(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】スイッチング装置及び直流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/035 20060101AFI20231010BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H02B13/035 Z
H01H33/59 C
H01H33/59 B
(21)【出願番号】P 2022556867
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039446
(87)【国際公開番号】W WO2022085086
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿彰
(72)【発明者】
【氏名】村田 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】網田 芳明
(72)【発明者】
【氏名】保科 好一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-236981(JP,A)
【文献】実開昭50-023658(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/035
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子が接続された第1電極、
第2端子が接続され、前記第1電極と離れて配置された第2電極、
第3端子が接続され、前記第1電極と前記第2電極の間に配置された第1グリッド、及び、
第4端子が接続され、前記第1グリッドと前記第2電極の間に配置された第2グリッド、を有するプラズマスイッチと、
前記プラズマスイッチの外側に設けられ、前記プラズマスイッチとの間に密閉空間を形成する外郭部と、を備え、
前記密閉空間に絶縁ガスが充填されている、
スイッチング装置。
【請求項2】
前記外郭部は、
前記プラズマスイッチの外側に配置された絶縁筒と、
前記絶縁筒の開口をそれぞれ閉塞する端板と、
前記プラズマスイッチにおける前記第1電極、前記第2電極、前記第1グリッド、及び前記第2グリッドを接合する接合部と、
を有する圧力容器を含む、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項3】
前記第1電極は、B、C、Al、Si、及びGaのうち少なくとも1つの材料を含む、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項4】
前記第1電極は、ダイヤモンド、黒鉛、窒化物半導体、及びアルミナセメントのうち少なくとも1つの材料を含む、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極は、放電ガスの雰囲気中に収められており、
前記放電ガスは、アルゴン、ヘリウム、及び水素のうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項6】
前記放電ガスは、水素を少なくとも含み、
前記プラズマスイッチは、前記第1電極及び前記第2電極を収める前記放電ガスの雰囲気を生成する水素を貯蔵する水素貯蔵部を更に備える、
請求項5に記載のスイッチング装置。
【請求項7】
前記プラズマスイッチは、前記プラズマスイッチにおける浮遊電位シールド部をさら備える、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項8】
前記第1電極及び前記第2電極のうち少なくとも一方が大気中に露出している、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項9】
前記プラズマスイッチは、前記第1電極を冷却する放熱フィンを更に備える、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項10】
前記第1電極と前記第2電極が導通状態である第1状態にあるときに、前記第1端子と前記第2端子との間に流れる電流よりも、前記第1電極と前記第2電極が非導通状態である第2状態にあるときに、前記第1端子と前記第2端子との間に流れる電流の方が大きく
前記第1状態では、前記第1端子が第1電位に設定され、前記第2端子が前記第1電位よりも高い第2電位に設定され、前記第3端子が前記第1電位と前記第2電位との間の第3電位に設定され、前記第4端子が前記第3電位よりも低い第4電位に設定され、
前記第2状態では、前記第1端子が前記第1電位に設定され、前記第2端子が前記第2電位に設定され、前記第3端子が前記第3電位に設定され、前記第4端子が前記第3電位よりも高い第5電位に設定される、
請求項1に記載のスイッチング装置。
【請求項11】
前記第1状態において、前記第1電極と前記第2電極の間の第1空間に第1プラズマが生成される、
請求項10に記載のスイッチング装置。
【請求項12】
前記第2状態において、前記第1グリッドと前記第2グリッドの間の第2空間に第2プラズマが生成される、
請求項10または11に記載のスイッチング装置。
【請求項13】
前記第2状態において、前記第2グリッドと前記第2電極の間の第3空間に第3プラズマが生成される、
請求項12に記載のスイッチング装置。
【請求項14】
直流送電系統に設けられる機械式断路器と、
前記直流送電系統に設けられ、前記機械式断路器に直列に接続される機械式遮断器と、
前記機械式断路器及び前記機械式遮断器に並列に接続され、前記直流送電系統の電流の供給及び遮断を切り換える請求項1から13のうちいずれか1項に記載のスイッチング装置と、前記スイッチング装置に直列に接続されたリアクトルとを有する並列回路と、
前記機械式断路器及び前記機械式遮断器の間の一点と、前記スイッチング装置及び前記リアクトルの間の一点を接続し、複数のスイッチング素子、ダイオード、及びコンデンサからなるHブリッジユニットを有し、出力電圧制御により前記機械式遮断器に流れる電流を制御するHブリッジ回路と、
を備える直流遮断装置。
【請求項15】
前記直流送電系統における事故の発生時に、
前記スイッチング装置及び前記Hブリッジユニットを導通状態に移行させ、前記Hブリッジ回路の出力電圧制御により前記機械式遮断器に流れる電流を制限して前記機械式遮断器を非導通状態に移行させ、
前記Hブリッジユニットを非導通状態に移行させて、前記Hブリッジ回路の前記コンデンサの電圧印加により前記並列回路に事故電流を転流させ、前記機械式断路器を非導通状態に移行させてから、前記プラズマスイッチで事故電流を遮断する制御部を更に備える、
請求項14に記載の直流遮断装置。
【請求項16】
前記Hブリッジ回路は、直列に接続された複数の前記Hブリッジユニットを備える、
請求項14または15に記載の直流遮断装置。
【請求項17】
前記スイッチング装置にアレスタが並列に接続されている、
請求項14から16のうちいずれか1項に記載の直流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スイッチング装置及び直流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠方で、かつ分散配置された風力発電や太陽光発電の電力を集積して送電するするシステムとして直流多端子送電システムが有力視されている。直流多端子送電システムでは、例えば、直流地絡や直流短絡などの万一の事故が発生した場合に、直流送電系の高速な切り離し保護を行うための直流遮断装置が設けられる。
【0003】
直流遮断装置には、機械遮断と半導体素子遮断を組み合わせたハイブリッド直流遮断装置が開発されているが、構造物として巨大な装置となることが問題となっている。
【0004】
従来、直流送電では、送電効率を確保するため、数百kVという送電電圧で設計される。そのような送電系に適用できよう、直流遮断装置の構成要素を高電圧化していく。特に、直流遮断装置の構成要素であるスイッチ装置は、例えば、IEGTやIGBTなどのパワー半導体素子を用いたスイッチング装置、ダイオード、その他コンデンサ、抵抗、基板などの周辺回路を実装したユニットで構成されるが、パワー半導体装置の耐電圧が数kVである。このため、数百kV耐電圧の直流遮断装置を実現するには、例えばこのユニットを直列に接続していく。一般に、所定の絶縁を確保しなければならないので、棚段を積み上げるようなタワー構成の装置となるが、構造物として極めて巨大な装置となる問題がある。そこで、直流遮断装置には、ワイドギャップ半導体がもつ負の電子親和力を電子放出源とする超高電圧のプラズマスイッチ装置を用いることがある。
【0005】
プラズマスイッチは、周囲を大気とする場合には、数百kVに高電圧化していくと、内部はパッシェン特性に準じたコンパクトなギャップ設計が可能になる。しかし、大気に接する外部沿面の絶縁協調をとるためには、スイッチング装置を支持する誘電支持体を伸長させなければならず、装置が極端に長くなる傾向にある。このため、装置として大型化する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5828176号明細書
【文献】特許第6430294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、小型のスイッチング装置及び直流遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のスイッチング装置は、プラズマスイッチと、外郭部と、を持つ。プラズマスイッチは、第1端子が接続された第1電極、第2端子が接続され、前記第1電極と離れて配置された第2電極、第3端子が接続され、前記第1電極と前記第2電極の間に配置された第1グリッド、第4端子が接続され、前記第1グリッドと前記第2電極の間に配置された第2グリッド、を有する。外郭部は、前記プラズマスイッチの外側に設けられ、前記プラズマスイッチとの間に密閉空間を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態のスイッチング装置1の側断面図。
【
図2】スイッチング装置1の作用を説明するための模式図。
【
図3】第1状態ST1のプラズマスイッチ20を示す模式図。
【
図4】第2状態ST2のプラズマスイッチ20を示す模式図。
【
図5】プラズマスイッチ20に水素を補填する状態を説明する説明図。
【
図6】第2の実施形態のスイッチング装置2の側断面図。
【
図7】第3の実施形態のスイッチング装置3の側断面図。
【
図8】第4の実施形態のスイッチング装置4の側断面図。
【
図9】第5の実施形態のスイッチング装置5の側断面図。
【
図10】第6の実施形態のスイッチング装置6の側断面図。
【
図11】第7の実施形態のスイッチング装置7の側断面図。
【
図12】第8の実施形態のスイッチング装置8の側断面図。
【
図13】第9の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K1の構成を示す図。
【
図15】直流送電系統K1の電流の流れを説明する図。
【
図16】シミュレーション実施回路の動作状態を表す図。
【
