(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】光学部品形成用樹脂組成物、成形体、および光学部品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/18 20060101AFI20231010BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20231010BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
C08L23/18
C08K5/3417
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2023526035
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2022043700
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021193298
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 由之
(72)【発明者】
【氏名】添田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】奥野 孝行
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054864(WO,A1)
【文献】特開2006-233096(JP,A)
【文献】特開2017-149820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/18
C08K 5/3417
G02B 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)環状オレフィン系重合体と、
(B)1種または複数の色素と、
を含む光学部品形成用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、
前記色素(B)の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素であって、
前記光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体において、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの場合に、下記の(1)~(3)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学部品形成用樹脂組成物。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
【化1】
[式(1)中、R
1
~R
10
はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のハロゲノアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルコキシアルキル基、炭素数1~20のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のアシル基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシアルキル基、または置換若しくは非置換のアリールチオ基を示す。]
【請求項2】
(A)環状オレフィン系重合体と、
(B)1種または複数の色素と、
を含む光学部品形成用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、
前記色素(B)の少なくとも一種が、下記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素であって、
前記光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体において、下記の(1)~(5)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学部品形成用樹脂組成物。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
(4)波長660nm~750nmの透過率の最小値が30%以下
(5)内部ヘイズが1.0%以下
【化2】
[式(1)中、R
1
~R
10
はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のハロゲノアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルコキシアルキル基、炭素数1~20のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のアシル基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシアルキル基、または置換若しくは非置換のアリールチオ基を示す。]
【請求項3】
前記一般式(1)のR
4とR
9が炭素数3以上のアルキル基である、請求項
1または2に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
【請求項4】
前記光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体において、波長587nmの光に対する屈折率が1.50以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
【請求項5】
前記光学部品形成用樹脂組成物中の色素の総含有量が、光学部品形成用樹脂組成物に対し、100ppm以上、5000ppm以下である請求項1~
4のいずれか一項に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体。
【請求項7】
請求項
6に記載の成形体を含む光学部品。
【請求項8】
レンズである、請求項
7に記載の光学部品。
【請求項9】
請求項1に記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体を含み、
下記の(1)~(3)の全ての条件を満たすことを特徴とするレンズ。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
【請求項10】
請求項2に記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体を含み、
下記の(1)~(5)の全ての条件を満たすことを特徴とするレンズ。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
(4)波長660nm~750nmの透過率の最小値が30%以下
(5)内部ヘイズが1.0%以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品形成用樹脂組成物、成形体、および光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー撮像が可能な撮像装置では、撮像素子に被写体の光学像を結像させる光学系の色収差により、本来とは異なる色が色にじみとして生じる場合がある。特に、可視光の中でも紫外領域や赤外領域に近い波長帯の光は色にじみを生じやすく、例えば画像の一部が紫色に色づくパープルフリンジ(以降、PFと記載)と呼ばれる現象が知られている。
【0003】
こういった色にじみは、異なる分散特性を持つレンズを複数枚組み合わせることである程度抑制することが可能だが、近年の撮像装置(特にスマートフォン用カメラ)の高解像度化と共に色にじみの改善要求も高まっており、レンズの組み合わせのみで色にじみを十分に抑制することは困難となってきている。
【0004】
また、別の課題として、レンズ表面や、レンズとセンサー間の赤外線カットフィルター表面で乱反射した光が迷光としてセンサーに入射することで、本来存在しない光の像が画像に写るゴーストと呼ばれる現象が知られている。
【0005】
これらの課題に対し、レンズを着色し、当該レンズにて紫外領域や赤外領域に近い波長帯の光を吸収することで色にじみが改善すると考えられる。また、こういった着色レンズを用いることで、レンズ表面や、レンズとセンサー間の赤外線カットフィルター表面で乱反射した光の一部が当該レンズによって吸収されるため、ゴーストが改善すると考えられる。一方で、レンズの着色が濃すぎると画像全体が色付いてしまうため、紫外領域や赤外領域に近い波長帯以外の可視光に対しては極力吸収が小さいことが求められる。
