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特許7362975複合加工装置、複合加工装置の制御方法、及び、制御方法を実行させるためのプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-06
(45)【発行日】2023-10-17
(54)【発明の名称】複合加工装置、複合加工装置の制御方法、及び、制御方法を実行させるためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23P 23/04 20060101AFI20231010BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20231010BHJP
   B23Q 15/12 20060101ALI20231010BHJP
   B23Q 15/18 20060101ALI20231010BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20231010BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20231010BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B23P23/04
B23K20/12 340
B23Q15/12 Z
B23Q15/18
B23Q17/09 A
G05B19/18 T
G05B19/404 K
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023545376
(86)(22)【出願日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2023009006
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/034766
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松原 英司
(72)【発明者】
【氏名】垣内 晋
(72)【発明者】
【氏名】南谷 正泰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓実
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115401(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067874(WO,A1)
【文献】特開2012-139741(JP,A)
【文献】特開2004-136331(JP,A)
【文献】特開2003-94263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0083817(US,A1)
【文献】特許第7305903(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 23/04
B23K 20/12
B23Q 15/12
B23Q 15/18
B23Q 17/09
G05B 19/18
G05B 19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工と摩擦攪拌接合とを実行するための複合加工装置の制御方法であって、
前記複合加工装置に取付可能な複数の工具のそれぞれが、前記切削加工用の工具と、前記摩擦攪拌接合用の工具とのいずれであるかを表す工具情報を前記複合加工装置のハードウェアプロセッサが前記複合加工装置の記憶手段から読み出し
前記複数の工具のうち、前記複合加工装置によって実行される加工プログラムによって呼び出される実行工具を表す命令を前記ハードウェアプロセッサが前記加工ブログラムから読み取り
前記工具情報及び前記命令に基づいて、前記実行工具が前記切削加工用の工具と前記摩擦攪拌接合用の工具のうちのいずれであるかを前記ハードウェアプロセッサが判定し、
前記実行工具が前記切削加工用の工具であると判定すると、前記ハードウェアプロセッサが前記切削加工において前記複合加工装置に設けられた温度センサから検出された温度に基づく前記実行工具の位置の補正を有効とし、
前記実行工具が前記摩擦攪拌接合用の工具であると判定すると、前記ハードウェアプロセッサが前記摩擦攪拌接合において前記実行工具を回転させるモータにかかる負荷を求め、前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を有効とする、
ことを含む、制御方法。
【請求項2】
前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を有効とすることは、前記温度に基づく前記実行工具の位置の補正を無効とすることを含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記モータにかかる前記負荷を求めることは、前記モータの駆動電流または前記モータの駆動トルクを取得することを含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正は、前記実行工具の回転軸方向の位置の補正である、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項5】
前記温度に基づく前記実行工具の位置の補正を有効にすることは、前記温度センサから検出された前記温度に基づいて、前記温度センサから検出される温度が基準温度である場合の前記実行工具の刃先の位置からの位置ずれを推定して、前記切削加工において前記位置ずれに基づく前記実行工具の位置の補正を実行することを含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記温度に基づく前記実行工具の位置の補正を有効にすることは、前記加工プログラムの前記実行工具による加工を規定する部分において、前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていても、前記ハードウェアプロセッサが前記負荷調整コードを無視することを含む、
請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記温度に基づく前記実行工具の位置の補正を有効にすることは、前記加工プログラムの前記実行工具による加工を規定する部分において、前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、前記ハードウェアプロセッサがエラーメッセージを出力することを含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を有効にすることは、前記加工プログラムの前記実行工具による加工を規定する部分において前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、前記負荷調整コードを実行することを含む、請求項1からのいずれかに記載の制御方法。
【請求項9】
前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正を有効にすることは、前記加工プログラムの前記実行工具による加工を規定する部分において前記負荷調整コードが含まれていないと、前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正も前記温度に基づく前記実行工具の位置の補正も実行しないことを含む、請求項に記載の制御方法。
【請求項10】
ユーザによって入力された前記工具情報を前記記憶手段に記憶することをさらに含む、請求項1からのいずれかに記載の制御方法。
【請求項11】
前記負荷に基づく前記実行工具の位置の補正は、前記負荷が実質的に変わらないように、前記実行工具の位置をフィードバック補正することを含む、請求項1からのいずれかに記載の制御方法。
【請求項12】
記ハードウェアプロセッサによる実行時に、請求項1からのいずれかに記載の制御方法の処理を前記ハードウェアプロセッサに実行させる指示を備えるプログラム。
【請求項13】
請求項1からのいずれかに記載の制御方法の処理を実行する前記ハードウェアプロセッサ前記記憶手段とを備える数値制御装置と
