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特許7362915ワークピース部分の角継手のレーザ溶接方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ワークピース部分の角継手のレーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/242 20140101AFI20231010BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231010BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20231010BHJP
【FI】
B23K26/242
B23K26/064 K
B23K26/21 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022522902
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2020079269
(87)【国際公開番号】W WO2021074419
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】102019215968.0
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シャイブレ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ゼーバッハ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-518566(JP,A)
【文献】特表2018-527184(JP,A)
【文献】特表2015-500571(JP,A)
【文献】特開2013-180295(JP,A)
【文献】特表2016-503348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0185960(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01037290(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0258009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0254501(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334021(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010003750(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記コアファイバ(25)の前記レーザ電力出力の前記第1の部分LK及び前記リングファイバ(26)の前記レーザ電力出力の前記第2の部分LRは、
0.15≦LK/(LK+LR)≦0.50であり、
好ましくは0.25≦LK/(LK+LR)≦0.45であり、
特に好ましくはLK/(LK+LR)=0.35
であるように選択される、方法。
【請求項2】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記レーザ溶接は、進行速度vで行われ、
v≧7m/分であり、
特にv≧10m/分であり、
好ましくはv≧20m/分であり、
特に好ましくはv≧30m/分である、方法。
【請求項3】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記多層クラッドファイバ(18)の前記第2の端部(20b)は、拡大係数VFによって拡大されて前記ワークピース(1、1b)上で再現され、VF>1.0であり、
特にVF≧1.5であり、
好ましくはVF≧2.0である、方法。
【請求項4】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、前記コアファイバ(25)の直径DK及び前記リングファイバ(26)の直径DRについて、以下:
2.5≦DR/DK≦6、
好ましくは3≦DR/DK≦5
が該当するように選択される、方法。
【請求項5】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
ビーム伝播方向(12)に焦点を有する前記溶接レーザビーム(11)は、前記ワークピース(1、1b)の表面に関して最大高さオフセットMHOを有し、
|MHO|≦1.5mmであり、
好ましくは|MHO|≦1.0mmであり、
