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特許7362982非球状配向磁性又は磁化可能顔料粒子を含む光学効果層を生成するための磁気アセンブリ、装置、及びプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】非球状配向磁性又は磁化可能顔料粒子を含む光学効果層を生成するための磁気アセンブリ、装置、及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20231011BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231011BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20231011BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231011BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20231011BHJP
   B41F 11/02 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/24 301T
B05D5/12 A
B05D7/24 303D
B32B7/025
B41M3/14
B41F11/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561760
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061678
(87)【国際公開番号】W WO2019215148
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】18171312.4
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アメラシンゲ, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】デスプラント, クロード-アラン
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0077485(US,A1)
【文献】特開2010-042407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
B41M1/00-3/18
B41F5/00-13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学効果層(OEL)(x10)を基板(x20)上に生成するプロセスであって、
i)非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む第1の状態の放射線硬化性コーティング組成物を基板(x20)表面に塗布するステップであり、前記第1の状態が液体状態である、ステップと、
ii)前記非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させるために、前記放射線硬化性コーティング組成物を磁気アセンブリ(x00)の磁界に曝露するステップであり、前記磁気アセンブリ(x00)が、
a)前記基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有するとともに、長さL1を有する第1の磁界発生装置(x30)と、
b)前記基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有するとともに、長さL3を有する第2の磁界発生装置(x40)と、
c)表面の外側に如何なる突起も突出部も延びておらず、長さL5を有する平坦な磁極片(x50)と、
を備え、
前記第1の磁界発生装置(x30)及び前記第2の磁界発生装置(x40)が、同じ磁界方向を有し、
前記第1の磁界発生装置(x30)が、前記基板(x20)に対向するとともに前記磁極片(x50)の上に配設され、
前記第2の磁界発生装置(x40)が、前記平坦な磁極片(x50)の下に配設され、
前記第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、前記第2の磁界発生装置(x40)の長さL3よりも小さく、
前記第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、前記平坦な磁極片(x50)の長さL5よりも小さく、
前記第2の磁界発生装置(x40)の長さL3が、前記磁極片(x50)の長さL5よりも小さい、ステップと、
iii)前記非球状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれらの採用された位置及び配向に固定するために、ステップii)の前記放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させて第2の状態とするステップと、
を含み、
前記光学効果層(OEL)が、前記光学効果層を含む前記基板の傾斜により移動及び回転する三日月の光学的印象を与える、プロセス。
【請求項2】
前記磁気アセンブリ(x00)が、好ましくはポリオキシメチレン(POM)製の非磁性板(x60)をさらに備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記磁気アセンブリ(x00)が、長さL9を有する第2の平坦な磁極片(×70)をさらに備え、前記第2の磁極片が、前記第2の磁界発生装置(x40)の下に配設される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記磁気アセンブリ(x00)が、1つ又は複数のしるしを表す1つ又は複数の彫刻及び/又は切り欠きを含む磁化板(x80)をさらに備え、
前記磁化板(x80)が、好ましくは、ポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材から作製され、
前記磁化板(x80)が、前記第1の磁界発生装置(x30)の上に配設されることにより前記基板(x20)に対向する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記平坦な磁極片(x50)が、鉄製である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1の磁界発生装置(x30)及び前記第2の磁界発生装置(x40)が、ディスク状の磁界発生装置であり、それらの長さL1及びL3がそれらの直径に対応するか、又は、正方形状の磁界発生装置であり、それらの長さL1及びL3がそれらの幅に対応する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記非球状磁性又は磁化可能顔料粒子が、磁性薄膜干渉顔料、磁性コレステリック液晶顔料、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ステップiii)が、前記ステップii)と一部同時に実行される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記非球状磁性又は磁化可能粒子が、血小板状の顔料粒子であり、前記プロセスが、前記血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、第1の磁界発生装置の動的な磁界に対して前記放射線硬化性コーティング組成物を曝露するステップであって、前記ステップi)の後で前記ステップii)の前に実行される、ステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
光学効果層(OEL)(x10)を基板(x20)上に生成するための磁気アセンブリ(x00)であって、前記光学効果層(OEL)が、前記OELの傾斜により移動又は回転する三日月状の要素の印象を与えるとともに、硬化した放射線硬化性コーティング組成物内における非球状配向磁性又は磁化可能顔料粒子を含み、前記磁気アセンブリ(x00)が、
a)前記基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有し、長さL1を有する第1の磁界発生装置(x30)と、
b)前記基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有し、長さL3を有する第2の磁界発生装置(x40)と、
c)表面の外側に如何なる突起も突出部も延びておらず、長さL5を有する平坦な磁極片(x50)と、
を備え、
前記第1の磁界発生装置(x30)及び前記第2の磁界発生装置(x40)が、同じ磁界方向を有し、
前記第1の磁界発生装置(x30)が、前記基板(x20)に対向するとともに前記磁極片(x50)の上に配設され、
前記第2の磁界発生装置(x40)が、前記平坦な磁極片(x50)の下に配設され、
前記第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、前記第2の磁界発生装置(x40)の長さL3よりも小さく、
前記第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、前記磁極片(x50)の長さL5よりも小さく、
前記第2の磁界発生装置(x40)の長さL3が、前記磁極片(x50)の長さL5よりも小さい、磁気アセンブリ(x00)。
【請求項11】
非磁性板(x60)をさらに備え、及び/又は
長さL9を有する第2の平坦な磁極片(x70)であって、前記第2の磁極片が、前記第2の磁界発生装置(x40)の下に配設され、前記第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、前記第2の磁極片(x70)の長さL9よりも小さく、前記第2の磁界発生装置(x40)の長さL3が、前記第2の磁極片(x70)の長さL9よりも小さい、第2の平坦な磁極片(x70)をさらに備え、及び/又は
1つ又は複数のしるしを表す1つ又は複数の彫刻及び/又は切り欠きを含む磁化板(x80)であって、前記磁化板(x80)が、好ましくは、ポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材から作製され、前記磁化板(x80)が、前記第1の磁界発生装置(x30)の上に配設されることにより前記基板(x20)に対向する、磁化板(x80)をさらに備える、
請求項10に記載の磁気アセンブリ(x00)。
【請求項12】
前記磁気アセンブリ(x00)が、好ましくは回転磁気シリンダである転写装置に搭載されたホルダ(x01)内に配設される、請求項10又は11に記載の磁気アセンブリ(x00)。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の前記磁気アセンブリ(x00)のうちの少なくとも1つを備える回転磁気シリンダを備える印刷装置。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか一項に記載の前記磁気アセンブリ(x00)のうちの少なくとも1つを備える平台印刷ユニットを備える印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[001]本発明は、偽造及び違法複製に対する有価文書及び有価商品の保護の分野に関する。特に、本発明は、視角に応じた光学効果を示す光学効果層(OEL)、上記OELを生成するための磁気アセンブリ、装置、及びプロセス、並びに文書上の偽造防止手段としての上記OELの使用に関する。
【発明の背景】
【0002】
[002]当技術分野においては、磁性又は磁化可能顔料粒子磁性又は磁化可能顔料粒子、特に非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子磁性又は磁化可能顔料粒子を含むインク、コーティング組成物、コーティング、又は層を用いることによって、セキュリティ要素及びセキュリティ文書を生成することが知られている。
【0003】
[003]例えばセキュリティ文書のセキュリティフィーチャは、「秘密」及び「公然」のセキュリティフィーチャに分類可能である。秘密のセキュリティフィーチャによる保護は、そのような機能が隠蔽されており、検出には通常、専門的な機器及び知識が必要である、という概念に依拠している。一方、「公然」のセキュリティフィーチャは、人間の感覚のみで容易に検出可能であり、例えばそのような機能は、可視的及び/又は触覚によって検出可能であるが、製造及び/又はコピーは依然として困難である。ただし、公然のセキュリティフィーチャの有効性は、そのセキュリティフィーチャとしての容易な認識に大きく依存する。何故なら、ユーザは、セキュリティフィーチャの存在及び性質に気付いている場合、そのようなセキュリティフィーチャに基づいて実際にセキュリティ確認を行うに過ぎないからである。
【0004】
[004]配向磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング又は層については、例えば米国特許第2,570,856号、米国特許第3,676,273号、米国特許第3,791,864号、米国特許第5,630,877号、及び米国特許第5,364,689号に開示されている。コーティング中の磁性又は磁化可能顔料粒子は、対応する磁界の印加により、非固化コーティング中で磁性又は磁化可能顔料粒子を局所的に配向させた後、これらを固化させることによって、磁気誘導画像、デザイン、及び/又はパターンを生成することができる。これにより、特定の光学効果すなわち偽造に対する耐性が高い固定磁気誘導画像、デザイン、又はパターンが得られる。配向磁性又は磁化可能顔料粒子に基づくセキュリティ要素は、磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子又は当該粒子を含む対応するインク若しくは組成物並びに上記インク若しくは組成物の塗布及び塗布インク若しくは組成物中の上記顔料粒子の配向に用いられる特定の技術の両者が利用可能な場合にのみ生成可能である。
【0005】
[005]移動リング効果が効率的なセキュリティ要素として開発されている。移動リング効果は、上記光学効果層の傾斜角に応じて任意のx-y方向に移動するように見える漏斗、円錐、ボウル、円、楕円、及び半球等の物体の光学的錯覚像から成る。移動リング効果を生む方法については、例えば欧州特許出願公開第1 710 756 A1号、米国特許第8,343,615号、欧州特許出願公開第2 306 222 A1号、欧州特許出願公開第2 325 677 A2号、及び米国特許出願公開第2013/084411号に開示されている。
【0006】
[006]国際公開第2011/092502 A2号は、視覚の変化で見かけ上の移動リングを表示する移動リング像を生成する装置を開示している。開示の移動リング像は、軟磁化可能シートと、磁気軸がコーティング層の平面に垂直であるとともに上記軟磁化可能シートの下側に配設された球状磁石との組合せにより生成された磁界によって磁性又は磁化可能粒子の配向を可能とする装置の使用によって取得又は生成され得る。
【0007】
[007]従来技術の移動リング像は一般的に、唯一の回転又は固定磁石の磁界による磁性又は磁化可能粒子の整列によって生成される。唯一の磁石の磁力線は一般的に、比較的緩やかな屈曲すなわち低い曲率を呈しているため、磁性又は磁化可能粒子の配向の変化もOELの表面上で比較的緩やかである。さらに、単一の磁石のみが用いられる場合は、磁石からの距離の増加とともに磁界の強度が急激に低下する。このため、磁性又は磁化可能粒子の配向により極めて動的且つ明確に規定された特徴を得るのは難しく、リング縁部がぼやけた視覚効果となる可能性がある。
【0008】
[008]国際公開第2011/092502 A2号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、OELの傾斜に際して移動するループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。開示のOELは、軟磁化可能シートと、配向対象の磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング層の平面に対してNS軸が垂直となるように成形された球状永久磁石とを備える装置を用いて生成される。
【0009】
[009]国際公開第2014/108404 A2号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、OELの傾斜に際して移動するループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。さらに、国際公開第2014/108404 A2号は、ループ状体において、当該ループ状体に囲まれた中央領域の反射帯による突起の光学効果又は印象をさらにもたらすOELを開示している。開示の突起は、ループ状体に囲まれた中央領域に存在する半球等の3次元物体の印象を与える。
【0010】
[0010]国際公開第2014/108303 A1号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、1つの共通中央領域を囲み、視角に応じた見かけ上の運動を示す複数の入れ子になったループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。さらに、国際公開第2014/108303 A1号は、最も内側のループ状体に囲まれ、これにより規定された中央領域を部分的に満たす突起をさらに含むOELを開示している。開示の突起は、中央領域に存在する半球等の3次元物体の錯覚を与える。
【0011】
[0011]中国特許第104442055 B号及び中国実用新案第204566894 U号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を生成する装置を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、OELの傾斜に際して移動するループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。開示のOELは、第1の磁石と、磁気結合によって第1の磁石の傾斜磁気エリアを拡げる第2の磁石とを備える装置を用いて生成される。
【0012】
[0012]容易に確認可能であり、偽造者が利用可能な機器で大規模に製造することが難しく、非常に多くの考え得る形状及び形態で提供可能な人目を引く明るいループ状効果を良い品質で基板上に表示するセキュリティフィーチャが依然として求められている。
【発明の概要】
【0013】
[0013]したがって、本発明は、上述の従来技術の不備を克服することを目的とする。
【0014】
[0014]第1の態様において、本発明は、光学効果層(OEL)(x10)を基板(x20)上に生成するプロセス及びこれにより得られる光学効果層(OEL)を提供し、当該プロセスが、
