(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ブスバー、給電構造、及び、電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/66 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
B03C3/66
(21)【出願番号】P 2019147786
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】阿部 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅美
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-256144(JP,A)
【文献】特開平04-099918(JP,A)
【文献】特開平11-101372(JP,A)
【文献】特開2004-321874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
H02M 7/42- 7/98
F16L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる長さ2m以上のブスバーが、電源と、該電源よりも上方に設置されている電圧印加部とを結んで鉛直方向に沿って設置されている、電気集塵装置の給電構造であって、
前記ブスバーは、筒状、柱状、又は、帯状の導電性本体部の側面の長手方向に沿って
3枚以上の板状の補強用リブ部が立設されてい
て、
前記補強用リブ部の設置角度が相互に等角度間隔とされている、
給電構造。
【請求項2】
前記ブスバーが、筒状の中空管であるブスダクト内に内挿された状態で鉛直方向に沿って設置されている、
請求項1に記載の給電構造。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の給電構造を備える、電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブスバー、それを備えて構成される給電構造及び電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気集塵装置において電源から放電極に高電圧で印加するための配線等、大電流が流れる配線を、ブスバー(「バスバー」とも言う)と称される部材で構成することが広く行われている。
【0003】
このブスバーは、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等の導電性の金属材料が、所定の断面積を有する帯状又は柱状の配線部材であり、又、ツイスト線や単線とは異なり剛性を有する部材でもある。又、ブスバーは、ツイスト線や単線に比べて大きな断面積を有するため、低インピーダンスであり、且つ、ブスバー同士を面接触させることもできることから、損失が小さい点でも有利である(特許文献1、2参照)。ブスバーの具体例として、特許文献1には帯状(断面矩形)のブスバー、特許文献2には円柱状(断面円形)のブスバーが一般的なブスバーの具体例として開示されている。本明細書においても、そのように導電性金属材料が帯状又は柱状(或いは筒状)に成型されてなることにより、一定の剛性を有する配線部材のことを「ブスバー」と称する。
【0004】
又、特許文献3には、電源と集塵装置導電性本体部の放電極とを導通させるブスバーの配置の一例が開示されている(同文献の
図1、3参照)。同文献に開示されているように、ブスバーは、通常、絶縁性材料からなる中空管であるブスダクトに内挿されて必要に応じて連接されて鉛直方向及び水平方向に向けて延設されている。ここで、ブスバーは一定の剛性を有するため、例えば、上記の図に示されるように、鉛直或いは水平方向に沿って配置する時等に、両端部の固定によって、比較的容易且つ安定的に、自立状態或いは水平状態を維持させることができる。
【0005】
しかしながら、例えば配置条件等の制約により、配線を構成する単一のブスバーの長さが一定の長さを超える場合等においては、上記の剛性、即ちブスバー自体の形状維持力が相対的に不十分になりやすく、長尺のブスバーが、設置作業中、或いは、使用中に、その自重を支えきれずに折れ曲がってしまう虞れがあった。このような状態は、特に大重量の高電圧電源と大型の導電性本体部とを備える湿式電気集塵装置において顕在化しやすく、この危険性を低下させるための有効な対策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-127152号公報
【文献】特開2004-321874号公報