特に好ましくは|MHO|≦0.5mmである、方法。
【請求項6】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記溶接レーザビーム(11)は、前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))の当接エリア(10)に関して前記ワークピース(1、1b)上に最大側方オフセットMLOを有し、
|MLO|≦0.2mmであり、
好ましくは|MLO|≦0.1mmである、方法。
【請求項7】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))は、前記レーザ溶接中、それらの表面上で互いに把持され、前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))間に最大ギャップ幅MSが維持され、
MS≦0.1mmである、方法。
【請求項8】
ワークピース(1、1b)のレーザ溶接の方法であって、
突付け継ぎ溶接(8、8b)が、溶接レーザビーム(11)によって前記ワークピース(1、1b)の2つのワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )の角継手(2a、2b)における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続が前記ワークピース部分(3a、3b、3a (I) 、3b (I) )間に作成され、
前記溶接レーザビーム(11)を生成するために、出力レーザビーム(19)が多層クラッドファイバ(18)、特に2in1ファイバの第1の端部(20a)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)は、少なくともコアファイバ(25)と、前記コアファイバ(25)を囲むリングファイバ(26)とを備え、
前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第1の部分LKが前記コアファイバ(25)に供給され、前記出力レーザビーム(19)のレーザ電力出力の第2の部分LRが前記リングファイバ(26)に供給され、
前記多層クラッドファイバ(18)の第2の端部(20b)が、前記ワークピース(1、1b)上で再現され、
前記ワークピース(1、1b)は深溶け込み溶接によってレーザ溶接され、
前記溶接レーザビーム(11)のビーム伝播方向(12)における前記角継手(2a、2b)における前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))は、互いに一直線上に配置又は段差高さSHを有する段差(40)がある状態で配置され、
SH≦0.3mmであり、
好ましくはSH≦0.2mmであり、
特に好ましくはSH≦0.1mmである、方法。
【請求項9】
前記出力レーザビーム(19)は、固体状態レーザ、特にディスクレーザによって生成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))は電池筐体の部分であり、
特に前記ワークピース部分(3a、3b、3a(I)、3b(I))の1つは、前記電池筐体を閉じるキャップである、
前記電池筐体を製造するための請求項1~のいずれか一項に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピース部分の角継手のレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピース部分を接続するレーザ溶接方法が従来技術から既知である。
【0003】
(特許文献1)には、ビームプロファイルを有するレーザビームを生成するレーザ源を備えた、電池等の電子装置の生産で使用されるレーザ溶接システムが開示されている。ビームプロファイルを変更するために、レーザ溶接システムは、ビーム整形手段、例えばレーザビームを回折させる光学要素と、レーザビームの少なくとも一部をシールドできるようにするシールド構成要素とを備える。標的とするビーム整形は、溶接に必要とされるレーザビームの電力、及び望ましくない悪影響を低下させることを意図する。
【0004】
(特許文献2)には、レーザビームのプロファイルを変更する方法が開示されている。レーザビームは、多層クラッドファイバの一方のファイバ一端部に結合され、多層クラッドファイバのもう一方の端部から分離される。このプロセスでは、入射レーザビームは少なくとも、多層クラッドファイバの内側ファイバコア及び/又は多疎クラッドファイバの外側リングコアに結合される。これは、結合される前のレーザビームと比較して、分離された後のレーザビームのプロファイルを変更させる。
【0005】
