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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】免疫活性測定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20231010BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/483 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022506353
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-03
(86)【国際出願番号】 US2020044280
(87)【国際公開番号】W WO2021022050
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/881,283
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522039739
【氏名又は名称】サイトヴェール インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CYTOVALE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ツェ,ヘンリー,タット クォン
(72)【発明者】
【氏名】シャー,アジャイ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ギユー,ライオネル
(72)【発明者】
【氏名】シェイバニ,ローヤ
(72)【発明者】
【氏名】ダルベルグ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,アン,イー.
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0143326(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0128735(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0227777(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0087412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の血液細胞に関連する軌道パラメータを導き出すための方法であって、
・対象者の複数の血液細胞をマイクロ流体チャネルで受け入れるステップと、
・前記マイクロ流体チャネルの慣性の集束領域で前記複数の血液細胞を整列および集束させるステップと、
・前記複数の血液細胞の各細胞に対して、
-前記マイクロ流体チャネルの変形領域で細胞に応力を加えるステップであって、前記変形領域が前記集束領域の下流にある、ステップと、
-細胞が前記変形領域を通過する際に、画像取得システムにより、細胞の光学データセットを取得するステップと、
-前記変形領域を通過する細胞の軌道を測定するステップであって、前記軌道が、細胞が前記変形領域を通過するときの細胞の一連の離散位置を含前記軌道が、細胞の重心の振動を含む、ステップと、
・対象者に関連する1または複数の軌道パラメータを導き出すステップであって、前記軌道パラメータが、前記軌道の1または複数の位置の差、合計、振幅、最大値および平均値のうちの少なくとも1つを含む、ステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記振動が、流れ方向に直交する、ある位置にあり、前記軌道パラメータが、前記振動の平均振幅を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記軌道パラメータが、前記振動の3番目、4番目および5番目のサイクルに基づいて導き出されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、
前記軌道パラメータが、前記振動の最初の振動サイクルを使用せずに導き出されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記軌道パラメータが、対象者の免疫活性化状態に関連することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
前記光学データセットが、前記変形領域内の細胞の少なくとも10の画像を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記マイクロ流体デバイスを通る流体の流れが、少なくとも100のレイノルズ数を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
前記変形領域が、伸長流領域を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
患者の免疫活性化状態を診断する方法であって、
・流れガイドのマイクロ流体チャネルで患者の複数の血液細胞を受け入れるステップと、
・前記複数の血液細胞の各細胞に対して、
-前記流れガイドの変形領域で細胞に応力を加えるステップであって、前記応力が細胞を変形させるように構成されている、ステップと、
-細胞に応力が加えられる前、間および後に、画像取得システムを用いて、細胞の複数の画像を含む細胞の光学データセットを取得するステップと、
-細胞に関連する構造パラメータを導き出すステップであって、前記構造パラメータが複数の画像を用いて導き出される、ステップと、
-細胞に応力が加えられている間および後の、細胞の軌道に関連する軌道パラメータを導き出すステップであって、前記軌道が、細胞の重心の振動を含み、前記軌道パラメータが複数の画像に基づいて導き出される、ステップと、
・前記軌道パラメータおよび前記構造パラメータを免疫状態に相関させるモデルに基づいて、患者に関連する指標を求めるステップと、
・前記指標に基づいて、患者の免疫活性化状態を診断するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
各細胞について、前記軌道パラメータが、前記振動の振幅を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
各細胞について、前記軌道パラメータが、振動の3番目、4番目および5番目のサイクルの振幅に基づいて導き出されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、
前記複数の血液細胞の白血球数を測定するステップをさらに含み、前記指標がさらに、前記白血球数に基づいて求められることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項9に記載の方法において、
複数の血液細胞を受け入れることが、前記流れガイドにおいて毎秒少なくとも100個の細胞を受け入れることを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項9に記載の方法において、
前記軌道パラメータを導き出すことが、
・前記複数の画像の各画像内で対象物を検出すること、
・前記複数の画像の各画像を前景と背景とにセグメント化すること、並びに、
・前記前景から特徴を抽出することを含み、前記特徴が、細胞形状および軌道のうちの少なくとも一方に関連付けられていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
各画像をセグメント化することが、畳み込みニューラルネットワークを使用して各画像をセグメント化することを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項9に記載の方法において、
ギ酸溶解システムを用いて複数の血液細胞の赤血球を溶解するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法において、
前記診断が、前記流れガイドで前記複数の血液細胞を受け入れてから10分以内に判定されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項9に記載の方法において、
前記免疫活性化状態が、敗血症関連状態を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項9に記載の方法において、
モデルが、線形ロジスティック回帰であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
高い敗血症発生率を含む患者セットに対応するトレーニングデータセットを使用して、線形ロジスティック回帰のパラメータのセットを決定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか一項に記載の方法を実行するように構成されていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して健康分野に関し、より具体的には、健康分野における新規かつ有用なシステムおよび方法に関するものである。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月31日に出願された米国仮出願第62/881,283号の利益を主張するものであり、この出願は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0003】
