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特許7362919難燃性複合物品及び火炎への暴露を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】難燃性複合物品及び火炎への暴露を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/02 20060101AFI20231010BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/208 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/233 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/275 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/587 20210101ALI20231010BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20231010BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20231010BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20231010BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20231010BHJP
   D06M 17/04 20060101ALI20231010BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20231010BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231010BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20231010BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20231010BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20231010BHJP
   A41D 31/102 20190101ALI20231010BHJP
【FI】
B32B5/02 A
D03D15/513
D03D15/283
D03D15/208
D03D15/233
D03D15/275
D03D15/587
D03D15/533
D04B1/14
D04B21/00 B
D06M17/00 H
D06M17/00 K
D06M17/04
B32B27/20 Z
B32B27/30 D
D02G3/04
A41D31/00 502A
A41D31/08
A41D31/102
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022525933
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2020058678
(87)【国際公開番号】W WO2021091877
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】62/930,102
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ アリフォグル
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-505501(JP,A)
【文献】特開2019-073834(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194001(WO,A1)
【文献】特表2012-525288(JP,A)
【文献】特表2011-502216(JP,A)
【文献】特表2018-500197(JP,A)
【文献】特表2017-525867(JP,A)
【文献】特表2010-528893(JP,A)
【文献】特開2006-077035(JP,A)
【文献】特表2020-530408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0070835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/02- 5/32
A41D 31/00-31/32
B32B 27/00-27/42
D02G 3/04
D03D 15/00-15/68
D04B 1/14
D04B 21/00
D06M 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層、及び
b)前記テキスタイル層に結合された接着剤層
を含んでなる複合物品であって、
該熱安定性紡糸ヤーンは、260℃の炉試験において5%を超える収縮をせず、
該熱安定性紡糸ヤーンは、一以上の熱安定性ステープル繊維を含み、
前記熱安定性紡糸ヤーンは熱安定性非溶融性繊維を含み、
前記テキスタイル層は、前記熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン又はフィラメントをさらに含み、
前記少なくとも1つの他のヤーン又はフィラメントは、溶融性ヤーン又はフィラメントであり、
該接着剤層はポリマー樹脂と膨張性グラファイトとを含み、
該膨張性グラファイトは、TMAプローブで測定した深さ0.1~0.3mmの膨張性グラファイトを280℃に加熱すると少なくとも900μm膨張し、かつ
該物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験において、少なくとも1つの方向において21パーセント未満の収縮度を示すことを特徴とする、複合物品。
【請求項2】
前記熱安定性非溶融性繊維は、綿、難燃性綿、レーヨン、難燃性レーヨン、難燃性ビスコース、モダクリル、アラミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンイミド、ウール、カーボン又はそれらの組み合わせである、請求項1記載の複合物品。
【請求項3】
前記テキスタイル層は、織物又は編物テキスタイルである、請求項1又は2記載の複合物品。
【請求項4】
1つ以上の追加の層をさらに含み、該追加の層は熱安定性テキスタイル、防水性通気性材料、熱安定性フィルム又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項5】
前記1つ以上の追加の層は、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項4記載の複合物品。
【請求項6】
前記溶融性ヤーン又はフィラメントは、熱可塑性樹脂、ポリアミド、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル又はそれらの組み合わせである、請求項1~のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項7】
前記溶融性ヤーンはポリアミド又はポリエステルヤーンである、請求項1~6のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項8】
前記熱安定性紡糸ヤーンは、前記テキスタイル層の総質量に基づいて、前記テキスタイル層の1質量パーセント~100質量パーセントを構成する、請求項1~7のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項9】
前記物品が火炎にさらされたときにチャーを形成するように、前記テキスタイル層前記接着剤層との組み合わせが構成されている、請求項1~8のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項10】
前記複合物品は衣服であり、かつ、前記テキスタイル層は着用者の体から離れている、請求項1~9のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項11】
前記熱安定性紡糸ヤーンはコア紡糸されたものである、請求項1~10のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項12】
前記熱安定性紡糸ヤーンは、p-アラミド、m-アラミド、モダクリル、難燃性綿、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリフェニレンスルフィド、ウール、FRビスコース、FRレーヨン、炭素繊維又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか1項記載の複合物品。
【請求項13】
前記熱安定性紡糸ヤーンは帯電防止特性を提供する、請求項1~12のいずれか1項記載の複合物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低い可燃性及び低い熱収縮抵抗を示す熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層を含む複合物品に関する。特に、この物品は全米防火協会(「NFPA」)2112に準拠することができる。
【背景技術】
【0002】
捜索隊及び救助隊及び警察が遭遇するような、火及び極度の熱へのまれで短時間の暴露が可能である危険な環境において、火傷を低減するために保護材料が望ましい。これらの条件にさらされる人のための保護具は、着用者が危険と戦うのではなく、危険から迅速かつ安全に逃げることができるように、従来の技術的衣服と比較してある程度向上された保護を提供すべきである。しかしながら、火及び極度の熱への暴露はたまにしか発生しないと予想されるため、衣服の重量及び使いやすさは従来の衣服と同様であるべきである。同様に、衣服の重量、外観及び感触は、優れた色堅牢性、捺染適性及び耐摩耗性を備えた従来の衣服と同様であるべきである。防水性、難燃性、保護服のコストも、防火以外の多くの危険な暴露用途にとって重要な考慮事項であり、それにより、消防共同体で使用されるような典型的な本質的に難燃性のテキスタイルの使用が排除されている。
【0003】
従来から、難燃性(FR)保護衣服は、例えば、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリp-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、モダクリルブレンド、ポリアミン、カーボン、ポリアクリロニトリル(PAN)又はそれらのブレンド及び組み合わせから作られる不燃性で非溶融性布帛からなる最外層を用いて製造されている。これらの繊維は本質的に難燃性である可能性があるが、幾つかの制限を有することがある。具体的には、これらの繊維は非常に高価であり、染色及び捺染が困難であり、十分な耐摩耗性を有しないことがある。さらに、これらの繊維は、ナイロン又は同様の熱可塑性布帛と比較して、より多くの水を吸収し、不満足な触覚の快適さを提供する。
【0004】
解決策の一部として、難燃性複合材料において熱可塑性及び/又は溶融性材料が提案されてきた。例えば、米国公開第2009/0110919号明細書は、可燃性溶融性材料を含む外層及びポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物を含む熱反応性材料の層を含むことができる多層燃焼保護材料を記載している。別の例として、米国公開第2013/004747号明細書は、テキスタイルを貫通する含浸材料の部分的に内部不連続パターンを有する繊維/フィラメントから作られたテキスタイルを含む物品を記載している。含浸材料は、熱接触の場合に防火剤として機能することができる膨張性グラファイト材料を含む少なくとも1つの添加剤を含むことができる。非含浸領域は通気性があり、テキスタイルは水蒸気透過性であり、吸水率及び再乾燥時間が短縮されている。
