第2位置P2は、例えば乗りかご12の高さ分の距離だけを離して設定されている。
【0048】
すなわち、第1位置P1で乗りかご12の通過が検知されることは、乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置よりも高い位置(すなわち、カウンタウェイト13よりも高い位置)にあることを意味する。また、第2位置P2で乗りかご12の通過が検知されることは、乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置よりも低い位置(すなわち、カウンタウェイト13よりも低い位置)にあることを意味する。
【0049】
アンテナ切替装置9は、第1検知器81によって乗りかご12が第1位置P1を通過したことが検知された場合に、カウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA2に切り替え、第2検知器82によって乗りかご12が第2位置P2を通過したことが検知された場合に、乗りかご12側に設置されたアンテナMA1に切り替える。
【0050】
図11は、第1実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置9の構成の一例である。
アンテナ切替装置9は、リレー91と、スイッチ回路92と、スイッチSW3、SW4、SW5を備える。スイッチSW3、SW4はa接点であり、スイッチSW5はb接点である。
【0051】
スイッチSW3は、リレー91によって、ON/OFFに切り替えられる。スイッチSW4は、第1検知器81によって乗りかご12の第1位置P1の通過が検知された場合に、ON/OFFに切り替えられる。スイッチSW5は、第2検知器82によって乗りかご12の第2位置P2の通過が検知された場合に、ON/OFFに切り替えられる。また、
図9で説明したように、スイッチ回路92は、リレー91を介して親機CMと接続されるアンテナをアンテナMA1又はアンテナMA2に切り替える。
【0052】
ここで、第1実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置9の動作について、
図12及び
図13の具体例を参照して説明する。
図12は、乗りかご12が基準位置から上方向に第1位置P1を通過した後、下方向に第1位置P1、第2位置P2の順番で通過する例を示す図である。
【0053】
乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置にあるとき(
図12(a))、スイッチSW5はON、スイッチSW4はOFFである。したがって、親機CMと接続されるアンテナは乗りかご12側のアンテナMA2である。
【0054】
乗りかご12が上方向に移動してカウンタウェイト13よりも高い位置に移動すると(
図12(b))、第1検知器81によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW4がONとなる。スイッチSW5及びスイッチSW4が共にONとなったことにより、リレー91を介してスイッチSW3がONとなるとともに、親機CMと接続されるアンテナがカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替えられる。
【0055】
その後、乗りかご12が下方向に移動し、再び第1位置P1を通過すると(
図12(c))、第1検知器81によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW4がOFFとなる。しかし、スイッチSW3がON状態を維持しているため、親機CMと接続されるアンテナは、カウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA2である。
【0056】
乗りかご12がさらに下方向に移動し、カウンタウェイト13よりも低い位置に移動すると(
図12(d))、第2検知器82によって乗りかご12の第2位置P2の通過が検知されることにより、スイッチSW5がOFFとなる。したがって、リレー91を介してスイッチSW3がOFFとなるとともに、親機CMと接続されるアンテナが乗りかご12側のアンテナMA1に切り替わる。
【0057】
なお、図示していないが、乗りかご12が再び上方向に移動すると、第2検知器82によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW5がONとなる。したがって、スイッチSW5、スイッチSW4、スイッチSW3、及び親機CMと接続されるアンテナの状態は、
図12(a)と同様の状態となる。
【0058】
図13は、乗りかご12が基準位置から下方向に第2位置P2を通過した後、上方向に第2位置P2、第1位置P1の順番で通過する例を示す図である。
乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置にあるとき(
図13(a))、
図12(a)と同様に、スイッチSW5はON、スイッチSW4はOFF、親機CMと接続されるアンテナは乗りかご12側のアンテナMA2である。
【0059】
乗りかご12が下方向に移動してカウンタウェイト13よりも低い位置に移動すると(
図13(b))、第2検知器82によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW5がOFFとなる。スイッチSW5、SW4は共にOFFであるため、親機CMと接続されるアンテナは乗りかご12側のアンテナMA2である。
【0060】
その後、乗りかご12が上方向に移動し、再び第2位置P2を通過すると(
図13(c))、第2検知器82によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW5がONとなる。しかし、スイッチSW4はOFF状態を維持しているため、親機CMと接続されるアンテナは、カウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA2である。
【0061】