i)非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む第1の状態の放射線硬化性コーティング組成物を基板(x20)表面に塗布するステップであり、上記第1の状態が液体状態である、ステップと、
ii)放射線硬化性コーティング組成物を磁気アセンブリ(x00)の磁界に曝露することにより、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させるステップであり、前記磁気アセンブリ(x00)が、
a)基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有するとともに、長さL1を有する第1の磁界発生装置(x30)と、
b)基板(x20)表面に対して実質的に垂直なNS磁気軸を有するとともに、長さL3を有する第2の磁界発生装置(x40)と、
c)長さL5を有する平坦な磁極片(x50)と、
を備え、
第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)が、同じ磁界方向を有し、
第1の磁界発生装置(x30)が、基板(x20)に対向するとともに磁極片(x50)の上に配設され、
第2の磁界発生装置(x40)が、環境に対向するとともに平坦な磁極片(x50)の下に配設され、
第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、第2の磁界発生装置(x40)の長さL3よりも小さく、
第1の磁界発生装置(x30)の長さL1が、平坦な磁極片(x50)の長さL5よりも小さく、
第2の磁界発生装置(x40)の長さL3が、磁極片(x50)の長さL5よりも小さい、ステップと、
iii)非球状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれらの採用された位置及び配向に固定するために、ステップii)の放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させて第2の状態とするステップと、
を含み、
光学効果層が、当該光学効果層(OEL)を含む基板の傾斜により移動及び回転する三日月の光学的印象を与える。
【0015】
[0015]別の態様において、本発明は、本明細書に記載のプロセスにより作成された光学効果層(OEL)を提供する。
【0016】
[0016]別の態様において、偽造若しくは不正に対するセキュリティ文書の保護又は装飾用途のための光学効果層(OEL)の使用が提供される。
【0017】
[0017]別の態様において、本発明は、本明細書に記載の1つ又は複数の光学効果層(OED)を備えるセキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を提供する。
【0018】
[0018]別の態様において、本発明は、本明細書に記載の光学効果層(OEL)(x10)を生成する本明細書に記載のような磁気アセンブリ(x00)及び本明細書に記載の基板(x20)上に光学効果層(OEL)(x10)を生成する上記磁気アセンブリ(x00)の使用を提供する。
【0019】
[0019]別の態様において、本発明は、本明細書に記載の光学効果層(OEL)(x10)を生成する本明細書に記載のような磁気アセンブリ(x00)であって、好ましくは回転磁気シリンダである転写装置に搭載されたホルダ(x01)中に配設された、磁気アセンブリ(x00)を提供する。
【0020】
[0020]別の態様において、本発明は、本明細書に記載のような基板上に本明細書に記載の光学効果層(OEL)を生成する印刷装置であって、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)のうちの少なくとも1つを備える、印刷装置を提供する。本明細書に記載の印刷装置は、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)のうちの少なくとも1つを備える回転磁気シリンダ又は本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)のうちの少なくとも1つを備える平台印刷ユニットを備える。
【0021】
[0021]別の態様において、本発明は、本明細書に記載のような基板上に本明細書に記載の光学効果層(OEL)を生成する本明細書に記載の印刷装置の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】光学効果層(OEL)(110)を基板(120)表面上に生成するための磁気アセンブリ(100)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(130)、特にディスク状又は正方形状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(140)、特にディスク状又は正方形状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(150)、特に平坦な正方形状の磁極片と、を備える、磁気アセンブリ(100)を概略的に示す図である。
図2】長さL21、中心厚さL19、及び縁部厚さL20を有するドーム状の蓋(102)と、長さL23及び厚さL22を有する底部ロック(103)と、長さL25及び厚さL24を有する任意選択としてのウェッジ104とを備えるホルダ(101)に囲まれた磁気アセンブリ(100)であって、a)第1の磁界発生装置(130)、特にディスク状又は正方形状の磁界発生装置と、b)第2の磁界発生装置(140)、特にディスク状又は正方形状の磁界発生装置と、c)平坦な磁極片(150)、特に平坦な正方形状の磁極片と、を備える、磁気アセンブリ(100)の断面を概略的に示す図である。
図3A】第1及び第2の磁界発生装置(130及び140)がディスク状の磁界発生装置である図1の磁気アセンブリ(100)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図3B】第1及び第2の磁界発生装置(130及び140)がディスク状の磁界発生装置である図1の磁気アセンブリ(100)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図3C】第1及び第2の磁界発生装置(130及び140)がディスク状の磁界発生装置である図1の磁気アセンブリ(100)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図3D】第1及び第2の磁界発生装置(130及び140)がディスク状の磁界発生装置である図1の磁気アセンブリ(100)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図3E】第1及び第2の磁界発生装置(130及び140)が正方形状の磁界発生装置である図1の磁気アセンブリ(100)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図4】光学効果層(OEL)(210)を基板(220)表面上に生成するための磁気アセンブリ(200)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(230)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(240)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(250)、特に平坦な正方形状又はディスク状の磁極片と、d)非磁性板(260)、特に正方形状の非磁性板と、を備える、磁気アセンブリ(200)を概略的に示す図である。
図5A図4に示す磁気アセンブリ(200)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図5B図4に示す磁気アセンブリ(200)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図5C図4に示す磁気アセンブリ(200)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図6】光学効果層(OEL)(310)を基板(320)表面上に生成するための磁気アセンブリ(300)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(330)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(340)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(350)、特に平坦な正方形状の磁極片と、d)非磁性板(360)、特に正方形状の非磁性板と、を備える、磁気アセンブリ(300)を概略的に示す図である。
図7A図6に示す磁気アセンブリ(300)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図7B図6に示す磁気アセンブリ(300)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図8】光学効果層(OEL)(410)を基板(420)表面上に生成するための磁気アセンブリ(400)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(430)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(440)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(450)、特に平坦な正方形状の磁極片と、d)長さL7を有する第2の平坦な磁極片(470)、特に平坦な正方形状の第2の磁極片と、を備える、磁気アセンブリ(400)を概略的に示す図である。
図9A図8に示す磁気アセンブリ(400)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図10】光学効果層(OEL)(510)を基板(520)表面上に生成するための磁気アセンブリ(500)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(530)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(540)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(550)、特に平坦な正方形状の磁極片と、d)非磁性板(560)、特に正方形状の非磁性板と、e)第2の平坦な磁極片(570)、特に平坦な正方形状の第2の磁極片と、を備える、磁気アセンブリ(500)を概略的に示す図である。
図11A図10に示す磁気アセンブリ(500)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図12】光学効果層(OEL)(610)を基板(620)表面上に生成するための磁気アセンブリ(600)であって、a)長さL1を有する第1の磁界発生装置(630)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)長さL3を有する第2の磁界発生装置(640)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)長さL5を有する平坦な磁極片(650)、特に平坦な正方形状の磁極片と、d)非磁性板(660)、特に正方形状の非磁性板と、e)彫刻されたしるしを備える磁化板(x80)、特に正方形状の磁化板と、を備える、磁気アセンブリ(600)を概略的に示す図である。
図13A図12に示す磁気アセンブリ(600)を用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図14】中国特許第104442055 B号及び中国実用新案第204566894 U号に係る、光学効果層(OEL)(710)を基板(720)表面上に生成する比較としての磁気アセンブリであって、a)第1の磁界発生装置(730)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)第2の磁界発生装置(740)、特にディスク状の磁界発生装置と、を備える、磁気アセンブリを概略的に示す図である。
図15A図14に示す磁気アセンブリを用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
図16】国際公開第2014/108303 A1号の図6dに係る、光学効果層(OEL)(810)を基板(820)表面上に生成する比較としての磁気アセンブリであって、a)第1の磁界発生装置(830)、特にディスク状の磁界発生装置と、b)第2の磁界発生装置(840)、特にディスク状の磁界発生装置と、c)U字状断面を有する平坦ではない磁極片(890)、特にディスク状の磁極片と、d)平坦な磁極片(891)、特に平坦なディスク状の磁極片と、を備える、磁気アセンブリを概略的に示す図である。
図17A図16に示す磁気アセンブリを用いて得られたOELを様々な視角で見た画像である。
【詳細な説明】
【0023】
定義
[0022]以下の定義を用いることによって、本明細書及び特許請求の範囲に記載の用語の意味を解釈するものとする。
【0024】
[0023]本明細書において、不定冠詞「a」は、1つ及び2つ以上を示し、必ずしもその指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0025】
[0024]本明細書において、用語「およそ(about)」は、対象とする量又は値が指定された特定の値又はその近傍の他の値であってもよいことを意味する。一般的に、ある値を示す用語「およそ」は、その値の±5%の範囲を示すことを意図している。一例として、表現「およそ100」は、100±5の範囲すなわち95~105の範囲を示す。一般的に、用語「およそ」を使用する場合は、本発明に係る類似の結果又は効果が指定値の±5%の範囲で得られることが予想され得る。
【0026】
[0025]用語「実質的に平行(substantially parallel)」は、平行整列からの逸脱が10°以下であることを表し、用語「実質的に垂直」は、垂直整列からの逸脱が10°以下であることを表す。
【0027】
[0026]本明細書において、用語「及び/又は(and/or)」は、上記群の要素のすべて又は1つだけが存在していてもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両者」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない可能性すなわち「AのみであってBではない」という可能性も網羅している。
【0028】
[0027]本明細書において、用語「備える(含む)(comprising)」は、非排他的且つオープンエンドであることを意図している。したがって、例えば化合物Aを含む湿し水は、A以外の化合物を含んでいてもよい。ただし、用語「備える(含む)」は、その特定の一実施形態として、「~から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「~から成る(consisting of)」というより限定的な意味も網羅するため、例えば「A、B、及び任意選択としてCを含む湿し水」は、A及びBから(本質的に)成っていてもよいし、A、B、及びCから(本質的に)成っていてもよい。
【0029】
[0028]用語「コーティング組成物(coating composition)」は、本発明の光学効果層(OEL)を固体基板上に形成可能であるとともに、印刷法によって優先的且つ非排他的に塗布可能な任意の組成物を表す。コーティング組成物は、少なくとも複数の非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダを含む。
【0030】
[0029]本明細書において、用語「光学効果層(optical effect layer:OEL)」は、少なくとも複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダを含み、非球状磁性又は磁化可能粒子の配向がバインダ内で固定又は停止(固定/停止)された層を示す。
【0031】
[0030]用語「磁気軸(magnetic axis)」は、磁石の対応するNS極を接続するとともに、上記両極を通って延びた仮想線を示す。この用語には、如何なる特定の磁界方向も含まない。
【0032】
[0031]用語「磁界方向(magnetic field direction)」は、磁石の外部でN極からS極へと向かう磁界線に沿った磁界ベクトルの方向を示す(Handbook of Physics,Springer 2002の463~464頁参照)。
【0033】
[0032]用語「硬化(curing)」は、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子がそれらの現在位置及び配向に固定/停止されて移動も回転もできなくなる状態すなわち硬化、固化、又は固体状態へと材料を変換する刺激に応答してコーティング組成物の粘度が高くなるプロセスを示すのに用いる。
【0034】
[0033]本明細書において「好適な」実施形態/特徴に言及する場合は、これら「好適な」実施形態/特徴の組合せについても、その組合せが技術的に有意である限り開示されているものと考えられる。
【0035】
[0034]本明細書において、用語「少なくとも(at least)」は、1つ又は2つ以上(例えば、1つ、2つ、又は3つ)を規定するものである。
【0036】
[0035]用語「セキュリティ文書(security document)」は、少なくとも1つのセキュリティフィーチャにより偽造又は不正に対して通例保護される文書を表す。セキュリティ文書の例としては、有価文書及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
[0036]用語「セキュリティフィーチャ(security feature)」は、認証目的で使用可能な画像、パターン、又は図形要素を示すのに用いる。
【0038】
[0037]本発明は、光学効果層(OEL)を基板上に生成する方法及びこれにより得られる光学効果層(OEL)であって、当該方法が、i)本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む第1の状態の放射線硬化性コーティング組成物を基板(x20)表面に塗布するステップを含む、方法を提供する。
【0039】