前記切削加工用の工具と前記摩擦攪拌接合用の工具との両方を取付け可能な主軸と、
前記主軸を回転させるように構成されるモータと、
前記モータを駆動する駆動信号を送るように構成されるドライバと、
前記温度センサと、
を備える、複合加工装置。
【請求項14】
前記切削加工用の工具と前記摩擦攪拌接合用の工具との両方を収納可能な工具マガジンと、
前記工具マガジンと前記主軸との間で工具を交換するように構成される工具交換装置と、
をさらに備える、請求項13に記載の複合加工装置。
【請求項15】
ユーザによって前記工具情報を入力するためのインタフェースをさらに備える、
請求項13に記載の複合加工装置。
【請求項16】
前記記憶手段は、メモリであって、
前記数値制御装置は、前記メモリに記憶された請求項12に記載のプログラムをさらに含む、
請求項13に記載の複合加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合加工装置、複合加工装置の制御方法、及び、制御方法を実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工と摩擦攪拌接合とをともに実行可能な複合加工装置(Combined Machining Apparatus)が知られている(例えば、特許文献1)。工具の制御は、切削加工に適した位置制御(例えば、特許文献2)と、摩擦攪拌接合工具の挿入深さを制御することによる主軸を回転させるモータ(主軸モータ)の負荷制御(例えば、特許文献3)の2つの方法があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/115401号
【文献】国際公開第2016/067874号
【文献】特開2003-080380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、摩擦攪拌接合工具と、切削工具とがともに取付け可能で、接合プログラムのときは、摩擦攪拌接合工具を呼び出して取付け、切削プログラムのときは、切削工具を呼び出して取り付ける工作機械を記載している。この工具の呼出は、加工プログラムに記述されたピン番号、もしくは、ピン記号に基づいて行われている。しかし、特許文献1に係る工作機械は、現在起動している加工プログラムが接合プログラムなのか切削プログラムなのか認識しているわけではない。あくまでも加工プログラムに動作された位置に工具を移動する動作をおこなっているに過ぎない。同様に、特許文献1に係る工作機械は、加工ヘッドに取り付けられた工具が摩擦攪拌接合工具であるか、切削工具であるかを識別しているわけではない。あくまでも加工プログラムに記述されたピン番号、もしくは、ピン記号と、加工ヘッドに取り付けられた工具のピン番号、もしくは、ピン記号を識別しているに過ぎない。このように、特許文献1は摩擦攪拌接合か切削加工かを識別する手段を有さないため、特許文献1に位置制御が記載された特許文献2や負荷制御が記載された特許文献3の文献を組み合わせたとしても、位置制御と負荷制御を自動で切り替えることができない。
【0005】
本願に開示される技術の目的は、工具の種類に応じて位置制御と負荷制御を自動で切り替えることが可能な複合加工装置、制御方法、及び、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る制御方法は、切削加工と摩擦攪拌接合とを実行するための複合加工装置の制御方法であって、複合加工装置に取付可能な複数の工具のそれぞれが、切削加工用の工具と、摩擦攪拌接合用の工具とのいずれであるかを表す工具情報を取得することを含む。当該制御方法は、複数の工具のうち、複合加工装置によって実行される加工プログラムによって呼び出される実行工具を表す命令を取得することを含む。当該制御方法は、工具情報及び命令に基づいて、実行工具が切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具のうちのいずれであるかを判定することを含む。当該制御方法は、実行工具が切削加工用の工具であると判定すると、切削加工において複合加工装置に設けられた温度センサから検出された温度に基づく実行工具の位置の補正を有効とすることを含む。当該制御方法は、実行工具が摩擦攪拌接合用の工具であると判定すると、摩擦攪拌接合において実行工具を回転させるモータにかかる負荷を求め、負荷に基づく実行工具の位置の補正を有効とすることを含む。
【0007】
本開示の第2態様によれば、第1態様による制御方法では、モータにかかる負荷を求めることは、モータの駆動電流またはモータの駆動トルクを取得することを含む。
【0008】
本開示の第3態様によれば、第1態様または第2態様による制御方法では、負荷に基づく実行工具の位置の補正は、実行工具の回転軸方向の位置の補正である。
【0009】
本開示の第4態様によれば、第1態様から第3態様のいずれかによる制御方法では、温度に基づく実行工具の位置の補正を有効にすることは、温度センサから検出された温度に基づいて、温度センサから検出される温度が基準温度である場合の実行工具の刃先の位置からの位置ずれを推定して、切削加工において位置ずれに基づく実行工具の位置の補正を実行することを含む。
【0010】
本開示の第5態様によれば、第1態様から第4態様のいずれかによる制御方法では、温度に基づく実行工具の位置の補正を有効にすることは、加工プログラムの実行工具による加工を規定する部分において、負荷に基づく実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていても、負荷調整コードを無視することを含む。
【0011】
本開示の第6態様によれば、第5態様による制御方法では、温度に基づく実行工具の位置の補正を有効にすることは、加工プログラムの実行工具による加工を規定する部分において、負荷に基づく実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、エラーメッセージを報知することを含む。
【0012】
本開示の第7態様によれば、第1態様から第6態様のいずれかによる制御方法では、負荷に基づく実行工具の位置の補正を有効にすることは、加工プログラムの実行工具による加工を規定する部分において負荷に基づく実行工具の位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、負荷調整コードを実行することを含む。
【0013】
本開示の第8態様によれば、第7態様による制御方法では、負荷に基づく実行工具の位置の補正を有効にすることは、加工プログラムの実行工具による加工を規定する部分において負荷調整コードが含まれていないと、負荷に基づく実行工具の位置の補正も温度に基づく実行工具の位置の補正も実行しないことを含む。
【0014】
本開示の第9態様によれば、第1態様から第8態様のいずれかによる制御方法は、ユーザによって入力された工具情報を記憶手段に記憶することをさらに含む。工具情報を取得することは、工具情報を記憶手段から読みだすことを含む。
【0015】
本開示の第10態様によれば、第1態様から第9態様のいずれかによる制御方法では、負荷に基づく実行工具の位置の補正は、負荷が実質的に変わらないように、実行工具の位置をフィードバック補正することを含む。
【0016】
本開示の第11態様に係るプログラムは、複合加工装置のハードウェアプロセッサによる実行時に、第1態様から第10態様のいずれかによる制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる指示を備える。
【0017】
本開示の第12態様に係る複合加工装置は、第1態様から第10態様のいずれかによる制御方法の処理を実行する手段と、工具情報を記憶するように構成される記憶手段と、切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具との両方を取付け可能な主軸と、主軸を回転させるように構成されるモータと、モータを駆動する駆動信号を送るように構成されるドライバと、温度センサと、を備える。
【0018】
本開示の第13態様によれば、第12態様による複合加工装置は、切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具との両方を収納可能な工具マガジンと、工具マガジンと主軸との間で工具を交換するように構成される工具交換装置と、をさらに備える。
【0019】
