(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】対象物のイメージング装置およびイメージング方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/18 20060101AFI20231010BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G02B21/18
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2022513405
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2019072786
(87)【国際公開番号】W WO2021037342
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シューマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト ミュラー-レンツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロッター
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-074619(JP,A)
【文献】特開2000-056232(JP,A)
【文献】特開平11-183124(JP,A)
【文献】特開2008-225096(JP,A)
【文献】特開2008-039918(JP,A)
【文献】特開2012-203047(JP,A)
【文献】特開2016-161600(JP,A)
【文献】特開平08-190056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(100)用の光学イメージング装置(102)であって、前記光学イメージング装置(102)は、
対象物(104)からの検出光を集光し、前記検出光を光路(114)内に導くように構成されている対物レンズ(106)と、
第1の動作モードと第2の動作モードとにおいて、前記対象物(104)を選択的に光学的にイメージングするために、前記対物レンズ(106)と相互作用するように構成されている複数のレンズ要素を含んでいる光学システム(108)と、
を含んでおり、
前記光学システム(108)は、前記第1の動作モードに関連付けられた第1の光学サブシステム(110)を含んでおり、前記第1の光学サブシステム(110)は、第1の倍率で前記対象物(104)の第1の画像を形成するように構成されており、
前記光学システム(108)は、前記第2の動作モードに関連付けられた第2の光学サブシステム(112)を含んでおり、前記第2の光学サブシステム(112)は、第2の倍率で、前記対象物(104)の第2の画像を形成するように構成されており、前記第2の倍率は、前記第1の倍率よりも低く、
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記第2の動作モードを選択するために前記光路(114)内に挿入可能な光学モジュール(118)を含んでおり、前記光学モジュール(118)は、前記光路(114)内に挿入された際に、前記光学システム(108)の他のレンズ要素よりも、前記対物レンズ(106)の射出瞳(130)に近づくことによって、前記第1の倍率よりも前記第2の倍率を低くする正の屈折力を有するレンズ要素(126)を含んで
おり、
前記光学モジュール(118)は、前記光路(114)内に挿入されると、前記光路(114)から光側路(136)を分岐させるように構成されている光偏向器(128)をさらに含んでおり、前記第2の画像は、前記光側路(136)において形成されており、
前記第2の光学サブシステム(112)は、ケプラー式望遠鏡システム(138)を含んでおり、前記ケプラー式望遠鏡システム(138)は、前記光学モジュール(118)に含まれている前記正の屈折力を有するレンズ要素(126)によって形成される、第1の最も対象物側のレンズ要素を有しており、
前記ケプラー式望遠鏡システム(138)は、前記射出瞳(130)の像(142)を形成するように構成されており、
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記射出瞳(130)の前記像(142)の位置に配置された開口絞り(144)を含んでおり、前記像(142)は、実像として形成されている、
光学イメージング装置(102)。
【請求項2】
前記ケプラー式望遠鏡システム(138)は、前記検出光の複数の光束をコリメートするように構成されている正の屈折力を有する第2のレンズ要素(140)を含んでおり、
各光束は
、対象物領域(116)の単一の点に関連付けられて
おり、前記単一の点から前記対物レンズ(106)は、前記検出光を集光する、
請求項1記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項3】
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記検出光を像平面上にフォーカシング
を行うように構成されているチューブレンズ(146)を含んでいる、
請求項1または2記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項4】