ワークピースの角継手を一緒に溶接するのに従来使用されてきた方法により、ワークピースの角継手を一緒に溶接する場合、例えば孔の形態の不安定性がワークピースに生じ得、溶融材料のスパッタを排出し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2017/0334021 A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2010 003 750 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電池筐体に特に有価値であるように、溶融金属のスパッタを生み出すことなくワークピース部分の角継手を特に安定して形成するレーザ溶接方法を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ワークピースのレーザ溶接の方法によって達成され、この方法では、突付け継ぎ溶接が、溶接レーザビームによってワークピースの2つのワークピース部分の角継手における溶接により作成され、その結果、アルミニウム接続がワークピース部分間に作成され、溶接レーザビームを生成するために、出力レーザビームが多層クラッドファイバ、特に2in1ファイバの第1の端部に供給され、多層クラッドファイバは、少なくともコアファイバと、コアファイバを囲むリングファイバとを備え、出力レーザビームのレーザ電力出力の第1の部分LKがコアファイバに供給され、出力レーザビームのレーザ電力出力の第2の部分LRがリングファイバに供給され、多層クラッドファイバの第2の端部が、ワークピース上で再現され、ワークピースは深溶け込み溶接によってレーザ溶接される。
【0009】
本発明による溶接方法、特にワークピースジオメトリ、ワークピース材料、レーザビームにおけるビーム整形、及び手順の本発明による組合せは、スパッタの低減と組み合わせた特に安定した溶接接続を生じさせる。突付け継ぎ溶接の形態の溶接は、小さな切欠き効果及び溶接を通る力の流れが妨げられないことによって区別される。これにより、突付け継ぎ溶接の安定性は高くなる。材料としてのアルミニウムは、高い強度及び耐久性と共に比較的軽い重量を有し、したがってその結果として、溶接された接続の安定性も高くなる。深溶け込み溶接は、特に深い溶接を得る。多層クラッドファイバから出るレーザビームは、コアファイバによって発せられるコアビームと、リングファイバによって発せられるリングビームとを有するビーム断面を有する。これは、アルミニウム材料の突付け継ぎ溶接を深溶け込み溶接を行うとき、スパッタの形成を最小に抑える。更に、平滑な溶接上部ビード及び高い機密性を有する溶接が作成され、これは電池筐体の製造によく適していることが証明されている。
【0010】
角継手において、特に2つのワークピース部分は,ある角度で、好ましくは直角で、又は75°~105°という概ね直角でそれらの端部によって互いに対して圧接される。角継手に突付け継ぎ溶接がある場合、ワークピース部分は特に、第1のワークピース部分の長軸が第2のワークピース部分の一端部を通り、突付け継ぎ溶接が第1のワークピース部分の全幅にわたって横方向に、特に長軸に垂直に延びるように配置される。
【0011】
ワークピース部分の当接エリアは特に、溶接レーザビームのビーム方向(ビーム伝播方向)に平行又は略平行する。特に、ワークピース部分の当接エリアは、レーザビームのビーム方向に関して最大角度15°~-15°、好ましくは5°~-5°に位置合わせされる。典型的には、ワークピース部分の1つは、当接エリアから離れるように垂直に延び、ワークピース部分の1つは当接エリアに平行に延びる。ワークピースへの溶接レーザビームの入口側において、ワークピース部分は典型的にはビーム方向と一直線上に並ぶ。ワークピース部分は実質的にはアルミニウムからなり、例えば電気絶縁目的でプラスチック被覆を備え得る。
【0012】
本発明による溶接方法の場合、深溶け込み溶接モードでは、比較的高い電力出力密度を有するユーザが使用され、それにより、溶接中、レーザは蒸気を生成する。蒸気は、溶接中に生じる溶融物を変位させる。これは、蒸気が充填された深い穴、即ち蒸気毛管を形成する。溶融した金属は蒸気毛管の周囲を流れ、後側で固化する。
【0013】
レーザビームの生成に多層クラッドファイバを用いないレーザ溶接の過程では、多くの場合、過度の圧力がワークピースの蒸気毛管に蓄積し、それにより蒸気毛管の隆起が生じる。これらの隆起はサイズを増大させ、爆発的に開き、溶融物はスパッタの形態で放出される。レーザビームに面する蒸気毛管の側での溶融金属の変動も多くの場合、溶融金属のスパッタを生じさせる。溶融金属が流れるのを妨げ、ひいてはスパッタの発生を助長する鋭い縁部が、蒸気毛管内に形成され得る。隆起は更に、ワークピースに孔を生じさせ得る。
【0014】