【0006】
特許文献1には、近赤外線吸収色素を含有する透明樹脂製基板と、前記基板の少なくとも一方の面上に形成された近赤外線反射膜とを有し、特定の波長領域における透過率の要件を満たす光学フィルターが開示されている。当該文献には、環状オレフィンとスクアリリウム系色素を用いることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、物体側から像側へ、プラスチック材料で製造され且つ前記プラスチック材料に均一に混合される少なくとも1つの長波長吸収成分を含み、屈折力を有し、その物体側表面及び像側表面の少なくとも一方の表面が非球面である少なくとも1つの光学レンズを含み、前記長波長吸収成分を含む前記光学レンズは、特定の波長領域における透過率の要件を満たす光学撮像レンズが開示されている。当該文献には、樹脂として環状オレフィン系樹脂、色素としてスクアリリウム系色素が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開公報2014/192715号
【文献】特開2018-55091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~2に記載の従来の技術においては、パープルフリンジのような色にじみの発生を十分に抑制することができるものではなく、また、撮像用の光学部材として十分な光線透過率を維持できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、環状オレフィン系重合体に特定の色素を組み合わせて所定の透過特性とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0011】
[1](A)環状オレフィン系重合体と、
(B)1種または複数の色素と、
を含む光学部品形成用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、
前記光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体において、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの場合に、下記の(1)~(3)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学部品形成用樹脂組成物。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
[2](A)環状オレフィン系重合体と、
(B)1種または複数の色素と、
を含む光学部品形成用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、
前記光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体において、下記の(1)~(5)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学部品形成用樹脂組成物。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
(4)波長660nm~750nmの透過率の最小値が30%以下
(5)内部ヘイズが1.0%以下
[3] 前記色素(B)の少なくとも一種はスクアリリウム系色素である、[1]または[2]に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
[4] 前記色素(B)の少なくとも一種は下記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素である[1]~[3]のいずれかに記載の光学部品形成用樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1~R
10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のハロゲノアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルコキシアルキル基、炭素数1~20のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のアシル基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシアルキル基、または置換若しくは非置換のアリールチオ基を示す。]
[5] 前記一般式(1)のR
4とR
9が炭素数3以上のアルキル基である、[4]に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
[6](A)環状オレフィン系重合体と、
(B)スクアリリウム系色素と、
を含む光学部品形成用樹脂組成物であって、
前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、
前記色素(B)の少なくとも一種は下記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素である光学部品形成用樹脂組成物。
【化2】
[式(1)中、R
1~R
10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のハロゲノアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルコキシアルキル基、炭素数1~20のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のアシル基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシアルキル基、または置換若しくは非置換のアリールチオ基を示す。]
[7] 前記一般式(1)のR
4とR
9が炭素数3以上のアルキル基である、[6]に記載の光学部品形成用樹脂組成物。
[8] 前記光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体において、波長587nmの光に対する屈折率が1.50以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の光学部品形成用樹脂組成物。
[9] 前記光学部品形成用樹脂組成物中の色素の総含有量が、光学部品形成用樹脂組成物に対し、100ppm以上、5000ppm以下である[1]~[8]のいずれかに記載の光学部品形成用樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体。
[11] [10]に記載の成形体を含む光学部品。
[12] レンズである、[11]に記載の光学部品。
[13] [1]に記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体を含み、
下記の(1)~(3)の全ての条件を満たすことを特徴とするレンズ。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
[14] [2]に記載の光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体を含み、
下記の(1)~(5)の全ての条件を満たすことを特徴とするレンズ。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上
(4)波長660nm~750nmの透過率の最小値が30%以下
(5)内部ヘイズが1.0%以下
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率と、特定波長における吸光を維持しつつ、経時後においても十分な光線透過率を維持できる成形体が得られる光学部品形成用樹脂組成物を提供することができる。言い換えれば、本発明によれば、これらの特性のバランスに優れた光学部品形成用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
本実施形態の樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)と、1種または複数の色素(B)と、を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