【文献】特開2012-148214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気集塵装置において電源から放電極に高電圧で印加するための配線等として用いられる長尺のブスバーが、設置作業中、或いは、使用中に、その自重を支えきれずに折れ曲がってしまう危険性を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、長尺のブスバーの長手方向に沿って補強用リブ部を形成することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 筒状、柱状、又は、帯状の導電性本体部の側面の長手方向に沿って複数の板状の補強用リブ部が立設されている、ブスバー。
【0010】
(1)の発明によれば、長尺のブスバーの長手方向に沿って補強用リブ部を形成することにより、設置作業中、或いは、使用中に、ブスバーが、その自重を支えきれずに折れ曲がってしまう危険性を低減させることができる。
【0011】
(2) 前記補強用リブ部の設置角度が相互に等角度間隔とされている(1)に記載のブスバー。
【0012】
(2)の発明によれば、(1)のブスバーについて、全方向への耐折れ曲がり強度を均等に補強することができる。又、配置時の補強用リブ部の方向に関わらず、安定的に、ブスバーの耐折れ曲がり強度向上の効果を安定的に発揮させることができるため、設置作業がより容易に行えるようになる。
【0013】
(3) (1)又は(2)に記載のブスバーが、鉛直方向に沿って設置されていて、
該ブスバーが、電源と、該電源よりも上方に設置されている電圧印加部とを結んで設置されている、給電構造。
【0014】
(3)の発明によれば、例えば、設備の床面等低い位置に設置される重量の大きな電源と、大型の筐体(ケーシング)の上部に位置する高電圧入力部(電圧印加部)とを導通する必要がある場合等において、(1)又は(2)に記載のブスバーの奏する上記効果を享受して、安全性に優れる給電構造を構成することができる。
【0015】
(4) (3)に記載の給電構造を備える、電気集塵装置。
【0016】
(4)の発明によれば、(3)の給電構造の奏する上記効果を享受して、安全性に優れる電気集塵装置を構成することができる。又、(4)の発明の効果は、特には、70kV程度以上の高電圧を印加する大重量の電源と、大型の筐体を含んで構成される高電圧型の湿式電気集塵装置において、特に優位性の高い効果として享受することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気集塵装置において電源から放電極に高電圧で印加するための配線等として用いられる長尺のブスバーが、設置作業中、或いは、使用中に、その自重を支えきれずに折れ曲がってしまう危険性を低減させることができる。又、これにより、高電圧型の大型の電気集塵装置の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のブスバーの外形を示す斜視図である。
【
図2】本発明のブスバーの断面形状を示す断面図である。
【
図3】本発明のブスバーの他の実施形態における断面形状を示す断面図である。
【
図4】本発明のブスバーを用いて給電構造が構成されている電気集塵装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[ブスバー]
本発明のブスバー1は、筒状、柱状、又は、帯状の形状を有する長尺の導電性本体部11を有する点において、従来公知の各種のブスバーと同様の構成である。但し、
図1、2に示す通り、ブスバー1は、導電性本体部11の側面に、同面の長手方向に沿って、複数の板状の補強用リブ部12が立設されている点において、従来のブスバーとは異なる。そして、本発明のブスバー1は、この補強用リブ部12を有することにより、従来公知のブスバーよりも、折れ曲がりに抗する強度(以下、「耐折れ曲がり強度」と言う)が著しく向上している点を主たる特徴とする。
【0020】
(導電性本体部)
ブスバー1の主たる部分を構成する導電性本体部11、及び、補助的な部分であって主として耐折れ曲がり強度向上に寄与する補強用リブ部12は、何れも、導電性を有する金属材料によって形成されることが好ましい。上記各部を含んでなるブスバー1を形成する金属材料として、銅、アルミニウム、ステンレス鋼等を適宜用いることができる。但し、本発明が主な設置対象として想定する大型の湿式電気集塵装置においては、ブスバー1の材料としては、耐食性等に優れ経済性の面でも有利なステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0021】
又、導電性本体部11と補強用リブ部12とは、同一の金属材料からなる一体成型品であることが強度や耐久性、生産性の観点から好ましい。但し、ブスバー1の構造は、必ずしもこれに限られず、例えば、予め筒状等に成型されている金属材料で導電性本体部11を構成し、これに、他の金属材料からなる補強用リブ部12を溶接等により設置して製造することもできる。
【0022】
ブスバー1の導電性本体部11の形状の好ましい一例として、