本開示の第14態様によれば、第12態様または第13態様による複合加工装置は、ユーザによって工具情報を入力するためのインタフェースをさらに備える。
【0020】
本開示の第15態様によれば、第12態様から第14態様のいずれかによる複合加工装置では、記憶手段は、メモリである。第1態様から第10態様のいずれかによる制御方法の処理を実行する手段は、メモリに記憶された第11態様に係るプログラムと、プログラムを実行するハードウェアプロセッサとを含む。
【0021】
第1態様に係る制御方法と、第1態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第1態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が切削加工用の工具であると判定すると、温度に基づく実行工具の位置の補正、すなわち位置制御を有効とし、実行工具が摩擦攪拌接合用の工具であると判定すると、負荷に基づく実行工具の位置の補正、すなわち負荷制御を有効とする。したがって、工具の種類に応じて位置制御と負荷制御を自動で切り替えることを可能とする。
【0022】
第2態様に係る制御方法と、第2態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第2態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、モータへの入力であるモータの駆動電流もしくは、駆動電流からモータの特性によって算出可能な駆動トルクを利用することによってリアルタイムにモータ負荷を算出することができる。なお、駆動トルクを使用する場合、モータ特性に依存しないため、モータの種類が異なる多様な工作機械に適用することが可能となる。
【0023】
第3態様に係る制御方法と、第3態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第3態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、回転軸方向の位置補正のため、刃先抵抗を効率よく減少させることができ、加工品質を向上させることができる。
【0024】
第4態様に係る制御方法と、第4態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第4態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が切削加工用の工具であるとき、温度に基づく実行工具の刃先位置を実行するため、切削加工における加工品質を向上させることができる。
【0025】
第5態様に係る制御方法と、第5態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第5態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が切削加工用の工具であるとき、負荷調整コードを無視するので、誤ってプログラムに負荷調整コードをいれても、本来切削加工で必要な位置制御を有効とすることができる。その結果、切削加工の加工品質を向上させることができる。
【0026】
第6態様に係る制御方法と、第6態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第6態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が切削加工用の工具であるとき、誤ってプログラムに負荷調整コードをいれられていると、エラーメッセージを表示するため、ユーザは、無効なコードを入力してしまったことに気づくことができ、ユーザエクスペリエンスを向上させることができる。
【0027】
第7態様に係る制御方法と、第7態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第7態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が摩擦攪拌接合用の工具であるとき、負荷調整コードによって負荷制御の実行を定めることができるので、ユーザは負荷制御を実行するか否かを自由に定めることができる。
【0028】
第8態様に係る制御方法と、第8態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第8態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、実行工具が摩擦攪拌接合用の工具であるとき、負荷調整コードが無い場合、位置制御も負荷制御もいずれも実行しないようにすることができるので、ユーザはプログラムのオリジナルコードを選択的に実行することができる。
【0029】
第9態様に係る制御方法と、第9態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第9態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、新規の工具が切削加工用の工具であるか、摩擦攪拌接合用の工具であるかを記憶手段にユーザが登録し、その記憶手段に登録された情報をもとに複合加工装置は、自動で切削加工用の工具か摩擦攪拌接合用の工具かを自動で判別することができる。
【0030】
第10態様に係る制御方法と、第10態様による制御方法の処理をハードウェアプロセッサに実行させる第11態様に係るプログラムと、第10態様による制御方法の処理を実行する手段を備える第12態様に係る複合加工装置とでは、主軸モータに係る負荷を一定とするように負荷制御できるので、摩擦攪拌接合の加工品質を向上させることができる。
【0031】
第13態様に係る複合加工装置では、切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具とを工具の種類を区別することなく収納できるため、工具マガジンの工具保管ポケットを有効に活用できる。さらに、切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具とを機械的に入れ替えることができるので、自動化できる製造プロセスを増加させることができる。
【0032】
第14態様に係る複合加工装置では、ユーザが工具情報を複合加工装置から入力することができるので、工具情報の登録作業が容易となる。また、工具情報から切削加工用の工具か摩擦攪拌接合用の工具かを確認することできるため、複合加工装置の工具マガジンにどのような工具が取り付けられているかを確認する必要がなく、プログラムの作成や修正が容易となる。
【0033】
第15態様に係る複合加工装置では、汎用的なアーキテクチャで第1態様~第10態様に係る制御を実現することができるので、複合加工装置の製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本願に開示される技術によれば、工具の種類に応じて位置制御と負荷制御を自動で切り替えることが可能な複合加工装置、制御方法、及び、プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施形態に係る複合加工装置の外観構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る複合加工装置の電子回路の構成を示す図である。
図3図3は、図1に示した複合加工装置の加工ヘッドの概要を示す断面図である。
図4図4は、図1に示した複合加工装置の加工ヘッドの概要を示す断面図である。
図5図5は、工具マガジンと工具交換装置とを示す拡大斜視図である。
図6図6は、複合加工装置の制御方法、すなわち、制御プログラムの動作を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、切削加工用の工具の工具データの一例である。
図7B図7Bは、摩擦攪拌接合用の工具の工具データの一例である。
図8図8は、ステップS2の動作の詳細を表すフローチャートである。
図9図9は、ステップS3の動作の詳細を表すフローチャートである。
図10図10は、ステップS4の動作の詳細を表すフローチャートである。
図11図11は、ステップS5の動作の詳細を表すフローチャートである。
図12A図12Aは、切削加工の加工プログラムの一例である。
図12B図12Bは、摩擦攪拌接合の加工プログラムの一例である。