図17】直流送電系統K1の電流の流れを説明する図。
【
図18】直流送電系統K1の電流の流れを説明する図。
【
図19】直流送電系統K1の電流の流れを説明する図。
【
図20】直流送電系統K1の電流の流れを説明する図。
【
図21】第10の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K2の構成を示す図。
【
図22】第11の実施形態の直流送電系統K3に含まれる直流遮断装置100の構成を示す図。
【
図23】第12の実施形態の直流送電系統K4に含まれる直流遮断装置100の構成を示す図。
【
図24】第13の実施形態の直流送電系統K5に含まれる直流遮断装置100の構成を示す図。
【
図25】第13の実施形態の直流遮断装置100の構造の一例を示す斜視図。
【
図26】第14の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K6の構成を示す図。
【
図27】第15の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K7の構成を示す図。
【
図28】片方向遮断の直流遮断装置による直流3端子送電システムの事故保護を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態のスイッチング装置及び直流遮断装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、まず、スイッチング装置について、8個の実施形態を第1の実施形態から第8の実施形態として説明し、続いて、これらのスイッチング装置のうち少なくとも1つを用いた直流遮断装置として、7個の実施形態を第9の実施形態から第15の実施形態として説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のスイッチング装置1の側断面図である。第1実施形態のスイッチング装置1は、絶縁容器10と、プラズマスイッチ20と、水素貯蔵金属20Hと、を備える。プラズマスイッチ20は、絶縁容器10に収容されている。絶縁容器10は、外郭部の一例である。
【0012】
絶縁容器10は、例えば、絶縁筒11と天端板12と底端板13を備える。絶縁容器10は、絶縁ガスが充填された圧力容器である。絶縁筒11は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastics)製またはセラミック製である筒状の絶縁体である。天端板12は、絶縁筒11の上端開口を閉塞し、底端板13は、絶縁筒11の下端開口を閉塞する。
【0013】
天端板12及び底端板13は、例えば金属製であり、導電性を有している。天端板12と底端板13の間に絶縁筒11が介在されることにより、天端板12と底端板13の間の絶縁性が維持されている。絶縁筒11の上端開口及び下端開口がそれぞれ天端板12及び底端板13に塞がれることにより、絶縁容器10の内部には密閉空間が形成されている。
【0014】
絶縁筒11の外周部には、絶縁ひだ14が設けられている。絶縁ひだ14は、例えば、ポリマー沿面を備える。絶縁ひだ14は、例えば、蛇腹状をなすフレキシブル管である。絶縁ひだ14は、容易に変形可能であり、絶縁筒11の外周を保護している。絶縁容器10は、例えばセラミックス製の絶縁筒11、天端板12、底端板13をろう付け溶接によって接合して気密容器として製造される。
【0015】
絶縁容器10の内部における密閉空間には、サポート15及びリード導体16が設けられている。サポート15は、例えば金属製の導電体であり、底端板13上に立設されている。底端板13の上には、プラズマスイッチ20が搭載される。リード導体16は、天端板12から吊り下げられている。リード導体16は、プラズマスイッチ20に接続されており、プラズマスイッチ20と絶縁容器10の外部との電気的接続を実現させている。サポート15は、絶縁容器10の外部との電気的接続を実現させる導電体としても機能する。
【0016】
絶縁容器10の密閉空間には絶縁ガス10Gが充填されている。第1の実施形態において、絶縁容器10には、絶縁ガス10Gとして、絶縁性の高いSF6ガスが充填されている。絶縁ガス10Gとしては、SF6ガス以外の絶縁性の高いガスが用いられていてもよい。
【0017】
プラズマスイッチ20は、ワイドギャップ半導体がもつ負の電子親和力を電子放出源とする超高電圧のスイッチである。プラズマスイッチ20は、ケース部21を備える。ケース部21は、底板部21L、天板部21U、及び側壁部21Sを備える。底板部21Lは、円盤状をなし、サポート15の天面上に載置されている。側壁部21Sは、例えばセラミック製の絶縁体である。側壁部21Sは、底板部21Lの外周に沿って立設されている。絶縁容器10における絶縁筒11は、プラズマスイッチ20の外側に配置されている。
【0018】
側壁部21Sは、側壁下部21S1、側壁中部21S2、及び側壁上部21S3を含み、これらが分割配置されて構成されている。底板部21Lと側壁下部21S1の間に第1接合部D11が設けられ、側壁下部21S1と側壁中部21S2の間には、第2接合部D12が設けられる。側壁中部21S2と側壁上部21S3の間には、第3接合部D13が設けられ、側壁上部21S3と天板部21Uの間には、第4接合部D14が設けられている。第1接合部D11~第4接合部D14は、接合部の一例である。
【0019】
ケース部21には、第1電極22及び第2電極23が収容されている。第1電極22は、第1層22Aと、ケース部21の底板部21Lの上面に立設されたベース脚部22Bと、ベース脚部22Bに取り付けられ、第1層22Aを支持するベース支持部22Cと、を備える。ベース支持部22Cは、幅広面を有しており、ベース支持部22Cの幅広面に第1層22Aが設けられている。第1電極22は、ベース脚部22B、及びベース支持部22Cを備えず、第1層22Aのみが第1電極22を構成してもよいし、ベース支持部22Cを備えず、第1層22A及びベース脚部が第1電極22を構成してもよい。
【0020】
第2電極23は、ケース部21の天板部21Uに吊り下げられた吊持ベース25に吊持されている。第2電極23は、第1電極22から離れて配置されている。吊持ベース25は、ケース部21の天板部21Uを介してリード導体16に電気的に接続されている。吊持ベース25は、ベース支持部22Cと同様の幅広面を有する板材を吊持し、この板材に第2電極23が取り付けられるようにしてもよい。
【0021】
第1電極22の第1層22Aは、例えば、B、C、Al、Si、及びGaのうち少なくとも1つの材料(第1材料)を含む。第1電極22は、例えば、これらの原料を用いた気相成長などによって形成されている。第2電極23は、例えば、Ni、Cr、Mo、Cu、Ag、Au、Fe、Ir、及びPtのうち少なくとも1つの材料(第2材料)を含む。
【0022】
第1電極22の第1層22Aは、例えば、ダイヤモンド、AlN、GaN等の窒化物半導体でもよく、第2電極23は、例えば、高融点伝導体のグラファイトやモリブデンなどでもよい。ベース脚部22B及びベース支持部22Cは、例えば、Mo、W、Nb、Ta、Si及びCuのうち少なくとも1つの材料(第3材料)を含む。
【0023】
第1電極22のベース脚部22B及びベース支持部22Cは、ケース部21としての耐圧性と熱伝導性の両方を備えることが望ましい。ベース脚部22B及びベース支持部22Cとしては、例えば、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)、窒化物半導体およびアルミナセメントのうち少なくとも1種以上を含む。ベース脚部22B及びベース支持部22Cの上に形成する第1層22Aは、例えば、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)、窒化物半導体およびアルミナセメントのうち少なくとも1つ以上で構成された層を二層以上積層させた積層体でもよい。
【0024】
第1電極22と第2電極23の間には、第1グリッド26が配置されている。第1グリッド26と第2電極23の間には第2グリッド27が配置されている。第1グリッド26及び第2グリッド27における第1電極22と第2電極23に挟まれる部分は、いずれもメッシュ状をなしている。
【0025】
第1グリッド26及び第2グリッド27のそれぞれの外側には、第1シールド26S及び第2シールド27Sが設けられている。第1シールド26S及び第2シールド27Sはケース部21を貫通し、第1シールド26S及び第2シールド27Sの外端部はケース部21の外側に配置されている。
【0026】
第1シールド26Sは、ケース部21における第2接合部D12を貫通し、第2シールド27Sは、第3接合部D13を貫通する。ケース部21における第1接合部D11~第4接合部D14は、いずれもろう付けによって形成されている。このため、第1シールド26S及び第2シールドがケース部21を貫通しているが、ケース部21内は密閉状態とされている。
【0027】
ケース部21における底板部21Lには、連結管21Hが設けられている。プラズマスイッチ20は、連結管21Hの先端部(下端部)に設けられた水素貯蔵金属20Hを備える。水素貯蔵金属20Hは、第1電極22及び第2電極23を収める放電ガス20Gの雰囲気を生成する水素を貯蔵する。
【0028】
水素貯蔵金属20Hは、例えば、水素を貯蔵する金属本体と、金属本体を加熱するヒータとを備える。ヒータに電力を供給してヒータが金属本体を加熱することにより、水素貯蔵金属20Hが貯蔵する水素がプラズマスイッチ20の内部に補填される。水素貯蔵金属20Hは、水素貯蔵部の一例である。
【0029】
ケース部21の内側に水素が供給される。底板部21Lには、さらに、封止管21Pが設けられている。プラズマスイッチ20の内側には、水素を含むアルゴンなどの不活性ガスの希薄ガスが放電ガス20Gとして封入されている。封止管21Pは、プラズマスイッチ20の内部が所定の圧力P(1気圧未満の減圧状態)となるように放電ガス20Gが導入された後に気密封止する。
【0030】
第1電極22及び第2電極23は、ケース部21内に収容されることにより、放電ガスの雰囲気中に収められている。放電ガス20Gは、水素を含むアルゴンとされているが、他の気体でもよく、例えば、水素でもよいし、重水素でもよい。放電ガスは、アルゴン、ヘリウム、及び水素のうち少なくとも1つを含んでいればよい。
【0031】
プラズマスイッチ20において、第1電極22には、サポート15及び絶縁容器10の底端板13を介して第1端子T1が電気的に接続されている。第2電極23には、吊持ベース25、リード導体16、及び天端板12を介して第2端子T2が電気的に接続されている。
【0032】
第1グリッド26には、第3端子T3が電気的に接続されている。第2グリッド27には、第4端子T4が電気的に接続されている。水素貯蔵金属20Hのヒータは、第5端子T5及び第6端子T6に接続されている。第1グリッド26と第3端子T3、第2グリッド27と第4端子T4をそれぞれ結ぶリード13L、及び水素貯蔵金属20Hのヒータと第5端子T5、及び水素貯蔵金属20Hのヒータと第6端子T6をそれぞれ結ぶリード50Lは、底端板13に設けられた絶縁ブッシング13Bを介して絶縁容器10の内部に導入される。絶縁ブッシング13Bが設けられていることにより、これらの配線を絶縁容器10の内部に導入しながら、絶縁容器10の内部の気密状態が維持される。