【0005】
すべての難燃性物品の1つの望ましい特性は、火炎及び/又は高温にさらされたときの低い熱収縮性である。全米防火協会(「NFPA」)2112規格は、順守要件として、この低熱収縮性を含む。熱可塑性及び/又は溶融性繊維は難燃性衣服に使用されてきたが、高温又は火炎にさらされると、しばしば高い熱収縮を示す。熱可塑性又は溶融性層の熱収縮が複合材料全体の熱収縮性能に有意な影響を与える可能性があるため、低熱収縮が望まれる難燃性材料及び衣服にこれらの材料を使用することは困難な場合がある。高い熱収縮性のない熱可塑性ポリマーを利用する難燃性テキスタイルの必要性が引き続き存在する。さらに、NFPA2112順守基準を満たす難燃性衣服での熱可塑性材料の使用を可能にする解決策が望まれることがある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、第一の態様として、(a)熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層、及び(b)前記テキスタイル層に結合された接着剤層を含んでなる複合物品であって、該熱安定性紡糸ヤーンは、260℃の炉試験において5%を超える収縮をせず、該熱安定性紡糸ヤーンは、一以上の熱安定性ステープル繊維を含み、該接着剤層はポリマー樹脂と膨張性グラファイトとを含み、該膨張性グラファイトは、280℃に加熱すると少なくとも900マイクロメートル(μm)膨張し、かつ、該物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験において、少なくとも1つの方向において21パーセント未満の熱収縮性を示す、そのような複合物品を対象とする。開示の複合物品は、比較的に高温にさらされたときに熱収縮に抵抗し、火炎にさらされた場合には、材料の継続的な燃焼を維持しないチャー材料の層を生成し、そして熱の少なくとも一部から下層表面を断熱する衣服又は他の難燃性テキスタイルを製造するのに有用であることができる。驚くべきことに、1つ以上の熱安定性ステープル繊維を含む熱安定性紡糸ヤーンの使用は、複合物品に耐収縮性を提供しうることが見出された。物品の大部分は溶融性及び可燃性の材料を含むが、複合物品は収縮、溶融及び燃焼に耐性がある。
【0007】
第二の態様において、本開示は、熱安定性紡糸ヤーンが熱安定性非溶融性繊維を含む、第一の実施形態の複合物品に関する。
【0008】
第三の態様において、本開示は、前記熱安定性非溶融性繊維が綿、難燃性綿、レーヨン、難燃性レーヨン、難燃性ビスコース、モダクリル、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンイミド(PEI)、ウール、炭素又はそれらの組み合わせである、上述の実施形態のいずれか1つ以上の複合物品に関する。
【0009】
第四の態様において、本開示は、前記テキスタイル層が織物又は編物テキスタイルである、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0010】
第五の態様において、本開示は、1つ以上の追加の層をさらに含み、前記追加の層は熱安定性テキスタイル、防水性で通気性の材料、熱安定性フィルム又はそれらの組み合わせを含む、上述の態様のいずれか1つ以上の複合物品に関する。
【0011】
第六の態様において、本開示は、前記1つ以上の追加の層が延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、上述の実施形態のいずれか1つ以上の複合物品に関する。
【0012】
第七の態様において、本開示は、前記テキスタイルが、覆われたコア熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン又はフィラメントをさらに含む、上述の態様のいずれか1つ以上の複合物品に関する。
【0013】
第八の態様において、本開示は、前記テキスタイルが、熱可塑性樹脂、ポリアミド、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル又はそれらの組み合わせである溶融性ヤーン又はフィラメントをさらに含む、上述の態様のいずれかの複合物品に関する。
【0014】
第九の態様において、本開示は、第二のヤーンがポリアミド又はポリエステルヤーンである、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0015】
第十の態様において、本開示は、前記熱安定性紡糸ヤーンが、前記テキスタイル層の合計質量に基づいて、前記テキスタイル層の1質量パーセント~100質量パーセントを構成する、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0016】
第十一の態様において、本開示は、前記物品が火炎にさらされたときにカバー材料及び接着剤層の組み合わせがチャーを形成する、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0017】
第十二の態様において、本開示は、前記物品が衣服であり、前記テキスタイル層が着用者の体から離れている、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0018】
第十三の態様において、本開示は、前記熱安定性紡糸ヤーンがコア紡糸されたものである、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0019】
第十四の態様において、本開示は、前記熱安定性紡糸ヤーンがp-アラミド、m-アラミド、モダクリル、難燃性綿、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ウール、FRビスコース、FRレーヨン、炭素繊維又はそれらの組み合わせである、上述の態様のいずれかの1つ以上の複合物品に関する。
【0020】
第十五の態様において、本開示は、前記熱安定性紡糸ヤーンが帯電防止特性を提供する、上述の態様のいずれか1つ以上の複合物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面の説明
本発明の動作は、添付の図面と併せて検討したときに、以下の記載から明らかになるはずである。
【0022】
図1図1は、本明細書に記載の1つの実施形態の断面図の概略図である。
【0023】
図2図2は、本明細書に記載の別の実施形態の断面図の概略図である。
【0024】
図3図3は、本明細書に記載の別の実施形態の断面図の概略図である。
【0025】
図4図4は、本明細書に記載の別の実施形態の断面図の概略図である。
【0026】
図5図5は、本明細書に記載の別の実施形態の断面図の概略図である。
【0027】
図6A図6Aは、離散ドットとして適用されたポリマー樹脂-膨張性グラファイトの1つの実施形態の概略図である。
【0028】
図6B図6Bは、グリッド状に適用されたポリマー樹脂-膨張性グラファイトのパターンの1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
低い熱収縮性を示す複合物品が本明細書に記載されている。本明細書に記載の複合物品は、比較的に軽量であり、それでも優れた耐炎性及び低い熱収縮性を保持することができる。さらに、実施形態は、伝統的な衣服の外観及び重量を維持する。複合物品はまた、優れた色堅牢性、捺染、耐摩耗性及び比較的に低コストを提供する。幾つかの実施形態において、物品は、少なくとも全米防火協会(「NFPA」)2112の低熱収縮性要件に準拠することができる。NFPA2112規格は、産業関係者が使用するための難燃性衣服の設計、構築、評価及び認証に関する最小要件を提供する。
【0030】
幾つかの実施形態において、複合物品は、a)熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層であって、前記熱安定性紡糸ヤーンは260℃の炉試験において5%を超えて収縮せず、前記熱安定性紡糸ヤーンは1つ以上の熱安定性ステープル繊維を含むテキスタイル層、及び、b)前記テキスタイル層に結合された接着剤層を含み、前記接着剤層は、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトを含み、前記膨張性グラファイトは、280℃に加熱すると、少なくとも900マイクロメートル(μm)膨張し、そして前記複合物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験によって測定して、少なくとも1つの方向において、21%未満の熱収縮性を有する。他の実施形態において、複合物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験によって測定して、少なくとも1つの方向において、15パーセント未満又は10パーセント未満の収縮性を有する。
【0031】
本明細書で使用されるときに、「熱安定性紡糸ヤーン」という語句は、熱安定性ステープル繊維から形成されたヤーンを意味する。熱安定性ステープル繊維は、1つ以上の熱安定性非溶融性繊維であることができる。幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンは、綿、難燃性綿、レーヨン、難燃性レーヨン、難燃性ビスコース、モダクリル、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンイミド(PEI)、ウール、カーボンステープル繊維又はそれらの組み合わせから形成することができる。
【0032】
本明細書で使用されるときに、「フィラメント」という用語は、天然又は人工材料の無限又は準無限の長尺部材を意味する。本明細書で使用されるときに、フィラメントという用語は、特に明記されていない限り、モノフィラメント及びマルチフィラメント材料の両方を含む。
【0033】
本明細書で使用されるときに、「モノフィラメント」という用語は、単一のフィラメントを意味する。
【0034】
本明細書で使用されるときに、「マルチフィラメント」という用語は、フィラメントが共通軸の周りで一緒にねじることができるが、実質的に平行な配置のフィラメントの集合体を意味する。
【0035】
本明細書で使用されるときに、「繊維」又は「ステープル繊維」という用語は、天然又は合成材料の比較的に短い長尺部材を意味する。繊維は、典型的に、明示的な長さ(通常は50センチメートル未満)であり、長さは高さ及び幅の寸法よりもはるかに大きい。
【0036】
熱安定性紡糸ヤーンは、当該技術分野で知られている任意の方法によって調製することができる。
【0037】
本明細書で使用されるときに、「接着剤層」、「熱反応性材料」及び「ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物」という語句は交換可能に使用され、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトを含む接着剤組成物及び/又はその層を意味する。本開示において、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトを含む接着剤層は、一般に、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の少なくとも1つの表面に接着される。複合物品が、例えば、衣服に加工されるときに、テキスタイル層は、衣服の外側にある層であり、接着剤層は、テキスタイル層の内側にあり、ここで、内側及び外側の向きは、衣服の着用者に関係している。具体的には、内側は衣服の着用者に最も近い側であり、一方、外側は衣服の着用者の反対側である。「追加の接着剤層」という語句は、テキスタイル接着剤の層を意味し、ここで、テキスタイル接着剤はポリマー樹脂であり、場合により、膨張性グラファイトを含む。
【0038】
