(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20231010BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20231010BHJP
B01L 3/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G01N35/10 B
C12M1/34 Z
B01L3/02 D
(21)【出願番号】P 2022563499
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2021004846
(87)【国際公開番号】W WO2021215755
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0050288
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109516
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン-カブ
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212099(WO,A1)
【文献】特開2019-37911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
C12M 1/34
B01L 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体の上部に溝形状に形成され、マルチウェルプレートが挿入されて取り付けられるマルチウェルプレート取り付け部と、
前記マルチウェルプレート取り付け部を含む本体の上部面に位置し、選択される位置に上下方向に貫通し、選択される1つのウェルに試料を注入できるように形成される注入口を含む保護パネルと、
前記注入口が選択されるウェルに位置するように前記保護パネルを移動させる保護パネル移動部と、
前記注入口が位置したマルチウェルプレートのウェルの位置情報を測定する位置測定部と、
試料のバーコード情報を取得するバーコードセンサと、
ウェルの位置情報と試料のバーコード情報を記録および通信し、前記保護パネル移動部を制御する回路基板と、
を含む、追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項2】
前記マルチウェルプレート取り付け部は、前記保護パネルとマルチウェルプレートが離隔する高さを有するように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項3】
前記注入口は、下部が上部よりも直径が小さく形成され、
前記注入口の下部に中空形状の汚染防止板が備えられることを特徴とする、請求項1に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項4】
前記保護パネル移動部は、第1保護パネル移動部を含み、
前記第1保護パネル移動部は、
前記本体のエッジに結合されるY軸固定台と、
前記Y軸固定台をY軸方向に連結するY軸部と、
前記Y軸部に沿ってY軸方向に移動するY軸スライドと、
前記Y軸スライドにX軸方向に両端が結合されるX軸部と、
前記X軸部に沿って移動し、前記保護パネルの上部面と結合するX軸スライドと、を含む、請求項1に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項5】
前記保護パネル移動部は、第2保護パネル移動部を含み、
前記第2保護パネル移動部は、
前記本体のエッジに結合されるY軸固定台と、
前記Y軸固定台をY軸方向に連結するY軸スクリュと、
前記Y軸スクリュに沿ってY軸方向に移動するY軸スライドと、
前記Y軸スライドにX軸方向に両端が結合されるX軸スクリュと、
前記X軸スクリュに沿って移動し、前記保護パネルの上部面と結合するX軸スライドと、を含む、請求項1に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項6】
前記第2保護パネル移動部は、前記Y軸スクリュとX軸スクリュを動作させるモータをさらに含む、請求項5に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項7】
前記位置測定部は、
前記保護パネルに複数備えられる永久磁石と、前記本体に形成され、前記永久磁石を感知する磁性センサと、を含む、請求項1に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項8】
前記位置測定部は、
前記磁性センサ上に形成され、前記保護パネルの移動長さに対応する長さを有するように形成される純鉄棒をさらに含む、請求項7に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項9】
前記位置測定部は、
前記Y軸スライドおよびX軸スライドに少なくとも1つ以上備えられる永久磁石と、前記本体に形成され、前記永久磁石を感知する磁性センサと、を含む、請求項5に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項10】
前記位置測定部は、
Y軸スライドブロックに1つ以上備えられる永久磁石と、前記永久磁石を感知する磁性センサと、を含む、請求項9に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項11】