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記像平面に配置されているイメージセンサ(148)を含んでいる、
請求項3記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項5】
前記第2の光学サブシステム(112)の前記レンズ要素(140,146)のうちの少なくとも1つのレンズ要素は、前記光学モジュール(118)に含まれている、前記正の屈折力を有するレンズ要素(126)の残留収差を補正するように構成されている、
請求項2から4までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項6】
前記第2の倍率は、1.0~2.5の範囲にある、
請求項1から5までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項7】
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記対象物(104)上に像側のフォーカシングを行うように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項8】
前記対物レンズ(106)は、液浸対物レンズによって形成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項9】
前記光学イメージング装置(102)は、前記対物レンズ(106)に液浸媒体(150)を供給するように構成されているディスペンサ(152)を含んでいる、
請求項8記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項10】
条件
(1)f≦30mm
(2)NA≧0.8
(3)FAA≧1mm
(4)d≦30mm
(5)D>4.5mm
のうちの少なくとも1つが満たされており、
fは、前記対物レンズ(106)の焦点距離を示し、
NAは、前記第2の動作モードにおける前記対物レンズ(106)の完全開口数を示し、
FAAは、自由作動距離を示し、
dは、前記正の屈折力を有するレンズ要素(126)から前記対物レンズ(106)の像側端部までの距離を示し、
Dは、前記第2の動作モードにおいて前記対物レンズ(106)が前記検出光を集光する対象物領域(116)の直径を示している、
請求項1から9までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の光学イメージング装置(102)を含んでいる顕微鏡(100)。
【請求項12】
対象物(104)をイメージングする方法であって、前記方法は、
前記対象物(104)からの検出光を集光し、対物レンズ(106)を用いて前記検出光を光路(114)内にフォーカシングするステップと、
前記対物レンズ(106)と相互作用する複数のレンズ要素を含んでいる光学システム(108)によって、前記対象物(104)を第1の動作モードと第2の動作モードとにおいて選択的にイメージングするステップと、
を含んでおり、
前記第1の動作モードでは、前記対象物(104)の第1の画像を第1の倍率で形成し、
前記第2の動作モードでは、前記対象物(104)の第2の画像を第2の倍率で形成し、前記第2の倍率は、前記第1の倍率よりも低く、
前記第2の動作モードを選択するために、光学モジュール(118)を前記光路(114)内に挿入し、前記光学モジュール(118)は、正の屈折力を有するレンズ要素(126)を含んでおり、前記正の屈折力を有するレンズ要素(126)は、前記光路(114)内に挿入された際に、前記光学システム(108)の他のレンズ要素よりも、前記対物レンズ(106)の射出瞳(130)に近づくことによって、前記第1の倍率よりも前記第2の倍率を低く
し、
前記光学モジュール(118)は、前記光路(114)内に挿入されると、前記光路(114)から光側路(136)を分岐させるように構成されている光偏向器(128)をさらに含んでおり、前記第2の画像は、前記光側路(136)において形成されており、
前記光学システム(108)は、前記第2の動作モードに関連付けられた第2の光学サブシステム(112)を含んでおり、
前記第2の光学サブシステム(112)は、ケプラー式望遠鏡システム(138)を含んでおり、前記ケプラー式望遠鏡システム(138)は、前記光学モジュール(118)に含まれている前記正の屈折力を有するレンズ要素(126)によって形成される、第1の最も対象物側のレンズ要素を有しており、
前記ケプラー式望遠鏡システム(138)は、前記射出瞳(130)の像(142)を形成するように構成されており、
前記第2の光学サブシステム(112)は、前記射出瞳(130)の前記像(142)の位置に配置された開口絞り(144)を含んでおり、前記像(142)は、実像として形成されている、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用の光学イメージング装置に関し、この光学イメージング装置は、対物レンズを含んでおり、この対物レンズは、対象物からの検出光を集光し、この検出光を光路内にフォーカシングするように構成されている。さらに、本発明は、対象物のイメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡を用いてイメージングされるべき対象物を見つけ出すことは、困難なタスクであり得る。特に、対物レンズの変更が不可能である、または対物レンズの変更が厳しい制限を伴ってのみ可能である顕微鏡システムにおいては、対象物を見つけ出すことは重要な課題であり得る。これは特に、逆顕微鏡構成において、作動距離が長い液浸対物レンズが使用される場合に当てはまる。自動的な液浸ディスペンサを使用する場合であっても、液浸媒体を加えることまたは除去することによって、異なる対物レンズが使用されるイメージング状況間の相関関係が崩れてしまう恐れがある。
