(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】自動車用ロック
(51)【国際特許分類】
E05B 81/14 20140101AFI20231011BHJP
E05B 77/42 20140101ALI20231011BHJP
E05B 79/16 20140101ALI20231011BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
E05B81/14
E05B77/42
E05B79/16
B60J5/00 N
(21)【出願番号】P 2021535183
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 DE2019101052
(87)【国際公開番号】W WO2020125858
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】102018133301.3
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フローン, トビアス
(72)【発明者】
【氏名】オルゼッチ, ウド
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-115138(JP,A)
【文献】特開2016-14235(JP,A)
【文献】特開平10-37560(JP,A)
【文献】米国特許第5613716(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ラッチ(3)および少なくとも1つの爪部(4)を備えたロック機構(2)を有する、自動車用ロック(1)であって、
少なくとも1つのラッチ位置で前記ロック機構(2)に係合可能なロックホルダ(21)を備え、前記爪部(4)は、少なくとも1つの結合ロッド(10)および駆動要素(11)によって作動可能であり、前記結合ロッド(10)は、
伝達装置上に配置され、結合部材(8)によって前記爪部(4)と相互作用
し、
前記結合部材(8)は、前記自動車用ロック(1)のハウジング(6)及び/又はロックケースに旋回できるように収容され、
前記結合部材(8)は、前記結合ロッド(10)の為の第1装着点(19)と前記爪部(4)の為の第2装着点(7)とを有し、
前記第1装着点(19)および前記第2装着点(7)は、前記結合部材(8)の装着点(9)の周りに異なる半径で配置されることを特徴とする、ロック(1)。
【請求項2】
前記結合部材(8)は、前記爪部(4)
を前記回転ラッチ(3)との係合領域から外す為のエジェクタ(22)を有することを特徴とする、請求項1に記載のロック(1)。
【請求項3】
前記結合部材(8)により、前記ロック機構(2)を閉位置(A)にもたらすことができることを特徴とする、請求項
1~2のいずれか一項に記載のロック(1)。
【請求項4】
前記駆動要素(11)は、前記結合ロッド(10)のための偏心レセプタクルを有することを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載のロック(1)。
【請求項5】
前記駆動要素(11)は、前記駆動要素(11)を単一の作動方向(P1)に作動させることにより、爪部(4)をロック解除位置に移動させることができるように、前記爪部(4)と相互作用することを特徴とする、請求項
1~4のいずれか一項に記載のロック(1)。
【請求項6】
前記駆動要素(11)によって、前記結合部材(8)を前後に傾斜させることができることを特徴とする、請求項
1~5のいずれか一項に記載のロック(1)。
【請求項7】
固定レバー(24)が設けられ、前記固定レバー(24)は、前記爪部(4)のロック解除位置で前記爪部(4)に係合可能であることを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載のロック(1)。
【請求項8】
前記結合部材(8)により前記爪部(4)をメインラッチ位置に移動させることができ、前記メインラッチ位置において、前記ロック機構(2)に閉鎖トルクが作用することを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載のロック(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ラッチと少なくとも1つの爪部を備えたロック機構を有し、ロックホルダを備えた自動車用ロック、特に後尾扉用ロックに関し、ロックホルダは、少なくとも1つのラッチ位置においてロック機構と、駆動要素と、爪部の旋回可能な取り付け装着点と係合させることができ、爪部は、少なくとも1つの結合ロッドによって、かつ駆動要素によって作動させることができる。