前記保護パネル移動部は、
1つ以上のY軸スクリュと、前記1つ以上のY軸スクリュを同時に動作するように連結するY軸駆動部と、をさらに含む、請求項5に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【請求項12】
前記Y軸駆動部は、
1つ以上の永久磁石と、前記永久磁石を感知する磁性センサと、を含む、請求項11に記載の追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置に関し、より詳しくは、交差汚染の防止および診断エラーを防止しつつマルチウェルプレートのウェルに試料を注入できるだけでなく、試料が注入されたウェルの情報を簡便に記録し追跡することができる、追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19の全世界的な流行により、SARS-CoV-2に対する分子診断検査に対する需要が爆増している。分子診断のためには、臨床試料から核酸を抽出する核酸抽出ステップと、抽出された核酸を増幅して定性、定量分析するリアルタイムPCRステップとを経て病原菌の感染有無を判断することができる。
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、1985年、Kary Mullisにより発明されて以来、特定のDNAを速くかつ容易に増幅することができるため、分子生物学および分子診断などに広範囲で用いられている。
【0004】
PCR/RTPCRを利用すると、生体試料中に特定のDNA/RNAが存在するか否かを高感度に確認することができるため、ウイルスなどの病原性微生物の感染を診断する際に多く用いられているだけでなく、qPCR(定量的PCR、quantitative PCR、real-time PCR)などの方法で病原体数を正確に定量することができるため、HIV、HCV、HBVウイルスなどの治療効果をモニターするのに有用である。
【0005】
COVID-19が全世界的に大流行しているが、高感度を有する分子診断法だけで無症状感染者や初期感染者を正確に診断することができるため、大量に分子診断検査を行うことができる技術が切実に必要な状況である。
【0006】
大量検査のためには、複数の検体を集めて1つの溶液を作って検査するプール検査法が用いられてきた。HIV、HBV、HCVなどの高リスク群ウイルスを検出する血液スクリーニング検査のためには、6個の試料を1つに合わせて検査する検査法などが用いられてきた。COVID-19の大量検査のために、このようなプール検査法が提案されている。しかし、大量の検体をプールする過程は、それぞれの臨床検体情報を正確に記録し、各プールされた試験群間の交差汚染を防止しなければならないため、手作業で行うと、多くのエラーを発生させ得る。プールのための高価の自動化液体分注装置が商用化されているが、それを複数使用してこそ、多くの試料を同時に処理することができるため、現実的に面積を大きく占める高価の自動化装置を用いて迅速に多くの試料を処理するには限界がある。
【0007】
大量に検査する全自動システムが開発されているが、このようなシステムは、装置が非常に複雑であり、高価であり、プール機能を提供していないため、急に必要な全世界の検査需要を満たすことができない。
【0008】
核酸抽出ステップは、通常、0.2ml~1mlの臨床試料を用い、それに抽出試薬溶液を約1ml程度追加して抽出するため、最大2mlの溶液を入れなければならない。多くの試料から短時間に核酸を抽出するためには、可能な範囲で多くの試料を処理するマルチウェルプレートを用いなければならない。したがって、最も多い試料から同時に抽出できる普遍的な方法としては、ウェル当たりに2mlの溶液を入れる深い96-ウェルプレートを用いる。大量検査のために、深い96-ウェルプレートを用いて核酸を抽出する装置が種々の会社で開発されて発売されている。Thermo Fisher社により開発されたKing Fisher(登録商標)核酸自動抽出器、Roche社により発売されたMagNA Pure 96装置、およびBioneer社により発売されたExiPrep(登録商標)96 Liteなどが挙げられる。
【0009】
この際、96-ウェル核酸自動抽出器を用いるためには、96-ウェルプレートに試料を入れるステップが必ず必要である。ところで、分子診断は、通常、反応溶液中に100個以下のターゲット核酸を検出できる高感度の検出限界をもって陽性と判定するため、汚染による偽陽性に非常にセンシティブである。例えば、10^8/mlとなる陽性試料溶液が1nlだけ周辺の陰性ウェルに汚染されていても偽陽性と判定をする可能性がある。したがって、96-ウェルプレートを用いて核酸を抽出する場合において、隣接したウェルを微細な液滴により汚染しないように試料を注入することは非常に重要である。
【0010】
また、96個の試料を1つずつそれぞれのウェルに注入することを繰り返し行うと、間違って誤ったウェルに試料を注入し、誤った結果を出し得るという問題がある。特にプールをする場合、プールする検体数を一つ一つ数えながら作業をすると、間違って誤ったウェルに試料を注入しやすい。このような問題を解決するために、自動で試料を96-ウェルプレートに注入する装置が開発されているが、装置が高価であり、swab検体のように綿棒が試料収集容器に入っている試料を処理する際に誤作動しやすいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国登録特許公報第10-0637030号(2006.10.16.)