【0033】
次に、第1の実施形態のスイッチング装置1の作用について説明する。プラズマスイッチ20には、第1状態及び第2状態などの複数の状態が設けられる。プラズマスイッチ20の状態は、第1電極22と第2電極23の間の空間に配置した第1グリッド26及び第2グリッド27の電位、すなわち、スイッチング装置1における第3端子T3と第4端子T4の間の電位に基づく。
【0034】
図2は、スイッチング装置1の作用を説明するための模式図である。
図2においては、第1電極22、第2電極23、第1グリッド26、及び第2グリッド27と、それらの間の放電状態を示している。第1電極22には第1端子T1、第2電極23には第2端子T2、第1グリッド26には第3端子T3、第2グリッド27には第4端子T4がそれぞれ接続されている。
【0035】
図3は、第1状態ST1のプラズマスイッチ20を示す模式図である。例えば、第1端子T1が第1電位V1に設定され、第2端子T2が第2電位V2に設定され、第3端子T3が、第3電位V3に設定され、第4端子T4が、第4電位V4に設定されたとする。
【0036】
第2電位V2は、第1電位V1よりも高く、第3電位V3は、第1電位V1と第2電位V2との間である(V1<V3<V2)。第4電位V4は、第3電位V3よりも低い(V4<V3)。第1電位V1は、例えば、負電位またはグランド電位である。第2電位V2は、例えば、正電位である。第3電位V3は、例えば、中間電位である。第4電位V4は、例えば、負電位である。この場合に、プラズマスイッチ20は第1状態ST1となる。第1状態ST1は、非導通状態(オフ状態)である。
【0037】
図4は、第2状態ST2のプラズマスイッチ20を示す模式図である。例えば、第1端子T1が第1電位V1に設定され、第2端子T2が第2電位V2に設定され、第3端子T3が、第3電位V3に設定され、第4端子T4が、第5電位V5に設定されたとする。第5電位V5は、第3電位V3よりも高い(V3<V5)。第5電位V5は、例えば正電位である。この場合に、プラズマスイッチ20は第2状態ST2となる。第2状態ST2は、導通状態(オン状態)である。
【0038】
第1状態ST1において第1端子T1と第2端子T2との間に流れる電流よりも、第2状態ST2において第1端子T1と第2端子T2との間に流れる電流は大きい。第1状態ST1は、例えば、高抵抗状態である。第2状態ST2は、例えば、低抵抗状態である。
【0039】
スイッチング装置1は、プラズマスイッチ20が第1状態と第2状態との間で変化することにより、スイッチ動作が行われる。スイッチング装置1は、例えば、大電流の高電圧直流遮断器である。第1電極22は例えば陰極であり、第2電極は例えば陽極である。
【0040】
プラズマスイッチ20が第1状態ST1である場合、第1電極22と第1グリッド26との間の第1空間SP1に第1プラズマSP1Pが生成される。このとき、第1グリッド26と第2電極23の間は絶縁状態である。このため、第1状態ST1のプラズマスイッチ20は、第1端子T1と第2端子T2の間で非導通状態となる。
【0041】
プラズマスイッチ20が第2状態である場合、第1グリッド26と第2グリッド27の間の第2空間SP2に第2プラズマSP2Pが生成され、第2グリッド27と第2電極の間の第3空間SP3に第3プラズマSP3Pが生成される。このため、第2状態のプラズマスイッチ20は、第1端子T1と第2端子の間で導通状態となる。
【0042】
次に、プラズマスイッチ20内に水素を補填する手順について説明する。
図5は、プラズマスイッチ20に水素を補填する状態を説明する説明図である。プラズマスイッチ20の内部は、高電圧化や還元雰囲気にしたいなどの理由、あるいは、ダイヤモンド半導体の水素終端の消耗の補填などの理由で、ケース部21の内部には、アルゴン等のガスとともに水素が予め封入されている。
【0043】
水素貯蔵金属20Hは、ケース部21内の水素を補填するものである。水素貯蔵金属20Hを、図示しないヒータで加熱することにより、水素貯蔵金属20Hから水素を取り出して、ケース部21内の水素を補填する。第5端子T5及び第6端子T6は、水素貯蔵金属20Hに設けられたヒータに電力を供給するための端子である。水素貯蔵金属20Hを加熱して水素を供給するので、例えば、弁などを用いた水素の供給などと比較して、ケース部21内の圧力を安定的に維持させやすくすることができる。
【0044】
第1電極22における第1層22Aは、B、C、Al、Si、及びGaのうち少なくとも1つを含む第1材料を含む。1つの例において、第1層22Aは、例えば、ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)、窒化物半導体、焼結ダイヤモンド及びアルミナセメントのうち少なくとも1種以上を含む。
【0045】
ダイヤモンド、窒化物半導体と酸化物半導体も電子親和力に優れるため、大電流をスイッチングする観点からこれらの材料も好ましい。焼結ダイヤモンドは、ダイヤモンドを主体とするため、電子親和力に優れる。また、黒鉛は、熱伝導率の高さと化学結合の強固さによる熱的安定性により好ましい。また、アルミナセメントの電子化物は電子親和力に優れるため好ましい。
【0046】
以上説明した第1の実施形態のスイッチング装置1において、プラズマスイッチ20が用いられている。スイッチング装置1におけるプラズマスイッチ20は、ワイドギャップ半導体がもつ負の電子親和力を電子放出源とする超高電圧のプラズマスイッチである。をコンパクトに実現する。このため、例えばスイッチング装置1を直流遮断装置の遮断回路部とすることにより、従来、巨大な構造部となっていた直流遮断装置の据付面積、体積(体格)とも大幅に縮小すること。これにより、洋上プラットフォームを従来より小型に設計でき、プラントコストのダウンを図ることができる。
【0047】
一般的に、プラズマスイッチ20において、例えば、第1電極22が第2電極23と対向する場合、交差電界をかけることで比較的安定な動作を得やすいと考えられる。しかし、プラズマスイッチ20を高電圧化していくことを想定した場合、プラズマスイッチ20の外部沿面が大気中に露出していると、ケース部21の内部はパッシェン特性に準じたコンパクトなギャップ設計が可能になるのに対して、大気に接する外部沿面の絶縁協調をとるためには、誘電支持体を伸長させなければならず、装置が極端に長くなるという問題がある。その結果、スイッチング装置1が大型化し、構造強度や製造性に弊害となる。
【0048】
これに対して、第1の実施形態1のスイッチング装置1においては、プラズマスイッチ20の周囲を絶縁ガスとする絶縁容器10の中に配置している、このため、プラズマスイッチ20の外部沿面と大気中への露出が抑制されるので、高電圧化による大型化を抑制し、コンパクトで高電圧大電流をスイッチング可能なスイッチング装置1を提供できる。
【0049】
また、第1電極22の第1層22Aは小さい電子親和力の材料としている。これにより、第1層22Aからの電子が効率的に放出され、大電流を安定してスイッチングすることができる。第1電極22の第1層22Aをダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)などの熱伝導性の優れた材料とすると、第1電極22の温度上昇を抑制することができる。第1層22Aの温度が上昇すると、スイッチ動作可能なグロー放電した状態から、電流が遮断できないアーク放電をする状態に移行しやすい。第1層22Aの温度上昇を抑制することで、アーク放電を抑制し、安定したグロー放電が可能となって、動作が安定した信頼性の高いスイッチング装置1を提供することができる。また、プラズマスイッチ20の周囲を絶縁ガスとする絶縁容器10の中に配置することで、高電圧化による大型化を抑制し、コンパクトで高電圧大電流をスイッチング可能なスイッチング装置1を提供できる。
【0050】
また、プラズマスイッチ20は、第1電極22から第2電極23に向けて電子を放出する。第1電極22において、第1層22Aは、第2電極23を向く表面に設けられている。このため、第1電極22から第2電極23に効率的に電子を放出させることができる。さらに、第1層22Aは、第2電極23を向く面の全面に設けられている。このため、第1電極22から第2電極23に電子をさらに効率的に放出させることができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態のスイッチング装置2の側断面図である。第2の実施形態以降の実施形態において、第1の実施形態と共通する部分については同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0052】
第2の実施形態のスイッチング装置2においては、天端板12及び底端板13のそれぞれにおける平面視した中央部分にドーナツ状の開口12H及び13Hが設けられている。天端板12には、サポート15と同一形状であり、サポート15を天地逆さまとして配置された上部サポート17が設けられている。
【0053】
上部サポート17の底面には天板部21Uが取り付けられている。第2電極23は、天板部21Uに吊り下げられた吊持ベース25に吊持されている。吊持ベース25は、天板部21Uを介して上部サポート17に電気的に接続されている。その他の点は、上記第1の実施形態と共通である。
【0054】
第2の実施形態のスイッチング装置2は、上記第1の実施形態のスイッチング装置1と同様の作用効果を奏する。さらに、第2の実施形態のスイッチング装置1において、サポート15は、第1電極22及び第1電極22と第1端子T1をつなぐ導体で発生する熱を放出する。底端板13に設けられた開口13Hは、サポート15の熱を大気に向けて放熱する。上部サポート17は、第2電極23及び第2電極23と第2端子T2をつなぐ導体で発生する熱を放出する。天端板12に設けられた開口12Hは、上部サポート17の熱を大気に向けて放熱する。このため、スイッチング装置1の放熱性を高めることができ、スイッチング電流の許容量を増大させることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態のスイッチング装置3の側断面図である。第3の実施形態のスイッチング装置3は、ケース部21において、側壁部21Sは、側壁下部21S1、側壁中部21S2、側壁上部21S3のほかに、側壁中上部21S4を含み、分割配置されて構成される。側壁中上部21S4と側壁上部21S3の間には、浮遊電位接合部D15が設けられている。第3接合部D13は、側壁中部21S2と側壁中上部21S4の間に設けられている。浮遊電位接合部D15は、第1接合部D11~第4接合部D14と同様にろう付けによって形成されている。
【0056】
ケース部21の内側には、浮遊電位接合部D15の電位である浮遊電位の浮遊電位シールド28が設けられている。浮遊電位シールド28は中実のシールドである。浮遊電位接合部D15の側方におけるケース部21の外側には、浮遊電位の外部シールド28Kが設けられている。浮遊電位シールド28は、プラズマスイッチ20内と絶縁容器10内の電界を緩和する作用がある。浮遊電位シールド28は、浮遊電位シールド部の一例である。
【0057】
