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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】センサーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1486 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
A61B5/1486
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022503366
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007510
(87)【国際公開番号】W WO2021172561
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】62/982,939
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江崎 博文
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅樹
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105411607(CN,A)
【文献】特開2019-170701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーであって、
前記プローブは、
基板と、
前記基板上に形成された電極と、
前記電極上に形成された参照層と、
を有し、
前記参照層は、上面がフィルムによって覆われ、側面が露出
前記参照層は、前記上面から見て、前記側面から前記参照層の内部に向かう方向において窄まった形状を有する、
センサー。
【請求項2】
生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーであって、
前記プローブは、
基板と、
前記基板上に形成された電極と、
前記電極上に形成された参照層と、
を有し、
前記参照層は、上面がフィルムによって覆われ、側面が露出し、
前記参照層の前記側面から前記参照層の内部に向かう方向の形状は、円弧形状、楕円弧形状、または三角形状である、
センサー。
【請求項3】
前記参照層は、複数の前記円弧形状、複数の前記楕円弧形状、または複数の三角形状を有する、
請求項に記載のセンサー。
【請求項4】
前記参照層の前記側面は、前記アナライトに対して露出する、
請求項1又は2に記載のセンサー。
【請求項5】
前記参照層の前記側面は、前記アナライトが透過する保護膜によって覆われる、
請求項に記載のセンサー。
【請求項6】
生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーの製造方法であって、
前記プローブは、
シート状の基板上に電極を形成する工程と、
前記電極上に参照層を形成する工程と、
前記参照層上にフィルムを配置する工程と、
前記プローブの形状となるように前記シート状の基板をカットする工程と、
によって製造され、
前記参照層は、ノズルから吐出されるペースト状の材料が前記電極上に塗布されて形成され、
前記シート状の基板をカットする際、前記参照層の一部がカットされる、
センサーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素を用いた電気化学式バイオセンサーの代表例として、自己血糖測定に用いられる電気化学式グルコースセンサーが挙げられる。また、生体内のグルコース濃度を連続的または半連続的に測定する埋め込み型電気化学式グルコースセンサーが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-519038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グルコース等のアナライトを測定する電気化学式のセンサーは、より精度の高い測定が求められる。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、アナライトをより高い精度で測定できるセンサーおよびその製造方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係るセンサーは、生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーであって、前記プローブは、基板と、前記基板上に形成された電極と、前記電極上に形成された参照層と、を有し、前記参照層は、上面がフィルムによって覆われ、側面が露出する。
【0007】
本開示の一実施例に係るセンサーは、生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーであって、前記プローブは、シート状の基板上に電極が形成され、前記電極上に参照層が形成され、前記参照層上にフィルムが配置され、前記基板がプローブ形状にカットされて形成され、前記参照層は、ノズルから吐出されるペースト状の材料が、カットラインを跨ぐように前記電極上に塗布される。
【0008】
本開示の一実施例に係るセンサーの製造方法は、生体内に挿入されるプローブを有し、アナライトを測定するセンサーの製造方法であって、前記プローブは、シート状の基板上に電極を形成する工程と、前記電極上に参照層を形成する工程と、前記参照層上にフィルムを配置する工程と、前記プローブの形状となるように前記シート状の基板をカットする工程と、によって製造され、前記参照層は、ノズルから吐出されるペースト状の材料が前記電極上に塗布されて形成され、前記シート状の基板をカットする際、前記参照層の一部がカットされる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施例によれば、アナライトをより高い精度で測定できる。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係るセンサーの適用例を示した図
図2】センサーの断面図
図3】プローブの平面図
図4A図3のAA矢視断面図
図4B図3のBB矢視断面図
図4C図3のCC矢視断面図
図5】試薬層とフィルムとの位置関係を説明する図
図6図5のDD矢視断面図
図7】プローブの試薬層部分の斜視図
図8】プローブの先端部分の平面図
図9】試薬層とフィルムとの位置関係を説明する図
図10図9のEE矢視断面図
図11】フィルムの開口形状の例を示した図
図12】センサーの大きさの一例を説明する図
図13】第2の実施の形態に係るセンサーのプローブの斜視図
図14図13のプローブを第3面側から見た一部側面図
図15】参照層24の形状例を説明する図
図16】Ag/AgClペーストの塗布例を示した図
図17】Ag/AgClペーストの塗布後の側面図
図18A】プローブの製造方法例を説明する図
図18B】プローブの製造方法例を説明する図
図18C】プローブの製造方法例を説明する図
図19】Ag/AgClペーストの塗布を説明する図
図20】Ag/AgClペーストの塗布後の形状を説明する図
図21】塗布装置の動作を説明する図
図22】塗布装置の動作を説明する図
図23】単発工法による参照層の形状例を示した図
図24】連発工法による参照層の形状例を示した図
図25】スキージ工法による参照層の形状例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るセンサー1の適用例を示した図である。図1には、センサー1の他に、生体2が示してある。生体2は、例えば、人体である。
【0015】