[環状オレフィン系重合体(A)]
本実施形態において、環状オレフィン系重合体(A)は、環状オレフィンに由来する構造単位を必須構成単位とする重合体である。環状オレフィン系重合体(A)は、環状オレフィン系共重合体(A-1)および環状オレフィンの開環重合体(A-2)から選択される少なくとも一種を含む。これらを含むことで、得られる光学部品の透明性および屈折率のバランスを良好に保ちつつ耐熱性をさらに向上できたり、成形性を向上できたりする。
【0015】
(環状オレフィン系共重合体(A-1))
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)としては、例えば、エチレンまたはα‐オレフィンと環状オレフィンとの共重合体が挙げられる。上記環状オレフィン系共重合体(A-1)を構成する環状オレフィン化合物は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2006/0118261号の段落0037~0063に記載の環状オレフィンモノマーを挙げることができる。
【0016】
環状オレフィン系共重合体(A-1)は、得られる光学部品の光学特性をさらに向上させる観点から、構造単位(a)と構造単位(b)とを有することが好ましい。光学特性とは、光学部品の透明性、屈折率等の特性を意味する。
【0017】
構造単位(a):下記一般式(I)で表される少なくとも一種のオレフィン由来の構造単位。
【0018】
【0019】
上記一般式(I)において、R300は水素原子、または炭素原子数1~29の直鎖または分岐状の炭化水素基を示す。
【0020】
構造単位(b):下記一般式(II)と、下記一般式(III)と、下記一般式(IV)とからなる群より選択される少なくとも1種の環状オレフィン由来の構造単位。
【0021】
【0022】
上記一般式(II)において、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1である。R61~R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基である。R75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。
【0023】
【0024】
上記一般式(III)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数である。yおよびzはそれぞれ独立に0~2の整数である。R81~R99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基若しくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基である。R89及びR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3アルキレン基を介して結合していてもよい。また、y=z=0のとき、R92とR95またはR95とR99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0025】
【0026】
上記一般式(IV)において、R100、R101は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示す。fは1≦f≦18である。
【0027】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは、付加重合して上記一般式(I)で表される構成単位を形成するものである。具体的には、上記一般式(I)に対応する下記一般式(Ia)で表されたオレフィンモノマーが用いられる。
【0028】
【0029】
上記一般式(Ia)において、R300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖または分岐状の炭化水素基を示す。
【0030】
上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性および光学特性を有する光学部品を得る観点から、これらの中でも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは、2種類以上を用いても良い。
【0031】
環状オレフィン系共重合体(A-1)を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、オレフィン由来の構造単位(a)の割合が、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは20モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上80モル%以下、特に好ましくは50モル%以上70モル%以下である。
なお、オレフィン由来の構造単位(a)の割合は、13C-NMRによって測定することができる。
【0032】
環状オレフィン系共重合体(A-1)の共重合原料の1つである環状オレフィンモノマーは、付加重合して上記一般式(II)、上記一般式(III)または上記一般式(IV)で表される環状オレフィン由来の構造単位(b)を形成するものである。具体的には、上記一般式(II)、上記一般式(III)、および上記一般式(IV)にそれぞれ対応する、一般式(IIa)、(IIIa)、および(IVa)で表される環状オレフィンモノマーが用いられる。
【0033】
【0034】
上記一般式(IIa)において、uは0または1であり、vは0または正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、wは0または1であり、R61~R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成してもよい。
【0035】
【0036】
上記一般式(IIIa)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0または1であり、yおよびzはそれぞれ独立に0、1または2であり、R81~R99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基若しくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R95とR92またはR95とR99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0037】
【0038】
上記一般式(IVa)において、R100、R101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
【0039】
共重合成分として、上述した一般式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマーを用いることにより、環状オレフィレン系共重合体(A-1)の溶媒への溶解性がより向上することにより、成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
【0040】
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマーの具体例については、国際公開第2006/0118261号の段落0037~0063に記載の化合物を用いることができる。
【0041】
具体的には、ビシクロ-2-ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト-2-エン誘導体)、トリシクロ-3-デセン誘導体、トリシクロ-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ-3-ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ-4-ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ-6-ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3~20のシクロアルキレン誘導体が挙げられる。
一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状オレフィンモノマーの中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンが好ましい。