ビーム整形を目的として本発明により使用される多層クラッドファイバは少なくとも、コアファイバ(固体プロファイルファイバ)と、コアファイバを囲むリングファイバ(中空プロファイルファイバ)とを有する。リングファイバは特に、溝を有する周縁が閉じられたファイバの形態である。コアファイバ及びリングファイバは、任意の所望の断面プロファイル、例えば正方形の断面プロファイルを有し得る。コアファイバ及びリングファイバは好ましくは、円形又は円形リングの形状の断面を有する。多層クラッドファイバは好ましくは、コアファイバ及びリングファイバを有する2in1ファイバの形態である。多層クラッドファイバから出るレーザビームは、コアファイバによって発せられるコアビームと、リングファイバから発せられるリングビームとを有するビーム断面を有する。コアビーム及びリングビームの強度は、供給される出力レーザビームのレーザ電力出力の第1の部分LK及び第2の部分LRによってそれぞれ決まる。
【0015】
溶接レーザビームのビームプロファイルは、蒸気毛管の現れ及び溶接プールダイナミクスが影響を受けるよう、決定されたコア強度との決定されたリング強度の相互作用がワークピースへのエネルギーの結合を変更するように、出力レーザビームと比較して変更される。このようにして、非常に高い進行率及び溶接上部ビード品質を有するビーム整形、特に低スパッタ深溶け込み溶接を用いた溶接が、熱伝導溶接の場合のように可能になる。
【0016】
リングビームは特に、レーザビームによって照射されるワークピースの側での蒸気毛管の開口部が増大され、蒸気毛管からのガスの出現が促進されるという効果を有し得る。したがって、リング強度は蒸気毛管の上部を更に開き、その結果、金属蒸気は、妨げられることなく又は略妨げられることなく流れることができる。これは、蒸気毛管内の隆起の形成及びスパッタの生成を大方抑制する。蒸気毛管内のガス圧及び溶接プールへの対応する作用は低下するため、スパッタの形成は最小に抑えられる。リングビームは、上からのパルスを溶接プールに更に伝達し(レーザビームの伝播方向に)、パルスの方向は、蒸気毛管の後側の溶融材料の加速と逆行し、その結果としてまた、スパッタの形成が低減する。スパッタの生成に有利に働く変動は、リングビームによって抑制される。溶接における熱伝導は、溶接を更に膨張させる。平滑な溶接上部ビード(熱伝導溶接と同等)及び高機密性を有する溶接が作成される。
【0017】
高速記録により、本発明者らは、本発明において、従来技術(本発明によるビーム整形を用いない)と比較して最大で90%のスパッタの形成低減を達成することが可能なことを観測した。本発明者らは、従来技術(概ね4m/分)よりも7.5倍(概ね30m/分)高速の進行速度でのスパッタ形成のこの大きな低減を更に観測した。本発明者らは、本発明による技術の使用が、他の溶接方法を使用して溶接された溶接の場合よりもはるかに平滑な溶接上部ビードを達成することができることも確立した。
【0018】
本発明による方法は、角継手における突付け継ぎ溶接の使用、多層クラッドファイバとのアルミニウム及び深溶け込み溶接の使用により、短絡のリスクが低く、高い機密性を有する電池筐体の安定した角継手の生成に適する。
【0019】
発明の好ましい実施形態
本発明による方法の好ましい実施形態では、コアファイバのレーザ電力出力の第1の部分LK及びリングファイバのレーザ電力出力の第2の部分LRは、0.15≦LK/(LK+LR)≦0.50であり、好ましくは0.25≦LK/(LK+LR)≦0.45であり、特に好ましくはLK/(LK+LR)=0.35であるように選択される。
【0020】
コアファイバ及びリングファイバのレーザ電力出力のこれらの各割合は、スパッタの回避と組み合わせて大きな溶け込み深さで溶接プロセスを行わせ、電池筐体の製造に特に適することが証明されている。コアファイバのレーザ電力出力の割合のほうが低い場合、リングファイバのレーザ電力出力の割合が優勢となり、その結果、レーザ溶接プロセスはここでも、均質ファイバを使用したレーザ溶接の場合と同等である。これは、先に指定したコアファイバのレーザ電力出力の割合のほうが大きい場合にも当てはまり、コアファイバのレーザ電力出力の有合がリングファイバの割合と比較して優勢であることが該当する。
【0021】
レーザ溶接が進行速度vで行われ、v≧7m/分であり、特にv≧10m/分であり、好ましくはv≧20m/分であり、特に好ましくはv≧30m/分である一実施形態が好ましい。本発明では、これらの進行速度は、継手における典型的なワークピース厚(ビーム方向においてより小さいワークピース部分の)0.5mm~2mmと共に典型的なレーザ電力出力2~6kW、波長1030nmの場合、低スパッタで容易に実現することができる。
【0022】