図1及び2に示すような円筒形状を挙げることができる。但し、本発明のブスバーを構成する導電性本体部の形状はこれに限られない。本発明のブスバーの主たる部分を構成する導電性本体部の形状は、従来のブスバー同様、用途や要求される電気物性、力学的物性に応じて、筒状、柱状、又は、帯状等、何れの形状とすることもできる。本発明のブスバーの導電性本体部の形状は、例えば、
図3に示すように、角筒形状(
図3(A))、帯状(
図3(B))、円柱形状(
図3(C))等とすることができる。
【0023】
(補強用リブ部)
ブスバー1の側面に立設される補強用リブ部12は、板状の形状を有する。補強用リブ部12は、ブスバー1の側面において長手方向に沿って立設されていて、尚且つ、同側面の長手方向の略全域に亘って連続的に形成されていることが好ましい。但し、補強用リブ部12を断続的に形成し、補強用リブ部12の存在しない部分を折り曲げて用いてもよい。
【0024】
ブスバーの耐折れ曲がり強度をあらゆる方向に対して均等且つ十分に向上させる観点から、導電性本体部の側面への補強用リブ部の設置角度は、「相互に等角度間隔」とすることが好ましい。「相互に等角度間隔」とは、導電性本体部の断面を正面から見た場合において、板状の各リブ部の小口面同士のなす角の大きさが均等であることを言い、例えば、円筒形状の導電性本体部11を有するブスバー1においては、
図2に示すように、導電性本体部11の側面に4枚の補強用リブ部12が、相互に90°の角度間隔で立設されている設置形態がその一例である。
【0025】
補強用リブ部の設置形態としては、その他、
図3(A)に示すように、角筒形状の導電性本体部11Aの各側面に各1枚ずつの補強用リブ部214Aが垂直に立設されている設置形態や、
図3(C)に示すように円柱形状の導電性本体部11Cの側面に3枚の補強用リブ部214Cが相互に120°の角度間隔で立設されている設置形態を、補強用リブ部の他の好ましい設置形態として挙げることができる。
【0026】
又、補強用リブ部は、
図3(B)に示すように、帯状の導電性本体部11Bを有するブスバー1Bにおいて、導電性本体部11Bの両表面に各1枚ずつの補強用リブ部12Bが、相互に180°の角度間隔で反対方向に向けて立設されている設置形態であってもよい。この形態においても、導電性本体部の耐折り曲げ強度を有効に向上させることができる。
【0027】
補強用リブ部の大きさは特に限定されないが、長さ2m以上、直径40mmの円筒形状のステンレス鋼管で構成されている導電性本体部に、厚さ4mm、高さ50mmのステンレス材からなる補強用リブ部が、相互に90°の角度間隔で立設されている例を補強用リブ部の設置態様の好ましい一例として挙げることができる。上記のブスバーにおいて、上記の補強用リブが存在しないとしたら、自立させた時のしなり変形を回避することは困難であるが、上記のように補強用リブを備えることにより、しなり変形を容易且つ完全に防ぐことができる。
【0028】
[電気集塵装置]
本発明の好ましい実施形態の一つである、電気集塵装置100は、各種の排ガス中に微粒子として含有される有害なダストやミストを捕集する目的で使用される装置である。
図4に示す通り、電気集塵装置100は、電気集塵機本体10と、ブスバー1を用いた給電構造200と、を含んで構成される。
【0029】
電気集塵機本体10は、筺体101と集塵極102とを含んで構成される。筺体101の材質の好ましい一例としては、導電性のFRP(Fiber Reinforced Plastic)を挙げることができる。
【0030】
給電構造20は、に示す通り、電源201と電圧印加部202と、を含んで構成されている。ブスバー1は、
図4、に示すように、通常、鉄等の強度がある材料で絶縁距離を保つため筒状の中空管であるブスダクト13内に内挿された状態で、給電構造20を構成する。
【0031】
ブスバー1は、鉛直方向にも水平方向にも必要に応じて複数連接して用いることができ、これにより様々な形態の給電構造を構成することができる。そして、安定的に自立状態を保持することができるブスバー1は、特には、
図4に示すように、電源201と、当該電源201よりも上方に設置されている電圧印加部202とを結ぶ給電構造20において、従来のブスバーに対する特段の優位性を発揮する。
【0032】
又、ブスバー1を用いて構成される給電構造20は、特には、実効電圧として70kV以上の電圧を電気集塵機本体10に印加することができる直流高電圧電源を電源201として備え、更に大重量を有する当該電源を、
図4に例示されるように、設備の床面に設置し、尚且つ、電源201からの電気配線を高所にある電圧印加部202に接続する必要がある場合に、特段の優位性を発揮する。
【符号の説明】
【0033】
1、1A、1B、1C ブスバー
11、11A、11B、11C 導電性本体部
12、12A、12B、12C 補強用リブ部
13 ブスダクト
10 電気集塵機本体
101 筐体
102 集塵極
20 給電構造
201 電源
202 電圧印加部
100 電気集塵装置