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特許7362932ベルトパッケージ補強要素を備えるタイヤ
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  • 特許-ベルトパッケージ補強要素を備えるタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】ベルトパッケージ補強要素を備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20231010BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60C9/18 B
B60C9/00 C
B60C9/18 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022537775
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 IB2020062094
(87)【国際公開番号】W WO2021124186
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102019000024442
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】マルコ コレッティ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ スピリ
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-161008(JP,A)
【文献】特開2003-285609(JP,A)
【文献】特開平09-136507(JP,A)
【文献】特表2011-521832(JP,A)
【文献】特開2014-205397(JP,A)
【文献】特開2015-020492(JP,A)
【文献】特開昭60-189606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカス(2)と、ベルトパッケージ(3)と、トレッド(4)と、を備えるタイヤ(1)であって、
前記タイヤ(1)は、3から20の範囲のメッシュ数を有する織られたテキスタイル材料製の補強ネット(7)を少なくとも備え、
糸は前記タイヤの長手方向軸線(X)に対して25°と65°との間で配向され、
前記補強ネット(7)は、前記トレッド(4)の少なくとも中央の領域に配置されて、前記ベルトパッケージ(3)の内部に、または前記ベルトパッケージ(3)と前記トレッド(4)との間に配置され、
前記織られたテキスタイル材料は10%以上の破断伸びを有し、
前記補強ネットは、前記ベルトパッケージの横方向の長さよりも短い横方向の長さを有し、
前記ベルトパッケージ(3)は、少なくとも1対のスチールベルト(5aおよび5b)と、キャッププライ(6)と、を備え、
前記補強ネット(7)は、前記トレッド(4)に最も近い前記スチールベルト(5b)と前記キャッププライ(6)との間に配置され、
前記タイヤ(1)は、複数の周方向溝を有するトレッド踏面を備えており、
前記補強ネット(7)は、前記複数の周方向溝のうち最もタイヤ幅方向外側に配置された一対の周方向溝よりもタイヤ幅方向内側のみに配置されている、タイヤ(1)。
【請求項2】
織られたテキスタイル材料製の前記補強ネット(7)は、8から16の範囲のメッシュ数を有することを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記補強ネット(7)は、15%以上の破断伸びを有する織られたテキスタイル材料製であることを特徴とする、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記補強ネット(7)は、20%以上の破断伸びを有する織られたテキスタイル材料製であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記補強ネット(7)はナイロン製であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ベルトパッケージ(3)は少なくとも1対のスチールベルト(5aおよび5b)を備え、
前記補強ネット(7)は、前記トレッド(4)に最も近い前記スチールベルト(5b)上に配置されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記補強ネット(7)は、前記補強ネット(7)と周囲のゴムとの間の接着を保証することができる接着物質で覆われていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトパッケージを支持するように設計された織物プライを備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知であるように、タイヤはベルトパッケージを備える。ベルトパッケージは、一般にスチールベルトおよびキャッププライから構成される。スチールベルトは、基本的にスチールネットを創出する。スチールネットは、基本的にホイールの補強部を形成する。