さらに、第4接合部D14の側方におけるケース部21の外側には、第2電極23の電位のシールド29が設けられている。その他の点は、上記第1の実施形態と共通である。さらに、図示はしないが、第1接合部の側方におけるケース部21の外側に、第1電極22の電位のシールドを設けてもよい。
【0058】
第3の実施形態のスイッチング装置3は、上記第1の実施形態のスイッチング装置1と同様の作用効果を奏する。さらに、第3の実施形態のスイッチング装置3は、ケース部21の内側に設けられた浮遊電位シールド28を備える。浮遊電位シールド28は、絶縁容器10の体積を調整する機能と、絶縁筒11の高さ方向の長さを調節して、浮遊電位接合部D15を適切な中間電位となるようにして、絶縁容器10内の浮遊電位シールド28による電界緩和の効果を高めることができる。また、外部浮遊電位の外部シールド28Kを設けることにより、絶縁ガスを充填した絶縁容器10内の電界緩和の効果を高めることができる。
【0059】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図8は、第4の実施形態のスイッチング装置4の側断面図である。第4実施形態のスイッチング装置4は、第1電極22と、第2電極23と、第1グリッド26と、第2グリッド27とが、いずれも、中央部が空間となる回転体の形状をなしている。第1電極22と、第2電極23と、第1グリッド26と、第2グリッド27は、同心円を描くように、互いに同軸上に配置されている。第1電極22は、第1層22Aと、ベース22Dによって構成される。
【0060】
プラズマスイッチ20のケース部21は、中央が凹んだ略U字形状に形成されており、中央には第2電極23と、ケース部21の外側となる空間が形成されている。ケース部21は、略U字形状の底壁となる第1電極22のベース22Dと、側壁中部21S2と、側壁中上部21S4と、側壁上部21S3を含んで構成される。第1電極22のベース22Dと側壁中部21S2の間には、第2接合部D12が設けられている。側壁中部21S2と側壁中上部21S4の間には、第3接合部D13が設けられている。側壁中上部21S4と側壁上部21S3の間には、浮遊電位接合部D15が設けられている。側壁上部21S3と天板部21Uの間には、第4接合部D14が設けられている。
【0061】
ケース部21における天板部21Uの上部には、第2実施形態と同様の上部サポート17が設けられている。上部サポート17の中央部分は開口している。ケース部21における天板部21Uも、上部サポート17と同様に開口している。これの開口からケース部21の内側が覗けるようになっている。
【0062】
ケース部21の内側では、第2電極23が最も内側に配置され、第2グリッド27、第1グリッド26、第1電極22の順で外側に向けて配置されている。プラズマスイッチ20は、ケース部21の外側に設けられた放熱フィン21Fを備えている。放熱フィン21Fは、プラズマスイッチ20が発する熱を放出して第1電極22を冷却する。
【0063】
ケース部21には、第3の実施形態と同様の浮遊電位接合部D15が設けられている。ケース部21の内側には、第3の実施形態と同様の浮遊電位シールド28が設けられている。浮遊電位接合部D15の側方におけるケース部21の外側には、浮遊電位の外部シールド28Kが設けられている。第2電極23の電位のシールドや第1電極22の電位のシールドは設けられていないが、これらが設けられていてもよい。
【0064】
略U字形状の第1電極22を製造する方法として、例えば、円筒形のベース材料の内側にフィラメントを貼り、炭素源を供給して熱CVDでベース材料の内側に第1層22Aとしてダイヤモンド膜を形成する方法がある。第1電極22は、他の方法で製造してもよい。
【0065】
第4の実施形態のスイッチング装置2は、上記第1の実施形態のスイッチング装置1と同様の作用効果を奏する。さらに、第4の実施形態のスイッチング装置4においては、第2電極23を中心として、第2グリッド27、第1グリッド26、及び第1電極22が同心円を描くように配置されている。このため、対称性が良くなるので、大電流特性に優れたものとすることができるとともに、グロー放電を安定させることができる。
【0066】
さらに、第1電極22と、第2電極23と、第1グリッド26と、第2グリッド27を同軸上に配置した同軸構造とすることにより、均一な電界によって意図しない放電を防止することができる。その結果、スイッチング装置4の信頼性を向上させることができる。さらに、第1電極22及び第2電極23の面積を大きくすることができるので、より多くの電流をスイッチさせることができる。
【0067】
さらに、同軸構造とすることにより、陽極である第2電極23に向かって電界が増大するため、電子なだれを促進することができ、電流増幅効果が大きくすることができる。さらに、陰極である第1電極22付近では相対的に電界が弱まるので、陰極に衝突する陽イオンの運動エネルギーが小さくなる。したがって、陰極のダメージを抑制することができ、スイッチング装置1の長寿命化を図ることができる。
【0068】
第4の実施形態のスイッチング装置4は、放熱フィン21Fを備える。第1電極22はグロー放電による発熱があるが、第1電極22の熱を放熱フィン21Fによって放出することで、第1電極22の温度上昇を抑制することができる。第1電極22の温度が上昇すると、スイッチ動作可能なグロー放電した状態から、電流が遮断できないアーク放電をする状態に移行しやすい。第1電極22の温度上昇を抑制することで、アーク放電を抑制し、安定したグロー放電が可能となって、大電流における動作が安定する。したがって、信頼性の高いスイッチング装置4を提供することができる。
【0069】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態のスイッチング装置5の側断面図である。第5の実施形態のスイッチング装置5は、第4の実施形態のスイッチング装置4と比較して、第2電極23の構造が異なる。第4の実施形態の第2電極23は、中央部が空間となる回転体の形状をなしているのに対して、第5の実施形態の第2電極23は、中央部が中実となる回転体の形状をなしている。その他の点は、第4の実施形態のスイッチング装置4の構成と共通である。
【0070】
第5の実施形態のスイッチング装置5は、上記第4の実施形態のスイッチング装置4と同様の作用効果を奏する。さらに、第5の実施形態のスイッチング装置5において、第2電極23は中実とされている。このため、第2電極23の質量を大きくし、熱容量を大きくすることができる。したがって、プラズマスイッチ20が第2状態ST2であるときに、例えば、大電流の導通状態における第2電極23の温度上昇を抑えることができる。よって、アーク放電への移行による遮断不能を防ぎ、安定した電流遮断が可能とすることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
図10は、第6の実施形態のスイッチング装置6の側断面図である。第6の実施形態のスイッチング装置6において、プラズマスイッチ20における第1電極22、第1グリッド26、第2グリッド27、及び第2電極23の配置は、第4の実施形態と共通である。第6の実施形態のスイッチング装置6は、プラズマスイッチ20の上部及び下部が大気中に露出されている。スイッチング装置6は、サポート15を備えておらず、プラズマスイッチ20の下側が、絶縁容器10の底端板13を通り抜けて大気中に露出する。このため、第1電極22が大気中に露出している。
【0072】
プラズマスイッチ20の上方には、上部サポート17が設けられている。上部サポート17の底面には天板部21Uが取り付けられている。上部サポート17は、柱状態をなしている。上部サポート17の上端部と天端板12の間には、封止フランジ30が取り付けられている。封止フランジ30が設けられていることにより、絶縁容器10内が密閉状態に維持されている。
【0073】
上部サポート17及び天板部21Uの中央には、開口が設けられている。プラズマスイッチ20は、開口を介して大気と通じている。プラズマスイッチ20においては、第2電極23が最も内側(回転体の回転軸に近い側)に設けられている。このため、第2電極23が大気中に露出している。
【0074】
プラズマスイッチ20におけるケース部21の内側には、中実シールド31が設けられている。第4の実施形態では、ケース部21の内側には浮遊電位シールド28が設けられていたが、第6の実施形態では、中実シールド31が設けられている点において、第3の実施形態と異なる。
【0075】
上部サポート17と天板部21Uの間におけるプラズマスイッチ20の外側には、上部シールド32が設けられている。中実シールド31及び上部シールド32は、いずれも第2電極23の電位のシールドである。そのほかに、浮遊電位接合部D15や側壁中上部21S4が設けられていない点などを除いた以外の点において、第6の実施形態の構成は、第4の実施形態の構成と共通である。
【0076】
第6の実施形態のスイッチング装置6は、上記第4の実施形態のスイッチング装置4と同様の作用効果を奏する。さらに、第6の実施形態のスイッチング装置6においては、第1電極22及び第2電極23が大気中に露出している。このため、第1電極22と第2電極23の放熱性能を高めることができる。したがって、プラズマスイッチ20が第1状態ST1である場合における第1電極22の温度上昇を抑えることができる。さらに、プラズマスイッチ20が第2状態ST2である場合における第2電極23の温度上昇を抑えることができる。よって、アーク放電への移行による遮断不能を防ぎ、安定した電流遮断が可能となる
【0077】
第6の実施形態のスイッチング装置6においては、中実シールド31が設けられている。中実シールド31が設けられていることにより、絶縁容器10の空間体積を調整することができる。さらに、対抗する第2グリッド27との間の電界を緩和する効果を発揮することができる。したがって、放熱性に優れるとともに、遮断電流を大きくすることができる。
【0078】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
図11は、第7の実施形態のスイッチング装置7の側断面図である。第7の実施形態のスイッチング装置7は、第6の実施形態のスイッチング装置6と比較して、中実シールド31が設けられていない代わりに、第4の実施形態で説明した浮遊電位シールド28及び外部シールド28Kが設けられている。第7の実施形態のスイッチング装置7は、さらに、浮遊電位接合部D15や側壁中上部21S4が設けられている。その他の構成については、第6の実施形態のスイッチング装置6と共通する。
【0079】
第7の実施形態のスイッチング装置7は、上記第4の実施形態のスイッチング装置4と同様の作用効果を奏する。さらに、第7の実施形態のスイッチング装置7においては、第1電極22及び第2電極23が大気中に露出している。このため、第1電極22と第2電極23の放熱性能を高めることができる。したがって、プラズマスイッチ20が第1状態ST1である場合における第1電極22の温度上昇を抑えることができる。さらに、プラズマスイッチ20が第2状態ST2である場合における第2電極23の温度上昇を抑えることができる。よって、アーク放電への移行による遮断不能を防ぎ、安定した電流遮断が可能となる。したがって、放熱性に優れるとともに、遮断電流を大きくすることができる。