【0002】
自動車の操作者の取り扱いおよび騒音挙動を容易にし、かつ影響を与えることができるように、ますます多くの電気補助ユニットが自動車に装着される。自動車に移動可能に固定された構成要素を閉じるために、車両を安全に案内することができるように、移動可能な構成要素を閉じた位置に保持するロック又は閉鎖装置が使用される。これらの閉鎖システムは、例えば、操作者が便利に側部ドアを開けられるようにするために、ますます電気駆動装置を装備するようになっている。閉鎖システムは、側部ドアに使用されるだけでなく、スライドドア、後尾扉、フード及び/又はカバーにも使用され、正確には、移動する構成要素が自動車の操作中に安全な位置に保持されなければならない場所にも使用される。
【0003】
ロックまたは閉鎖システムでは、回転ラッチと、ロックホルダと連動して可動構成要素を固定することができる少なくとも1つの爪部とからなるロック機構が用いられる。たとえば、自動車の側部ドアが閉じられると、開位置に配置された回転ラッチがロックホルダに係合し、この回転ラッチは、ロックホルダと回転ラッチとの間の相対的な移動によって回転し、爪部によってプレラッチ位置またはメインラッチ位置に固定される。側部ドアまたは、たとえば後尾扉は、密封の抵抗に抗して閉じられ、その結果、ロック機構は密封圧力を相殺する。
【0004】
自動車の内部を安全に、密封し、騒音を低減するために、これらの密封圧力は、ロックホルダ及びロック機構に大きな力を加えることができる。ロック機構がロック解除された場合、すなわち、爪部が回転ラッチから解除された場合、爪部は回転ラッチとの係合領域から解除されるが、回転ラッチは開放音を伴う。開放ノイズに影響を与えるために、様々な解決策が従来技術から知られている。
【0005】
たとえば、EP2 573 301B1は、爪部が少なくとも幾つかの領域で回転ラッチの開放動作に追従することができる閉鎖システムを記載している。ロック機構は電気的に開放可能であり、爪部はレバーチェーンを介して駆動要素に連結される。駆動装置が作動してロック機構を開放すると、爪部は、少なくとも一部の領域では回転ラッチの動きに追従することができるので、密封圧力を低減することによって密封圧力に対抗することができる。レバーチェーンには長さ可変のレバーがあり、ブレーキをかけてロックを解除できる。
【0006】
EP2 573 300A2は、閉鎖位置にあるロックホルダの周りに係合し、ロックホルダを解除する開放位置の方向に予張力がかけられた回転ラッチを備えた自動車用ロックを開示しており、係合位置では、回転ラッチが開放位置の方向に移動しないように回転ラッチに係合する爪部を備えている。また、本発明に係る車両用ドアロックは、移動の為に連結された駆動要素を爪部の結合セクションが有し、爪部が、係合位置と、爪部が回動ラッチから係合解除される解除位置との間を移動することにより、回転ラッチが開位置の方向に移動可能である。解除位置の方向への係合位置からの移動中、駆動要素は、この移動中に依然として爪部と係合している回転ラッチが開位置の方向に移動するように、爪部を移動させる。
【0007】
従来技術から知られている解決策の幾つかは、構造的に複雑であり、全ての場合に可能であるとは限らないが、自動車用ロック内に大きな空間を必要とする。これが本発明の出発点である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、改良された自動車用ロック、特に後尾扉用ロックを提供することである。加えて、本発明の目的は、構造的に単純で、省スペースで、費用効果の高い構造を考慮して、低騒音のロック解除を実施することである。
【0009】
この目的は、独立クレーム1の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属クレームにおいて特定される。なお、以下に説明する実施形態は、限定するものではなく、むしろ、明細書及び従属クレームに記載された特徴の任意の可能な変形が可能である。
【0010】