図1に示すセンサー1は、例えば、バイオセンサーである。より具体的には、センサー1は、CGM(Continuous Glucose Monitor)センサーである。センサー1は、センサー1が備えるプローブが生体2内に挿入され、生体2の血液中または間質液中のグルコース濃度を連続的または半連続的に測定する。例えば、センサー1は、数日から数週間、生体2のグルコース濃度を測定する。
【0016】
図2は、センサー1の断面図である。図2において、図1と同じ構成要素には、同じ符号が付してある。
【0017】
図2に示すように、センサー1は、本体11と、プローブ12と、を有する。プローブ12は、生体2内に挿入される。プローブ12は、酸化還元酵素を含む試薬層を有し、グルコース濃度に基づく電気信号を本体11に出力する。本体11は、プローブ12から出力されるグルコース濃度に基づく電気信号を記憶装置に記憶し、所定のタイミングで他の装置(図示せず)に送信する。
【0018】
図3は、プローブ12の平面図である。図3の(A)には、プローブ12の全体が示してある。図3の(B)には、図3の(A)に示すプローブ12の先端部分を拡大した図が示してある。
【0019】
図3の(A)に示すプローブ12の領域X1の部分(プローブ12の頭部)は、本体11に収容される。プローブ12の先端部分は、本体11から突出する。プローブ12の先端部分が、生体2内に挿入される。図3の(A)に示す矢印X2は、プローブ12の生体2への挿入方向を示す。
【0020】
プローブ12は、基板21と、電極22と、試薬層23と、参照層24と、フィルム25と、を有する。
【0021】
プローブ12の製造方法について概説する。
【0022】
(1)基板21上に電極22を形成する。
基板21は、例えば、シート状の合成樹脂である。電極22は、基板21上に一様に形成される。
【0023】
電極22の材料は、例えば、金(Au)である。電極22は、例えば、スパッタリングによって基板21上に形成されてもよい。電極22は、電極膜または電極層と称されてもよい。
【0024】
(2)電極22を3つの領域に分離する。
基板21上に形成された電極22に、溝A1,A2を形成し、電極22を3つの領域に分離する。電極22は、溝A1,A2によって、作用極22aと、参照極22bと、対極22cと、に分離される。溝A1,A2は、例えば、レーザートリミングによって形成されてもよい。作用極22aは、作用極膜または作用極層と称されてもよい。参照極22bは、参照極膜または参照極層と称されてもよい。対極22cは、対極膜または対極層と称されてもよい。
【0025】
なお、作用極22aには、例えば、酸化還元酵素によるアナライト(グルコース)の反応によって還元されたメディエータ(電子メディエータだけでなく過酸化水素を含む)を酸化させるのに十分な電位(参照極を基準とした電位)が与えられる。グルコース濃度は、作用極22aと対極22cとの間を流れる電流をモニタすることによって、測定される。
【0026】
(3)参照層24を形成する。
プローブ12の先端部分における参照極22b上に、参照層24を形成する。参照層24の材料は、例えば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)である。参照層24は、例えば、Ag/AgClペースト(インク)を用い、スクリーン印刷法または塗布工法により形成されてもよい。参照層24は、参照膜または参照極と称されてもよい。
【0027】
(4)フィルム25を配置し、固定する。
基板21上に形成された作用極22a、参照極22b、対極22c、および参照層24の上に、開口を有するフィルム25を配置する。フィルム25は、シート状であり、絶縁性を有する。フィルム25は、開口部分が、プローブ12の先端部分(試薬層23を形成する部分)に位置するよう配置される。フィルム25の開口には、後述する試薬が滴下される。フィルム25は、フィルム層、絶縁層、または絶縁膜と称されてもよい。配置は、積層または載置と言い換えられてもよい。
【0028】
また、フィルム25は、対極22cの上面(図3の紙面の表側方向の面)が一部露出するように、開口を有する。フィルム25の開口は、後述する(7)のカッティング工程により、図3の(B)の領域X3に示すように切欠き形状となる。この切欠き形状により、対極22cは、上面において一部が露出する。なお、上面は、プローブ12の試薬層23が形成される側の面と捉えてもよい。
【0029】
また、フィルム25は、プローブ12の頭部が一部露出する形状を有する。例えば、図3の(A)の領域X4の部分は、フィルム25によって覆われない。領域X4の露出した電極22は、本体11の回路と接続される。
【0030】
なお、参照層24の上面は、図3の(B)に示すように、フィルム25によって覆われる。参照層24は、プローブ12の幅方向(矢印X2に示す挿入方向に対し垂直方向)において露出する。図3の(B)の例では、参照層24は、プローブ12の先端部分の右側側面において露出する(図4Bの参照層24も参照)。
【0031】
(5)試薬層23を形成する。
プローブ12の先端部分における作用極22a上に、試薬層23を形成する。例えば、上述したフィルム25の開口に、試薬を滴下し、乾燥させ、試薬層23を形成する。図3の(B)の矢印X5に示すプローブ12の先端には、試薬層23は形成されないことが好ましい。別言すれば、試薬層23は、プローブ12の先端から離れて形成されることが好ましい。すなわち、試薬層23は、プローブ12の先端から所定距離にわたって形成されないことが好ましい。試薬層23を、プローブ12の先端から離れて形成することにより、プローブ12が生体2内に挿入されるとき、試薬層23がプローブ12から剥がれる(めくれる)のを抑制できるからである。
【0032】
試薬層23には、少なくとも、アナライト(グルコース)に対して酸化還元反応が可能な酸化還元酵素が含まれる。試薬層23は、試薬膜、作用層、または作用極と称されてもよい。
【0033】
なお、フィルム25の開口は、例えば、プローブ12の幅より大きい幅の試薬層23が形成される大きさおよび形状を有してもよい。プローブ12の幅より大きく形成された試薬層23は、次のトリミング工程によって、形状が整形される。
【0034】
(6)試薬層23および電極22を除去する。
後述する(7)のカッティング工程により外形が形成されるプローブ12の幅方向における端部において、プローブ12の挿入方向に沿って、試薬層23および電極22をトリミングする。このトリミングにより、基板21は、図3の(B)の領域X6に示すように、上面が一部露出する。試薬層23および電極22のトリミングには、例えば、レーザートリミングが用いられてもよい。
【0035】
なお、図3の(B)では、フィルム25も、試薬層23の挿入方向における両端部分において、一部(少し)トリミングされている。
【0036】
(7)カッティングにより基板21からプローブ12を切り出す。
上記(1)~(6)の工程を経た基板21をカッティングし、図3の(A)に示す形状のプローブ12を切り出す。
【0037】
カッティング位置には、トリミングされた部分が含まれる。例えば、トリミングされた部分(凹部の底部分)の中央付近(中央線付近)がカッティングされる。
【0038】
(8)保護膜を形成する。
カッティングしたプローブ12の先端部分を、例えば、保護膜を形成する液体に付け、保護膜を形成する。保護膜は、試薬層23に含まれる物質(主に酸化還元酵素や電子メディエータ)の保護膜外への漏出を防止または抑制する。保護膜は、保護膜外に存在するアナライトが、試薬層23の存在する保護膜内に透過する孔を有する。保護膜は、少なくともプローブ12の試薬層23の部分を保護(被覆)できればよい。
【0039】
図4Aは、図3のAA矢視断面図である。図4Aに示すように、プローブ12の試薬層23が形成される部分は、基板21の上(上面)に、作用極22aが形成される。作用極22aの上に、試薬層23が形成される。
【0040】