【0003】
比較的高い倍率と高い開口数とを有する顕微鏡システムを用いる場合、イメージングされる対象物領域の横寸法と領域の軸線方向深さとは共に比較的小さい。したがって、対象物領域を拡大するためには、特に、より低い倍率とより低い開口数とを有する異なる対物レンズへの切り替えが必要となる。しかし、上記の理由から、対物レンズの変更は、特に液浸ベースの顕微鏡システムを使用する場合に、深刻な欠点を伴う。
【0004】
顕微鏡ステージの表面に平行な対象物平面上にフォーカシングする通常の構成からイメージング構成が逸脱している顕微鏡を用いる場合には、状況はさらに複雑になる。例えば、近年、斜面顕微法(OPM)等のライトシート顕微鏡技術が開発されており、ここではイメージングされる対象物平面は、試料キャリアの表面に対して傾斜させられている。対象物平面のこのような傾斜によって、照明光と検出光とが互いに直交して伝搬する幾何学形状に従って、試料キャリアの透明な底面を通して照明および検出が可能になる。
【0005】
従来の顕微鏡管は、対象物のイメージングの際に開口数を低減することを可能にする画像反転変倍器を含んでいてよい。しかし、これらの管システムによってイメージングされる対象物領域は比較的小さい。特に、数ミリメートルのオーダの横方向寸法を有する、ウェルプレートの完全なマイクロタイタキャビティをイメージングすることを可能にするには対象物領域は小さすぎる。さらに、光軸に沿って対象物を見つけ出すためには対象物側フォーカシングが必要である。このような対象物側フォーカシングは、作動距離が長い液浸対物レンズを含んでいる倒立顕微鏡システムにおいて問題となる。したがって、対象物フォーカシングを行う場合には、試料と対物レンズのフロントレンズとの間の空間に液浸媒体を所望のように保持することが困難になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、その後に対象物の光学画像を形成するために、対象物をより容易に見つけ出すことを可能にする顕微鏡用の光学イメージング装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項および以降の説明において定義される。
【0008】
光学イメージング装置は、対象物からの検出光を集光して、上記の検出光を光路内に導くように構成されている対物レンズと、第1の動作モードと第2の動作モードとにおいて、上記の対象物を選択的に光学的にイメージングするために、上記の対物レンズと相互作用するように構成されている複数のレンズ要素を含んでいる光学システムと、を含んでいる。光学システムは、第1の動作モードに関連付けられた第1の光学サブシステムを含んでおり、上記の第1の光学サブシステムは、第1の倍率で上記の対象物の第1の画像を形成するように構成されている。光学システムは、第2の動作モードに関連付けられた第2の光学サブシステムを含んでおり、この第2の光学サブシステムは、第2の倍率で、上記の対象物の第2の画像を形成するように構成されている。第2の倍率は第1の倍率よりも低い。第2の光学サブシステムは、第2の動作モードを選択するために光路内に挿入可能な光学モジュールを含んでいる。光学モジュールは、光路内に挿入された際に、光学システムの他のレンズ要素よりも、対物レンズの射出瞳に近づくことによって、第1の倍率よりも第2の倍率を低くする正の屈折力を有するレンズ要素を含んでいる。
【0009】
光学イメージング装置は、2つの異なる倍率で対象物をイメージングするために使用される2つの異なる動作状態を提供する。特に、第1の動作モードを使用して、実際の画像取得前に見つけ出された関心領域(ROI)の高倍率の拡大画像を提供することができる。このROIを見つけ出すために、第2の動作モードが使用されてよく、これによって、ROIが含まれている低倍率の概観画像が得られる。したがって、この光学イメージング装置によって、ユーザがイメージングされる対象物を見つけ出すことがより容易になる。特に、ユーザは対物レンズを変更することを強制されない。これは、液浸ベースの顕微鏡システムを使用する場合に特に有利である。なぜなら、低倍率の画像と高倍率の画像とを取得する際に、液浸媒体の供給または除去の必要がないからである。したがって、基本的にはイメージング状況は変化せず、2つの画像を容易に相関させることができる。
【0010】
対物レンズの変更を回避することは、顕微鏡ステージの表面に平行な面上に光学システムがフォーカシングされる通常のイメージング構成から逸脱している構成において特に有利である。例えば、光学イメージング装置は、ライトシート顕微鏡、例えばOPMにおいて有利に使用されてよい。OPMでは、照明と検出とが互いに直交している必要があるので、顕微鏡ステージの表面に対して傾斜した対象物平面上に光学システムがフォーカシングされる。
【0011】
さらに、この光学イメージング装置は、マイクロタイタキャビティを複数含んでいるウェルプレートの完全なマイクロタイタキャビティをイメージングするのに特に適している。したがって、第1のステップにおいて、より低い倍率に基づいて画像取得が行われる第2の動作モードを適用することによって、特定のキャビティ全体がイメージングされてよい。その後、第2のステップにおいて、より高い倍率に基づいている第1の動作モードを適用することによって、このように見つけ出されたキャビティが詳細に調査されてよい。