複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル(120)を含む。熱安定性紡糸ヤーンは、フィラメント又は繊維、例えば、熱安定性ステープル繊維を含むか、又は本質的にそれらからなる。より具体的には、熱安定性紡糸ヤーンは、マルチフィラメント、ツイストマルチフィラメント、フラットマルチフィラメント又はステープル繊維ヤーンであることができる。
【0039】
幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンの熱安定性繊維は、熱収縮性を示さない材料を含むことができる。他の実施形態において、熱安定性繊維は、ASTM 2894-14に従って、熱安定性紡糸ヤーンを260℃に5分間さらしたときに、10パーセント未満、又は5パーセント未満、又は8パーセント未満、又は6パーセント未満の距離の収縮など、制限された又は低い熱収縮を経験する材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、熱安定性繊維の材料は、0.01パーセント~9.9パーセント、又は0.1パーセント~9.9パーセント、又は1パーセント~9.9パーセント、又は5パーセント~9.9パーセント、又は0.01パーセント~8パーセント、又は0.01パーセント~5パーセント、又は0.01~4パーセント収縮する。複合物品に使用されるときに、熱安定性繊維の熱収縮の欠如は、熱安定性紡糸ヤーンの熱収縮を制限又は防止し、次に、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の熱収縮を制限又は防止し、そして最終的に、複合物品の熱収縮を制限又は防止すると考えられている。幾つかの実施形態において、熱安定性繊維は、熱安定性及び/又は非溶融性材料を含むことができる。非限定的な例として、熱安定性繊維は、綿、難燃性綿、レーヨン、難燃性レーヨン、難燃性ビスコース、モダクリル、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンイミド(PEI)、ウール、カーボン又はそれらの組み合わせを含むことができる。幾つかの実施形態において、熱安定性繊維は、TWARON(登録商標)p-アラミド材料又はTECHNORA(登録商標)p-アラミド材料を含み、両方とも、Teijin Aramid, Conyers, Georgia, USAから入手可能である。他の実施形態において、熱安定性繊維は、NOMEX(登録商標)m-アラミド材料を含み、DuPont, Wilmington, Delaware, USAから入手可能である。別の実施形態において、熱安定性繊維は、KERMEL(登録商標)を含み、それは、Kermel, Colmar, Franceから入手可能なポリアミドイミドである。
【0040】
幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンはまた、1つ以上のフィラメント、繊維、コーティング又はそれらの組み合わせの形態の熱可塑性材料又は溶融性材料であることができる1つ以上の非熱安定性材料を含むことができる。非熱安定性材料は、熱安定性紡糸ヤーンが260℃に5分間さらされたときに、任意の方向において、20パーセント、15パーセント又は10パーセント以上の距離の収縮など、高い熱収縮性を示す材料を含むことができる。1つの実施形態において、非熱安定性材料は1つの材料であることができる。他の実施形態において、非熱安定性材料は、2つ以上の材料であることができる。非限定的な例として、非熱安定性材料は、熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル又はそれらの組み合わせを含むことができる。好ましい実施形態において、非熱安定性材料は、ポリアミドもしくはポリエステル又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0041】
熱安定性紡糸ヤーンを使用して、テキスタイル又はテキスタイル層(120)を製造することができる。それはヤーンであるため、熱安定性紡糸ヤーンは、既知の製織及び製編プロセスで使用して、織物テキスタイル又は編物テキスタイルとして所望のテキスタイル層(120)を形成することができる。例えば、熱安定性紡糸ヤーンを含む織物テキスタイルは、平織、綾織、サテン、リップストップ又はヘリンボーン構造あるいはそれらの組み合わせを有することができる。他の実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含む編物テキスタイルは、経編、緯編、丸編、ジャージーニット、リブ編、インターロックニット又はテリーニットテキスタイルであることができる。テキスタイル(120)は、熱安定性紡糸ヤーンを含み、他の実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン又はフィラメントをさらに含むことができる。
【0042】
熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、複合物品の重量を減らすために、薄くかつ比較的に軽量にすることができる。幾つかの実施形態において、覆われたコアヤーンを含むテキスタイルは軽量であることができ、重量が40グラム/平方メートル(g/m)以上、約220g/m以下である。実施形態において、複合物品は、編まれた又は織られた被覆コアヤーンを含むテキスタイルを含み、テキスタイルは、210~220g/m、又は200~210g/m、又は190~200g/m、又は180~190g/m、又は170~180g/m、又は160~170g/m、又は150~160g/m、又は140~150g/m、又は130~140g/m、又は120~130g/m、又は110~120g/m、又は100~110g/m、又は90~100g/m、又は80~90g/m、又は70~80g/m、又は60~70g/m、又は50~60g/m、又は40~50g/mの範囲の重量を有する。さらに別の実施形態において、テキスタイルは、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85 、86、87、88、89又は90g/mの重量を有する。
【0043】
幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、経糸方向に複数の熱安定性紡糸ヤーンを含むことができる。他の実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、フィル方向又は緯糸方向に複数の熱安定紡糸ヤーンを含むことができる。そして、幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、経糸方向に複数の熱安定紡糸ヤーンを含み、フィル方向又は緯糸方向に複数の熱安定紡糸ヤーンを含むことができる。1つの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、完全に熱安定性紡糸ヤーンを含むことができる。幾つかの実施形態において、テキスタイル内の各熱安定性紡糸ヤーンの間に所定のギャップがあり、例えば、1つごとのピックは熱安定性紡糸ヤーンであり、3つごとのピックは熱安定性紡糸ヤーンであり、5つごとのピックは熱安定性紡糸ヤーンであり、又は10ごとのピックは熱安定性紡糸ヤーンである。同様に、特定の実施形態において、例えば、1つごとのエンドは熱安定性紡糸ヤーンであり、3つごとのエンドは熱安定性紡糸ヤーンであり、5つごとのエンドは熱安定性紡糸ヤーンであり、又は10ごとのエンドは熱安定性紡糸ヤーンである。テキスタイル内の熱安定性紡糸ヤーンの量及び配置の他の変更は明らかであり、当該技術分野の当業者に容易に達成可能である。
【0044】
幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイルは、少なくとも1つの他のフィラメント、繊維、ヤーン又はそれらの組み合わせをさらに含むことができる。テキスタイルは、1質量パーセント~100質量パーセントの範囲の熱安定性紡糸ヤーンを含むことができ、ここで、質量パーセントはテキスタイルの総質量に基づく。他の実施形態において、テキスタイルは、テキスタイルの総質量に基づいて、1質量パーセント~70質量パーセント、1質量パーセント~50質量パーセント、1質量パーセント~20質量パーセント、1質量パーセント~10質量パーセント、1質量パーセント~5質量パーセント、5質量パーセント~80質量パーセント、5質量パーセント~50質量パーセント、5質量パーセント~30質量パーセント、5質量パーセント~20質量パーセント、10質量パーセント~80質量パーセント、10質量パーセント~50質量パーセント、10質量パーセント~30質量パーセント、10質量パーセント~20質量パーセント、20質量パーセント~80質量パーセント、20質量パーセント~50質量パーセント、30質量パーセント~80質量パーセント、30質量パーセント~50質量パーセント、50質量パーセント~90質量パーセント、又は60質量パーセント~90質量パーセントの範囲の熱安定性紡糸ヤーンを含むことができる。存在するならば、少なくとも1つの他のフィラメント、繊維、ヤーン又はそれらの組み合わせは、既知のフィラメント、繊維及びヤーンのいずれかであることができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの他のフィラメント、繊維、ヤーン又はそれらの組み合わせは、溶融性フィラメント、繊維又はヤーンである。例えば、少なくとも1つの他のフィラメント、繊維又はヤーンは、溶融及び熱安定性試験に従って溶融性であるフィラメント、繊維又はヤーンであることができ、例えば、ポリアミド、例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル又はそれらの組み合わせを含むことができる。熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層は、例えば、1000g/m/24hr以上の水蒸気透過度(MVTR)を有する通気性層、又は、非通気性層であることができる。
【0045】
複合物品(100)はまた、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に結合される接着剤又は接着剤層(130)を含む。接着剤層(130)は、熱可塑性又は架橋性ポリマーであることができ、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマー、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ又はそれらの組み合わせであることができる。組み合わせである接着剤の例として、接着剤は、ポリイソシアネートによって架橋され、それによってポリエステルウレタンコポリマーを形成するヒドロキシル官能性ポリマーであることができる。他の実施形態において、接着剤は、難燃性接着剤又は熱反応性材料を含む接着剤であることができる。適切な難燃性接着剤としては、1つ以上の難燃性材料をさらに含む上記の接着性ポリマーのいずれかを挙げることができる。適切な難燃性材料は、例えば、以下の1つ以上:塩素化化合物、臭素化化合物、酸化アンチモン、有機リンベースの化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン、モリブデン化合物、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス-(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノール-A(ジフェニルホスフェート)(BADP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、有機ホスホネート、有機ホスフィネート又は一般式(I)を有するホスホネートエステル:
【化1】