乗りかご12がさらに上方向に移動し、カウンタウェイト13よりも高い位置に移動すると(
図13(d))、第1検知器81によって乗りかご12の通過が検知されることにより、スイッチSW4がONとなる。スイッチSW5及びスイッチSW4が共にONとなったことにより、リレー91を介してスイッチSW3がONとなるとともに、親機CMと接続されるアンテナがカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替えられる。なお、
図13においては図示していないが、乗りかご12が再び下方向に移動した場合、
図12(c)、(d)と同様に親機CMと接続されるアンテナが切り替えられる。
【0062】
このような構成により、アンテナ切替装置9は、第1検知器81によって乗りかご12が第1位置P1を通過したことが検知された場合に乗りかご12側のアンテナMA1に切り替え、第2検知器82によって乗りかご12が第2位置P2を通過したことが検知された場合にカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替える。
【0063】
前記第1実施形態では、制御装置11がパルスジェネレータ20の信号を基に乗りかご12の位置を検出する構成とした。このため、既存の制御装置11に対して、アンテナ切替え装置9に切り替える処理についてソフトウェアを更新することで対応することができ、ソフトウェア的に課題を解決することができる。
【0064】
前記変形例では、第1検知器81と第2検知器82を用いて乗りかご12の位置を検出し、アンテナ切替装置9を介して親機CMと接続されるアンテナ(親機CMがアンテナSA1、SA2との間で電波を送受信するアンテナ)がカウンタウェイト13側のアンテナMA2又は乗りかご12側のアンテナMA1に切り替えられる。つまり、制御装置11を介さずにアンテナを切り替えることができる。このため、ハードウェア的に課題を解決することができる。
【0065】
また、上述したように、災害時にはパルスジェネレータ20から信号を得られないことがある。前記変形例によれば、パルスジェネレータ20の信号を必要とせずに、アンテナを切り替えることができるので、災害時でも安定して無線通信を行うことができる。
【0066】
なお、前記変形例における第1検知器81及び第2検知器82は、乗りかご12の通過を検知したが、カウンタウェイト13の通過を検知するように設置されてもよい。この場合、アンテナ切替装置9は、第1検知器81によってカウンタウェイト13が第1位置P1を通過したことが検知された場合に乗りかご12側に設置されたアンテナMA1に切り替え、第2検知器82によってカウンタウェイト13が第2位置P2を通過したことが検知された場合にカウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA1に切り替える。
【0067】
また、前記変形例では、乗りかご12の位置を2つの検知器によって検出する例を示したが、検知器の数は2つに限られない。例えば、
図14に示すように、乗りかご12が基準位置を上方向または下方向に通過したことを検知する第3検知器83を昇降路2内に設けてもよい。乗りかご12が基準位置を上方向に通過したことは、乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置よりも高い位置にある(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い)ことを意味する。乗りかご12が基準位置を下方向に通過したことは、乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置よりも低い位置にある(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い)ことを意味する。
【0068】
この場合、アンテナ切替装置9は、第3検知器83によって乗りかご12が基準位置を上方向に通過したことが検知された場合にカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替え、乗りかご12が基準位置を下方向に通過したことが検知された場合に乗りかご12側のアンテナMA1に切り替える。
【0069】
なお、前記変形例は、制御装置11を介さずにアンテナ切替えを行うため、制御装置11側では、アンテナの切替えが正しく行われたか否かを確認できない。そこで、制御装置11は、親機CMと各子機CS1、CS2との間の無線通信の電波強度からアンテナの切替えが正しく行われたか否かを判断するようにしてもよい。例えば、乗りかご12が最下階にあるときに測定される電波強度と、乗りかご12が最上階であるときに測定される電波強度との差が規定値以内であれば、制御装置11は、アンテナの切替えが正しく行われたと判断する。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、アンテナMA1、MA2を昇降路2内の最下部(ピット3付近)に設置している点において前記第1実施形態と異なる。また、アンテナSA1は乗りかご12の下部に、アンテナSA2はカウンタウェイト13側の下部に設置される点において前記第1実施形態と異なる。そのほかの構成については
図1~
図3を用いて説明した第1実施形態と同様である。
【0071】
図15及び
図16は、第2実施形態の一例を示す図である。
図15及び
図16に示すように、アンテナMA1は昇降路2内の最下部の乗りかご12側に設置される。アンテナMA2は昇降路2内の最下部のカウンタウェイト13側に設置される。また、子機CS1に設置されるアンテナSA1は、乗りかご12の下部に設置される。子機CS2に設置されるアンテナSA2は、カウンタウェイト13側の下部に設置される。
【0072】
例えば、
図15に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い場合、アンテナ切替装置9は、カウンタウェイト13側に設置されたアンテナMA2に切り替える。一方、