試薬層23および作用極22aは、上記の(6)のトリミング工程により、プローブ12の幅方向(プローブ12の側面)の両端において、除去される。上記の(7)のカッティング工程では、上記の(6)のトリミング工程により露出した基板21であって、試薬層23および作用極22aから離れた位置においてカッティングされる。これにより、プローブ12の側面は、図4Aの矢印11a,11bに示すように、階段状になる。
【0041】
なお、プローブ12の試薬層23における先端部分の周囲は、保護膜が形成される。図4Aでは、保護膜の図示を省略している。
【0042】
図4Bは、図3のBB矢視断面図である。図4Bに示すように、プローブ12の参照層24が形成される部分は、基板21の上に、作用極22aと、参照極22bと、が形成される。作用極22aと、参照極22bとは、溝A1によって、物理的かつ電気的に分離される。
【0043】
参照極22bの上に、参照層24が形成される。作用極22aと、参照極22bと、参照層24と、の上に、フィルム25が配置される。参照層24は、上面がフィルム25によって覆われるが、プローブ12の側面(図4Bでは、右側側面)において露出する。
【0044】
なお、参照層24の上部にあるフィルム25は、無くてもよい。すなわち、参照層24は、上面が露出してもよい。
【0045】
図4Cは、図3のCC矢視断面図である。図4Cに示すように、対極22cの上面が露出する部分は、基板21の上に、作用極22aと、参照極22bと、対極22cと、が形成される。作用極22aと、参照極22bとは、溝A1によって、物理的かつ電気的に分離される。参照極22bと、対極22cとは、溝A2によって、物理的かつ電気的に分離される。
【0046】
作用極22aと、参照極22bとの上に、フィルム25が形成される。対極22cの上には、フィルム25が配置されず、対極22cの上面は露出する。
【0047】
各構成部材の例について説明する。
【0048】
・基板21
基板21は、シート上の合成樹脂である。例えば、基板21には、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられてもよい。ただし、柔軟性、易加工性、および耐熱性の少なくとも1以上の特徴を有するプラスチック材料のような樹脂材料であれば特に限定されない。他の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエチレンナフタレートなどの汎用プラスチックが挙げられる。また、高い耐熱性が必要な場合は、ポリイミドが好ましい。
【0049】
・電極22
電極22の材料には、上記したように、金を用いてもよい。ただし、導電性、安定性(例えば、酸化し難いまたは耐塩性)を有する金属、または、炭素材料であれば特に限定されない。例えば、電極22の材料として、白金、パラジウム、カーボン等が挙げられる。
【0050】
電極22に、金属材料を用いる場合には、基板21に金属材料を蒸着(スパッタリングを含む)してもよい。他の形成方法としては、印刷、メッキ、およびスピンコート等がある。
【0051】
電極22に、カーボンを用いる場合には、カーボンペーストを印刷して電極22を形成してもよい。また、プローブ12の上面および裏面の一方の面を作用極とし、他方の面を対極とする場合には、作用極と対極とに、異なる電極材料を使用してもよい。
【0052】
・試薬層23
試薬層23には、上記したように、少なくともアナライトに対して酸化還元反応が可能な酸化還元酵素が含まれる。酸化還元酵素が、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)であれば、さらに電子メディエータが含まれる。また、酸化還元酵素が酸化酵素(オキシダーゼ)であっても電子メディエータを用いる系であってもよい。すなわち、酸化酵素によるグルコースの酸化還元反応で生じた過酸化水素を電気化学的に検出する系であれば電子メディエータは不要であるが、電子メディエータを用いて電気化学的に検出することもできる。この場合、試薬層23には、酸化酵素に加え電子メディエータが含まれる。
【0053】
グルコースを検出する系であれば、酸化還元酵素の例として、グルコースオキシダーゼおよびグルコースデヒドロゲナーゼが挙げられる。グルコースデヒドロゲナーゼに関しては、マルトースに対する反応性が低い観点から、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)結合型グルコース脱水素酵素が望ましく、例えば、アスペルギルス属(オリゼやテレウス)やムコール属由来の酵素が好ましい。
【0054】
電子メディエータとしては、例えば、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、キノン類化合物、フェナジン類化合物、およびフェロセン類化合物等が挙げられる。また、電子メディエータとしては、これらの誘導体等が挙げられる。
【0055】
・参照層24
参照層24の材料には、上記したように、銀/塩化銀(Ag/AgCl)を用いてもよい。参照層24は、Ag/AgClペースト(インク)を、電極22上にスクリーン印刷または塗布した後、乾燥して形成してもよい。
【0056】
なお、本開示に係るセンサー1では、より精度の良い測定を実現する作用極、対極、および参照極の3電極構成の例を示しているが、作用極および対極の2電極構成であってもよい。
【0057】
・フィルム25
フィルム25には、基板21と同じ材料のシートに、粘着シート(例えば、アクリル系、ゴム系、またはホットメルト系)を張り付けたものを用いてもよい。また、基板21と異なる材料のシートを用いてもよい。また、粘着シート単体をフィルム25としてもよい。熱・光可塑性レジストフィルムを、フィルム25として用いてもよい。
【0058】
フィルム25としては、例えば、試薬塗布の観点により、フィルム上の液体との接触角度が開口部の液体との接触角度より高いことが好ましく、その差は大きいほど好ましい。例えば、フィルム上は90°以上であって、開口部が50°以下であることが望ましい。仮にこのような接触角度を持たない材質であっても、フィルム表面に撥水加工、および、開口部に親水処理の少なくとも一方を施すことで、前記接触角度を持たすことも可能である。
【0059】
フィルム25は、1μm以上150μm以下、好ましくは3μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下の厚さを有する。フィルム25は、レジストインキを印刷して形成されてもよい。
【0060】
・保護膜
試薬層23を有するプローブ12は、生体2内に挿入して使用される。そのため、試薬層23の表面を被覆する保護膜は、タンパク質や細胞が吸着しない、または、タンパク質や細胞が吸着し難い生体適合性を有することが好ましい。一般的には、保護膜は、前述のような性質を有するポリマーによって形成されることが好ましい。
【0061】
ポリマーの例としては、例えば、メタクリル酸メチルとヒドロキシエチルメタクリレートとのコポリマー、ブチルメタクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートとのコポリマー、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン-コ-n-ブチルメタクリレート)等が挙げられる。なお、これらの例示されたポリマーと同様の主鎖を有する(メタ)アクリレート系化合物であって、リンカーと反応することができる反応基を側鎖に有するものを、高分子量ポリマーの具体例として挙げられるメタクリロイル基またはアクリロイル基を有する「エチレン系ポリマー」として用いることも可能である。
【0062】
図5は、試薬層23とフィルム25との位置関係を説明する図である。図5には、プローブ12の先端部分の平面図が示してある。図5において、図3と同じ構成要素には、同じ符号が付してある。
【0063】