請求項1において、本発明の目的は、自動車用ロック、特に後尾扉用ロックを提供することにあるが、後尾扉用ロックは、回転ラッチと少なくとも1つの爪部を有するロック機構と、ロックホルダとを備え、ロックホルダは、少なくとも1つのラッチ位置において、駆動要素と、爪部の旋回可能な装着点と係合可能であり、爪部は、少なくとも1つの結合ロッドによって、および駆動要素によって作動可能であり、結合ロッドは、伝達比を有する結合部材によって、爪部と相互作用する。本発明に係る自動車用ロックの構造により、ロック機構の低騒音ロック解除及び連続的な開放処理を実現することができる。特に、構造設計により、ロック機構を最小のスペース要件で確実に閉鎖することができるラッチ位置を達成することができる。特に、駆動チェーンに伝達比を一体化する結合部材を使用することにより、ロック機構が開放されたときに生じる高い閉鎖力を克服し、次いで、回転ラッチを開放位置に案内することが可能になる。結合部材は、爪部が結合ロッドを介して回転ラッチから連続的に解除されるように、爪部と相互作用する。連続的な開放処理のために、回転ラッチと爪部との間の実際のブレイクオフノイズは、除去されるか、または少なくとも最小に低減され得る。
【0011】
本発明の状況で自動車のロックに言及する場合、これには、後尾扉だけでなく、側部ドアやカバー、あるいは、たとえば自動車の背もたれにも使用されるロックが含まれる。従って、ロックは、旋回可能に又は変位可能に装着された構成要素が1つの位置に固定される場合に使用することができる。
【0012】
自動車用ロックは、回転ラッチと少なくとも1つの爪部を有するロック機構を備える。ロック機構は、自動車上でほとんど静止しているロックホルダと相互作用し、ロック機構とロックホルダとの間の相対的な移動によって、回転ラッチが回転し、爪部が少なくとも1つのラッチ位置に回転ラッチを固定する。ここで、プリラッチ部とメインラッチ部とを備えたロック機構や、1つのメインラッチ位置のみを有するロック機構が知られている。ロック機構は、互いに相互作用する1つまたは2つの爪部を有することができる。第1爪部は、回転ラッチをラッチ位置でブロックし、第2爪部は、第1爪部をラッチ位置で固定する。この2つの爪部を有するロック機構は、メインラッチ位置のロック機構に開放トルクが発生した場合に多く用いられる。
【0013】
本発明による自動車用ロックは、電気的に作動可能な自動車用ロックであって、ロック機構をラッチ位置からロック解除することができる駆動要素が設けられている。ここで、駆動要素は、手動で作動されるボーデンケーブルであってもよく、または少なくとも1つの電気モータと、電気モータの下流側に接続されたギア要素とから構成されてもよく、ギア要素は、爪部がラッチ位置から開位置に移動できるように、爪部と協働する。爪部は、駆動要素によって、装着点を中心に旋回できるように移動される。本発明は、ロックに関し、ここで、爪部は、旋回可能な装着点に収容され、結合ロッド及び駆動要素によって作動させることができる。ここで、「旋回可能な装着点」とは、爪部自体の装着点が車両用ロックに移動可能に収容されていることを意味する。爪部のための装着点は、好ましくは固定された径上に、自動車用ロック内の結合部材によって収容される。結合部材は、ロック機構において伝達比を達成することができる更なるギア要素を形成する。旋回可能な装着点は、特に伝達レセプタクルを介して、一方ではロック機構の低騒音ロック解除が可能であり、他方では、ロック機構に閉鎖トルクが生じるように、爪部を結合部材の死点を越えて旋回させることができる。ここで、「閉鎖トルク」とは、ロック機構が自動的に開くのを防止または禁止するトルクを回転ラッチが爪部に及ぼすことを意味する。
【0014】
本発明の一実施形態では、結合部材は自動車用ロックのハウジング内に旋回できるように収容される。結合部材は、ディスク形状の要素として、好ましくはスタンプ部品として設計される。結合部材は、鋼材から作られるのが好ましい。結合部材自体は、ロックハウジングおよび/または自動車用ロックのロックケース内で旋回可能であり、特に鋼材から作られる軸受け軸に収容され、好ましくはリベット止めにより固定される。爪部は、次に、結合部材に旋回可能に装着され、結合部材によって、結合部材の軸受軸の周りの円形経路上で旋回または移動することができる。結合部材は、爪部を収容することに加えて、さらなる収容点、特に結合ロッドのための装着点を有する。したがって、結合部材は、結合ロッドによって結合部材に導入されたトルクを伝達するための手段として機能し、トルクは、爪部の装着点に伝達可能である。ロックの一実施形態の変形例および対応する要件に応じて、異なる伝達比を結合部材の装着点の配置によって設定することができる。爪部および結合ロッドの装着点は、好ましくは、結合部材における結合部材の装着点の周りに異なる半径で配置される。好ましくは、爪部の装着点の、結合部材の装着点の中心軸からの径方向距離は、結合部材の装着点の中心点からの結合レバーの装着点の径方向距離よりも小さい。換言すれば、結合レバーの装着点は、爪部の装着点よりも結合部材の装着点の中心点から離れている。