【非特許文献】
【0012】
【文献】NS Sahajpal、The Journal of Molecular Diagnostics、July 29、2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述したような問題を解決するために導き出されたものであり、本発明の目的は、個別検査またはプール検査を行うために、核酸抽出用マルチウェルプレートに手作業で多くの試料を入れる際に発生し得るエラーとして、誤ったウェルに試料を注入したり、または重複して注入したりすることで発生する診断エラーを防止できるだけでなく、試料が注入されたウェルの情報を簡便に記録し追跡することができる、追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、核酸抽出用マルチウェルプレートに手作業で試料を入れる際に発生し得るエラーとして、試料を注入するためのウェルと隣接したウェルに試料を落として交差汚染を発生させ得るエラーを防止することができる、追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、本体100と、前記本体100の上部に溝形状に形成され、マルチウェルプレート200が挿入されて取り付けられるマルチウェルプレート取り付け部110と、前記マルチウェルプレート取り付け部110を含む本体100の上部面に位置し、選択される位置に上下方向に貫通し、選択される1つのウェルに試料を注入できるように形成される注入口121を含む保護パネル120と、前記注入口121が選択されるウェルに位置するように前記保護パネル120を移動させる保護パネル移動部130と、前記注入口121が位置したマルチウェルプレート200のウェルの位置情報を測定する位置測定部と、試料のバーコード情報を取得するバーコードセンサ106と、ウェルの位置情報と試料のバーコード情報を記録および通信し、前記保護パネル移動部130を制御する回路基板103と、を含む。
【0016】
前記マルチウェルプレート取り付け部110は、前記保護パネル120と前記マルチウェルプレート220が離隔する高さを有するように形成されることができる。前記注入口121は、下部が上部よりも直径が小さく形成され、前記注入口121の下部に中空形状の汚染防止板122が備えられることができる。
【0017】
前記保護パネル移動部は、第1保護パネル移動部を含み、前記第1保護パネル移動部は、前記本体100のエッジに結合されるY軸固定台131と、前記Y軸固定台131をY軸方向に連結するY軸部132と、前記Y軸部132に沿ってY軸方向に移動するY軸スライド133と、前記Y軸スライド133にX軸方向に両端が結合されるX軸部134と、前記X軸部134に沿って移動し、保護パネル120の上部面と結合するX軸スライド135と、を含むことができる。
【0018】
前記保護パネル移動部は、第2保護パネル移動部を含み、前記第2保護パネル移動部は、前記本体100のエッジに結合されるY軸固定台131-1と、前記Y軸固定台131-1をY軸方向に連結するY軸スクリュ139-1と、前記Y軸スクリュ139-1に沿ってY軸方向に移動するY軸スライド133-1と、前記Y軸スライド133-1にX軸方向に両端が結合されるX軸スクリュ139-2と、前記X軸スクリュ139-2に沿って移動し、前記保護パネル120の上部面と結合するX軸スライド135-1と、を含むことができる。
【0019】
前記第2保護パネル移動部は、前記Y軸スクリュ139-1とX軸スクリュ139-2を動作させるモータ139-3をさらに含むことができる。前記位置測定部は、前記保護パネル120に複数備えられる永久磁石124と、前記本体100に形成され、前記永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含むことができる。
【0020】
前記位置測定部は、前記磁性センサ105上に形成され、前記保護パネル120の移動長さに対応する長さを有するように形成される純鉄棒104をさらに含むことができる。
【0021】
前記位置測定部は、前記Y軸スライド133-1およびX軸スライド135-1に少なくとも1つ以上備えられる永久磁石124と、前記本体100に形成され、前記永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含むことができる。
【0022】
前記位置測定部は、Y軸スライドブロック140に1つ以上備えられる永久磁石124と、前記永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含むことができる。
【0023】
前記保護パネル移動部は、1つ以上のY軸スクリュ139-1と、前記1つ以上のY軸スクリュ139-1を同時に動作するように連結するY軸駆動部141と、をさらに含むことができる。前記Y軸駆動部141は、1つ以上の永久磁石124と、前記永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、診断エラーを防止することができるため、大量に多くの検査を診断エラーのリスクなしに行うことができるだけでなく、作業者が行った全ての試料注入作業を追跡して管理することができるため、診断の正確性を向上できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した図である。