[0038]本明細書に記載の塗布ステップi)は、例えばローラ及びスプレー被覆プロセス等の被覆プロセス又は印刷プロセスにより実行されるようになっていてもよい。本明細書に記載の塗布ステップi)は、好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、及び凹版印刷(当技術分野においては銅版凹版印刷及び鋼製金型凹版印刷とも称する)から成る群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷から成る群から選択される印刷プロセスによって実行されるのが好ましい。
【0040】
[0039]本明細書に記載の基板表面に対する本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物の塗布(ステップi))の後、一部同時、又は同時に、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)の磁界に対する放射線硬化性コーティング組成物の曝露によって非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる(ステップii))ことにより、磁気アセンブリ(x00)により生成された磁力線に沿って非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を整列させる。
【0041】
[0040]本明細書に記載の磁界の印加により非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向/整列させるステップの後又は一部同時に、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向を固定又は停止する。このように特筆すべきこととして、放射線硬化性コーティング組成物は第1の状態すなわち液体又はペースト状態を有する必要があり、十分に湿潤又は柔軟であるため、放射線硬化性コーティング組成物中に分散した非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、磁界への曝露により自由に移動、回転、及び/又は配向可能である。また、第2の硬化(例えば、固体)状態も有する必要があり、この場合の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、それらの位置及び配向で固定又は停止される。
【0042】
[0041]以上から、光学効果層(OEL)を本明細書に記載の基板上に生成する方法は、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれらの採用された位置及び配向に固定するために、ステップii)の放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させて第2の状態とするステップiii)を含む。放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させるステップiii)は、本明細書に記載の磁界の印加により非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向/整列させるステップ(ステップii))の後又は一部同時に実行されるようになっていてもよい。放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させるステップiii)は、本明細書に記載の磁界の印加により非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向/整列させるステップ(ステップii))と一部同時に実行されるのが好ましい。「一部同時」によって、両ステップの一部が同時に実行される。すなわち、各ステップの実行タイミングが部分的に重なることになる。本明細書に記載の背景において、配向ステップii)と一部同時に硬化が実行される場合は、OELの完全又は部分的な硬化又は固化の前に顔料粒子が配向するように、配向後に硬化が有効となることが了解される必要がある。
【0043】
[0042]このように得られた光学効果層(OEL)は、当該光学効果層を含む基板の傾斜により移動及び回転する三日月の光学的印象を観察者に与える。
【0044】
[0043]放射線硬化性コーティング組成物の第1及び第2の状態は、ある種の放射線硬化性コーティング組成物を用いることによって提供される。例えば、放射線硬化性コーティング組成物における非球状磁性又は磁化可能顔料粒子以外の成分は、インク又はセキュリティ用途(例えば、紙幣印刷)に用いられるような放射線硬化性コーティング組成物の形態であってもよい。上述の第1及び第2の状態は、電磁放射線への曝露に応答して粘度が高くなる材料を用いることにより提供される。すなわち、流体のバインダ材料は、硬化又は凝固によって、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子がそれらの現在位置及び配向に固定されて、バインダ材料内で移動も回転もできなくなる第2の状態に変換される。
【0045】
[0044]当業者には既知の通り、基板等の表面上に塗布する放射線硬化性コーティング組成物に含まれる成分及び上記放射線硬化性コーティング組成物の物性は、放射線硬化性コーティング組成物の基板表面への移動に用いられるプロセスの要件を満たす必要がある。その結果、本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物に含まれるバインダ材料は通常、当技術分野において既知の材料から選定されるとともに、放射線硬化性コーティング組成物の塗布に用いられる被覆又は印刷プロセス及び選定された放射線硬化プロセスによって決まる。
【0046】
[0045]本明細書に記載の光学効果層(OEL)において、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、当該非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向を固定/停止する硬化バインダ材料を含む放射線硬化性コーティング組成物中に分散している。硬化バインダ材料は、200nm~2500nmに含まれる様々な波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。このように、バインダ材料は、少なくともその硬化又は固体状態(本明細書では第2の状態とも称する)において、200nm~2500nmすなわち通常「光学スペクトル」と称し、バインダ材料に含まれる硬化又は固体状態の粒子及びそれらの配向に応じた反射性がバインダ材料を通じて認識され得るように、電磁スペクトルの赤外、可視、及びUV部分を含む波長範囲内に含まれる様々な波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。硬化バインダ材料は、好ましくは200nm~800nm、より好ましくは400nm~700nmに含まれる様々な波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。本明細書において、用語「透明(transparent)」は、該当する(1つ又は複数の)波長において、OEL(血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は含まないが、OELのその他任意選択の成分があれば、それらをすべて含む)に存在する硬化バインダ材料の20μmの層に対する電磁放射線の透過率が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%であることを示す。これは、例えばDIN5036-3(1979-11)等の確立した試験方法に従って硬化バインダ材料(血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は含まず)の試験片の透過率を測定することによって決定可能である。OELが秘密のセキュリティフィーチャとして機能する場合、選択した非可視波長を含む各照明条件下においてOELが生成する(完全な)光学効果を検出するには通常、技術的な手段が必要となる。当該検出では、可視領域外(例えば、近UV領域)において入射放射線の波長が選択される必要がある。この場合、OELは、入射放射線に含まれる可視スペクトルの外側の選択波長に応答して発光する発光性顔料粒子を含むのが好ましい。電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分は、700~2500nm、400~700nm、及び200~400nmの波長範囲にそれぞれ略対応する。
【0047】
[0046]上述の通り、本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物は、当該放射線硬化性コーティング組成物の塗布に用いられる被覆又は印刷プロセス及び選定された硬化プロセスによって決まる。放射線硬化性コーティング組成物の硬化には、本明細書に記載のOELを備える物品の通常使用時に起こり得る(例えば、最大80℃の)単純な温度上昇では不可逆の化学反応を伴うのが好ましい。用語「硬化(curing)」又は「硬化性(curable)」は、塗布した放射線硬化性コーティング組成物中の少なくとも1つの成分が化学反応、架橋、又は重合によって開始材料よりも大きな分子量を有するポリマー材料に変化するプロセスを表す。放射線硬化では、硬化放射線への曝露により放射線硬化性コーティング組成物の粘度が瞬時に高くなり、顔料粒子のさらなる移動が抑えられ、結果的に磁気配向ステップ後の情報喪失が抑えられるため都合が良い。硬化ステップ(ステップiii))は、好ましくはUV可視光放射線硬化を含む放射線硬化又は電子ビーム放射線硬化、より好ましくはUV可視光放射線硬化によって実行される。
【0048】
[0047]したがって、本発明に適した放射線硬化性コーティング組成物としては、UV・可視光放射線(以下、UV・可視放射線と称する)又は電子ビーム放射線(以下、EB放射線と称する)によって硬化可能な放射線硬化性組成物が挙げられる。放射線硬化性組成物は、当技術分野において既知であり、SITA Technology Limitedと提携したJohn Wiley & Sonsが1996年に4巻を発行したC.Lowe、G.Webster、S.Kessel、及びI.McDonaldによる「Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints」シリーズ等の標準的な教科書に見られる。本発明の特に好適な一実施形態によれば、本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物は、UV・可視放射線硬化性コーティング組成物である。
【0049】
[0048]UV・可視放射線硬化性コーティング組成物は、ラジカル硬化性化合物及びカチオン硬化性化合物から成る群から選択される1つ又は複数の化合物を含むのが好ましい。本明細書に記載のUV・可視放射線硬化性コーティング組成物は、ハイブリッド系であってもよく、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物及び1つ又は複数のラジカル硬化性化合物の混合物を含む。カチオン硬化性化合物は、酸等のカチオン種を遊離させて硬化を開始することにより、モノマー及び/又はオリゴマーの反応及び/又は架橋によって放射線硬化性コーティング組成物を硬化させる1つ又は複数の光開始剤の放射による活性化を通常含むカチオン機構によって硬化する。ラジカル硬化性化合物は、1つ又は複数の光開始剤の放射によってラジカルを生成することにより重合を開始して放射線硬化性コーティング組成物を硬化させる活性化を通常含むフリーラジカル機構によって硬化する。本明細書に記載のUV・可視放射線硬化性コーティング組成物に含まれるバインダの作成に用いられるモノマー、オリゴマー、又はプレポリマーに応じて、異なる光開始剤を使用可能である。遊離基光開始剤の好適な例は、当業者に既知であり、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタル、α-アミノケトン、α-ヒドロキシケトン、ホスフィンオキシド、及びホスフィンオキシド誘導体のほか、これらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン光開始剤の好適な例は、当業者に既知であり、有機ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、オキソニウム(例えば、トリアリールオキソニウム塩)、及びスルホニウム塩(例えば、トリアリールスルホニウム塩)等のオニウム塩のほか、これらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な光開始剤の他の例は、G.Bradleyにより編集され、SITA Technology Limitedと提携したJohn Wiley & Sonsが1998年に発行したJ.V.Crivello及びK.Dietlikerによる「Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints」第3巻の「Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Polymerization」第2版等の標準的な教科書に見られる。また、効率的な硬化を実現するため、1つ又は複数の光開始剤と併せて増感剤を含むのが好都合と考えられる。好適な光増感剤の一般的な例としては、イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。UV・可視放射線硬化性コーティング組成物に含まれる1つ又は複数の光開始剤は、好ましくはおよそ0.1重量%~およそ20重量%、より好ましくはおよそ1重量%~およそ15重量%の総量で存在し、重量パーセントは、UV・可視放射線硬化性コーティング組成物の総重量に基づく。
【0050】
[0049]本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物は、1つ若しくは複数のマーカ物質若しくは追跡用添加物並びに/又は磁性材料(本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子とは異なる)、発光材料、導電材料、及び赤外線吸収材料から成る群から選択される1つ若しくは複数の機械可読材料をさらに含んでいてもよい。本明細書において、用語「機械可読材料」は、肉眼では確認できない少なくとも1つの特別な特性を示し、ある層に含めることによって、特定の認証用機器の使用により当該層又は当該層を含む物品を認証する方法を提供可能な材料を表す。
【0051】
[0050]本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、及び有機色素から成る群から選択される1つ若しくは複数の着色成分並びに/又は1つ若しくは複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。後者としては、粘度(例えば、溶媒、増粘剤、及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス、オイル)、UV安定性(光安定剤)、密着性、帯電防止特性、保存性(重合防止剤)等の放射線硬化性コーティング組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、当該添加剤の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲であるいわゆるナノ材料等、当技術分野において既知の量及び形態で放射線硬化性コーティング組成物中に存在していてもよい。
【0052】
[0051]本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物は、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む。非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、好ましくはおよそ2重量%~およそ40重量%、より好ましくはおよそ4重量%~およそ30重量%の量だけ存在する。この重量百分率は、バインダ材料、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子、及び放射線硬化性コーティング組成物のその他任意選択の成分を含む放射線硬化性コーティング組成物の総重量に基づく。
【0053】
[0052]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、形状が非球状であることから、硬化又は固化バインダ材料の少なくとも一部が透明である入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有するように規定されている。本明細書において、用語「非等方的な反射性(non-isotropic reflectivity)」は、第1の角度からの入射放射線が粒子により特定の(観察)方向(第2の角度)に反射される割合が粒子の配向の関数であること、つまり、第1の角度に対する粒子の配向の変化に応じて観察方向への反射の大きさが異なり得ることを示す。さらに好ましいこととして、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、粒子の配向の変化によって当該粒子による反射が特定の方向に変化するように、好ましくはおよそ200~およそ2500nm、より好ましくはおよそ400~およそ700nmの波長範囲の一部又は全部における入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有する。当業者には既知の通り、本明細書に記載の磁性又は磁化可能顔料粒子は、すべての視角について同じ色を示す従来の顔料粒子と異なり、上述の通り非等方的な反射性を示す。
【0054】
[0053]非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、扁長若しくは扁平な楕円体状、血小板状、若しくは針状の顔料粒子、又はこれらの2つ以上の混合物であるのが好ましく、血小板状の粒子であるのがさらに好ましい。
【0055】