【0015】
結合部材が爪部のためのエジェクタを有する場合、本発明の実施形態の更なる変形例が得られる。結合部材は、回転ラッチが開位置に向かって移動するように、結合ロッドによって駆動される爪部を移動させる。そして、爪部が結合部材の装着点を中心とする径方向に移動することにより、回転ラッチがラッチ位置から連続的に外れ、回転ラッチに作用する密封圧力を低減することができる。回転ラッチによって爪部に圧力が作用しないか、またはほとんど作用しないように、爪部が移動された場合、結合部材に配置されたエジェクタが、回転ラッチとの係合領域から爪部を旋回または移動させることができる。この目的のために、結合部材は、爪部と係合させることができるエジェクタ表面を有する。ここで、ロック機構が開放またはロック解除された位置において、爪部は、回転ラッチから係合解除された状態を維持することができ、さらに/または、保存レバーによって回転ラッチから係合解除された状態を維持することができ、これにより、回転ラッチを完全に開放位置に移動させることができる。
【0016】
結合部材によってロック機構を閉位置、特にメインラッチ閉位置にすることができる場合、本発明の実施形態の更なる変形例が得られる。結合部材は、自動車用ロック内に旋回できるように収容され、結合ロッドによって移動可能である。結合部材は、爪部を回転ラッチから係合解除することができるので、ロック機構を開放し、回転ラッチを開位置に回転させた後、爪部の装着点を、爪部を再び回転ラッチに係合させることができる初期位置に旋回させることも可能である。この目的のために、結合部材は、開放後、ロック機構に閉鎖トルクを好ましくは設定することができる初期位置に爪部の装着点を旋回させる。
【0017】
一実施形態の一変形例において、駆動要素は、結合ロッド用の偏心レセプタクルを有する。好ましい実施形態において、駆動要素は、例えばウォームをその出力軸に装着することができる電気駆動装置、好ましくは直流モータを含む。ウォームはウォーム歯車と相互作用し、これにより、ロック機構をロック解除し、特に結合ロッドを駆動するための歯車段を実現することができる。好ましくは、結合ロッドは、できるだけ最適化されたトルクを結合ロッド、したがって結合部材に導入できるように、伝達装置の歯車上に偏心して配置される。結合ロッドは、歯車上に直接配置することも、制御及び駆動要素上に配置することもできる。制御及び駆動要素は、たとえば、結合ロッドの軸受軸が歯車および/または制御及び駆動要素によって支持されるように、歯車に直接固定することができる。歯車またはウォーム歯車は、制御及び駆動要素と一体に設計することもできる。本発明の実施形態としてウォーム伝動装置を示したが、勿論、結合ロッドの駆動装置として他の歯の形状及び歯車を使用することも考えられる。
【0018】
一実施形態のさらなる変形例は、駆動要素が、駆動要素を単一の作動方向に作動させることによって、爪部をロック解除位置に移動させることができるように、駆動要素が爪部と相互作用する場合に生じる。好ましくは、駆動、特に電動モータを1つの駆動方向のみに制御することができるので、安価で簡単な駆動要素の制御が可能となる。特に、自動車用ロックにおけるリミットスイッチ及び/又は停止部の使用を省くことができる。これは、構造上の利点をもたらし、従って、駆動要素に対して単一の作動方向を使用することによるコスト上の利点をもたらす。
【0019】
結合部材は、駆動要素によって前後に傾斜させることができるのが有利である。結合部材は、自動車用ロック内に旋回できるように収容され、結合ロッドによる駆動要素の連続的な回転運動と、結合部材の装着点に対する結合ロッドの配置とが、結合部材の傾斜移動を生じさせる。結合部材は、前後に移動され、前方への移動は、爪部が回転ラッチから係合解除される移動と呼ばれる。前方への移動、すなわち結合部材の戻り移動は、回転ラッチが再び爪部と係合することができるように、爪部を初期位置に戻す移動と呼ばれる。したがって、構造設計により、駆動要素の連続的な移動を、結合部材の傾斜移動に変換することができる。
【0020】