【0012】
第1の動作モードと第2の動作モードとの切り替えは、第2の動作モードに関連付けられた第2の光学サブシステムの一部である光学モジュールを光路内に選択的に挿入することによって実現される。換言すれば、光学モジュールが光路内に挿入されると、第2の動作モードが選択される。これとは対照的に、光学モジュールが光路から引っ込められると、第1の動作モードが選択される。したがって、光学モジュールをコントロールすることによって、ユーザは、これら2つのモード間の切り替えを容易に行うことができる。
【0013】
第2の動作モードにおいて大きな対象物領域を生成するために、光学モジュールは正の屈折力を有するレンズ要素を含んでいる。この正のレンズ要素は、光学モジュールが光路内に挿入された際に、光学システムの他のレンズ要素よりも対物レンズの射出瞳に近い位置にある。光学モジュールの正のレンズ要素を対物レンズの射出瞳の近くに配置することによって、検出光の画角が適度な場所、すなわち検出光の画角が大きすぎない場所で、検出光が正のレンズ要素によって集光されることが保証される。したがって、光学要素のサイズを制限することができ、光学イメージング装置をコンパクトにすることができる。特に、極めて高価な対物レンズのような大きな対象物領域を実現するために、特に長い焦点距離を伴う、高い開口数の対物レンズを提供する必要はない。これとは対照的に、特許請求の範囲に記載された光学イメージング装置によって、高い開口数を有し、かつ無限光学管長に補正された対物レンズを使用することが可能になる。ここでは、対物レンズは、コンパクトさおよびコストの点で有利である適度な焦点距離を有することができる。
【0014】
イメージング装置は、光学モジュールを光路内に挿入するため、および光路から撤去するための適切な機構を含んでいてよい。例えば、モジュールを旋回させるために、電動式アクチュエータが提供されてよい。
【0015】
好ましくは、光学モジュールはさらに光偏向器を含んでおり、これは、上記の光路内に挿入されると、上記の光路から光側路を分岐させるように構成されている。上記の第2の画像は上記の光側路において形成されている。上述した光側路は、第2の動作モードにおいて、ユーザが明瞭な対象物、例えばウェルプレートの特定のマイクロタイタキャビティまたは比較的大きな対象物の特定の関心領域(ROI)を見つけ出すことを可能にする概観画像を生成するための別個の光路として用いられてよい。これとは対照的に、光路は、第1の動作モードにおいて特定された対象物の拡大画像を生成するために、第1の動作モードにおいて有効に使用されてよい。
【0016】
好ましい実施形態では、第2の光学サブシステムは、光学モジュールに含まれている、上記の正の屈折力を有するレンズ要素によって形成される、第1の最も対象物側のレンズ要素を有するケプラー式望遠鏡システムを含んでいる。したがって、光学モジュールを光路内に挿入することによって、概観画像を形成するために使用することができる望遠鏡システムが生成される。特に、光学モジュールを光路内に挿入する際に、第1の光学サブシステムは変更されないままである。第1の光学サブシステムは、高い質のイメージングを実現するために、より高い倍率で動作するので、第2の光学サブシステムよりも、あらゆる調整の影響を受ける。したがって、動作状態間の切り替えの際に、第1の光学サブシステムを実質的に変更しないでおくのは有利である。したがって、光イメージング装置は、第2の光学サブシステムの可動光学モジュールを切り替えに使用する。
【0017】
ケプラー式望遠鏡システムは、射出瞳の像を形成するように構成されていてよい。実際の中間瞳を有するアフォーカル光学システムであるこのような望遠鏡を使用することによって、付加的な光学部品を顕微鏡内に統合するための多数の選択肢が提供される。例えば、落射蛍光照明を実装するために使用される部品が組み込まれてよい。さらに、コントラスト法を実現するために位相フィルタが組み込まれてよい。
【0018】
特に、第2の光学サブシステムは、射出瞳の上記の像の位置に配置された開口絞りを含んでいてよく、上記の像は実像として形成されている。
【0019】
ケプラー式望遠鏡システムは、検出光の複数の光束をコリメートするように構成されている正の屈折力を有する第2のレンズ要素を含んでいてよく、各光束は、そこから対物レンズが検出光を集光する対象物領域の単一の点に関連付けられている。特定の実施形態において、フィールドレンズが、望遠鏡システムの第1の正のレンズ要素と第2の正のレンズ要素との間に付加的に提供されてよい。
【0020】
上述の2つの正のレンズ要素で構成されるケプラー式望遠鏡システムは、望遠鏡システムのアフォーカル係数によって与えられる係数によって対物レンズの焦点距離をスケーリングするために機能する。さらに、ケプラー式望遠鏡システムは、対物レンズの射出瞳の実像を形成するために機能する。対物レンズにおいてケラレが発生することを回避できないことが予測され得るので、開口絞りは、イメージングされる射出瞳を絞り込むために使用される。したがって開口絞りは、第2の光学サブシステム内の光路のある種の均質化を実現するために用いられる。
【0021】
