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  • 特許-衝撃を吸収する構造、およびヘルメット 図1
  • 特許-衝撃を吸収する構造、およびヘルメット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-10
(45)【発行日】2023-10-18
(54)【発明の名称】衝撃を吸収する構造、およびヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/14 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
A42B3/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018180233
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050980
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】山村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隼
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特公昭31-005630(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0112222(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106605994(CN,A)
【文献】特開2006-188771(JP,A)
【文献】特開平06-002208(JP,A)
【文献】実開昭52-089210(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体の内側にあるアーチ状であり、張力を有する素材からなる第1の衝撃吸収する構造であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部(1)であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点(A)を考え、衝撃点(A)と頭頂を含む第1垂直面(P)と、頭頂を含み第1垂直面(P)に直角に交わる第2垂直面(Q)と、高さ方向の中央にある第1水平面(R)で、帽体を8分割したとき、帽体の取付部(1)が、第2垂直面(Q)で切断された衝撃点(A)を含まない帽体部分であって、第1水平面(R)より下部であって、第1垂直面(P)の左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部(2)が、衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置され、前記衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の前記交点と間に距離を有する前記第1の衝撃吸収する構造と、
前記第2垂直面(Q)に対して前記第1の衝撃吸収する構造と対称に位置する第2の衝撃吸収する構造と、を備え、
前記第1の衝撃吸収する構造と前記第2の衝撃吸収する構造との交差している部分が相互に連結されている
衝撃吸収する構造
【請求項2】
帽体と、
帽体の内側にあるアーチ状であり、張力を有する素材からなる第1の衝撃吸収する構造であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部(1)であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点(A)を考え、衝撃点(A)と頭頂を含む第1垂直面(P)と、頭頂を含み第1垂直面(P)に直角に交わる第2垂直面(Q)と、高さ方向の中央にある第1水平面(R)で、帽体を8分割したとき、帽体の取付部(1)が、第2垂直面(Q)で切断された衝撃点(A)を含まない帽体部分であって、第1水平面(R)より下部であって、第1垂直面(P)の左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部(2)が、衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置され、前記衝撃点(A)における法線の帽体内曲面の前記交点と間に距離を有する前記第1の衝撃吸収する構造と、
前記第2垂直面(Q)に対して前記第1の衝撃吸収する構造と対称に位置する第2の衝撃吸収する構造と、を備え、
前記第1の衝撃吸収する構造と前記第2の衝撃吸収する構造との交差している部分が相互に連結されている
ヘルメット。
【請求項3】
前記第1の衝撃吸収する構造と前記第2の衝撃吸収する構造とが、第3の衝撃吸収する構造であり、
前記第3の衝撃吸収する構造を帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収する構造を第4の衝撃吸収する構造としたとき、前記第4の衝撃吸収する構造をさらに備える
請求項2に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの帽体内部に設けられている衝撃吸収する構造、およびヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、産業用ヘルメットの帽体の内面には、ハンモックが取り付けられている。ハンモックは、通常、頭頂部から放射線状に下に延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体の下縁側内面に着脱自在に連結されている。そうすることで、人頭を帽体内部の定位置に安定させるとともに、頭頂付近の垂直方向の衝撃を緩和する役目を果たしている。
【0003】
また、頭頂付近以外の衝撃も緩和するため、衝撃吸収ライナが取付けられている。衝撃吸収ライナは、通常、発泡スチロール等により形成されており、帽体の内面を殆ど覆っている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、帽体と着装体との間にこのようなライナが設けられていると、帽体と人頭との間の空隙が僅かとなることから、ヘルメット内部の通気性が悪く、衝撃吸収ライナにより放熱も阻害される。このため、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが生じて着用時の快適性が損なわれる不都合がある。
そこで、発泡スチロール等による帽体の内面を殆ど覆うライナを取り除き、ハンモックに工夫をこらすことで、衝撃を吸収する構造が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-221948号公報
【文献】特開2015-25226号公報
【文献】特開2017-133124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、頭頂付近以外の衝撃を吸収することができ、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが改善された衝撃吸収体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