【0080】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。
図12は、第8の実施形態のスイッチング装置8の側断面図である。第8の実施形態のスイッチング装置8は、第7の実施形態のスイッチング装置7と比較して、プラズマスイッチ20における第1電極22及び第2電極23を伸長させて、その長さが長くなっている点で主に異なっている。
【0081】
第8の実施形態のスイッチング装置8における第1電極22の長さは、第1電極22の高さ方向の長さLを2倍し、さらに幅方向の長さを加えた長さである。このため、第1電極22を高さ方向に伸長させることにより、プラズマスイッチ20の大型化を抑制しながら、第1電極22を長くすることができる。
【0082】
第8の実施形態のスイッチング装置8は、上記第7の実施形態のスイッチング装置7と同様の作用効果を奏する。さらに、第8の実施形態のスイッチング装置8は、第1電極22及び第2電極23が伸長されているので、遮断電流をさらに大きくすることができる。
【0083】
(第9の実施形態)
続いて、第1の実施形態のスイッチング装置1から第8の実施形態のスイッチング装置8のうち少なくとも1つを用いた、第9の実施形態の直流遮断装置100について説明する。第9の実施形態の直流遮断装置100は、例えば、直流系統において、系統事故などが生じたときに、直流系統を遮断する装置である。以下の各実施形態においても同様である。以下の説明において、「通常時」とは、直流送電系統において正常な電流が流れている状態をいい、「事故時」とは、雷等に起因する系統事故によって、過大な事故電流が生じた状態をいう。
【0084】
図13は、第9の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K1の構成を示す図である。直流送電系統K1は、例えば、第1直流送電網200Aと第2直流送電網200Bを正側でつなぐ正側送電線300と、負側でつなぐ負側送電線400と、を備える。
【0085】
第9の実施形態の直流遮断装置100は、上記第1の実施形態のスイッチング装置1と同様の作用効果を奏する。さらに、第9の実施形態において、直流遮断装置100は、直流送電系統K1の正側送電線300に設けられている。ここでは、正側送電線300において、第1直流送電網200Aから第2直流送電網200Bへ送電される例を主に説明する。
【0086】
直流遮断装置100には、機械式断路器110と、機械式遮断器120と、並列回路130と、Hブリッジ回路140とが設けられている。機械式断路器110及び機械式遮断器120は、いずれも正側送電線300に接続される。機械式遮断器120は、機械式断路器110に直列に接続される。並列回路130は、機械式断路器110及び機械式遮断器120に並列に接続される。Hブリッジ回路140は、正側送電線300と並列回路130とを接続する。
【0087】
より具体的には、並列回路130は、プラズマスイッチングユニット131と、プラズマスイッチングユニット131に直列に接続されたリアクトル132を備える。並列回路130において、プラズマスイッチングユニット131にのみ並列にアレスタ150が接続されている。Hブリッジ回路140は、正側送電線300の機械式断路器110と機械式遮断器120の間の一点と、並列回路130のプラズマスイッチングユニット131とリアクトル132の間の一点を接続するように構成されている。
【0088】
機械式断路器110は、公知の種々の構成を用いることができる。本実施形態では、後述するように並列回路130を用いて直流電流の遮断が行われるため、機械式断路器110自体に電流遮断能力は不要である。このため、機械式断路器110は、機械接点を持つものであって、接点が切り離された状態で、事故点を切り離すのに必要な直流電圧に耐える絶縁耐圧を持つものであれば足りる。機械式断路器110は、例えば、回路の端子間に回動接触子を設け、この回動接触子が回動して各端子に取り付けられた固定接触子と接離することによって、回路の切り離しを行う構成とすることができる。
【0089】
機械式断路器110は、通常時には導通状態、すなわち接点が接触した状態になるように制御される。第1直流送電網200Aからの電流は、機械式断路器110を通過して第2直流送電網200Bへ流れる。事故時は、後述するが、並列回路130に電流が流れるように制御が行われ、機械式断路器110を流れる電流が略ゼロになったところで、非導通状態に切り換えられ、回路が切り離される。
【0090】
機械式遮断器120は、公知の種々の構成を用いることができる。機械式遮断器120は、機械接点を持つものであって、接点を開くことにより小電流を遮断する能力を有するものであれば足りる。機械式遮断器120は、は、例えば、回路の端子間に回動接触子を設け、この回動接触子が回動して各端子に取り付けられた固定接触子と接離することによって、小電流の遮断を行う構成とすることができる。
【0091】
機械式遮断器120は、通常時には導通状態、すなわち接点が接触した状態になるように制御される。第1直流送電網200Aからの電流は、機械式断路器110及び機械式遮断器120を通過して第2直流送電網200Bへ流れる。事故時には、機械式遮断器120に流れる電流が増大する。機械式遮断器120には、図示しない電流センサが取り付けられている。直流送電系統K1において発生する事故は、例えば、機械式遮断器120に流れる電流を電流センサで測定し、事故を示す閾値と比較することで検出される。詳細は後述するが、事故時に、Hブリッジ回路140に電流が流れ、機械式遮断器120を流れる電流が略ゼロになる制御が行われる。機械式遮断器120は、流れる電流が略ゼロになったところで非導状態に切り換えられ、回路が切り離される。
【0092】
並列回路130には、設けられたプラズマスイッチングユニット131は、互いに並列に接続された第1スイッチング装置131Aと、第2スイッチング装置131Bを備える。第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bは、いずれも例えば上記第1の実施形態のスイッチング装置1から第8の実施形態のスイッチング装置8のいずれかである。
【0093】
第1スイッチング装置131Aと、第2スイッチング装置131Bは、いずれも直流送電系統K1の電流の供給及び遮断を切り換える。リアクトル132は、第1スイッチング装置131Aと、第2スイッチング装置131Bの双方に対して直列に接続される。
【0094】
第9の実施形態で説明するプラズマスイッチングユニット131は、逆並列に接続した第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bを備えている。第1直流送電網200A側を第1電極22とした第2スイッチング装置131Bと、第2直流送電網200B側を第1電極22とした第1スイッチング装置131Aがあるため、第1直流送電網200Aから第2直流送電網200B、もしくは第2直流送電網200Bから第1直流送電網200Aの双方向の電流を導通および遮断可能となっている。
【0095】
第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bは、いずれもプラズマスイッチ20を備えるスイッチング装置(以下「プラズマスイッチング装置」という)である。プラズマスイッチング装置は、第1の実施形態から第8の実施形態で説明したように、第3端子T3と第4端子T4の電位に基づいて第1状態(非導通状態)、あるいは第2状態(導通状態)となる。このように第4端子T4の電位を切り替えることにより、第1状態から第2状態に移行して導通状態とし、逆に、第2の状態から第1の状態として非導通状態とするスイッチング装置である。
【0096】
第1スイッチング装置131Aは、第1直流送電網200A側を第2電極23に接続し、第2直流送電網200B側を第1電極22とする。第2スイッチング装置131Bは、第1直流送電網200A側を第1電極22に接続し、第2直流送電網200B側を第2電極23とする。
【0097】
スイッチング装置、例えば第1スイッチング装置131Aと逆並列のスイッチング装置、例えば第2スイッチング装置131Bは、それぞれの第3端子T3と第4端子T4の電位を制御することによって、導通状態である導通状態と非導通状態である非導通状態が切り換えられる。導通状態では、プラズマスイッチングユニット131を介して並列回路130へ電流が供給され、非導通状態では直流送電系統から並列回路130への電流は遮断される。
【0098】
プラズマスイッチングユニット131には、一定電圧以上が印加されると導通する非線形素子からなるアレスタ150が並列に接続されている。アレスタ150は、プラズマスイッチングユニット131が非導通状態に切り換えられたときに、サージ電圧を吸収して安全な電流遮断を可能とする。リアクトル132は、電流変化率低減用のものである。リアクトル132は、Hブリッジ回路140による電流制御を可能とするために設けられている。
【0099】
Hブリッジ回路140は、複数のHブリッジユニット141を備える。Hブリッジ回路140は、複数のHブリッジユニット141を直列に接続した構成となっている。Hブリッジ回路140は、機械式断路器110及び前記機械式遮断器120の間の一点と、プラズマスイッチングユニット131と、リアクトル132の間の一点を接続する。
【0100】
図14は、Hブリッジ回路140の構成を示す図である。Hブリッジ回路140は、複数のHブリッジユニット141を有する、Hブリッジユニット141は、スイッチング素子142、レグ143、ダイオード144、及びコンデンサ145かを備える。Hブリッジ回路140は、出力電圧制御により機械式遮断器120に流れる電流を制御する。
【0101】
Hブリッジ回路140の各Hブリッジユニット141は、スイッチング素子142を直列に2個接続した2つのレグ143を有する。スイッチング素子142は、それぞれ自己消弧能力を持つものが用いられる。各スイッチング素子142にはダイオード144が並列に接続されている。これら2つのレグ143は並列に接続され、さらにコンデンサ145が2つのレグ143と並列に接続されている。コンデンサ145は、定常動作時に正側送電線300を流れる電流によって充電される。
【0102】
以上の構成を有する直流遮断装置100の動作を、
図15~
図20を参照し、通常時と事故時に分けて説明する。通常時は、機械式断路器110及び機械式遮断器120を導通状態、プラズマスイッチングユニット131およびHブリッジ回路140を非導通状態に制御する。
図15、
図17~
図20は、直流送電系統K1の電流の流れを説明する図である。
図15に示すように、第1直流送電網200Aからの電流は、機械式断路器110及び機械式遮断器120のみを通過して第2直流送電網200Bへ流れ、並列回路130及びHブリッジ回路140には流れない。
【0103】
ここで、プラズマスイッチスイッチング装置を用いた直流遮断装置100の有効性について説明する。
図16は、シミュレーション実施回路の動作状態を表す図である。シミュレーションは、直流遮断装置100の有効性を説明するために実施したものである。
【0104】
シミュレーション実施回路は、第1直流送電網200Aを模擬した回路構成の中に、