この出願は、2019年4月3日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DEFORMING AND ANALYZING PARTICLES」という名称の米国出願第16/374,663号、2018年1月11日に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH THROUGHPUT CELL DEFORMABILITY MEASUREMENTS」という名称の米国出願第15/868,025号、並びに、2019年11月6日に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH-THROUGHPUT SOLUTION EXCHANGE FOR CELL AND PARTICLE SUSPENSIONS」という名称の米国出願第16/676,352号に関連するものであり、これら出願の各々は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0004】
政府支援の明示
本発明は、全米科学財団の助成金IIP-1315895およびIIP-1431033による政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
自然免疫系は、危険シグナルに応答してその細胞成分が急速に活性化し、防御の第一線として機能する。好中球や単球などの循環系自然免疫細胞は、多くの役割を果たすために表現型を変化させることによって、それらのシグナルに反応する。これらの変化により、自然免疫細胞は機能的に多様な亜集団に分類される。
【0006】
好中球の活性化は、感染症の解決に重要な移動、分泌、機能の変化をもたらすが、異常な活性化は、生命を脅かす、敗血症として知られる感染に対する調節不全宿主免疫応答など、多くの病態を引き起こすこともある。好中球は、よく知られた食細胞機能や細胞毒性分泌機能に加えて、危険シグナルに応答して走化性行動を示し、他の免疫機能を誘導する多くのサイトカインを分泌し、好中球細胞外トラップ(NET)と呼ばれるDNAや抗菌タンパク質の線維状ネットワークを押し出す。NETの形成は、局所感染における細菌の捕捉と死滅に生理的な役割を果たすと考えられているが、敗血症や、全身性エリテマトーデス、小血管炎などの特定の自己免疫疾患の病態にも関与している。これらの疾患との関連を考慮すると、自然免疫活性化の程度を定量化する能力は、様々な疾患の診断、予後またはモニタリングの助けとなる可能性がある。
【0007】
好中球の活性化を定量化するために多くのアプローチが開発されてきたが、それら手法の多くは、臨床の場で使用するには時間がかかり過ぎるか、または特殊過ぎるという問題がある。このため、健康分野では、新規で有用なシステムおよび方法を作り出す必要性がある。本発明は、そのような新規かつ有用なシステムおよび方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、サイトメトリーシステムの概略図である。
図2図2は、本方法の概略図である。
図3図3は、マイクロ流体チャネルの一例の概略図である。
図4図4は、細胞に力が加えられる前、間および後に細胞の複数の画像を取得して、この例では文字「x」で示すように、複数の画像の各画像について細胞の重心を特定する一例の概略図である。
図5図5は、基準軸に沿ったよどみ点に対する図4の細胞の重心の測定された振動の一例を示す概略図である。
図6図6は、マイクロ流体デバイスの集束領域において細胞を集束および/または整列させる一例の概略図である。
図7図7は、マイクロ流体デバイスの変形領域において細胞に力を加える一例の模式図および変形領域内の細胞の画像例である。
図8図8は、サンプルの各細胞の特徴およびパラメータのセットを特定する一例のフローチャートである。
図9図9は、本方法の一例の概略図である。
図10図10A図10Dは、変形領域の幾何学的形状の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明は、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定することを意図したものではなく、当業者が本発明を作成および使用できるようにすることを意図したものである。
【0010】
1.概要
図2に示すように、本方法は、マイクロ流体デバイスでサンプルを受け入れるステップ、サンプルに応力を加えるステップ、サンプルに関連するデータセットを取得するステップ、データセットから特徴を抽出するステップ、抽出した特徴に基づきパラメータを導き出すステップを含むことができる。本方法は、任意選択的に、サンプルを処理するステップ、サンプルをマイクロ流体デバイス内で移送するステップ、患者の健康状態を判定するステップ、および/または任意のステップを含むことができる。
【0011】
図1に示すように、サイトメトリーシステム10は、マイクロ流体デバイス100、検出システム200およびコンピューティングシステム300を含むことができる。サイトメトリーシステムは、任意選択的に、温度コントローラ500、サンプル調製モジュール400、および/または任意の適切なコンポーネントを含むことができる。
【0012】
本システムおよび本方法は、好ましくは、細胞の生物物理学的特性を測定および検出するために使用されるが、任意の粒子および/または物質(例えば、マイクロ流体チャネルに適合するもの)の特性を測定することができる。本システムおよび/または本方法は、追加的または代替的に、患者の健康状態を診断するように機能することができる。具体例では、本システムおよび/または本方法は、患者のトリアージ(例えば、患者が敗血症関連疾患などの疾患をきたしていることの診断および/または可能性の判定)を行うために、救急診療科(例えば、病院の救急診療科)、緊急医療および/または診療所で使用することができる。しかしながら、本システムおよび/または本方法は、任意の方法で使用することができる。
【0013】
特定の例では、本方法は、血液サンプル(例えば、複数の白血球、複数の血球/血液細胞など)をマイクロ流体デバイスに提供するステップと、複数の血球をマイクロ流体デバイスの第1のチャネルに集束(および整列)させるステップと、マイクロ流体デバイスの変形領域で(例えば、流体を含む第2のチャネルを第1のチャネルからの血球と交差させることによって複数の血球に流体力学的な力を加えることによって)複数の血球の各血球に(非接触)応力を加える(各血球に個別に応力を加える)ステップと、血球に応力が加えられる前、間および後に光学データセットを取得するステップと、光学データセットに基づいて細胞パラメータを導き出すステップとを有する。この特定の例において、細胞パラメータは、細胞の形状、細胞数、生物物理学的パラメータと関連付けることができ、かつ/または細胞の軌道パラメータを含む(例えば、細胞の重心の振動などの細胞の軌道の特徴に基づく)ことができる。この特定の例において、本方法は、細胞パラメータおよびモデル(例えば、ロジスティック回帰)を用いて指標を求めるステップと、指標が閾値を超えた場合に患者の免疫活性化状態を判定するステップとをさらに含むことができる。
【0014】
2.利点
本技術の態様は、いくつかの利点および/またはメリットを与えることができる。
【0015】
第一に、本発明者等は、(例えば、計数パラメータ、形態学的パラメータ等の代わりにまたは加えて)軌道パラメータを含むことにより、患者の免疫活性化状態(例えば、敗血症関連状態)の判定を強化できる(例えば、精度を高める、特異性を高める、速度を高める、可能にする等)ことを発見している。軌道パラメータは、細胞の力学的特性に関する(補完的な)情報を提供することができ、それによって患者の免疫活性化状態の判定を強化することができる。
【0016】
第二に、本技術の態様は、迅速に(例えば、1分未満、2分未満、5分未満、10分未満、20分未満、1時間未満などで)患者の免疫活性化状態(例えば、高/中/低活性化;敗血症または非敗血症など)を判定(例えば、診断)することができる。具体例では、(例えば、変形領域において)レイノルズ数が少なくとも100(例えば、100、150、200、300、500、1000、1500、2000、2500、3000、10000、100~3000など)の流れを用いることによって、マイクロ流体デバイス(および/またはサンプルおよびシース液)の温度を予め設定された範囲内に保つことによって、軌道内の振動のピークのサブセットを考慮して軌道パラメータを導き出すことによって(例えば、第1のピークを除くことによって、第1および第2のピークを除くことによって、最初のサイクルを除くことによって、2番目のサイクル等を除くことによって;第3のピークを用いることによって、第3、第4および第5のピークを用いることによって、3番目のサイクルを用いることによって、4番目のサイクルを用いることによって、5番目のサイクルを用いることによって、第3の振動ピーク以降のピークを用いることによって、かつ/または第3の振動ピークを含むピーク等を用いることによって)、かつ/または任意の方法によって、再現性を確保することができる。多数(例えば、約1000、10000、20000、50000、100000、500000、1000000など)の細胞を再現性よく分析することにより、それらの具体例は、患者の免疫活性化状態を迅速かつ正確に判定することができる。
【0017】
第三に、本技術の態様は、患者の1または複数の健康状態および/または疾患状態に相関させることができるパラメータのセットを決定することができる。具体例では、高速カメラで画像を取得することにより、応力を受ける前、間および後のサンプルの複数の画像を測定することができ、これにより、1または複数の構造および/または軌道パラメータを決定することができる。
【0018】
しかしながら、本技術の態様は、任意の他の適切な利点および/またはメリットを与えることができる。
【0019】
3.サイトメトリーシステム。
図1に示すように、サイトメトリーシステム10は、マイクロ流体デバイス100と、検出システム200と、コンピューティングシステム300とを含むことができる。サイトメトリーシステムは、任意選択的に、温度コントローラ500、サンプル調製モジュール400および/または任意の適切なコンポーネントを含むことができる。
【0020】