[0054]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の好適な例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ガドリニウム(Gd)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される磁性金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、及びこれらの2つ以上の混合物の磁性合金、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、及びこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物、並びにこれらの2つ以上の混合物を含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。金属、合金、及び酸化物に関する用語「磁性(magnetic)」は、強磁性又はフェリ磁性金属、合金、及び酸化物を対象とする。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物は、純粋又は混合酸化物であってもよい。磁性酸化物の例としては、赤鉄鉱(Fe)、磁鉄鉱(Fe)、二酸化クロム(CrO)、磁性フェライト(MFe)、磁性スピネル(MR)、磁性ヘキサフェライト(MFe1219)、磁性オルソフェライト(RFeO)、磁性ガーネット(M(AO)等の鉄酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、Mは2価、Rは3価、Aは4価の金属を表す。
【0056】
[0055]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ガドリニウム(Gd)、又はニッケル(Ni)等の磁性金属及び鉄、コバルト、又はニッケルの磁性合金のうちの1つ又は複数で構成された磁気層Mを含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。上記血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子は、1つ又は複数の別の層を含む多層構造であってもよい。1つ又は複数の別の層は、好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、硫化亜鉛(ZnS)、及び酸化アルミニウム(Al)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、より好ましくは二酸化ケイ素(SiO)で独立して構成された層A、金属及び金属合金、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金、より好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、さらに好ましくはアルミニウム(Al)で独立して構成された層B、或いは上述のような1つ又は複数の層A並びに上述のような1つ又は複数の層Bの組合せである。上述の多層構造である血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の一般的な例としては、A/M多層構造、A/M/A多層構造、A/M/B多層構造、A/B/M/A多層構造、A/B/M/B多層構造、A/B/M/B/A多層構造、B/M多層構造、B/M/B多層構造、B/A/M/A多層構造、B/A/M/B多層構造、B/A/M/B/A多層構造が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、層A、磁気層M、及び層Bは、上述の層から選定される。
【0057】
[0056]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部は、非球状光学可変磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子並びに/又は光学可変特性を持たない非球状磁性顔料粒子若しくは磁化可能顔料粒子で構成されていてもよい。本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部は、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子によって構成されているのが好ましい。非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の変色特性によってもたらされる公然のセキュリティフィーチャは、本明細書に記載の非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子を含むインク、放射線硬化性コーティング組成物、コーティング、又は層を有する物品又はセキュリティ分を人間の感覚のみで容易に検出、認識、及び/又はその考え得る偽造品から識別可能であるが、これに加えて、血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の光学特性をOEL認識用の機械可読ツールとして使用するようにしてもよい。したがって、顔料粒子の光学(例えば、スペクトル)特性を解析する認証プロセスにおいては、秘密又は準秘密のセキュリティフィーチャとして、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の光学特性を同時に使用するようにしてもよい。OELを生成する放射線硬化性コーティング組成物に非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子を使用すると、OELの機密書類用途におけるセキュリティフィーチャとしての意義が高くなる。このような材料(すなわち、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子)は、機密書類印刷業のためのものであって、一般には市販されていないためである。
【0058】
[0057]さらに、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、その磁性により機械可読であるため、これらの顔料粒子を含む本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物で構成されたコーティング又は層は、例えば特定の磁気検出器により検出されるようになっていてもよい。したがって、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む放射線硬化性コーティング組成物は、セキュリティ文書の秘密又は準秘密のセキュリティ要素(認証ツール)として使用可能である。
【0059】
[0058]上述の通り、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、少なくとも一部が非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子によって構成されているのが好ましい。これらは、非球状磁性薄膜干渉顔料粒子、非球状磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む非球状干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択可能であるのがより好ましい。
【0060】
[0059]磁性薄膜干渉顔料粒子については、当業者に既知であって、例えば米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250 A2号、欧州特許第0 686 675 B1号、国際公開第2003/000801 A2号、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833 A1号、欧州特許出願公開第2 402 401 A1号、及びこれらの引用文献に開示されている。磁性薄膜干渉顔料粒子は、5層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は6層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は7層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子を含んでいるのが好ましい。
【0061】
[0060]好ましい5層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成り、反射体及び/又は吸収体が磁性層でもあり、好ましくは反射体及び/又は吸収体が、ニッケル、鉄、及び/若しくはコバルト、ニッケル、鉄、及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁気層である。
【0062】
[0061]好ましい6層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0063】
[0062]好ましい7層ファブリペロー多層構造は、米国特許第4,838,648号に開示されているような吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射対/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0064】
[0063]本明細書に記載の反射体層は、金属及び金属合金から成る群から選択され、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金から成る群から選択され、より好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択され、さらに好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択される1つ又は複数の材料、なお好ましくはアルミニウム(Al)で独立して構成されているのが好ましい。誘電体層は、好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化セリウム(CeF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化アルミニウムナトリウム(例えば、NaAlF)、フッ化ネオジム(NdF)、フッ化サマリウム(SmF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)等の金属酸化物から成る群から選択され、より好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)及び二酸化ケイ素(SiO)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、なお好ましくはフッ化マグネシウム(MgF)で独立して構成されている。吸収体層は、好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、及び金属合金から成る群から選択され、より好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、及び金属合金から成る群から選択され、さらに好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの金属合金から成る群から選択される1つ又は複数の材料で独立して構成されている。磁性体層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含むのが好ましい。7層ファブリペロー構造を含む磁性薄膜干渉顔料粒子が好ましい場合は、磁性薄膜干渉顔料粒子がCr/MgF/Al/M/Al/MgF/Cr多層構造から成る7層ファブリペロー吸収体/誘電体/反射対/磁性体/反射対/誘電体/吸収体の多層構造を有するのが特に好ましく、Mは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁気層である。
【0065】
[0064]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は、人間の健康及び環境に対して安全と考えられ、例えば5層ファブリペロー多層構造、6層ファブリペロー多層構造、及び7層ファブリペロー多層構造に基づく多層顔料粒子であってもよく、上記顔料粒子は、およそ40重量%~およそ90重量%の鉄、およそ10重量%~およそ50重量%のクロム、及びおよそ0重量%~およそ30重量%のアルミニウムを含む実質的にニッケルを含まない組成の磁性合金を含む1つ又は複数の磁気層を備える。人間の健康及び環境に対して安全と考えられる多層顔料粒子の一般的な例は、欧州特許出願公開第2 402 401 A1号に見られるため、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0066】
[0065]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は通常、ウェブ上への異なる所要層の従来堆積技術によって製造される。例えば物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、又は電解析出によって所望数の層を堆積させた後は、好適な溶媒中での剥離層の溶解又はウェブからの材料の剥離によって層スタックをウェブから除去する。そして、このように得られた材料を粉砕することにより血小板状の顔料粒子が得られるが、これは、研削、ミル加工(例えば、ジェットミル加工プロセス等)、又は任意の好適な方法でさらに処理して所要サイズの顔料粒子を得る必要がある。得られる製品は、縁部が破砕され、形状が不規則で、アスペクト比が異なる平らな血小板状顔料粒子から成る。好適な血小板状磁性薄膜干渉顔料粒子の作成に関する詳細については、例えば欧州特許出願公開第1 710 756 A1号及び欧州特許出願公開第1 666 546 A1号に見られるが、これらを本明細書に援用する。
【0067】
[0066]光学可変特性を示す好適な磁性コレステリック液晶顔料粒子としては、磁性単層コレステリック液晶顔料粒子及び磁性多層コレステリック液晶顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。このような顔料については、例えば国際公開第2006/063926 A1号、米国特許第6,582,781号、及び米国特許第6,531,221号に開示されている。国際公開第2006/063926 A1号は、高い輝度及び変色特性のほか、磁化可能性等の特定の特性を有する単層及び当該単層から得られた顔料粒子を開示している。この開示の単層及び当該単層の粉砕により得られた顔料は、3次元架橋したコレステリック液晶混合物及び磁性ナノ粒子を含む。米国特許第6,582,781号及び米国特許第6,410,130号は、配列がA/B/Aのコレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A及びAは、同じであってもよいし異なっていてもよく、それぞれ少なくとも1つのコレステリック層を含む。Bは、層A及びAから送られた光の全部又は一部を吸収するとともに磁気特性を付与する中間層である。米国特許第6,531,221号は、配列がA/Bであり、任意選択としてCを含む血小板状のコレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A及びCは、磁気特性を付与する顔料粒子を含む吸収層であり、Bはコレステリック層である。
【0068】
[0067]1つ又は複数の磁性材料を含む好適な干渉被覆顔料としては、1つ又は複数の層で被覆されたコアから成る群から選択される基板から成る構造が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、上記コア又は1つ若しくは複数の層の少なくとも一方は、磁性を有する。例えば、好適な干渉被覆顔料は、上記のような磁性材料で構成されたコアであって、1つ又は複数の金属酸化物で構成された1つ又は複数の層で被覆された、コアを含むか、合成又は天然雲母、層状ケイ酸塩(例えば、タルク、カオリン、及び絹雲母)、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、グラファイト、及びこれらの2つ以上の混合物で構成されたコアから成る構造を有する。さらに、着色層等の1つ又は複数の別の層が存在していてもよい。
【0069】
[0068]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子は、放射線硬化性コーティング組成物に生じ得る任意の劣化に対する保護及び/又は放射線硬化性コーティング組成物への組み込みの容易化のために表面処理されていてもよく、通常は、腐食防止剤及び/又は湿潤剤が用いられるようになっていてもよい。
【0070】
[0069]本明細書に記載の光学効果層(OEL)(x10)を本明細書に記載の基板(x20)上に生成するプロセスは、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)の磁界に放射線硬化性皮膜組成物を曝露するステップii)を含む。また、本明細書には、本明細書に記載のような硬化した放射線硬化性コーティング組成物において配向した非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む本明細書に記載のようなOEL(x10)を本明細書に記載の基板(x20)上に生成するための磁気アセンブリ(x00)及び当該磁気アセンブリ(x00)を用いたプロセスを記載している。
【0071】
[0070]磁気アセンブリ(x00)は、a)本明細書に記載の長さL1を有する第1の磁界発生装置(x30)と、b)本明細書に記載の長さL3を有する第2の磁界発生装置(x40)と、c)本明細書に記載の長さL5を有する平坦な磁極片(x50)とを備える。
【0072】
[0071]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、回転磁気シリンダ又は磁気配向印刷ユニットである転写装置に搭載されたホルダ(x01)に配設又は包含されている。本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、回転磁気シリンダ、特に、回転磁気シリンダの円周方向溝又は横方向溝に搭載された本明細書に記載のホルダ(x01)に配設又は包含されているのが好ましい。
【0073】
[0072]図2に示すように、本明細書に記載の光学効果層を生成するための磁気アセンブリ(x00)は、当該磁気アセンブリ(x00)を汚染及び機械的損傷から保護するとともにOEL(x10)を有する基板(x20)を支持する滑らかな表面を与えるドーム状の蓋(x02)(すなわち、湾曲面を有する蓋)を備える本明細書に記載のホルダ(x01)に配設又は包含されているのが好ましい。ホルダ(101)及びドーム状の蓋(102)は、長さ及び幅L21、ドーム状の蓋(102)の中心における厚さL19、並びにドーム状の蓋(102)の縁部における厚さL20を有する。ドーム状の蓋(102)の上面は、曲率が半径(L-R)の円の曲率である湾曲面である。ドーム状の蓋(102)の外部の上面は、本明細書に記載の転写装置の外部表面に対して、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダの外部表面に対してシームレスに適合しており、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)が配設又は包含されている。ドーム状の蓋(x02)は、磁気アセンブリ(x00)とOEL(x10)を有する基板(x20)との間の分離要素として機能する。図2に示すように、ドーム状の蓋(102)は、第1の磁界発生装置(130)を第2の磁界発生装置(140)及び平坦な磁極片(150)と位置合わせして固定する凹部をさらに備えていてもよい。