図13に示すプラズマスイッチング装置を用いた直流遮断装置100を接続し、直流遮断装置100に直流電圧320kVを印加した状態とした後、模擬化した第1直流送電網200Aの正側送電線300に雷などに起因する地絡事故を発生させたものである。
【0105】
シミュレーションでは、
図17に示すように、地絡事故が正側送電線300における直流遮断装置100と第2直流送電網200Bの間の事故地点Jで発生したものを想定している。
図16中の実線L1は機械式遮断器120を流れる電流を示す。一点鎖線L2はHブリッジ回路140を流れる電流を示す。二点鎖線L3はプラズマスイッチングユニット131を流れる電流を示す。
【0106】
事故発生時においては、事故電流は時間と共に増大していく。プラズマスイッチング装置を用いた直流遮断装置100は、全体として見ると二段階の遮断動作を行う。まず、事故電流の小さい初期の段階で、機械式遮断器120の遮断動作を行って事故電流を並列回路130に転流させ、事故電流の増大した後期の段階で、プラズマスイッチングユニット131の遮断動作を行う。以下、詳細に説明する。
【0107】
時間t1において地絡事故が発生すると、実線L1で示すように機械式遮断器120に流れる電流は増大する。機械式遮断器120に取り付けられた電流センサは、機械式遮断器120を流れる電流Idc_Mを検出し、予め設定した事故発生検出閾値Idc_Jと比較する。検出された電流Idc_Mが事故発生検出閾値Idc_Jを超過した時間t2において、並列回路130のプラズマスイッチングユニット131の第2スイッチング装置131Bの第4端子T4の第4電位V4が第5電位V5となって、第2スイッチング装置131Bは導通状態となる。同時に、Hブリッジ回路140の出力電圧制御を行う。具体的には、Hブリッジ回路140の出力電圧V_Hを以下の(1)式で演算して、出力する。
V_H=G(s)×(IdcM-0) ・・・(1)
上記(1)において、G(s)は制御ゲイン、sはラプラス演算子である。制御ゲインG(s)は、例えば一般的な比例積分制御を行う。
【0108】
各Hブリッジユニット141における各レグ143のスイッチング素子142を予め定めるオン・オフ時間の比(duty)に従ってパルス幅変調制御を実行することにより、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mが略ゼロとなるように制御し続ける。言い換えると、各レグ143のスイッチング素子142に対してパルス幅変調制御を実施することにより、Hブリッジユニット141の出力電圧V_Hを可変出力する。
【0109】
このようなHブリッジ回路140による制御により、
図16の実線L1で示すように、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mは略ゼロになるまで制御され続ける。この状態で機械式遮断器120を非導通状態に移行させる。機械式遮断器120に流れる電流は略ゼロとなっているため、接点を非導通状態に移行させても通常の直流電流導通時のように、アークを引いて電流が流れ続けることがない。そのため、高速に電流を遮断することができる。
【0110】
Hブリッジユニット141による出力電圧制御を行う場合は、ほぼ導通抵抗ゼロの機械式遮断器120にHブリッジユニット141の出力電圧が直接印加され、短絡電流が流れて、電流制御ができなくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、Hブリッジ回路140に接続された並列回路130に、電流変化率低減用のリアクトル132が設けられている。このリアクトル132によって機械式遮断器120にHブリッジユニット141の出力電圧が直接印加されることが防止されるため、機械式遮断器120に流れる電流の制御が可能となる。
【0111】
具体的に説明すると、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mの電流変化率dIdc_M/dtは、リアクトル132のインダクタンス値Lを用いて以下の(2)式で表される。
dIdc_M/dt=V_H/L ・・・(2)
【0112】
リアクトル132がない場合、インダクタンス値L=0となるため、Hブリッジユニット141の出力電圧V_Hがゼロでない限り、電流変化率dIdc_M/dtは無限大となってしまい、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mの制御ができなくなる。本実施形態では、並列回路130にリアクトル132を設けることによって、上記式においてインダクタンス値Lが挿入されるため、電流変化率dIdc_M/dtが有限となる。したがって、Hブリッジユニット141の出力電圧V_Hの大きさに応じて電流変化率dIdc_M/dtを制御することが可能となる。これによって、機械式遮断器120にHブリッジユニット141の出力電圧が直接印加されることを防止し、機械式遮断器120を流れる電流Idc_Mを略ゼロにする電流制御が可能となる。
【0113】
Hブリッジ回路140による出力電圧制御により、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mは略ゼロになるまで制御され続ける。具体的には、
図18に示すように、正側送電線300を流れる電流は、機械式遮断器120を通らずにHブリッジ回路140を通り、さらにHブリッジ回路140に接続された並列回路130を通って、正側送電線300に戻る。このため、機械式遮断器120に流れる電流Idc_Mが略ゼロになる。この状態で機械式遮断器120を非導通状態に移行させる。機械式遮断器120に流れる電流は略ゼロとなっているため、接点を非導通状態に移行させても通常の直流電流導通時のように、アークを引いて電流が流れ続けることがない。そのため、高速に電流を遮断することができる。
【0114】
次に、Hブリッジユニット141のスイッチング素子142を全てオフにする(
図16の一点鎖線L2を参照)。すると、
図19に示すように、Hブリッジユニット141のコンデンサ145に予め蓄えていた電圧が、機械式断路器110を流れ続ける事故電流を減少させる方向に印加される。これによって、機械式断路器110を流れる事故電流は減少する。機械式断路器110に流れる事故電流が減少した分、機械式断路器110に並列に接続された並列回路130に事故電流が転流される。
【0115】
図16の二点鎖線L3で示すように、プラズマスイッチングユニット131に流れる電流が増大し、時間の経過により、最終的に機械式断路器110に流れる電流はゼロになり、すべての事故電流がプラズマスイッチングユニット131を流れるようになる。この動作状態を
図20に示す。このタイミングで、機械式断路器110をオフにする。機械式断路器110には電流が流れていないため、接点を切り離しの際にアークが生じて電流が流れ続けることはない。
【0116】
最後に、
図20に示す動作状態において、第2スイッチング装置131Bの第4端子T4の第5電位V5を第4電位V4に切り換えて、並列回路130に流れる事故電流を遮断する。このとき発生するサージ電圧はアレスタ150に吸収され、電流遮断が完了する。
【0117】
第9の実施形態の直流遮断装置100においては、通常時には、電流が機械式断路器110及び機械式遮断器120のみを通過するため、導通損失がほぼゼロとすることができ、効率をよいものとすることができる。一方、事故時には、Hブリッジ回路140を用いた出力電圧制御により、並列回路130に電流を誘導して機械式断路器110を流れる電流を、アークを生じさせずに回路の切り離しを行うことができるように、例えば略ゼロにすることで、電流遮断能力のない機械式断路器110であっても、安全に事故点の切り離しを行うことができる。さらに、並列回路130に設けたプラズマスイッチングユニット131によって高速の電流遮断を実現することができる。
【0118】
さらに、プラズマスイッチングユニット131は、プラズマスイッチング装置で構成されている。このため、極めてコンパクトな装置とすることができる。したがって、送電効率の向上だけでなく、直流多端子送電設備における直流遮断器の設備面積を大幅な縮小し、設備コストの低減に寄与することができる。
【0119】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。
図21は、第10の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K2の構成を示す図である。第10の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K2において、直流遮断装置100は、機械式断路器110及びプラズマスイッチングユニット131を多数直列に接続して構成されている。複数のプラズマスイッチングユニット131のそれぞれには、アレスタ150が並列に接続されている。その他の点については、おおよそ第9の実施形態の直流送電系統K1と共通の構成を有している。
【0120】
第10の実施形態の直流送電系統K2に設けられた直流遮断装置100は、上記第9の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第10の実施形態の直流送電系統K2に設けられた直流遮断装置100は、多数直列に接続された機械式断路器110及びプラズマスイッチングユニット131を備えている。このため、直列接続の接続数を適切に設計することにより、直流送電系統K2における各所の電圧に対して適切に対応することができる。したがって、標準化による生産性の向上に寄与することができる。
【0121】
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。
図22は、第11の実施形態の直流送電系統K3に含まれる直流遮断装置100の構成を示す図である。第11の実施形態の直流送電系統K3に含まれる直流遮断装置100は、機械式断路器110、機械式遮断器120、プラズマスイッチングユニット131、及びHブリッジユニット141を制御する制御装置500を備える。直流送電系統K3は、全体的には、第9の実施形態に係る直流送電系統K1と同様の構成を有している。
【0122】
制御装置500は、例えば、通信部510と、判定部520と、操作部530と、を、を備える。判定部520及び操作部530は、例えば、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めコントローラのHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。プログラムは、記憶部に記憶されていてもよい。
【0123】
制御装置500は、例えば、直流送電系統K3における事故発生時に、プラズマスイッチングユニット131及びHブリッジユニット141を導通状態に移行させ、Hブリッジ回路140の出力電圧制御により機械式遮断器120に流れる電流を制限して機械式遮断器120を非導通状態に移行させる。
【0124】
制御装置500は、Hブリッジユニット141を非導通状態に移行させ、Hブリッジ回路140におけるコンデンサ145の電圧印加により並列回路130に事故電流を転流させて機械式断路器110を非導通状態に移行させる。制御装置500は、プラズマスイッチングユニット131で事故電流を遮断する。制御装置500は、制御部の一例である。