固定レバーが設けられ、爪部がロック解除位置にあるときに固定レバーを爪部と係合させることができる場合、本発明の実施形態の更なる変形例が得られる。保存又は固定レバーは、例えばイジェクタによってロック解除位置に移動された爪部が、開放された、すなわちロック解除された位置に残ることを保証する。固定レバーは、爪部の位置が保存されるので、保存レバーと呼ばれる。このことは、たとえば、後尾扉に雪荷重等の荷重が作用して、回転ラッチを開いた位置にスムーズに移動できない場合に有利である。完全に開放されていない回転ラッチの、この位置では、爪部が再び、たとえば回転ラッチのプレラッチ内に落下することが起こり得る。この反復される、意図しない爪部の回転ラッチへの落下は、固定レバーまたは保存レバーによって防止される。固定レバーは、有利には、自動車用ロック内に旋回できるように配置され、好ましくは、自動車用ロックのロック用ハウジング及び/又はロック用ケース内に装着される。保存または固定レバーは、好ましくはプラスチックで作られている。
【0021】
結合部材が結合ロッドの第1装着点と爪部の第2装着点とを有する場合には、変速比に有利に影響を与えることができる設計変更が得られる。この結果、ロック機構をロック解除するための予め決定可能すなわち規定可能なトルクを設定可能な結合部材に伝達比を設定することができる。これにより、一方では、スペースを節約する構造を達成することができ、同時に、ロック機構の低騒音であるが強力なロック解除を提供する。
【0022】
以下、添付の図面を参照して、好適な例示的実施形態に基づいて、より詳細に本発明を説明する。しかしながら、本実施形態は本発明を限定するものではなく、単に1つの実施形態を表すものであるという原理が適用される。示された特徴は、個別にまたは組み合わせて、明細書およびクレームの更なる特徴と組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明を説明するために重要なロック構成要素のみが示されている、メインラッチ位置にある開放後尾扉の為のロックの上面図である。
【
図2】
図2は、
図1による後尾扉の為のロックの上面図であり、駆動要素、結合ロッド、および旋回可能な装着点によって、爪部がメインラッチ位置から少なくとも部分的に移動された状態である。
【
図3】
図3は、爪部の旋回可能な装着点の移動に伴うロック機構の更なる開放過程を示し、旋回可能な装着点は爪部と係合する。
【
図4】
図4は、旋回可能なラッチおよび回転ラッチが開位置にある状態で、係合領域から外れた爪部を示す。
【
図5】
図5は、開放ロック機構と、爪部の初期位置への戻り過程を示す。
【0024】
【詳細な説明】
【0025】
図1では、本発明に従って構成された自動車用ロック1が、ロック機構2の平面図及び部分的に開放された図で示されている。ロック機構2は、メインラッチ位置に示され、回転ラッチ3は、例えば、ロックホルダ(図示せず)が後尾扉を閉位置に保持できるように、爪部4によってメインラッチ位置に保持される。回転ラッチ3は、ロック用ハウジング6及び/又はロック用ケース内の装着点5に旋回できるように装着されている。一方、爪部4は、旋回できる装着点7に収容され、装着点7は、結合部材8に支持されている。結合部材8は、回転ラッチ3と同様に、ロックハウジング6および/またはロックケースに旋回できるように装着されている。
【0026】
以下により詳細に説明するように、ロック機構2を開くために、結合部材8は、装着点9の周りで移動を実行し、装着点9の周りの傾斜移動を行う。結合部材8自体は、結合ロッド10および電気駆動要素11によって駆動される。電気駆動要素11は、電動モータ12を備え、その出力シャフト13にウォーム14が装着されている。ウォーム14はウォーム歯車15と噛み合っている。結合ロッド10は、ウォーム歯車と、ウォーム歯車と協働する制御及び駆動要素16とによって作動される。一方で、結合ロッド10は、制御及び駆動要素16によって駆動される。
【0027】
図2には、開放処理の開始、すなわちロック機構2のロック解除処理が示されている。結合ロッド10は、電気駆動要素11によって駆動され、ウォーム歯車15は、矢印P1の方向に時計回りに移動する。この目的のために、結合ロッド10は、装着点18に旋回可能に収容される。結合ロッド10は、装着点19を介して結合部材8を動作させ、結合部材8は、装着点19の周りを矢印P2の方向に旋回または傾斜する。結合部材8の移動の結果、回転ラッチ3は、爪部4および結合部材10によって下降する。したがって、
図2は、ロック機構2のロック解除処理の開始を示す。
【0028】
さらなる開放処理は、