図13A図13Aは、切削加工の加工プログラムの別の一例である。
図13B図13Bは、摩擦攪拌接合の加工プログラムの別の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<実施形態>
<複合加工装置1の構成>
図1は、実施形態に係る切削加工と摩擦攪拌接合とを実行するための複合加工装置1の外観構成を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る複合加工装置1の電子回路の構成を示す図である。図1に示すように、複合加工装置1は、制御盤10と、ワークW(図3図4参照)を保持する加工テーブル11と、ワークWに対してXYZ方向にそれぞれ移動可能な加工ヘッド12と、工具マガジン15と、工具交換装置16とを備える。なお、図1には表示されていないが、複合加工装置1は、制御盤10以外の上述の構成を覆うカバーをさらに備えてもよい。
【0037】
図2を参照すると、制御盤10は、複合加工装置1の動作を制御する数値制御装置2と、当該数値制御装置2が実行する加工制御における加工条件等をユーザが入力するためのキー、ボタン、ダイヤル、タッチパネルなどの入力インタフェース10aと、ユーザに加工条件や各種センサによる検出結果等を表示する表示装置10bと、を備える。数値制御装置2は、ハードウェアプロセッサ3と、メモリ4と、バス5と、入出力インタフェース6とを有している。メモリ4は、接合プログラムや切削プログラム等の加工プログラム7と、工具を制御するための制御プログラム8と、工具が切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具とのいずれであるかを表す工具情報を格納する工具データ9とを記憶する。メモリ4は、記憶手段と呼称してもよい。つまり、記憶手段は、工具情報を記憶するように構成される。ハードウェアプロセッサ3は、各種プログラムを実行する。以降の実施形態において、ハードウェアプロセッサ3を単にプロセッサ3と呼称してもよい。
【0038】
図3及び図4は、図1に示した複合加工装置1の加工ヘッド12の概要を示す断面図である。図3及び図4に示すように、加工ヘッド12は、筐体をなす中空の主軸フレーム12aと、主軸フレーム12aに内包される主軸12bと、を含む。加工ヘッド12の主軸フレーム12aは、図2に示されるXYZ駆動機構13に取り付けられてXYZの3軸方向に移動可能とされている。XYZ駆動機構13は、好ましくは、XYZの各方向に移動させる複数のモータと、複数のモータのそれぞれに接続される、ボールねじや歯車などから構成される複数の回転=並進変換機構とを含む。また、主軸12bの一端は、例えばモータなどの回転駆動装置14に接続されて回転軸AX1の周りに回転するように構成される。回転駆動装置14は、主軸フレーム12aに固定されたステータ14sと、主軸12bに固定されたロータ14rとを含む。好ましくは、回転駆動装置14は、AC誘導モータであるが、AC同期モータであってもDCモータであってもよい。XYZ駆動機構13は、上記複数のモータの回転を制御する駆動電流を送るためのXYZ駆動ドライバ22に接続され、回転駆動装置14は、回転駆動装置14に駆動電流を送るための回転駆動ドライバ23に接続される。XYZ駆動ドライバ22と回転駆動ドライバ23とは、入出力インタフェース6を介して数値制御装置2に接続される。
【0039】
加工ヘッド12の下端には、工具ホルダ17が着脱自在に取り付けられる。図3は、実施形態による摩擦攪拌接合用の工具T1を示している。摩擦攪拌接合とは、工具T1の先端のプローブTTを回転させながら2つのワークW1、W2の間に挿入して、摩擦熱によりそれぞれの金属材料を軟化し攪拌することによって2つのワークW1、W2を接合させることを言う。図4は、実施形態による切削加工用の工具T2を示している。図3及び図4に示すように、工具T1、T2は、工具ホルダ17に保持される。
【0040】
工具ホルダ17はその上端にプルスタッド18を有し、プルスタッド18に接続される略円錐台形状のホルダフランジ17Fを有している。ホルダフランジ17Fは、主軸12bの回転軸AX1に対する径方向に切り欠いた溝部17Gを有している。一方、主軸12bにはプルスタッド18と嵌合可能なコレットチャック19と、溝部17Gと嵌合可能なキー部12Kを有している。コレットチャック19は、主軸12bの回転軸AX1に沿う回転軸方向DXに移動可能である。コレットチャック19は、回転軸方向DXのうち、プルスタッド18から工具T1、T2に向かう第1方向DR1にシフトすると、回転軸AX1に対する径方向に開くように構成され、プルスタッド18が着脱可能となる。コレットチャック19は、回転軸方向DXのうち、工具T1、T2からプルスタッド18に向かう第2方向DR2にシフトすると、回転軸AX1に対する径方向に閉じるように構成され、プルスタッド18と嵌合される。プルスタッド18がコレットチャック19に嵌合することによって工具ホルダ17が主軸14bに固定される。このとき、主軸12bのキー部12Kが工具ホルダ17の溝部17Gに嵌合するため、工具ホルダ17の主軸12bに対する回転が規制される。したがって、主軸14bは、切削加工用の工具T2と摩擦攪拌接合用の工具T1との両方を取付け可能である。以降の実施形態において、主軸14bに取り付けられた工具を実行工具TEと呼ぶ。
【0041】
回転駆動ドライバ23は、加工プログラム7によって設定されている目標主軸回転速度になるように回転駆動装置14の駆動電流を制御するフィードバック制御を実行する。回転駆動装置14がAC誘導モータである場合、回転駆動装置14がベクトル制御されていることを前提とすると、d軸の指令電流と、q軸の指令電流のうち、q軸の指令電流をこの駆動電流として制御する。すなわち、回転駆動ドライバ23は、回転駆動装置14に取り付けられたエンコーダなどの回転速度検出センサ24によって検出される回転速度が目標主軸回転速度よりも小さいとき、駆動電流を増やし、当該回転速度が目標主軸回転速度よりも大きいとき、駆動電流を減少させる。この駆動電流は、入出力インタフェース6を介して数値制御装置2に送られる。
【0042】
図3及び図4に示すように、主軸フレーム12a及び主軸12bは、熱電対などの温度センサ21a、21bを有している。温度センサ21aは有線によって電力が供給され、温度センサ21bは図示しない電磁誘導カプラによって電力が供給される。温度センサ21a、21bは、検出された温度を表す値を無線通信によって数値制御装置2に送信することができる。温度センサ21aは無線に代えて有線で検出された温度を表す値を数値制御装置2に送信してもよい。図4に示すように、切削加工用の工具T2は、温度センサ21cを有している。温度センサ21cは、図示しない電磁誘導カプラによって電力が供給され、検出された温度を表す値を無線通信によって数値制御装置2に送信することができる。なお、温度センサ21a~21cのうちのいずれかが省略されてもよい。
【0043】
工具マガジン15は、摩擦攪拌接合用の工具T1を保持する工具ホルダ17と、切削加工用の工具T2を保持する工具ホルダ17との両方を収納可能である。図5は、工具マガジン15と工具交換装置16とを示す拡大斜視図である。工具マガジン15は、複数の工具ホルダ17を保持する複数の保持部15aと、複数の保持部15aを周囲軌道に沿って移動させる保持部移動装置15bと、を有する。工具マガジン15は、工具マガジン15に保管されている工具ホルダ17を、工具交換装置16がアクセス可能な待機位置PHに移動させるホルダ取出装置15cを有していてもよい。
【0044】
工具交換装置16は、工具マガジン15と主軸12bとの間で工具を交換するように構成される。工具交換装置16は、工具交換アーム16aと、工具交換アーム16aを回転させるアーム回転装置16bと、工具交換アーム16aを直線的に移動させるアーム移動装置16cとを有する。アーム回転装置16bは、工具交換アーム16aを、追加回転軸AX2周りに回転させる。また、アーム移動装置16cは、工具交換アーム16aを追加回転軸AX2に平行な方向に移動させる。工具交換装置16は、交換前後の工具ホルダ17を把持可能なマジックハンドに類似した構成の把持部16d、16eを有する。
【0045】
<制御プログラムの動作>