【0042】
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマーとして、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネンとも呼ぶ。)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)を用いることが好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを用いることがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体および光学部品の弾性率が保持され易くなる利点がある。
【0043】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)を構成する構成単位の全体を100モル%としたとき、環状オレフィン由来の構造単位(b)の割合が、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上60モル%以下、特に好ましくは30モル%以上50モル%以下である。
【0044】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)の共重合タイプは特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体等を挙げることができる。本実施形態においては、透明性、屈折率および複屈折率等の光学物性に優れ、高精度の光学部品を得ることができることから、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)としては、ランダム共重合体を用いることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A-1)としては、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体およびエチレンとビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンとのランダム共重合体であることが好ましく、エチレンとテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンとのランダム共重合体がより好ましい。
本実施形態に係る共重合体(A-1)は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本実施形態に係る共重合体(A-1)は、例えば、特開昭60-168708号公報、特開昭61-120816号公報、特開昭61-115912号公報、特開昭61-115916号公報、特開昭61-271308号公報、特開昭61-272216号公報、特開昭62-252406号公報、特開昭62-252407号公報等の方法に従い適宜条件を選択することにより製造することができる。
【0047】
環状オレフィン系共重合体(A-1)が、上記一般式(II)で表される構造単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(D)を有し、上記構造単位(II)が芳香環を含まず、上記芳香環を有する環状オレフィンが、下記(D-1)式で表される化合物、下記(D-2)式で表される化合物、下記(D-3)式で表される化合物からなる群より選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0048】
【0049】
上記(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2である。R1~R17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17の内1つは結合手である。また、q=0のとき、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。また、q=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0050】
【0051】
上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。また、q=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0052】
【0053】
上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。また、q=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。また、q=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0054】
また、(D-1)~(D-3)の炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香環炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0055】
このような環状オレフィン系共重合体(A―1)であれば、耐湿熱試験前後でのヘイズの発生をより抑制することができる。また、連続成形による金型内部の汚染をより抑制することができる。
【0056】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A―1)の全構造単位を100モル%としたときの、一般式(II)で表される構造単位(II)および芳香環を有する環状オレフィンから導かれる構造単位(D)の含有量は、好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以上80モル%以下、より一層好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
本実施形態において、構造単位(II)および構造単位(D)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
【0057】
(環状オレフィンの開環重合体(A-2))
また、環状オレフィン系重合体(A)としては、環状オレフィンの開環重合体(A-2)を用いることができる。
【0058】
環状オレフィンの開環重合体(A-2)としては、例えば、ノルボルネン系単量体の開環重合体およびノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。
【0059】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)およびその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体、等が挙げられる。
【0060】
これらの誘導体の環に置換される置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等が挙げられる。なお、置換基は、1個または2個以上を有することができる。このような環に置換基を有する誘導体としては、例えば、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等が挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
ノルボルネン系単量体の開環重合体、またはノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。
【0062】
開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウム等の金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデン等の金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;等を用いることができる。
【0063】
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体等を挙げることができる。
【0064】
ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体の水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素-炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0065】