マイクロ流体デバイスは、好ましくは、サンプルを受け取り、サンプルの1または複数の構成要素(例えば、細胞)を選別し(例えば、整列させ、集束させ、分離し)、変形領域においてサンプルおよび/またはその構成要素に力(例えば、応力、歪みなど)を加えるように機能する。マイクロ流体デバイスは、好ましくは、構成要素に非接触の力(例えば、流体力)を加えるが、追加的または代替的には、構成要素に(例えば、孔、マイクロピペット、カンチレバーなどを用いて)接触力を加えることができる。特定の例では、マイクロ流体デバイスが、分析のために、構成要素を変形させる接触力を加えない。マイクロ流体デバイスは、構成要素全体、構成要素(例えば、細胞核、細胞骨格等)、および/または構成要素の他の部分を変形させることができる。マイクロ流体デバイスは、好ましくは、直列および/または並列で1秒間に数千の構成要素を処理することができるが、代替的には、より多くのまたはより少ない細胞を処理することができる。力による変形および/または分析は、好ましくは(例えば、細胞をその後二次分析に使用できるように)非破壊的であるが、代替的には、破壊的(例えば、細胞を溶解する等)であってもよい。
【0021】
サンプルは、好ましくは複数の細胞(例えば、血球、細菌など)を含むが、マイクロ流体チャネル内に適合する任意の粒子または構成要素を含むことができる。サンプルは、好ましくはシース液に懸濁されるが、任意の流体に懸濁され、受け入れたまま使用され(例えば、流体として血清を使用し、流体として血漿を使用するなど)、かつ/または他の方法で提供され得る。サンプルは、好ましくは末梢血(例えば、全血)から抽出されるが、静脈血、骨髄および/または他の生物学的サンプルであってもよい。サンプルは、患者情報、サンプルパラメータ、治療パラメータ、採取パラメータおよび/または他のデータなどの補助情報と関連付けることができる。補助情報は、指標の解釈(例えば、解釈のための様々な指標計算または尺度の選択)、二次分析の決定、治療パラメータの推奨の決定、および/または他の用途に使用することができる。
【0022】
デバイスを用いて求められる細胞パラメータは、機械的特性(例えば、変形性、応力-歪みの関係、ヤング率など)、時間変化特性(例えば、速度、軌道、粘弾性慣性応答(VEIR)、変形性、振動周波数、振動振幅、粒子流軌道の偏差、滞在時間など)、数(例えば、構成要素の数、単位体積当たりの構成要素の数、特定種類の構成要素の数、別の構成要素に対するある構成要素の相対量など)、構成要素の種類(例えば、細胞の種類、細胞の分類、細胞母集団、細胞亜集団など)、構成要素の密度、構成要素の状態(例えば、細胞のライフサイクル段階、細胞核の状態など)、活性化特性(例えば、免疫蛍光率、強度など)、および/または任意の性質に関連付けることができる。特定の例では、マイクロ流体デバイスが、収縮ベースの変形能サイトメトリー(cDC)、せん断流変形能サイトメトリー(sDC)、および/または伸長流変形能サイトメトリー(xDC)用に構成および/または配置することが可能である。しかしながら、マイクロ流体デバイスは、任意の方法で配置することができる。
【0023】
マイクロ流体デバイス(および/またはマイクロ流体デバイスの領域)内のサンプルおよび/またはシース液のレイノルズ数は、1、5、10、20、50、70、75、100、150、200、300、500、1000、1500、2000または2500など、約1~3000の間であることが好ましい。しかしながら、レイノルズ数は、1より小さくても、あるいは3000より大きくてもよい。レイノルズ数は、マイクロ流体デバイス内で実質的に一定であり(例えば、変化が約5%、10%、20%、30%未満など)、かつ/またはマイクロ流体デバイス内で可変である(例えば、30%を超えて変化する)(例えば、デバイスの異なる領域で異なるレイノルズ数である)ようにしてもよい。
【0024】
特定の例では、図3に示すように、マイクロ流体デバイスは、入口110、集束領域120、変形領域130および出口140を含むことができる。しかしながら、マイクロ流体デバイスは、任意の適切な領域および/またはコンポーネントを含むことができる。
【0025】
入口は、サンプルを受け入れるように機能する。入口は、好ましくは集束領域の上流に配置されるが、集束領域の下流および/または任意の適切な位置に配置することができる。いくつかの変形例では、マイクロ流体デバイスが、複数の入口を含むことができる。これらの変形例では、各入口が、同じサンプルおよび/または異なるサンプルを受け入れることができる。例示的な態様では、第1の入口が血液サンプルを受け入れることができ、第2の入口がシース液を受け入れることができる。第2の例示的な態様では、第1の入口が血液サンプルを受け入れることができ、第2の入口が対照サンプル(例えば、既知の特性を有する構成要素)を受け入れることができる。
【0026】
集束領域は、サンプルの構成要素を集束させ、整列させるように機能する。集束領域は、追加的または代替的に、サンプル(および/またはその構成要素)が予め設定された方法で変形領域に入ることを確実にするように機能することができる。特定の例では、予め設定された方法が、ある時に単一の構成要素(例えば、細胞)が変形領域に入ること、複数の構成要素が変形領域に入る間に予め設定された時間があること、構成要素が特定の方向から変形領域に入ること、構成要素が閾値および/または目標運動学(例えば、速度、流速、加速度等)で変形領域に入ること、および/または任意の態様であり得る。集束領域は、好ましくは、変形領域の上流にあるが、変形領域の下流に、かつ/または変形領域とともに配置することができる。
【0027】
集束領域は、好ましくは慣性集束領域であるが、非慣性集束領域、強制集束領域(例えば、ポンプ、ゲート等を用いる)または任意の適切な集束領域を使用することができる。集束領域は、好ましくは非対称チャネル125、125’を使用するが、対称チャネルを使用することもできる。特定の例では、集束領域が、曲率半径の小さい領域と曲率半径の大きい領域とが交互に存在する蛇行したものである。第2の特定の例では、集束領域が、幅の広いチャネルの領域と狭いチャネルの領域とが交互に存在する蛇行したものである。しかしながら、集束領域は、ジグザグチャネル、正方形チャネル、蛇行チャネル(例えば、実質的に一定の幅を有する、実質的に一定の曲率半径を有する蛇行チャネルなど)、ヘアピンチャネルおよび/または任意の適切なチャネル形態とすることができる。
【0028】
サンプルは、集束領域を出て、変形領域、出口、入口、チャネルおよび/または任意の適切な領域に入ることができる。サンプルは、好ましくは、集束領域を出て、単一のチャネル128に入る(例えば、サンプルの構成要素の75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.99%等を超える部分が、単一のチャネル内に導かれる)。しかしながら、サンプルは、集束領域を出て、複数のチャネル(例えば、異なる細胞タイプのための異なるチャネル、異なる細胞サイズのための異なるチャネル、サンプルが入ることができる複数のチャネル等)に入ることができ、かつ/またはサンプルは、集束領域の後の任意の適切な1または複数のチャネルに提供することができる。シース液は、好ましくは、集束領域の出口で複数のチャネル128、128’に提供される(例えば、2つのチャネルについて約50/50のように複数のチャネル間でほぼ均等に分割されるか、あるいは2つのチャネルについて95/5、90/10、80/20、70/30、60/40等のように複数のチャネル間で不均一に分割等される)が、単一のチャネルまたは任意の流れ特性を有する1または複数の任意の適切なチャネルに提供されるようにしてもよい。
【0029】
変形例では、マイクロ流体デバイスが、複数の集束領域を含むことができる。集束領域は、直列および/または並列に配置することができる。各集束領域は、他の集束領域と同じであっても、異なっていてもよい。
【0030】
変形領域は、例えば速度の変化を利用して、サンプルに力(例えば、応力)を加えるように機能する。変形領域は、好ましくは、ある時にサンプルの個々の構成要素に力を加える(例えば、細胞が変形領域を通過する際に単一の細胞に応力が加えられる)が、サンプルのサブセット(および/または全体)に同時に力を加えることも可能である。力は、好ましくは非接触的な力(例えば、流体力)であるが、接触力であってもよい。力は、好ましくは、サンプルを損傷することなく、サンプル(および/またはその構成要素)に変形を引き起こすのに十分な大きさである。しかしながら、力は、サンプルに損傷を与え(例えば、1または複数の細胞を溶解し)、サンプルを摂動し、サンプルの1または複数の流動特性を変更し、サンプルを変形させない、かつ/またはサンプルに他の影響を及ぼすことも可能である。変形領域は、好ましくは1または複数の出口の上流にあるが、下流または/および1または複数の出口とともに配置することができる。
【0031】
血液サンプルは、好ましくは、変形領域を通過する際に方向を変える。しかしながら、血液サンプルは、同じ方向に進み続けることもできる。例示的な態様では、血液サンプルが、血液サンプルが入る方向と直交するように、変形領域から出ることができる。しかしながら、血液サンプルは、血液サンプルが変形領域に入る方向に対して0~180°の間の任意の角度で変形領域から出ることができる。例えば、変形領域は、図10A図10Dに示すように、L字型チャネル、T字型チャネル、ブストロフェドニックまたは蛇行チャネル、伸長流領域、拡張チャネル、収縮チャネル、および/または1または複数の任意の適切な幾何学的形状を含むことができる。
【0032】
変形領域は、好ましくは、細胞(および/または流体)の速度を変化させることによって血液サンプルに力を加える。細胞の速度は、減少および/または増加させることができる。速度は、好ましくは、少なくとも約10%(例えば、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、100%、200%、500%、15~100%など)変化させるが、変化させるのは30%未満であってもよい。速度の変化は、変形領域の幾何学的形状、2以上の流路の交差、および/または任意の方法で提供することができる。しかしながら、他の方法で力を加えることもできる。