【0125】
通信部510は、例えば、各種情報を送信及び受信するための無線通信モジュールである。通信部510は、例えば、管理センターなどにより送信される事故情報を受信し、判定部520に出力する。通信部510は、例えば、操作部530が生成する制御信号を、直流遮断装置100に含まれる各種機器に送信する。
【0126】
判定部520は、通信部510により出力される事故情報に基づいて、直流送電系統K3における事故の発生を判定する。判定部520は、直流送電系統K3に事故が発生したと判定した場合、事故の発生及び事故の状況を含む事故発生情報を操作部530に通知する。
【0127】
操作部530は、判定部520により通知された事故発生情報に基づいて、断路器操作信号、遮断機操作信号、スイッチ操作信号、及びブリッジ操作信号を生成する。断路器操作信号は、機械式断路器110を操作する信号である。遮断機操作信号は、機械式遮断器120を操作する信号である。スイッチ操作信号は、プラズマスイッチングユニット131を操作する信号である。ブリッジ操作信号は、Hブリッジユニット141を操作する信号である。
【0128】
操作部530は、生成した断路器操作信号、遮断機操作信号、スイッチ操作信号、及びブリッジ操作信号を、それぞれ機械式断路器110、機械式遮断器120、プラズマスイッチングユニット131、及びHブリッジユニット141に向けて、通信部510に送信させる。
【0129】
スイッチ操作信号には、第1スイッチ操作信号から第4スイッチ操作信号が含まれる。第1スイッチ操作信号は、第1スイッチング装置131Aの第1グリッド26に対応する第3端子T3の電位を切り換える情報である。第2スイッチ操作信号は、第1スイッチング装置131Aの第2グリッド27に対応する第4端子T4の電位を切り換える情報である。第3スイッチ操作信号は、第2スイッチング装置131Bの第1グリッド26に対応する第3端子T3の電位を切り換える情報である。第4スイッチ操作信号は、第2スイッチング装置131Bの第2グリッド27に対応する第4端子T4の電位を切り換える情報である。
【0130】
事故発生情報は、例えば、直流送電の送電方向、及び直流系統での事故の発生の情報を含む。判定部520は、直流送電の送電方向は認識する機能及び直流系統での事故発生を判断する機能を含む。判定部520は、例えば、送電方向が第1端子201から第2端子202である場合には、事故発生時の最終電流遮断として、第1スイッチング装置131Aを選択する。判定部520は、例えば、送電方向が第2端子202から第1端子201である場合には、事故発生時の最終電流遮断として、第2スイッチング装置131Bを選択する。
【0131】
直流遮断装置100は、例えば、正極側の直流送電線に接続される。このため。直流遮断装置100は大地から相応の絶縁を確保して構成される。制御装置500は、例えば、直流遮断装置100の各種機器の近くに設置されるが、大地電位の地上に据え付けられる。このため、制御装置500は、絶縁トランスを介した電線ケーブル手段や、光信号によって電気的な絶縁をとった光ファイバーケーブル手段により、各機器に操作信号を送信する。
【0132】
第11の実施形態の直流送電系統K3に設けられた直流遮断装置100は、上記第9の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第11の実施形態の直流送電系統K3に設けられた直流遮断装置100は、送電方向を判断し、事故が発生場合に、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bのいずれを遮断するかを選択する。このため、双方向の事故電流を遮断することができる。
【0133】
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態について説明する。
図23は、第12の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K4の構成を示す図である。第12の実施形態の直流遮断装置100は、第11の実施形態の直流遮断装置100と比較して、水素量制御部540を備える点で主に異なる。
【0134】
第12の実施形態の直流遮断装置100において、通信部510は、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bの動作回数を受信し、水素量制御部540に出力する。
【0135】
水素量制御部540は、出力された動作回数に基づいて、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bのそれぞれにおける第1電極22の表面終端の水素消費の監視、水素濃度の監視、耐電圧レベルの監視を行う。水素量制御部540は、これらの監視結果に基づいて、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bのそれぞれにおけるプラズマスイッチ20に水素を補填するか必要があるか否かを判定する。
【0136】
水素量制御部540は、水素を補填する必要があると判定した場合に、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bに向けて補填操作信号を通信部510に送信させる。補填操作信号は、水素貯蔵金属20Hを加熱して水素を放出させ、プラズマスイッチ20内に水素を補填させるための信号である。
【0137】
第12の実施形態の直流送電系統K4に設けられた直流遮断装置100は、上記第11の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第12の実施形態の直流送電系統K4に設けられた直流遮断装置100は、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bにおけるプラズマスイッチ20内の水素濃度が低下した際に、プラズマスイッチ内の減圧圧力を阻害することなく、水素を供給することができる。
【0138】
(第13の実施形態)
次に、第13の実施形態について説明する。
図24は、第13の実施形態の直流送電系統K5に含まれる直流遮断装置100の構成を示す図である。直流送電系統K5に含まれる直流遮断装置100は、機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103を備える。直流送電系統K5は、全体的には、第9の実施形態に係る直流送電系統K1と同様の構成を有している。
【0139】
機械遮断バルブ101は、機械式断路器110と機械式遮断器120を含む。プラズマスイッチバルブ102は、プラズマスイッチングユニット131とアレスタ150を含む。機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103は、互いに独立して配設されている。Hブリッジバルブ103は、Hブリッジユニット141及びリアクトル132を含む。機械遮断バルブ101は、例えば図示しない独立した架台上に載置されている。
【0140】
機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103は、それぞれ第1端子201から第8端子208を介して導体で接続されている。機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103は、いずれも電流を流したり止めたりする機能を有する。
図25は、第13の実施形態の直流遮断装置100の構造の一例を示す斜視図である。
【0141】
第13の実施形態の直流送電系統K5に設けられた直流遮断装置100は、上記第9の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第13の実施形態の直流遮断装置100は、機械遮断バルブ101を独立した架台に載置している。このため、機械遮断バルブ101に実装されている機械式断路器110及び機械式遮断器120の電極開閉に伴う操作振動が、プラズマスイッチバルブ102とHブリッジバルブ103に伝わらないようにすることを容易に実現できる。したがって、耐久性などの信頼性を向上させることができる。
【0142】
第13の実施形態の直流遮断装置100では、機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103はそれぞれ独立して配設されている。このため、側面からのアクセスが容易となり、メンテナンスを有利となるようにすることができる。
【0143】
例えば、一つのステージに機械式断路器110、機械式遮断器120、プラズマスイッチングユニット131、及びHブリッジユニット141を配置すると、ステージ面積が広くなり、奥のほうへのアクセスが難しくなる。また、一段のステージで負担する機器重量も増加するため、ステージを強固に構成する必要があり、全体重量が増加し、コストも高くなる。
【0144】
この点、第13の実施形態の直流遮断装置100では、機械遮断バルブ101、プラズマスイッチバルブ102、及びHブリッジバルブ103はそれぞれ独立して配設されている。このため、構成用品の取り扱いに対する注意項目が限定され組立性を向上させることができる。さらに、バルブ単位での試験による品質向上を図ることができる。したがって、プラズマスイッチング装置を用いた直流遮断装置100の耐久性、保守性、組立性、品質を向上させることができる。
【0145】
(第14の実施形態)
次に、第14の実施形態について説明する。
図26は、第14の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K6の構成を示す図である。第14の実施形態の直流送電系統K6において、直流遮断装置100は、機械式断路器110及びHブリッジ回路140(
図13参照)を備えていない。
【0146】
機械式遮断器120に並列に接続された並列回路130には、逆並列に接続された第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bを備えるプラズマスイッチングユニット131とアレスタ150が並列に接続されている。プラズマスイッチングユニット131と直列にリアクトル132(
図13参照)が接続されていてもよい。
【0147】
第14の実施形態の直流遮断装置100は、第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bのプラズマスイッチ20が第2の状態にあるときにおける電圧降下が大幅に改良できたものである。以下、第14の実施形態の直流遮断装置100の動作について、通常時と事故時に分けて説明する。なお、事故時については、第2直流送電網200Bで直流短絡事故が発生した場合について説明する。
【0148】
通常時は、機械式断路器110を導通状態、プラズマスイッチングユニット131の第1スイッチング装置131A及び第2スイッチング装置131Bを非導通状態(第2状態ST2)に制御する。このとき、第1直流送電網200Aからの電流は、機械式遮断器120のみを通過して第2直流送電網200Bへ流れ、並列回路130には流れない。
【0149】