本実施形態に係る環状オレフィンの開環重合体(A-2)は、例えば、特開昭60-26024号公報、特開平9-268250号公報、特開昭63-145324号公報、特開2001-72839号公報等の方法に従い適宜条件を選択することにより製造することができる。
本実施形態に係る環状オレフィンの開環重合体(A-2)は1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは80質量%以上99質量%以下、より好ましくは90質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上99質量%以下である。
【0067】
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、130℃以上170℃以下の範囲にあることが好ましい。環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が上記範囲であると、車載カメラレンズや携帯機器用カメラレンズ等の耐熱性が求められる光学部品として使用する際に、十分な耐熱性を得ることができるとともに、良好な成形性を得ることができる。
【0068】
本実施形態に係る環状オレフィン系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定計(DSC)を用いて測定することができる。例えば、SIIナノテクノロジー社製RDC220を用いて、窒素雰囲気下で常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、5分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で30℃まで降温した後に、5分保持し、次いで10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する際にガラス転移温度を測定することができる。
【0069】
[色素(B)]
本実施形態で使用される色素(B)は、1種または複数色素の色素から構成されていてもよく、少なくとも1種は下記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素であることが好ましい。
【0070】
【0071】
式(1)中、R1~R10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のハロゲノアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアルコキシアルキル基、炭素数1~20のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数1~20のハロゲノアルコキシアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアラルキル基、置換若しくは非置換のアミノ基、置換若しくは非置換のアシル基、置換若しくは非置換のアリールオキシ基、置換若しくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは非置換のアラルキルオキシアルキル基、または置換若しくは非置換のアリールチオ基を示す。
【0072】
上記基が置換基を有する場合の置換基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、アセチル基等が挙げられる。
【0073】
R1~R10としては、本発明の効果の観点から、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基が好ましく、炭素数1~20のアルキル基がさらに好ましい。
本実施形態においては、R4とR9が炭素数3以上のアルキル基が好ましい。炭素数の上限値は特に限定されないが、20以下である。これにより、前記スクアリリウム系色素と環状オレフィン系重合体(A)との相溶性が向上し、さらに得られる成形体の耐熱性が向上する。
【0074】
上記構造のスクアリリウム系色素は、700nm付近に急峻な吸収ピークを持ち、かつ他波長帯の吸収が少なく、さらに耐熱性及び耐光性が高く、本実施形態において好適である。
【0075】
上記構造のスクアリリウム系色素として具体的には、1,3-ビス[6-[(2-エチル-1-オキソヘキシル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-2,3,3-トリメチル-1-オクチル-1H-インドール-5-イル]-2,4-ジヒドロキシ-シクロブテンジイリウム、1,3-ビス[6-[(2-エチル-1-オキソヘキシル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-2,3,3-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル]-2,4-ジヒドロキシ-シクロブテンジイリウムなどが挙げられる。
【0076】
上記スクアリリウム系色素と別の色素を併用する場合、別の色素の具体例として、アントラキノン系色素、ベンゾトリアゾール系色素、ベンゾフェノン系色素、トリアジン系色素、環状イミノエステル系色素およびインドール系色素などが挙げられ、耐熱性及び耐光性の観点から特にベンゾトリアゾール系色素が好ましい。
ベンゾトリアゾール系色素として具体的には、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル、2-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-5-(エチルアミノ)-4-メチルフェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-オクチルスルファニルベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0077】
併用する別の色素であるベンゾトリアゾール系色素としては、上記のうちでも、2-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-5-(エチルアミノ)-4-メチルフェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-オクチルスルファニルベンゾトリアゾール、(2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2'-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2'-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾ-ル)が好ましく、
2-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-5-(エチルアミノ)-4-メチルフェノール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-オクチルスルファニルベンゾトリアゾールがより好ましい。
【0078】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記樹脂組成物中の色素の総含有量が、光学部品形成用樹脂組成物に対し、100ppm以上、5000ppm以下であることが好ましく、100ppm以上、3000ppm以下であることが特に好ましい。色素の量を上記数値範囲内とすることによって、より色むらが少なく、均一な色味の成形体を得ることが可能な樹脂組成物となる。
【0079】
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記樹脂組成物中のスクアリリウム系色素の含有量が、本発明の効果の観点から、光学部品形成用樹脂組成物に対し、10ppm以上、2000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上、500ppm以下であることが特に好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体100質量部に対して、スクアリリウム系色素の含有量が、0.001質量部以上、0.2質量部以下が好ましく、0.001質量部以上、0.05質量部以下であることがより好ましい。
【0080】