【0003】
ラジアルタイヤにおけるスチールベルトの目的は、タイヤが路面と相互作用する領域のカーカスを安定させて、ステアリングホイールから路面に、ステアリングコマンドを正しくかつ効果的に伝達することである。スチールベルトに対するダメージがタイヤの通常の作動に問題を引き起こす可能性があることは、誰でもすぐに理解できる。
【0004】
ずっと以前から、タイヤの分野では、より高い耐久性を保証する技術的特性を有するタイヤへの必要性が、感じられてきた。当業者には既知であるように、タイヤの耐久性を最も保証する要素のうちの1つは、ベルトパッケージの抵抗である。
【0005】
ベルトパッケージの抵抗を改善するために、メーカーは通常、重い補強要素を追加する、および/またはその材料を変更する。このような解決策によって、より大きな抵抗を保証することはできる。しかしながら、このような解決策は、重量の増加に関する欠点につながる。その結果、転がり抵抗が悪化し、タイヤのコストが増加する。
【0006】
ベルトパッケージの抵抗を検証するためには、「プランジャーテスト」として既知のテストが使用される。このテストは、基本的に、タイヤが動作中に受ける衝撃に対するタイヤベルトパッケージの抵抗を測定するものである。特に、このテストでは、先端が丸いプランジャーを使用する。これが空気入りタイヤのトレッドの中央領域を押す。そうすることによって、カーカスを貫通するのに必要なエネルギーを測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、従来技術に典型的であり、タイヤの重量およびコストの増加に関係するこれらの欠点の影響を受けずに、ベルトパッケージの抵抗の点で改善を保証できる解決策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主題は、カーカスと、ベルトパッケージと、トレッドと、を備えるタイヤである。前述のタイヤは以下を特徴とする。すなわち、前述のタイヤは、3から20の範囲のメッシュ数を有する織られたテキスタイル材料製の補強ネットを少なくとも備える。糸は、タイヤの長手方向に対して25°と65°との間で配向される。前述の補強ネットは、トレッドの少なくとも中央の領域に配置されて、ベルトパッケージの内部に、またはベルトパッケージとトレッドとの間に配置される。前述の織られたテキスタイル材料は、10%以上の破断伸びを有する。前述の補強ネットは、ベルトパッケージの横方向の伸長部よりも短い横方向の伸張部を有する。
【0009】
「メッシュ」は、リニアインチあたりのメッシュ数に対応する測定単位である。
【0010】
本出願において、「織られたテキスタイル材料」とは、結び目などの制約なしに糸が絡み合っている材料を意味する。つまり、各糸は他の糸の上を自由にスライドできる。
【0011】
この織られたテキスタイル材料は、垂直荷重(たとえば道路上の石のような外部入力)を受けてそれ自体が容易に膨張でき、その結果、外部荷重入力をより多くの下のスチールコードに分散させることができなければならない。もし材料が糸と糸との間に結び目を(または糸の間の相対的な動きを妨げる類似の形状でさえも)含んだとしたら、これが、単一の結び目に対する応力の集中に、したがって、下のベルトパッケージの一点に対する応力の集中に反映され、本発明の目的とは反対の効果を伴うであろう。
【0012】
補強ネットが、上記に示されるメッシュ数よりも少ないメッシュ数を有する場合、ベルトパッケージを貫通するために必要なエネルギーの増加という点で効率が低下する。実際、もしメッシュ数が上記に示される範囲よりも少ない場合、補強ネットは、ベルトパッケージ上の力の効果的な分布を保証できない。一方、補強ネットが上記に示される範囲よりも多くのメッシュ数を有する場合、ベルトパッケージを貫通するために必要なエネルギーの更なる増加は得られない。同時に、生産性、重量、コスト、およびトレッドの不規則な摩耗の点で、不利な点がある。後者の不利な点は、当業者であればすぐにわかるように、補強ネットの過度の剛性に由来するものである。
【0013】
好適には、補強ネットは、8から16の範囲のメッシュ数を有し、より好適には12から16のメッシュ数を有する。
【0014】
さらに、上記で定義した補強ネットの糸の配向は、タイヤの加硫ステップ中に、補強ネットが有害な張力を受けることなく伸びることができることを保証する。
【0015】
さらに、織られたテキスタイル材料の破断伸びが10%未満の場合に、補強ネットが、プランジャー荷重をより広い領域に分散させるのに必要な十分な弾性を有さないことが、実験的に証明されている。
【0016】