【0074】
[0073]本明細書に記載のホルダ(x01)は、磁気アセンブリ(x00)を汚染及び機械的損傷から保護する底部ロック(x03)を備える。底部ロック(103)は、長さ及び幅L23並びに厚さL24を有する。底部ロック(x03)は、ドーム状の蓋(x02)の底面に挿入されて、ドーム状の蓋(x02)の底面と同一平面になっていてもよい。
【0075】
[0074]本明細書に記載のホルダ(x01)のドーム状の蓋(x02)及び底部ロック(x03)は、非磁性板(x60)に関して本明細書に記載の非磁性材料等、低導電性材料、非導電性材料、及びこれらの混合物から成る同じ群から選択される1つ又は複数の非磁性材料で独立して構成されている。
【0076】
[0075]本明細書に記載のホルダ(x01)は、磁気アセンブリ(x00)を支持するとともに、磁気アセンブリ(x00)の上面とOEL(110)を有する基板(x20)との間の距離A1を変化させる非磁性ウェッジ(x04)をさらに備えていてもよい。非磁性ウェッジ(104)は、長さL25及び厚さL24を有する。本明細書に記載の非磁性ウェッジ(x04)は、非磁性板(x60)に関して本明細書に記載の非磁性材料等、低導電性材料、非導電性材料、及びこれらの混合物から成る同じ群から選択される1つ又は複数の非磁性材料で構成されている。ドーム状の蓋(x02)及び非磁性ウェッジ(x04)は、磁気アセンブリ(x00)とドーム状の蓋(x02)に接触した基板(x20)との間に適当な距離を設けるのが好都合である。
【0077】
[0076]本明細書に記載のホルダ(x01)は、第2の磁界発生装置(x40)を第1の磁界発生装置(x30)及び平坦な磁極片(x50)と位置合わせして固定する非磁性マトリクス(x41)をさらに備えていてもよい。非磁性マトリクス(x41)は通常、第2の磁界発生装置(x40)を受容するのに適したボイドであって、好ましくは第2の磁界発生装置(x40)と同じ形状及び同じ寸法を有する、ボイドを備える。本明細書に記載の非磁性マトリクス(x41)は、非磁性板(x60)に関して本明細書に記載の非磁性材料等、低導電性材料、非導電性材料、及びこれらの混合物から成る同じ群から選択される1つ又は複数の非磁性材料で構成されている。
【0078】
[0077]第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)はそれぞれ、NS磁気軸が基板(x20)表面と実質的に垂直であり、上記第1の磁界発生装置(x30)及び上記第2の磁界発生装置(x40)はいずれも、同じ磁界方向を有する。すなわち、上記第1の磁界発生装置(x30)及び上記第2の磁界発生装置(x40)がいずれも、(図1図6に示すように)それらのN極が基板(x20)表面方向を向くか、又は、それらのS極が基板(x20)表面方向を向く。
【0079】
[0078]少なくとも第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)が存在することから、第1の磁界発生装置(x30)は、ゼロではない距離A2で第2の磁界発生装置(x40)の上に配設されている(すなわち、第1及び第2の磁界発生装置(x30、x40)は、直接接触していない)。図1図6に示すように、第1の磁界発生装置(x30)が基板(x20)表面に対向し、第2の磁界発生装置(x40)が環境に対向している。
【0080】
[0079]平坦な磁極片(x50)が第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に配設されていることから、上記第1の磁界発生装置(x30)は、上記第2の磁界発生装置(x40)と直接接触していない。第1の磁界発生装置(x30)の下面と第2の磁界発生装置(x40)の上面との間の距離A2は、好ましくはおよそ1~およそ15mmであり、より好ましくはおよそ1~およそ10mmである。
【0081】
[0080]第1の磁界発生装置(x30)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)に対向する基板(x20)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0082】
[0081]第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、如何なる形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。第2の磁界発生装置(x40)は、リング状磁界発生装置等のループ状磁界発生装置であってもよいし、中実の磁界発生装置(すなわち、材料のない中央エリアが存在しない磁界発生装置)であってもよい。磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、好ましくはディスクの形状を独立して有するか(「ディスク状」の磁界発生装置と称する)、又は、直方体の形状、好ましくは正方形の形状を独立して有する(「正方形状」の磁界発生装置と称する)。第1の磁界発生装置(x30)及び/又は第2の磁界発生装置(x40)は、ディスク状の磁界発生装置又は正方形状の磁界発生装置であるのが好ましい。好適な一実施形態によれば、第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、ディスク状の磁界発生装置である。別の好適な実施形態によれば、第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、正方形状の磁界発生装置である。ディスク状の磁界発生装置(x30、x40)を含む実施形態の場合、本明細書に記載の長さL1及びL3は、上記ディスク状装置の直径を表すとともに、これに対応する。正方形状の磁界発生装置(x30、x40)を含む実施形態の場合、本明細書に記載の長さL1及びL3は、上記正方形状装置の幅を表すとともに、これに対応する。
【0083】
[0082]第1の磁界発生装置(x30)は、第2の磁界発生装置(x40)の長さL3(ディスク状の磁界発生装置の直径L3又は正方形状の磁界発生装置の場合の幅L3)よりも小さな長さL1(ディスク状の磁界発生装置の直径L1又は正方形状の磁界発生装置の場合の幅L1)を有する。
【0084】
[0083]本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)は、本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)と対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。機械的平衡を理由として、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)は、本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)と対称に配設されているのが好ましい。言い換えると、本明細書に記載の第1及び第2の磁界発生装置(x30、x40)は、中心が位置合わせされている。
【0085】
[0084]好適な一実施形態によれば、機械的平衡を理由として、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、ディスク状の磁界発生装置である第1の磁界発生装置(x30)及びディスク状の磁界発生装置である第2の磁界発生装置(x40)を備え、第1のディスク状の磁界発生装置(x30)が第2のディスク状の磁界発生装置(x40)の上に対称に配設されている。すなわち、第1のディスク状の磁界発生装置(x30)の原点又は中心(すなわち、直径が交差する点)が第2のディスク状の磁界発生装置(x40)の原点と位置合わせされている(図1図6参照)。
【0086】
[0085]別の好適な実施形態によれば、機械的平衡を理由として、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、正方形状の磁界発生装置である第1の磁界発生装置(x30)及び正方形状の磁界発生装置である第2の磁界発生装置(x40)を備え、第1の正方形状の磁界発生装置(x30)が第2の正方形状の磁界発生装置(x40)の上に対称に配設されている。すなわち、第1の正方形状の磁界発生装置(x30)の原点又は中心(すなわち、対角線が交差する点)が第2の正方形状の磁界発生装置(x40)の原点と位置合わせされている(図1参照)。
【0087】
[0086]第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、高保磁力材料(強磁性材料とも称する)で独立して構成されているのが好ましい。好適な高保磁力材料は、エネルギー積の最大値(BH)maxが少なくとも20kJ/m、好ましくは少なくとも50 kJ/m、より好ましくは少なくとも100 kJ/m、さらに好ましくは少なくとも200 kJ/mの材料である。これらは、例えばアルニコ5(R1-1-1)、アルニコ5DG(R1-1-2)、アルニコ5-7(R1-1-3)、アルニコ6(R1-1-4)、アルニコ8(R1-1-5)、アルニコ8HC(R1-1-7)、及びアルニコ9(R1-1-6)等のアルニコ、式MFe1219のヘキサフェライト(例えば、ストロンチウムヘキサフェライト(SrO6Fe)又はバリウムヘキサフェライト(BaO6Fe)、式MFeのハードフェライト(例えば、コバルトフェライト(CoFe)又は磁鉄鉱(Fe))(ただし、Mは二価金属イオン)、セラミック8(SI-1-5)から成る群から選択される1つ又は複数の焼結又はポリマー接合磁性材料、RECo(RE=Sm又はPr)、RETM17(RE=Sm、TM=Fe、Cu、Co、Zr、Hf)、RETM14B(RE=Nd、Pr、Dy、TM=Fe、Co)から成る群から選択される希土類磁性材料、Fe、Cr、Coの異方性合金、PtCo、MnAlC、REコバルト5/16、REコバルト14から成る群から選択される材料で構成されているのが好ましい。第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)の高保磁力材料は、好ましくは希土類磁性材料から成る群、より好ましくはNdFe14B及びSmCoから成る群から選択されるのが好ましい。特に好ましいのは、ストロンチウムヘキサフェライト(SrFe1219)又はネオジム/鉄/ホウ素(NdFe14B)粉末等の永久磁石充填剤をプラスチック系又はゴム系マトリクスに含む加工が容易な永久磁石複合材である。
【0088】
[0087]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)を備える。「平坦」によって、上記磁極片がその表面の外側に延びた突起も突出部も備えていないこと、すなわち、上記磁極片の表面の外側には突起も突出部も延びていないことが意図される。図1図6が平坦な磁極片(x50)を備える磁気アセンブリ(x00)を示す一方、比較としての図8は、平坦ではない磁極片(x90)、特に窪み及びU字状断面を有する磁極片、並びに平坦な磁極片(x91)を備える磁気アセンブリを示している。
【0089】
[0088]本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)は、第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に配設されている。言い換えると、第1の磁界発生装置(x30)が平坦な磁極片(x50)の上に配設され、第2の磁界発生装置(x40)が平坦な磁極片(x50)の下に配設されている。平坦な磁極片(x50)は、第1及び第2の磁界発生装置(x30、x40)と直接接触していてもよいし、第1及び第2の磁界発生装置(x30、x40)から分離されていてもよい。
【0090】
[0089]磁極片は、高い透磁率、好ましくはおよそ2~およそ1,000,000N・A-2(ニュートン/平方アンペア)、より好ましくはおよそ5~およそ50,000N・A-2、さらに好ましくはおよそ10~およそ10,000N・A-2の透磁率を有する材料で構成された構造を示す。磁極片は、磁石で発生した磁界の指向に役立つ。本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)は、磁化可能粒子が分散した鉄又はプラスチック材料により構成されていてもよい。本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)は、鉄で構成されているのが好ましい。
【0091】
[0090]平坦な磁極片(x50)は、中実状の平坦な磁極片であり、より好ましくは、平坦なディスク状の磁極片又は平坦な正方形状の磁極片である。
【0092】
[0091]本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)は、第2の磁界発生装置(x40)の長さL3よりも大きな長さL5を有する。平坦なディスク状の磁極片(x50)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL5は、上記磁極片(x50)の直径を表すとともに、これに対応する。平坦な正方形状の磁極片(x50)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL5は、上記磁極片の幅を表すとともに、これに対応する。
【0093】
[0092]平坦な磁極片(x50)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)及び本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)と対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。機械的平衡及び設計目的を理由として、平坦な磁極片(x50)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)及び本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)と対称に配設されているのが好ましい。
【0094】
[0093]図1に示す一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(100)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(130)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(130)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(140)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(140)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(150)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片(150)と、を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(130、140)のNS磁気軸が基板(120)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(130、140)のN極が基板(120)側を向いており、第1のディスク状の磁界発生装置(130)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(140)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(140)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(150)の直径(L5)よりも小さく、第1のディスク状の磁界発生装置(130)が平坦な正方形状の磁極片(150)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の磁極片(150)が第2のディスク状の磁界発生装置(140)に直接接触して、その上に配設されており、第1のディスク状の磁界発生装置(130)、第2のディスク状の磁界発生装置(140)、及び平坦な正方形状の磁極片(150)の原点(すなわち、直径が交差する点)が位置合わせされている。第1のディスク状の磁界発生装置(130)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(100)に対向する基板(120)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0095】
[0094]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、非磁性板(x60)をさらに備えていてもよい。
【0096】
[0095]本明細書に記載の非磁性板(x60)は、第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間のスペーサとして作用する。本明細書に記載の非磁性板(x60)は、第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に配設されている。本明細書に記載の非磁性板(x60)は、平坦な磁極片(x50)の下に配設されていてもよいし(例えば、図4参照)、平坦な磁極片(x50)の上に配設されていてもよい(例えば、図3参照)。
【0097】
[0096]本明細書に記載の非磁性板(x60)は、独立1つ又は複数の非磁性材料で独立して構成されている。非磁性材料は、例えば産業用プラスチック及びポリマー、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、及びオーステナイト鋼(すなわち、非磁性鋼)等、低導電性材料、非導電性材料、及びこれらの混合物から成る群から選択されるのが好ましい。産業用プラスチック及びポリマーとしては、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)とその誘導体であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、コポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー、フッ素化及び過フッ素化ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、並びに液晶ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい材料は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、POM(ポリオキシメチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン(Nylon)(登録商標)(ポリアミド)、及びPPSである。