【
図2】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した図である。
【
図3】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した図である。
【
図4】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置の本体の内部に取り付けられた純鉄棒およびセンサなどを示した斜視図である。
【
図5】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を概念図で示した図である。
【
図6】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図7】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図8】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図9】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図10】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図11】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を斜視図で示した他の図である。
【
図12】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を部分斜視図で示した図である。
【
図13】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を部分斜視図で示した図である。
【
図14】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を部分斜視図で示した他の図である。
【
図15】本発明に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を部分斜視図で示した他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、上述したような本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置について添付図面を参照して詳しく説明する。
本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、主に、本体100、マルチウェルプレート取り付け部110、保護パネル120、保護パネル移動部130、位置測定部、バーコードセンサ106、および回路基板103を含んでなる。
【0027】
本体100は、上下方向に分けられ、結合が可能な本体上板101と本体下板102とからなることができる。マルチウェルプレート取り付け部110は、マルチウェルプレート200が本体100に挿入されて位置する構成であり、本体100にマルチウェルプレート200の形状に対応する溝形状に形成されることで、マルチウェルプレート200が載置されて位置する。
【0028】
保護パネル120は、マルチウェルプレート取り付け部110を含む本体100の上部面に位置し、選択される位置に上下方向に貫通して形成されることで、試料を注入できる注入口121を含む。この際、注入口121は、保護パネル120の中心に形成されることが好ましいが、限定されない。さらに、保護パネル120は、本体100の上部面に沿って移動可能に形成されることで、試料を注入するための注入口121を選択されるウェル上に位置させることができ、残りのウェルは保護パネル120で遮ることで、試料を注入する過程での交差汚染を防止することができる。
【0029】
保護パネル移動部130は、保護パネル120と結合され、保護パネル120の水平方向への移動が可能となるように形成される。これにより、保護パネル120を水平方向に移動させることで、注入口121が所望のウェル上に位置するようにする。
【0030】
位置測定部は、磁性センサ105からなり、ウェルの位置情報を取得することができ、バーコードセンサ106は、検体試料のバーコード情報を取得することができる。回路基板103は、ウェルの位置情報と検体試料のバーコード情報を認識し、それをコンピュータなどの格納手段に記録し、このために、回路基板103は、通信手段を含んでなる。
【0031】
すなわち、本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、位置測定部がウェルの位置情報による注入口121の位置をリアルタイムで入力するとともに、バーコードセンサ106を介して検体試料のバーコード情報をリアルタイムで入力することで、入力された記録によりエラーを防止し、発生したエラーを追跡することができる。
【0032】
これにより、数多くの検体試料を作業者が繰り返して注入する過程において、作業者が他のウェルに重複して検体試料を入れるなどの診断エラーの発生を防止することができる。
【0033】