【0033】
特定の例では、図7に示すように、2以上のチャネル(例えば、流体流路)を交差させることによって力を発生させることができる。流路は、好ましくは逆行性である(例えば、流体が1つのチャネルから第1の方向に出て、別のチャネルから反対方向に出るように配置され、力が流路の交差領域で最大となる)が、(例えば、サンプルに歪みを生成するために)平行、垂直、および/または1または複数の任意の角度で交差させることも可能である。流路は、好ましくは、オフセット距離だけ互いにオフセットされている。オフセット距離は、変形領域内の流体(および/またはサンプル)に渦巻き運動を引き起こすように、かつ/またはサンプルに非対称の力を与えるように機能することができる。オフセット距離は、サンプルに依存し、予め設定され(例えば、1μm、2μm、5μm、10μmなど、0.1~20μmの間のオフセットまたはその範囲であり)、かつ/または他の方法で決定され得る。しかしながら、流路は、実質的に整列させることができ(例えば、0.1μm未満のオフセット距離)、かつ/または他の方法で配置することができる。代替的には、同じ流体流路内の同じ流体によって(例えば、流れ方向を変えることによって)力を発生させることができる。
【0034】
1または複数の出口は、サンプルを、詰まらせることなくマイクロ流体デバイスから除去できるように機能する。特定の例では、マイクロ流体デバイスが、変形領域を構成する一対の流体の流れに対して垂直に配置された2つの出口を含むことができる。しかしながら、出口は、任意の方法で配置することができる。
【0035】
いくつかの変形例では、マイクロ流体デバイスが、2019年4月3月に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DEFORMING AND ANALYZING PARTICLES」という名称の米国出願第16/374,663号、2018年1月11月に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH THROUGHPUT CELL DEFORMABILITY MEASUREMENTS」という名称の米国出願第15/868,025号、および/または、2019年11月6月に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH-THROUGHPUT SOLUTION EXCHANGE FOR CELL AND PARTICLE SUSPENSIONS」という名称の米国出願第16/676,352号に記載のマイクロ流体デバイスのコンポーネントまたは領域として配置されるか、かつ/またはそれを含むことができる。なお、それら出願の各々は、この引用によりその全体が援用されるものとする。
【0036】
マイクロ流体デバイスは、マイクロ流体デバイス内に流体の流れを生成するように機能するフローデバイスを含むことができ、かつ/またはそのフローデバイスに結合することができる。フローデバイスは、ポンプ、インペラおよび/または他の任意のフローデバイスを含むことができる。フローデバイスは、負圧および/または正圧を提供すること(例えば、マイクロ流体チャネルを介して流体を押し出すこと、マイクロ流体チャネルを介して流体を引き込むこと等)ができる。
【0037】
しかしながら、マイクロ流体デバイスは、任意の方法で配置することができる。
【0038】
コンピューティングシステムは、1または複数のデータセットを処理し(例えば、サンプルの特徴を特定し、サンプルに関連するパラメータのセットを割り出し)、患者の健康状態を診断し、患者の健康状態を診断するためのモデルを生成し、かつ/または任意の機能を実行する役割を果たすことができる。コンピューティングシステムは、ローカル(例えば、サンプル調製モジュールに対して、検出システムに対して、マイクロ流体デバイスに対して)、リモート(例えば、サーバ、クラウドコンピューティングなど)、かつ/または分散型であり得る。コンピューティングシステムは、好ましくは、検出システムに通信可能に結合されるが、追加的または代替的には、マイクロ流体デバイス、サンプル調製モジュールおよび/または任意の適切なコンポーネントに通信可能に結合されることが可能である。
【0039】
検出システムは、サンプルに関連するデータセットを生成するように機能する。データセットは、好ましくは、変形領域の近傍のサンプル(および/またはその構成要素)に関連付けられるが、集束領域の近傍、入口、出口、サンプル調製モジュール内、および/または他のサンプル位置にあるサンプルに関連付けることもできる。データセットは、好ましくは、サンプルの各コンポーネントの複数の画像210(例えば、各細胞の複数の画像)であるが、電気データセット、力データセット(例えば、接触力)、流れデータセット(例えば、サンプルの構成要素が変形領域の近傍および/または変形領域にあるときの流れの変化の測定)、熱データセットおよび/または他の任意のデータセットであってもよい。構成要素の複数の画像は、好ましくは、構成要素の少なくとも10の画像を含むが、10未満の画像を含むこともできる。複数の画像は、好ましくは、構成要素に力を加える前、間および後の構成要素の画像を含む。しかしながら、複数の画像は、力を加える前、力を加える前と間、力を加える前と後、力を加えている間、力を加えている間と後、力を加えた後、かつ/または任意の適切なタイミングの構成要素の画像に対応することができる。
【0040】
検出システム200は、好ましくは、顕微鏡(例えば、サンプルの明視野画像、暗視野画像、蛍光画像などを取得するように構成された倒立顕微鏡、正立顕微鏡など)、カメラ212および/または任意の画像取得システムなどの画像取得システム210である。画像215は、好ましくは、200,000、300,000、500,000、750,000、1,000,000、2,000,000、5,000,000、10,000,000フレーム/秒など、少なくとも100,000フレーム/秒のフレーム速度で取得される。しかしながら、画像は、100,000フレーム/秒未満で、かつ/または任意の速度で取得することもできる。画像取得システムの視野218は、好ましくは、変形領域のよどみ点135(例えば、流路および/または力が均衡している点)を中心とする。しかしながら、よどみ点は、エッジに、コーナーに、任意に、予め設定された位置に、ランダムに、かつ/または画像取得システムに対して(例えば、キャプチャされた画像内において)他の方法で整列させることもできる。しかしながら、画像取得システムは、他の方法で配置することができる。
【0041】
マイクロ流体デバイスは、任意選択的に、変形領域の近傍に1または複数の位置合わせガイドを含むことができる。1または複数の位置合わせガイドは、画像較正および/またはマイクロ流体デバイスの位置合わせを可能にするように機能する。
【0042】
サンプル調製デバイスは、マイクロ流体デバイスに導入されるサンプルを調製するように機能する。サンプル調製デバイスは、サンプルの1または複数の構成要素を除去し、サンプルを予め設定された濃度に希釈および/または濃縮し、溶媒および/または緩衝液の交換を実行し、サンプル特性(例えば、温度、pH、粘性、イオン強度等)を調整し、かつ/または他の方法でサンプルを調製することが可能である。例示的な態様では、サンプル調製デバイスが、赤血球(および/または血小板)を白血球細胞(白血球)から分離することができる。この例の第1の態様では、サンプル調製デバイスが、赤血球を(例えば、塩化アンモニウム、炭酸カリウム、EDTA、ギ酸などを含む赤血球溶解緩衝液を使用して)溶解することができる。この例の第2の態様では、白血球を(例えば、流動選別、遠心分離、沈降などを使用して)赤血球から分離することができる。しかしながら、サンプルは、任意の方法で調製することができる。
【0043】
任意の温度調節器は、マイクロ流体デバイスの温度を予め設定された温度範囲内に維持するように機能し、それにより測定の信頼性および/または再現性を向上させるのを補助することができる。温度は、0.1℃、0.5℃、1℃、2℃、5℃、10℃以内など、目標設定温度から±20℃以内に維持されることが好ましい。しかしながら、温度は、目標温度の非対称範囲内に維持することができ、かつ/または、目標温度の任意の範囲内に維持することができる。目標温度は、20℃、22℃、25℃、30℃、35℃、37℃、38℃または40℃など、17~41℃であることが好ましい。ただし、目標温度は、y温度であってもよい。温度調節器は、好ましくは、アクティブフィードバック制御(例えば、PIDコントローラ、PIコントローラなど)を含む。温度調節器は、加熱器(例えば、IR加熱器、抵抗加熱器など)および/または冷却器(例えば、冷凍機、熱電冷却器、ヒートシンクなど)を含むことができる。
【0044】
しかしながら、サイトメトリーシステムは、任意のコンポーネントを含むことができる。
【0045】
4.方法
図2に示すように、本方法は、マイクロ流体デバイスでサンプルを受け取るステップと、サンプルに応力を加えるステップと、サンプルに関連するデータセットを取得するステップと、データセットから特徴を抽出するステップと、抽出した特徴に基づきパラメータを導き出すステップとを含むことができる。本方法は、任意選択的に、サンプルを処理するステップ、サンプルをマイクロ流体デバイス内で移送するステップ、患者の健康状態を判定するステップ、および/または任意のステップを含むことができる。図9には、具体例が示されている。
【0046】
本方法は、好ましくは、マイクロ流体システム(例えば、サイトメトリーシステムなどの上述したようなシステム)によって実行されるが、任意のシステムによって実行することが可能である。本方法は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで(例えば、マイクロ流体デバイスの動作中に、あるいは細胞の変形中に)実行することができるが、非同期または他の任意の適切な時間に実行することができる。