図5には、プローブ12の製造工程の一部が示してある。図5に示す「フィルムの形成」は、上記した(4)の工程に対応する。「試薬液のアプライ」および「アプライした試薬液の乾燥」は、上記した(5)の工程に対応する。「トリミング」は、上記した(6)の工程に対応する。「センサカッティング」は、上記した(7)の工程に対応する。「保護膜形成」は、上記した(8)の工程に対応する。
【0064】
なお、図5では、上記の(1)~(3)の工程の説明を省略している。上記の(1)~(3)の工程を経た後、図5に示す「フィルムの形成」の工程が続く。また、図5では、保護膜の図示を省略している。
【0065】
図6は、図5のDD矢視断面図である。作用極22a上に、開口を有するフィルム25が配置される。そして、フィルム25の開口部分に試薬が滴下され、乾燥される。これにより、試薬層23は、図6に示すように、プローブ12の挿入方向において、フィルム25の間に挟まれ、形成される。すなわち、試薬層23は、フィルム25の開口で規定された領域内に納まり、形成される。別言すれば、フィルム25は、電極22上において、試薬層23に隣接する。
【0066】
なお、挿入方向側のフィルム25は、形成されなくてもよい。例えば、図5および図6に示す左側のフィルム25は、無くてもよい。
【0067】
図7は、プローブ12の試薬層23部分の斜視図である。図7に示すように、プローブ12は、試薬層23が形成された上面31と、上面31に対向する裏面32と、上面31と裏面32とを接続する側面33と、側面33と対向し、上面31と裏面32とを接続する側面34と、を有する。図7に示す矢印X2は、プローブ12の生体2への挿入方向を示す。
【0068】
プローブ12の幅方向における上面31の端部は、試薬層23と電極22とが除去された階段状のトリミング部35,36を有する。トリミング部35,36は、少なくとも試薬層23と接する位置関係において形成される。別言すれば、試薬層23は、上面31の幅方向において、端から端まで伸びてプローブ12の上面31を形成し、かつ、プローブ12の側面の一部を形成する(図4Aの試薬層23も参照)。
【0069】
上記のセンサー1は、下記の構成要素を備えると捉えてもよい。
【0070】
センサー1は、本体11と、プローブ12と、を有する。プローブ12は、生体2内へ挿入され、連続的または半連続的にアナライトを測定するための電気信号を取得する。
【0071】
基板21は、第1面(例えば、上面31)と、第1面と対向する第2面(例えば、裏面32)と、を有する。また、基板21は、第1面と第2面とを接続し、プローブ12の挿入方向に伸びる面の第3面および第4面(例えば、側面33,34)と、を有する。
【0072】
作用極22aは、基板21の第1面に第1電極材料において形成される。
【0073】
試薬層23は、作用極22aの一部に配置される。
【0074】
トリミング部35,36は、プローブ12の生体2内への挿入方向に沿った方向と直交する方向における第1面の両端部において、試薬層23と第1電極材料とが除去されて形成される。
【0075】
試薬層23は、酸化還元酵素を含む。トリミング部35,36は、少なくとも試薬層23と接する位置関係に形成される。
【0076】
フィルム25は、生体2への挿入方向において、プローブ12の先端側とは逆方向において、試薬層23に隣接する。
【0077】
試薬層23は、電極22とフィルム25との間に挟まれる部分を有さない。別言すれば、フィルム25は、試薬層23の上に配置されない。フィルム25は、プローブ12の先端側において、試薬層23に隣接してもよいし、隣接しなくてもよい。別言すれば、フィルム25は、プローブ12の先端側において、形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0078】
上記のセンサー1は、下記の製造工程を備えると捉えてもよい。
【0079】
まず、第1面に第1電極材料の作用極22aが形成された基板21(基板シート)を準備する。
【0080】
次に、第1面の所定の位置に、酸化還元酵素を含む試薬液をアプライする。
【0081】
次に、試薬液を乾燥させ、試薬層23を形成する。
【0082】
次に、基板21上の試薬層23の所定の位置をトリミングし、試薬層23および試薬層23の下部に形成された作用極22aが除去されたトリミング部を形成する。
【0083】
次に、基板21を所定の形状(図3の(A)に示したプローブ12の形状、例えば、旗竿形状)となるようにカットする。基板21をカットする位置には、トリミング部35,36が含まれる。
【0084】
なお、試薬層23が形成されるプローブ12の先端部分には、保護膜が形成されてもよい。保護膜は、少なくともアナライト(グルコース)を透過可能な孔を有する。
【0085】
また、対極22cは、基板21の第1面に形成されてもよいし、第2面に形成されてもよい。基板21の第1面および第2面の両方または一方には、対極22cとは異なる別の対極(第2対極)が形成されてもよい。
【0086】
また、参照極22bは、第1面~第4面の少なくとも1面に形成されてもよい。参照層24は、第1面に形成される場合、上面にフィルム25が配置され、第3面側が露出してもよい。
【0087】
また、試薬層23は、プローブ12の挿入方向における第1面の末端側(プローブ12の先端)から、所定の距離にかけては形成されなくてもよい。
【0088】
また、試薬層23の一部(端部)は、電極22とフィルム25との間に挟まれてもよい。試薬層23は、電極22とフィルム25との間において挟まれる部分を有さなくてもよい。
【0089】
以上説明したように、センサー1は、生体2内に挿入されるプローブ12を有し、アナライトを測定する。プローブ12は、基板21と、基板21上に形成された電極22と、酸化還元酵素を含み、電極22上に形成された試薬層23と、を有する。プローブ12は、幅方向における少なくとも一方の端部において、試薬層23と電極22とが、プローブ12の生体2内への挿入方向に沿ってトリミングされる。
【0090】
これにより、センサー1は、製造工程によって生じる性能のばらつきが抑制される。例えば、電極22上に滴下した試薬層23が、エッジ部分が中央部よりも厚くなる、いわゆるコーヒーリング状態となっても、トリミングにより、リング内の一様(均一)な部分を試薬層23として利用できる。
【0091】
また、プローブ12形状にカッティングする際、刃先が試薬層23に接触しないようにでき、試薬層23の割れを軽減できる。
【0092】
また、プローブ12形状にカッティングする際、刃先が試薬層23に接触しないようにでき、試薬の汚染(contamination)を抑制できる。
【0093】
また、以上説明したように、センサー1が有するプローブ12は、基板21上に電極22を形成する工程と、酸化還元酵素を含む試薬層23を電極22上に形成する工程と、プローブ12の幅方向における少なくとも一方の端部において、試薬層23と電極22とを、プローブ12の生体2内への挿入方向に沿ってトリミングする工程と、によって製造される
【0094】
これにより、センサー1は、製造工程によって生じる性能のばらつきが抑制される。例えば、電極22に滴下した試薬層23がコーヒーリング状態となっても、トリミングにより、リング内の一様(均一)な中央部分を試薬層23として利用できる。
【0095】
また、プローブ12の形状にカッティングする際、トリミングにより、刃先が試薬層23に接触しないようにできるので、試薬層23の割れを軽減できる。また、試薬の汚染を抑制できる。
【0096】
また、以上説明したように、フィルム25は、試薬層23の挿入方向における両端部において、試薬層23に隣接するように、電極22上に配置される。
【0097】
これにより、センサー1は、製造工程によって生じる性能のばらつきが抑制される。例えば、フィルム25によって試薬を滴下する位置を決定でき、トリミング前に一様な試薬層23を形成できる。
【0098】
(変形例1)
プローブ12は、幅方向の一方の端においてトリミング部を有してもよい。すなわち、トリミング部は、1つであってもよい。