上述したように、本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、ウェルの位置情報と試料のバーコード情報をリアルタイムで入力して記録することで、作業者の誤動作を防止することができ、発生したエラーを追跡することができるという効果がある。
【0034】
本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置についてより詳細に説明する。
保護パネル120は、上述したように、マルチウェルプレート200の上部に位置して水平方向に移動するが、マルチウェルプレート200から上部方向に離隔して位置する。すなわち、保護パネル120が選択されるウェルに注入口121を位置させるために水平方向に移動する際に、マルチウェルプレート200上部の試料が保護パネル120に接触して付着し得る。これは、試料による他のウェルの汚染を誘発し得る。
【0035】
このために、マルチウェルプレート取り付け部110は、マルチウェルプレート200が載置される際に、保護パネル120から離隔するように高さを有する。すなわち、マルチウェルプレート取り付け部110は、保護パネル120とマルチウェルプレート200が離隔するように形成されることで、保護パネル120の下部面に試料が接触するのを防止することができる。
【0036】
この際、マルチウェルプレート取り付け部100は、保護パネル120とマルチウェルプレート200が1mm~5mmの間隔で離隔するように形成されることが好ましいが、選択されるウェルへの円滑な試料注入が可能であるとともに、試料との接触を防止できるのであれば、限定なく多様な実施形態が可能であることはいうまでもない。
【0037】
さらに、保護パネル120は、上部面に作業者が移動できるように形成されるパネル取っ手123をさらに含むことができる。注入口121は、下部が上部の直径よりも小さく形成され、下部に中空形状の汚染防止板122が備えられる。汚染防止板122は、試料を吸収できる材質からなる。
【0038】
すなわち、マルチウェルプレート200のウェルにピペットで試料を注入する際に、外部から付着した試料が注入口121の溝に付着されて他のウェルを汚染させることによる交差汚染を発生させ得る。このために、注入口121の下部に汚染防止板122を備え、汚染時に汚染防止板122を取り替えることで、交差汚染を防止することができる。
【0039】
この際、汚染防止板122の中空は、ウェルの直径よりも小さく形成されることが好ましい。これにより、試料が他のウェルに流入するのを防止することができる。より好ましくは、注入口121の直径は、ウェルの直径よりも大きく形成して試料の注入を容易にするとともに、汚染防止板122の取り替えが容易となるように、汚染防止板122の中空は、ウェルの直径よりも小さくすることで、上述したように他のウェルに試料が流入するのを防止することができる。この際、汚染防止板122は、四角形、五角形などの多角形の形状にも形成可能であるが、中空のドーナツ形状に形成することが好ましい。
【0040】
図1~
図4を参照すると、保護パネル移動部130は、本体100のエッジに結合されるY軸固定台131と、Y軸固定台131をY軸方向に連結するY軸部132と、Y軸部132に沿ってY軸方向に移動するY軸スライド133と、Y軸スライド133にX軸方向に両端が結合されるX軸部134と、X軸部134に沿って移動し、保護パネル120と結合するX軸スライド135と、を含んでなる第1保護パネル移動部を含むことができる。
【0041】
すなわち、第1保護パネル移動部は、X軸スライド135がX軸部134に沿って移動し、注入口121のX軸方向への位置を制御するようにするとともに、Y軸スライド133がY軸部132に沿って移動し、注入口121のY軸方向への位置を制御するようにすることができる。
【0042】
さらに、マルチウェルプレート200のそれぞれのウェルの定位置に止まることができるように、Y軸部132とX軸部134には一定間隔で溝に形成される軸溝137が形成され、ボールプランジャ138により定位置での停止を容易にすることができる。このような構成により、マルチウェルプレート200の全てのウェルの位置と保護パネル120の注入口121を手作業で容易に整列させることができる。
【0043】
さらに、
図6~
図15を参照すると、保護パネル移動部は、自動化された第2保護パネル移動部をさらに含むことができる。第2保護パネル移動部は、本体100のエッジに結合されるY軸固定台131-1と、前記Y軸固定台131-1をY軸方向に連結するY軸スクリュ139-1と、Y軸スクリュ139-1に沿ってY軸方向に移動するY軸スライド133-1と、前記Y軸スライド133-1にX軸方向に両端が結合されるX軸スクリュ139-2と、X軸スクリュ139-2に沿って移動し、保護パネル120の上部面と結合するX軸スライド135-1と、Y軸スクリュ139-1とX軸スクリュ139-2が動作するように動力を供給するモータ139-3と、を含んでなる。
【0044】
Y軸スクリュ139-1は、Y軸スライド133-1と噛み合うように結合され、両端がY軸固定台131-1にY軸方向に軸回転可能に結合され、軸回転によりY軸スライド133-1をY軸方向に移動可能に形成される。
【0045】
Y軸スクリュ139-1は、少なくとも1つ以上備えられることができ、1つ以上のY軸スクリュ139-1は、Y軸駆動部141を介して同時に動作可能に形成される。Y軸駆動部141は、タイミングベルトからなることができる。