特に、ケプラー式望遠鏡システムは、基準焦点距離を有するチューブレンズに関連する、対物レンズの通常の使用に関する倍率縮小システムとみなされるべきである。したがって、対物レンズの倍率は、チューブレンズの公称焦点距離に関連していなければならない。チューブレンズの焦点距離を200mm、対物レンズの焦点距離を10mmとした例を仮定すると、対物レンズの倍率は20倍となる。さらに、ケプラー式望遠鏡システムのアフォーカル係数が4であると仮定すると、対物レンズの倍率は、20倍から20/4倍、すなわち5倍に効果的に減少される。
【0022】
第2の光学サブシステムは、上記の像平面に配置されているイメージセンサを含んでいてよい。イメージセンサは、例えば、CCDカメラまたはCMOSカメラによって形成されていてよい。
【0023】
好ましくは、第2の光学サブシステムのレンズ要素のうちの少なくとも1つのレンズ要素は、光学モジュールに含まれている、上記の正の屈折力を有するレンズ要素の残余収差を補正するように構成されている。この実施形態によれば、ケプラー式望遠鏡システム内に完全に補正された中間像を提供することなく、望遠鏡システムの第1の正のレンズ要素、すなわち、光学モジュールに含まれている正のレンズ要素が、そのサイズを小さくするために可能な限り単純に設計され、収差の補正は、第2の光学サブシステムの残りの部分、例えば、ケプラー式望遠鏡システムの第2の正レンズ要素および/またはチューブレンズによって実現される。
【0024】
チューブレンズは、低倍率の対物レンズと同様の光学システムによって形成されていてよい。好ましくは、第2の倍率は、1.0~2.5の範囲にある。さらに、第2の倍率は、対象物側の屈折率と像側の屈折率との比に実質的に等しくなるように決定されていてよい。アンダーサンプリングの場合、すなわち、第2の光学サブシステムに関連付けられた拡大光路の像側開口が完全にサンプリングされていない場合は、屈折率比の一致は、それほど正確である必要はない。この場合、収差は適度になり、例えば、第2の光学サブシステムのイメージセンサを光軸に沿ってシフトさせることによって、像側のフォーカシングが提供されてよい。対象物側のフォーカシングではなく像側のフォーカシングを適用することによって、倒立顕微鏡システムにおいて作動距離が長い液浸対物レンズをフォーカシングする際に生じる問題を回避することができる。したがって、好ましい実施形態では、第2の光学サブシステムは、対象物上に像側のフォーカシングを行うように構成されている。
【0025】
第2の光学サブシステムはさらに、像側のフォーカシングによって補償される総計5mmの対象物側のデフォーカシングが、第2の光学サブシステムに含まれるイメージセンサの1つのピクセルが受光する所定の積分光強度を生じさせるように、像側のフォーカシングを行うように構成されていてよく、上記の所定の積分光強度は、第2の光学サブシステムの公称焦点状態において、すなわち、対象物側または像側のデフォーカシングがない状態において、上記のピクセルが受光する基準積分光強度の50%以上である。これによって、あらゆるアンダーサンプリングを考慮して、効率的な像側のデフォーカシングを実現することができる。
【0026】
好ましくは、対物レンズは、液浸対物レンズによって形成される。上述したように、この光学イメージング装置によって、対物レンズのあらゆる変更を回避することができ、これは、液浸ベースのシステムを使用する場合に特に有利である。
【0027】
対物レンズは両方の動作状態において使用されるので、好ましい実施形態によれば、液浸媒体を対物レンズに供給するために、ディスペンサが提供されてよい。
【0028】
好ましくは、光学イメージング装置は、次の条件のうちの少なくとも1つを満たす。
(1)f≦30mm
(2)NA≧0.8
(3)FAA≧1mm
(4)d≦30mm
(5)D>4.5mm
ここで、
fは、対物レンズの焦点距離を示し、
NAは、第2の動作モードにおける対物レンズの完全開口数を示し、
FAAは、自由作動距離を示し、
dは、上記の正の屈折力を有するレンズ要素から対物レンズの像側端部までの距離を示し、
Dは、対物レンズが検出光を集光する対象物領域の直径を示す。
【0029】
別の態様によれば、上述のような光学イメージング装置を含んでいる顕微鏡が提供される。本発明は、任意のタイプの顕微鏡、例えば、広視野顕微鏡、共焦点顕微鏡、マルチフォトン顕微鏡および特にOPM構成またはSCAPE構成におけるライトシート顕微鏡に適用されてよい。
【0030】
別の態様に従って、対象物をイメージングする方法が提供され、この方法は、次のステップ、すなわち、対象物からの検出光を集光し、対物レンズを用いて検出光を光路内にフォーカシングするステップと、対物レンズと相互作用する複数のレンズ要素を含んでいる光学システムによって、対象物を第1の動作モードと第2の動作モードとにおいて選択的にイメージングするステップと、を含んでいる。第1の動作モードでは、対象物の第1の画像が第1の倍率で形成される。第2の動作モードでは、対象物の第2の画像が第2の倍率で形成される。第2の倍率は第1の倍率よりも低い。第2の動作モードを選択するために、光学モジュールが光路内に挿入される。光学モジュールは正の屈折力を有するレンズ要素を含んでおり、この正の屈折力を有するレンズ要素は、光路内に挿入された際に、光学システムの他のレンズ要素よりも、対物レンズの射出瞳に近づくことによって、第1の倍率よりも第2の倍率を低くする。
【0031】
以降で、図面を参照しながら特定の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施形態による顕微鏡を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、対象物104の光学画像を形成するように構成されている光学イメージング装置102を含んでいる顕微鏡100を示している。