【0047】
サンプルを処理するステップS100は、測定用にサンプルを調製するように機能する。一例では、サンプルを処理することが、血液サンプルから白血球を単離するように機能する。別の例では、サンプルを処理することが、個々の白血球亜集団(例えば、単球、リンパ球、好中球など)を分離するように機能する。しかしながら、サンプルは、他の任意の適切な目的のために処理することができる。サンプルの処理は、好ましくはサンプル調製デバイスによって実行されるが、任意のコンポーネントによって実行することができる。サンプルを処理する例には、ある構成要素タイプを別のものから分離すること(例えば、白血球細胞(白血球)を赤血球細胞(赤血球)から分離すること、単球、リンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、マクロファージ、赤血球、血小板、細菌、ウイルス、真菌、これらの組合せなどの細胞亜集団または特定の細胞タイプを分離することなど)、1または複数の構成要素を溶解すること(例えば、赤血球を溶解すること)、溶媒および/または緩衝液の交換を実行すること、サンプルの特性(例えば、温度、pH、粘度、イオン強度、濃度など)を調整すること、および/または他の方法でサンプルを処理することが含まれる。しかしながら、サンプルは、任意の方法で処理することができる。例示的な態様では、血液サンプルからの赤血球を溶解することが、ギ酸(例えば、ギ酸溶解システム)を用いて赤血球を溶解することを含むことができる。この例示的な態様では、予め設定された時間(例えば、1秒間、5秒間、10秒間、30秒間、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間など)、溶解混合物を(例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、5000、10000Gなどで)遠心分離し、上澄み(および/または沈殿物)を廃棄することができる。しかしながら、赤血球は、追加的または代替的には、任意の方法で溶解することができる。
【0048】
サンプルを受け入れるステップS200は、サンプルをマイクロ流体デバイスに提供するように機能する。サンプルは、好ましくは、血液サンプル(例えば、患者、ユーザ、対象者、試験グループのメンバ、対照、動物などの複数の血球、複数の白血球、複数の赤血球など)である。しかしながら、サンプルは、追加的または代替的には、任意の適切な細胞、粒子および/または他の構成要素を含むことができる。いくつかの態様では、サンプルが、複数の対照粒子を含むことができる。対照粒子は、マイクロ流体デバイスの流れ特性を監視するように機能することができる。対照粒子は、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ)、結晶および/または任意の適切な対照粒子を含むことができる。対照粒子は、好ましくは、サンプルと同等のサイズ(例えば、サンプル構成要素のサイズの±50%、±100%など)を有するが、予め設定されたサイズ(例えば、チャネルサイズに基づくサイズ、サンプルに基づくサイズ、1、2、5、8、10、12、15、17、20μmなど約1~20μm、20μm以上、1μm以下など)および/または任意のサイズを有することも可能である。対照粒子は、サンプルに対して、約1:10,000~1:1の間の任意の比率(例えば1:1,000)で含まれ得るが、比率は、1:10,000未満、1:1よりも大きい比率、および/または任意の比率であってもよい。流れガイドは、好ましくは、200、300、500、1000、1500、2000、2500、3000、5000、10000、100~10000細胞/秒など、少なくとも100細胞/秒で受け入れるが、1秒あたり10,000を超える細胞、100未満の細胞、可変数の細胞、および/または任意の数の細胞を受け入れることも可能である。
【0049】
サンプルは、自動的に(例えば、オートサンプラ、ロボットなどを用いて)かつ/または手動で受け入れる(例えば、オペレータによって提供される)ことができる。サンプルは、好ましくはマイクロ流体デバイスの入口で受け入れられるが、集束領域、変形領域、サンプル調製デバイス、および/またはサイトメトリーシステムの任意の適切な領域および/またはコンポーネントで受け入れることができる。受け入れたサンプルは、処理済みおよび/または未処理(例えば、患者から採取するなどして収集されたもの)であり得る。
【0050】
マイクロ流体デバイス内でサンプルを移送するステップS300は、サンプル(および/またはその構成要素)を集束および/または整列させ、かつ/またはサンプルを入口から変形領域へ移送するように機能する。例えば図6に示すように、サンプルを集束および/または整列させることにより、大部分の時間(例えば、時間の70%、80%、90%、95%、99%、100%など)で単一の構成要素が変形領域にあるように構成要素を分離することができ、大部分の構成要素(例えば、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%、100%など)が単一のフローチャネルに入るように構成要素を分離することができ、かつ/または他の方法でサンプルを移送することができる。サンプルは、好ましくは、マイクロ流体デバイス内のシース液中で移送されるが、任意の媒体中に懸濁させることもできる。集束および/または整列は、好ましくは、マイクロ流体デバイスの集束領域で行われるが、マイクロ流体デバイスの任意の領域で、かつ/または任意のコンポーネントによって行うことが可能である。サンプルの整列および/または集束は、好ましくは受動的に(例えば、集束領域の形状および/または構造に基づくなど、マイクロ流体デバイスの1または複数の集束領域内で)行われるが、能動的に(例えば、ポンプ、ゲートなどを用いて)行われるものであってもよい。
【0051】
力をサンプルに加えるステップS400は、サンプルに応力(および/または歪み)を加えるように機能し、力は、サンプル(および/またはその構成要素)を変形し(例えば、図4および図7に示すように、圧縮し、膨張させ、ゆがめ、再構成し)、攪乱し、かつ/またはサンプルに損傷を与えるように機能する。力は、サンプルの弾性変形または非弾性変形を引き起こすことができる。力は、好ましくは、各構成要素(例えば、各細胞、各粒子など)に個別に加えられる(例えば、ある時に単一の構成要素が変形領域内にある)。しかしながら、力は、複数の構成要素および/またはサンプル全体に同時に加えることもできる。サンプルに加えられる力は、移送媒体(例えば、シース液)、マイクロ流体デバイスの温度、流体温度、流量、流体圧力、マイクロ流体チャネルのサイズ(例えば、幅、深さ)、マイクロ流体チャネルの形状、変形領域の配置、および/または任意のパラメータに依存することができ、それらの各々は、変形条件を調整するために測定および/または制御することが可能である。
【0052】
各構成要素に加えられる力は、好ましくは、実質的に同一である(例えば、変動が最大で5%、10%、20%、25%、30%等である)が、各構成要素に加えられる力は、異なっていてもよい。力は、好ましくは、マイクロ流体デバイスの変形領域の近傍および/または変形領域内(例えば、変形領域のよどみ点の近傍)に加えられるが、任意の位置に力を加えることが可能である。力は、好ましくは、変形領域の近傍にある2以上のチャネル間の流体の流れの交差によって加えられる。いくつかの態様では、力が、構成要素に対して非対称的に加えられる。例示的な態様では、流体の流れの交差が、構成要素の第1の領域および構成要素の第2の領域に沿って分画力を感じさせる非対称である(例えば、非ゼロの渦度を有し得る)。第2の特定の態様では、変形領域の近傍で交差するチャネルの各々の流量および/またはチャネルのサイズが異なり得る。しかしながら、力は、任意の方法で非対称に加えることが可能である。
【0053】
一態様では、サンプル内に含まれる対照粒子を使用して、(例えば、対照粒子において測定された変形に基づいて)加えられている力を特定(例えば、推定、測定、計算等)することができる。第1の特定の例において、力は、対照粒子によって特定された力に基づいて(例えば、流速、流量、流体圧力、温度、チャネルサイズなどを変更することによって)変更することができる。第2の特定の例では、対照粒子に基づいて特定された力の経時的な変動を補正するために、データセットを処理(例えば、補間、変換、破棄等)することができる。
【0054】
第1の特定の例では、サンプル体積の第1の部分を第1の流れに、サンプル体積の第2の部分を、第1の流れに実質的に反対の第2の流れに送って、第1の流れおよび第2の流れを交差させてそれらの間に変形領域を協働して規定し、(例えば、第1の流れ、第2の流れまたは別々の流れを介して)変形領域に1または複数の構成要素を送達することによって、力が加えられる。第2の例では、(例えば、非サンプル流体の)第1および第2の流れを交差させることにより協働して変形領域を規定し、第3の流れを介して1または複数の構成要素を変形領域へ送達することによって、力が加えられる。しかしながら、他の方法で力を加えることも可能である。
【0055】
データセットを取得するステップS500は、好ましくは、サンプルに関連するデータセットを測定するように機能する。データセットは、力が加えられる前、間、および/または後に、取得され、かつ/またはそれらのデータを含むことができる。データセットは、好ましくは、複数の画像(例えば、カメラまたは画像取得システムを使用して収集される光学データセット、赤外線カメラを使用して取得される熱データセットなど)を含むが、追加的にまたは代替的には、電気データ(例えば、抵抗、導電率など)、熱データ、プローブ測定値(例えば、サンプルと接触しているプローブ、マイクロ流体チャネルと接触しているプローブ、シース液と接触しているプローブなど)、圧力測定値、力測定値、および/または任意の適切なデータを含むことができる。データセットは、好ましくは、サンプルの各構成要素に関連するデータを含むが、サンプルの構成要素のサブセットに関連するデータ、サンプル全体、および/または任意の適切なデータを含むことができる。データセットは、好ましくは、検出システム(例えば、画像取得システム、カメラなど)によって取得されるが、コンピューティングシステムおよび/または任意の適切なコンポーネントによって行われるものであってもよい。