また、色素の総含有量100質量%におけるスクアリリウム系色素の含有量が、2質量%以上、100質量%以下が好ましく、3質量%以上、50質量%以下であることがより好ましい。
【0081】
(その他の成分)
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、必要に応じて、本実施形態に係る樹脂組成物、及び、その成形体の良好な物性を損なわない範囲内で任意成分として公知の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、フェノール系安定剤、高級脂肪酸金属塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、塩酸吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、スリップ剤、核剤、可塑剤、難燃剤、リン系安定剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0082】
実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物中の環状オレフィン系重合体と色素の合計の含有量は、当該光学部品形成用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0083】
実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体と、色素を含む原料を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて溶融混練する方法;環状オレフィン系重合体と、色素を含む原料を共通の溶媒に溶解した後、溶媒を蒸発させる方法;貧溶媒中に環状オレフィン系重合体と、色素を含む原料溶液を加えて析出させる方法;等の方法により得ることができる。
【0084】
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、環状オレフィン系重合体(A)と、スクアリリウム系色素(B)と、を含み、
環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの環状オレフィン系共重合体(A-1)、および、環状オレフィンの開環重合体(A-2)から選択される少なくとも一種を含み、
スクアリリウム系色素(B)の少なくとも一種は前記一般式(1)で表されるスクアリリウム系色素であることが好ましい。
このような組成を有する本実施形態の光学部品形成用樹脂組成物によれば、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率と、特定波長における吸光を維持しつつ、経時後においても十分な光線透過率を維持できる成形体が得られる。言い換えれば、本実施形態によれば、これらの特性のバランスに優れた光学部品形成用樹脂組成物を提供することができる。
【0085】
(光学部品形成用樹脂組成物の物性)
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、当該光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体において、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの場合に、下記の(1)~(3)の全ての条件を満たす。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下であり、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上であり、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
(3)波長650nmの透過率が60%以上であり、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
これらの(1)~(3)の数値範囲は任意に組み合わせることができる。
【0086】
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの成形体の場合において、透過特性(1)~(3)を上記数値範囲内に調整することによって、レンズとして用いた際に不要な画像の色付きを抑えつつ色にじみが改善される樹脂組成物を提供することができる。
【0087】
なお、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物の各波長における透過率は以下のように求めることができる。
まず、例えばプレス成形(260℃、10分、圧力10MPa)により、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物から成る角板形状のプレートを得る。得られたプレートを試料として、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計U-4150(日立ハイテク製))を用いて、波長200nmから1000nmまで1nm刻みで透過率を測定する。波長700nmの光の透過率が30%となる厚さの試料を採用し、上記の透過率(1)~(3)を測定する。ここで、例えば、波長300~400nmの透過率の平均値は、波長300nmから400nmまで1nm刻みで測定した透過率の算術平均値を示す。
【0088】
また、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、当該光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体において、下記(1)~(5)の全ての条件を満たす。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下であり、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上であり、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
(3)波長650nmの透過率が60%以上であり、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
(4)波長660nm~750nmの透過率の最小値が30%以下であり、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
(5)内部ヘイズが1.0%以下であり、0.7%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがさらに好ましい。
これらの(1)~(5)の数値範囲は任意に組み合わせることができる。
【0089】
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、厚さ1mmの成形体の場合において、透過特性(1)~(5)を上記数値範囲内に調整することによって、レンズとして用いた際に不要な画像の色付きを抑えつつ色にじみが改善される樹脂組成物を提供することができる。
【0090】
なお、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物の各波長における透過率は以下のように求めることができる。
まず、例えばプレス成形(260℃、10分、圧力10MPa)により、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物から成る厚さ1mmの角板形状のプレートを得る。得られた厚み1mmのプレートを試料として、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、紫外可視近赤外分光光度計U-4150(日立ハイテク製))を用いて、波長200nmから1000nmまで1nm刻みで透過率を測定する。ここで、例えば、波長300~400nmの透過率の平均値は、波長300nmから400nmまで1nm刻みで測定した透過率の算術平均値を示す。
【0091】
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、該光学部品形成用樹脂組成物からなる厚さ1mmの成形体の波長587nmの屈折率が、測定温度25℃で1.50以上であることが好ましく、1.52以上であることがより好ましく、1.54以上であることがさらに好ましい。
【0092】