【0046】
X軸スクリュ139-2は、X軸スライド135-1と噛み合うように結合され、両端がY軸スライド133-1にX軸方向に軸回転可能に結合され、軸回転によりX軸スライド135-1とX軸方向に移動可能に形成される。
【0047】
モータ139-3は、本体の下部またはY軸スライド133-1の上部に位置することができ、ギアまたはタイミングベルトなどの連結要素を介してY軸スクリュ139-1およびX軸スクリュ139-2と連結されることができる。
【0048】
上述したように、自動化のためにモータ139-3でY軸スライド133-1とX軸スライド135-1の移動時、作業者が動作する動作に比べて精密な位置制御が可能であるという長所がある。
【0049】
位置測定部は、保護パネル120に複数備えられる永久磁石124と、永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含んでなる。永久磁石124は、正確な位置情報を把握するために、保護パネル120の中心からX軸方向とY軸方向である十字方向に複数配列されて備えられることが好ましい。磁性センサ105は、本体100を上下方向になす本体上板101と本体下板102との間に備えられることができる。特に、磁性センサ105は、本体上板101と本体下板102との間の回路基板103の上部に備えられることが好ましい。さらに、磁性センサ105は、回路基板103上に形成され、マルチウェルプレート200をなすウェルの行と列に対応して備えられることが好ましい。
【0050】
上述したように、位置測定部は、磁性センサ105が保護パネル120に備えられる永久磁石124を認知し、保護パネル120の移動に応じた注入口121とウェルの位置情報を測定することができる。
【0051】
さらに、位置測定部は、磁性センサ105が長さ方向の中心に位置するように形成され、ウェルの行と列に一定の長さを有するように形成される純鉄棒104をさらに含んでなることができる。
【0052】
すなわち、保護パネル120は、全てのウェルに移動可能であるため、それの位置を測定するためには、それぞれのウェルごとに対応する磁性センサ105を含まなければならない。例えば、96-ウェルプレートの場合、磁性センサ105は96個が必要であり、これは費用および空間利用性に不利である。
【0053】
このために、本発明の位置情報センサは、純鉄棒104を含むことで、磁性センサ105の具備を節約することができる。純鉄棒104は、磁石により磁化しやすく、これにより、永久磁石124が純鉄棒104の上部に位置すると、どの位置にあってもX軸方向とY軸方向への位置を測定することができる。
【0054】
さらに、純鉄棒104は、保護パネル120の移動に応じた磁化により位置を測定することができるため、純鉄棒104は、保護パネル120が移動する長さに対応する長さを有するように形成されることが好ましい。
【0055】
さらに、保護パネル移動部が自動化された第2保護パネル移動部からなる場合、Y軸スライド133-1、X軸スライド135-1をモータ139-3により各軸のスクリュの回転数を計数して注入口の位置を把握することができるため、これにより、前記磁石センサの数を1~2個に縮小することもできる。
【0056】
位置測定部は、Y軸スライドブロック140およびY軸駆動部141内に備えられる1つ以上の永久磁石124と、前記永久磁石124を感知する磁性センサ105と、を含んでなる。
【0057】
永久磁石124は、正確な位置情報を把握するためにギアまたはタイミングプーリの内部に配列されて備えられることが好ましいが、これに限定されない。磁性センサ105は、ギアまたはタイミングプーリに隣接して備えられることができる。
【0058】
Y軸スライド133-1およびX軸スライド135-1は、永久磁石124をさらに備えることができ、本体上板101は、永久磁石124を感知する磁性センサ105をさらに備えることができる。
【0059】
上述したように、位置測定部は、磁性センサ105がY軸スライドブロック140、軸駆動部141、Y軸スライド133-1、およびX軸スライド135-1に備えられた永久磁石124を認知し、保護パネル120の移動に応じた注入口121、ウェルの位置情報を測定することができる。また、電源印加時、保護パネル120が同一の位置に移動するように設定可能である。
【0060】
上述した構成を有する本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、磁性センサ105が配列付着された回路基板103にバーコードセンサ106が取り付けられて本体下板102により密着して組み立てられ、バーコードセンサ106のリーダと電源端子だけが露出しているようにした。前記回路基板は、X軸、Y軸モータを制御する回路と無線通信をする回路を有している。
【0061】
これにより、回路基板103では、マルチウェルプレート200をマルチウェルプレート取り付け部110に挿入し、保護パネル120を覆うと、磁性センサ105が現位置を認識し、その逆に、保護パネル120を持ち上げてひっくり返すと、磁性センサ105から入ってくる信号がなくなることになる。
【0062】
そして、一定時間間隔で磁性センサ105のX軸方向-Y軸方向の位置情報を常に取り、保護パネル120が移動した履歴を記録追跡することができる。一方、バーコードセンサ106に試料容器に付着された試料情報を連続的に読み込むことができる。