であり、上式中、n=0又は1であり、R及びRはC-Cアルキルであり、RはH又はC-Cアルキルであり、Rは直鎖又は枝分かれアルキルである。上記の難燃性材料のいずれかの組み合わせも使用できる。(I)の特定の実施形態としては、例えば、メチル-ビス((5-エチル-2-メチル-2-オキシド-1,3,2-ジオキサホスホリナン-5-イル)メチル)エステル及びメチル(5-エチル-2-メチル-2-オキシド―1,3,2-ジオキサホスホリナン-5-イル)メチルメチルホスホネート又はそれらの組み合わせを挙げることができる。1つ以上の難燃性材料は、接着剤材料中に、接着剤材料及び難燃性材料の合計量に基づいて、1~50質量パーセント、10~50質量パーセント、25~50質量パーセント、30~50質量パーセント、40~50質量パーセント、10~40質量パーセント、10~35質量パーセント、10~20質量パーセント、10~15質量パーセント、25~45質量パーセント、35~40質量パーセント、15~25質量パーセント又は20~30質量パーセントの量で存在することができる。
【0046】
他の実施形態において、接着剤層は、熱反応性材料、例えば、膨張性グラファイトを含むことができる。さらなる実施形態において、接着剤層は、ポリマー樹脂と、280℃に加熱するときに、少なくとも900μm膨張する膨張性グラファイトとを含む。本明細書に開示される膨張試験に従って試験したときに、膨張性グラファイトは、少なくとも9マイクロメートル/℃(μm/℃)の平均膨張度を有することができる。複合物品の所望の特性に応じて、180℃~280℃で9μm/℃を超える膨張度、又は180℃~280℃で12μm/℃を超える膨張度、又は180℃~280℃で15μm/℃を超える膨張度を有する膨張性グラファイトを使用することが望ましいことがある。特定の実施形態での使用に適した1つの膨張性グラファイトは、280℃に加熱されたときに、本明細書に記載の熱機械分析(TMA)膨張試験において少なくとも900ミクロン膨張する。特定の実施形態での使用に適した別の膨張性グラファイトは、240℃に加熱されたときに、本明細書に記載のTMA膨張試験において少なくとも400ミクロン膨張する。ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物を選択した適用方法で適用できるように、接着剤に適した膨張性グラファイトの粒子サイズを選択すべきである。例えば、接着剤がグラビア印刷技術によって適用される場合に、膨張性グラファイトの粒子サイズは、グラビアセルに収まるように十分に小さくすべきである。
【0047】
幾つかの実施形態において、ポリマー樹脂は、接着性であり、溶融温度又は軟化温度が280℃未満であるポリマー樹脂である。幾つかの実施形態において、ポリマー樹脂は、1℃~280℃、又は50℃~280℃、又は100℃~280℃、又は150℃~218℃、又は200℃~280℃、又は1℃~250℃、又は1℃~200℃、又は1℃~175℃、又は1℃~125℃、又は1℃~80℃、又は1℃~25℃の溶融温度を有する。幾つかの実施形態において、ポリマー樹脂は、300℃以下、好ましくは280℃以下での熱暴露時に膨張性グラファイトが実質的に膨張することができるのに十分に流動性又は変形性である。ポリマー樹脂の伸張粘度は、膨張性グラファイトの膨張を可能にするのに十分に低く、ポリマー樹脂と膨張性グラファイトとの混合物の膨張後に熱反応性材料の構造的一体性を維持するのに十分に高いことが望ましいことがある。他の実施形態において、200℃で10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率及び0.1~10のTanδを有するポリマー樹脂が使用される。別の実施形態において、10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率を有するポリマー樹脂が使用される。別の実施形態において、10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率を有するポリマー樹脂が使用される。別の実施形態において、10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率を有するポリマー樹脂が使用される。別の実施形態において、10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率を有するポリマー樹脂が使用される。別の実施形態において、10~10ダイン/cmの貯蔵弾性率を有するポリマー樹脂が使用される。幾つかの実施形態での使用に適したポリマー樹脂はエラストマーである。幾つかの実施形態での使用に適した他のポリマー樹脂は架橋可能であり、例えば、架橋可能なポリウレタン、例えば、MOR-MELT(登録商標)R7001E(Rohm&Haas, USAから)である。他の実施形態において、適切なポリマー樹脂は、DESMOMELT(登録商標)VP KA 8702(Bayer Material Science LLC, Pittsburg, Pennysylvania, USAから)などの、融解温度が50℃~250℃の熱可塑性樹脂である。本明細書に記載の実施形態での使用に適したポリマー樹脂は、限定するわけではないが、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル、ビニルポリマー、ポリオレフィン、シリコーン、エポキシ又はそれらの組み合わせを含む、ポリマーを含む。難燃性材料は、場合により、ポリマー樹脂に取り込まれることができる。1つの実施形態において、ポリマー樹脂は、塩素化化合物、臭素化化合物、酸化アンチモン、有機リンベースの化合物、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、メラミンポリホスフェート、モリブデン化合物、アルミナ三水和物、水酸化マグネシウム、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス-(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノール-A(ジフェニルホスフェート)(BADP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、有機ホスホネート、有機ホスフィネート及び/又は複合物品の難燃性を向上しうる一般式(I)を有するホスホネートエステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの成分又は添加剤を含むことができる。実施形態において、ポリマー樹脂は、例えば、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層を内側層に取り付けるための接着剤を含み及び/又は接着剤として機能することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、複合物品を火炎及び/又は熱、例えば300℃を超える温度にさらすと、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層は溶融し、熱反応性材料と混合する。同時に、膨張性グラファイトは膨張する。このプロセスは、熱安定性紡糸ヤーン及び熱反応性材料ではないテキスタイル層の繊維又はヤーンを含むチャーを形成する。このプロセスで形成されたチャーは、燃焼を持続させない層を形成するため、火炎は比較的に速く消える。熱安定性紡糸ヤーン及び熱反応性材料を含むテキスタイル層の高温暴露から生じる材料は、非熱安定性ヤーン材料及び熱反応性材料の不均一溶融混合物である。幾つかの実施形態において、複合物品は、実質的に同じ材料から構成されているが、熱安定性紡糸ヤーンを含まないテキスタイル複合材料と比較したときに、少なくとも20秒増加し又は少なくとも30秒増加した開裂時間を有し、ここで、本明細書に記載の水平火炎試験の方法に従って試験したときに、上記の溶融吸収プロセスは起こらない。他の実施形態において、複合物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験において、少なくとも1つの方向において、20パーセント未満の収縮性を有する。さらに別の実施形態において、複合物品は、ASTM 2894-14による熱収縮試験において、少なくとも1つの方向において、15パーセント未満又は10パーセント未満の収縮性を有する。幾つかの実施形態において、複合物品は、0.01パーセント~19パーセント、又は1パーセント~19パーセント、又は5パーセント~19パーセント、又は10パーセント~19パーセント、又は15パーセント~19パーセント、又は0.01パーセント~15パーセント、又は0.01~8パーセント、又は0.01~6パーセント、又は0.01~1パーセントの収縮性を有する。
【0049】
幾つかの実施形態において、接着剤層は、膨張すると、膨張したグラファイトを含む複数の巻きひげを形成する。ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物の総表面積は、膨張前の同じ混合物と比較したときに、有意に増加する。1つの実施形態において、混合物の表面積は、膨張後に少なくとも5倍増加する。別の実施形態において、混合物の表面積は、膨張後に少なくとも10倍増加する。さらに、巻きひげは、しばしば、膨張した混合物から外側に伸びる。ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物が不連続形態で基材上に配置される実施形態において、巻きひげは、不連続ドメイン間の開口領域を少なくとも部分的に満たすように延びる。さらなる実施形態において、巻きひげは伸長され、少なくとも5対1の長さ対幅のアスペクト比を有するであろう。
【0050】
ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物は、膨張性グラファイトの実質的な膨張を引き起こすことなく、ポリマー樹脂と膨張性グラファイトとの緊密なブレンドを提供する方法によって製造することができる。適切な混合方法としては、限定するわけではないが、パドル混合、ブレンディング及び他の低剪断混合技術が挙げられる。1つの方法において、ポリマー樹脂と膨張性グラファイト粒子との緊密なブレンドは、ポリマー樹脂の重合の前に、膨張性グラファイトをモノマー又はプレポリマーと混合することによって達成される。別の方法において、膨張性グラファイトを溶解したポリマーとブレンドすることができ、ここで、混合後に溶媒を除去する。別の方法において、膨張性グラファイトを、グラファイトの膨張温度より低く、ポリマーの溶融温度より高い温度で、ホットメルトポリマーとブレンドする。ポリマー樹脂と膨張性グラファイト粒子又は膨張性グラファイトの凝集体との緊密なブレンドを提供する方法において、膨張性グラファイトは、グラファイトの膨張前にポリマー樹脂によってコーティング又はカプセル化される。他の実施形態において、ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物を基材に適用する前に、緊密なブレンドが達成される。
【0051】
ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物は、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトの総質量に基づいて、50質量パーセント以下、又は40質量パーセント以下又は30質量パーセント以下の膨張性グラファイトを含む。他の実施形態において、膨張性グラファイトは、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトの総質量に基づいて、20質量パーセント以下、又は10質量パーセント以下、又は5質量パーセント以下を構成する。一般に、ポリマー樹脂と膨張性グラファイトの総質量に基づいて、5質量パーセント~50質量パーセントの膨張性グラファイトが望ましい。幾つかの実施形態において、ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物は、10~49質量パーセントの膨張性グラファイト、又は20~49質量パーセントの膨張性グラファイト、又は30~50質量パーセントの膨張性グラファイト、又は40~49質量パーセントの膨張性グラファイト、又は5~40質量パーセントの膨張性グラファイト、又は5~30質量パーセントの膨張性グラファイト、又は5~20質量パーセントの膨張性グラファイト、又は5~10質量パーセントの膨張性グラファイト、又は10~30質量パーセントの膨張性グラファイト、又は30~40質量パーセントの膨張性グラファイト、又は10~25質量パーセントの膨張性グラファイトを含む。幾つかの実施形態において、望ましい耐炎性能は、さらに少量の膨張性グラファイトで達成されうる。1パーセントという低い装填量は有用でありうる。所望の特性及び得られるテキスタイル複合材料の構造に応じて、他の量の膨張性グラファイトもまた、他の実施形態に適しうる。顔料、フィラー、抗菌剤、加工助剤、安定剤などの他の添加剤も混合物に添加することができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、接着剤は、図1に例示されるような熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)の表面(122)及び/又は任意選択的な追加の層の表面に適用されて、図2に例示されるような接着剤層(130)を形成することができる。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)は、連続層として適用されうる。しかしながら、向上された通気性及び/又は手触りが望まれる幾つかの実施形態において、接着剤層(130)を不連続に適用して、100パーセント未満の表面被覆率を有する接着材料の層を形成することができる。幾つかの実施形態において、その接着層(130)は、0.01~99パーセントの表面被覆率、又は1~99パーセントの表面被覆率、又は10~99パーセントの表面被覆率、又は25~99パーセントの表面被覆率、又は50~99パーセントの表面被覆率、又は75~99パーセントの表面被覆率、又は95~99パーセントの表面被覆率、又は0.01~90パーセントの表面被覆率、又は0.01~70パーセントの表面被覆率、又は0.01~40パーセントの表面被覆率、又は0.01~20パーセントの表面被覆率を有する。100%未満の表面被覆率を提供する不連続な適用は、限定するわけではないが、ドット、グリッド、ライン又はそれらの組み合わせを含む様々なパターンをとることができる。不連続な被覆を伴う幾つかの実施形態において、不連続なパターンの隣接領域間の平均距離は、5ミリメートル(mm)未満、又は好ましくは、3.5mm、2.5mm、1.5mm又は0.5mm未満である。幾つかの実施形態において、不連続パターンの隣接領域間の平均距離は、0.0001mm~3.4mm、又は0.001~3.4mm、又は0.01~3.4mm又は0.1~3.4mm、又は1~3.4mm、又は1.5~3.4mm、又は2.5~3.4mm、又は0.0001~2.5mm又は0.0001~1.5mm又は0.0001~0.5mmである。隣接領域間の平均距離は、隣接ドット間の端から端までの間隔を測定することで測定できる。手触り、通気性及び/又はテキスタイル重量などの特性が重要である実施形態において、90パーセント未満、又は80パーセント未満、又は70パーセント未満、又は60パーセント未満、又は50パーセント未満、又は40パーセント未満、又は30パーセント未満の表面被覆率を使用することができる。幾つかの実施形態において、表面被覆率は、0.1~89パーセント、又は10~89パーセント、又は30~89パーセント、又は50~89パーセント、又は70~89パーセント、又は0.1~80パーセント、又は0.1~60パーセント、又は0.1~40パーセント、又は0.1~20パーセントである。100%未満の被覆率を達成するための1つの方法は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の表面にそして任意選択的なの追加の層に、接着剤を、例えばグラビア印刷によって捺染することによって接着剤を適用することを含む。図6A及び6Bは、接着剤層(130)が、ドット(図6A)及びグリッド(図6B)の不連続パターンで、基材(180)、例えば、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の1つの表面に提供される例を示している。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)の接着剤は、10g/m~100g/mの混合物の付加重量を達成する速度で適用されうる。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)の接着剤は、100g/m未満、又は75g/m未満、又は50g/m未満、又は25g/m未満の付加重量を達成する速度で適用される。幾つかの実施形態において、付加重量は、0.1~99g/m、又は0.1~75g/m、又は0.1~50g/m、又は0.1~25g/m、又は1~99g/m、又は10~99g/m、又は35~99g/m、又は60~99g/m、又は80~99g/mである。
【0053】
図6Aの離散ドット(130)の適用などの不連続適用の1つの例において、ポリマー樹脂-膨張性グラファイト混合物を、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に適用して、多数の離散ドットの形の熱反応性材料の接着層(130)を形成することができる。次に、場合により、追加の層を適用された接着剤層(130)上に配置し、得られたラミネートを2ロール式ローラのニップに通して走行させ、複合物品(100)を2層ラミネートとして形成することができる。膨張すると、離散ドットは、構造的一体性を有する構造のパターンを形成し、それにより、複合物品(100)に十分な保護を提供して、本明細書に記載の向上された特性を達成する。構造的一体性とは、膨張後の熱反応性材料が、任意選択的な追加層又は熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)を実質的に崩壊又はフレーキングすることなく屈曲又は曲げに耐え、本明細書に記載されている厚さ変化試験に従って測定されたときの厚さ測定時の圧縮に耐えることを意味する。幾つかの実施形態において、本発明の複合物品(100)は、熱にさらされると厚さが変化する。
【0054】
膨張後の複合物品の厚さは、膨張前の複合物品の厚さよりも少なくとも0.5mm大きく、例えば、少なくとも0.8mm大きく、少なくとも1mm大きく、少なくとも1.5mm大きく、又は少なくとも2mm大きい。他の実施形態において、火炎及び/又は熱にさらされた後の複合物品の厚さは、火炎及び/又は熱にさらされる前の複合物品の厚さよりも少なくとも20パーセント大きい。
【0055】
幾つかの実施形態において、接着剤層(130)は、様々なパターン、例えば、ドット、ライン又はグリッドで適用されうる。接着材料を適用するための他の方法としては、熱又は火炎にさらされたときに所望の特性が達成されるように接着材料が適用されうるかぎり、スクリーン印刷又はスプレーもしくは散乱コーティング又はナイフコーティングを挙げることができる。
【0056】
幾つかの実施形態において、複合物品(100)は、場合により、内側層(140)及び/又は面層(110)のような1つ以上の追加の層を含むことができ、接着剤層(130)はテキスタイル層(120)と1つ以上の追加の層の少なくとも1つとの間に配置される。図3を参照されたい。幾つかの実施形態において、1つ以上の追加の層は、独立して、テキスタイル、熱安定性テキスタイル、防水通気性材料、熱安定性フィルム又はそれらの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態において、1つ以上の追加の層は、存在する場合に、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)の片面又は両面に向けられ、内側層(140)又は面層(110)を形成することができ、接着剤層(130)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と追加の層との間に少なくとも配置されている。幾つかの実施形態において、追加の接着剤層は各層の間に存在することができ、1つ以上の追加の接着剤層は、独立して、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトを含む接着剤層と同じ又は異なることができる。一般に、ポリマー樹脂及び膨張性グラファイトを含む接着剤層(130)に適していると記載されているいずれかのポリマー樹脂を、追加の接着剤層として使用することができる。幾つかの実施形態において、2つ以上の追加の層が複合物品に存在するならば、追加の層の1つは、接着剤層を介して熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層に接着することができ、他方の層は、当該技術分野で知られている他の方法で接着することができる。例えば、層は一緒に縫い合わされてもよく、ここで、縫い目は1つ以上の層の縁の周りにあり、縫い目は1つ以上の層又は両方の領域全体にある。幾つかの実施形態において、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)、接着剤層(130)及び追加の層からなるか、又はそれらから本質的になり、接着剤層(130)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と追加の層との間に配置される。他の実施形態において、本開示はまた、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)、接着剤層(130)、防水通気性層及び追加の層を含む複合物品(100)に関し、接着剤層(130)は、少なくともテキスタイル層(120)と防水性通気性層との間に配置されている。さらに別の実施形態において、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)の片側(124)に向けられた面層(110)、接着剤層(130)、及び、面層(110)からテキスタイル層(120)の反対側(122)に向けられた内側層(140)を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になり、接着剤層(130)は熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と、面層と内側層(110,140)の両方との間に配置されている。この関係で使用されるときに、から本質的になるとは、複合物品(100)が、指定された順序で互いに参照され、取り付けられ又は結合された層を含み、複合物品に実質的に影響を与える他の追加の層を含まないことを意味する。
【0057】
幾つかの実施形態において、図1に示されるように、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と、接着剤層(130)とを含む。幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンは、260℃の炉試験で5%を超えて収縮しない1つ以上のステープル繊維を含む。所望ならば、熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン、繊維又はフィラメントをテキスタイル層(120)内で使用することができる。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)は、テキスタイル層(120)の少なくとも片側(122)に結合される。