本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、屈折率を上記数値範囲内とすることで、上記数値範囲外のものと比べて、例えばレンズとして用いる際、レンズの厚みを薄くすることができる。
【0093】
なお、該光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体の屈折率は以下の方法で求めることができる。
まず、例えばプレス成形により、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物から成る厚さ1mmのプレートを得る。得られたプレートを試料として、屈折率計(例えば、屈折率計KPR-3000(島津製作所製))を用いて、測定温度25℃で波長587nmの屈折率を測定する。
【0094】
[成形体]
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物を成形してなる成形体である。言い換えると、本実施形態に係る成形体は、環状オレフィン系重合体(A)と、色素(B)とを含む光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体である。
【0095】
本実施形態に係る成形体は、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率と、特定波長における吸光を維持しつつ、経時後においても十分な光線透過率を維持できることから、光学部品として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態に係る光学部品は、本実施形態に係る成形体を含む。本実施形態に係る光学部品は、例えば、レンズ等の光学部品として好適に用いることかできる。
当該光学部品(レンズ)を備える光学製品としては、スマートフォン、タブレット、デジタルカメラ等が挙げられる。
【0096】
[成形体の製造方法]
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物を所定の形状に成形することにより得ることができる。本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物を成形して成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができるが本実施形態に係る光学部品形成用樹脂組成物は、溶融成形により成形されることが好ましい。
その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃~400℃、好ましくは200℃~350℃、より好ましくは230℃~330℃の範囲で適宜選択される。
【0097】
本実施形態に係る成形体は、レンズ形状、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等の種々の形態で使用することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
<樹脂>
樹脂1:エチレンと環状オレフィン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)との共重合体(三井化学社製、製品名:アペル5014CL:MFR:36g/10min(260℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠)、Tg:135℃)
樹脂2:エチレンと環状オレフィン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)との共重合体(三井化学社製、製品名:アペル5514ML:MFR:36g/10min(260℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠)、Tg:135℃)
樹脂3:環状オレフィンの開環重合体(JSR社製、製品名:ARTON F4520:MFR:2g/10min(260℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠)、TMA:171℃)
樹脂4:環状オレフィンの開環重合体(日本ゼオン社製、製品名:ZEONEX K26R:MFR:20g/10min(260℃、2.16kg荷重、ASTM D1238に準拠)、Tg:143℃)
【0101】
<色素>
スクアリリウム系色素1:1,3-ビス[6-[(2-エチル-1-オキソヘキシル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-2,3,3-トリメチル-1-オクチル-1H-インドール-5-イル]-2,4-ジヒドロキシ-シクロブテンジイリウム
【0102】
スクアリリウム系色素2:1,3-ビス[6-[(2-エチル-1-オキソヘキシル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-2,3,3-トリメチル-1-(プロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル]-2,4-ジヒドロキシ-シクロブテンジイリウム
【0103】
ベンゾトリアゾール系色素1:2-(5-クロロ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-5-(エチルアミノ)-4-メチルフェノール
【0104】
ベンゾトリアゾール系色素2:2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-オクチルスルファニルベンゾトリアゾール
【0105】
インドール系色素1:エチル 2-シアノ-3-(1-メチル-2-フェニル-1H-インドール-3-イル)アクリレート
【0106】
アントラキノン系色素1:1-メチルアミノ-4-[(3-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラキノン
【0107】
[実施例1]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0108】
[実施例2]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を25ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0109】
[実施例3]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素2を50ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.3mm)のプレートを作製した。
【0110】
[実施例4]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素2を20ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0111】
[実施例5]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素2を2000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0112】
[実施例6]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を25ppm、ベンゾトリアゾール系色素2を2000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0113】
[実施例7]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素2を20ppm、ベンゾトリアゾール系色素2を2000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0114】
[実施例8]
上記樹脂1からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、インドール系色素1を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0115】
[実施例9]
上記樹脂2からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0116】
[実施例10]
上記樹脂2からなるペレットに、スクアリリウム系色素2を50ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.3mm)のプレートを作製した。