更に好ましいのは、多層クラッドファイバの第2の端部は、拡大係数VFによって拡大されてワークピース上で再現され、VF>1.0であり、特にVF≧1.5であり、好ましくはVF≧2.0である一実施形態である。そのような拡大を用いると、比較的小さな発散角のレーザビームを得ることが可能であり、ワークピースにおけるレーザビームの反射が最小化される。小さな発散角により、絶縁材料の燃焼をよりよく回避することが可能になる。溶接プロセスは、ワークピースの表面からの溶接レーザビームの焦点の距離に関してより大きな許容差でもって実行することができる。
【0023】
同様に好ましいのは、出力レーザビームが固体状態レーザ、特にディスクレーザによって生成される一実施形態である。固体状態レーザは費用効率的であり、実用において本発明にとって好結果であることが証明されている。ディスクレーザは、動作中、レーザ結晶を冷却するのに可能な良好な方法によって区別され、これはレーザビームの合焦可能性にプラスの効果を有する。
【0024】
また好ましいのは、多層クラッドファイバが、コアファイバの直径DK及びリングファイバの直径DRについて、以下:2.5≦DR/DK≦6、好ましくは3≦DR/DK≦5が該当するように選択される一実施形態である。典型的には、コアファイバの場合、50μm≦DK≦250μm又は100μm≦DK≦200μmが該当する。典型的には、リングファイバの場合、100μm≦DR≦1000μm、又は150μm≦DK≦900μm、又は150μm≦DR≦500μmであることが更に該当する。これらの直径比率を用いると、比較的短い処理時間で溶接プロセスを実行することが可能である。
【0025】
更に有利なのは、ビーム伝播方向に焦点を有する溶接レーザビームが、ワークピースの表面に関して最大高さオフセットMHOを有し、|MHO|≦1.5mmであり、好ましくは|MHO|≦1.0mmであり、特に好ましくは|MHO|≦0.5mmである一実施形態である。この範囲の高さオフセット内では、強度分布の局所環状最小がコアビームとリングビームとの間で現れる。特に、これは、溶接プロセス中のスパッタの回避にプラスの効果を有する。
【0026】
同様に有利なのは、溶接レーザビームが、ワークピース部分の当接エリアに関してワークピース上に最大側方オフセットMLOを有し、|MLO|≦0.2mmであり、好ましくは|MLO|≦0.1mmである一実施形態である。この範囲内の側方オフセットMLOでは、溶接プロセス中、結果として生成される角にわたって特に丸い比較的平滑な溶接上部ビードが得られる。
【0027】
ワークピース部分が、レーザ溶接中、それらの表面上で互いに把持され、ワークピース部分間に最大ギャップ幅MSが維持され、MS≦0.1mmである一実施形態が有利である。これらのギャップ幅では、溶接中、孔の数が少ない均質な分布の溶接材料が作成される。
【0028】
更に好ましいのは、溶接レーザビームのビーム伝播方向における角継手おけるワークピース部分が、互いに一直線上に配置又は段差高さSHを有する段差がある状態で配置され、
SH≦0.3mmであり、
好ましくはSH≦0.2mmであり、
特に好ましくはSH≦0.1mmである一変形である。そのような最大段差高さは、溶接を良好な品質で製造できるようにする。
【0029】
本発明は、ワークピース部分が電池筐体の部分であり、特にワークピース部分の1つが、電池筐体を閉じるキャップである、電池筐体を製造するため先の実施形態の1つによる方法の使用も含む。電池筐体の部分は、スパッタなしで特に安定して素早く本方法によって接続することができる。製造された筐体は高信頼的に隙間がなく、特に気密である。
【0030】
本発明の更なる利点が説明及び図面から現れるであろう。同様に、上述した特徴及びなお更に提示すべき特徴は、いずれの場合にも、個別に又は本発明による任意の所望の組合せで併用することができる。図示し説明する実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ、本発明を概説するための例示的な特徴を有する。
【0031】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて更に詳細に提示され、図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a】本発明による第1の角継手の溶接状況及び角継手を溶接するレーザビームの概略図を示す。
図1b】本発明による第2の角継手の溶接状況及び角継手を溶接するレーザビームの概略図を示す。
図1c】本発明による溶接状況におけるギャップを有する角形配置での第1及び第2のワークピース部分の概略図を示す。
図1d】第1及び第2のワークピース部分が角形配置にあり、レーザビームはワークピース部分の当接エリアに関してワークピース部分の表面に沿ってオフセットされる、本発明による溶接状況の概略図を示す。