図16に示すように、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合、アンテナ切替装置9は、乗りかご12側に設置されたアンテナMA1に切り替える。これにより、第1実施形態と同様に、乗りかご12又はカウンタウェイト13に干渉されることなく、親機CMと子機CS1、CS2との間で無線通信を行うことができる。
【0073】
アンテナ切替装置9の構成は、
図9を用いて説明した第1実施形態と同様である。ただし、乗りかご12の位置によって制御装置11から出力される切替え信号が前記第1実施形態と異なる。具体的には、制御装置11は、乗りかご12の高さ方向の中心位置が基準位置よりも高い(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い)場合、親機CMと接続されるアンテナを乗りかご12側のアンテナMA1に切り替える信号を出力する。一方、制御装置11は、巻上機17から取得される乗りかご12の高さ方向の中心位置が、基準位置よりも低い(すなわち、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも低い)場合、親機CMと接続されるアンテナをカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替える信号を出力する。
【0074】
このように第2実施形態によれば、アンテナMA1、MA2を昇降路2内の最下部に設置した場合において、乗りかご12の位置がカウンタウェイト13よりも高い場合に乗りかご12側に設けられたアンテナMA1に切り替えられ、カウンタウェイト13よりも低い場合にカウンタウェイト13側に設けられたアンテナMA2に切り替えられる。これにより、昇降路2内において、乗りかご12やカウンタウェイト13に影響されずに、親機CMと子機CS1、CS2間で電波を送受信でき、安定した無線通信を行うことができる。
【0075】
なお、前記第1実施形態では、乗りかご12の上面とカウンタウェイト13の上面とが同じ高さ位置になったときに、「乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さ」になったと判断したが、前記第2実施形態では、乗りかご12の下面とカウンタウェイト13の下面とが同じ高さ位置になったときに、「乗りかご12とカウンタウェイト13とが同じ高さ」になったと判断するようにしてもよい。
【0076】
(第2実施形態の変形例)
前記第2実施形態の変形例では、
図10に示すように設置された第1検知器81と第2検知器82を用いて、乗りかご12の位置を検出する。
図17は、第2実施形態の変形例におけるアンテナ切替装置9の構成の一例である。なお、
図11を用いて説明した第1実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置9と同様の部分については同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0077】
第2実施形態の変形例に係るアンテナ切替装置9は、リレー91と、スイッチ回路92と、スイッチSW3、SW4、SW5を備える。スイッチ回路92は、リレー91によりc接点でON/OFF動作するスイッチSW1とスイッチSW2を有する。スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONのとき、親機CMにアンテナMA2が接続される。スイッチSW1がON、スイッチSW2がOFFのとき、親機CMにアンテナMA1が接続される点において前記第1実施形態と異なる。
【0078】
その他の構成については前記第1実施形態の変形例と同様である。これにより、アンテナ切替装置9は、第1検知器81によって乗りかご12の第1位置P1の通過が検知された場合に乗りかご12側のアンテナMA1に切り替え、第2検知器82によって乗りかご12の第2位置P2の通過が検知された場合にカウンタウェイト13側のアンテナMA2に切り替えることができる。
【0079】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、昇降路2内で乗りかご12やカウンタウェイト13に影響されずに、親機CMと子機CS1、CS2間で安定した無線通信を行うことができるエレベータシステムを提供することができる。
【0080】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…上部機械室、2…昇降路、3…ピット、4…操作パネル、5…乗場、6…乗り場呼びボタン、9…アンテナ切替装置、10…制御盤、11…制御装置、12…乗りかご、13…カウンタウェイト、14a~14d…ガイドレール、15a~15d…ガイドシュー、16…メインロープ、17…巻上機、18a…メインシーブ、18b…そらせシーブ、19…モータ、20…パルスジェネレータ、21…かご制御装置、22…ドア制御装置、23…モータ、30…乗場制御装置、81…第1検知器、82…第2検知器、83…第3検知器、CM…親機、CS1、CS2…子機、MA1、MA2、SA1、SA2…アンテナ
【要約】
【課題】昇降路内で乗りかごやカウンタウェイトに影響されずに、親機と子機間で安定した無線通信を行う。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、制御盤に設けられた第1の通信端末と、昇降路内を昇降動作する乗りかごまたはカウンタウェイトに設けられた第2の通信端末との間で無線通信を行う。前記エレベータシステムは、前記昇降路内の前記乗りかご側に設けられた第1のアンテナと、前記昇降路内の前記カウンタウェイト側に前記第1のアンテナと同程度の位置に設けられた第2のアンテナと、前記第2の通信端末に設けられた第3のアンテナと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、前記かご位置検出手段によって検出された前記乗りかごの位置に応じて、前記第1の通信端末が前記第3のアンテナとの間で電波を送受信するアンテナを前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナに切替えるアンテナ切替手段とを具備する。
【選択図】
図1