図1は、顕微鏡100の一部である光学イメージング装置102の動作原理を理解するのに役立ち得る、顕微鏡100のこれらの特徴を説明するためだけに用いられるということに留意されたい。言うまでもなく、顕微鏡100は、
図1には示されていない付加的な部品を含んでいてよい。
【0034】
イメージング装置102は、
図1には示されていない試料キャリア上に配置されている対象物104に面した対物レンズ106を含んでいる。さらに、イメージング装置102は、以降でより詳細に説明する第1の光学サブシステム110と第2の光学サブシステム112とを含んでいる光学システム108を含んでいる。
【0035】
対物レンズ106は、対象物104からの検出光を集光し、検出光を光路114内にフォーカシングにするように機能する。特に、対物レンズ106は、対物レンズ106の対象物側の焦点面と一致する対象物平面に位置する対象物領域116からの検出光を捕捉する。したがって、対物レンズ106は、対象物領域116の光学画像を形成するために光学システム108と相互作用する。
【0036】
対物レンズ106は、照明および検出の両方に対して一般的に使用されるレンズであってよい。したがって顕微鏡100は、
図1には示されていない付加的な光学部品を含んでいてよく、これらの部品は、対象物104を照明するための光を対物レンズ106に供給するように構成されている。択一的または付加的に、顕微鏡100は、対象物104を照明するための別個の光学アレンジメントを含んでいてよい。
【0037】
光学イメージング装置102は、2つの異なる動作モード、すなわち第1の光学サブシステム110に関連付けられた第1のモードと、第2の光学サブシステム112に関連付けられた第2のモードと、を提供する。特に、第1の光学サブシステム110は、第1の動作モードにおいて第1の倍率で対象物104の第1の光学画像を形成するために使用される。同様に、第2の光学サブシステム112は、第2の動作モードにおいて、第1の倍率よりも低い第2の倍率で対象物104の第2の光学画像を形成するために使用される。異なる倍率を有する別個の動作モードを提供することで、ユーザは、例えば、その後でイメージングされる対象物104内に適切なROIを見つけ出すために、第1のステップにおいて、(上述した第2の画像に対応する)低倍率の概観画像を取得することができる。ROIが見つけ出された後、第2のステップにおいて、(上述の第1の画像に対応する)ROIの高倍率の画像が取得される。換言すれば、第2の動作モードにおいてイメージングされる対象物領域116は、第1の動作モードにおけるそれよりも大きい。したがって、どの画像取得が行われるべきなのかに基づいて倍率を切り替える際に、ユーザが対物レンズ106を変更する必要はない。
【0038】
図1に示されている特定の実施形態によれば、第1の動作モードに関連付けられた第1の光学サブシステム110は、広視野顕微鏡法において一般的に使用されるようなレンズ要素によって形成されている。これらのレンズ要素は、例えば、対物レンズ106によって生成された像を像平面122上にフォーカシングするチューブレンズ120を含んでいてよい。第1の光学サブシステム110は、
図1に、簡略化された形態で示されており、第1の光学サブシステム110は、
図1に示されていない付加的な光学部品を含んでいてよい。例えば、像平面122において対物レンズ106によって生成された中間像をイメージセンサに光学的に搬送するために、さらなるレンズ要素が提供されてよい。択一的に、イメージセンサが、像平面122に直接的に提供されていてよい。いずれにせよ、対象物104を光学的にイメージングするために対物レンズ106と協働するのに適した任意の他の光学構成を適用できることに留意されたい。また、像平面122をスキャンするために、スキャニングアレンジメント(例えば共焦点スキャナまたはマルチフォトンスキャニングアレンジメント)が使用可能である。
【0039】
第2の動作モードに関連付けられた第2の光学サブシステム112は、光路114内に選択的に挿入可能な光学モジュール118を含んでいる。この目的のために、光学モジュール118は、旋回可能な光学部品によって形成されていてよく、顕微鏡100は、第1の動作モードと第2の動作モードとを切り替えるために、光学モジュール118を光路114内へ旋回させるように、かつ光学モジュール118を光路114から引っ込めるように構成されている、適切な機構を含んでいてよい。
【0040】
光学モジュール118は、正の屈折力を有するレンズ要素126を含んでいる。さらに光学モジュール118は、例えばミラーによって形成された光偏向器128を含んでいてよい。光学モジュール118内に組み込まれている場合、レンズ要素126と光偏向器128とを、第1の動作モードと第2の動作モードとを選択的に切り替えるために光学モジュール118が相応に動かされる際に、一体的に光路114内に旋回させることが可能であり、かつ光路114から引っ込めることが可能である。
【0041】
第1の動作モードでは、光学モジュール118は光路114から引っ込められている。したがって、第2の光学サブシステム112は非アクティブ状態に切り替えられており、第1の動作モードでの画像取得のために第1の光学サブシステム110が使用される。この目的のために、第1の光学サブシステム110は、第1の倍率に従って第1の画像を形成するために対物レンズ106と相互作用する。特に、