つぎに、図2の制御プログラム8の動作、すなわち、複合加工装置1の制御の詳細について説明する。図6は、複合加工装置1の制御方法、すなわち、制御プログラム8の動作のフローチャートである。制御プログラム8は、複合加工装置1のハードウェアプロセッサ3による実行時に、図6及び図6に付随する図8図11に記載の制御方法の処理をハードウェアプロセッサ3に実行させる指示を備える。図6及び図6に付随する図8図11に記載の制御方法の処理を実行する手段は、メモリ4に記憶された制御プログラム8と、制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3とを含む。図6を参照すると、ステップS1において、当該制御方法において、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、複合加工装置1に取付可能な複数の工具のそれぞれが、切削加工用の工具T2と、摩擦攪拌接合用の工具T1とのいずれであるかを表す工具情報(工具データ9)を取得する。工具情報を取得することは工具情報をメモリ4(記憶手段)から読みだすことを含む。
【0046】
図7Aは、切削加工用の工具T2の工具データ9の一例である。図7Bは、摩擦攪拌接合用の工具T1の工具データ9の一例である。なお、切削加工用の工具T2の工具データ9は、他の補正用のパラメータを含んでよい。図7A及び図7Bを参照すると、TNo.はTコードに相当する。Tコードは、Tコードに応じて工具マガジン15の複数の保持部15aのうちどの保持部15aに保持されている工具ホルダ17であるかを示している。したがって、異なる複数の保持部15aには異なるTコードが割り当てられる。Tコードは、工具名と呼径とサフィックスとの組み合わせに対応する。サフィックスは任意のアルファベットを割り当て可能である。したがって、複数の同じ工具に対してサフィックスを変えることによって異なるTコードを割り当て可能である。
【0047】
各Tコードに対応する工具が摩擦攪拌接合用の工具T1であるか、切削加工用の工具T2であるかは、工具を表す命令の1つである工具名に基づいて判定することができる。摩擦攪拌接合用の工具T1の工具名は、FSWツールである。切削加工用の工具T2の工具名は、FSWツール以外の名称である。図7A及び図7Bを参照すると、工具データ9は、Tコード、工具名、呼径、サフィックス以外に、工具長、工具径、プローブ径、ショルダ径(工具T1のうち、接合中に材料表面に接触する、プローブTTより大径の部分)などの他の工具の属性情報、長補正量、径補正量などの工具の摩耗等を考慮した補正パラメータを含んでもよい。ただし、工具データ9は、Tコード、工具名、呼径、サフィックス以外の情報を含まなくてもよい。各Tコードに対応する工具が摩擦攪拌接合用の工具T1であるか、切削加工用の工具T2であるかは、工具の命令の1つとして工具名がFSWツールの場合をあげたが、図7A及び図7Bの通り、切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具を比較すると、摩擦攪拌接合用の工具は、プローブ径、ショルダ径など摩擦攪拌接合用の工具固有の項目がある。このため、もし、加工プログラム7が工具固有の項目を含む場合、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具名によらず、摩擦攪拌接合用の工具固有の項目で、工具を表す命令として判定してもよい。
【0048】
つぎに、図6のステップS2において、当該制御方法において、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7によって呼び出させる各加工プロセス(切削加工、摩擦攪拌接合などの、1つの工具によって連続的に行われる加工のそれぞれ)において使用される実行工具TEを表す命令を取得する。その命令とは、具体的には、工具名を表す命令である。ステップS3において、当該制御方法において、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具情報及び当該命令に基づいて、実行工具TEが摩擦攪拌接合用の工具T1と切削加工用の工具T2とのうちのいずれであるかを判定する。より具体的には、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、実行工具TEの工具名がFSWツールであるとき、実行工具TEが攪拌接合用の工具T1であると判定する。制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、実行工具TEの工具名がFSWツール以外の名称であるとき、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定する。
【0049】
当該制御方法において、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、ステップS3において実行工具TEが摩擦攪拌接合用の工具T1であると判定すると、ステップS4において、回転駆動ドライバ23から検出された回転駆動装置14にかかる負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)を有効とする。この負荷制御とは、例えば、特許文献3にも示されるように、回転駆動装置14にかかる負荷が工具T1の挿入深さ(XYZ駆動機構13から取得可能)に対応する目標負荷に近づくように、制御プログラム8を実行するプロセッサ3が、工具T1の挿入位置(XYZ駆動機構13に送る位置指令)を制御する。この負荷は、回転駆動装置14の駆動電流値であってもよい。この駆動電流値とは、逐次の電流値の絶対値であってもよいが、予め定めた所定の時間間隔内において取得された電流値の2乗した値を足し合わせた値の平方根としてもよい。また、負荷は、回転駆動装置14の最大駆動電流値に対する回転駆動ドライバ23から出力される駆動電流値の比として表される負荷率であってもよい。さらに、負荷は、回転駆動装置14の定格電流値に対する回転駆動ドライバ23から出力される駆動電流値の比として表される負荷率であってもよい。あるいは、負荷は、回転駆動ドライバ23から出力される駆動電流値から得られる回転駆動装置14の駆動トルクであってもよい。回転駆動装置14がDCモータであれば、駆動トルクはモータ電流に比例するため、モータ特性から定まるトルク定数をもとに算出することができる。また、回転駆動装置14がAC誘導モータ、またはAC同期モータであっても、ベクトル制御されていると考えると、駆動トルクとトルク電流成分の指令電流であるq軸電流は比例関係と考えられるため、DCモータと同様にq軸電流からモータの特性値を利用して算出できる。好ましくは、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正は、負荷が実質的に変わらないように、実行工具TEの位置をフィードバック補正することを含む。なお、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正は、実行工具TEの回転軸方向DXの位置の補正である。
【0050】
当該制御方法において、制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、ステップS3において実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定すると、ステップS5において、切削加工において温度センサ21a~21cから検出された温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を有効とする。この位置制御とは、例えば、国際公開第2021/044491号に示されるように、温度センサ21a~21cから検出された温度に基づいて、温度センサ21a~21cから検出される温度が基準温度である場合の実行工具TEの刃先の位置からの位置ずれ(熱変位)を推定して、切削加工において位置ずれ(熱変位)に基づく実行工具TEの位置の補正を実行する。この場合、国際公開第2021/044491号に示されるように、温度センサ21a~21cごとに基準温度からの温度ずれにあらかじめ定めた係数を乗じてそれらの和を求めることによって位置ずれを推定してもよく、各温度センサ21a~21cの基準温度からの温度ずれに対応する刃先ずれをテーブル等で記憶しておき、当該テーブルを参照して位置ずれを推定してもよい。なお、温度に基づく実行工具TEの位置の補正は、実行工具TEの回転軸方向DXの位置の補正である。
【0051】