補強ネットは、好適には15%以上の破断伸び、より好適には20%以上の破断伸びを有する織られたテキスタイル材料製である。
【0017】
補強ネットは、好適にはナイロン製である。
【0018】
好適には、ベルトパッケージは、少なくとも1対のスチールベルトを備える。補強ネットは、トレッドに最も近いスチールベルト上に配置される。代替的に、ベルトパッケージはキャッププライも備える。補強ネットは、好適には、トレッドに最も近いスチールベルトとキャッププライとの間に配置される。
【0019】
前述の補強ネットは、好適には、補強ネットと周囲のゴムとの間の接着を保証する接着物質で覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明は、説明的かつ非限定的な例としてのみ、その実施形態を示す添付の図面を参照して説明される。
【0022】
この図は、より明確にするために部品が取り外された、本発明によるタイヤの一部を示す。
【0023】
図において、番号1は、カーカス2、ベルトパッケージ3、およびトレッド4を備えるタイヤを全体として示す。特に、ベルトパッケージ3は、一対のスチールベルト5aおよび5bと、キャッププライ6と、を備える。
【0024】
タイヤ1は、第2スチールベルト5bとキャッププライ6との間に配置された補強ネット7を備える。
【0025】
補強ネット7は、ベルトパッケージの横方向の伸長部よりも短い横方向の伸長部を有し、トレッド4の中央リブ8の領域に配置されている。
【0026】
補強ネット7は、ナイロン製であり、タイヤの長手方向軸線Xに対して45°で配向された糸を有する。ナイロンの破断伸びは、20%である。
【0027】
特に、補強ネット7は、メッシュ数12、幅100mm、ゲージ0.6mm、ならびに940dtexおよびEPDM47を特徴とする6.6ナイロンの糸を有する。
【0028】
タイヤ上に装着する前の補強ネットは、ネットと周囲のゴムとの接着性を保証するために、接着物質としてのRFL樹脂で覆われていた。
【0029】
補強ネット7を備えるタイヤ1は、タイヤ195/55R16を用いた追加荷重タイヤ条件下で、FMVSS139米国基準に従ってプランジャー試験に供された。
【0030】
比較のために、補強ネット7がないことだけが本発明のタイヤと異なる比較タイヤについて、同じ試験を行った。
【0031】
プランジャー試験は、本発明のタイヤについて、比較タイヤについて見出されたものよりも高いエネルギーを示した。
【0032】
特に、比較タイヤ(補強ネットなし)で得られたエネルギー値を100に指数付けすると、本発明のタイヤで得られたエネルギー値は、123に達する。
【0033】
本発明のタイヤで得られるエネルギー増加が補強ネット自体によって生成される抵抗に起因するのは、最小限の程度(比較タイヤからの全体的な改善の14%)である。ところが、本発明のタイヤで得られるエネルギー増加は、補強ネット自体によって生成される、スチールベルト上の荷重の放散の効果に、はるかに大きな程度で起因する。
【0034】
織られたテキスタイル材料が、より広いスチールコード領域上に外部入力を分散するのに十分な柔軟性があるような破断伸びを有する場合にのみ、上記の放散が可能であることが明らかである。実際、もし織られたテキスタイル材料が破断すると(低い破断伸び)、それは十分な分散効果を有することができない。
【0035】
本発明者らは、織られたテキスタイル材料の破断伸びが、本発明の効果のために必要不可欠な役割を果たすことを示すために、ナイロン製の補強ネットとナイロン/アラミドハイブリッド製の補強ネットとの間の比較を行った。
【0036】
ナイロン/アラミドハイブリッドの破断伸びは、4.5%である。
【0037】
比較は、以下の条件を使用してFEMシミュレーションによって実行された。
‐ネットストリップ幅:25mm
‐ネットストリップゲージ:0.6mm
‐正味角度:2ストリップ×45°
‐織物タイプ:
E(モジュラス)=3.544×10psiを有する異なるEPDM:100、47、13でのナイロン(1400/2)
E(モジュラス)=2.5×10psiを有する異なるEPDM:100、47、13でのハイブリッド(アラミド:1670/2+ナイロン:940/1)
‐タイヤサイズ:195/65R15
‐ゴムスキムモジュラス:E(モジュラス)=8.261×10psi、ポアソン比:0.4950
‐ゴムトレッドモジュラス:E(モジュラス)=8.657×10psi、ポアソン比:0.4950
【0038】
表1に、プランジャーシミュレーションデータ(FEMシミュレーション)が示される。
【0039】
表1の結果は、補強ネットのないタイヤに対する指数である。
【0040】
【表1】
【0041】
以上のことから、本発明が提案する解決策は、プランジャー試験におけるより高いエネルギー値の点から、タイヤの改善を保証できることが明らかである。
【0042】
この結果は、必然的に、タイヤのベルトパッケージのより大きな抵抗と関連する。これは転じて、自動的にタイヤの寿命をより長くすることになる。
図1