【0098】
[0097]本明細書に記載の非磁性板(x60)は、如何なる形状であってもよい。本明細書に記載の非磁性板(x60)は、好ましくはディスク状の非磁性板又は正方形状の非磁性板であり、より好ましくは正方形状の非磁性板である。
【0099】
[0098]本明細書に記載の非磁性板(x60)は、長さL7を有する。ディスク状の非磁性板(x60)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL7は、上記非磁性板の直径を表すとともに、これに対応する。正方形状の非磁性板(x60)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL7は、上記非磁性板の幅を表すとともに、これに対応する。
【0100】
[0099]好適な一実施形態によれば、機械的平衡を理由として、非磁性板(x60)の長さL7(ディスク状の非磁性板の場合の直径L7、正方形状の非磁性板の場合の幅L7)は、平坦な磁極片(x50)の長さL5と同じである。
【0101】
[00100]非磁性板(x60)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、及び本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)と対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。機械的平衡を理由として、非磁性板(x60)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、及び本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)と対称に配設されているのが好ましい。
【0102】
[00101]図4に示す一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(200)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(230)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(230)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(240)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(240)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(250)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片又は平坦なディスク状の磁極片(250)と、d)本明細書に記載の非磁性板(260)、好ましくは正方形状の非磁性板(260)と、を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(230、240)のNS磁気軸が基板(220)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(230、240)のN極が基板(220)側を向いており、第1のディスク状の磁界発生装置(230)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(240)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(240)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(250)の幅(L5)又はディスク状の磁極片(250)の直径(L5)よりも小さく、平坦な正方形状の磁極片(250)の幅(L5)又はディスク状の磁極片(250)の直径(L5)が正方形状の非磁性板(260)の幅(L7)と同じであり、第1のディスク状の磁界発生装置(230)が平坦な正方形状の磁極片(250)又は平坦なディスク状の磁極片(250)に直接接触して、その上に配設されており、平坦なディスク状の磁極片又は平坦な正方形状の磁極片(250)が正方形状の非磁性板(260)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の非磁性板(260)が第2のディスク状の磁界発生装置(240)に直接接触して、その上に配設されており、第1のディスク状の磁界発生装置(230)、第2のディスク状の磁界発生装置(240)、平坦な正方形状の磁極片(250)若しくはディスク状の磁極片(250)、並びに正方形状の非磁性板(260)の原点が位置合わせされている。第1のディスク状の磁界発生装置(230)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(200)に対向する基板(220)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0103】
[00102]図6に示す別の実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(300)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(330)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(330)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(340)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(340)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(350)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片(350)と、d)本明細書に記載の非磁性板(360)、好ましくは正方形状の非磁性板(360)と、を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(330、340)のNS磁気軸が基板(320)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(330、340)のN極が基板(320)側を向いており、第1のディスク状の磁界発生装置(330)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(340)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(340)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(350)の幅(L5)よりも小さく、平坦な正方形状の磁極片(350)の幅(L5)が正方形状の非磁性板(360)の幅(L7)と同じであり、第1のディスク状の磁界発生装置(330)が正方形状の非磁性板(360)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の非磁性板(360)が平坦な正方形状の磁極片(350)に直接接触して、その上に配設されており、平坦な正方形状の磁極片(350)が第2のディスク状の磁界発生装置(340)に直接接触して、その上に配設されており、第1のディスク状の磁界発生装置(330)、第2のディスク状の磁界発生装置(340)、平坦な正方形状の磁極片(350)、及び正方形状の非磁性板(360)の原点が位置合わせされている。第1のディスク状の磁界発生装置(330)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(300)に対向する基板(320)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0104】
[00103]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、第2の平坦な磁極片(x70)をさらに備えていてもよい。本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(x70)は、第2の磁界発生装置(x40)の下に配設されることにより、環境に対向する(図8及び図10参照)。
【0105】
[00104]第2の平坦な磁極片(x70)は、中実状の平坦な磁極片であり、より好ましくは平坦なディスク状の磁極片又は平坦な正方形状の磁極片であり、さらに好ましくは平坦な磁極片(x50)と同じ形状を有する。
【0106】
[00105]第2の平坦な磁極片(x70)は、平坦な磁極片(x50)に関して本明細書に記載するような透磁率の高い材料で構成された構造である。本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(x70)は、鉄で構成されているのが好ましい。
【0107】
[00106]本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(x70)は、長さL9を有する。第2の平坦なディスク状の磁極片(x70)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL9は、上記第2の平坦な磁極片(x70)の直径を表すとともに、これに対応する。第2の平坦な正方形状の磁極片(x70)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL9は、上記第2の平坦な磁極片の幅を表すとともに、これに対応する。好適な一実施形態によれば、機械的平衡及び設計目的を理由として、第2の平坦な磁極片(x70)の長さL9は、平坦な磁極片(x50)の長さL5と同じである。
【0108】
[00107]第2の平坦な磁極片(x70)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、及び本明細書に記載の非磁性板(x60)(存在する場合)と対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。機械的平衡を理由として、第2の平坦な磁極片(x70)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、及び本明細書に記載の非磁性板(x60)(存在する場合)と対称に配設されているのが好ましい。
【0109】
[00108]図8に示す一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(400)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(430)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(430)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(440)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(440)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(450)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片(450)と、d)本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(470)、好ましくは第2の平坦な正方形状の磁極片(470)と、を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(430、440)のNS磁気軸が基板(420)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(430、440)のN極が基板(420)側を向いており、第1のディスク状の磁界発生装置(430)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(440)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(440)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(450)の幅(L5)よりも小さく、平坦な正方形状の磁極片(450)の幅(L5)が第2の平坦な正方形状の磁極片(470)の幅(L7)と同じであり、第1のディスク状の磁界発生装置(430)が平坦な正方形状の磁極片(450)に直接接触して、その上に配設されており、平坦な正方形状の磁極片(450)が第2のディスク状の磁界発生装置(440)に直接接触して、その上に配設されており、第2のディスク状の磁界発生装置(440)が第2の平坦な正方形状の磁極片(470)に直接接触して、その上に配設されており、第1のディスク状の磁界発生装置(430)、第2のディスク状の磁界発生装置(440)、平坦な正方形状の磁極片(450)、及び第2の正方形状の磁極片(470)の原点が位置合わせされている。第1のディスク状の磁界発生装置(430)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(400)に対向する基板(420)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0110】
[00109]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、第1の磁界発生装置(x30)、本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、本明細書に記載の非磁性板(x60)、及び本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(x70)を備える。
【0111】
[00110]図10に示す一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(500)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(530)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(530)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(540)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(540)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(550)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片(550)と、d)本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(570)、好ましくは第2の平坦な正方形状の磁極片(570)と、e)本明細書に記載の非磁性板(560)、好ましくは正方形状の非磁性板(560)を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(530、540)のNS磁気軸が基板(520)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(530、540)のN極が基板(520)側を向いており、第1のディスク状の磁界発生装置(530)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(540)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(540)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(550)の幅(L5)よりも小さく、平坦な正方形状の磁極片(550)の幅(L5)が正方形状の非磁性板(560)の幅(L7)及び第2の平坦な正方形状の磁極片(570)の幅(L9)と同じであり、第1のディスク状の磁界発生装置(530)が平坦な正方形状の磁極片(550)に直接接触して、その上に配設されており、平坦な正方形状の磁極片(550)が正方形状の非磁性板(560)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の非磁性板(560)が第2のディスク状の磁界発生装置(540)に直接接触して、その上に配設されており、第2のディスク状の磁界発生装置(540)が第2の平坦な正方形状の磁極片(570)に直接接触して、その上に配設されており、第1のディスク状の磁界発生装置(530)、第2のディスク状の磁界発生装置(540)、平坦な正方形状の磁極片(550)、第2の平坦な正方形状の磁極片(570)、及び正方形状の非磁性板(560)の原点が位置合わせされている。第1のディスク状の磁界発生装置(530)の最上面と本明細書に記載の磁気アセンブリ(500)に対向する基板(520)の下面との間の距離(A1)は、好ましくはおよそ0~およそ5mmであり、より好ましくはおよそ0~およそ2.5mmであり、さらに好ましくはおよそ0~およそ1mmである。
【0112】
[00111]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、1つ又は複数のしるしを表す1つ又は複数の表面起伏、彫刻、及び/又は切り欠きを備える磁化板(x80)をさらに備えていてもよく、上記磁化板(x80)は、第1の磁界発生装置(x30)の上に配設されることにより、基板(x20)に対向する(図12参照)。本明細書において、用語「しるし(indicia)」は、デザイン及びパターンを意味するものとし、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図画を含むが、これらに限定されない。しるしを有する磁化板(x80)の1つ又は複数の表面起伏、彫刻、及び/又は切り欠きは、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)により生成された磁界を局所的に修正することによって、非硬化状態のOELに転写される。磁化板(x80)は、本明細書に記載のドーム状の蓋(x02)の上面に備えられていてもよく、都合が良い。
【0113】