【0063】
このように時間の軸上で記録された注入口121の位置情報とバーコード情報を比較すると、実験者がマルチウェルプレート200に注入した全ての情報を簡便に入力することができ、実験者の全ての注入過程を追跡することができる。
【0064】
このような情報は、本体の回路基板103に記録し、外部コンピュータに有線または無線で伝送記録することができる。これにより、本発明の第2目的である、全ての注入過程で試料情報を簡便に注入し、作業者の全ての過程を追跡できるという目的を達成することができる。
【0065】
上述した方式は、X軸方向-Y軸方向移動をX軸方向、Y軸方向に位置制御が可能なリニアモータやサーボモータ、ステッピングモータにより、スクリュやタイミングベルトを用いてウェル間隔で自動移送することを含んでいる。このような自動移動方式の一例として、
図6のように、X軸をスクリュに作り、ギアを用いて前記スクリュとモータを連結してX軸方向に一定間隔移送をし、Y軸に複数のスクリュを作り、前記複数のスクリュは、モータおよびタイミングベルトを用いて同時に動作するように設けてX、Y運動を自動で行うことができる。
【0066】
本発明の一実施形態に係るマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、タブレットPCなどを用いて制御することができる。この際、本発明の一実施形態に係るマルチウェルプレート用精密試料注入装置は、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信を介して連動することができ、ケーブルなどを連結可能なジャッキを含むことができる。
【0067】
さらに、本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置が自動化される場合、上述したタブレットPCなどの外部コンピュータを用いてプール検査を行うのに適するようにプール機能を含むことができる。この際、プール検査は、外部コンピュータを介してプール検査のサンプル数を設定して制御することができる。
【0068】
一例として、プール検査のサンプル数を5に指定した場合、最初の試料のバーコードをバーコードセンサに認識した後、5番目の試料のバーコードがバーコードセンサに認識されるまで、注入口を含む保護パネルは移動せず、最初の選択されるウェルW1に停止状態を維持する。その次に6番目の試料のバーコードがバーコードセンサに認識された場合、保護パネルが移動し、選択される2番目のウェルW2に注入口が位置することになる。これにより、10番目の試料のバーコードをバーコードセンサに認識するまで、注入口の位置は2番目のウェルW2に固定され、11番目の試料のバーコードをバーコードセンサに認識すると、選択される3番目のウェルW3の位置に移動することになる。
【0069】
本発明の一実施形態に係る追跡可能なマルチウェルプレート用精密試料注入装置を用いて検体試料を注入する方法について説明する。
1.マルチウェルプレートの投入および細胞溶解溶液の注入
保護パネル120を開き、マルチウェルプレート200を空のマルチウェルプレート取り付け部110に挿入して位置させる。この際、マルチウェルプレート200の方向が間違わないように、マルチウェルプレート200のエッジが削られた部分と取り付け部のエッジが削られた部位が合うように入れてこそ、挿入が可能である。マルチウェルプレート200が取り付けられると、8チャンネルピペットで200μlの細胞溶解溶液を12回繰り返して投入する。
【0070】
2.保護パネルを覆うことおよび汚染防止板の取り付け
保護パネル120を覆い、注入口121に汚染防止板122を載せておく。
【0071】
3.試料の注入
パネル取っ手123を用いて注入口をA1位置に位置させた後、ピペットにチップを装着し、試料チューブに付着されたバーコードを認識させ、試料チューブを開いて一定量、例えば、400μlの試料溶液をチップ表面に試料溶液が多く付着しないようにピペットで取り、注入口溝の汚染防止板に接しないように注意して注入した後、チップを廃棄筒に捨て、試料チューブの蓋を閉じて元の位置に移し、新しいチップを装着する。それを繰り返し行い、96個の試料をマルチウェルプレートに注入する。10分間60℃で放置して試料が溶解された後、パネル取っ手で保護パネルをひっくり返し、磁気ビーズ溶液を8チャンネルピペットで12回入れた後にマルチウェルプレートを取り出し、核酸自動抽出器に抽出キットとともに取り付けて核酸を抽出する。
【符号の説明】
【0072】
100:本体
101:本体上板
102:本体下板
103:回路基板
104:純鉄棒
105:磁性センサ
106:バーコードセンサ
110:マルチウェルプレート取り付け部
120:保護パネル
121:注入口
122:汚染防止板
123:パネル取っ手
124:永久磁石
130:保護パネル移動部
131:Y軸固定台
132:Y軸部
133:Y軸スライド
134:X軸部
135:X軸スライド
137:軸溝
138:ボールプランジャ
131-1:Y軸固定台
133-1:Y軸スライド
135-1:X軸スライド
139-1:Y軸スクリュ
139-2:X軸スクリュ
139-3:モータ
140:Y軸スライドブロック
141:Y軸駆動部
142:電源
200:マルチウェルプレート