上述のステップS2、S4、及び、S5は、加工プログラム7のプログラムフォーマットに応じて異なる。以下、加工プログラム7のプログラムフォーマットに基づく特有の処理について説明する。
【0052】
図8は、ステップS2の動作の詳細を表すフローチャートである。図9は、ステップS3の動作の詳細を表すフローチャートである。図10は、ステップS4の動作の詳細を表すフローチャートである。図11は、ステップS5の動作の詳細を表すフローチャートである。図12Aは、切削加工の加工プログラム7の一例である。図12Bは、摩擦攪拌接合の加工プログラム7の一例である。図12A及び図12Bの加工プログラム7のプログラムフォーマットは、対話式フォーマットと呼ばれる。以下、対話式フォーマットにより記述された加工プログラム7を加工プログラム7Aと呼称する。
【0053】
加工プログラム7Aは、複合加工装置1を数値制御するためのプログラムコードによって記述されている。加工プログラム7Aでは少なくとも以下の内容が定義される。
(1)共通ユニット:加工前のワークWの材質及び形状
(2)基本座標ユニット:ワーク座標系と機械座標系の設定方法
(3)加工ユニット:最終加工形状のうちの各部位(part)の加工法や加工形状
共通ユニット、基本座標ユニット、加工ユニットは、それぞれ、ユニット番号(unit number)を有している。
【0054】
図12A及び図12Bは、上記ユニットのうち、加工ユニットのみを示している。加工ユニットは、ユニット番号UNo.と、加工内容を特定する情報(ユニット名)と、工具T1、T2及び工具T1、T2の切削条件(cutting condition)を設定する工具シーケンスTSと、当該加工ユニット内で加工される加工形状を規定する形状シーケンスSSとを含む。工具シーケンスTSとは、当該加工ユニットで規定される部位の加工形状(例えば、1つの棒材、1つのネジ穴)を形成する上で必要となる一連の加工段階(machining stages)をいう。形状シーケンスSSとは、加工形状を決定するためのワーク座標での工具の刃先の開始点、終了点、開始点と終了点との間の接続関係(直線、円弧など)によって定義されたセグメント(segment)の集合をいう。
【0055】
図12A及び図12Bの例では、加工ユニットが1つの工具シーケンスTSと1つの形状シーケンスSSとを有する例を示している。しかし、加工ユニットが複数の工具シーケンスを有してもよい。複雑な加工形状に対応するために、加工ユニットが複数の形状シーケンスを有してもよい。加工ユニットが複数の工具シーケンスと複数の形状シーケンスを有する場合、当該加工ユニットの実行においては、まず、工具シーケンスの並び順に1つ1つの工具シーケンスに対して次の工具シーケンスがプログラム上に出現するまでの全ての形状シーケンスに示された形状を生成できるように工具を動かすように実行される。各工具シーケンスは、シーケンス番号SNo.によって区別される。各形状シーケンスは、FIG項目に記載された番号によって区別される。
【0056】
工具シーケンスTSにおいて工具名がFSWツールであると、図12Bに示されるように、その工具シーケンスTSに対応する形状シーケンスSS夫々は、負荷制御を行うか否かのコード(’負荷制御’)と、負荷を指定するコード(’負荷トルク’)を含む。図12Bでは、負荷トルクの大きさ(単位N・m)が’負荷トルク’の数値として表されている。この例では、負荷を指定するコードは負荷トルクである場合を示しているが、駆動電流値であってもよく、上述する負荷率であってもよい。負荷制御を行う場合、’負荷制御’の値は’する’であり、負荷制御を行わない場合、’負荷制御’の値は’しない’である。ここで、値’する’を含む’負荷制御’コードと’負荷トルク’コードとを総称して、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードと呼ぶ。形状シーケンスSSの’負荷制御’コードの値が’しない’である場合、当該形状シーケンスSSは負荷調整コードを含まないと定める。
【0057】
図8図12A、及び、図12Bを参照すると、ステップS2では、図8のステップS21においてプログラムフォーマットが対話式フォーマットである場合、ステップS22において、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名を、実行工具TEを表す命令として取得する。なお、ステップS22では追加の処理として、当該制御方法において、加工プログラム7を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名、呼径、サフィックスを取得し、工具データ9を参照して、取得した工具名、呼径、サフィックスの組み合わせに対応するTコードを取得し、取得したTコードに対応する保持部15aに保持された工具ホルダ17を主軸12bに取り付ける処理を行ってもよい。
【0058】
ステップS3では、図9のステップS31においてプログラムフォーマットが対話式フォーマットである場合、ステップS33において、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名がFSWツールであるか否かを判定し、FSWツールである場合、次の工具シーケンスTSを実行するまで、実行工具TEが摩擦攪拌接合用の工具T1であると判定する(ステップS34)。対話式フォーマットによるプログラムコードは、上述するように、各形状シーケンスSSにおいて負荷制御に係るコードを含む。したがって、上述する負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)を有効にすることは、加工プログラム7の実行工具TEによる加工を規定する部分(形状シーケンスSS)において負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、加工プログラム7の実行工具TEによる摩擦攪拌接合において、回転駆動装置14にかかる負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)を実行することを含む。具体的には、ステップS4では、図10のステップS41においてプログラムフォーマットが対話式フォーマットである場合、ステップS42において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、形状シーケンスSSに負荷調整コードを含むか否か判定する。形状シーケンスSSに負荷調整コードが含まれている場合(ステップS42でYes)、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、次の形状シーケンスSSを実行するまで負荷制御を実行する(ステップS43)。一方、形状シーケンスSSに負荷調整コードを含まれていない場合(ステップS42でNo)、ステップS44において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7Aの実行工具TEによる加工を規定する部分(形状シーケンスSS)において、負荷制御も位置制御も実行しない。
【0059】
ステップS3では、図9のステップS31においてプログラムフォーマットが対話式フォーマットである場合、ステップS33において、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名がFSWツールでない場合、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定する(ステップS35)。このとき、上述する温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を有効にすることは、温度センサ21a~21cから検出された温度に基づいて、温度センサ21a~21cから検出される温度が基準温度である場合の実行工具TEの刃先の位置からの位置ずれ(熱変位)を推定して、切削加工において位置ずれ(熱変位)に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を実行することを含む。具体的には、ステップS5では、図11のステップS51においてプログラムフォーマットが対話式フォーマットである場合、ステップS52において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名がFSWツールでない場合、次の工具シーケンスTSを実行するまで位置制御を実行する。