図1e】第1及び第2のワークピース部分が角形配置にあり、レーザビームの焦点がワークピース部分の表面から離間された、本発明による溶接状況の概略図を示す。
図1f】第1及び第2のワークピース部分が角形配置にあり、ワークピース部分が段差を形成する、本発明による溶接状況の概略図を示す。
図2】本発明の多層クラッドファイバによってレーザビームを生成する装置を示す。
図3a】本発明のレーザビームの伝播方向を横断する方向における、図2に示す多層クラッドファイバから分離されるレーザビームの概略強度プロファイルを示す。
図3b】レーザビームの伝播方向を横断する、図3aの多層クラッドファイバから分離されるレーザビームの面断面を示す概略的に示す。
図4】レーザビームが多層クラッドファイバから分離される、本発明による溶接方法中の溶接プール及び蒸気毛管の概略図を示す。
図5a】シングルコアファイバから分離されたレーザビームによって作成された溶接の領域における角継手で溶接されたワークピースを通る断面図を示す。
図5b】多層クラッドファイバから分離されたレーザビームによって作成された溶接の領域における角継手で溶接されたワークピースを通る断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、典型的には電池筐体(「缶蓋」として知られているもの)に存在するような継手状況である、アルミニウム接続を用いた角継手における突付け継ぎ溶接の作成に関する。電池筐体がレーザ溶接される際、溶接プロセス中に必要とされる高進行速度により、溶接スパッタ及び非均一な溶接上部ビードが生成されることが多くあり得る。本発明は、多層クラッドファイバによって作成されたビームプロファイルを提供し、溶接を平滑化し、スパッタの形成を最小に抑え、この結果として、短絡のリスクを下げるとともに、封止性を高める。その結果として、従来技術と比較して進行速度での生産に関する、信頼性の高い増大が明らかに可能である。
【0034】
図1aは、第1のワークピース部分3a及び第2のワークピース部分3bを備えた第1の角継手2aを有するワークピース1を示す。この場合における第1のワークピース部分3aは、第2のワークピース部分3bの幅Bよりも大きい幅Bを有する。ワークピース部分3a、3bは、直角内角4によって圧接される。第1のワークピース部分3aの鈍端部5aは、第2のワークピース部分3bの一端部6aに配置される。第1のワークピース部分3aの長軸7aの延長部は、第2のワークピース部分3bの端部6aを通る。突付け継ぎ溶接8の形態の溶接を作成するために、ワークピース1の表面9は、ワークピース3a、3bが互いに圧接される当接エリア10において溶接レーザビーム11によって照射される。溶接レーザビーム11は、多層クラッドファイバ(図2参照)から分離される。ワークピース部分3a、3bの当接エリア10は、溶接レーザビーム11のビーム伝播方向12に平行する。第1の(より幅の広い)ワークピース部分3aは、当接エリア10から離れて垂直に延び、第2の(より幅の狭い)ワークピース部分3bは当接エリア10に平行して延びる。ワークピース1への溶接レーザビーム11の入口側において、ワークピース3a、3bはビーム伝播方向12に関して一直線上にある。溶接レーザビーム11は、ワークピース1の直角内角4から離れて面する2つのワークピース3a、3bを含むワークピース1の側から照射される。ワークピース3a、3bはそれぞれ、アルミニウム含有材料、特にアルミニウム3003から製造され、典型的には0.5mm~2.0mmの幅B、Bを有する。ワークピース3a、3bの配置は特に、電池筐体の角継手の概略表現をなす。
【0035】
図1bに示す溶接状況は、図1aに示す溶接状況と同様である。図1aからの配置とは対照的に、第2の(より幅の狭い)ワークピース部分3bは当接エリア10から離れて垂直に延び、第1の(幅のより広い)ワークピース部分3aは当接エリア10に平行して延びる。より薄い第2のワークピース部分3bは特に、より厚い第1のワークピース部分3aに垂直に延びる。より薄い第2のワークピース部分3bは特に、より厚い第1のワークピース部分3aの側面に溶接される。第2のワークピース部分3bの長軸7bの延長部は、第1のワークピース部分3aの端部5bを通る。
【0036】
図1cは、溶接レーザビーム11と共に、ワークピース部分3a(I)、3b(I)間に最大ギャップ幅MS0.1mmを有して配置された、本発明による溶接状況において角形に配置される第1及び第2のワークピース部分3a(I)、3b(I)の概略図を例として示す。ギャップ幅MS及び溶接レーザビーム11のビーム発散が大きく誇張されている(それに対応して同じことが他の図でも言える)ことに留意されたい。
【0037】