【0099】
図8は、プローブ12の先端部分の平面図である。図8において、図3と同じ構成要素には、同じ符号が付してある。図8には、作用極22aと、対極22cとが、プローブ12の幅方向において並んで形成された例が示してある。図8では、フィルム25の図示を省略している。
【0100】
試薬層23は、プローブ12の幅方向の一端側において、プローブ12の幅を跨ぐように形成される。試薬層23は、プローブ12の幅方向の他端側において、プローブ12の幅を跨がないように形成される。例えば、図8の例では、試薬層23は、プローブ12の右端を跨ぐように形成され、プローブ12の左端を跨がないように形成される。
【0101】
プローブ12は、トリミング部41を有する。トリミング部41は、試薬層23がプローブの幅を跨いだ側(図6では右側)において形成される。トリミング部41は、試薬層23および作用極22aをトリミングして形成される。トリミング部41によって、基板21が露出する。
【0102】
このように、プローブ12は、幅方向の一方の端においてトリミング部を有してもよい。これによっても、センサー1は、製造工程によって生じる性能のばらつきが抑制される。
【0103】
(変形例2)
試薬層23は、プローブ12の挿入方向において、フィルム25で規定された領域外にはみ出てもよい。
【0104】
図9は、試薬層23とフィルム25との位置関係を説明する図である。図9には、プローブ12の先端部分の平面図が示してある。図9において、図3と同じ構成要素には、同じ符号が付してある。
【0105】
図9には、プローブ12の製造工程の一部が示してある。図9に示す「試薬液のアプライ」および「アプライした試薬液の乾燥」は、上記した(5)の工程に対応する。「フィルムの形成」は、上記した(4)の工程に対応する。「トリミング」は、上記した(6)の工程に対応する。「センサカッティング」は、上記した(7)の工程に対応する。「保護膜形成」は、上記した(8)の工程に対応する。
【0106】
なお、図9では、上記の(1)~(3)の工程の説明を省略している。上記の(1)~(3)の工程を経た後、図9に示す「試薬液のアプライ」の工程が続く。また、図9では、保護膜の図示を省略している。
【0107】
図10は、図9のEE矢視断面図である。試薬層23上に、開口を有するフィルム25が配置される。フィルム25は、開口部分が、試薬層23に位置するように配置される。フィルム25の開口は、試薬層23の挿入方向(矢印X2の方向)の両端において、試薬層23と重なるように形成される。すなわち、フィルム25の一部は、試薬層23の挿入方向の両端において、試薬層23の上に重なる。また、フィルム25の一部は、トリミング部の挿入方向の両端において、トリミング部の上に重なる。
【0108】
なお、挿入方向側のフィルム25は、形成されなくてもよい。例えば、図9および図10に示す左側のフィルム25は、無くてもよい。
【0109】
このように、フィルム25は、試薬層23の挿入方向における両端部において、試薬層23およびトリミング部に重なるように、電極22上に配置される。
【0110】
これにより、センサー1は、製造工程によって生じる性能のばらつきが抑制される。例えば、試薬層23のプローブ12の挿入方向における端部(コーヒーリングのエッジ部分)を、フィルム25によって覆い、試薬層23の一様な部分を露出させることができる。
【0111】
(変形例3)
フィルム25の開口形状の例について説明する。
【0112】
図11は、フィルム25の開口形状の例を示した図である。図11の(A)および図11の(B)のハッチングが付された部分は、トリミング部を示す。図11の(A)および図11の(B)に示す多角形状および丸形状等の図形は、フィルム25の開口部分の形状を示す。図11に示す矢印X2は、プローブ12の生体2への挿入方向を示す。
【0113】
図11の(A)では、試薬層23の挿入方向における両端にフィルム25が形成される(例えば、図5および図6を参照)。図11の(B)では、試薬層23の先端側とは反対側の端にフィルム25が形成される(例えば、図5および図6の右側のフィルム25は形成され、左側のフィルム25は形成されない)。このように、フィルム25の開口形状は、様々な形状を有してもよい。
【0114】
(変形例4)
センサー1の大きさの一例について説明する。
【0115】
図12は、センサー1の大きさの一例を説明する図である。図12において、図3および図7と同じ構成要素には、同じ符号が付してある。図12では、フィルム25の図示を省略している。
【0116】
プローブ12の先端部分の幅D1は、例えば、70μm以上1700μm以下である。好ましくは、幅D1は、70μm以上600μm以下、より好ましくは、70μm以上400μm以下である。
【0117】
トリミング部35,36の幅D2は、例えば、5μm以上である。幅D2は、プローブ12の先端部分の幅に対して試薬層23を確保できる幅を有する条件であれば、特に限定されない。トリミング部35,36の幅D2を太くしたい場合には、レーザーを複数回照射することで実現できる。
【0118】
(第2の実施の形態)
例えば、CGMセンサーといった電気化学式のセンサーは、数日から数週間、生体内中のアナライトを連続的または半連続的に測定する。その際、日または時間といった測定タイミングによって、同一アナライト濃度であっても、プローブから得られるシグナル強度が異なる場合があり、センサーの測定精度が低下する。
【0119】
その原因の1つとして、本件発明者らは、長期間連続して参照層に通電することで、参照層の材料であるAg/AgCl(銀または塩化銀)が分解し、分解したAg/AgClが作用極側に流入するためと考えている。そして、本件発明者らは、Ag/AgClが作用極側に流入することでシグナル値に異常をきたす原因として、銀イオンまたは塩素イオンが、作用極側の試薬と反応することに基づくと推測している。従って、参照層のAg/AgClの分解を抑制すれば、センサーの測定精度の低下を抑制できる。
【0120】
参照層のAg/AgClの分解を抑制する1つの手段として、参照層を微小化し、アナライトと接する面積を小さくすることが挙げられる。Ag/AgClの参照層を構成する工法には、例えば、スクリーン印刷工法と塗布工法とが挙げられる。
【0121】
しかしながら、スクリーン印刷工法で微小電極を形成した場合、微小電極がゆえに印刷版の目詰まりを起こし易い。また、スクリーン印刷工法は、Ag/AgClペーストのロスも多い。そのため、スクリーン印刷工法は、センサーの大量生産という観点から不向きである。
【0122】
めっき工法は、Ag/AgCl電極(参照層)の微小化という観点では好ましい工法であるが、センサーの大量生産においては不向きである。その理由として第1に、めっきに使用する薬品や製造プロセスの管理が煩雑であることが挙げられる。第2に、Ag/AgCl電極のめっきを行う際に、微小なAg/AgCl電極以外のプローブ部分をマスキングすること、および、それを連続的に管理することが難しいことが挙げられる。
【0123】
以下では、参照層のアナライトに接する面積を小さくでき、アナライトをより高い精度で測定できるセンサーおよびその製造方法について説明する。
【0124】
図13は、第2の実施の形態に係るセンサー1のプローブ12の斜視図である。図13において、図2および図3と同じ構成要素には同じ符号が付してある。
【0125】
図13に示すプローブ12は、第1の実施の形態で説明したプローブ12と同様に、電極22を有する。また、プローブ12は、第1の実施の形態で説明したプローブ12と同様に、試薬層23(図13には、図示せず)と、参照層24(図13には、図示せず)と、第1面において、一部が露出する対極22c(図13には、図示せず)と、を有する。
【0126】
プローブ12の試薬層23および参照層24が形成される側の面を第1面と称することがある。第1面と対向する面を第2面と称することがある。