【0056】
各構成要素の複数の画像は、好ましくは、構成要素の少なくとも10の画像を含むが、構成要素の10未満の画像(例えば、1~9個の画像)を含むことも可能である。複数の画像は、好ましくは、力が加えられる前の画像、力が加えられている間の画像、および力が加えられた後の画像を含む。しかしながら、複数の画像は、力が加えられる前、前と間、前と後、間、間と後、および/または後の画像に対応することができる。
【0057】
1または複数の特徴を特定するステップS600は、データセットから1または複数の特徴を特定(例えば、識別、抽出など)するように機能する。特徴は、好ましくは、画像内の対象物(例えば、細胞、細胞片、細胞成分、対照粒子、汚染物質など)である。しかしながら、特徴は、対象物の一部(例えば、細胞核、細菌、細胞小器官など)であってもよく、対象物は、(例えば、変換によって)特徴に関連付けられるものであってもよく、かつ/または、特徴は、対象物および/または画像から他の方法で特定されるものであってもよい。特徴は、好ましくは、コンピューティングシステム(例えば、コンピューティングシステムの特徴モジュール)によって特定されるが、任意のコンポーネントによって行われるものであってもよい。
【0058】
特徴を特定するステップは、構成要素を検出するステップ、画像をセグメント化するステップ、構成要素を識別するステップ、および/または任意のステップを含むことができる。図8には、一例が示されている。
【0059】
構成要素を検出するステップは、所与の画像に構成要素が存在するか否かを判定するように機能する。構成要素の検出は、構成要素が存在しない多数の画像をキャプチャしてどの画像が構成要素を含むかを選別または特定する必要がある本方法の実施形態において特に有益であるが、本方法の任意の実施形態で行われるものであってもよい。構成要素の検出は、すべての画像に対して、かつ/または画像のサブセットに対して実行することができる。例えば、最初の画像で構成要素が検出された場合、N(Nは1、2、5、10、20、50、100などの整数)個の後続の画像は、同じ構成要素を含むとみなすことができる。構成要素の検出は、物体検出器、機械学習手法(例えば、Viola-Jonesオブジェクト検出、スケール不変特徴変換(SIFT)、勾配方向ヒストグラム(HOG)など)、ディープラーニング手法(例えば、R-CNN、Fast R-CNN、Faster R-CNN、カスケードR-CNNなどのリージョン提案、シングルショットマルチボックス検出器、You Only Look Once、オブジェクト検出のためのシングルショットリファインニューラルネットワーク、Retina-Net、可変形畳み込みネットワークなど)、オブジェクト追跡技術(例えば、オプティカルフロー)、および/または他の方法を使用して実行することができる。
【0060】
画像をセグメント化するステップは、構成要素(例えば、対象物)に関連するピクセルを識別するように機能する。第1の態様では、画像をセグメント化することは、各画像(例えば、構成要素を含む各画像、各画像など)を前景(例えば、構成要素)と背景(例えば、画像の残りの部分)とに分離する前景/背景セグメンテーションを含むことができる。第2の態様では、画像をセグメント化することは、セマンティックセグメンテーションを適用して、細胞ピクセル(例えば、セグメント化されたブロブ)を識別し、セグメント化されたブロブに関連する細胞種類(例えば、細胞亜集団)を判定することを含むことができる。画像のセグメント化は、閾値処理、k-meansクラスタリング、ヒストグラムベースの画像セグメンテーション、エッジ検出、モーションベースのセグメンテーション、ディープラーニング手法(例えば、畳み込みニューラルネットワーク、完全畳み込みネットワーク、アンサンブル学習など)を使用して実行することができ、かつ/または他の方法で画像をセグメント化することができる。
【0061】
構成要素を識別するステップは、構成要素(例えば、構成要素タイプ)を特徴付け、かつ/または分類するように機能することができる。例示的な態様では、構成要素を識別することにより、画像内の構成要素が細胞であるか、または細胞でないか(例えば、対照粒子、塵、汚染物質など)を判定することができる。第2の例示的な態様では、構成要素を識別することによって、画像内にどのような種類の細胞(例えば、顆粒球または無顆粒球、マイロイドまたはリンパ球、赤血球または白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、または単球など)があるかを特定することができる。構成要素は、対象物のパラメータ(例えば、対象物の色、対象物の明るさ、対象物のコントラストなど)に基づいて、対象物のサイズ(例えば、構成要素の体積、長さ、幅および/または高さ;核サイズなどの内部構造のサイズ;細胞小器官などの内部構造の存在など)に基づいて、データセットから抽出した特徴量に基づいて、分画した血液の部分に基づいて、補助情報に基づいて、かつ/または任意の情報に基づいて、識別することが可能である。構成要素は、好ましくは、自動的に(例えば、セマンティックセグメンテーション、分類、畳み込みニューラルネットワーク、完全畳み込みネットワーク、ディープラーニング、機械学習などを用いて)識別されるが、手動で(例えば、ユーザ、オペレータ、患者、技師などによって)識別されるものであってもよい。構成要素は、視覚的特徴、パラメータ(例えば、アスペクト比)、発現(例えば、抗体親和性、蛍光など)によって識別され、かつ/または他の方法で特定される。一態様では、構成要素を特定することにより、前景の対象物がクラスに対応する確率を求め、対象物にクラスを割り当てることができ、かつ/または他の方法で対象物を分類することができる。
【0062】
パラメータのセットを導き出すステップS700は、特徴および/またはデータセットに基づいて構成要素パラメータのセット(例えば、細胞パラメータ、メトリクス、記述子など)を導き出すように機能し、パラメータのセットは、好ましくは患者の健康状態に関連付けられる(例えば、相関する、関連する)。構成要素パラメータは、特徴に対応し(例えば、特徴から求められ、特徴から抽出され)、特徴に基づいて割り出され(例えば、特徴から計算され、特徴から導き出され)、データセットに基づいて求められ、かつ/または他の方法で導き出される。構成要素パラメータは、チャネル内の特定の位置における構成要素の特徴、加えられた力に関連する時間(例えば、力が加えられる前、力が加えられている間、力が加えられた後)、加えられた力のパラメータ(例えば、大きさ、方向、持続時間など)に関連する時間、平均的特性(例えば、同じ構成要素を含むすべての画像にわたる平均的特性)、保存された特性(例えば、構成要素の画像全体を通して同じ状態を維持する特性)、変化する特性(例えば、構成要素の画像全体を通じて変化する特性)、派生および/または抽出された特性(例えば、構成要素の2以上の画像を調べることによって生成されるパラメータ;「マスタ」、予測される構成要素、平均的な構成要素に対する差異に基づいて生成されるパラメータなど)に対応することができ、かつ/または任意の適切な特徴または特性に対応することができる。パラメータは、サンプル、その1または複数の構成要素、患者および/またはユーザに対応し、かつ/または任意のソースに対応することができる。構成要素のパラメータのセットのうちの1または複数のパラメータは、1または複数の因子、例えば、構成要素の硬さ(例えば、ヤング率)、抗体の発現状態、細胞種類、サンプルの密度、構成要素の密度(例えば、細胞の密度)、サンプル内の構成要素の平均密度、構成要素の質量、構成要素の体積、収集パラメータ、および/または他の因子に関連付けられる(例えば、相関する、依存する)(例えば、患者の健康状態は、因子に関連付けられた構成要素パラメータに基づいて判定される)。1または複数のパラメータは、パラメータ的に因子と関連付けることができ、方程式(例えば、線形関係、非線形関係など)に従って因子と関連付けることができ、因子と相関させることができ、かつ/または、他の方法で因子と関連付けることができる。パラメータのセットは、好ましくは、コンピューティングシステム(例えば、コンピューティングシステムのパラメータモジュール)によって導き出されるが、手動で(例えば、ユーザ、オペレータ、技師、患者などによって)導き出され、かつ/または任意のコンポーネントによって導き出されるものであってもよい。
【0063】
構成要素パラメータのセットは、好ましくは、母集団パラメータ(例えば、サンプルを表すパラメータ)に対応するが、イベントパラメータ(例えば、画像内の特徴または対象物に基づいて求められたパラメータなどの画像を示すパラメータ、構成要素、特徴、対象物などの複数の画像に基づいて求められたパラメータなどの構成要素を示すパラメータなど)に対応することができ、かつ/またはそのようなイベントパラメータに関連付けることができ、かつ/または任意の適切な基準に対応することが可能である。母集団パラメータは、好ましくはイベントパラメータから導き出されるが、他の方法で導き出されるものであってもよい。母集団パラメータは、複数のイベントパラメータの平均、イベントパラメータの特性パラメータ(例えば、最大、最小、平均、中央値、最頻値など)であってもよく、かつ/またはイベントパラメータに他の方法で関連付けられるものであってもよい。特定の例では、パラメータのセットのうちの1または複数のパラメータを導き出すことは、各イベント(例えば、画像、デバイスまたは変形領域を横断する構成要素など)に対して求められたパラメータを平均すること、閾値を超えるパラメータを平均すること(例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセンタイルより大きいパラメータを平均化すること、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセンタイルより小さいパラメータを平均化することなど)、パラメータのサブセット(例えば、同じ細胞タイプなどの同じ特徴タイプに関連するパラメータ)を平均化すること、極値パラメータ(例えば、最大、最小など)、パラメータ間の相関を導き出すこと、イベントパラメータのセット(またはサブセット)の分散および/または標準偏差を求めること、イベントパラメータを母集団パラメータに関連付ける方程式を使用すること、イベントパラメータの加重平均を使用することを含むことができ、かつ/または他の方法で導き出されるものであってもよい。