[00112]本発明に関して本明細書に記載の1つ又は複数の表面起伏、彫刻、及び/又は切り欠きを含む磁化板(x80)の好適な例は、国際公開第2005/002866 A1号、国際公開第2008/046702 A1号、及び国際公開第2008/139373 A1号に見られる。
【0114】
[00113]本明細書に記載の磁化板(x80)は、長さL11を有する。正方形状の磁化板(x80)を備える実施形態の場合、本明細書に記載の長さL11は、上記磁化板の幅を表すとともに、これに対応する。
【0115】
[00114]磁化板(x80)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、及び本明細書に記載の非磁性板(x60)(存在する場合)と対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。機械的平衡を理由として、磁化板(x80)は、本明細書に記載の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、本明細書に記載の非磁性板(x60)(存在する場合)、及び本明細書に記載の第2の平坦な磁極片(x70)(存在する場合)と対称に配設されているのが好ましい。
【0116】
[00115]本明細書に記載の1つ又は複数の彫刻及び/又は切り欠きを含む磁化板(x80)は、可鍛性の金属又はポリマーマトリクス中に永久磁性粉末を含む永久磁性複合材等の任意の機械的に加工可能な永久磁石材料により構成されていてもよい。本明細書に記載の磁化板(x80)は、磁性材料のポリマー接合板すなわちポリマーを含む複合材で構成された磁化板(x80)であるのが好ましい。ポリマー(例えば、ゴム又はプラスチックのようなポリマー)は、構造的バインダとして作用し、永久磁性粉末材料は、増量剤又は充填剤として作用する。ポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板は、さもなければ脆弱で十分に加工できないフェライト、アルニコ、希土類、又は可鍛性の金属若しくはプラスチック材料の所望の機械的特性(可撓性、可削性、耐衝撃性)を備えるさらに別の磁石の所望の磁気特性(高保磁力)を組合せるのが好都合である。
【0117】
[00116]好適なポリマーとしては、ニトリルゴム、EPDM炭化水素ゴム、ポリイソプレン、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、及びクロロスルホン化ポリエチレン等のゴムタイプの可撓性材料が挙げられる。
【0118】
[00117]好適な永久磁性粉末材料としては、コバルト、鉄、及びこれらの合金、二酸化クロム、一般的な磁性酸化物スピネル、一般的な磁性ガーネット、一般的な磁性フェライト(カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムヘキサフェライト(それぞれCaFe1219、SrFe1219、BaFe1219)等のヘキサフェライト類を含む)、一般的なアルニコ合金、一般的なサマリウム-コバルト(SmCo)合金、及び一般的な希土類-鉄-ホウ素合金(NdFeB等)のほか、(一般的という用語が示すような)これらの永久磁性化学物質誘導体及びこれらの混合物が挙げられる。ポリマー及び永久磁性粉末を含む複合材で構成されたプレートは、Group ARNOLD(Plastiform(登録商標))又はMaterialiMagnetici、Albairate、Milano、イタリア(Plastoferrite)等の多くの異なる供給源から取得可能である。
【0119】
[00118]本明細書に記載の磁化板(x80)、特に、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板(x80)は、任意所望のサイズ及び形態にて(例えば、一般的に利用可能な機械的切除ツール及びマシンのほか、空気若しくは液体ジェット切除、又はレーザ切除ツールを用いて屈曲及び機械的加工(例えば、所定サイズ又は形状への切断)を行い得る薄い可撓性のプレートとして)得られる。
【0120】
[00119]本明細書に記載の磁化板(x80)、特に、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板(x80)の1つ又は複数の表面彫刻及び/又は切り欠きは、当技術分野において既知の如何なる切断又は彫刻方法により生成されるようになっていてもよく、鋳造、成型、手動彫刻又は機械的切除ツール(コンピュータ制御の彫刻ツールを含む)、気体若しくは液体ジェット切除ツールから成る群から選択される切除ツール、化学エッチング、電気化学エッチング、並びにレーザ切除ツール(例えば、CO2-、Nd-YAG、又はエキシマレーザ)が挙げられるが、これらに限定されない。また、当業者による理解及び本明細書に記載の通り、本明細書に記載の磁化板(x80)、特に、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板(x80)は、彫刻ではなく、特定サイズ及び形状への切断又は成型も可能である。孔が切り抜かれるようになっていてもよいし、切り欠き片が支持部に組み付けられるようになっていてもよい。
【0121】
[00120]磁化板(x80)、特に、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板(x80)の1つ又は複数の彫刻及び切り欠きは、ポリマーで充填されていてもよく、充填剤を含んでいてもよい。上記充填剤は、1つ又は複数の彫刻/切り欠きの場所で磁束を修正する軟磁性材料であってもよいし、磁界特性の修正又は単に滑らかな表面の生成を行うその他任意の種類の磁性又は非磁性材料であってもよい。また、磁化板(x80)、特に、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材で構成された磁化板(x80)は、表面処理によって基板との接触を容易化することにより、高速印刷用途における摩擦、摩耗、及び/又は静電帯電を抑えるようにしてもよい。
【0122】
[00121]本明細書に記載の磁化板(x80)は、本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材(好ましくは、プラストフェライト)で構成されているのが好ましく、また、1つ又は複数の彫刻を含むのが好ましい。プラストフェライト板には、機械的彫刻ツール、又は好ましくは、自動CO2-、Nd-YAGレーザ彫刻ツールを用いて、しるしの形態の所望の高分解能パターンが彫刻される。
【0123】
[00122]本明細書に記載のポリマー及び永久磁性粉末材料を含む複合材(好ましくは、プラストフェライト)で構成された本明細書に記載の磁化板(x80)は、予備形成されたプレートとして提供された後、1つ又は複数の彫刻によって、特定の使用要件に応じたしるしを表す表面凹凸が適用されるようになっていてもよい。
【0124】
[00123]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)は、第1の磁界発生装置(x30)、本明細書に記載の第2の磁界発生装置(x40)、本明細書に記載の平坦な磁極片(x50)、本明細書に記載の非磁性板(x60)、及び本明細書に記載の磁化板(x80)を備える。
【0125】
[00124]図12に示す一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(600)は、a)本明細書に記載の第1の磁界発生装置(630)、特に第1のディスク状の磁界発生装置(630)と、b)本明細書に記載の第2の磁界発生装置(640)、好ましくは第2のディスク状の磁界発生装置(640)と、c)本明細書に記載の平坦な磁極片(650)、好ましくは平坦な正方形状の磁極片(650)と、d)本明細書に記載の非磁性板(660)、好ましくは正方形状の非磁性板(660)と、e)本明細書に記載の磁化板(680)、好ましくは正方形状の磁化板(680)と、を備え、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(630、640)のNS磁気軸が基板(620)表面と実質的に垂直であり、第1及び第2のディスク状の磁界発生装置(630、640)のN極が基板(620)側を向いており、本明細書に記載の非磁性板(660)、好ましくは正方形状の非磁性板(660)、第1のディスク状の磁界発生装置(630)の直径(L1)が第2のディスク状の磁界発生装置(640)の直径(L3)よりも小さく、第2のディスク状の磁界発生装置(630)の直径(L3)が平坦な正方形状の磁極片(650)の幅(L5)よりも小さく、平坦な正方形状の磁極片(660)の幅(L5)が正方形状の非磁性板(660)の幅(L7)と同じであり、正方形状の磁化板(680)の幅(L11)が、第1のディスク状の磁界発生装置(630)の直径(L1)、第2のディスク状の磁界発生装置(640)の直径(L3)、平坦な正方形状の磁極片(650)の幅(L5)、及び正方形状の非磁性板(660)の幅(L7)よりも大きく、第1のディスク状の磁界発生装置(630)が平坦な正方形状の磁極片(650)に直接接触して、その上に配設されており、平坦な正方形状の磁極片(650)が正方形状の非磁性板(660)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の非磁性板(660)が第2のディスク状の磁界発生装置(640)に直接接触して、その上に配設されており、正方形状の磁化板(680)が第1のディスク状の磁界発生装置(630)に直接接触して、その上に配設されるとともに、基板(620)に直接接触しており、第1のディスク状の磁界発生装置(630)、第2のディスク状の磁界発生装置(640)、平坦な正方形状の磁極片(650)、正方形状の磁化板(680)、及び正方形状の非磁性板(660)の原点が位置合わせされている。
【0126】
[00125]第1の磁界発生装置(x30)の材料、第2の磁界発生装置(x40)の材料、平坦な磁極片(x50)の材料、任意選択としての非磁性板(x60)の材料、任意選択としての第2の平坦な磁極片(x70)の材料、任意選択としての磁化板(x80)の材料、並びに距離(A1)及び(A2)は、磁気アセンブリ(x00)により生成された磁界の相互作用の結果としての磁界が本明細書に記載の光学効果層を生成するのに適するように選択されている。第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、平坦な磁極片(x50)、任意選択としての非磁性板(x60)、任意選択としての第2の平坦な磁極片(x70)、及び任意選択としての磁化板(x80)は、磁気アセンブリ(x00)の結果としての磁界中に配設され、光学効果層(OEL)を備える基板の傾斜により移動及び回転する三日月の光学的印象を生成する未硬化の放射線硬化性コーティング組成物の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を磁気アセンブリの磁界が基板上で配向させ得るように相互作用するようになっていてもよい。
【0127】
[00126]本発明は、本明細書に記載のような回転磁気シリンダである転写装置及び本明細書に記載のような1つ又は複数の磁気アセンブリ(x00)を備える印刷装置をさらに提供し、上記1つ又は複数の磁気アセンブリ(x00)が回転磁気シリンダの周方向溝に取り付けられるとともに、印刷アセンブリが、本明細書に記載のような平台印刷ユニットである転写装置及び本明細書に記載の磁気アセンブリ(x00)のうちの1つ又は複数を備え、上記1つ又は複数の磁気アセンブリ(x00)が、平台印刷ユニットの凹部に取り付けられる。
【0128】
[00127]回転磁気シリンダは、印刷若しくは被覆機器中での使用、印刷若しくは被覆機器との併用、又は印刷若しくは被覆機器の一部としての構成が意図されており、本明細書に記載の1つ又は複数の磁気アセンブリを支える。一実施形態において、回転磁気シリンダは、高い印刷速度で連続動作する回転式、枚葉給紙式、又はウェブ給紙式の産業用印刷機の一部である。
【0129】
[00128]平台印刷ユニットは、印刷若しくは被覆機器中での使用、印刷若しくは被覆機器との併用、又は印刷若しくは被覆機器の一部としての構成が意図されており、本明細書に記載の1つ又は複数の磁気アセンブリを支える。一実施形態において、平台印刷ユニットは、非連続動作する枚葉給紙式の産業用印刷機の一部である。
【0130】
[00129]本明細書に記載の回転磁気シリンダ又は本明細書に記載の平台印刷ユニットを備える印刷装置は、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の層を有することにより、顔料粒子に作用して配向させる磁界を磁気アセンブリが生成して光学効果層(OEL)を形成させる本明細書に記載のような基板を供給する基板供給装置を具備していてもよい。本明細書に記載の回転磁気シリンダを備える印刷装置の一実施形態において、基板は、シート又はウェブの形態で基板供給装置により供給される。本明細書に記載の平台印刷ユニットを備える印刷装置の一実施形態において、基板は、シートの形態で供給される。
【0131】
[00130]本明細書に記載の回転磁気シリンダ又は本明細書に記載の平台印刷ユニットを備える印刷装置は、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む放射線硬化性コーティング組成物を本明細書に記載の基板に塗布する被覆又は印刷ユニットを含み、放射線硬化性コーティング組成物が、本明細書に記載の装置によって生成された磁界により配向されて光学効果層(OEL)を形成する非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含んでもよい。本明細書に記載の回転磁気シリンダを備える印刷装置の一実施形態において、被覆又は印刷ユニットは、回転連続プロセスに従って動作する。本明細書に記載の平台印刷ユニットを備える印刷装置の一実施形態において、被覆又は印刷ユニットは、長手方向非連続プロセスに従って動作する。
【0132】
[00131]本明細書に記載の回転磁気シリンダ又は本明細書に記載の平台印刷ユニットを備える印刷装置は、本明細書に記載の装置によって磁気的に配向された非球状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む放射線硬化性コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させることにより、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向及び位置を固定して光学効果層(OEL)を生成する硬化ユニットを具備していてもよい。
【0133】
[00132]一実施形態によれば、非球状磁性又は磁化可能顔料粒子が血小板状の顔料粒子であることを前提として、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を生成するプロセスは、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、第1の磁界発生装置の動的な磁界に対して本明細書に記載の放射線硬化性コーティング組成物を曝露するステップであって、ステップi)の後且つステップii)の前に実行される、ステップをさらに含んでいてもよい。第2の磁界発生装置、特に本明細書に記載の磁気アセンブリの磁界に対してコーティング組成物をさらに曝露するステップの前に、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、第1の磁界発生装置の動的な磁界に対してコーティング組成物を曝露するこのようなステップを含むプロセスは、国際公開第2015/086257 A1号に開示されている。本明細書に記載の第1の磁界発生装置の動的な磁界に対する放射線硬化性コーティング組成物の曝露の後、内部の血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子がさらに移動及び回転し得るように放射線硬化性コーティング組成物が依然として湿潤又は柔軟な間に、本明細書に記載の装置を用いて、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子をさらに再配向させる。
【0134】
[00133]2軸配向を実行することは、2つの主軸が拘束されるように血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を配向させることを意味する。すなわち、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子はそれぞれ、顔料粒子の面内に長軸を有し、顔料粒子の面内に直交する短軸を有するものと考えられる。血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の長軸及び短軸はそれぞれ、動的な磁界に従って配向される。実用上は、これにより、空間中で互いに近く隣接する血小板状磁性顔料粒子が本質的に相互平行となる。2軸配向を実行するため、血小板状磁性顔料粒子は、時間に強く依存する外部磁界を受ける必要がある。言い換えれば、2軸配向によって、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の平面が(全方向に)隣接する顔料粒子の平面に対して本質的に平行となるように配向するように、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の平面が整列される。一実施形態において、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の平面の上記長軸及び当該長軸に垂直な短軸はいずれも、(全方向に)隣接する顔料粒子の長軸及び短軸が互いに整列するように、動的な磁界によって配向される。
【0135】
[00134]一実施形態によれば、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の2軸配向を実行するステップによって、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の2つの主軸が基板表面に対して実質的に平行となる磁気配向が得られる。このような整列の場合、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子は、基板上の放射線硬化性コーティング組成物内で平坦化しており、基板表面と平行なそれらのX軸及びY軸(国際公開第2015/086257 A1号の図1に示す)の両者で配向している。別の実施形態によれば、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の2軸配向を実行するステップによって、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子が基板表面と実質的に平行なXY平面内の第1の軸と、基板表面に対して実質的に非ゼロの仰角で上記第1の軸と実質的に垂直な第2の軸とを有する磁気配向が得られる。別の実施形態によれば、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の2軸配向を実行するステップによって、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子のXY平面が仮想回転楕円体表面に対して実質的に平行となる磁気配向が得られる。