【0127】
また、第1面と第2面とを接続し、プローブ12の挿入方向(図13の矢印X2の方向)に伸びる面であって、プローブ12の先端から見て、右側の面を第3面と称することがある。第1面と第2面とを接続し、プローブ12の挿入方向に伸びる面であって、プローブ12の先端から見て、左側の面を第4面と称することがある。
【0128】
なお、第1面は、上面と称されてもよい。第2面は、底面と称されてもよい。第3面および第4面は、側面と称されてもよい。
【0129】
図14は、図13のプローブ12を第3面側から見た一部側面図である。図14に示すように、基板21の第1面側には、電極22が形成される。電極22は、作用極22aと、参照極22bと、対極22cと、を有する。
【0130】
電極22の作用極22aの第1面側には、試薬層23が形成される。電極22の参照極22bの第1面側には、参照層24が形成される。参照層24は、参照極22b上に塗布されたAg/AgClペーストが硬化されて形成される。
【0131】
参照層24の第1面側は、フィルム25によって覆われる。別言すれば、参照層24の第1面側は、露出しない。参照層24は、プローブ12の第3面側において露出する。別言すれば、参照層24は、プローブ12の幅方向(矢印X2に示す挿入方向に対し垂直方向)において露出する(図4Bも参照)。
【0132】
なお、第3面側において露出した参照層24は、第1の実施の形態で説明したように、保護膜によって覆われてもよい。第1の実施の形態で説明した通り、保護膜は、少なくともアナライト(グルコース)を透過可能な孔を有する。従って、参照層24は、少なくともアナライトに対して露出(接触、通電)する。
【0133】
フィルム25は、対極22cの第1面側の、領域X3における部分が露出するように、開口を有する。フィルム25の開口は、切欠き形状を有する(図3の(B)の領域X3も参照)。この切欠き形状により、対極22cは、上面において一部が露出する。
【0134】
第1面側から見た、第3面から第4面に向かう方向の参照層24の形状は、円弧状形状または楕円弧状形状等を有してもよい(例えば、図15を参照)。
【0135】
なお、プローブ12の頭部(図13の領域X1の部分)から試薬層23に至るまでの作用極22aの部分は、リードまたは作用極リードと称されてもよい。プローブ12の頭部から参照層24に至るまでの参照極22bの部分は、リードまたは参照極リードと称されてもよい。プローブ12の頭部からフィルム25の開口(領域X3)に至るまでの対極22cの部分は、リードまたは対極リードと称されてもよい。
【0136】
また、参照層24は、第4面側において、露出してもよい。また、参照層24および対極22cは、第2面側に形成されてもよい。参照層24および対極22cが第2面側に形成される場合、参照極リードおよび対極リードは、第2面側に形成される。
【0137】
図15は、参照層24の形状例を説明する図である。図15の(A)および図15の(B)には、プローブ12を第1面側から見た場合の参照層24が示してある。図15の(A)および図15の(B)では、フィルム25の図示を省略している。図15の(A)および図15の(B)には、電極22の作用極22a、参照極22b、および対極22cを分離する溝A1,A2が示してある(図3の(B)も参照)。
【0138】
図15の(A)に示すように、プローブ12を第1面側から見た、第3面から第4面に向かう方向の参照層24の形状は、円弧形状を有してもよい。また、プローブ12を第1面側から見た、第3面から第4面に向かう方向の参照層24の形状は、楕円弧形状を有してもよい。別言すれば、参照層24の形状は、第1面側から見て、参照層24が露出する面(第3面)から、参照層24の中央部(内部)に向かう方向(第3面から第4面に向かう方向)において、窄まる形状を有してもよい。
【0139】
参照層24は、円弧または楕円弧が複数連なる形状を有してもよい。例えば、図15の(B)に示すように、参照層24は、2つの円弧が連なる形状を有してもよい。すなわち、参照層24は、第1円弧および第2円弧または第1楕円弧および第2楕円弧を有してもよい。また、参照層24は、円弧と楕円弧とを組み合わせた形状を有してもよい。
【0140】
図15の(A)および図15の(B)に示すように、参照極22b(参照極リード)は、プローブ12の先端側において幅(面積)が広くなっている。参照極リードの幅が広くなった領域の一部に、Ag/AgClペーストが塗布される。
【0141】
プローブ12(プローブ12の参照層24)の製造方法の概略を説明する。
【0142】
工程1:シート状の基板21の第1面側に、電極22を形成する。
【0143】
工程2:電極22の所定の位置にAg/AgClペーストを塗布する。
【0144】
工程3:塗布されたAg/AgClペーストを乾燥する。
【0145】
工程4:乾燥したAg/AgClを含む部分にフィルム25を形成する。
【0146】
工程5:シート状の基板21を、プローブ形状となるようにカットする。カットする際、乾燥したAg/AgClの一部分を含むようにカットする。
【0147】
なお、工程1に続き、次の工程1aが続いてもよい。そして、工程2に替えて、次の工程2aが行われてもよい。
【0148】
工程1a:基板21に形成された電極22に溝A1,A2を形成し、作用極22a、参照極22b、および対極22cを形成する。
【0149】
工程2a:工程1aで形成された参照極22bの所定の位置にAg/AgClペーストを塗布する。例えば、プローブ12の先端側において幅が広くなった参照極22b(参照極リード)の領域の一部に、Ag/AgClペーストを塗布する。
【0150】
また、工程2は、下記の工程2bように行われてもよい。
【0151】
工程2b:シート状の基板21の第1面側に、Ag/AgClペーストを塗布する際、Ag/AgClの一部分が、参照極22b(参照極リード)部分を含むように塗布する。別言すれば、Ag/AgClペーストを、工程5のカットにおいて基板21がカットされる部分を跨ぐように塗布する。
【0152】
図16は、Ag/AgClペースト51の塗布例を示した図である。図16には、基板21上に形成された電極22(図16では符号を省略)、溝A1,A2、およびAg/AgClペースト51が示してある。図16に示す点線X11は、工程5においてカットされる部分を示す。図16では、プローブ12の頭部、先端部、試薬層23、およびフィルム25の図示を省略している。
【0153】
Ag/AgClペースト51は、図16に示すように、プローブ12の挿入方向における参照極22bの端部(参照極22bの幅が広くなった部分)に塗布される。また、Ag/AgClペースト51は、工程5のカットにおいて基板21がカットされる部分(点線X11)を跨ぐように塗布される。従って、工程5では、Ag/AgClペースト51が塗布された部分を跨ぐように基板21をカットする。
【0154】
なお、工程4において、Ag/AgClペースト51の上面にフィルム25が形成される。従って、図14で説明したように、参照層24は、プローブ12の上面(第1面)では露出せず、側面(第3面)において露出する。
【0155】
図17は、Ag/AgClペースト51の塗布後の側面図である。図17には、基板21と、電極22と、Ag/AgClペースト51と、が示してある。
【0156】
塗布工法は、微小電極(Ag/AgClの参照層24)の形成に適している。しかしながら、塗布工法で形成した参照層24の表面は、図17の側面図から理解されるように、参照層24表面に平坦な面が存在せず、表面積が大きい。また、Ag/AgClペースト51は、右側のAg/AgClペースト51に示すように、表面に角(盛り上がり)を有する場合がある(なお、角は、工程5によるカットによって除かれる場合がある)。
【0157】