【0064】
パラメータの様々なセットは、好ましくは、各細胞種類(例えば、各細胞亜集団)に対して計算されるが、代替的には、パラメータの単一のセットは、細胞母集団(例えば、全ての白血球)に対して、細胞母集団の組合せに対して計算されるものであってもよく、または他の方法で求められるものであってもよい。
【0065】
一態様では、構成要素パラメータのセットが、構造パラメータ、軌道パラメータ、サンプルパラメータ(例えば、患者パラメータ)、位置パラメータ(例えば、画像フレーム、チャネル、出口、入口、よどみ点に対する細胞位置など)、および/または任意のパラメータを含むことができる。軌道パラメータは、マイクロ流体デバイス(例えば、マイクロ流体デバイスの変形領域、集束領域など)を通る細胞の軌道に関連するパラメータおよび/または細胞の軌道により導き出されたパラメータであり得る。軌道は、細胞の一連の離散位置(例えば、重心の位置、質量中心の位置、基準点の位置、細胞の平均位置など)、細胞の連続的な経路であり、かつ/または細胞が流体の流れ(例えば、マイクロ流体デバイスの変形領域)を通過する際の細胞の動きに対応することができる。
【0066】
構造パラメータの例としては、形状(例えば、楕円度、ヘリシティ、長円度、真円度、曲率、歪度など)、アスペクト比(例えば、最長寸法と最短寸法の比、長さと幅の比など)、サイズ(例えば、横方向の広がり、縦方向の広がり、深さ、高さ、幅、長さ、体積、表面積など)、構成要素の構造(例えば、細胞膜の位置、細胞の形状、細胞壁の構造など)、構成要素の形態(例えば、細胞の形態、細胞の形状、粒子の形状など)、内部構造(例えば、細胞の核および/または他の細胞小器官の形状、形態、サイズなど)、および/または他の任意の構造パラメータが挙げられる。
【0067】
軌道パラメータの例としては、対象物および/または特徴の動きの方向、対象物および/または特徴の動きの速度(例えば、平均速度、瞬間速度など)、対象物および/または特徴の動きの加速度、対象物および/または特徴の動きにおける振動(例えば、図5に示すような振動の振幅、振動の周波数、振動の位相、振動の変調、振動の減衰など)、粘弾性慣性応答(VEIR)、粒子流軌道の偏差(例えば、直線経路、予想経路からの偏差など)、および/または他の任意の軌道パラメータを挙げることができる。軌道パラメータは、軌道の1または複数の位置の差、合計、振幅、最大値、最小値、平均値および/または他の特性に基づいて導き出すことができる。軌道パラメータが振動を含む一態様では、振動が、基準点(例えば、重心、極値など)、基準軸(例えば、長さ、幅、深さなどの1または複数の次元)、1または複数の基準面(例えば、対象物の境界、細胞小器官の境界に対応するような対象物の内部境界)、基準体積(例えば、対象物の体積、対象物の内部構造など)、および/または対象物の他の部分の振動に対応することができる。振動は、好ましくは、対象物の運動方向に対して垂直な基準軸に沿って生じる。しかしながら、基準軸は、運動方向に対して平行であってもよく、かつ/または運動方向に対して任意の向きを有することができる。振動振幅は、好ましくはミクロンサイズのスケール(例えば、1~10μm、10~100μmなど)であるが、追加的または代替的には、ナノメートルのスケール(例えば、1~100nm、100nm~1μmなど)であってもよく、かつ/または任意の適切な距離であってもよい。特定の例では、細胞のVEIRは、振動振幅に基づいて求めることができ、任意選択的には、変形条件、細胞タイプ、および/または他の任意の適切な情報に基づいて導き出すことができる。
【0068】
サンプルパラメータ(例えば、患者パラメータ)の例としては、全粒子数、全血球数、全白血球数、全好中球数、全単球数、全リンパ球数、全好塩基球数、全好酸球数、全赤血球数、全血小板数、構成要素の数(例えば、細胞および/または細胞セグメントの数、粒子および/または粒子セグメントの数など)、主症状(例えば、患者の体温、血圧、体重、血液酸素化など)、細胞密度、細胞培養結果、水和、および/または他の任意のサンプルパラメータを挙げることができる。
【0069】
パラメータのセットを導き出すステップは、1または複数の測定値の平均を計算するステップ、データセットを(例えば、方程式の1または複数の適合パラメータがパラメータのセットの1または複数のパラメータに対応する方程式、形状などに)フィッティングするステップ、特徴(および/または特徴のサブセット)を含む画像の位置および/または領域を特定するステップ、機械学習手法を用いるステップ、データセット上で変換を実行するステップ、および/または任意のステップを含むことができる。
【0070】
例示的な態様では、構造パラメータを求めることが、特徴の境界(例えば、内部境界、外部境界など)を特定して、その境界に基づいて構造パラメータを求めることを含むことができる。この例示的な態様の第1の例では、構造パラメータを、検出システムの既知の幾何学的形状およびサンプルの幾何学的形状に基づいて導き出すことができる(例えば、特徴のサイズは、システムの幾何学的形状、および焦点距離、光学センササイズなどの既知のカメラパラメータに基づいて導き出すことができる)。この例示的な態様の第2の例では、同じ特徴を含む2つの画像間の視差マップを求めることによって、構造パラメータを導き出すことができる。特定の例では、各フレームにおける細胞のアスペクト比および/または変形領域に沿った位置は、それぞれのフレームから抽出された細胞の寸法に基づいて導き出すことができる。
【0071】
例示的な態様では、軌道パラメータを求めることが、複数の画像の各画像における特徴(例えば、対象物、構成要素)の重心位置を特定すること、複数の画像間の重心の位置の変化を追跡すること、振動の振幅を測定すること(例えば、振動の1または複数のピークまたはサイクルを使用)、振動の振幅に基づいてパラメータを計算することを含むことができる。この例示的な態様の第1の例では、振幅を測定することが、振動の第1、第2および/または任意の適切なピークの振幅の測定を除外することができ、これにより、測定の再現性を向上させることができる。この例示的な態様の第2の例では、振幅を測定することが、振動の第3、第4、第5および/または任意のピークの振幅を測定し、振幅を平均して、適合パラメータを求めることを含むことができる。この例示的な態様の第3の例では、振幅を測定することが、振動の第3、第4、第5および/または任意のピークの振幅を測定し、振動を予め設定された方程式(例えば、三角関数、減衰振動、指数関数などの振動関数)にフィッティングして、軌道パラメータ(例えば、振幅、オフセット、位相、周波数、低下、減衰、ドライビングなどの適合パラメータ)を導き出すことを含むことができる。この例示的な態様の第4の例では、軌道パラメータが、軌道のフーリエ分解(例えば、フーリエコサイン変換、フーリエサイン変換、フーリエ変換など)からの1または複数のフーリエ係数を含むことができる。この例示的な態様の第5の例では、同じ特徴を含む画像間の構造パラメータの変化に基づいて、軌道パラメータを導き出すことができる。特定の例では、変形領域を通って流れる間の細胞のVEIRを、フレームのそれぞれの時系列から抽出された細胞の振動振幅に基づいて導き出すことができる。この例示的な態様の第6の例では、振動の最初、2番目、3番目、4番目、5番目(5次)、6番目、7番目、8番目、9番目、10番目および/または他のサイクルの振幅、および/または上記の組合せ(例えば、最初および/または2番目のサイクルなどの一部のサイクルを除く組合せ、3番目、4番目および5番目のサイクルのみなど、サイクルのサブセットを含む組合せなど)に基づいて、軌道パラメータを求めることができる。しかしながら、軌道パラメータは、他の方法で求めることも可能である。
【0072】
患者の健康状態を判定するステップS800は、パラメータのセット(例えば、母集団パラメータ、イベントパラメータ)に基づいて患者の健康状態を判定(例えば、診断)するように機能する。健康状態には、免疫活性化状態(例えば、全身性炎症反応症候群(SIRS))、血球の健康、器官の健康、癌の状態、炎症、健康状態(例えば、敗血症、敗血症関連疾患、貧血、出血状態等)、および/または患者の任意の適切な健康状態が含まれる。いくつかの態様では、健康状態が、1または複数の病原体(例えば、病原体のクラス、特定の病原体などの細菌、ウイルス、真菌、化学物質など)および/または健康状態の他の原因によって引き起こされ、かつ/またはその診断(例えば、1または複数の病原体によって引き起こされる健康状態の確率)を含む。例示的な態様では、健康状態が、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(「COVID-19」)に対する患者の免疫応答に関連する免疫活性化状態であり得る。健康状態は、バイナリ状態(例えば、患者が所与の健康状態に対して陽性であるか否かについて、はい又はいいえ)、重症度指標(例えば、「健康」、「兆候なし」、「軽度」、「中度」、「重症」、「重大」、「急性」、「生命危機」など)、数値、患者がある疾患を有する確率および/または可能性、および/または健康状態の他の表現であり得る。