図1の構成によれば、第1の画像が像平面122内に生成される。上述したように、第1の画像は、選択されたROIの高倍率の拡大画像であってよい。
【0042】
第2の動作モードでは、光学モジュール118は光路内114内に挿入されている。したがって光偏向器128が、光路114に沿って伝搬する検出光が第1の光学サブシステム110に伝送されるのを阻止し、第1の光学サブシステム110は非アクティブ状態に切り替えられている。逆に、第2の光学サブシステム112は、第2の光学動作においてアクティブ状態に切り替えられており、ここでは第2の光学サブシステム112は対物レンズ106と相互作用して、第2の倍率に従って第2の光学画像を生成する。上述したように、第2の倍率は、第1の動作モードにおいて適用される第1の倍率より低く、第2の画像は、適切なROIを見つけ出すために使用される低倍率の概観画像であってよい。
【0043】
図1において見て取れるように、光学モジュール118が光路114内に挿入されている場合には、光学モジュール118と一体化されたレンズ要素126は、光学システム108に含まれているいずれの他のレンズ要素よりも、対物レンズ106に近い。上述したように、光学システム108は、第1の光学サブシステム110と第2の光学サブシステム112との両方を含んでおり、これらは第1の動作モードおよび第2の動作モードにそれぞれ関連付けられている。特に、レンズ要素126は、対物レンズ106の射出瞳130のできるだけ近くに位置付けられている。
図1に示されている特定の実施形態では、射出瞳130は、対物レンズ106のハウジング132内に配置されている。したがって光学モジュール118のレンズ要素126は、場合によってはハウジング132の端面134とレンズ要素126との間の距離を変化させる、対象物104に対する対物レンズ106のあらゆるフォーカシング運動を考慮して、ハウジング132の端面134にできるだけ近くに位置付けられている。
【0044】
正のレンズ要素126が対物レンズ106の射出瞳130から短い軸線方向距離に位置付けされているので、検出光の大きな画角によって生じる光束の横方向広がりが比較的小さい場所で、検出光がレンズ要素126によって集光される。したがって、レンズ要素126を、相応に小さくすることができる。特に、焦点距離が長い、高い開口数の対物レンズを使用する必要はない。このような長い焦点距離は、顕微鏡対物レンズを極めて高価なものにしてしまう。
【0045】
図1において見て取れるように、光偏向器128は、対物レンズ106の射出瞳130から光偏向器128へと通じる光路114から光側路136を分岐させる。光側路136は、適切なROIが見つけ出される低倍率の概観画像を生成するために第2の動作モードにおいて使用される概観光路とみなされてよい。これとは対照的に、光側路136の分岐のない光路114全体は、選択されたROIの高倍率の拡大画像を生成するために第1の動作モードで使用される主要光路とみなされてよい。
【0046】
図1に示された特定の実施形態では、第2の光学サブシステム112は、ケプラー式望遠鏡システム138を含んでおり、このケプラー式望遠鏡システム138は、それぞれが正の屈折力を有する2つのレンズ要素を含んでいる。これら2つのレンズ要素のうちの第1のレンズ要素は、光学モジュール118の一部であるレンズ要素126によって形成されている。顕微鏡システム138の第2のレンズ要素は、光側路136に沿ってレンズ要素126の下流に配置されている要素140によって形成されている。換言すれば、光学モジュール118が光路114内に挿入されている場合、レンズ要素126とレンズ要素140とが組み合わされて、ケプラー式望遠鏡システム138が形成され、これは、第2の動作モードにおいてアクティブ状態に切り替えられている。
【0047】
ケプラー式望遠鏡システム138は、光側路136内で対物レンズ106の射出瞳130の実像142を形成するように構成されている。特に、射出瞳130の実像142は、ケプラー式望遠鏡システム138の第2のレンズ要素140の下流で生成される。開口絞り144が、射出瞳130の実像142の位置に提供されてよい。さらに、光側路136に沿って、開口絞り144の下流に、第2の光学サブシステム112が、チューブレンズ146およびイメージセンサ148を含んでいてよい。チューブレンズ146は、光側路136を伝搬する検出光をイメージセンサ148上にフォーカシングするように構成されており、これによって第2の倍率に基づいて第2の画像が形成される。
【0048】
ケプラー式望遠鏡システム138の第2の光学要素140は、自身を通過する検出光をコリメートし、検出光の各光束は、対象物領域116の単一の点に関連付けられている。これに関連して、ケプラー式望遠鏡システム138が、
図1に示されていないフィールドレンズをさらに含んでいてよいことに留意されたい。このようなフィールドレンズは、2つの正のレンズ要素126,140の間に配置されている。
【0049】
上述の開口絞り144は、対物レンズ106のイメージングされた射出瞳130を絞り込むために使用されてよい。したがって、対物レンズにおいて大きな画角および高い開口数で生じるケラレまたは収差によって生じる弊害が、光側路136において生じることを阻止することができる。
【0050】