【0117】
[実施例11]
上記樹脂2からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素2を2000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0118】
[実施例12]
上記樹脂2からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、インドール系色素1を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0119】
[実施例13]
上記樹脂3からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0120】
[実施例14]
上記樹脂4からなるペレットに、スクアリリウム系色素1を60ppm、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃、10分間、圧力10MPaでプレス成形し、厚み1mmのプレートと、波長700nmの光の透過率が30%となる厚み(0.4mm)のプレートを作製した。
【0121】
[比較例1]
色素を添加せず上記樹脂1からなるペレットのみをバッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練し、得られた樹脂片を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0122】
[比較例2]
上記樹脂1からなるペレットに、ベンゾトリアゾール系色素1を240ppm、およびベンゾトリアゾール系色素2を1000ppm、さらにアントラキノン系色素1を40ppm添加し、バッチ式溶融混練装置(ラボプラストミル)を用いて260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を260℃でプレス成形し、厚み1mmのプレートを作製した。
【0123】
実施例1~14、比較例1、比較例2で得られた樹脂組成物に対し下記評価を実施した。
[透過率の評価]
得られたプレートを試料として、紫外可視近赤外分光光度計U-4150(日立ハイテク製)を用いて波長200nmから1000nmまで1nm刻みで透過率を測定し、波長300~400nmの平均透過率、波長500~600nmの平均透過率、波長650nmの透過率、波長660~750nmの最小透過率を算出した。
【0124】
[屈折率の評価]
得られたプレートを試料として、屈折率計KPR-3000(島津製作所社製)を用いて、測定温度25℃で波長587mの屈折率を測定した。
【0125】
[内部ヘイズの評価]
得られたプレートを試料として、ヘーズメーターHM-150(村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K 7136に準じて測定した。プレート表面、裏面にベンジルアルコールを塗布した状態で測定した値を内部ヘイズとした。
【0126】
[色にじみ補正効果及び着色の評価]
得られたプレートを、デジタルカメラPower Shot G16 (Canon社製)のレンズを覆うように貼り合わせて下記の条件で撮影を行った。
(1)デジタルカメラ設定
F値:1.8
ISO感度:1600
色味補正:自動補正無し
フラッシュ:無し
ズーム:無し
(2)撮影条件
被写体:ディスプレイPro Display P202(HP社製)
撮影場所の明るさ:750Lx
被写体とカメラの距離:3m
【0127】
上記条件で撮影したところ、被写体の縁の一部にパープルフリンジ(PF)が認められた。被写体の縁のPF発生個所と非発生個所の色味をそれぞれLab表色系にて表記し、両者のLab色空間における距離を色にじみの指標(色にじみ量)とし、以下の基準で評価した。
10以下:◎
10超15未満:○
15以上:×
【0128】
また、PF非発生個所と、プレートを張り合わせずに撮影した際の同箇所の色味をそれぞれLab表色系にて表記し、両者のLab色空間における距離を画像の色付きの指標(色付き量)とし、以下の基準で評価した。
10以下:◎
10超15未満:○
15以上:×
【0129】
【0130】
表1中の略称は以下のとおりである。後述の表2においても同様である。
SQ:スクアリリウム系色素
BZ:ベンゾトリアゾール系色素
IN:インドール系色素
AN:アントラキノン系色素
【0131】
表1に示すように、本発明に係る実施例1,3,5,8~14によれば、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの成形体において、条件(1)~(3)のいずれも満たすことにより、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率および特定波長における吸光を示し、これらの特性のバランスに優れていた。
また、本発明に係る実施例1~14によれば、厚さ1mmの成形体において条件(1)~(5)のいずれも満たすことにより、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率および特定波長における吸光を示し、これらの特性のバランスに優れていた。
【0132】
[耐熱性試験前後の光線透過率変化量]
得られた厚み1mmのプレートを、温度105℃の高温室内で168時間加熱した。試験後のプレートの光線透過率を上記の方法で測定し、試験前と比較した際の波長300~400nmの平均透過率の変化量、波長500~600nmの平均透過率の変化量、波長650nmの透過率の変化量、波長660~750nmの最小透過率の変化量を算出し、以下の基準で評価した。
-1%以上1%以下:◎
-2%以上-1%未満、1%超2%以下:○
-2%未満、2%超:×
【0133】
[耐湿熱性試験前後の光線透過率変化量]
得られた厚み1mmのプレートを、温度85℃、湿度85%Rhの高温高湿室内で168時間加熱した。試験後のプレートの光線透過率を上記の方法で測定し、試験前と比較した際の波長300~400nmの平均透過率の変化量、波長500~600nmの平均透過率の変化量、波長650nmの透過率の変化量、波長660~750nmの最小透過率の変化量を算出し、以下の基準で評価した。
-1%以上1%以下:◎
-2%以上-1%未満、1%超2%以下:○
-2%未満、2%超:×
【0134】
[耐光試験前後の光線透過率変化量]
得られた厚み1mmのプレートを、次の条件で耐光性試験を実施した。
光源:紫外線蛍光ランプ(UVA-340)
放射照度:0.63W/m2、340nm
光源出力:500W/m2
試験温度:60℃
照射時間:168時間
【0135】
試験後のプレートの光線透過率を上記の方法で測定し、試験前と比較した際の波長300~400nmの平均透過率の変化量、波長500~600nmの平均透過率の変化量、波長650nmの透過率の変化量、波長660~750nmの最小透過率の変化量を算出し、以下の基準で評価した。
-1%以上1%以下:◎
-2%以上-1%未満、1%超2%以下:○
-2%未満、2%超:×
【0136】
【0137】
表2に示すように、本発明に係る実施例によれば、経時後においても十分な光線透過率を維持することができた。
表1と表2の結果から、本発明によれば、パープルフリンジのような色にじみの発生が十分に抑制され、さらに撮像用の光学部材として使用可能な光線透過率および特定波長における吸光を維持しつつ、さらに経時後においても十分な光線透過率を維持することができること、さらにこれらの特性のバランスに優れることが明らかになった。
【0138】
この出願は、2021年11月29日に出願された日本出願特願2021-193298号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【要約】
本発明の光学部品形成用樹脂組成物は、(A)環状オレフィン系重合体と、(B)1種または複数の色素と、を含み、前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、および、環状オレフィンの開環重合体から選択される少なくとも一種を含み、前記光学部品形成用樹脂組成物からなる成形体において、波長700nmの光の透過率が30%となる厚みの場合に、下記の(1)~(3)の全ての条件を満たす。
(1)波長300~400nmの透過率の平均値が40%以下
(2)波長500~600nmの透過率の平均値が70%以上
(3)波長650nmの透過率が60%以上