これに対し、本件では、Ag/AgClペースト51の一部が、基板21のカットされる部分を跨ぎ、参照極22b上に塗布されるようにする。また、塗布したAg/AgClペースト51の上面にフィルム25を覆い、基板21をカットする。これにより、参照層24の断面(露出する部分)の面積を小さくできる。
【0158】
また、塗布工法では、Ag/AgClペースト51の表面積のバラツキが大きくなりやすい。
【0159】
これに対し、本件では、Ag/AgClペースト51の一部が、基板21のカットされる部分を跨ぎ、参照極22b上に塗布されるようにする。また、塗布したAg/AgClペースト51の上面にフィルム25を覆い、基板21をカットする。これにより、参照層24の断面(露出する部分)の面積のばらつきを抑制できる。
【0160】
これにより、センサー1は、アナライトを高い精度で測定できる。また、センサー1は、容易に大量生産できる。
【0161】
プローブ12の詳細な製造方法ついて説明する。図18A図18Cは、プローブ12の製造方法例を説明する図である。
【0162】
(工程11)
図18Aの(工程11)に示すように、シート状の基板21に電極22を形成する。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)といったシート状の基板21上へ、金といった電極材料をスパッタリングし、電極22を形成する。
【0163】
(工程12)
図18Aの(工程12)に示すように、電極22をトリミングし、作用極22a、参照極22b、および対極22c(図18Aの(工程12)では、符号を省略)を形成する。電極22のトリミングには、例えば、レーザートリミングが用いられてもよい。
【0164】
(工程13)
図18Aの(工程13)に示すように、基板21のカットされる部分(カットライン)を跨ぎ、Ag/AgClペースト51を参照極22b上に塗布し、乾燥させる。別言すれば、参照極22bと、最終的にカットした際にプローブ12外となる部分とを跨ぐように、Ag/AgClペースト51を塗布し、乾燥させる。これにより、電極22(参照極22b)に参照層24が形成される。
【0165】
なお、図18Aの(工程13)は、図18Aの(工程12)の点線枠A21部分を拡大した図であって、図16と同じ図である。図18Aの(工程13)には、基板21上に形成された参照極22b、溝A1,A2、およびAg/AgClペースト51が示してある。図18Aの(工程13)では、プローブ12の頭部、先端部、試薬層23、およびフィルム25の図示を省略している。
【0166】
(工程14)
図18Bの(工程14)に示すように、作用極22aの試薬層23が形成される部分と、対極22cの領域X3(図14を参照)に対応する部分と、が開口したフィルム25を基板21に貼り付ける。このとき、第1面側の参照極22b(参照層24)は、フィルム25により覆われる(図14を参照)。
【0167】
なお、図18Bの(工程14)の矢印A22は、試薬層23が形成される部分の、フィルム25の開口を示す。対極22cの領域X3(図14を参照)に対応する部分の、フィルム25の開口は、図示を省略している。
【0168】
(工程15)
図18Bの(工程15)に示すように、試薬層23を形成するためのフィルム25の開口部分(図18Bの(工程14)に示した矢印A22の部分)に、試薬液をアプライし、乾燥させて試薬層23を形成する。
【0169】
(工程16)
図18Cの(工程16)に示すように、試薬層23の一部およびAg/AgClペースト51の一部を含むように、基板21をプローブ12の形状にカットする。参照層24は、プローブ12の第1面側では、フィルム25に覆われているが、第3面側では、露出する。
【0170】
(工程17)
図18Cの(工程17)に示すように、例えば、ディップにより、プローブ12の少なくとも試薬層23部分を保護膜で被覆する。
【0171】
図19は、Ag/AgClペースト51の塗布を説明する図である。図19には、電極22が形成された基板21の一部と、塗布装置61と、が示してある。塗布装置61は、ノズル62を有する。Ag/AgClペースト51は、ノズル62から吐出され、参照極22b上に塗布される。
【0172】
図20は、Ag/AgClペースト51の塗布後の形状を説明する図である。図20の(A)~(D)に示すように、基板21に塗布されるAg/AgClペースト51は、円形状または楕円形状を有してもよい。また、図20の(E)に示すように、Ag/AgClペースト51は、吹き出し形状を有してもよい。吹き出し形状は、例えば、後述するスキージ工法によって形成される。
【0173】
図20に示す点線A31は、例えば、上述の工程16にて行われるカットのカットラインを示している。従って、参照層24を上面側から見た外周形状は、基板21のカットによって、円弧形状または楕円弧形状、または吹き出し形状を半分に切った形状等を有する(例えば、図23の(A)、図24の(A)、および図25の(A)を参照)。
【0174】
図21は、塗布装置61の動作を説明する図である。図21の(A)に示すように、塗布装置61は、基板21の近傍に移動される。そして、塗布装置61は、Ag/AgClペースト51をノズル62から吐出する。
【0175】
塗布装置61は、Ag/AgClペースト51を吐出した後、図21の(B)および図21の(C)に示すように、上昇する。
【0176】
これにより、Ag/AgClペースト51は、基板21の参照極22b上に塗布される。
【0177】
なお、基板21の参照極22b上において、塗布装置61が図21に示す動作を1回行った場合、基板21の参照極22b上には、Ag/AgClペースト51が1個塗布される(例えば、図20の(A)、(B)を参照)。基板21の参照極22b上にAg/AgClペースト51を1個塗布する工法を、単発工法と称してもよい。
【0178】
また、基板21の参照極22b上において、塗布装置61が図21に示す動作を2回以上行った場合、基板21の参照極22b上には、Ag/AgClペースト51が2個以上塗布される(例えば、図20の(C)、(D)を参照)。基板21の参照極22b上にAg/AgClペースト51を2個以上塗布する工法を、連発工法と称してもよい。
【0179】
図22は、塗布装置61の動作を説明する図である。図22の(A)に示すように、塗布装置61は、基板21の近傍に移動される。そして、塗布装置61は、Ag/AgClペースト51をノズル62から吐出する。
【0180】
次に、塗布装置61は、図22の(B)に示すように、基板21との距離を維持したまま、平行移動する。
【0181】
そして、塗布装置61は、図22の(C)に示すように、上昇する。
【0182】
これにより、Ag/AgClペースト51は、図20の(E)に示したように、基板21の参照極22b上において、吹き出し形状となるように塗布される。
【0183】
なお、塗布装置61を、基板21との距離を維持したまま平行移動させ、Ag/AgClペースト51を基板21上に塗布する工法を、スキージ工法と称してもよい。
【0184】
図23は、単発工法による参照層24の形状例を示した図である。図23の(A)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第1面側から見た参照層24の形状例が示してある。図23の(B)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第3面側から見た参照層24の形状例が示してある。
【0185】
参照層24は、図23の(A)に示すように、プローブ12の第1面側から見て、円弧形状に形成されてもよい。例えば、参照層24は、中心角が180°となる円弧であってもよい(半円)。また、参照層24は、中心角が180°より大きい円弧であってもよい。また、参照層24は、中心角が180°より小さい円弧であってもよい。また、参照層24は、楕円弧形状、四角形状、または三角形状に形成されてもよい。
【0186】