図3で示されている。そして、結合部材8が、さらに矢印P2方向に旋回された結果、回転ラッチ3は、さらに開方向、すなわち時計廻りの方向に旋回できる。回転ラッチ3には、ロックホルダ21によって回転ラッチ3に作用する外力Fが働くのが好ましい。回転ラッチ3がロックホルダ21に係合していない場合、回転ラッチ3には脚バネ(図示せず)が設けられ、また、回転ラッチ3に開方向、すなわち時計廻りの方向にバネ荷重が加わる。旋回可能な装着7は、連続的な開放処理を行う効果を有する。連続的な開放処理は、ロックホルダ21からの力Fが連続的に減少することを特徴とする。
図1によると、最も高い負荷は、ロック機構2にメインラッチ位置で作用する。連続的な開放処理の結果として、この最大の力は、ゆっくりと、すなわち連続的に減少され、その結果、ロック機構は、少ない騒音でロック解除できる。いわゆるブレークオフノイズを防止または除去することができる。
【0029】
図3からも分かるように、結合部材8は、エジェクタ22または結合部材8の停止表面と接触する。ロック機構2のメインラッチ位置で自動車用ロック1に作用する最大圧力は、爪部の装着点7の変位によって連続的に減少している。ロック機構2の、このアンロードされた、または少なくとも大部分がアンロードされた位置では、その後、ほとんどまたは全くノイズを有することなくロック機構2を開くことができる。
【0030】
図4は、完全に開放されたロック機構2を示し、その結果、ロックホルダ21は自由になる。この開位置において、回転ラッチ3は、好ましくはゴム弾性緩衝要素である停止部23に当接する。回転ラッチ3は、回転ラッチ用バネによって、この開位置に保持される。
図1から明らかなように、爪部4は、エジェクタ22によって回転ラッチ3との係合領域から外れ、回転ラッチを開位置の方向に支障なく移動させることができる。爪部4が誤って回転ラッチ3に落ちるのを防止するために、固定レバー24が自動車用ロック1内に旋回できるように収容され、固定レバー24が、
図4に示すロック解除位置に爪部4を保持する。固定レバー24は、後尾扉に作用する雪荷重によって力Fに対抗する力を得ることができ、ロック機構2の全開、すなわち回転ラッチ3の開位置への移動を防止できるので、雪荷重レバーとも呼ばれる。回転ラッチ3が完全に開位置に移動しない場合、固定レバー24がない場合には、爪部4が回転ラッチ3と係合して戻り、たとえば、ロック機構2のプレラッチ位置への不注意なロックおよび/または落下が起こり得る。固定レバー24は、装着点25を中心に旋回できるように自動車用ロック1内に収容されている。
【0031】
図4において、結合部材8は、結合レバー10に作用する力に対して下死点位置Tに達している。ウォーム歯車15をさらに矢印P1の方向に回転させることにより、結合部材8は初期位置Aに戻る。ウォーム歯車15は、矢印P1の方向への移動、すなわち、ウォーム歯車は、矢印P1の方向へ時計廻りにのみ移動する。一方、結合部材8は、ロック機構2が全開となるまで矢印P2の方向に時計廻りに移動され、その後、結合部材8が矢印P3の方向に後退され、これを結合部材8の前後移動または傾斜移動と称することができる。結合部材8は、その初期位置Aに戻され、上死点位置T0は爪部に作用する力に関連して通過する。上死点位置T0を超えると、爪部4は、その装着点7と共に、ロック機構2に閉鎖トルクを発生させる結合部材8の装着点9と整列する。換言すれば、初期位置では、ロック機構2が閉位置に押し込まれ、その結果、自動車用ロックの閉位置に対して最大限の安全度を達成することができる。
【0032】
回転ラッチ3が完全に開くことによって、固定レバー24が爪部4から解除され、その結果、爪部4が回転ラッチ3に接触する。ここで、自動車用ロック1は、ロックホルダ21と相互作用することによって、再びロック可能である。本発明に係る自動車用ロック1の構造により、騒音特性及びスペース要件の点で最高の要件を満たす、改良された自動車用ロック1を提供することができる。
【0033】
【符合の説明】
【0034】
1…自動車用ロック、2…ロック機構、3…回転ラッチ、4…爪部、5, 6, 9, 18, 19, 25…装着点、6…ロック用ハウジング、8…結合部材、9…結合ロッド、11…電気駆動要素、12…電気モータ、13…出力シャフト、14…ウォーム、15…ウォーム歯車、16…制御及び駆動要素、17…制御外形部20…メインラッチ部、21…ロックホルダ、22…エジェクタ、エジェクタ表面、23…停止部、24…固定レバー、P1, P2, P3…矢印、F…力、T(T0)…死点位置、A…初期位置。