【0058】
別の実施形態において、図2に示されるように、内側層(140)の形態の追加の層は示されている。この実施形態において、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と、テキスタイル層(120)と内側層(140)との間に配置された接着剤層(130)とを含む。接着剤層(130)は、テキスタイル層(120)の片側(122)に取り付けられている。
【0059】
図3に示される実施形態において、2つの追加の層が示されている。複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に隣接している、面層(110)と呼ばれることがある第一の追加の層、例えば、熱反応性材料を含む接着剤である接着剤層(130)、及び、内側層(140)と呼ばれることがある第二の追加の層を含む。幾つかの実施形態において、面層(110)及びテキスタイル層(120)は、接着剤層(130)と同じ又は異なることができる接着剤(114)を使用して、一緒にラミネート化又は結合されることができる。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)の内側(122)に配置される。幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンは、260℃の炉試験で5%を超えて収縮しない1つ以上のステープル繊維を含む。幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン、繊維又はフィラメント(40)もテキスタイル層(120)内で使用することができる。幾つかの実施形態において、面層(110)の外面(112)は、環境に露出され、視覚化されうる。接着剤層(130)は、熱反応性材料を含む接着剤層が見えず、面層(110)の外面(112)に色の変化又は表面変形を引き起こさないように、面層(110)に侵入しないか、又は接触しない。幾つかの実施形態において、面層(110)の材料に応じて、外面(112)は、衣服の外観及び感触を提供する表面トポロジーを有する。複合物品(100)の美的外観を改善するために、熱反応性材料を含む接着剤層(130)は、面層(110)の外面(112)上に望ましくないグリッド又は暗色パターンを形成する変形を引き起こすべきでない。暗色パターンは、熱安定性紡糸ヤーン(120)を含むテキスタイル層(120)と比較して、熱反応性材料を含む接着剤層(130)の典型的に暗い色の結果であり、望ましくない。具体的には、面層(110)の外面(112)は、変形することなく、例えば、熱反応性材料を含む接着剤層(130)からのくぼみ又は隆起がないように見える。
【0060】
幾つかの実施形態において、1つ以上の追加の層を、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に取り付けることができ、その結果、複合物品(100)、例えば、衣服において、追加の層は、衣服の外側、すなわち衣服の着用者の反対側に向けられた面層(110)である。任意選択的な面層(110)(図3に示される例)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に取り付けられた様々な材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、面層(110)は、着色又は捺染された比較的に軽量の材料、例えば、織物、編物及び不織布を含むテキスタイルを含むことができる。他の実施形態において、面層(110)は、フィルム、例えば、多孔性(通気性)フィルム又は非多孔性(非通気性)フィルムであることができる。本明細書で使用されるときに、フィルムという用語は、表面積と厚さの間のより大きな比率を有する、すなわち本質的に二次元の連続層を意味する。幾つかの実施形態において、フィルムは、基材上のコーティングとして提供することができ、又はそれは自立して別個の物体として取り扱うことができる。さらに別の実施形態において、面層(110)は通気性材料を含む。本明細書で使用されるときに、通気性という用語は、材料が1000グラム/平方メートル/24時間(g/m/24hr)を超える水蒸気透過度(MVTR)を有することができることを意味する。他の実施形態において、面層(110)のg/m/24hrとして表されるMVTRは、5000以上又は10,000以上又は20,000以上でありうる。幾つかの実施形態において、面層(110)は、限定するわけではないが、ポリアミド、ナイロン(例えば、30デニール(D)ナイロン、40Dナイロン、又は70Dナイロン)、ナイロンツイル(例えば、30Dナイロンツイル、40Dナイロンツイル、又は70Dナイロンツイル)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン又はそれらの多層ラミネートを含むことができる。幾つかの実施形態において、面層(110)は防水性であることができ、及び/又は面層は、耐久性のある耐水性(DWR)コーティングの層でコーティングされうる。幾つかの実施形態において、このDWRコーティングは、面層(110)の外側(112)にあることができる。別の実施形態において、面層はコーティングされていないが、防水材料を含む。
【0061】
幾つかの実施形態において、使用されるときに、面層(110)は、例えば、ラミネート化及び/又は接着を含む既知の技術のいずれかを使用して、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に取り付けられることができる。幾つかの実施形態において、面層は、接着剤を使用して、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層に取り付けられる。適切な接着剤は、上述の接着剤のいずれかを含むことができる。
【0062】
幾つかの実施形態において、1つ以上の追加の層を、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に取り付けることができ、その結果、複合物品、例えば、衣服において、追加の層は、衣服の内側、つまり衣服の着用者に近い側に向けられている内側層(140)であることができる。図2及び3に示されるように、内側層(140)を含む実施形態において、接着剤層(130)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)又は内側層(110)上に配置されうる。幾つかの実施形態において、接着剤層(130)は、接着剤層(130)が内側層(140)と熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)との間に接着結合を提供するように適用することができる。幾つかの実施形態において、内側層(140)は、テキスタイル、例えば、編物、織物又は不織布材料又はフィルムであることができる。幾つかの実施形態において、内側層(140)は、図2に示されるように、接着剤層(130)によって、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)に取り付けられることができる。幾つかの実施形態において、内側層(140)は、熱安定性バッカーを含むことができる。熱安定性バッカーとして使用するのに適した材料としては、例えば、本明細書に提示される溶融及び熱安定性試験に従って溶融できないテキスタイルを挙げることができる。適切な熱安定性テキスタイルバッカーの例としては、アラミド、難燃剤(FR)綿、PBI、PBO、FRレーヨン、モダクリルブレンド、ポリアミン、カーボン、グラスファイバー、PANならびにそれらのブレンド及び組み合わせが挙げられる。
【0063】
他の実施形態において、1つ以上の追加の層は、独立して、例えば、フィルム、編物、織物、不織布又はそれらの組み合わせを含むことができる。さらに別の実施形態において、内側層(140)は、火炎又は熱にさらされたときの複合材料(100)の性能をさらに向上させるために、通気性もしくは非通気性の熱安定性対流バリア材料を含むことができる。幾つかの実施形態において、1つ以上の追加の層は、フィルム、例えば、ポリイミド、シリコーン、又は未延伸PTFE又は延伸PTFE(ePTFE)などのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることができる熱安定性対流バリア材料であることができる。熱安定性対流バリアは、対流熱源にさらされたときに、その背後にある層又は基材への対流熱伝達を防ぐ。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の実施形態で使用するための対流バリアは、本明細書に記載の方法に従って試験したときに、熱暴露後の最大通気性が10フレイジャー未満である。幾つかの実施形態において、対流バリアは、5フレイジャー未満の熱暴露後の通気性を有する。幾つかの実施形態において、対流バリアは、3フレイジャー未満の熱暴露後の通気性を有する。幾つかの実施形態において、対流バリアは、0.1~9.5フレイジャー、又は0.1~5フレイジャー、又は0.1~2フレイジャー、又は1~4.5フレイジャー、又は1~7フレイジャーの熱暴露後の通気性を有する。
【0064】
さらなる実施形態において、図4に示されるように、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と、テキスタイル層(120)と内側層との間に配置された接着剤層(130)とを含む。幾つかの実施形態において、内側層は、多層の熱安定性バリア(142)を含むことができる。幾つかの実施形態において、熱安定性バリア(142)は、熱安定性フィルム(144及び146)の2つ以上の層、及び例えば、その間のポリマー層(148)を含むことができる。幾つかの実施形態において、ポリマー層(148)は、防水性、通気性、空気不透過性又はそれらの組み合わせであることができる。
【0065】
図5に示されるものなどのさらなる実施形態において、複合物品(100)は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層(120)と、接着剤層(130)とを含む。幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンとは異なる少なくとも1つの他のヤーン、繊維又はフィラメントもテキスタイル層(120)内で使用することができる。幾つかの実施形態において、複合物品(100)は、接着剤層(130)の反対側の熱安定性バリア(144)の側に配置されたテキスタイルバッカーとして内側層(150)をさらに含むことができる。幾つかの実施形態において、テキスタイルバッカーは、離散ドットの形態で追加の接着剤層(152)で取り付けることができる。幾つかの実施形態において、テキスタイルバッカーは、本明細書に記載の溶融及び熱安定性試験に合格する材料などの熱安定性テキスタイルバッカーである。
【0066】