参照層24は、図23の(B)に示すように、プローブ12の第3面側から見て、円弧形状、楕円弧形状、中央部に角を有する円弧形状または楕円弧形状、周囲に角を有する形状、または四角形状に形成されてもよい。
【0187】
参照層24の形状は、塗布装置61のノズル62の形状によって、種々の形状に設定できる。ただし、図23の(B)の周囲に角を有する形状は、ノズル形状ではなく、点着方式によって形成される。
【0188】
図24は、連発工法による参照層24の形状例を示した図である。図24の(A)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第1面側から見た参照層24の形状例が示してある。図24の(B)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第3面側から見た参照層24の形状例が示してある。
【0189】
参照層24は、図24の(A)に示すように、プローブ12の第1面側から見て、円弧形状に形成されてもよい。参照層24は、隣接してもよいし、離れていてもよい。また、参照層24は、重なってもよい。図24の(A)には、図示していないが、参照層24の形状は、円弧形状に限らず、楕円弧形状、四角形状、または三角形状であってもよい。
【0190】
参照層24は、図24の(B)に示すように、プローブ12の第3面側から見て、円弧形状、楕円弧形状、角を有する円弧形状または楕円弧形状、中央部に角を有する形状、または四角形状に形成されてもよい。
【0191】
参照層24の形状は、塗布装置61のノズル62の形状によって、種々の形状に設定できる。
【0192】
図25は、スキージ工法による参照層24の形状例を示した図である。図25の(A)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第1面側から見た参照層24の形状例が示してある。図25の(B)には、基板21のカット後であって、プローブ12の第3面側から見た参照層24の形状例が示してある。
【0193】
参照層24は、図25の(A)に示すように、プローブ12の第1面側から見て、吹き出し形状を半分にした形状に形成されてもよい。また、参照層24は、吹き出し形状を半分にした形状が複数連なってもよい。
【0194】
参照層24は、図25の(B)に示すように、プローブ12の第3面側から見て、吹き出し形状を半分にした形状に形成されてもよい。参照層24は、吹き出し形状を半分にした形状において、上面の一部において角を有してもよい。また、参照層24は、プローブ12の第3面側から見て、四角形状に形成されてもよい。
【0195】
Ag/AgClペースト51について説明する。Ag/AgClペースト51は、例えば、0.1Pa・s以上300Pa・s以下の範囲の粘度を有してもよい。より好ましくは、Ag/AgClペースト51は、1Pa・s以上100Pa・s以下の範囲の粘度を有してもよい。さらに好ましくは、Ag/AgClペースト51は、10Pa・s以上50Pa・S以下の範囲の粘度を有してもよい。
【0196】
Ag/AgClペースト51を、所定の粘度とするためには、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンを主成分とするシンナーのような有機溶剤を用いてもよい。
【0197】
参照層24の露出サイズについて説明する。参照層24の露出面の高さは、長時間における参照層24の分解抑制の観点から、例えば、1μm以上200μm以下の範囲であってもよい。より好ましくは、参照層24の露出面の高さは、2μm以上50μm以下の範囲であってもよい。さらに好ましくは、参照層24の露出面の高さは、5μm以上15μm以下の範囲であってもよい。
【0198】
また、参照層24の露出面の幅は、例えば、1μm以上1000μm以下の範囲であってもよい。より好ましくは、参照層24の露出面の幅は、50μm以上800μm以下の範囲であってもよい。さらに好ましくは、参照層24の露出面の幅は、100μm以上600μm以下の範囲であってもよい。そして、参照層24の露出面積は、例えば、0.5μm以上160000μm以下の範囲であってもよい。より好ましくは、参照層24の露出面積は、70μm以上32000μm以下の範囲であってもよい。さらに好ましくは、参照層24の露出面積は、390μm以上7100μm以下の範囲であってもよい。
【0199】
以上説明したように、生体内に挿入され、アナライトを測定するセンサー1のプローブ12は、基板21と、基板21上に形成された電極22と、電極22上に形成された参照層24と、を有する。参照層24は、第1面がフィルム25によって覆われ、第3面が露出する。
【0200】
このように、センサー1は、参照層24の第1面がフィルム25によって覆われ、第3面において露出し、参照層24のアナライトに接する面積を小さくでき、参照層24の分解(Ag/AgClの分解)が抑制される。従って、センサー1は、アナライトをより高い精度で測定できる。
【0201】
また、参照層24は、塗布工法によって電極22上に塗布され、第3面から参照層24の内部に向かう方向において窄まった形状を有する。これにより、参照層24は、塗布工法によって、第1面において、安定して微小形成できる。
【0202】
なお、電極22上に塗布された、例えば、略しずく形状または略尖頭アーチ形状のAg/AgClペーストの尖った部分を、スキージ動作等で製品外(プローブ12外)に配置すると、参照層24は、より微小形成できる。
【0203】
また、参照層24は、塗布工法によって電極22上に形成されるとしたが、スクリーン印刷工法により形成されてもよい。また、塗布工法とスクリーン印刷工法とでは、塗布工法によって、参照層24を形成することが好ましい。その理由として、スクリーン印刷工法では、材料(Ag/AgCl)のロスが大きく、また、スクリーン印刷版のAg/AgClペーストの目詰まり対策等を行う必要があり、製造上の管理が煩雑になるからである。
【0204】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0205】
また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0206】
例えば、第2の実施の形態で説明したプローブ12は、第1の実施の形態で説明したプローブ12と同様に、トリミング部が形成されてもよい。
【0207】
また、第2の実施の形態で説明したプローブ12は、試薬層23を被膜する保護膜を有してもよい。
【0208】
また、第2の実施の形態で説明したプローブ12は、図10で説明したように、フィルム25の一部が、試薬層23の挿入方向の両端において、試薬層23の上に重なってもよい。また、挿入方向側のフィルム25は、形成されなくてもよい。
【0209】
また、第2の実施の形態で説明したプローブ12の各構成要素の材料は、第1の実施の形態で説明したプローブ12の各構成要素の材料と同様の物を用いてもよい。また、第2の実施の形態で説明したプローブ12の大きさは、第1の実施の形態で説明したプローブ12と同様であってもよい。
【0210】
本出願は、2020年2月28日に出願された米国仮出願第62/982,939号からの優先権の利益を主張するものであり、米国仮出願第62/982,939号の参照によりその全体が援用される。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本開示は、バイオセンサー、例えば、CGMセンサーに有用である。
【符号の説明】
【0212】
1 センサー
2 生体
11 本体
12 プローブ
21 基板
22 電極
22a 作用極
22b 参照極
22c 対極
23 試薬層
24 参照層
25 フィルム
31 上面
32 裏面
33,34 側面
35,36 トリミング部
51 Ag/AgClペースト
61 塗布装置
62 ノズル
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25