図1dは、角形配置での第1及び第2のワークピース部分3a(I)、3b(I)の概略図を例として示し、溶接レーザビーム11は、ワークピース部分3a(I)、3b(I)の当接エリア10に関してワークピース部分3a(I)、3b(I)の表面に沿ってオフセットされる。溶接レーザビーム11は特に、ワークピース部分3a(I)、3b(I)の当接エリア10に関して最大側方オフセットMLO0.2mmを有する。
【0038】
図1eは、角形配置での第1及び第2のワークピース部分3a(I)、3b(I)の概略図を例として示し、溶接レーザビーム11の焦点Fはワークピース部分3a(I)、3b(I)の表面から上方に離間される。ワークピース3a(I)、3b(I)を一緒に溶接する溶接レーザビーム11の焦点Fは特に、ワークピースの表面に関して最大高さオフセットMHO1.5mmを有する。高さオフセットMHOが、焦点Fがワークピースの表面の下方にあるようにセットアップされてもよい(これ以上詳細に説明せず)ことに留意されたい。
【0039】
図1fは、接合許容差の結果として電池筐体を溶接する際に頻繁に生じる、本発明の溶接状況の概略図を例として示す。第1のワークピース部分3aは、この場合、垂直に位置合わせされ、ベース39上に座し、電池筐体の缶又は缶の一部によって形成される。この缶は蓋によって閉じられるべきである。第2のワークピース部分3bは、この缶又はその一部を形成する。ワークピース部分3a、3bは、その当接エリア10において気密的に互いに溶接されるべきである。
【0040】
溶接レーザビーム11が伝播する垂直(この場合では)ビーム伝播方向12の方向において、ワークピース部分3a、3bはこの倍、わずかにオフセットして配置され、それに対応して、段差40が当接エリア10に隣接して形成される。方向Rにおける段差40の段差高さSHは典型的には、多くとも0.3mm、好ましくは多くとも0.1mmである。
【0041】
溶接レーザビーム11の焦点Fは典型的には、この場合では高さオフセットなしでベース39上に立っている第1のワークピース部分3aの、入射溶接レーザビーム11に面する表面41の縁部に向けられる。焦点Fはここでは、溶接レーザビーム11の側方境界線の狭窄によって見ることができる。
【0042】
図2は、本発明での、多層クラッドファイバ18によって溶接レーザビーム11を生成するレーザ系17を示す。出力レーザビーム19は、多層クラッドファイバ18の第1のファイバ端部20aに結合され、多層クラッドファイバ18は径方向において、異なる屈折率n、n、n、nを有する層21a、21b、21c、21dを有する。更に、溶接レーザビーム11は、多層クラッドファイバ18の第2の端部20bから分離される。射出される溶接レーザビーム11のビームプロファイルは、この場合、光学ウェッジ24aとして構成された偏向光学ユニット24により、少なくとも、異なる電力出力割合LK、LRを有する多層クラッドファイバ18の、直径DKを有する内側コアファイバ25及び多層クラッドファイバ18の、直径DRを有する外側リングファイバ26に出力レーザビーム19を結合することによって変更される。この場合、光学ウェッジ24aの本発明で意図される中心位置において、出力レーザビーム19のビーム割合StrAは光学ウェッジ24aによって偏向され、層21cに供給され、一方、出力レーザビーム19の第2のビーム割合StrAは、まだ歪まずに、出力レーザビーム19のビーム方向に関して光学ウェッジ24aの上流に直線で伝播し、層21aに供給される。示される実施形態では、多層クラッドファイバ18は、内側コアファイバ25及び外側リングファイバ26を有する2in1ファイバの形態である。内側コアファイバ25は特に、層21aによって形成され、リングファイバ26は特に層21cによって形成される。外層21b、21dは、ビーム割合StrA、StrAが内側コアファイバ25と外側リングファイバ26との間を透過しないようにするために、ライニングとして機能する。特に、層21aの屈折率n及び層21cの屈折率nは、層21bの屈折率n及び層21dの屈折率nよりも大きい。多層クラッドファイバ18の第2の端部20bは、特に2.0よりも大きい拡大係数VFでワークピース(図1a参照)上で再現され拡大される(これ以上詳細に示さない)。
【0043】
図3aは、ワークピースの表面9(図1a参照)に関して1.5mmである好ましい最大高さオフセットMHO内に焦点を有するワークピース(図1c参照)の表面9に近い溶接レーザビーム11の伝播方向を横断する方向xにおいて多層クラッドファイバ18(例えば図2参照)から分離される溶接レーザビーム11の強度27のプロファイルを示す。リングビーム28、即ちリングファイバ26(図2参照)からのレーザビームの強度27aは、この場合、コアビーム29、即ちコアファイバ25(図2参照)からのレーザビームの方向において降下し、且つコアビーム29から離れる径方向において外側に降下する。それらの間では、リングビーム28の強度27aは概ね一定である。コアビーム29の強度27bは、リングビーム28の強度よりも高い。したがって、リングビーム28とコアビーム29との間には強度27の極小27cがある。