(1)帽体の内側にあるアーチ状の衝撃吸収体であって、アーチ状の長手方向の両端は、帽体への取付部1であり、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内範囲以外の帽体への衝撃点Aを考え、衝撃点Aと頭頂を含む第1垂直面Pと、頭頂を含み第1垂直面Pに直角に交わる第2垂直面Qと、高さ方向の中央にある第1水平面Rで、帽体を8分割したとき、帽体の取付部1が、第2垂直面Qで切断された衝撃点Aを含まない帽体部分であって、第1水平面Rより下部であって、第1垂直面Pの左右にあり、アーチ状の長手方向の中央部2が、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される第1の衝撃吸収体、
(2)(1)に記載の第2垂直面Qに対して(1)に記載の第1の衝撃吸収体と対称に位置する衝撃吸収体を第2の衝撃吸収体としたとき、(1)に記載の第1の衝撃吸収体と第2の衝撃吸収体を有する第3の衝撃吸収体、
(3)(2)に記載の第3の衝撃吸収体を帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収体を第4の衝撃吸収体としたとき、(2)に記載の第3の衝撃吸収体と第4の衝撃吸収体を有する第5の衝撃吸収体、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の衝撃吸収体であれば、頭頂付近以外の衝撃に対して衝撃を吸収することができ、ヘルメット内部に熱こもりや蒸れが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の例の衝撃吸収体の斜視図である。
図2図2は、本発明の第2の例の衝撃吸収体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアーチ状の衝撃吸収体は、斜め方向あるいは横方向の衝撃を目的としたものであるからほぼ垂直方向の衝撃となる帽体の頭頂付近の衝撃、即ち、帽体の頭頂を中心として曲面での直径10cmの円の円内の帽体への衝撃は考慮していない。それらの衝撃は、従来のハンモック、即ち、頭頂部から放射線状に下に延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体の下縁側内面に着脱自在に連結される構造のハンモックで衝撃吸収が緩和可能だからである。
【0011】
アーチ状の長手方向の中央部2は、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点の近傍に配置される。中央部2は、幅方向に所定の幅を持つが、衝撃点Aにおける法線の帽体内曲面の交点との距離を考える場合は、中央部2と交点との最短距離を考える。この距離は、ヘルメットの形状にもよるが、通常4から5センチメートルである。それぐらいであれば、衝撃でへこみが生じた場合でもへこみが人頭にとどくことがないからである。
【0012】
先の(1)に記載のように、アーチ状の衝撃吸収体の取付部1、中央部2を配置することにより、衝撃点Aに衝撃が加わったとき、帽体が衝撃方向に動こうとするが、それにともないアーチ状の衝撃吸収体は、一対の取付部1の間にこの移動を阻止しようとする張力が働き、衝撃を吸収することになる。
【0013】
本発明のアーチ状の衝撃吸収体は、従来のハンモック、即ち、頭頂部から放射線状に下の延びる脚部を備え、各脚部の下端部は、帽体の下縁側内面に着脱自在に連結される構造のハンモックと併用してもいい。この場合、従来のハンモックと一体成型することも可能である。また、後の実施例2で示すがごとく、それ自体、頭部を帽体に安定させるためのハンモックとして使用することもできる。
【0014】
衝撃吸収体の材質は、ポリエチレン、ポリプロピンなどの弾性力のある樹脂、繊維、皮等の張力を有する素材が好ましい。
ハンモックと一体成型しないのであれば、ハンモックは衝撃吸収体に関係なく、自由に材質を選択できる。
樹脂など用いる場合は、アーチ状の帯部分に複数の貫通孔を設けることで軽くすることもできる。
以下、本発明を図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の例の衝撃吸収体の斜視図である。一点鎖線がヘルメットの帽体であり、長破線が衝撃点Aにおける法線である。本実施例では、衝撃点Aは、帽体正面で、帽体左右方向の中央、帽体の高さ方向で下から3/4の位置を想定している。従って、衝撃点Aと帽体の頭頂を含む第1垂直面Pは、帽体の正面を左右方向の中央で帽体を二分する垂直面となる。また、第2垂直面Qは、帽体の正面を前としたとき、前後方向の中央で帽体を二分する。第1水平面Rは、帽体の高さ方向の中央で帽体を二分する。面P、Q、Rは、破線で示してある。
【0016】
衝撃吸収体はアーチ状をしており、帽体への取付部1は、アーチ状の両端部にある。本実施例では、帽体の突起部分に取り付けるため、取付のための開口がある。
取付部1は、帽体の後ろ下部の左右に位置する。そして、アーチ状の中央部2と衝撃点Aにおける法線と帽体内曲面の交点との最短距離は、4センチメートルである。
【実施例2】
【0017】
実施例1では、帯状の衝撃吸収体の安定が悪く、安定させるためには、一対の取付部1の間で、少なくとも、もう一点、帽体、あるいはハンモック等に支持されるほうがいい。しかし、帯状の衝撃吸収体を2つ組み合わせることで、アーチ状の衝撃吸収体を安定させることが可能である。図2は、その例で、本発明の第2の例の衝撃吸収体の斜視図である。衝撃点Aの位置は、実施例1と同じである。衝撃点Bの位置は、衝撃点Aと第2垂直面に対して、対称な位置にある。従って、この衝撃点Bに対するアーチ状の衝撃体の取付部1は、帽体の前側の下部の左右に位置する。また、アーチ状の長手方向の中央部2は、衝撃点Bにおける法線と帽体内曲面の交点との最短距離は、4センチメートルである。
【0018】
衝撃点Aに対応する衝撃吸収体を第1の衝撃吸収体、衝撃点Bに対応する衝撃吸収体を第2の衝撃吸収体としたとき、第1の衝撃吸収体と第2の衝撃吸収体の交差している面は、例えば、接着剤で連結されている。このように、することにより、前斜めと後ろ斜めの衝撃を吸収することができ、かつ衝撃体も帽体への取付部1が4点あり、安定した構造とすることができる。
【0019】
実施例2の衝撃吸収体を第3の衝撃吸収体としたとき、第3の衝撃吸収体を帽体の頭入口の円周の円周方向に時計周りで90度回転させた衝撃吸収体を第4の衝撃吸収体とし、第3の衝撃吸収体と第4の衝撃吸収体をあわせた第5の衝撃吸収体を考えることもできる。第5の衝撃吸収体の構造であれば、前後の衝撃吸収にくわえ、側面からの衝撃も吸収することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 取付部
2 中央部
A 帽体における衝撃点
B 衝撃点Aと第2垂直面に対して対象の位置にある衝撃点
P 衝撃点Aと頭頂を含む第1垂直面
Q 頭頂を含み第1垂直面に直角に交わる第2垂直面
R 帽体の高さ方向の中央にある水平面
図1
図2