【0060】
加工プログラム7は、図12A及び図12Bの例に限られず、EIA(Electonic Industries Association)/ISO(International Organization for Standardization)フォーマットに基づく加工プログラム7であってもよい。図13A及び図13Bの加工プログラム7のプログラムフォーマットを加工プログラム7Bと呼ぶ。図13Aは、切削加工用の工具T2による加工プログラム7Bを示し、図13Bは、摩擦攪拌接合用の工具T1による加工プログラム7Bを示している。図13A及び図13Bの行番号4のコードを参照すると、EIA/ISOフォーマットに基づく加工プログラム7Bは、M6コード直前に記載されたTコードによって、摩擦攪拌接合用の工具T1と、切削加工用の工具T2とのいずれであるかを判別可能である。
【0061】
具体的には、ステップS2では、図8のステップS21においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットである場合、ステップS23において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7BからTコードを、実行工具TEを表す命令として取得する。ステップS3では、図9のステップS31においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットである場合、ステップS32において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は工具情報(工具データ9)を参照し、Tコードに対応する工具名を取得する。
【0062】
図13Aの例では、加工プログラム7Bから読み込まれたTコードがT10であって、工具データ9を参照すると、TコードがT10である実行工具TEの工具名はフェイスミルであるので、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定する。つまり、図9のステップS33において、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名がFSWツールでない場合、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定する(ステップS35)。図13Bの例では、加工プログラム7Bから読み込まれたTコードがT11であって、工具データ9を参照すると、TコードがT11である実行工具TEの工具名はFSWツールであるので、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定する。つまり、図9のステップS33において、当該制御方法において制御プログラム8を実行するハードウェアプロセッサ3は、工具シーケンスTSの工具名がFSWツールであるか否かを判定し、FSWツールである場合、次の工具シーケンスTSを実行するまで、実行工具TEが摩擦攪拌接合用の工具T1であると判定する(ステップS34)。
【0063】
EIA/ISOフォーマットによるプログラミングでは、位置制御に係る特別なコードをプログラムコードに含むことは要求されないが、負荷制御に係る特別なコードをプログラムコードに含むことは要求される。図13Bを参照すると、摩擦攪拌接合用の工具T1による加工プログラム7Bは、M6コードによって摩擦攪拌接合用の工具T1に入れ替える指令の後、負荷を指定するB118.コード(図13Bの行番号6のコード)を含む。このコードは、Bの後目標となる負荷トルク(単位N・m)が表されている。そして、摩擦攪拌接合用の工具T1による加工プログラム7Bは、座標指定のコードの後、負荷制御を実行するM800コード(図13Bの行番号13のコード)を含む。摩擦攪拌接合用の工具T1による加工プログラム7Bは、摩擦攪拌接合用の工具T2の移動のコードの後、負荷制御を解除するM801コード(図13Bの行番号17のコード)を含む。ここで、B118.コードとM800コードとを総称して、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードと呼ぶ。
【0064】
EIA/ISOフォーマットによるプログラムコードは、Tコードに対応する工具名がFSWツールでなければ、上述する位置制御がデフォルトで実行される。ただし、Tコードに対応する工具名がFSWツールでなく、EIA/ISOフォーマットによるプログラムコードが負荷調整コードを含んでいれば、複合加工装置1は、例えば、「プログラムには無効なM800コード(または、B118.コード、M801コード)が含まれていますが、無視しました」などのエラーメッセージを表示して負荷調整コードを無視し、位置制御を実行する。また、Tコードに対応する工具名がFSWツールである場合、EIA/ISOフォーマットによるプログラムコードが負荷調整コードを含んでいれば、そのコードに従って負荷制御を実行する。Tコードに対応する工具名がFSWツールであってEIA/ISOフォーマットによるプログラムコードが負荷調整コードを含んでいない場合、複合加工装置1は、位置制御と負荷制御とのいずれも実行しない。
【0065】
したがって、図13Aに示される加工プログラム7Bが温度センサ21a~21cから検出された温度に基づく実行工具TEの位置の補正に関するコードを何ら含んでいないことは、制御プログラム8を実行するプロセッサ3が位置制御を実行しないことを意味しない。実行工具TEが切削加工用の工具T2であるときの、温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を有効にすることは、温度センサ21a~21cから検出された温度に基づいて、温度センサ21a~21cから検出される温度が基準温度である場合の実行工具TEの刃先の位置からの位置ずれ(熱変位)を推定して、切削加工において位置ずれ(熱変位)に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を実行することを含む。具体的には、ステップS5では、図11のステップS51においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットであって加工プログラム7によって呼び出させる加工プロセスのコードが負荷調整コードを含んでいない場合(ステップS53でNo)、ステップS52において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、位置制御を実行する。つまり、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、M6コードによって工具が他の工具に入れ替わるかM30コードによって加工プログラム7Bが終了するまで位置制御を実行する。
【0066】
一方、例えば、図13BのコードにおいてTコードがT11ではなくてT10であった場合のように、ステップS5に係る図11のステップS51においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットであって加工プログラム7によって呼び出させる加工プロセスのコードが負荷調整コードを含む場合(ステップS53でYes)、ステップS54において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていても、負荷調整コードを無視する。つまり、温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を有効にすることは、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていても、負荷調整コードを無視することを含む。その後、ステップS55において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、表示装置10bにエラーメッセージを表示させる。つまり、温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)を有効にすることは、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を指示する負荷調整コードが含まれていると、エラーメッセージを報知することを含む。ステップS55の処理が終了すると、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、ステップS52を実行する。