図1に示された実施形態では、ケプラー式望遠鏡システム138の第2の正のレンズ要素および/またはチューブレンズ146は、光学モジュール118に組み込まれ、ケプラー式望遠鏡システム138の第1のレンズを形成する正のレンズ要素126よりも、収差が補正されてよい。したがって、補正されたレンズ要素138,146が、光学モジュール118の正のレンズ要素126によって生じる残存収差を補正するために使用される。
【0051】
図1に示されている構成は、ケプラー式望遠鏡システム138とチューブレンズ146との間の付加的な無限光路を提供しており、上記の付加的な無限光路は、射出瞳130の実像142の形態の実際の中間瞳を含んでいる。付加的な無限光路は、付加的な光学部品を顕微鏡100に組み込むために使用されてよく、これは、例えば、落射蛍光照明、位相フィルタ、位相変調器のための部品などである。
【0052】
これに関連して、対物レンズ106から第1の光学サブシステム110に至る光路114が同様に無限光路を形成していることに留意されたい。しかし、この無限光路は、(少なくとも部分的に)第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方に関連付けられている。したがって、第2の動作モードを実施するために専用に決定された光学部品を組み込むためには利用されない。
【0053】
一例として、対物レンズ106は、上述した条件(1)~(5)において指定されたパラメータによって特徴付けられていてよい。
図1を参照すると、条件(3)の作動距離FAAは、対物レンズ106の対象物側前端から対象物領域116までの距離を示し、条件(4)の距離dは、レンズ要素126から対物レンズ106の端面135までの距離を示し、条件(5)の直径Dは、光軸方向に対して垂直な対象物領域116の直径を示している。直径Dが、第2の動作モードにおいてイメージングされる対象物領域116を指すことに留意されたい。上記から理解できるように、第2の動作モードに関連付けられた対象物領域116は、第1の動作モードに関連付けられた対象物領域より大きい。
【0054】
本実施形態によれば、第2の動作モードにおいて適用される第2の倍率は、1.0~2.5の範囲にあってよい。上記で説明した理由から、対象物側のフォーカシングよりも像側のフォーカシングが適用されてよい。この目的のために、イメージセンサ148は、フォーカシングを実現するために光軸方向に沿ってシフトされてよい。像側のフォーカシングの択一的な実現では、イメージセンサ148は固定されて保持され、チューブレンズ146は光軸に沿ってシフトされる。
【0055】
対物レンズ106が液浸対物レンズによって形成されている場合には、像側のフォーカシングの適用が特に有利である。したがって、対象物側のフォーカシングではなく像側のフォーカシングを利用する場合には、対象物104と対物レンズ106との間での軸線方向の移動を回避することができる。したがって、対象物104と対物レンズ106との間に配置された液浸媒体150は、フォーカシングの影響を受けないままである。液浸対物レンズを使用する場合、イメージング装置102は、対象物104と対物レンズ106の前端との間の空間内に液浸媒体150を供給するディスペンサ152を含んでいてよい。
【0056】
本発明が、上述した実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、対物レンズの射出瞳の近くに配置された正のレンズ要素を含む光学モジュールを挿入することによって切り替え可能な2つの異なる倍率での画像取得を実現するために、任意のタイプの顕微鏡が使用されてよい。例えば、OPM構成またはSCAPE構成などにおけるライトシート顕微鏡が使用されてよい。
【0057】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0058】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0060】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0061】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0062】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0063】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0064】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0065】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0066】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0067】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0069】
100 顕微鏡
102 光学イメージング装置
104 対象物
106 対物レンズ
108 光学システム
110 第1の光学サブシステム
112 第2の光学サブシステム
114 光路
116 対象物領域
118 光学モジュール
120 チューブレンズ
122 像平面
126 正の屈折力を有するレンズ要素
128 光偏向器
130 射出瞳
132 ハウジング
134 端面
136 光側路
138 ケプラー式望遠鏡システム
140 レンズ要素
142 射出瞳の実像
144 開口絞り
146 チューブレンズ
148 イメージセンサ
150 液浸媒体
152 ディスペンサ