【0044】
図3bは、リングビーム28、コアビーム29、及びリングビーム28とコアビーム29との間の強度27cの極小と共に、1.5mmのワークピースの表面に関する好ましい最大高さオフセットMHO内でワークピースの表面に近い溶接レーザビーム11の伝播方向を横断する図3aの多層クラッドファイバ18から分離される溶接レーザビーム11の面断面を概略的に示す。リングビーム28及びコアビーム29のプロファイルは各々、異なる形状を有することもでき、例えば四辺形であることもできる。コアビーム29による強度の統合は、コアビーム29のビーム電力出力を生じさせ、これは特に、溶接レーザビーム11の全体電力出力の25%~50%である。
【0045】
図4は、溶接プールと、本発明による溶接方法中、多層クラッドファイバ(図3参照)から分離されたレーザビームにより内部に配置される蒸気毛管30との概略図を示す。コアビーム29は、蒸気毛管30の深さ31を実質的に決める。溶融物は蒸気毛管30の前面において溶接レーザビーム11の進行方向33bに関して下方に蒸気毛管30の底に向かって流れる。蒸気毛管30の後側において、溶融物は上方に流れてから、溶接レーザビーム11から離れて後方に流れる。リングビーム28は蒸気毛管30の開口部32を広げ、蒸気毛管30からのガスの出現を促進する。溶接方法中に生成されたガスの動的圧力、ひいてはガス粒子によって溶融物に伝達される各パルスは低下する。これは溶融物中の流速を低下させる。溶接方法中に排出される溶融物のスパッタはより少ない。更に、リングビーム28はパルスによって溶融物に対して作用し、パルスは、蒸気毛管30の表面に向かって溶融物が流れる方向とは逆に向けられ、同様にスパッタの排出を弱める。溶融材料が流れる方向33aは、非実線矢印で概略的に示される。蒸気毛管30内のガス流は矢印33cで記されている。
【0046】
図5aは、シングルコアファイバから分離されたレーザビームによって作成された突付け継ぎ溶接8aを用いて溶接されたワークピース1aを通る断面図を示す。溶接8aの幅34a及び深さ31aは棒線で示される。溶接8aは、1.22mmである溶接8aの奥行き31aと共に1.41mmである比較的小さな幅34a(図5b参照)を有する。溶接を作成した蒸気毛管は対応する比較的小さな幅を有し、その結果、レーザ溶接中に生じたガスは、蒸気毛管から比較的ゆっくりとしか出ることしかできない。ビームプロファイルによって形成された縁部35は、溶融材料がレーザビームから離れて更に外側に流れるのを難しくする。溶接中に生成された過度の圧力は、溶接8aの一部である蒸気毛管の隆起を形成し、スパッタが排出される。溶接8aは更に、比較的高い程度のハンピングを有する。
【0047】
図5bは、多層クラッドファイバ(図2参照)から分離されたレーザビームから作成された突付け継ぎ溶接8bを用いて溶接されたワークピース1bを通る断面図を示す。溶接8bは、1.34mmである溶接8bの奥行き31bと共に、図5aに示す溶接8aよりも大きな、1.56mmの幅34bを有する。溶接を作成した蒸気毛管はそれに対応してより大きな幅を有し、その結果、レーザ溶融中に生じたガスは、蒸気毛管から比較的容易に出ることができる。これは、溶接8bの一部である蒸気毛管内の過度の圧力を回避し、スパッタを抑制する。溶接8bは更に、比較的低い程度のハンピングを有する。
【符号の説明】
【0048】
1、1a、1b ワークピース
2a 第1の角継手
3a、3b、3a(I)、3b(I) ワークピース部分
4 直角内角
5a 鈍端部
5b、6a 端部
7a、7b 長軸
8、8a、8b 突付け継ぎ溶接
9、41 表面
10 当接エリア
11 溶接レーザビーム
12 ビーム伝播方向
17 レーザシステム
18 多層クラッドファイバ
19 出力レーザビーム
20a、20b ファイバ端部
21a、21b、21c、21d 層
24 偏向光学ユニット
24a 光学ウェッジ
25 内側コアファイバ
26 外側リングファイバ
27、27a、27b 強度
27c 極小
28 リングビーム
29 コアビーム
30 蒸気毛管
31、31a、31b 奥行き
32 開口部
33a 流れる方向
33b 進行方向
33c 矢印
34a、34b、B、B
35 縁部
39 ベース
40 段差
DK、DR 直径
F 焦点
LK、LR 電力出力割合
MHO 最大高さオフセット
MLO 最大側方オフセット
MS 最大ギャップ幅
、n、n、n 屈折率
R 方向
SH 段差高さ
StrA、StrA ビーム割合
VF 拡大係数
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b