【0073】
例えば、導き出された指標または健康状態は、任意選択的に、患者の疾患状態の進行を経時的に追跡するために、治療パラメータ(例えば、推定入院期間、推定トリアージ要件など)を導き出すために、二次分析を開始するために、使用することができ、かつ/または他の方法で使用することができる。二次分析の例としては、自然免疫活性化アッセイ、例えば、構造的特徴をアッセイするための光学顕微鏡検査法、細胞学アッセイ、化学変化アッセイ(例えば、CD11b、CD18、CD64、CD66b、および/または他のマーカーの免疫蛍光標識およびフローサイトメトリを使用)、トランスクリプトミックシグネチャ分析、および/または他の分析が挙げられる。
【0074】
健康状態は、好ましくは、自動的に(例えば、パラメータのセットの特定に応答して)判定されるが、半自動的に(例えば、診断または確率的診断に対する医療専門家の要求に応答して)かつ/または手動で(例えば、医療専門家により)判定することも可能である。健康状態は、好ましくは、コンピューティングシステム(例えば、コンピューティングシステムの診断モジュール)により判定されるが、任意のコンポーネントによって判定することもできる。
【0075】
健康状態は、モデル、方程式、ルックアップテーブル、ニューラルネットワーク(例えば、スコアを出力するようにトレーニングされたニューラルネットワーク、疾患状態を出力するようにトレーニングされたニューラルネットワークなど)から求めることができ、かつ/または他の方法で導き出すことができる。使用することができるモデルの例には、ロジスティック回帰(例えば、線形ロジスティック回帰、非線形ロジスティック回帰など)、決定木、ベイズ分類器、最近傍法、サポートベクターマシン、デシジョンフォレスト(例えば、ランダムフォレスト)、ニューラルネットワーク、勾配ブースティング、および/または任意のモデルが含まれる。モデルは、予め設定されたモデル、一般モデル、補助情報に基づいて選択されたモデル、および/または、他の任意の適切なモデルであり得る。
【0076】
モデルへの入力は、パラメータのセットからの1または複数のパラメータ;年齢、成熟度(例えば、青年または成人)、体重、身長、人種、性別、体温、体格指数、体脂肪率、既存の状態、症状の期間、症状の発症、旅行、血液酸素化レベル、血圧、感染源などの補助情報;治療パラメータ(例えば、入院期間、投与された治療など);採取パラメータ(例えば、温度、サンプル中に見出された他の化合物など);および/または任意の入力を含むことができる。例示的な態様では、入力が、軌道パラメータ(例えば、振動の振幅)、細胞サイズ(例えば、厚さ)および細胞数(例えば、好中球の数、白血球の数など)を含むことができる。
【0077】
モデルの出力は、指標(例えば、健康状態指標、白血球構造指標(LSI)、0~1、0~10などの値、スコア、閾値を超える構成要素の総数、閾値を超える構成要素の総数の割合などの閾値を超えるパラメータおよび/またはパラメータの組合せを有する構成要素の数、確率など)、健康状態、健康状態の深刻度、健康状態の確率、および/または任意の出力を含むことができる。
【0078】
例示的な態様では、指標に基づいて健康状態を判定することができる。指標が閾値(例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.95、0.99、1など)を超える場合、患者が疾患を有する(または少なくとも50%の確率を有する可能性が高い)ことを、健康状態が示すことができる。指標が閾値(例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、0.85、0.99、1など)を下回る場合、患者が疾患を有していない(または患者がその疾患を有していない確率が少なくとも50%ではない可能性が高い)ことを、健康状態が示すことができる。しかしながら、閾値を下回る指標は疾患を示すことができ、閾値を超える指標は疾患を有していないことを示すことができ、かつ/または指標は任意の方法で使用することができる。閾値は、トレーニングデータセットに基づいて(例えば、モデルが生成される方法と同様の方法で、モデルへの入力が選択される方法と同様の方法で)決定することができ、予め決定することができ、方程式(例えば、補助サンプル情報に基づく方程式および/またはそれを説明する方程式)に従って決定することができ、かつ/または他の方法で決定することができる。
【0079】
いくつかの態様では、単一の指標を決定することができる(例えば、各細胞亜集団の集団パラメータを単一の計算に集約することができる)。他の態様では、患者および/またはサンプルについて複数の指標を決定することができる。例えば、好中球指標および単球指標を決定することができる。各指標は、同じ閾値を有することも、異なる閾値を有することもできる。例えば、0.75の閾値を超える単球指標は疾患を示すことができ、0.9の閾値を超える好中球指標は疾患を示すことができる。複数の指標が使用される場合、健康状態は、票決、好ましい指標、指標の結果の加重平均、指標および/または閾値を関連する方程式に基づいて判定することができ、かつ/または他の方法で判定することができる。
【0080】
モデル入力および/または閾値は、好ましくは、トレーニングデータセットに基づいて決定される。トレーニングデータセットは、好ましくは、ある疾患(例えば、高い敗血症発生率)を有すると診断および/または他の方法で判定された患者コホートと関連付けられる。しかしながら、任意の患者コホートを使用することができる。機械学習手法(例えば、ニューラルネットワーク)は、どの入力、入力の組合せ(例えば、線形組合せ、非線形組合せなど)および/または1または複数の閾値が予め設定された健康状態と相関しているかを判断するために使用されることが好ましい。しかしながら、入力、入力の組合せおよび/または閾値は、経験的に、回帰(例えば、線形回帰、非線形回帰)を用いて、手動で決定することができ、かつ/または、他の方法で決定することができる。いくつかの態様では、入力、入力の組合せおよび/または閾値は、対照群(例えば、疾患を有さない又は有する可能性の低い患者のコホート)を用いて検証する(例えば、対照群が疾患を有さない又は有する可能性の低いことを、トレーニングデータセットから求められた入力、入力の組合せおよび/または閾値が示すことを判定する)ことができる。
【0081】
本方法および/またはそのステップは、2019年4月3日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DEFORMING AND ANALYZING PARTICLES」という名称の米国出願第16/374,663号、2018年1月11日に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH THROUGHPUT CELL DEFORMABILITY MEASUREMENTS」という名称の米国出願第15/868,025号、2019年11月6日に出願された「METHOD AND DEVICE FOR HIGH-THROUGHPUT SOLUTION EXCHANGE FOR CELL AND PARTICLE SUSPENSIONS」という名称の米国出願第16/676,352号、2013年10月18日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DEFORMING,IMAGING AND ANALYZING PARTICLES」という名称の米国特許第9,464,977号、並びに、2017年4月3日に出願された「SYSTEM AND METHOD FOR DEFORMING PARTICLES」という名称の米国特許第10,252,260号に開示のマイクロ流体デバイスおよび/またはサイトメトリーシステムを操作する1または複数のステップを実行することを含むことができ、それら出願の各々は、この引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0082】
第1の例では、本方法は、変形中の細胞(例えば、白血球)の画像を受信するステップと、各細胞について、画像から細胞の特徴(例えば、流れ領域内の寸法および位置)を抽出するステップと、各細胞について、細胞の特徴に基づいて軌道パラメータ(例えば、振動振幅)および/または構造パラメータ(例えば、縦横比)を求めるステップと、軌道パラメータ値および/または構造パラメータ値に基づいて指標を計算するステップと、指標に基づいて患者の健康状態を判定するステップとを含む。本方法は、任意選択的に、細胞亜集団(例えば、単球、リンパ球、好中球)に従って細胞データを分離するステップを含むことができ、指標を、細胞亜集団のサブセット(例えば、単球および好中球)に対するパラメータに基づいて算出することができる。
【0083】
第2の例では、本システムが、第1および/または第2の例で説明した方法を実行するように構成されたコンピューティングシステムを含むことができる。本システムは、任意選択的に、マイクロ流体デバイスを含むことができる。
【0084】
本システムおよび/または本方法の実施形態は、様々なシステムコンポーネントおよび様々な方法プロセスのあらゆる組合せおよび順列を含むことができ、本明細書に記載の方法および/またはプロセスの1または複数のインスタンスは、本明細書に記載のシステム、要素および/またはエンティティの1または複数のインスタンスによって、かつ/またはそれを用いて非同期に(例えば、順次)、同時に(例えば、並行して)または任意の他の適切な順序で実行することができる。
【0085】
当業者であれば、上述した詳細な説明と、図面および特許請求の範囲から認識できるように、以下の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に対して修正および変更を加えることが可能である。
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