【0067】
また、ステップS4に係る回転駆動装置14にかかる負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)を有効とすることは、ステップS41においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットであるときに、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、負荷調整コードが含まれていると(ステップS45でYes)負荷調整コードを実行する(ステップS43)ことを含む。具体的には、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、M800コードが呼び出されてからM801コードが呼び出されるまで負荷調整コードに基づく負荷制御を実行する。
【0068】
一方、例えば、図13AのコードにおいてTコードがT10ではなくてT11であった場合のように、ステップS4に係る図9のステップS41においてプログラムフォーマットがEIA/ISOフォーマットであって加工プログラム7によって呼び出させる加工プロセスのコード(加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分)において負荷調整コードを含まれていない場合(ステップS45でNo)、ステップS44において当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において、負荷制御も位置制御も実行しない。つまり、負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)を有効にすることは、加工プログラム7Bの実行工具TEによる加工を規定する部分において負荷調整コードが含まれていないと、回転駆動装置14にかかる負荷に基づく実行工具TEの位置の補正(負荷制御)も温度に基づく実行工具TEの位置の補正(位置制御)も実行しないことを含む。このとき、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、実行工具TEを移動させるコード(図13A図13Bの行番号14のコード)のみに基づいて実行工具TEを移動させる。
【0069】
制御プログラム8は、工具データ9に登録された工具情報を編集する機能も有している。具体的には、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、図7A及び図7Bの一行目に示された項目に対応するテキスト、アイコンなどのインジケータと、図7A及び図7Bの二行目に示された内容に対応するテキストボックス、リストボックスなどの入力フォームとを表示装置10bに表示する処理を実行する。当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、入力フォームにおいてユーザが入力インタフェース10aを介して入力した情報を、メモリ4に記憶する処理を実行させる。つまり、当該制御方法において制御プログラム8を実行するプロセッサ3は、ユーザによって入力された工具情報を記憶手段に記憶する処理を実行させる。なお、入力インタフェース10aと表示装置10bとは、ユーザによって前記工具情報を入力するためのインタフェースである。
<本実施形態における複合加工装置の制御方法の特徴及び効果>
本実施形態にかかる複合加工装置1及びその制御方法は、実行工具TEが切削加工用の工具T2であると判定すると、切削加工において複合加工装置1または切削加工用の工具T2に設けられた温度センサ21a~21cから検出された温度に基づく実行工具TEの位置の補正を有効とすることを含む。本実施形態にかかる複合加工装置1及びその制御方法は、実行工具TEが摩擦攪拌接合用の工具T1であると判定すると、摩擦攪拌接合において回転駆動装置14にかかる負荷に基づく実行工具TEの位置の補正を有効とすることを含む。したがって、工具の種類に応じて位置制御と負荷制御を自動で切り替えることを可能とする。
<変形例>
上述する実施形態のステップS4では、回転駆動ドライバ23に指令電流として送られる駆動電流によって回転駆動装置14にかかる負荷を算出する場合を例に挙げて説明したが、回転駆動ドライバ23から回転駆動装置14に送られる駆動電流を用いて回転駆動装置14にかかる負荷を算出してもよい。DCモータにかかるトルクは、上述するトルク特性からDCモータに直接かかる駆動電流値から算出可能である。また、AC誘導モータ、またはAC同期モータにかかるトルクは、ベクトル制御されている場合、それぞれのモータに直接かかる3相の電流値から二相変換した上でq軸電流を算出し、予め数値制御装置2内に記憶させた回転数とトルクの関係からトルク換算係数を算出し、q軸電流を乗算することによって算出可能である。ただし、ACモータの種類によってトルク換算係数は異なるものを記憶させておく必要がある。
【0070】
上述の実施形態では、複合加工装置1が対話式フォーマットとEIA/ISOフォーマットとの両方のプログラムフォーマットに対応する例を示しているが、いずれか一方のみのプログラムフォーマットのみに対応するものであってもよい。その場合、図8~10において、ステップS21、S41、S51が省略され、複合加工装置1が対応しないプログラムフォーマットの処理が省略されてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、複合加工装置1が立形マシニングセンターである例を示しているが、複合加工装置1が横形マシニングセンター、旋盤、付加製造装置を含む複合加工装置においても、切削加工と摩擦攪拌接合とをともに可能であれば、本実施形態の内容は適用可能である。
【0072】
上述の数値制御装置2の制御プログラム8のロジックの一部または全ての機能が専用のプロセッサや集積回路によって実現されてもよい。上述の制御プログラム8は、数値制御装置2に内蔵されたメモリ4にとどまらず、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROMおよび磁気ディスク等のディスク、SDカード、USBメモリ、外付けハードディスクなど数値制御装置2から取り外し可能で、数値制御装置2に読み取り可能な記憶媒体に記録されたものであってもよい。
【0073】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0074】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0075】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0076】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、実施形態に特段の説明がない限りにおいて、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0077】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0078】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【要約】
切削加工と摩擦攪拌接合とを実行するための複合加工装置の制御方法は、複合加工装置に取付可能な複数の工具のそれぞれが切削加工用の工具と摩擦攪拌接合用の工具とのいずれであるかを表す工具情報を取得し、複数の工具のうち、複合加工装置によって実行される加工プログラムによって呼び出される実行工具を表す命令を取得し、工具情報及び命令に基づいて実行工具が切削加工用の工具であると判定すると、切削加工において複合加工装置に設けられた温度センサから検出された温度に基づく実行工具の位置の補正を有効とし、工具情報及び命令に基づいて実行工具が摩擦攪拌接合用の工具であると判定すると、摩擦攪拌接合において実行工具を回転させるモータにかかる負荷を求め、負荷に基づく実行工具の位置の補正を有効とする、ことを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B