事故発生時、機械式断路器110に取り付けられた電流センサが事故発生検出閾値Idc_Jを超える電流Idc_Mを検出したら、第1直流送電網200A側に第2電極23が接続されたプラズマスイッチングユニット131の第1スイッチング装置131Aを制御して第2状態(導通状態)に切り換える。
【0150】
機械式断路器110に取り付けられた電流センサが電流Idc_Mの検出と同時に、機械式断路器110は、接点電極が開く方向に動作を開始する。機械式断路器110の接点電極が離れ始めると接点電極間にはアークが発生し、同時にアーク電圧が発生する。電流は継続して流れ続けようとするが、機械式断路器110を流れる事故電流は、並列回路130に分流する。
【0151】
プラズマスイッチングユニット131の第2状態における電圧降下が大幅に低減できれば、機械式断路器110を流れる事故電流はほとんどが並列回路130に転流する。さらに、機械式断路器110の接点電極が離れる部位に圧縮ガスを吹き付けて接点電極やその周囲気のプラズマ化を抑制するのと、接点電極の開極動作を最大ギャップに向けて継続する動作中することで、アーク電圧が高くなり、さらに並列回路130に事故電流が流れやすくなり、機械式断路器110のアークが消え、電流がゼロになる。
【0152】
機械式断路器110の電流がゼロとなった後、機械式遮断器120が持つ絶縁回復時間を待って、プラズマスイッチングユニット131の第1スイッチング装置131Aを第2状態(導通状態)から第1状態(非導通状態)に切り換えて、並列回路130に流れる電流を遮断する。こうして、直流遮断装置100による事故電流遮断が完了する。
【0153】
第14の実施形態の直流送電系統K6に設けられた直流遮断装置100は、上記第9の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第14の実施形態の直流遮断装置100は、Hブリッジ回路を備えずに、直流遮断装置100を実現できるため、低コスト化、小型化に寄与することができる。さらに、装置部品点数を削減したことによる、保守性、生産性(リードタイム)、信頼性が向上させることができる。
【0154】
(第15の実施形態)
次に、第15の実施形態について説明する。
図27は、第15の実施形態の直流遮断装置100を含む直流送電系統K7の構成を示す図である。第15の実施形態の直流送電系統K7は、複数、例えば3つの直流遮断装置100(第1直流遮断装置100A~第3直流遮断装置100C)を備える。直流遮断装置100は、第9実施形態におけるプラズマスイッチングユニット131に代えて、第1スイッチング装置131Aを備えており、第2スイッチング装置131Bは設けられていない。直流遮断装置100は、片方向遮断の直流遮断装置である。
【0155】
直流送電系統K7は、第1直流送電網200A、第2直流送電網200B、及び第3直流送電網200Cの3つの直流送電網を備える。第1直流送電網200A、第2直流送電網200B、及び第3直流送電網200Cは、いずれも図示しない交直電力変換装置(コンバータ)を備える。
【0156】
第1直流遮断装置100Aの正側送電線300には、第1直流送電網200A側に第1端子201が設けられ、第1直流送電網200Aの反対側に第2端子202が設けられている。第2直流遮断装置100Bの正側送電線300には、第2直流送電網200B側に第2端子202が設けられ、第2直流送電網200Bの反対側に第2端子202が設けられている。第3直流遮断装置100Cの正側送電線300には、第3直流送電網200C側に第1端子201が設けられ、第3直流送電網200Cの反対側に第2端子202が設けられている。
【0157】
次に、直流送電系統K7に含まれる片方向遮断の直流遮断装置100(第1直流遮断装置100A~第3直流遮断装置100C)の動作に、複数の事故ケースを例示して説明する。
図28は、片方向遮断の直流遮断装置による直流3端子送電システムの事故保護を説明する図である。この説明において、直流送電系統K7では、第2直流送電網200Bに向けて、第1直流送電網200Aと第3直流送電網200Cから、正側送電線300と負側送電線400により直流送電しているものとする。
【0158】
まず、事故ケース1について説明する。事故ケース1は、第1直流送電網200Aと第1直流遮断装置100Aとの間の正側送電線300の第1事故点J1で地絡事故が発生したケースである。
【0159】
第1事故点J1で地絡事故が発生することにより、第1事故点J1の電圧は大地電位となる。このため、事故電流は、第1事故点J1に向けて流れる。すなわち、第1直流送電網200A側から第1事故点J1に向けて、そして、第2直流送電網200B側と第3直流送電網200C側からの電流が第1事故点J1に向けて流れ込む。
【0160】
このとき、第1直流遮断装置100Aが保護動作し、事故電流を遮断して、第1事故点J1を正側送電線300切り離す。第2直流送電網200Bと第3直流送電網200Cは、第1事故点J1が正側送電線300から切り離されたことで、第2直流送電網200Bに向けて第3直流送電網200Cから送電を継続、または、再開できる。
【0161】
次に、事故ケース2について説明する。事故ケース2は、第1直流送電網200Aと第2直流送電網200Bと第3直流送電網200Cとを接続する正側送電線300の第2事故点J2で地絡事故が発生したケースである。
【0162】
第2事故点J2で地絡事故が発生することにより、第2事故点J2の電圧は大地電位となる。このため、事故電流は第2事故点J2に向けて流れる。すなわち、第1直流送電網200A側から第2事故点J2に、第2直流送電網200B側から第2事故点J2に、そして、第3直流送電網200C側から第2事故点J2に向けて、事故電流が流れ込む。
【0163】
このとき、第1直流遮断装置100A~第3直流遮断装置100Cのそれぞれが保護動作し、事故電流を遮断して、第2事故点J2を正側送電線300から切り離す。保護動作とは、直流遮断装置100におけるプラズマスイッチを第1状態(非導通状態)から第2状態(導通状態)に切り換える動作である。事故ケース2は、第2事故点J2を復旧しないかぎり、第1直流送電網200A~第3直流送電網200Cのいずれとも連系できないこととなる。
【0164】
次に、事故ケース3について説明する。事故ケース3は、第2直流送電網200Bと第2直流遮断装置100Bの間の正側送電線300の第3事故点J3で地絡事故が発生したケースである。
【0165】
第3事故点J3で地絡事故が発生することにより、第3事故点J3の電圧は大地電位となる。このため、事故電流は第3事故点J3に向けて流れる。すなわち、第2直流送電網200B側から第3事故点J3に向けて、そして、第1直流送電網200A側と第3直流送電網200C側から第3事故点J3に向けて、事故電流が流れ込む。
【0166】
このとき、第2直流遮断装置100Bが保護動作し、事故電流を遮断して、第3事故点J3を正側送電線300から切り離す。第1直流送電網200Aと第3直流送電網200Cは、第3事故点J3が正側送電線300から切り離されたことで、連系可能状態となる。
【0167】
次に、事故ケース4について説明する。事故ケース4は、第3直流送電網200Cと第3直流遮断装置100Cとの間の正側送電線300の第4事故点J4で地絡事故が発生したケースである。
【0168】
第4事故点J4で地絡事故が発生することにより、第4事故点J4の電圧は大地電位となる。このため、事故電流は、第4事故点J4に向けて流れる。すなわち、第1直流送電網200A側と第2直流送電網200B側から第4事故点J4に向けて、そして、第3直流送電網200C側からの電流が第4事故点J4に向けて流れ込む。
【0169】
このとき、第3直流遮断装置100Cが保護動作し、事故電流を遮断して、第4事故点J4を正側送電線300切り離す。第1直流送電網200Aと第2直流送電網200Bは、第4事故点J4が正側送電線300から切り離されたことで、第2直流送電網200Bに向けて第1直流送電網200Aから送電を継続、または、再開できる。
【0170】
第15の実施形態の直流送電系統K7に設けられた直流遮断装置100は、上記第9の実施形態の直流遮断装置100と同様の作用効果を奏する。さらに、第15の実施形態の直流遮断装置100は、片方向遮断の直流遮断器であっても、直流多端子送電線の事故点を切り離し、事故の拡大を抑制することができる。
【0171】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、第1端子が接続された第1電極、第2端子が接続され、前記第1電極と離れて配置された第2電極、第3端子が接続され、前記第1電極と前記第2電極の間に配置された第1グリッド、及び、第4端子が接続され、前記第1グリッドと前記第2電極の間に配置された第2グリッド、を有するプラズマスイッチと、前記プラズマスイッチの外側に設けられ、前記プラズマスイッチとの間に密閉空間を形成する外郭部と、を備え、前記密閉空間に絶縁ガスが充填されている、スイッチング装置であることにより、小型のスイッチング装置及び直流遮断装置を提供することができる。
【0172】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0173】
1~8…スイッチング装置、10…絶縁容器、10G…絶縁ガス、11…絶縁筒、12…天端板、12H…開口、13…底端板、14…絶縁ひだ、13B…絶縁ブッシング、13H…開口、13L…リード、15…サポート、16…リード導体、17…上部サポート、20…プラズマスイッチ、20G…放電ガス、20H…水素貯蔵金属、21…ケース部、21F…放熱フィン、21H…連結管、21L…底板部、21P…封止管、21S…側壁部、21S1…側壁下部、21S2…側壁中部、21S3…側壁上部、21S4…側壁中上部、21U…天板部、22…第1電極、22A…第1層、22B…ベース脚部、22C…ベース支持部、22D…ベース、23…第2電極、25…吊持ベース、26…第1グリッド、26S…第1シールド、27…第2グリッド、27S…第2シールド、28…浮遊電位シールド、28K…外部シールド、29…シールド、30…封止フランジ、31…中実シールド、32…上部シールド、50L…リード、100…直流遮断装置、100A…第1直流遮断装置、100B…第2直流遮断装置、100C…第3直流遮断装置、101…機械遮断バルブ、102…プラズマスイッチバルブ、103…Hブリッジバルブ、110…機械式断路器、120…機械式遮断器、130…並列回路、131…プラズマスイッチングユニット、131A…第1スイッチング装置、131B…第2スイッチング装置、132…リアクトル、140…Hブリッジ回路、141…Hブリッジユニット、142…スイッチング素子、143…レグ、144…ダイオード、145…コンデンサ、150…アレスタ、200A…第1直流送電網、200B…第2直流送電網、200C…第3直流送電網、300…正側送電線、400…負側送電線、500…制御装置、510…通信部、520…判定部、530…操作部、540…水素量制御部、D11…第1接合部、D12…第2接合部、D13…第3接合部、D14…第4接合部、D15…浮遊電位接合部、K1~K7…直流送電系統、SP1……第1空間、SP1P…第1プラズマ、SP2…第2空間、SP2P…第2プラズマ、SP3…第3空間、SP3P…第3プラズマ