【0136】
[00135]血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい磁界発生装置は、欧州特許出願公開第2 157 141 A1号に開示されている。欧州特許出願公開第2 157 141 A1号に開示の磁界発生装置は、X軸及びY軸という両主軸が基板表面に対して実質的に平行になるまで血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を急激に振動させる方向を変化させる動的な磁界を与える。すなわち、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子は、基板表面に実質的に平行なX軸及びY軸との安定したシート状構成になり、上記2つの次元で平坦化するまで回転する。
【0137】
[00136]血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい他の磁界発生装置は、直線状の永久磁石ハルバッハ配列すなわち磁化方向が異なる複数の磁石を備えるアセンブリを含む。ハルバッハ永久磁石の詳細な説明は、Z.Q.Zhu及びD.Howe(Halbach permanent magnet machines and applications:a review,IEE.Proc.Electric Power Appl.,2001,148,p.299-308)によって与えられている。このようなハルバッハ配列により生成される磁界は、一方側に集中し、他方側ではほぼゼロまで弱まる特性を有する。同時係属の欧州特許出願第14195159.0号は、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる好適な装置であって、ハルバッハ円筒アセンブリを備える、装置を開示している。血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい他の磁界発生装置は、回転磁石であり、それらの直径に沿って本質的に磁化されるディスク状の回転磁石又は磁気アセンブリを含む。好適な回転磁石又は磁気アセンブリは、米国特許出願公開第2007/0172261 A1号に記載されており、半径方向に対称的な時間可変磁界を発生させることによって、未硬化又は未固化コーティング組成物の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の2軸配向が可能になる。これらの磁石又は磁気アセンブリは、外部のモータに接続されたシャフト(又は、スピンドル)によって駆動される。中国特許第102529326 B号は、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させるのに適し得る回転磁石を備える磁界発生装置の例を開示している。好適な一実施形態において、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる好適な磁界発生装置は、非磁性材料、好ましくは非導電性材料で構成されたハウジング中に拘束されたシャフトのないディスク状回転磁石又は磁気アセンブリであり、ハウジングに巻回された1つ又は複数の磁石ワイヤコイルによって駆動される。このようにシャフトのないディスク状回転磁石又は磁気アセンブリの例は、国際公開第2015/082344 A1号及び同時係属の欧州特許出願第14181939.1号に開示されている。
【0138】
[00137]本明細書に記載の基板は、紙又はセルロース、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、及びポリマー等のその他繊維材料、金属化プラスチック若しくはポリマー、複合材、並びにこれらの混合物又は組合せから成る群から選択するのが好ましい。代表的な紙、紙状、又はその他の繊維材料は、アバカ、綿、麻、木材パルプ、及びこれらの混合等、様々な繊維で構成されるが、これらに限定されない。当業者には周知の通り、紙幣には綿及び綿/麻混合が好ましく、紙幣以外の機密書類には、木材パルプが一般的に用いられている。プラスチック及びポリマーの代表例としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)等のポリエステル、並びにポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。基板としては、例えばTyvek(登録商標)という商標で販売されているスパンボンドオレフィン繊維も使用可能である。金属化プラスチック又はポリマーの代表例としては、表面に連続的又は不連続的に配設された金属を有する上述のプラスチック又はポリマー材料が挙げられる。金属の代表例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、これらの組合せ、又はこれら金属の2つ以上の合金が挙げられる。上述のプラスチック又はポリマー材料の金属化は、電着プロセス、高真空被覆プロセス、又はスパッタリングプロセスによって行われるようになっていてもよい。複合材の代表例としては、紙及び上記のような少なくとも1つのプラスチック若しくはポリマー材料の多層構造又は積層並びに上記のような紙状又は繊維材料に組み込まれたプラスチック及び/若しくはポリマー繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、基板には、サイジング剤、漂白剤、加工助剤、補強又は湿潤増強剤等、当業者に既知の別の添加剤を含むことも可能である。本明細書に記載の基板は、ウェブ(例えば、上述の材料の連続シート)の形態又はシートの形態で提供されるようになっていてもよい。本発明に従って生成されたOELがセキュリティ文書上にある場合は、当該セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くすることを目的として、上記基板は、印刷され、被覆され、レーザマーキングされ、又はレーザ穿孔されたしるし、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、窓、箔、デカール、及びこれらの2つ以上の組合せを備えていてもよい。セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くするという同じ目的で、上記基板は、1つ又は複数のマーカ物質若しくは追跡用添加物並びに/又は機械可読物質(例えば、発光物質、UV/可視/IR吸収物質、磁性物質、及びこれらの組合せ)を含んでいてもよい。
【0139】
[00138]本明細書に記載の光学効果層(OEL)は、基板上に直接設けて、永久に残るようにしてもよい(例えば、紙幣用途の場合)。或いは、製造のための暫定的な基板上に光学効果層(OEL)を設け、後でOELを取り外すようにしてもよい。これにより、特にバインダ材料が流体状態のままである場合に、例えばOELの製造が容易化される可能性がある。その後、コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させてOELを製造したら、暫定基板をOELから取り外してもよい。
【0140】
[00139]或いは、光学効果層(OEL)又はOELを備える基板上に接着層が存在していてもよく、当該接着層は、OELが設けられた面と反対側の基板面に存在していてもよいし、OELと同じ面でOELの上に存在していてもよい。したがって、光学効果層(OEL)又は基板に接着層が塗布されていてもよい。このような物品は、機械類や大きな労力を伴う印刷等のプロセスなく、あらゆる種類の文書又は他の物品に取り付けられるようになっていてもよい。或いは、本明細書に記載のOELを備える本明細書に記載の基板は、独立した転写ステップにおいて文書又は物品に適用可能な転写箔の形態であってもよい。この目的のため、基板には剥離コーティングが設けられ、その上において、本明細書に記載の通り、OELが生成される。このように製造されたOEL上には、1つ又は複数の接着層を塗布するようにしてもよい。
【0141】
[00140]本明細書には、本明細書に記載のプロセスにより得られた2つ以上すなわち2つ、3つ、4つ等の光学効果層(OEL)を備える基板も記載する。
【0142】
[00141]また、本明細書には、本発明に従って生成された光学効果層(OEL)を備える物品、特に、セキュリティ文書、装飾要素又は物体を記載する。これらの物品、特に、セキュリティ文書、装飾要素又は物体は、本発明に従って生成された2つ以上(例えば、2つ、3つ等)のOELを備えていてもよい。
【0143】
[00142]前述の通り、本発明に従って生成された光学効果層(OEL)は、装飾目的並びにセキュリティ文書の保護及び認証に用いられるようになっていてもよい。装飾要素又は物体の代表例としては、高級品、化粧品パッケージ、自動車部品、電子/家電製品、家具、及びネイルラッカーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
[00143]機密書類としては、有価書類及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。有価文書の代表例としては、紙幣、証書、チケット、小切手、証票、収入印紙及び納税印紙、契約書等、パスポート等の身分証明書類、身分証明書、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス書類又はカード、入場券、公共交通乗車券又は証書等が挙げられ、紙幣、身分証明書類、権利付与書類、運転免許証、及びクレジットカードが好ましいが、これらに限定されない。用語「有価商品(value commercial good)」は、特に化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール、タバコ製品、飲料又は食料品、電気/電子製品、織物又は宝飾品、すなわち偽造及び/又は違法複製に対する保護により、例えば本物の薬等のパッケージの内容物を保証すべき物品のパッケージ材料を表す。これらパッケージ材料の例としては、認証ブランドラベル、不正防止ラベル等のラベル及びシールが挙げられるが、これらに限定されない。なお、開示の基板、有価文書、及び有価商品は、本発明の範囲を制限することなく、専ら例示目的で示している。
【0145】
[00144]或いは、光学効果層(OEL)は、例えばセキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、窓、又はラベル等の補助基板上に生成され、その結果、独立したステップにおいて、セキュリティ文書に転写されるようになっていてもよい。
【実施例
【0146】
[00145]図1図12に示す磁気アセンブリの使用により、表1に記載のUV硬化性スクリーン印刷インクの印刷層における非球状光学可変磁性顔料粒子を配向させ、図1B図11に示す光学効果層(OEL)を生成した。図14及び図16に示す比較としてのアセンブリの使用により、表1に記載のUV硬化性スクリーン印刷インクの印刷層における非球状光学可変磁性顔料粒子を配向させ、図15A及び図17Aに示す比較としての光学効果層(OEL)を生成した。
【0147】
[00146]T90スクリーンを用いた手動スクリーン印刷によって厚さがおよそ20μmのコーティング層(36mm×36mm)を構成することにより、黒色のコマーシャルペーパー(Papierfabrik Louisenthal社製の信用本位ペーパーBNP(90g/m、50×50mm))にUV硬化性スクリーン印刷インクを塗布した。UV硬化性スクリーン印刷インクの塗布層を有する基板を磁気アセンブリ上に配設した。このようにして得られた非球状光学可変顔料粒子の磁気的配向パターンは、配向ステップと一部同時に、Phoseon社製UV-LEDランプ(ファイアフレックス(FireFlex)タイプ、50×75mm、395mm、8W/cm)を用いて、顔料粒子を含む印刷層のUV硬化によって固定した。
【0148】
【表1】
【0149】
装置及び材料
[00147]第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)は、NdFeB N30で構成した。図1図12に示すように、磁気アセンブリ(x00)が第1の磁界発生装置(x30)及び第2の磁界発生装置(x40)を独立して備えており、上記第1の磁界発生装置(x30)を上記第2の磁界発生装置(x40)の上に配設するとともに、上記両装置(x30、x40)について、それらのNS磁気軸が基板(x20)表面と実質的に垂直で、N極が基板(x20)側を向くようにした。
【0150】
[00148]図1図12に示すように、磁気アセンブリ(x00)が平坦な磁極片(x50)を独立して備えており、上記平坦な磁極片(x50)を第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に配設した。平坦な磁極片(x50)は、鉄で独立して構成した。
【0151】
[00149]図4図6図10、及び図12に示すように、磁気アセンブリ(x00)が非磁性板(x60)を独立して備えており、上記非磁性板(x60)を第1の磁界発生装置(x30)と第2の磁界発生装置(x40)との間に配設した。非磁性板(x60)(存在する場合)は、POMで独立して構成した。
【0152】
[00150]図8図10に示すように、磁気アセンブリ(x00)が第2の平坦な磁極片(x70)を独立して備えており、上記第2の平坦な磁極片(x70)を第2の磁界発生装置(x40)の下に配設して、環境に対向させた。第2の平坦な磁極片(x70)(存在する場合)は、鉄で独立して構成した。
【0153】
[00151]「50」の形状を有するしるしを含む磁化板(x80)をプラストフェライトで構成した(Max Baermann GmbH、Bergisch GladbachによるTROMAFLEX(登録商標))。磁化板(x80)は、基板(x20)表面と垂直な方向に磁化した後、コンピュータ制御の機械的彫刻ステーション上で、2.5mm×3.0mmの寸法を有する幾何学的デザイン(「50」のしるし)を彫刻した。正方形状の磁化板(x80)の彫刻は、彫刻深さがおよそ0.2mm、ライン幅がおよそ1mmであった。図12に示すように、磁気アセンブリ(600)が磁化板(680)を独立して備えており、上記磁化板(680)を第1の磁界発生装置(630)の上且つ基板(620)の下に配設した。
【0154】
[00152]平坦ではない磁極片(x90)及び平坦な磁極片(x91)(存在する場合)は、鉄で独立して構成した。
【0155】
[00153]実施例E1~E13の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、平坦な磁極片(x50)、非磁性板(x60)、第2の平坦な磁極片(x70)、及び磁化板(x80)の寸法及び形状を表2に示す。また、実施例E1~E13の第1の磁界発生装置(x30)の上面と磁気アセンブリ(x00)に対向する基板(x20)の下面との間の距離A1及び第2の磁界発生装置(x40)の上面と第1の磁界発生装置(x30)の下面との間の距離A2を表2に示す。
【0156】
[00154]比較例C1及びC2の第1の磁界発生装置(x30)、第2の磁界発生装置(x40)、平坦な磁極片(x91)、及び平坦ではない磁極片(x90)の寸法及び形状を表3に示す。また、比較例C1及びC2の第1の磁界発生装置(x30)の上面と磁気アセンブリ(x00)に対向する基板(x20)の下面との間の距離A1及び第2の磁界発生装置(x40)の上面と第1の磁界発生装置(x30)の下面との間の距離A2を表3に示す。
【0157】
[00155]実施例1~13(E1~E13)並びに比較例1及び2(C1及びC2)の準備に用いられる磁気アセンブリ(x00)の挿入のため、ホルダ(x01)を独立して使用した。実施例E3の準備には、図2に示すホルダ(101)を使用したが、上記ホルダ(101)は、ドーム状の蓋(102)、底部ロック(103)、非磁性ウェッジ(104)、及び非磁性マトリクス(141)を備えるものとした。ホルダ(101)は、長さ及び幅(L21)がおよそ40mm、中心厚さ(L19)がおよそ15.15mm、縁部厚さ(L20)がおよそ14.80mmであった。ドーム状の蓋(102)の上面の曲率(L-R)は、半径(L-R)の円の曲率とした。ホルダ(101)の底部ロック(103)は、長さ及び幅(L23)がおよそ32mm、厚さ(L22)がおよそ3mmであった。非磁性ウェッジ(104)は、長さ及び幅(L25)がおよそ30mm、厚さ(L24)がおよそ5.8mmであった。図2に示すホルダ(101)は、第2の磁界発生装置(140)を受容するのに適したボイドを備える非磁性マトリクス(141)であり、長さ(L25)がおよそ30mm、厚さ(L4)がおよそ2mmで、直径(L3)がおよそ20mmのディスク状のボイドを含む正方形状のプレートである、非磁性マトリクス(141)をさらに備える。ホルダ(101)のドーム状の蓋(102)及び底部ロック(103)は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)で構成した。非磁性ウェッジ(104)及び非磁性マトリクス(141)は、POMで独立して構成した。
【0158】
[00156]実施例1~13(E1~E13)並びに比較例1及び2(C1及びC2)は、実施例3(E3)に関して上述したホルダ(101)と外部寸法が同じであるホルダ(x01)に包含された磁気アセンブリ(x00)により独立して準備した。ウェッジ(x04)の厚さは、距離(A1)が変化するように適応させ、非磁性マトリクス(x41)は、第2の磁界発生装置(x40)に適合するように適応させた。
【0159】
[00157]基板(x20)を-30°~+30°傾斜させた様々な視角にて、図1図12に示す磁気アセンブリ(x00)により生成された結果としてのOEL(x10)を図3A図13Aに示すとともに、上記OELの光学的印象の説明を表2に示す。
【0160】
[00158]基板を-30°~+30°傾斜させた様々な視角にて、図14図16に示す磁気アセンブリにより生成された結果としての比較OELを図15A図17Aに示すとともに、上記OELの光学的印象の説明を表3に示す。
【0161】
【表2】

【0162】
【表3】
図1
図2
図3
図3A-3E】
図4
図5
図5A-5C】
図6
図7
図7A-7B】
図8
図9
図9A
図10
図11
図11A
図12
図13
図13A
図14
図15
図15A
図16
図17
図17A