さらなる実施形態は、第一の表面及び第二の表面を有する熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層を提供すること、接着剤を提供すること、前記接着剤の層を、前記熱安定性紡ヤーンを含むテキスタイル層の少なくとも1つの表面に適用することを含む、複合物品を製造する方法に関する。この方法は、少なくとも1つの追加の層を提供すること、及び、前記少なくとも1つの追加の層を前記接着剤層に取り付ける工程をさらに含むことができる。前記接着剤層に前記少なくとも1つの追加の層を適用する工程は、架橋可能な接着剤の場合には、接着剤の層を適用した直後に行うことができる。典型的に、架橋可能な接着剤を使用する実施形態において、前記接着剤の層が前記熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層に適用され、そして前記少なくとも1つの追加の層が、例えば、1秒未満から1分以内の間、前記接着剤の層に適用される連続的な方法を行う。幾つかの実施形態において、接着剤が熱可塑性接着剤であるならば、接着剤の層の適用の直後、又は接着剤の層の適用の数日又はさらには数週間後に、少なくとも1つの追加の層を適用することができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの追加の層は、圧力を介して接着剤層に接着することができ、例えば、2層の複合物品を2つのローラのニップに通すことができる。幾つかの実施形態において、任意の第二の又は後続の追加の層を、上記の方法のいずれかによって、テキスタイル層又は第一の追加の層に適用することができる。幾つかの実施形態において、第二の又は後続の追加の層は、第一の追加の層の適用と同じように、例えば、第一の追加の層を適用する適用プロセス中に、又は第一の追加の層の適用後の任意の期間に適用することができる。幾つかの実施形態において、この方法は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層に耐久性のある耐水性(DWR)コーティングを適用する工程をさらに含むことができる。幾つかの実施形態において、内側層を接着剤層に取り付けて製品を形成することができる。本明細書で使用されるときに、「取り付ける」という用語は、ある表面を別の表面に結合、接着固定又は他の方法でラミネート化することを意味する。ラミネート化技術及びラミネート化接着剤の使用は当該技術分野で知られている。
【0067】
幾つかの実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層はまた、可燃性又は不燃性であることができる。材料は、垂直火炎試験で試験され、可燃性か不燃性かを判断する。
【0068】
本明細書に記載のASTM F1930衣服可燃性試験(熱マネキン)によって試験したときに、火炎にさらされた後の予測される体の火傷の割合を低減するための方法も提供される。幾つかの実施形態において、この方法は、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層と、少なくとも1つの追加層とを含み、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層と任意選択的な少なくとも1つの追加層との間に接着層を有する複合物品を提供すること、テキスタイル層が熱源に向けられるASTM F1930に複合物品を供すること、テキスタイル物品が熱安定性紡糸ヤーンを含まない同等の複合物品を試験すること、及び、パーセント差を計算することを含む。本明細書で使用されるときに、「同等の複合布帛」は、本質的に同じ繊維を含むが、熱安定性紡糸ヤーンを含まないテキスタイルから形成された複合物品を意味する。例えば、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層が5番目ごとのピック及び5番目ごとのエンドが熱安定性紡糸ヤーンであるポリエステル布であるならば、同等の複合材料布帛はポリエステル布である。幾つかの実施形態において、この方法は複合材料から衣服を構築することをさらに含み、ここで、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層は、着用者の体から離れ、かつ、火炎の発生源に向いている。幾つかの実施形態において、同等の複合物品と比較した体の火傷の減少は、最大10パーセント少なく、又は最大15パーセント少なく、又は最大20パーセント少なく、又は最大25パーセント少なくなることができる。
【0069】
1つの実施形態において、本明細書に記載のとおりの複合物品は、危険な環境での作業者のための衣服での使用に適している。衣服は、耐収縮性、通気性、防水性及び/又は難燃性であると同時に、軽量で柔軟性があり、快適に着用でき、良好な色堅牢性、捺染性及び耐摩耗性を備えていることができる。実施形態において、複合物品は、厚さが0.5mm未満であり、例えば、0.48mm未満、0.40mm未満、0.35mm未満、0.25mm未満、0.21mm未満、又は0.2mm未満である。幾つかの実施形態において、複合物品は、0.1~0.49mm、又は0.1~0.35mm、又は0.1~0.25mm、又は0.1~0.21mm、又は0.1~0.47mm、又は0.2~0.47mm、又は0.3~0.47mmの厚さを有する。実施形態において、複合物品は、275g/m未満、例えば、255g/m未満、240g/m未満、220g/m未満、200g/m未満、190g/m未満、185g/m未満、171g/m未満、又は160g/m未満の平均重量を有することができる。幾つかの実施形態において、複合物品は、5~274g/m、又は10~274g/m、又は50~274g/m、又は100~274g/m、又は150~274g/m、又は250~274g/m、又は5~260g/m、又は5~220g/m、又は5~175g/m、又は5~125g/m、又は5~50g/m、又は5~1g/mの平均重量を有する。
【0070】
典型的には、軽量の布帛は比較的に引き裂きやすい。幾つかの実施形態において、本開示の複合物品は、熱安定性紡糸ヤーンなしで製造された同じ布帛と比較したときに、エルメンドルフ引裂強度を少なくとも10%改善することができる。他の実施形態において、複合物品は、開示された熱安定性紡糸ヤーンなしで製造された同等の布帛と比較したときに、15%超、又は20%超、又は30%超のエルメンドルフ引裂強度を有することができる。
【0071】
1つの実施形態において、本明細書で提供される熱保護性能ASTM F2703-08試験方法に従って試験されるときに、複合物品(100)は、20以上の熱保護性能を有する。別の実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の外面(112)を火炎にさらすと、複合物品(100)は、JIS可燃性試験(JIS L1091 A-1法)によって試験したときに、3秒間の暴露後に、5cm未満の燃焼面積を有する。別の実施形態において、熱安定性紡糸ヤーンを含むテキスタイル層の外面(112)を火炎にさらすと、複合物品(100)は、JIS可燃性試験(JIS L1091 A-1法)によって試験したときに、60秒の暴露後に、50cm未満の燃焼面積を有する。
【0072】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法に従って製造された複合物品は、好ましくは、1000グラム/平方メートル/24時間(g/m/24hr)を超える、又は3000g/m/24hrを超える、又は5000g/m/24hrを超える、又は7000g/m/24hrを超える、又は9000g/m/24hrを超える、又は10,000g/m/24hrを超える、又はそれ以上の水蒸気透過度(MVTR)を有する。幾つかの実施形態において、複合物品は、本明細書に記載の水平火炎試験の方法によって試験したときに、50秒を超える、60秒を超える、又はさらに120秒を超える開裂時間を有する。幾つかの実施形態において、複合物品は難燃性でもあり、本明細書に記載の水平火炎試験及び自己消火性試験方法によって試験したときに、20秒未満のアフターフレームを有することができる。さらなる実施形態において、複合物品は、15秒未満、又は10秒未満、又は5秒未満のアフターフレームを有する。幾つかの実施形態において、複合物品は、0.01~14秒、又は0.01~10秒、又は0.01~7秒、又は0.01~3秒、又は1~14秒、又は5~14秒、又は10~14秒のアフターフレームを有する。幾つかの実施形態において、複合物品は、水平火炎試験で試験されたときに、実質的に溶融滴下挙動を示さない。別の実施形態において、複合物品は、本明細書に記載の方法に従って形成され、本明細書に可撓性及び手触りに関して記載された試験、及び、水平火炎試験及び自己消火性試験によって測定したときに、300未満、又は250未満、又は200未満、又は1~299、又は50~299、又は75~299、又は150~299、又は200~299の手触り、そして20秒未満、又は15秒未満又は10秒未満、又はゼロのアフターフレームを有することができる。
【0073】
幾つかの実施形態において、本開示の複合物品はまた、熱安定性紡糸ヤーンなしで製造された同様の複合物品と比較したときに、より短いチャー長さを提供することができる。幾つかの実施形態において、チャー長さは、20%以上、又は30%以上、又は40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上改善することができる。幾つかの実施形態において、チャー長さは、20%~100%、又は50%~100%、又は75%~100%、又は90%~100%、又は20%~85%、又は20%~70%、又は20%~60%、又は20%~40%、又は20%~30%だけ改善することができる。チャー長さは、ASTMD6413によって測定できる。
【実施例
【0074】
本発明の範囲を限定することを意図することなく、以下の実施例は、本発明がどのように製造及び使用されうるかを示す。
【0075】
試験方法
熱収縮試験
熱収縮試験又は熱寸法変化試験は、物品、例えば、ラミネートの収縮度を決定するために使用され、ASTM F2894-14によって測定される。報告されるデータは、3回の反復に基づく平均収縮度である。
【0076】
水平火炎試験
この試験は、一般に、MIL-C 83429Bをモデルにしたものである。75mmx250mmのテキスタイル複合材サンプル(3インチx 10インチ)を、バインダークリップを使用してスチール製固定具(長さ400mmx幅75mm、中央窓の長さ350mm、幅50mm)に固定する。サンプルは、スチール製固定具の窓に存在するテキスタイル複合材の領域を妨げることなく、テキスタイル複合材の縁を固定するようにクランプされる。固定具内のサンプルは、90mmの火炎の中で40mmの高さで水平に配置される(Meekerバーナーを使用した2psiのブタンに基づく)。サンプルは火炎にさらされ、対流バリアが割れるか穴が形成されることによって対流バリアが開裂し(又は対流バリアが使用されていない場合はフェーステキスタイルに穴が形成され)、そして材料の亀裂又は開口部を通して見ると、火炎からの光が明確に見えるまで、時間を記録する。その後、サンプルを火炎から取り出す。記録される時間は、水平火炎開裂時間と呼ばれる。サンプルは、溶融滴下又は落下液滴について観察される。
【0077】
自己消火性試験
上記の水平火炎試験において材料サンプルを火炎から取り出した後に、材料をアフターフレームについて観察し、アフターフレーム時間を記録する。サンプルに溶融滴下又は落下液滴が示されるならば、それも記録する。アフターフレームが観察されないならば、又は取り出し時にアフターフレームが観察されたが、火炎から取り出してから5秒以内に消火するならば、その材料は自己消火性であると言われる。
【0078】
垂直火炎試験
試験は、ASTM D6413試験規格に準拠している。サンプルは12秒間火炎にさらされる。アフターフレーム時間は3つのサンプルで平均化される。2秒を超えるアフターフレームのあるテキスタイルは可燃性と考えられる。
【0079】
可燃性試験
サンプルの可燃性は、JIS-1091 A1法によって測定される。複合物品サンプルの350mmx 250mmシートを、火炎長45mmのバーナーで1分間加熱した燃焼試験ボックスに取り付ける。アフターフレーム時間、アフターグロー時間及び燃焼面積を測定する。火炎が火炎処理の3秒後及び60秒後に取り出されるように、2つの追加サンプルを使用して試験を繰り返す。
【0080】
溶融及び熱安定性試験
試験は、テキスタイル材料の熱安定性を決定するために使用される。この試験は、NFPA 1975、2004年版のセクション8.3に記載されている熱安定性試験に基づく。試験炉は、ISO 17493で指定されている熱風循環炉である。試験は、ASTM D 751、Standard Test Methods for Coated Fabricsに従って、高温でのブロッキング抵抗の手順(セクション89~93)を使用して実施されるが、以下の変更を伴う:
o 100mmx100mmx3 mm(4インチx4インチx1/8インチ)のホウケイ酸ガラス板を使用する。
o 265℃、+3/-0℃(510°F、+5/-0°F)の試験温度を使用する。
【0081】
ガラス板を炉から取り出した後に、試験片を最低1時間冷却する。
【0082】
ガラス板に付着している、展開時にそれ自体に付着している、又は溶融又は滴下の形跡を示しているサンプル側は、溶融可能であると考えられる。溶融可能な側の証拠がないサンプル側は、熱的に安定していると考えられる。
【0083】
水蒸気透過度(MVTR)
水蒸気透過度(MVTR)を測定するために使用される試験の説明を以下に示す。この手順は、フィルム、コーティング及びコーティングされた製品の試験に適していることがわかっている。
【0084】
手順において、35重量部の酢酸カリウム及び15重量部の蒸留水からなる約70mlの溶液を、133mlのポリプロピレンカップであって、その口で6.5cmの内径を有するカップに入れる。米国特許第4,862,730号明細書(Crosby)に記載されている方法で試験して、最小MVTRが約85,000g/m/24hrの延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜をカップのリップにヒートシールして、溶液を含むぴんと張った防漏性微孔性バリアを作成する。
【0085】
同様の延伸PTFE膜を水浴の表面に取り付ける。水浴アセンブリは、温度制御された部屋及び水循環浴を利用して、23℃+0.2℃で制御される。
【0086】
試験されるサンプルは、試験手順を実行する前に、23℃の温度及び50パーセントの相対湿度で条件を調整することができる。微孔性ポリマー膜が水浴の表面に取り付けられた延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と接触するようにサンプルを配置し、カップアセンブリを導入する前に少なくとも15分間平衡化させる。
【0087】
カップアセンブリは、最も近い1/1000gまで秤量され、試験サンプルの中心に対して逆さまに配置される。
【0088】
水輸送は、水浴中の水と飽和塩溶液との間の駆動力によって提供され、その方向への拡散によって水流束を提供する。サンプルを15分間試験し、その後に、カップアセンブリを取り外し、1/1000g以内で再度計量する。
【0089】
サンプルのMVTRは、カップアセンブリの重量増加から計算され、24時間あたりのサンプル表面積1平方メートルあたりの水のグラム数で表される。
【0090】
膨張試験
TMA(熱機械分析)は、膨張性グラファイト粒子の膨張を測定するために使用される。膨張は、TA InstrumentsTMA2940機器で試験される。サンプルを保持するために、直径約8mm、高さ12mmのセラミック(アルミナ)TGAパンを使用する。直径約6mmのマクロ膨張プローブを使用して、パンの底をゼロに設定する。次に、TMAプローブで測定した深さ0.1~0.3mmの膨張性グラファイトのフレークをパンに入れる。炉を閉じて、初期サンプル高さを測定する。炉は10℃/分のランプ速度で25℃から600℃に加熱される。TMAプローブの変位を温度に対してプロットし、変位を膨張の尺度として使用する。
【0091】
エルメンドルフ引裂抵抗
エルメンドルフ引裂強度試験をASTM 1424によって実施した。報告されたデータは、経糸及び緯糸の両方向における3つの試験の平均であり、単位はキログラムで提供される。
【0092】
穿刺、伝播引裂抵抗試験
ASTM D-2582に従って、穿刺、伝播引裂抵抗試験を実施した。報告されたデータは、経糸方向のみの3回の繰り返しの平均であり、単位はキログラムで提供される。
【0093】
ヤーン収縮試験
それぞれ長さ25.4センチメートル(cm)の3つのヤーンを切断し、粘着性を最小限にするために、PTFEフィルムでライニングされた矩形のパンに配置した。パンは、ヤーンがパンの縁に触れることなく平らに置くことができるように十分に大きかった。パンを260℃の温度に設定した炉に5分間入れ、次いで、炉から取り出した。サンプルが冷えたら、各サンプルの長さを測定した。収縮率を次の式に従って決定した。
%収縮率=[(初期長さ-炉の後の長さ)/初期長さ]*100
【0094】
%収縮率は、3つの試験結果の平均である。
【0095】
ヤーン#1(93/5/2 NOMEX(登録商標)/KEVLAR(登録商標)/P140紡糸ヤーン)の調製
【0096】
これは、スプリングフィールドLLC(ミリケン)から入手した市販のヤーンであり、NOMEX(登録商標)アラミド、KEVLAR(登録商標)アラミド及びP140帯電防止ヤーンをブレンドし、カード加工し、延伸し、エアジェット紡糸したものである。ヤーンのサイズは38/1NeC(140デニール)である。
【0097】
ヤーン#2(78/20/2のKermal SAS, Alsace,FranceからのKERMEL(登録商標)/TWARON(登録商標)/Teijin Aramid, Conyers, GAからのP140紡糸ヤーン)の調製
【0098】
KERMEL(登録商標)(マリンブルー溶液染色)、黒色TWARON(登録商標)及びP140帯電防止ステープル繊維を、Kermel Inc.から入手し、上記の比率でブレンドし、カード加工し、ローイングにし、延伸し、リング精紡機でリング紡糸した。最終的なヤーンのサイズは35/1NeC(150デニール)であった。
【0099】
約25.4センチメートル(cm)の長さを有するヤーン#1及びヤーン#2の個々のサンプルを、260℃の温度に設定された炉に入れ、炉内に5分間放置した。炉から取り出した後に、ヤーン#1は4.5~5.0%の範囲の収縮率を示した。一方、ヤーン#2のサンプルは、1%未満の収縮率を示した。
【0100】
接着剤#1の調製
難燃性ポリウレタン樹脂は、最初に、共有されている米国特許第4,532,316号明細書に従って樹脂を形成し、反応器に約20質量%の量のリン系難燃性材料を添加することによって調製された。ポリウレタン樹脂を形成した後に、70グラムのポリウレタン樹脂を、900マイクロメートルを超える膨張を有する18グラムの膨張性グラファイト及び追加の18グラムの別のリン系難燃性材料と80℃にて撹拌容器内で混合した。ポリマー樹脂を80℃に加熱し、膨張性グラファイトを添加し、次いで、均一な分散液が形成されるまで低せん断で手で混合した。混合物を冷却し、そのまま使用した。
【0101】
比較布帛A
比較布帛Aは平織布であった(Milliken & Company, Spartanburg, South Carolina, USAから入手可能)。この布帛は両方向に70/34ポリエステルマルチフィラメントテクスチャードヤーン(39.4ヤーン/cm)を有する。布帛の重量は約75グラム/メートル(2.2オンス/平方ヤード)であった。
【0102】
比較ラミネートAの調製
比較布帛Aは、W.L.Gore and Associates, Elkton, Marylandから入手可能なGORETEX(登録商標)多孔質ePTFE膜(部品番号18050C)に接着剤#1を使用してラミネート化した。布帛表面に約57%の布帛被覆を提供するように接着剤#1をグラビア印刷した。多孔質ePTFE膜を接着剤の上に置き、2つのローラのニップに通してロールした。ラミネートをロール上に置いて硬化させた。ラミネートの質量は約170グラム/メートル(5.0オンス/平方ヤード)であった。
【0103】
布帛#1の調製:
布帛#1は、70/34テクスチャードポリエステルフィラメント(Milliken and Co.)を使用して平織として製造され、ヤーン#1を10番目のエンド及びピックごとに挿入した。経糸方向に約41.3本/cm、緯糸方向に40.2本/cmの布帛(105ヤーン/インチ×102ヤーン/インチ)を製造した。布帛の質量は88グラム/メートル(2.6オンス/平方ヤード)であった。
【0104】
ラミネート#1の調製
布帛#1は、W.L.Gore and Associates, Elkton, Marylandから入手可能なGORETEX(登録商標)多孔質ePTFE膜(部品番号18050C)に接着剤#1を使用してラミネート化した。布帛表面に約57%の布帛被覆を提供するように接着剤#1をグラビア印刷した。多孔質ePTFE膜を接着剤の上に置き、2つのローラのニップに通してロールした。ラミネートをロール上に置いて硬化させた。ラミネートの質量は約156グラム/メートル(4.6オンス/平方ヤード)であった。
【0105】
布帛#2の調製:
布帛#2は、70/34テクスチャードポリエステルフィラメント(Milliken and Co.)を使用して平織として製造され、ヤーン#1を5番目のエンド及びピックごとに挿入した。経糸方向に約39.4本/cm、緯糸方向に38.6本/cmの布帛(100ヤーン/インチ×98ヤーン/インチ)を製造した。布帛の質量は81グラム/メートル(2.4オンス/平方ヤード)であった。
【0106】
ラミネート#2の調製
布帛#2は、W.L.Gore and Associates, Elkton, Marylandから入手可能なGORETEX(登録商標)多孔質ePTFE膜(部品番号18050C)に接着剤#1を使用してラミネート化した。布帛表面に約57%の布帛被覆を提供するように接着剤#1をグラビア印刷した。多孔質ePTFE膜を接着剤の上に置き、2つのローラのニップに通してロールした。ラミネートをロール上に置いて硬化させた。ラミネートの質量は約174グラム/メートル(5.14オンス/平方ヤード)であった。
【0107】
布帛#3の調製
布帛#3は、70/34テクスチャードポリエステルフィラメント(Milliken and Co.)を使用して平織として製造され、ヤーン#2を10番目のエンド及びピックごとに挿入した。経糸方向に約41.3本/cm、緯糸方向に40.2本/cmの布帛(105ヤーン/インチ×102ヤーン/インチ)を製造した。布帛の質量は90グラム/メートル(2.65オンス/平方ヤード)であった。
【0108】
ラミネート#3の調製
布帛#3は、W.L.Gore and Associates, Elkton, Marylandから入手可能なGORETEX(登録商標)多孔質ePTFE膜(部品番号18050C)に接着剤#1を使用してラミネート化した。布帛表面に約57%の布帛被覆を提供するように接着剤#1をグラビア印刷した。多孔質ePTFE膜を接着剤の上に置き、2つのローラのニップに通してロールした。ラミネートをロール上に置いて硬化させた。ラミネートの質量は約187グラム/メートル(5.51オンス/平方ヤード)であった。
【0109】
布帛#4の調製
布帛#3は、70/34テクスチャードポリエステルフィラメント(Milliken and Co.)を使用して平織として製造され、ヤーン#2を5番目のエンド及びピックごとに挿入した。経糸方向に約39.4本/cm、緯糸方向に38.6本/cmの布帛(100ヤーン/インチ×98ヤーン/インチ)を製造した。布帛の質量は92グラム/メートル(2.7オンス/平方ヤード)であった。
【0110】
ラミネート#4の調製
布帛#4は、W.L.Gore and Associates, Elkton, Marylandから入手可能なGORETEX(登録商標)多孔質ePTFE膜(部品番号18050C)に接着剤#1を使用してラミネート化した。布帛表面に約57%の布帛被覆を提供するように接着剤#1をグラビア印刷した。多孔質ePTFE膜を接着剤の上に置き、2つのローラのニップに通してロールした。ラミネートをロール上に置いて硬化させた。ラミネートの質量は約187グラム/メートル(5.52オンス/平方ヤード)であった。
【0111】
ラミネートサンプル1~4及び比較ラミネートAは、熱寸法変化試験、ASTM F2894-14によって試験した。報告されるデータは、3回の反復に基づく平均収縮である。
【0112】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B